JP2009229593A - フォトマスク補修用インキ組成物及びフォトマスク補修方法 - Google Patents

フォトマスク補修用インキ組成物及びフォトマスク補修方法 Download PDF

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Eiko Saegusa
栄子 三枝
Masahiro Izumoto
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Abstract

【課題】微細なパターンを有するフォトマスクを簡便にかつ効率良く補修できるインキ組成物を提供する。
【解決手段】金属コロイド粒子、この金属コロイド粒子の分散媒及び有機金属化合物を含むフォトマスク補修用インキ組成物において、前記金属コロイド粒子を、金属ナノ粒子(A)とこの金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)とで構成し、かつ前記保護コロイド(B)が、アミン類(B1)とカルボン酸類(B2)とで構成する。前記金属ナノ粒子(A)を構成する金属は銀単体であり、金属ナノ粒子(A)の平均粒子径は1〜10nmであってもよい。このインキ組成物をフォトマスク欠陥部に滴下し、加熱して焼成処理すると、有効にフォトマスクの補修できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、フォトマスクに発生したパターン欠陥を補修するための補修用インキ組成物及びそのインキ組成物を用いたフォトマスク補修方法に関する。
半導体素子やディスプレイパネル素子などの電子デバイスの製造に用いられるフォトマスクは、ガラスなどの透明基板の上に、金属で構成された光遮蔽膜がパターン状に形成されたマスクであり、クロム被膜を形成したクロムマスク、銀塩乳剤を用いたエマルジョンマスク、フィルムマスクなどが利用されている。このようなフォトマスクは、パターンに欠陥が発生することがあり、例えば、クロムマスクでは主に製造工程でクロム被膜が欠損する欠陥、いわゆる白欠陥が発生し易く、エマルジョンマスクでは、被膜が柔らかいため、使用時において傷ついて欠陥が発生し易い。このような欠陥は、デバイスの性能に影響するため、欠陥が発生した場合には、補修が必要となる。
補修方法としては、クロム、金、銀、銅、アルミニウムなどをスパッタリングで欠損部を埋める方法が利用されているが、簡便性や経済性が低い。そこで、スパッタリングの代替として、金ナノ粒子の分散液を滴下し、レーザーを照射して焼成する方法が提案されている。
例えば、特開2002−72449号公報(特許文献1)には、フォトマスクに形成された金属被膜の欠損部に補修液を滴下させるとともに、前記欠損部に滴下された補修液に対向して金属板を配置し、この金属板にレーザー光を照射して前記補修液を焼成する金属被膜欠陥修正方法が開示されている。この方法では、被膜のガラスへの接着を強固にするために、金属板を利用して焼成温度を上昇させている。しかし、この方法では、金属ナノ粒子を安定に分散できないため、金属ナノ粒子を高濃度とすることができず、レーザー光のエネルギーを有効に熱エネルギーに変換できない。従って、金属板を用いる必要があり、簡便性に欠ける。
特開2002−72449号公報(請求項1、段落番号[0002]〜[0005]、[0018])
従って、本発明の目的は、微細なパターンを有するフォトマスクを簡便にかつ効率良く補修できるインキ組成物及びこのインキ組成物を用いたフォトマスクの補修方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、安価に補修でき、ピンホールの発生などなく、補修後の安定性も高いフォトマスク補修用インキ組成物及びこのインキ組成物を用いたフォトマスクの補修方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の保護コロイドで被覆された金属コロイド粒子及び有機金属化合物を含む分散液を用いると、微細なパターンを有するフォトマスクを簡便にかつ効率良く補修できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のフォトマスク補修用インキ組成物は、金属コロイド粒子、この金属コロイド粒子の分散媒及び有機金属化合物を含むインキ組成物であって、前記金属コロイド粒子が、金属ナノ粒子(A)とこの金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)とで構成され、かつ前記保護コロイド(B)が、アミン類(B1)とカルボン酸類(B2)とで構成されている。前記金属ナノ粒子(A)を構成する金属は銀単体であり、金属ナノ粒子(A)の平均粒子径は1〜10nm程度であってもよい。前記金属ナノ粒子(A)の濃度は、例えば、金属の質量換算で1〜60質量%程度である。前記アミン類(B1)はアルキルアミン類であり、カルボン酸類(B2)は炭素数4以上の脂肪族モノカルボン酸であってもよい。前記有機金属化合物は、スズ、ニッケル、鉄、チタン、コバルト、アルミニウム、インジウム及び銅からなる群から選択された少なくとも一種の金属を含有する有機金属化合物であってもよい。前記有機金属化合物の割合は、金属コロイド粒子を構成する金属に対して、金属原子換算で、0.01〜55%程度である。
本発明には、前記フォトマスク補修用インキ組成物をフォトマスク欠陥部に滴下し、加熱して焼成処理するフォトマスクの補修方法も含まれる。
本発明のフォトマスク補修用インキ組成物は、高濃度で金属ナノ粒子を安定して分散しているため、レーザーの照射などにより容易に均一で強固な膜を形成できる。すなわち、本発明では、微細なパターンを有するフォトマスクを簡便にかつ効率良く補修できる。さらに、銀など、金に比べて安価な金属も利用できるため、安価に補修でき、ピンホールの発生などなく、補修後の安定性も高い。
[フォトマスク補修用インキ組成物]
本発明のフォトマスク補修用インキ組成物は、金属コロイド粒子、この金属コロイド粒子の分散媒及び有機金属化合物を含む。
(金属コロイド粒子)
金属コロイド粒子は、金属ナノ粒子(A)と、この金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)で被覆された金属コロイド粒子であって、前記保護コロイド(B)が、特定の化合物の組み合わせで構成されている。
