JP2009234931A - トランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤および、その用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】角層バリア強化剤の提供。
【解決手段】式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体を有効成分とするトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤(式中、Rは炭素数が8〜22のアルキル基またはアシル基を示す。またXは1−アシル−グリセロ−2,3−ホスフェート誘導体または1−O−アルキル−グリセロ−2,3−ホスフェート誘導体から式(1)を除いた残基、および1−アシル−グリセロホスフェート誘導体または1−O−アルキル−グリセロホスフェート誘導体から式(1)を除いた残基を示す。)。

【選択図】なし

Description

本発明は、細胞のトランスグルタミナーゼの遺伝子発現を亢進することができるトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤、当該酵素活性を増強し、細胞のコーニファイドエンベロップ形成を促進することで角層バリア強化効果を発揮させ、医療および美容を目的としてイオントフォレシス(イオン導入法)や皮内あるいは皮下投与により表皮の角質バリアを強化することができるトランスグルタミナーゼ活性増強剤、コーニファイドエンベロップ形成促進剤及び角層バリア強化剤に関する。
表皮は、身体の最外層にあって常に外界と接している。このため、表皮の本質的役割は、異物侵入、紫外線、活性酸素種や化学物質から生命を守ることにある。表皮の最も外側の角層は厚さわずか数十ミクロンではあるが、化学的に極めて安定であり水分などの体内成分の喪失を防ぎ、外界からの異物の侵入を抑制するなど生命維持で重要な役割を担っている。
老化や、乾燥、紫外線その他の外界ストレスにより表皮細胞の分化が阻害されると表皮のターンオーバーが乱れ、角化異常症、乾皮症、ざ瘡などが引き起こされる。近年、発症年齢の高齢化や若齢化が問題視されているアトピー疾患についても角質バリアの低下がその要因であることは見過ごせない。
従来このような皮膚症状を軽減する手段としては、油分の塗布の他、保湿性の高い物質であるコラーゲン、ヒアルロン酸を配合した組成物を塗布することが主流であった。しかし、いずれも一時的、表面的であり必ずしも充分な効果を得ることができていない。より本質的な効果を得るため、正常角化の回復を促す外用剤として、天然の植物・海藻類の抽出物(特許文献1及び2)が用いられることがある。しかし、効果や安全性の面で更に優れた有効成分が望まれている。
角層は、表皮細胞が基底膜から上層へ終末分化しながら最終的に死んだ細胞層となることで形成される。この角化過程でインボルクリンやロリクリンなど疎水性のタンパク質が共有結合で架橋されて、不溶性のコーニファイドエンベロップ(cornified envelope(角質肥厚膜))と呼ばれる細胞膜の裏打ちタンパク質となり角層の安定化に寄与する。この形成において最も重要な役割を担うトランスグルタミナーゼの活性欠乏は、魚鱗癬など皮膚バリアを失う重篤な疾患となる。近年は、セラミドも単独では充分なバリア効果を発揮できず当該酵素による架橋が角質バリアの充実に重要であることも明らかになりつつある。
したがって、トランスグルタミナーゼの発現の促進や活性の増強は、上述の皮膚症状の本質的な改善につながると期待される。当該酵素の活性化の観点から、月見草抽出物(特許文献1)、パントテインスルホン酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等の外用剤(特許文献3)が提案されている。また、細胞の遺伝子発現亢進の観点からは、ビタミンDやAの誘導体を含有する化粧料(特許文献4及び5)、サイシンやラフマ等の植物抽出物(特許文献6)、ニガリ、塩化カルシウム等のカルシウム類(特許文献7)が提案されている。しかし、さらなるトランスグルタミナーゼ発現促進剤が求められている。
ところで、環状ホスファチジン酸は、元来真性粘菌(Physarum polycephalum)培養液から真核生物のDNAポリメラーゼα阻害活性を有する物質として見出された(非特許文献1)。構造解析の結果、グリセリン骨格の2位、3位間で自己環状エステルを有するユニークな構造のグリセロリン脂質であることが明らかにされた。その後、分析技術の向上に伴って、このような環状ホスファチジン酸は、哺乳類の血清中にも約10-7M程度存在することが明らかにされた(非特許文献2)。更に、ヒト血清やウサギ涙腺液中にも環状ホスファチジン酸が確認されるなど高等動物体液中に普遍的に存在することが明らかになり、その機能への関心が高まっている。
例えば、特許文献8や9には、環状ホスファチジン酸によるがん細胞浸潤の抑制効果に基づく抗がん剤が、特許文献10及び11には、ニューロンやグリア細胞の生存維持、並びに神経突起伸展作用を有する薬剤が、特許文献12には、環状ホスファチジン酸による抗シワ効果を有する皮膚外用剤が、特許文献13には、環状ホスファチジン酸を用いた細胞のヒアルロン酸産生増強剤が、特許文献14には環状ホスファチジン酸による保湿効果を利用したしっとり感の高い浴用剤がそれぞれ開示されている。しかしながら、トランスグルタミナーゼの遺伝子発現促進効果、当該酵素活性増強や角質を強化するコーニファイドエンベロップ形成促進効果については全く知られていない。
