JP2009233766A - 水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法 - Google Patents

水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法 Download PDF

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晃 細川
Taizo Sera
泰三 瀬良
Masahiro Shinohara
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Abstract

【課題】苛酷な高温環境下で用いられる複雑構造の水冷構造物表面の硬質保護皮膜を完全に剥離除去することができる皮膜除去方法を提案することにある。
【解決手段】高温の排ガスやダストが発生する雰囲気中において用いられる水冷式メンブレン構造物のその表面に被覆されている硬質皮膜の除去に当たり、この水冷式メンブレン構造物に対し、まず、スチールグリットにてブラスト処理し、次いで、非ブラスト個所をグラインダー掛け処理し、その後ふたたび仕上げのグリットブラスト処理を行う硬質皮膜除去方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法に関し、とくに、高温の排ガスやダストが発生する雰囲気中において用いられる鋼製の水冷構造物、例えば、製鋼工場の転炉排ガス冷却設備の構造物表面に、この構造物表面の摩耗や腐食を防ぐために施されている硬質の保護皮膜を、除去する方法に関する。
従来、転炉排ガス冷却設備のフードやスカート等は、高温の排ガスやダストが発生する雰囲気に曝されているため、摩耗や腐食が激しい構造物である。そのため、これら構造物の表面には、この部分を保護するために、金属(合金)、例えば、Ni基自溶合金材料や窒化物や酸化物等のセラミックス材料などの硬質材料を溶射することにより、保護皮膜を形成している。
上記の自溶合金溶射皮膜などは非常に硬くかつ高い耐食性を有するため、摩耗や腐食に対しては有効である。しかしながら、これらの保護皮膜が施されている構造物は、使用環境が高温であり、しかも構造物自体が水冷されていることに加え、操業の有無によって加熱と冷却とが激しく繰り返されるため、素材の靭性が低いことも災いして、膨張・収縮による亀裂が発生し易い部位である。しかも、溶射皮膜自体、構造上、部分的な補修をすることができないため、補修に当たっては、一度、その溶射皮膜を完全に除去し、基材部分を露出させた後で再度、全面溶射を行う必要がある。しかし、上述したとおり、自溶合金溶射皮膜は、非常に硬いため、通常のグラインダー処理のみでは、皮膜を完全に除去することはできない。
一般に、鋼基材表面に被覆した保護皮膜を除去する方法としては、上述したグラインダー処理に代え、化学的処理によって除去する方法、あるいは機械的な処理によって除去する2つの方法が実施されている。
例えば、前者の方法としては、Al系溶射皮膜の除去に当たり、この皮膜表面にアルカリ水溶液を塗布し、Alを剥離し易いアルミン酸塩に変えて除去する方法(特許文献1)、あるいは皮膜に対し、酸またはその前駆物質を含む水性組成物を塗布して、該皮膜を選択的に除去する方法(特許文献2)などの提案がある。
また、後者の方法として、特許文献3は、自動車用バンパーの表面にブラスト材を吹き付けることによって、バンパー表面の皮膜を除去する方法が提案されている。
特開昭59−50182号公報 特開2002−53985号公報 特開2002−68040号公報
転炉排ガス冷却設備のフードボイラーやスカートなどに用いられている水冷式メンブレン構造物には、上述したように、耐摩耗、耐腐食対策として、Ni基自溶合金の溶射皮膜が被覆されている。その理由は、自溶合金溶射皮膜は、硬度が高くかつ耐摩耗性と耐剥離性に優れているからである。この点、特許文献1に記載のアルカリ水溶液塗布による皮膜除去方法は、Al基溶射皮膜に限定されるため、Ni基自溶合金皮膜の除去には不向きである。しかも、アルカリ水溶液などの有機溶剤の使用や、特許文献2に記載の酸の使用は、環境汚染や作業環境の悪化、作業者の安全確保などの面で問題があった。