(A)金属ナノ粒子
金属ナノ粒子(A)を構成する金属(金属原子)としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。金属は、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、ロジウム、パラジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウムなど)及び周期表第4B族金属(スズなど)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、保護コロイドに対する配位性の高い金属、例えば、周期表第8族金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。
金属ナノ粒子(A)は、前記金属単体、前記金属の合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などであってもよい。これらの金属ナノ粒子(A)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。金属ナノ粒子(A)は、通常、金属単体粒子、又は金属合金粒子である場合が多い。また、金属ナノ粒子(A)は、特に、導電性金属粒子であってもよい。なかでも、金属ナノ粒子(A)を構成する金属は、少なくとも銀などの貴金属(特に周期表第1B族金属)を含む金属(貴金属単体および貴金属合金)、特に貴金属単体(例えば、銀単体など)であるのが好ましい。
金属ナノ粒子(A)はナノメーターサイズである。例えば、本発明の金属コロイド粒子における金属ナノ粒子(A)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、0.5〜100nm(例えば、1〜80nm)、好ましくは1.5〜70nm(例えば、1.8〜50nm)、さらに好ましくは2〜40nm(例えば、2〜30nm)程度であってもよく、特に10nm以下(例えば、1〜10nm、好ましくは1〜8nm程度)であってもよい。
また、金属コロイド粒子は、粗大粒子をほとんど含んでいない粒子であってもよい。このような金属コロイド粒子において、前記金属ナノ粒子(A)の最大一次粒子径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下であってもよい。さらに、このような金属ナノ粒子(A)(又は金属コロイド粒子)において、一次粒子径が100nm以上の粒子の割合は、金属(又は金属成分)の質量基準で、例えば、10質量%以下(例えば、0〜8質量%程度)、好ましくは5質量%以下(例えば、0.01〜3質量%)、さらに好ましくは1質量%以下(例えば、0.02〜0.5質量%程度)であってもよい。
(B)保護コロイド
保護コロイド(B)は、アミン類(B1)と、カルボン酸類(B2)とで構成されている。本発明では、このような保護コロイドを、アミン類とカルボン酸とを組み合わせて構成することにより、高い安定性で金属ナノ粒子を効率よく保護できる。このような高い安定性で保護できる理由は定かではないが、アミン類とカルボン酸類とが酸・塩基反応により、静電的に結合し、見かけ上ポリマー化することにより、金属ナノ粒子を効率よく保護できるためであると考えられる。アミン類又はカルボン酸類を単独で用いると、金属ナノ粒子を安定して保護できず、金属ナノ粒子が凝集しやすくなる。そして、本発明では、特にアミン類と前記カルボン酸類とで保護コロイドを構成することにより、金属コロイド粒子としては安定である一方、このような保護コロイドは、比較的低温でも金属コロイド粒子から分離可能であるため、低温焼結可能である。
(B1)アミン類
アミン類としては、モノアミン類、ポリアミン類、アミノカルボン酸類(グリシンなど)などが含まれる。
モノアミン類としては、例えば、第1級アミン類[例えば、モノアルキルアミン類(プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン(n−オクチルアミン、2−エチルへキシルアミンなど)、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミンなどのC3-20アルキルアミン、好ましくはC5-16アルキルアミン、さらに好ましくはC6-12アルキルアミンなど)、シクロアルキルアミン類(例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどのC4-10シクロアルキルアミン)、アリールアミン類(例えば、アニリン、トルイジン、アミノナフタレンなどのC6-10アリールアミン)、アラルキルアミン類(ベンジルアミンなど)、ヒドロキシルアミン類(例えば、エタノールアミンなどのアルカノールアミン類)など]、第2級アミン類[例えば、ジアルキルアミン類(ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミンなどのジC3-20アルキルアミンなど)、ジシクロアルキルアミン類(例えば、ジシクロヘキシルアミンなど)、ジアリールアミン類(例えば、ジフェニルアミンなど)、ジアラルキルアミン類(ジベンジルアミンなど)、アルキルシクロアルキルアミン類(メチルシクロヘキシルアミンなど)、アルキルアリールアミン類(N−メチルアニリンなど)、環状第2級アミン類(例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、モルホリンなどの5〜8員環状第2級アミンなど)、ヒドロキシルアミン類(例えば、ジエタノールアミンなどのジアルカノールアミン類)など]、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン類(トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミンなどのトリC3-20アルキルアミン、好ましくはトリC5-16アルキルアミンなど)、トリシクロアルキルアミン類(トリシクロへキシルアミンなど)、トリアリールアミン類(トリフェニルアミンなど)、トリアラルキルアミン類(トリベンジルアミンなど)、ジシクロアルキルアルキルアミン類(ジシクロヘキシルメチルアミンなど)、シクロアルキルジアルキルアミン類(シクロヘキシルジメチルアミンなど)、アリールジアルキルアミン類(N,N−ジメチルアニリンなど)、環状第3級アミン(例えば、ピリジン、ピコリン、キノリン、N−フェニルモルホリンなどの5〜8員環状第3級アミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−1など)、ヒドロキシルアミン類(例えば、トリエタノールアミンなどのトリアルカノールアミン類)など]などが挙げられる。