一方、遊離のリン酸残基を有する環状ホスファチジン酸の構造異性体であるリゾホスファチジン酸(LPA)は、最も単純な構造のリン脂質である。その含有率は細胞膜では全リン脂質の0.5%であり、1980年代以前は、単なるリン脂質の代謝中間体や分解物としての理解にすぎなかった。その後、van CorvenやMoolenarらによってLPAが血清中の細胞増殖因子の本体の一つであることが明らかにされた(非特許文献3、4)。さらにLPAには、アクチン細胞骨格の再構築に及ぼす作用やフォーカルアドヒージョン形成(非特許文献5)、コラーゲンゲル収縮促進作用があることが明らかにされ、細胞の情報伝達物質としての役割が組織損傷時において即効的に機能することが可能な治癒促進物質あるいは局所ホルモン(オータコイド)としての理解が進んでいる。LPAの利用としては、例えば、細胞増殖亢進作用によるアンチリンクル剤(特許文献12)、ヒアルロン酸合成酵素の誘導促進によるヒアルロン酸産生増強剤(特許文献15)や、毛穴引き締め剤(特許文献16)が提案されている。しかしながら、トランスグルタミナーゼの遺伝子発現促進効果や当該酵素活性増強や角層を強化するコーニファイドエンベロップ形成促進効果については全く知られていない。
ところで、トランスグルタミナーゼの発現促進および当該酵素活性増強剤による角質バリア強化剤の開発が、細胞レベルでの診断や治療の分野、また美容医療領域において望まれている。
特開2004−91376号公報 特開2001−354518号公報 特開平11−100320号公報 特開2004−115451号公報 特開2004−115452号公報 特開2007−1914号公報 特開2004−51596号公報 特開平7−258278号公報 特開平9−25235号公報 特開2002−308778号公報 特開2002−308779号公報 WO92/21323号パンフレット 特開2002−363081号公報 特開平11−158057号公報 特開平8−67621号公報 特開2005−97250号公報 The J. Biol. Chem., 267, 30, 21512−21517(1992) Life Sciences, 65, 21, 2185−2191(1999) Cell. 59, 1, 45-54(1989) Cell Growth Differ., 4, 4, 245-55. (1993) ENBO J.13.,11,2600-2610(1994)
本発明の課題は、短時間に細胞のトランスグルタミナーゼ遺伝子の発現を引き起こすことが可能なトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を提供することにある。
本発明の別の課題は、短時間に細胞のトランスグルタミナーゼ遺伝子の発現を引き起こすことが可能なトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を利用した、トランスグルタミナーゼ活性増強剤、コーニファイドエンベロップの形成促進剤、これらの作用を利用した角層バリアを効率的に強化することができる角層バリア強化剤を提供することにある。
本発明によれば、式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体を有効成分とするトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤が提供される。
(式中Rは、炭素数8〜22のアルキル基または炭素数8〜22のアシル基を示す。Xは、式(2)または式(3)で表される基を示す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換アンモニウム基または無置換アンモニウム基を表す。)
また本発明によれば、上記トランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含むトランスグルタミナーゼ活性増強剤が提供される。
更に本発明によれば、上記トランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含むコーニファイドエンベロップ形成促進剤が提供される。
更にまた本発明によれば、上記トランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含む角層バリア強化剤が提供される。
本発明のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤は、特定のホスファチジン酸誘導体を有効成分とするので、安全性に優れ、短時間にトランスグルタミナーゼ遺伝子の発現を引き起こすことができ、トランスグルタミナーゼ活性増強剤に利用することができる。
このような促進剤や強化剤を利用することにより、コーニファイドエンベロップ形成を促進することができ、これにより、表皮の角層バリアを強化することが期待できる。
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤は、上記式(1)で示されるホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む。
