JP2009229067A - 電波修正時計用アンテナ - Google Patents

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Abstract

【課題】高い受信性能および高い耐磁性能を持ち、容易に他部材と部分的兼用が可能であるアンテナ構造体を使用する電波利用腕時計を提供すること。
【解決手段】良導体で構成する案内部材をアンテナの端部に対向して設け、案内部材は、標準電波により発生した磁束のうち、案内部材の一表面に水平な成分を有する磁束よりなる磁束路を形成し、磁束路をアンテナの端部に集磁させる。このような構成を有することにより、アンテナに流入する磁束量を増大させ、アンテナ出力を上昇させるという効果を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、時刻情報を含む所定の電波を受信し、その情報に基づいて時刻を修正する機能を有する電波修正時計に関し、特に腕時計型の電波修正時計用アンテナに関するものである。
電波修正時計は、100万年に1秒の精度を持つセシウム原子時計による時刻情報や日付情報を含む標準電波(例えば、40kHzの電波)を内蔵するアンテナで受信し、時刻の誤差を修正する機能を具備している時計である。このため、一ヶ月あたり20秒程度の誤差が生じるクォーツ時計と比べて常時正確な時刻を表示することが可能であり、時刻修正の手間を省くことができるため、近年急速に普及しつつある。
電波修正時計において、受信性能を決めるのは、アンテナ特性と受信回路特性とである。
受信アンテナの種類としては、標準電波の波長が5km前後と長く、腕時計内部において波長方向による共振を行うことが難しいため、強磁性体コアに導線を巻き付けたコイル状のバーアンテナを用いるのが一般的である。このバーアンテナを透過する磁束によってコイルに起電力を得る。
受信回路は、受信アンテナの出力を元に時刻情報を検知し、時計用ムーブメントに伝えるものである。時計用ムーブメントとは、電池や時計動作に必要な計時回路などの回路要素を1ユニットにまとめた複合部品をいう。場合によっては、文字盤や液晶表示装置などの時刻表示手段も含むこともある。
電波修正時計は、電波発信源から離れた箇所や、ビル街や鉄筋造の建物内では、到来する電波の強度が低下するために十分に受信ができないという問題を抱えている。
腕時計型の電波修正時計は、すでに説明したとおりバーアンテナを用いる場合が多く、バーアンテナの磁性コアの形状を改良して受信感度を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
図6は、特許文献1に示した従来技術を説明するための図であって、説明しやすいようにその主旨を逸脱しないように書き直したものである。図6において、101は強磁性体からなるアンテナコア、102はアンテナコア101の長手方向に巻回した巻線部、103はアンテナコア101の端部に設けられた拡張部である。巻線部102は、実際は細線が整然と巻回されているが、見やすくするために筒状に図示している。また、説明に必要がない部分は省略してある。
拡張部103は、強磁性体で構成されており、アンテナコア101の長手方向から見たとき、アンテナコア101の長手方向の断面積よりも大きな面積を有しており、かつ、アンテナコア101と磁気的に導通している。このようにすると、拡張部103が広範囲の磁束を捕捉して効率的にアンテナコア101に流し込むことで、アンテナ出力が向上して電波修正時計の感度が向上するのである。
特開2004−274609号公報(第11頁、第2図)
特許文献1に示した従来技術は、アンテナ端部を大型化することで効率的に磁束を収集して、アンテナ出力を上げて、電波修正時計の感度を向上させるものである。
しかしながら、発明者が検討したところによると、これらの構造には問題があることが分かった。
特許文献1に示した従来技術では、磁束をより多く取り入れるために、アンテナ端部に配される磁性体を多くする方法をとることができる。磁束を収集する目的で用いられる磁性体は、フェライトやアモルファスなど透磁率が高く、電気伝導率が少ないことが求められるが、これらの材質は機械的にはよい材質とはいえず、時計内部のほかの部品と兼用することが難しい。