ポリアミン類としては、前記モノアミン類に対応するポリアミン類、例えば、鎖状ポリアミン類{例えば、アルカンジアミン類(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC2-20アルカンジアミン)などのジアミン類;ポリアルキレンポリアミン類(又はポリアルキレンイミン、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミンなどのポリC2-4アルキレンポリアミン)などの第1級ポリアミン類}、環状ポリアミン類[例えば、環状第2級ポリアミン(例えば、ピペラジン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、トリエチレンジアミンなど)、環状第3級ポリアミン(ピリミジンなど)など]などが挙げられる。
これらのアミン類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのアミン類のうち、例えば、モノアルキルアミン類[例えば、オクチルアミンなどの炭素数4以上のモノアルキルアミン類(例えば、モノC6-20アルキルアミン)など]、アルカンジアミン類(例えば、C2-20アルカンジアミンなど)などのアルキルアミン類(特に、第1級アルキルアミン類)が好ましく、特に長鎖アルキルアミン(例えば、モノ乃至トリC6-30アルキルアミン、好ましくはモノ乃至トリC7-24アルキルアミン、さらに好ましくはモノC8-20アルキルアミン)が好ましい。
アミン類は、常温(又は室温、例えば、25℃)で、液状又は固体状であってもよく、特に液状であってもよい。液状のアミン類の沸点は、例えば、45〜350℃(例えば、50〜320℃)、好ましくは60〜300℃(例えば、80〜280℃)、さらに好ましくは100〜250℃(例えば、120〜230℃)程度であってもよい。また、アミン類(B1)は、後述の焼成温度(例えば、100〜350℃、好ましくは120〜300℃程度)において、分解又は蒸発する化合物であってもよい。
(B2)カルボン酸類
カルボン酸類(B2)は、少なくとも1つのカルボキシル基を有している化合物であればよく、カルボン酸類(B2)のカルボキシル基の数は、例えば、1〜5、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3程度であってもよい。
なお、カルボン酸類(B2)において、一部のカルボキシル基は、塩(金属塩など)を形成していてもよいが、本発明では、通常、カルボキシル基(すべてのカルボキシル基)が、塩を形成していないカルボン酸を使用する場合が多い。
また、カルボン酸類(B2)は、カルボキシル基を有している限り、カルボキシル基以外の官能基(又は金属化合物又は金属ナノ粒子に対する配位性基、例えば、ハロゲン原子、ヘテロ原子を有する基{例えば、酸素原子を有する基[ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基)、ホルミル基、カルボニル基、エステル基など]、硫黄原子を有する基[例えば、チオ基、チオール基、チオカルボニル基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基などのC1-4アルキルチオ基など)、スルホ基、スルファモイル基、スルフィニル基(−SO−)など]など}などが挙げられる。カルボン酸類(B2)は、これらの官能基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
カルボン酸類(B2)は、これらの官能基のうち、カルボキシル基と塩を形成可能な塩基性基(特に、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アンモニウム塩基など)を有していない化合物であるのが好ましい。
代表的なカルボン酸類(B2)には、各種カルボン酸、例えば、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸)などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、アラキン酸、ドコサン酸、リグノセリン酸、モンタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ナフテン酸、デヒドロコール酸、コラン酸などのC1-34飽和脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC2-30飽和脂肪族モノカルボン酸、さらに好ましくはC4-24飽和脂肪族モノカルボン酸など)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、オクテン酸、リンデル酸、マッコウ酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、イソオレイン酸、ペトロセリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、アビエチン酸などのC3-34不飽和脂肪族カルボン酸、好ましくはC8-30不飽和脂肪族モノカルボン酸、さらに好ましくはC10-24不飽和脂肪族モノカルボン酸)]、芳香族モノカルボン酸(例えば、安息香酸、ナフトエ酸などのC7-12芳香族モノカルボン酸など)などが挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、脂肪族ポリカルボン酸[例えば、飽和脂肪族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのC2-14飽和脂肪族ポリカルボン酸、好ましくはC4-10飽