式(1)においてRは、炭素数8〜22のアルキル基または炭素数8〜22のアシル基を示す。このようなアルキル基またはアシル基は特に限定されないが、好ましくは、炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和アシル基、炭素数8〜22の直鎖状で1〜6個の不飽和結合を有する不飽和アシル基、炭素数8〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和アルキル基、炭素数8〜22の直鎖状で1〜6個の不飽和結合を有する不飽和アルキル基が挙げられる。
前記炭素数8〜22の直鎖状の飽和アシル基としては、例えば、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、パルミチン酸(C16:0)、マルガリン酸(C17:0)、ステアリン酸(C18:0)、ノナデカン酸(C19:0)、アラキジン酸(C20:0)、ヘネイコサン酸(C21:0)、ベヘニン酸(C22:0)に由来する残基が挙げられる。
前記炭素数8〜22の分岐鎖状の飽和アシル基としては、例えば、イソバレリアン酸、イソ酸、アンテイソ酸に由来する残基が挙げられる。
前記炭素数8〜22の直鎖状で1〜6個の不飽和結合を有する不飽和アシル基としては、例えば、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、バクセン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、エルカ酸(C22:1)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)等の不飽和脂肪酸に由来する残基が挙げられる。
前記炭素数8〜22の直鎖状の飽和アルキル基としては、例えば、オクタノール(C8:0)、デカノール(C10:0)、ドデカノール(C12:0)、テトラデカノール(C14:0)、ペンタデカノール(C15:0)、ヘキサデカノール(C16:0)、ヘプタデカノール(C17:0)、オクタデカノール(C18:0)、ノナデカノール(C19:0)、イコサノール(C20:0)、ヘネイコサノール(C21:0)、ドコサノール(C22:0)等のアルコール類に由来する残基が挙げられる。
前記炭素数8〜22の分岐鎖状の飽和アルキル基としては、例えば、イソバレリアノール、イソノール、アンテイソノール等のアルコール類に由来する残基が挙げられる。
前記炭素数8〜22の直鎖状で1〜6個の不飽和結合を有する不飽和アルキル基としては、例えば、テトラデセノール(C14:1)、ヘキサデセノール(C16:1)、オクタデセノール(C18:1)、エイコセノール(C20:1)、ドコセノール(C20:1)、リノール(C18:2)、リノレノール(C18:3)、エイコセノール(C20:4)、エイコサペンタエノール(C20:5)、エルカノール(C22:1)、ドコサヘキサノール(C22:6)に由来する残基が挙げられる。
これらのうち、ホスファチジン酸誘導体としての取扱いのしやすさ、および活性の強さなどの点から、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、パルミチン酸(C16:0)、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)に由来する残基が最も好ましい。
式(1)中のXは、上記式(2)または式(3)で表される基を示す。
式(2)または式(3)中Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換アンモニウム基または無置換アンモニウム基を表す。
前記アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。前記アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。前記置換アンモニウム基としては、例えば、ブチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、テトラメチルアンモニウム基が挙げられる。前記無置換アンモニウム基としては、例えば、アンモニウムが挙げられる。これらMとしては、ホスファチジン酸誘導体としての入手のしやすさなどの点から、ナトリウムまたはカリウムが最も好ましい。
本発明に用いる式(1)のホスファチジン酸誘導体には、式(1)のXが式(2)である環状ホスファチジン酸(cPA)誘導体と、式(1)のXが式(3)であるリゾホスファチジン酸(LPA)誘導体がある。
式(1)のXが式(2)であるcPA誘導体のうち、好ましいものは、1−アシル−グリセロ−2,3−ホスフェート誘導体または1−O−アルキル−グリセロ−2,3−ホスフェート誘導体であり、そのアシル基またはアルキル基は、水酸基、シクロアルカン環もしくは芳香環を含んでいても良い。
このようなcPA誘導体において、アシル基またはアルキル基が水酸基を含む場合の具体例としては、例えば、2−ハイドロキシデカン酸(C10:0)、2−ハイドロキシドデカン酸(C12:0)、2−ハイドロキシテトラデカン酸(C14:0)、2−ハイドロキシヘキサデカン酸(C16:0)、2−ハイドロキシオクタデカン酸(C18:0)、2−ハイドロキシイコ酸(C20:0)、メチル2−ハイドロキシデカン酸(C11:0)、メチル2−ハイドロキシドデカン酸(C13:0)、メチル2−ハイドロキシテトラデカン酸(C15:0)、メチル2−ハイドロキシヘキサデカン酸(C17:0)、メチル2−ハイドロキシオクタデカン酸(C19:0)、メチル2−ハイドロキシイコ酸(C21:0)が挙げられ、入手のしやすさなどの点から、2−ハイドロキシドデカン酸(C12:0)、2−ハイドロキシテトラデカン酸(C14:0)、2−ハイドロキシヘキサデカン酸(C16:0)、2−ハイドロキシオクタデカン酸(C18:0)が最も好ましく挙げられる。