そのため、アンテナはアンテナ単体として形成するしかなく、時計全体のサイズに与える影響が大きい。また、フェライトは脆性材料であり、アモルファスはワイヤー状や箔状であるため、大型化や形状自由度においても問題があるのである。
これは、特に筐体内スペースが限られる腕時計型の電波修正時計では大きな問題である。
置時計などの大型の時計であれば、アンテナの多少の大型化によるスペースの圧迫はさほど問題にならないが、そのような場合においても、アンテナが大型化するとアンテナの自己インダクタンスが上昇してアンテナそのものの自己共振周波数が低下するため受信可能な周波数帯が狭まってしまうのである。
このように、特許文献1に示した従来技術は、磁束をより多く取り入れようとすると、アンテナが大型化してしまい、ひいては時計が大型化してしまう。さらに、そもそもアンテナに適した材質が大型化に適さないこと、および自己共振による大型化の限界という2つの問題があるのである。
本発明の技術的な課題は、このような問題を解決し、アンテナ自体を大きくすることなく、より多くの外部磁束を収集できるアンテナを提供するものであって、充分な標準電波の受信レベルを確保し得る電波修正時計用アンテナを提供することにある。
上記した目的を達するため、本発明の電波修正時計用アンテナは、以下に記した構成を採用するものである。
標準電波を受信して時刻情報を得る電波修正時計に備える電波修正時計用アンテナにおいて、
良導体で構成する案内部材をアンテナの端部に対向して設け、案内部材は、標準電波により発生した磁束のうち案内部材の一表面に水平な成分を有する磁束よりなる磁束路を形成し、磁束路をアンテナの端部に集磁させることを特徴とする。
このような構成によって、アンテナに流入する磁束量をアンテナ単体での磁束量に比べて増大させるという効果を有する。
案内部材は、アンテナの端部と対向する第1の仮想平面と、第1の仮想平面と対向する第2の仮想平面と、を有し、第2の仮想平面は、標準電波の受信面となると共に第1の仮想平面より大きいことを特徴とする。
このような構成によって、案内部材に衝突する磁束量をより多くすることができるという効果を有する。
案内部材の第1の仮想平面は、アンテナの端部よりアンテナの中心方向に位置していることを特徴とする。
このような構成によって、案内部材に衝突した磁束を効率よくアンテナ端部へと誘導することができるという効果を有する。
案内部材は、スリットを有する切頭円錐状や漏斗状または切頭角錐状であることを特徴とする。
このような構成によって、案内部材に生ずる渦電流がアンテナ端部を周回することを防ぎ、案内部材からよりよくアンテナ端部へと自足が流れるようになるという効果を有する。
本発明の電波修正時計用のアンテナは、良導体で構成する案内部材をアンテナの端部に対向して設けることで、アンテナに流入する磁束量を増大させ、アンテナ出力を上昇させるという効果を有するものである。
本発明の電波修正時計用アンテナは、良導体で構成する案内部材をアンテナの端部に対向して設けている。その案内部材は、標準電波により発生した磁束よりなる磁束路を形成するのであるが、その磁束路は、案内部材の一表面に水平な成分を有する磁束路を形成する。この磁束路をアンテナの端部に集磁させることでアンテナ出力を向上させることができる。
[アンテナの構造の図面:図1]
以下図面を用いて本発明の電波修正時計用アンテナの第1の実施形態について説明する。図1は本発明における電波修正時計用アンテナの形状を示す図であり、図1(a)は、そのアンテナを斜めから見た様子を示す立体図、図1(b)は、アンテナの長手方向で切断したときの様子を模式的に示す断面図である。
図1において、1はアンテナコア、2はアンテナコア1の長手方向に巻回された巻線部、3は案内部材、4はアンテナコア1の両端部に設けられた拡張部、5は案内部材3のスリットである。巻線部2は実際は巻線が整然と巻回されているが、見やすくするために筒状に図示している。