和脂肪族ポリカルボン酸など)、不飽和脂肪族ポリカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、テトラヒドロフタル酸などのC4-14不飽和脂肪族ポリカルボン酸、好ましくはC4-10不飽和脂肪族ポリカルボン酸など)など]、芳香族ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、トリメリット酸などのC8-12芳香族ポリカルボン酸など)などが挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシモノカルボン酸[脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、12−オキソケノデオキシコール酸、グリココール酸、リトコール酸、ヒオデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、アポコール酸、タウロコール酸などのC2-50脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、好ましくはC4-34脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、さらに好ましくはC4-30脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸など)、芳香族ヒドロキシモノカルボン酸(サリチル酸、オキシ安息香酸、没食子酸などのC7-12芳香族ヒドロキシモノカルボン酸など)など]、ヒドロキシポリカルボン酸[脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などのC4-10脂肪族ヒドロキシポリカルボン酸など)など]などが挙げられる。
なお、これらのカルボン酸は、無水物、水和物などであってもよい。なお、カルボン酸は、前記と同様に、塩を形成していない場合が多い。
カルボン酸類(B2)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのカルボン酸類(B2)のうち、炭素数4以上の脂肪族モノカルボン酸(例えば、C4-30飽和脂肪族モノカルボン酸、C8-30不飽和脂肪族モノカルボン酸など)などの炭素数4以上の脂肪族カルボン酸が好ましい。また、カルボン酸類(B2)は、(i)炭素数4〜9のカルボン酸(例えば、C4-9飽和脂肪族モノカルボン酸及びC4-9不飽和脂肪族モノカルボン酸から選択された少なくとも1種)、又は(ii)炭素数10以上のカルボン酸(例えば、C10-30飽和脂肪族モノカルボン酸及びC10-30不飽和脂肪族モノカルボン酸から選択された少なくとも1種)のみで構成してもよい。なお、カルボン酸(i)又は(ii)において、カルボン酸は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
カルボン酸類(B2)は、常温(又は室温、例えば、25℃)で、液状又は固体状であってもよく、特に液状であってもよい。また、カルボン酸類(B2)は、後述の焼成温度(例えば、100〜350℃、好ましくは120〜300℃程度)において、分解又は蒸発する化合物であってもよい。
なお、カルボン酸類(B2)のpKa値は、例えば、1以上(例えば、1〜10程度)、好ましくは2以上(例えば、2〜8程度)であってもよい。
前記金属コロイド粒子において、保護コロイド(B)(アミン類(B1)及びカルボン酸類(B2)の総量)の割合は、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部(例えば、0.5〜80質量部)、好ましくは1〜60質量部(例えば、1.5〜50質量部)、さらに好ましくは2〜40質量部(例えば、3〜30質量部)程度であってもよい。
なお、金属コロイド粒子において、アミン類(B1)の割合は、例えば、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、例えば、0.01〜55質量部(例えば、0.1〜50質量部)、好ましくは0.5〜40質量部(例えば、1〜30質量部)、さらに好ましくは1.5〜20質量部(例えば、2〜15質量部)程度であってもよい。
また、金属コロイド粒子において、カルボン酸類(B2)の割合は、例えば、金属ナノ粒子(A)100質量部に対して、例えば、0.01〜50質量部(例えば、0.05〜30質量部)、好ましくは0.1〜30質量部(例えば、0.5〜20質量部)、さらに好ましくは1〜15質量部(例えば、2〜10質量部)程度であってもよい。
さらに、金属コロイド粒子において、アミン類(B1)とカルボン酸類(B2)との割合は、前者/後者(質量比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは85/15〜10/90(例えば、75/25〜15/85)、さらに好ましくは70/30〜20/80(例えば、60/40〜25/75)、特に60/40〜30/70程度であってもよい。
なお、本発明の金属コロイド粒子は、保護コロイドとして少なくとも前記保護コロイド(B)を含んでいればよく、他の保護コロイドを含んでいてもよい。他の保護コロイドは、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物である。
他の保護コロイドとしては、例えば、酸素原子含有有機化合物{例えば、アルコール類[例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC6-20アルカンモノオール)、シクロアルカノール類(シクロヘキサノールなど)、アルカンジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ポリアルキレングリコール類(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、アラルキルアルコール類、多価アルコール類など]、エーテル類(セロソルブ類、カルビトール類など)、ケトン類[例えば、アルカノン類、シクロアルカノン類、ジケトン類(アセチルアセトンなどのβ−ジケトン類)など]、エステル類(例えば、脂肪酸エステル類、グリコールエーテルエステル類など)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒド、ステアリルアルデヒドなどのC6-20脂肪族アルデヒド)など}、硫黄原子含有有機化合物[例えば、スルホキシド類、スルホン酸類(例えば、アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)など]などが挙げられる。これらの他の保護コロイドは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他の保護コロイドの割合は、前記保護コロイド(B)100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは1〜30質量部程度であってもよい。