また、前記アシル基またはアルキル基が含むことができるシクロアルカン環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環が例示できる。
式(1)のXが式(2)であるcPA誘導体の入手方法は特に限定されない。例えば、1−アシル−グリセロ−2,3−ホスフェート誘導体の場合、市販品を用いることができる他、市販のホスファチジルコリンやホスファチジン酸等のリン脂質を酵素処理する方法、種々の生物資源を原料とし、抽出等の処理をする方法、特開平6−228169号公報、特開平7−25827号公報、特開平9−25235号公報に示された、ジシクロヘキシルカルボジイミド存在下に脂肪酸と2,3−イソプロピリデン−sn−グリセロールから化学合成する方法により得ることができる。
また、1−O−アルキル−グリセロ−2,3−ホスフェート誘導体の場合、市販品を用いることができる他、合成もしくは生体より抽出した血小板活性化因子、プラスマローゲン、その他の1−O−アルキルリゾリン脂質を、ホスホリパーゼDやホスホリパーゼA2で酵素処理する方法、あるいは米国特許第5238965号明細書に示された、市販の1−O−アルキル−グリセロールをピリジン溶媒中でオキシ塩化リンと化学反応させる方法により得ることができる。
式(1)のXが式(3)であるLPA誘導体は、通常、1−アシル−グリセロホスフェート誘導体または1−O−アルキル−グリセロホスフェート誘導体とも呼ばれる物質であり、そのアシル基またはアルキル基は、水酸基、シクロアルカン環もしくは芳香環を含んでいても良い。
このようなLPA誘導体において、アシル基またはアルキル基が水酸基を含む場合の具体例としては、例えば、2−ハイドロキシデカン酸(C10:0)、2−ハイドロキシドデカン酸(C12:0)、2−ハイドロキシテトラデカン酸(C14:0)、2−ハイドロキシヘキサデカン酸(C16:0)、2−ハイドロキシオクタデカン酸(C18:0)、2−ハイドロキシイコ酸(C20:0)、メチル2−ハイドロキシデカン酸(C11:0)、メチル2−ハイドロキシドデカン酸(C13:0)、メチル2−ハイドロキシテトラデカン酸(C15:0)、メチル2−ハイドロキシヘキサデカン酸(C17:0)、メチル2−ハイドロキシオクタデカン酸(C19:0)、メチル2−ハイドロキシイコ酸(C21:0)等が挙げられ、入手のしやすさなどの点から、2−ハイドロキシドデカン酸(C12:0)、2−ハイドロキシテトラデカン酸(C14:0)、2−ハイドロキシヘキサデカン酸(C16:0)、2−ハイドロキシオクタデカン酸(C18:0)が最も好ましく挙げられる。含むことができるシクロアルカン環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環を例示することができる。
式(1)のXが式(3)であるLPA誘導体の入手方法は特に限定されない。例えば、1−アシル−グリセロホスフェート誘導体の場合、市販品を用いることができる他、市販のホスファチジルコリンやホスファチジン酸等のリン脂質を酵素処理する方法や、種々の生物資源を原料とし、抽出等の処理により得ることができる。
また、1−O−アルキル−グリセロホスフェート誘導体の場合、市販品を用いることができる他、合成もしくは生体より抽出した血小板活性化因子、プラスマローゲンあるいはその他の1−O−アルキルリゾリン脂質をホスホリパーゼDやホスホリパーゼA2で酵素処理して得ることもできる。
上記LPA誘導体のうち、水酸基を有するLPA誘導体は、特開平8−92048号公報に開示されるような水酸化処理を利用して容易に得ることができる。一方、シクロプロパン環を有するLAP誘導体は、Tetrahedron Letters., 34, 4047頁,1993年等に記載される合成方法に従って得ることができる。
本発明において、トランスグルタミナーゼ遺伝子発現とは、生きた細胞においてDNAの当該酵素に関する遺伝情報が、mRNAに転写されることをいう。トランスグルタミナーゼ遺伝子発現の評価、確認は、細胞からmRNAをIsogen等の抽出用溶液を用いてRNAの分解を抑制しながら抽出し、得られたRNAをノーザンブロットやリアルタイムPCR等の生化学的な方法により行うことができる。
本発明において、トランスグルタミナーゼ活性とは、遺伝情報を担うDNAから転写されたmRNAが小胞体において酵素タンパク質に翻訳され、更に当該タンパク質が活性を示すことをいう。トランスグルタミナーゼ活性の増強評価は、トランスグルタミナーゼの基質となるビオチン標識カダベリンやダンシルカダベリン等の合成基質が反応生成物である架橋重合体へ取り込まれた量を定量することにより行うことができる。
本発明において、コーニファイドエンベロップの形成とは、トランスグルタミナーゼにより細胞内の基質が細胞膜直下に架橋集積されることをいう。コーニファイドエンベロップの形成促進の評価は、例えば、表皮角化細胞によるビオチン標識カダベリンの取り込みをFITC化アビジンにより標識し,蛍光顕微鏡で蛍光物質の集積を観察することにより行うことができる。