また、特許文献3に記載のブラスト材吹き付けによる皮膜除去は、自動車用バンパーに施されるメッキ皮膜、溶射皮膜、塗装皮膜を対象としており、Ni基自溶合金の溶射皮膜のような高硬度で剥離し難い皮膜の完全な除去には不向きであるという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、苛酷な高温環境下で用いられる複雑構造の水冷構造物表面の硬質保護皮膜を完全に剥離除去することができる皮膜除去方法を提案することにある。
従来技術が抱えている上述した問題点を解決することができ、上記目的の実現に有効な解決手段として、発明者らは、下記の要旨構成に係る硬質皮膜除去方法を開発した。即ち、本発明は、高温の排ガスやダスト発生雰囲気中において用いられる水冷式メンブレン構造物のその表面に被覆されている耐熱性・耐摩耗性の硬質皮膜の除去に当たり、この水冷式メンブレン構造物に対し、まず、スチールグリットにてブラスト処理し、次いで、非ブラスト個所をグラインダー掛け処理し、その後ふたたび仕上げのグリットブラスト処理を行うことを特徴とする水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法である。
また、本発明では、
(1)前記水冷式メンブレン構造物が、転炉の排ガス冷却設備のスカートおよびフードボイラーであること、
(2)前記非ブラスト個所が水管とフィンとからなるメンブレン構造物の該水管とフィンとの接続部分であること、
(3)前記グリットブラスト処理は、合成樹脂グリット、アルミナグリットもしくはスチールグリットのいずれか1種以上のグリットを用いて行うこと、
を採用することが、より有効な解決手段である。
本発明によれば、高温環境下にあって、冷熱サイクルを受ける苛酷な状態で用いられる転炉排ガス冷却設備の水冷構造物、とくに、水冷式メンブレン構造物表面に形成した硬質皮膜を確実に、しかも短時間で除去することができる。また、本発明によれば、皮膜を確実にしかもきれいに除去できるのみならず皮膜直下の基材表面部分まできれいに除去し、新生面を露出形成できるので、皮膜の再生が容易で設備の寿命の向上に寄与する。
図1は、高温の排ガスやダストが発生する雰囲気中で用いられる鋼製の水冷構造物の例として、転炉の排ガス冷却設備のうちのフード2、スカート3部分の概略図を示すものである。
前記転炉1のフード2下には、転炉1の傾動に合わせて昇降するスカート3が配設してあり、このスカート3は、図2に示すように、上下に給水ヘッダー4a、排水ヘッダー4bを備えたメンブレン構造の2重管構造からなるものである。
そして、このスカート3は、図3に示すように、フィン5つき鉄鋼製冷却チューブ6を、その外側内側に突設したフィン5どうしで突き合わせ溶接接合してメンブレン構造にしたものであって、とくに、炉内側に当たる面の外周面には耐熱性・耐摩耗性の硬質皮膜、例えば100〜1000μm程度の膜厚で溶射皮膜してなるNi基自溶合金溶射皮膜7が被覆してある。
すなわち、該スカート3表面には、図3に示すように、鉄鋼製冷却チューブ6およびフィン5の表面には、Cr、Fe、Cu、Mo、Si、BおよびCを含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる合金粉末(例えば、0.01〜14mass%のCr、5mass%以下のFe、4mass%以下のCu、4mass%以下のMo、1.5〜5mass%のSi、1〜4.5mass%のB、1mass%以下のCo、0.01〜0.8mass%のC、残部がNiと不可避的不純物からなる粒子)を、必要に応じて金属のアンダーコート層を介して、溶射被覆形成して保護している。なお、この場合の溶射法としては、フレーム式溶射法や高速フレーム溶射法あるいはプラズマ溶射法を適用することができる。
しかしながら、転炉操業中の前記スカート3は、高温の排ガスやダスト発生雰囲気下で急な冷熱サイクルに曝されることに加え、高温の金属ダストが衝突する環境になるため、エロージョン摩耗や高温腐食および熱疲労による破壊が発生しやすい部分である。その結果、該スカート3表面の前記溶射皮膜は、部分的な剥離や全体摩耗による損傷が激しく、やがて保護皮膜としての作用効果が劣化するという問題があり、定期的な補修が必要であった。
そこで、本発明では、前記保護皮膜の補修に先立ち、従来のグラインダー掛けや化学溶剤による溶解、ブラストによる剥離処理に代え、メンブレン構造物特有の複雑形状に合わせ、その表面の硬質皮膜を除去する方法として、グリットブラスト処理とグラインダー掛け処理との好適な組み合わせ処理を開発し、従来技術の問題点を解消できる除去方法を提案する。