(分散媒)
分散媒としては、前記金属コロイド粒子を分散可能な溶媒であれば特に限定されず、汎用の溶媒が使用できる。分散媒(分散溶媒)としては、例えば、アルコール類{例えば、脂肪族アルコール類(例えば、ヘプタノール、オクタノール(1−オクタノール、2−オクタノールなど)、デカノール(1−デカノールなど)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコールなどの飽和又は不飽和C6-30脂肪族アルコール、好ましくは飽和又は不飽和C8-24脂肪族アルコールなど)、脂環族アルコール類[例えば、シクロヘキサノールなどのシクロアルカノール類;テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどのテルペンアルコール類(例えば、モノテルペンアルコールなど)など]、芳香脂肪族アルコール(例えば、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)C2-4アルキレングリコールなどのグリコール類;グリセリンなどの3以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールなど)など}、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;2−フェノキシエタノールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアリールエーテルなど)、グリコールエステル類(例えば、酢酸カルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールアセテートなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート)、炭化水素類[例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカンなどの飽和又は不飽和脂肪族炭化水素類)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど)など]、エステル類(例えば、酢酸ベンジル、酢酸イソボルネオール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなど)などの極性溶媒(極性基を有する溶媒)が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
代表的な分散媒には、脂肪族アルコール(例えば、オクタノール、デカノールなどの飽和又は不飽和C6-30脂肪族アルコール、好ましくは飽和又は不飽和C6-20脂肪族アルコールなど)、脂環族アルコール類[例えば、テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどのテルペンアルコール類(例えば、モノテルペンアルコールなど)など]、芳香族炭化水素類(例えば、トルエンなど)などが挙げられる。
分散媒の沸点(混合溶媒である場合、各溶媒の沸点)は、100℃以上であるのが好ましく、例えば、100〜400℃(例えば、120〜380℃)、好ましくは130〜370℃(例えば、130〜350℃)、さらに好ましくは150〜320℃(例えば、160〜300℃)程度であってもよく、通常160〜270℃(例えば、160〜250℃)程度であってもよい。
本発明のインキ組成物において、分散媒の割合は、例えば、金属コロイド粒子100質量部に対して、例えば、0.1〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは2〜50質量部、特に3〜30質量部(例えば、5〜20質量部)程度であってもよい。
(有機金属化合物)
有機金属化合物を構成する金属は、通常、前記金属コロイド粒子を構成する金属とは異なる金属であり、前記金属コロイド粒子で例示された遷移金属が使用できる。これらの遷移金属は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの遷移金属のうち、周期表第4A族金属(例えば、チタン、ジルコニウムなど)、周期表第6A族金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステンなど)、周期表第1B族金属(例えば、銅、銀、金など)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金など)などが好ましい。特に、金属コロイド粒子を構成する金属が銀である場合、有機金属化合物を構成する金属としては、例えば、スズ、ニッケル、鉄、チタン、コバルト、アルミニウム、インジウム及び銅からなる群から選択された少なくとも一種(特にスズ、ニッケル)が好ましい。
これらの金属と有機金属化合物を形成するための有機配位子としては、例えば、有機酸、アルコキシド(例えば、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、n−ブトキシドなどのC1-6アルコキシドなど)、アセチルアセトナトなどが挙げられる。これらのうち、有機酸が好ましい。有機酸としては、前記保護コロイドで例示されたモノカルボン酸、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸が例示できる。なかでも、脂肪族モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸など)、脂肪族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸など)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、フタル酸など)、オキシカルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸など)などが好ましく、酢酸や2−エチルヘキサン酸などのC1-12飽和脂肪族モノカルボン酸が汎用される。