本発明において、角層バリア強化とは、角質細胞のコーニファイドエンベロップの架橋が十分になされることをいう。角層バリア強化の評価は、コーニファイドエンベロップの形成を顕微鏡観察で調べることや皮膚の経表皮水分喪失量の低下を水分蒸散量の計測により調べることにより行うことができる。
本発明において、トランスグルタミナーゼ活性増強剤、コーニファイドエンベロップ形成促進剤及び角層バリア強化剤は、上述のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含む。
前記トランスグルタミナーゼ遺伝子発現の促進、活性の増強およびコーニファイドエンベロップ形成促進による角層バリア強化の対象となる細胞やその生体組織としては、例えば、皮膚や粘膜等の外皮、胃、食道、腸等の消化器、血管や心臓等の循環器、気管や肺等の呼吸器が挙げられる。また、口腔、食道、鼻粘膜の上皮細胞に対してもトランスグルタミナーゼ活性発現を増強させることができる。
本発明のトランスグルタミナーゼ活性増強剤、コーニファイドエンベロップ形成促進剤及び角層バリア強化剤は、経口的もしくは非経口的に投与することができる。その剤形としては、例えば、液剤、ドリンク剤、散剤、顆粒剤、注射剤、点滴剤、点眼剤、点鼻薬、吸入剤、座剤、イオン導入剤のいずれであっても良いが、局所適用が可能であるとの理由から、注射剤、点眼剤、点鼻剤あるいはイオン導入剤が好ましい。
本発明のトランスグルタミナーゼ活性増強剤、コーニファイドエンベロップ形成促進剤及び角層バリア強化剤の製剤化は、例えば、有効成分である式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体と、公知の薬理的に許容される担体、賦形剤、崩壊剤、増量剤、希釈剤、可溶化剤等とを用いて、公知の方法によって行うことができる。この際、式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体の含有率は、通常0.01〜30質量%の範囲、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは1〜5質量%の範囲である。
本発明のトランスグルタミナーゼ活性増強剤、コーニファイドエンベロップ形成促進剤及び角層バリア強化剤の投与量は、いずれの場合も、投与対象投与経路、症状等によっても著しく異なるが、経口的に投与する場合、式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体として、通常1〜1000mg/Kg体重を1日1〜3回程度である。また、非経口的に投与する場合は、例えば、皮内注では式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体として約0.01〜100mg/Kg体重を1日1回程度、1週間に1〜7回繰り返して投与することが好ましい。
本発明のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現の促進、活性の増強およびコーニファイドエンベロップ形成促進による角層バリア強化剤は、上皮系細胞のバリアに寄与するコーニファイドエンベロップ形成促進剤等の目的を達成するための医薬品として用いることができる他、その働きを利用した特殊な使用方法として、細胞試験のための試験試薬や美容目的の薬剤として用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
尚、例中の31P-NMRの測定は、日本電子社製JNM AL-400、溶媒:重クロロホルム−重メタノール−重水(2:5:2 V/V/V)を用い、温度25℃の条件で行った。
合成例1
C18:1−リゾホスファチジルコリン(LPC、AVANTI POLAR LIPIDS社製)10gに水250gを加え十分に溶解させた。pH5.5の酢酸ナトリウム緩衝液1Mを100g、2M塩化ナトリウム10ml、ホスホリパーゼD(PL−D、名糖産業社製)100mgを添加し、55℃で加温した。18時間後にクロロホルム650gとメタノール700gを添加し、激しく混合した。クロロホルム650gを加えて混合後、静置して下層を回収し溶媒を55℃で留去し、1−オレオイル−環状ホスファチジン酸誘導体(以下、C18:1−cPAと略す)(式(1)中のRがC18H33O-であり、Xが式(2)で示される基である化合物)を得た。
得られた化合物は、31P−NMRによりリン酸環状構造を有し、開環したLPAや原料のLPCを含有しないことを確認した。結果を図1に示す。
合成例2
C18:1−リゾホスファチジルコリンの代わりに、大豆リゾリン脂質(SLP−ペーストリゾ、辻製油社製:アシル鎖の組成は、C16:0が21.8%、C18:0が3.9%、C18:1が10.4%、C18:2が58.3%、C18:3が5.6%である)10gを用いた以外合成例1と同様にして1−アシル−環状ホスファチジン酸誘導体(以下、大豆cPAと略す)(式(1)中のRが構成脂肪酸残基に由来し、Xが式(2)で示される基である化合物)を調製した。
得られた化合物は、31P−NMRによりリン酸環状構造を有し、開環したLPAや原料のLPCをほとんど含有しないことを確認した。結果を図2に示す。
合成例3