本発明方法の特徴は、転炉フード2からスケート3を取外し、そのスカート3表面の、自溶合金溶射皮膜7被覆面に対し、始めに、10μ〜2mmφの大きさのスチールグリットを吹き付ける直圧式エアーブラスト機等によってブラスト処理を行う。
このような直圧式エアーブラスト機による処理では、好ましくは該スカート3を粉塵回収設備を備えるブラスト室内で、G100スチールグリットを圧縮空気と共にエヤー吐出(投射長さ250〜350mm)させて、短時間のうちに剥離する。
次に、水管である鉄鋼製水冷チューブ6とフィン5との繋ぎ部分で観察される非ブラスト個所、すなわち皮膜剥離が不十分な部分について、サンダー研削によるグラインダー掛け処理を行い、この部分の皮膜をもきれいに除去し、清浄度ISO Sa:2以上の基材表面を露出させる。
その後、再び、仕上げグリットブラスト処理を行う。この仕上げグリットブラスト処理では、吐出圧力:0.9〜1.0Mpaの圧力で上述したスチールグリットだけでなく、合成樹脂グリット(≧10μmφ)やアルミナグリット(≧30μmφ)の1種以上を必要に応じて使用し、上記清浄表面を露出させる。その後、皮膜計測して除去されたことを確認し、そして防錆油を塗布し、図4に示すような水冷エンブレム構造物からなる転炉のスカート3を得ることができる。
このようにして水冷メンブレン構造物の表面に、溶射皮膜の全くない新生面を露出させることができるが、このとき、本発明法によれば、該溶射皮膜の完全な除去のみならず、その皮膜直下の基材表面に生成した酸化物層や冶金結合している部分をも同時に除去することができる。その結果、新らたに形成する補修溶射皮膜7は、前以上に性状の良好なものになる。
上述した本発明に係る除去方法、即ち、JIS Z0311に規定された高炭素鋼ブリット(マルテングリットMGH100)2000kgをブラスト処理(直圧式エアーブラスト機)することにより、スカート3の炉内側表面に被覆してある0.5mm厚のNi基自溶合金溶射皮膜を完全にかつ短期間で剥離除去する処理を行った。即ち、水冷メンブレンパネルからなる転炉排ガス設備のスカートの表面に被覆された18mのNi基自溶合金溶射皮膜(JIS H8303、SFNi1〜4種相当)を、上記ブラストマシンを使うと4.5日(6H/m)で完全に除去することができた。これを、仮にグラインダーで実施すると、約12H/mもの時間(実績ベース)が必要である。
本発明に係る皮膜除去技術は、単に転炉の排ガス冷却設備のフードボイラーやスカートだけに限らず、高温環境で使用される水冷メンブレン構造を有する他の構造物への皮膜除去と表面清浄化を目指す場合にも有効である。
転炉排ガス冷却設備の略線図である。 排ガス冷却設備のスカートの部分斜視図である。 スカートの皮膜剥離前の部分断面図である。 スカートの皮膜剥離後の部分断面図である。
符号の説明
1 転炉
2 フード
3 スカート
5 フィン
6 冷却チューブ
7 硬質溶射皮膜

Claims (4)

  1. 高温の排ガスやダスト発生雰囲気中において用いられる水冷式メンブレン構造物のその表面に被覆されている耐熱性・耐摩耗性の硬質皮膜の除去に当たり、この水冷式メンブレン構造物に対し、まず、スチールグリットにてブラスト処理し、次いで、非ブラスト個所をグラインダー掛け処理し、その後ふたたび仕上げのグリットブラスト処理を行うことを特徴とする水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法。
  2. 前記水冷式メンブレン構造物が、転炉の排ガス冷却設備のスカートおよびフードボイラーであることを特徴とする請求項1に記載の水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法。
  3. 前記非ブラスト個所が水管とフィンとからなるメンブレン構造物の該水管とフィンとの接続部分であることを特徴とする請求項1または2に記載の水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法。
  4. 前記グリットブラスト処理は、合成樹脂グリット、アルミナグリットもしくはスチールグリットのいずれか1種以上のグリットを用いて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の水冷式メンブレン構造物の硬質皮膜除去方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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