有機金属化合物としては、例えば、有機酸金属塩(例えば、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸鉄、2−エチルヘキサン酸アルミニウム、2−エチルヘキサン酸インジウムなどのC1-12飽和脂肪族モノカルボン酸金属塩など)、金属アルコキシド(アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシドなどの金属C1-4アルコキシド)、金属アセチルアセトネート(例えば、アセチルアセトナト金、ビスアセチルアセトナトスズ、トリスアセチルアセトナトチタンなど)などが挙げられる。
本発明のインキ組成物において、金属ナノ粒子(A)の割合(濃度)は、例えば、金属質量換算で、例えば、1〜60質量%、好ましくは2〜50質量%、さらに好ましくは3〜40質量%(特に5〜30質量%)程度である。金属ナノ粒子(A)の濃度が低すぎると、紫外線透過率が高くなり、フォトマスクの補修効果が小さくなる。一方、金属ナノ粒子(A)の濃度が高すぎると、インキの粘度が高くなるため、補修装置のノズルに詰まり易くなるなど、作業性が低下する。
有機金属化合物の割合は、金属コロイド粒子を構成する金属に対して、金属原子換算で、例えば、0.01〜70%(例えば、0.01〜55%)、好ましくは0.1〜60%、さらに好ましくは1〜55%(特に3〜50%)程度である。有機金属化合物の割合が少なすぎると、有機金属化合物の効果が発現せず、均一な膜が形成できない。一方、有機金属化合物の割合が多すぎると、局所的に凝集が起こり、ピンホールが発生し易くなる。
本発明のインキ組成物には、用途に応じて、慣用の添加剤、例えば、バインダー樹脂(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子など)、色相改良剤、光沢付与剤、金属腐食防止剤、安定剤、界面活性剤又は分散剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤など)、分散安定化剤、増粘剤又は粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、消泡剤、殺菌剤、充填剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。インキ組成物は、導電性や低温焼結の点で、これらの添加剤を含んでいないのが好ましく、特に、バインダー樹脂(有機質バインダー)を実質的に含んでいないのが好ましい。
[インキ組成物の製造方法]
本発明のインキ組成物は、特に限定されないが、通常、前記金属コロイド粒子及び前記有機金属化合物を前記分散媒に分散させることにより得ることができる。
前記金属コロイド粒子(又はその分散液)は、慣用の方法、例えば、前記金属ナノ粒子(A)に対応する金属化合物を、保護コロイド(B)(及び必要に応じて前記他の保護コロイド)及び還元剤の存在下、溶媒中で還元することにより調製できる。
前記金属ナノ粒子(A)に対応する金属化合物は、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などであってもよい。なお、金属塩の形態は、単塩、複塩又は錯塩のいずれであってもよく、多量体(例えば、2量体)などであってもよい。これらの金属化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属化合物のうち、金属ハロゲン化物、金属酸塩[金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩などのオキソ酸塩など)、金属有機酸塩(酢酸塩など)など]などを使用する場合が多い。なお、これらの金属化合物は、溶媒に溶解又は分散させて(例えば、水溶液などの水系溶媒の溶液の形態で)用いてもよい。
還元剤としては、慣用の成分、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類(水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウムなど)、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩(ナトリウム塩など)、ボラン類(ジボラン、ジメチルアミンボランなど)、ヒドラジン類(ヒドラジンなど)、ホルマリン、アミン類[例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール(2−(ジメチルアミノ)エタノール)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノールなどのアルカノールアミン類]、有機酸(クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸など)などが例示できる。これらの還元剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
還元剤の使用量は、金属原子換算で前記金属化合物1当量(又は1モル)に対して、1〜30モル(例えば、1.2〜20モル)、好ましくは1.5〜15モル、さらに好ましくは2〜10モル程度であってもよく、通常1〜5モル程度であってもよい。
還元反応は、慣用の方法、例えば、温度10〜75℃(例えば、15〜50℃、好ましくは20〜35℃)程度で行うことができる。反応系の雰囲気は、空気、不活性ガス(窒素ガスなど)であってもよく、還元性ガス(水素ガスなど)を含む雰囲気であってもよい。また、反応は、通常、攪拌下で(又は攪拌しながら)行ってもよい。