C18:1−リゾホスファチジルコリンの代わりに、C10:0−リゾホスファチジルコリン(LPC、AVANTI POLAR LIPIDS社製)を用いた以外合成例1と同様にしてC10:1−cPA(式(1)中のRがC10H19O-であり、Xが式(2)で示される基である化合物)を得た。得られた化合物は、31P−NMRによりリン酸環状構造を有し、開環したLPAや原料のLPCを含有しないことを確認した。
合成例4
C18:1−リゾホスファチジルコリンの代わりに、C16:0−リゾホスファチジルコリン(LPC、AVANTI POLAR LIPIDS社製)を用いた以外合成例1と同様にしてC16:0−cPA(式(1)中のRがC16H28O-であり、Xが式(2)で示される基である化合物)を得た。得られた化合物は、31P−NMRによりリン酸環状構造を有し、開環したLPAや原料のLPCを含有しないことを確認した。
合成例5
C18:1−リゾホスファチジルコリンの代わりに、C6:0−リゾホスファチジルコリン(LPC、AVANTI POLAR LIPIDS社製)を用いた以外合成例1と同様にしてC6:0−cPA(式(1)中のRがC6H11O-であり、Xが式(2)で示される基である化合物)を得た。得られた化合物は、31P−NMRによりリン酸環状構造を有し、開環したLPAや原料のLPCをほとんど含有しないことを確認した。
トランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進試験
実施例1
(1−1)細胞培養
正常ヒト表皮角化細胞として、新生児包皮角化細胞(商品名「凍結NHEK(F)」(NHEK細胞と略す)、クラボウ(株)製)を準備した。NHEK細胞を、ウシ脳下垂体抽出液0.4質量%、インスリン10μg/mL、ヒト組換え型上皮成長因子0.1ng/mL、ハイドロコーチゾン0.5μg/mLを含有するHuMedia−KG2培地(クラボウ社製)を用いて継代培養した。
(1−2)遺伝子発現促進評価
培養用ディシュ6cm(ファルコン社製)に、NHEK細胞を懸濁したHuMedia−KG2を4mL加え、37℃で3日間培養を行った。その後培地を無血清のDMEM−F12(1:1)4mLで置換し、更に1日間培養を継続した。
次いで、合成例1で合成したC18:1−cPA 20μMを添加し、37℃で培養を行い0、4及び8時間目に培地を吸引除去し、Isogen(ニッポンジーン社製)を用いて、細胞を溶解して全RNAを回収した。得られたRNAを1×TAE緩衝液で0.2〜20μg/μLとなるように希釈後、One Step SYBR RT−PCR Kit(TAKARA社製)を用いてリアルタイムRT-PCRを実施した。
β−アクチンのプライマー配列として、5’-GGCCACGGCTGCTTC-3’および5’-TGGGATTTCCATTGATGACAAG-3’を用い、トランスグルタミナーゼのプライマーとして、5’-TCTTCAAGAACCCCCTTCCC-3’および5’-TCTGTAACCCAGAGCCTTCGA-3’を用いた。DNA Engine Opticon System(MJ Research社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。反応条件は、逆転写:42℃、15分、変性:95℃、5秒、アニーリング:60℃、20秒、鎖長延長:72℃、15秒とし、これを45回反復した。ハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンの発現強度に対するトランスグルタミナーゼの相対発現強度を求めた。結果を図3に示す。また、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果の評価結果を表1に示す。
図3より、角化細胞にホスファチジン酸誘導体環状エステルを付与すると、短時間にトランスグルタミナーゼ遺伝子の発現が引き起こされ、8時間後に30倍近くに達することがわかった。
実施例2
ホスファチジン酸誘導体として、合成例3で合成したC10:0−cPAを用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
ホスファチジン酸誘導体として、合成例4で合成したC16:0−cPAを用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4
ホスファチジン酸誘導体として、合成例2で合成した大豆cPAを用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例5
ホスファチジン酸誘導体として、市販のC18:1のLPA(Sigma社製)(式(1)中のRがC18H33O-であり、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6
ホスファチジン酸誘導体として、市販のC10:0のLPA(AVANTI POLAR LIPIDS社製)(式(1)中のRがC10H19O-であり、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例7
ホスファチジン酸誘導体として、市販のC16:0のLPA(Sigma社製)(式(1)中のRがC16H28O-であり、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
実施例8
ホスファチジン酸誘導体として、市販の大豆リン脂質由来のリゾホスファチジン酸(大豆LPA、Sigma社製)(式(1)中のRが構成脂肪酸残基に由来し、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
比較例1
ホスファチジン酸誘導体として、市販の大豆リン脂質由来のホスファチジン酸(大豆PA、Sigma社製)を用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
比較例2
ホスファチジン酸誘導体として、合成例5で合成したC6:0−cPAを用いた以外実施例1と同様に、被験物質添加から全RNA回収までの培養時間が8時間の場合のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現増強効果について評価を行った。結果を表1に示す。
トランスグルタミナーゼ活性増強試験
実施例9
ホスファチジン酸誘導体として、合成例1で合成した18:1−cPAを用いた。
トランスグルタミナーゼ活性の評価
(2−1)細胞培養
正常ヒト表皮角化細胞5.0×105cells/バイアルを解凍後、HuMedia KGに(KK−6150、10μg/mLインスリン、0.5μg/mLハイドロコーチゾン、0.1ng/mL hrEGF、0.4%BPE(Bovine Pituitary Extract)含有)を培地として用いて10cmディシュ1枚に播種後、10日間継代培養を行った。継代操作は、培養5、7日目に添付手順書に準じて実施した。すなわち、PBS(−)で細胞を洗浄後、0.25%トリプシン−0.02%EDTA液2mLを添加し、1分後に吸引除去して更に6分間37℃でインキュベートした。トリプシンインヒビター(Kurabo社製)液2mLを添加し、4℃、800rpmで5分間遠心し細胞を回収した。回収した細胞を10mLのHuMedia KGに再懸濁後10cmディシュに播種した。
10日目に全細胞を200mLのHuMediaKGに懸濁後、35mmディシュに2mLずつ播種した。その後、2日目に同様の培地で培地交換を行い、培養4日目に無血清のDMEM−F12(1:1)に置換し、翌日に最終濃度が25μMとなるようC18:1−cPAを添加した。添加後24、48時間目に培養液を吸引除去し細胞層を測定まで−80℃で保管した。
(2−2)酵素活性の測定
各ディシュを室温に戻した後、氷上で抽出用緩衝液(10mMトリス塩酸緩衝液:pH7.4、1mM EDTA、1%Triton X−100、50μg/mL PMSF)を20μLずつ添加し、セルスクレーパーで掻き取りながら細胞を回収した。抽出用緩衝液に穏やかに懸濁した後、5000rpmで10分間冷却遠心し、上清を回収して粗酵素液とした。
抽出用緩衝液で必要に応じて希釈した粗酵素液30μLに同量の反応液(100mlMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)、20mMCaCl2、10mM DTT、10mg/mLジメチルカゼイン、200μMダンシル−カダベリン(Sigma社製))を添加し、37℃で10分から60分間静置した。60μLの2mMヨードアセトアミドを添加し氷冷して反応を停止させた後、200μLのBioMag Dextran−coated Charcoal(Polysciences社製)を添加し、室温で60分間十分に振盪させた。マグネットプレート上に10分間静置した後、蛍光プレートリーダー(BioTEK FLx800:励起光340nm、蛍光535nm)で測定した。
(2−3)タンパク質量の測定
Lowry法の改良法として、RCDCプロテインアッセイキット(Bio−radプロテインアッセイ)を用いてBSAを標準物質として粗酵素液のタンパク質を定量した。本改良法では、被験液に界面活性剤や還元物質が共存してもタンパク質の定量が可能である。
即ち、標準液や粗酵素液(適宜希釈)25μLにRC−I試薬を125μL添加し、十分攪拌の後1分間静置した。ここにRC−II試薬を125μL添加し攪拌した。15000rpmで5分間遠心して沈殿を回収し、予め調製したA'試薬(A試薬1mlにS試薬20μL添加して調製した)127μLを添加し、沈殿を十分溶解させた。更に、B試薬を1ml添加し室温で15分間以上静置した後、200μLずつ分取し、マイクロプレートリーダを用いて750nmの吸光度を測定した。粗酵素液中のタンパク質濃度をBSA濃度として求めた。
(2−4)相対活性値の算出
最終的にトランスグルタミナーゼ酵素の比活性(AIU)を単位時間・タンパク質当たりの蛍光値の増大分として、下記式に従って算出し、活性の単位タンパク質の比活性に換算後、さらに以下の参考例に示す無添加対照群の比活性に対する相対活性値を求めた。結果を表2に示す。
AIU=(Fi−Fb)/Fr−Fs
式中、Fi;60分間のインキューベッション後の蛍光値、Fb;インキュベーション前の蛍光値、Fr;1μMダンシル−カダベリンの蛍光値、Fs;溶媒の蛍光値を示す。
実施例10
ホスファチジン酸誘導体として、合成例2で合成した大豆cPAを用いた以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
実施例11
ホスファチジン酸誘導体として、合成例3で合成したC10:0−cPAを用いた以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
実施例12