なお、反応溶媒としては、最終的なインキ組成物を構成する前述の分散媒であってもよく、インキ組成物を構成する溶媒とは異なる溶媒であってもよく、これらの混合溶媒であってもよい。反応溶媒としては、前記保護コロイドの種類などに応じて選択でき、例えば、保護コロイドが水溶性化合物である場合には、水などの極性溶媒で反応溶媒を構成することが多く、疎水性化合物である場合には疎水性溶媒で反応溶媒を構成することが多い。
反応溶媒は、前記分散媒の他、疎水性溶媒[例えば、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トリメチルペンタン、オクタン、デカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなど)など]、極性溶媒[水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1-4アルカノールなど)、脂肪族多価アルコール類(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、有機カルボン酸類(酢酸など)など]などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。反応溶媒は、通常、少なくとも疎水性溶媒(前記分散媒でない疎水性溶媒)で構成してもよい。
なお、、反応溶媒中の前記金属化合物の濃度は、金属の質量換算で、例えば、5質量%以上(例えば、6〜50質量%)、好ましくは8質量%以上(例えば、9〜40質量%)、さらに好ましくは10質量%以上(例えば、12〜30質量%)、通常5〜30質量%程度の高濃度であってもよい。
なお、反応溶媒の種類などに応じて反応系のpHを調整してもよい。
pH調整は、慣用の方法、例えば、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などの有機酸)、アルカリ[水酸化ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基、アミン類(例えば、アルキルアミン、アルカノールアミンなどの第三級アミン類などの有機塩基)などの塩基類]を用いて行うことができる。
このような反応(還元反応)により、反応溶媒に金属コロイド粒子が分散した分散液の形態で金属コロイド粒子を調製することができる。なお、還元反応の終了後、必要に応じて、反応混合液を慣用の方法(例えば、遠心分離、メンブレンフィルター、限外ろ過などのろ過処理など)で精製してもよい。
そして、本発明のインキ組成物は、前記反応溶媒として前記分散媒を含む溶媒を用いた場合には、分散液から不要な溶媒成分を濃縮して調製することもできるが、通常、このような分散液から分離した前記金属コロイド粒子を前記分散媒に分散(再分散)させることにより調製できる。
分散液からの金属コロイド粒子の分離は、慣用の方法、例えば、分散液から反応溶媒を分離除去することにより行うことができる。反応溶媒の除去は、慣用の濃縮操作などを利用できる。なお、前記反応溶媒の除去は、反応溶媒と前記分散媒との沸点差を利用して、分散媒の存在下で行ってもよい(すなわち、反応溶媒の除去と分散媒への分散を同一の系で行ってもよい)。例えば、前記分散液に前記分散媒を混合した混合物から前記反応溶媒を除去してもよい。
分散媒の使用量としては、金属ナノ粒子の濃度が前述の範囲となるように適宜調整でき、前記と同様の範囲から適宜選択してもよい。なお、分散媒に加えて他の溶媒を混合し、他の溶媒を除去することにより粘度調整を行ってもよい。前記有機金属化合物は、通常、金属コロイド粒子を含む分散液に対して添加される。
[インキ組成物を用いた補修方法]
本発明のインキ組成物は、フォトマスクの補修用インキ組成物として使用できる。フォトマスクとしては、金属成分で構成された光遮蔽膜でパターンを形成するフォトマスクであれば特に限定されず、慣用のフォトマスク、例えば、クロムマスク、エマルジョンマスク、フィルムマスクなどが利用できる。なお、フォトマスクのパターンを形成する光遮蔽膜は、通常、クロム、アルミニウムなどの金属が使用され、透明基板は、通常、ガラス基板が使用されるが、いずれのこれらの素材に限定されるものではない。これらのフォトマスクのうち、製造時に欠損部が生じやすく、高精度のパターンに利用されるクロムマスクに対して本発明のインキ組成物は特に有効である。
本発明のフォトマスクの補修方法としては、製造時又は使用時などにおいてパターンに欠陥(欠損部)が生じたフォトマスクに対して、その欠陥部に本発明のインキ組成物を滴下した後、焼成する方法を利用できる。
インキ組成物の滴下方法としては、慣用の滴下方法を利用でき、例えば、滴下装置として、ディスペンサー(液体定量吐出装置)を用いて、パターンの厚みや欠陥部の大きさに応じて所望量滴下する方法を利用できる。
焼成処理は、通常、所定の焼成温度で加熱(又は焼成又は加熱処理)することにより行うことができる。焼成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザーを照射して加熱する方法、熱風加熱機により熱風を吹き付ける方法などが利用できる。これらの方法のうち、微細な欠陥部を局所的に加熱できる点から、レーザーを照射して毛熱する方法が好ましい。本発明では、金属ナノ粒子が高濃度で安定して分散しているため、特別な処理を必要とせずに、レーザーを局所的に照射するだけで効率良く焼成できる。
焼成温度としては、金属ナノ粒子が融着して連続膜を形成できる限り特に限定されず、適宜選択できる。特に、本発明のインキ組成物は、比較的低温であっても焼結するため、焼成温度は、250〜350℃程度であってもよいが、安定した補修膜を形成するためには、400℃以上、好ましくは400〜800℃、さらに好ましくは420〜700℃(特に450〜600℃)程度である。
また、焼成処理時間(加熱時間)は、焼成温度などに応じて、例えば、1秒〜1時間、好ましくは2秒〜10分、さらに好ましくは3秒〜1分(特に5〜30秒)程度であってもよい。焼成後の補修インキの膜厚は、フォトマスクのパターンに応じて変わるが、通常、10nm〜10μm、好ましくは30nm〜1μm、さらに好ましくは50〜500nm程度である。
このようにして得られた補修用の焼結体層は、フォトマスクの基板及びパターンに強固に付着する。さらに、ピンホールなどの発生も少なく、例えば、紫外線(波長320nm)の透過率は、例えば、30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下(特に0.5〜5%)である。