ホスファチジン酸誘導体として、市販のC18:1のLPA(Sigma社製)(式(1)中のRがC18H33O-であり、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
実施例13
ホスファチジン酸誘導体として、市販の大豆リン脂質由来のリゾホスファチジン酸(大豆LPA、Sigma社製)(式(1)中のRが構成脂肪酸残基に由来し、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
実施例14
ホスファチジン酸誘導体として、市販のC10:0のLPA(AVANTI POLAR LIPIDS社製)(式(1)中のRがC10H19O-であり、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
比較例4
ホスファチジン酸誘導体として、合成例5で合成したC6:0−cPAを用いた以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
参考例1
ホスファチジン酸誘導体を用いなかった以外、実施例9と同様にしてトランスグルタミナーゼ活性増強効果について評価を行った。結果を表2に示す。
コーニファイドエンベロップ形成促進試験
実施例15
ホスファチジン酸誘導体として、合成例1で合成したC18:1−cPAを用いた。
コーニファイドエンベロップ形成評価
(3−1)細胞培養
正常ヒト表皮角化細胞5.0×105 cells/バイアル)を解凍後、HuMedia KGに(KK−6150、10μg/mLインスリン、0.5μg/mLハイドロコーチゾン、0.1ng/mL hrEGF、0.4%BPE含有)を培地として用いて10cmディシュに播種後、10日間継代培養を行った。継代操作は、培養5、7日目に添付手順書に準じて実施した。すなわち、PBS(−)で細胞を洗浄後、0.25%トリプシン−0.02%EDTA液2mLを添加し、1分後に吸引除去して更に6分間37℃でインキュベートした。1×トリプシンインヒビター(Kurabo社製)液2mLを添加し、4℃、800rpmで5分間遠心し細胞を回収した。回収した細胞を10mLのHuMedia KGに再懸濁後10cmディシュに播種した。
(3−2)コーニファイドエンベロップの染色
10日目に全細胞を200mLのHuMediaKGに懸濁後、カバーガラスを挿入した24ウェルディシュに0.5mLずつ播種した。その後、2日目に同様の培地で培地交換を行い、培養4日目に無血清のDMEM−F12(1:1)に置換し、翌日に最終濃度が20μMとなるようC18:1−cPAを添加した。添加後48時間目に培養液に最終濃度4mMのビオチン化カダベリンを添加し、6時間培養を行った。培地を吸引除去後4%パラフォルムアルデヒドで10分間細胞を固定した。固定中に1%Triton X−100を加え、細胞膜を処理した。ブロックエース(雪印牛乳社製)でブロッキング後、0.1mg/ml FITC−ストレプトアビジン(Sigma社製)で染色した。蛍光顕微鏡で蛍光染色像を観察した。蛍光染色像の写しを図4に示す。
実施例16
ホスファチジン酸誘導体として、市販のC18:1のLPA(Sigma社製)(式(1)中のRがC18H33O-であり、Xが式(3)で示される基である化合物)を用いた以外、実施例15と同様にしてコーニファイドエンベロップの染色を行った。蛍光染色像の写しを図4に示す。
参考例2
無添加対照としてホスファチジン酸誘導体を全く添加せずに培養を行った以外実施例15と同様にコーニファイドエンベロップの染色を行った。蛍光染色像の写しを図4に示す。
以上の結果から、本発明に用いるホスファチジン酸誘導体は、細胞によるトランスグルタミナーゼの遺伝子発現を促進し、当該酵素活性が増強することがわかった。また、本発明に用いるホスファチジン酸誘導体は、コーニファイドエンベロップ形成を促進し、皮膚においては角層バリアを増強することがわかった。
合成例1で合成したC18:1−cPAの31P−NMRを示すチャートである。 合成例2で合成した大豆cPAの31P−NMRを示すチャートである。 実施例1におけるトランスグルタミナーゼの相対的発現量を示すチャートである。 実施例15、16及び参考例2で行った角化細胞のコーニファイドエンベロップ形成を蛍光顕微鏡で観察した蛍光染色像の写しである。

Claims (4)

  1. 式(1)で表されるホスファチジン酸誘導体を有効成分とするトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤。
    (式中Rは、炭素数8〜22のアルキル基または炭素数8〜22のアシル基を示す。Xは、式(2)または式(3)で表される基を示す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換アンモニウム基または無置換アンモニウム基を表す。)
  2. 請求項1記載のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含むトランスグルタミナーゼ活性増強剤。
  3. 請求項1記載のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含むコーニファイドエンベロップ形成促進剤。
  4. 請求項1記載のトランスグルタミナーゼ遺伝子発現促進剤を含む角層バリア強化剤。
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