本発明のインキ組成物は、クロムマスク、エマルジョンマスク、フィルムマスクなどのフォトマスクに生じた欠陥部を補修するためのインク(補修液)として有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
硝酸銀2.5g、n−オクチルアミン4.9g、リノール酸4.9gをトリメチルペンタン1.0リットルに加え、攪拌混合し溶解した。この混合溶液に、0.03モル/リットルの水素化ホウ素ナトリウムを含むプロパノール溶液1.0リットルを1時間かけて滴下し銀を還元した。さらに、3時間攪拌して黒色の液体を得た。得られた黒色の液体をエバポレータによって濃縮した後、これにメタノール2.0リットルを加えて褐色の沈殿物を生成させた後、吸引ろ過により沈殿物を回収した。生成した沈殿物をトリメチルペンタンに再分散させ、ろ過した後、乾燥させて、銀コロイド粒子を黒色の固体として得た。透過型電子顕微鏡(TEM)によれば、得られた銀ナノ粒子のコア部の個数平均粒子径は3.6nm、動的光散乱粒径測定(DLS)によれば、保護コロイドを含む銀コロイド粒子全体の個数平均粒子径は8.0nmであった。
得られた銀コロイド粒子を金属の質量換算で30質量%となるようにトルエンに分散させ、銀ナノ粒子を含む分散液を調製した。得られた分散液に、2−エチルヘキサン酸スズを、金属原子換算で20%となるように添加し、メンブレンフィルター(アドバンテック社製、PTFEメンブレンフィルター)で濾過し、有機酸金属塩を含有する銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液をガラス基板上に塗布し、オーブンで420℃、10秒間加熱処理することによって、表面平滑性に優れ、光沢性のある薄膜が得られた。膜厚は約180nm、碁盤目テープ剥離試験の結果は100/100、紫外線(波長320nm)の膜透過率を測定した結果は約11%であった。
実施例2
2−エチルヘキサン酸スズを、金属原子換算で30%となるように添加する以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液をガラス基板上に塗布し、オーブンで420℃、10秒間加熱処理することによって、表面平滑性に優れ、光沢性のある薄膜が得られた。膜厚は約300nm、碁盤目テープ剥離試験の結果は100/100、紫外線(波長320nm)の膜透過率を測定した結果は約2.3%であった。
実施例3
2−エチルヘキサン酸スズを、金属原子換算で50%となるように添加する以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液をガラス基板上に塗布し、オーブンで420℃、10秒間加熱処理することによって、表面平滑性に優れ、光沢性のある薄膜が得られた。膜厚は約400nm、碁盤目テープ剥離試験の結果は100/100、紫外線(波長320nm)の膜透過率を測定した結果は約1.5%であった。
実施例4
2−エチルヘキサン酸スズを、金属原子換算で5%となるように添加する以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液をガラス基板上に塗布し、オーブンで420℃、10秒間加熱処理することによって、表面平滑性に優れ、光沢性のある薄膜が得られた。膜厚は約100nm、碁盤目テープ剥離試験の結果は100/100、紫外線(波長320nm)の膜透過率を測定した結果は約23%であった。
実施例5
2−エチルヘキサン酸ニッケルを、金属原子換算で0.05%となるように添加する以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液をガラス基板上に塗布し、オーブンで420℃、10秒間加熱処理することによって、表面平滑性に優れ、光沢性のある薄膜が得られた。膜厚は約120nm、碁盤目テープ剥離試験の結果は100/100、紫外線(波長320nm)の膜透過率を測定した結果は約32%であった。
比較例1
2−エチルヘキサン酸スズを添加しない以外は実施例1と同様にして銀ナノ粒子分散液を得た。この分散液をガラス基板上に塗布し、オーブンで420℃、10秒間加熱処理したところ、表面は白くピンホールが生じ、連続膜は得られなかった。紫外線(波長320nm)の膜透過率を測定した結果は約51%であった。

Claims (7)

  1. 金属コロイド粒子、この金属コロイド粒子の分散媒及び有機金属化合物を含むインキ組成物であって、前記金属コロイド粒子が、金属ナノ粒子(A)とこの金属ナノ粒子(A)を被覆する保護コロイド(B)とで構成され、かつ前記保護コロイド(B)が、アミン類(B1)とカルボン酸類(B2)とで構成されているフォトマスク補修用インキ組成物。
  2. 金属ナノ粒子(A)を構成する金属が銀単体であり、金属ナノ粒子(A)の平均粒子径が1〜10nmである請求項1記載のフォトマスク補修用インキ組成物。
  3. 金属ナノ粒子(A)の濃度が、金属の質量換算で1〜60質量%である請求項1又は2記載のフォトマスク補修用インキ組成物。
  4. アミン類(B1)が、アルキルアミン類であり、カルボン酸類(B2)が、炭素数4以上の脂肪族モノカルボン酸である請求項1〜3のいずれかに記載のフォトマスク補修用インキ組成物。
  5. 有機金属化合物が、スズ、ニッケル、鉄、チタン、コバルト、アルミニウム、インジウム及び銅からなる群から選択された少なくとも一種の金属を含有する有機金属化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のフォトマスク補修用インキ組成物。
  6. 有機金属化合物の割合が、金属コロイド粒子を構成する金属に対して、金属原子換算で、0.01〜55%である請求項1〜5のいずれかに記載のフォトマスク補修用インキ組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のフォトマスク補修用インキ組成物をフォトマスク欠陥部に滴下し、加熱して焼成処理するフォトマスクの補修方法。
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