案内部材3は、金属などの良導体からなり、アンテナコア1および巻線部2とは電気的に絶縁されている。
100は第1の仮想平面、101は第2の仮想平面である。それぞれ案内部材3を説明するためのものである。第1の仮想平面100は、案内部材3のアンテナコア1の拡張部4側の端部を含むように規定した仮想的な平面であり、第2の仮想平面101は、案内部材3のアンテナコア1と離れた側の端部を含むように規定した仮想的な平面である。つまり、それぞれの仮想平面は、案内部材3に囲まれた領域である。なお、これら2つの仮想平面は、図面を見やすくするため、図1(a)では省略している。
図1(b)に示すように、第1の仮想平面100と第2の仮想平面101とは、対向しており、そして第2の仮想平面101は、第1の仮想平面100より大きい。
このような形状を有する案内部材3の立体構造は、アンテナコア1より遠ざかるほどそ
の内径が大きくなる、切頭円錐状や漏斗状または切頭角錐状なのである(図1に示す例では、切頭円錐形状または漏斗形状)。
この2つの仮想平面を通過するように磁束が流入出する。第2の仮想平面101は、磁束の流入面(標準電波の受信面)となり、第1の仮想平面100を磁束の流出面となっている。
なお、案内部材3の第1の仮想平面100は、アンテナコア1の拡張部4よりアンテナの中心方向に位置している。
そして、案内部材3にはスリット5を設けている。図1に示す例では、案内部材3は、アンテナコア1の拡張部4にそれぞれに設けており、案内部材3ごとにスリット5を設けている。なお、案内部材3およびスリット5についての詳述は、後述する。
また、拡張部4は、図1ではアンテナコアと同一に形成してなる例を示しているが、別体で形成していてもよく、いずれにしても両者は磁性体または強磁性体により構成されており、互いに磁気的に導通されている。このことから、本発明の電波修正時計用アンテナとは、アンテナコア1,巻線部2,案内部材3からなる構成によりアンテナとしての機能を有するが、拡張部4を含んだ構成を便宜上、アンテナ9として定義する。
図1に示す例では、案内部材3は、アンテナ9と離間して設けるように示しているが、これら2つの構成は、直接もしくは図示しない他の部材を介して互いに位置関係が固定するように設けている。本発明の電波修正時計用アンテナは、この案内部材3とアンテナ9(特に拡張部4)との相対的な位置関係が重要である。これについては、後述する。
[案内部材の説明:図2、図3、図4]
次に、案内部材3の構造および位置に関して、図面を用いて説明する。図2は、案内部材3を設けていないときのアンテナ9の周囲の磁力線の様子を模式的に表す図である。図3は、案内部材3の原理を説明するための図である。図4は、案内部材3の形状と配置に関して詳細に説明するための図であり、本発明のアンテナの断面図を模式的に表す図である。
図2(a)は案内部材3を外したときのアンテナ周囲の磁力線の様子を模式的に表す図、図2(b)は、案内部材3が存在することを禁止する禁止領域を説明するための図である。
図2において、Aはアンテナコア1の中心軸を表す仮想的な直線、Bは磁力線の様子を模式的に表す線群、F1,F2は磁力線群Bの最外部に接して直線Aに平行な直線、Gは磁束収束面、Rは直線Aと直線F1とを結ぶ、直線Aに垂直な直線である。図2(b)における斜線部分Dは禁止領域である。図2(b)は、禁止領域Dを説明するための図であり、禁止領域Dの他は図2(a)と同一であるから、説明は省略する。また、すでに示した構成に関しては、同一の番号を付与している。
案内部材3が存在しない場合、アンテナ9の周囲の磁力線は,巻線部2の巻回方向の中心軸である直線Aを中心に、概ね図2(a)の磁力線群Bように砂時計型に広がっている。これよりも直線Aから離れた磁力線は,アンテナコア1には導かれない。すなわち、直線F1,F2によって挟まれる領域にある磁力線のみがアンテナコア1に流れ込む、という条件を持って直線F1,F2が定義される。
ここで、磁力線群Bによって貫かれる仮想的な空間領域を磁束収束領域と定義する。もちろん、アンテナコア1の形状によって磁束収束領域の形状は異なってくる(例えば、コの字型をしたアンテナコアで、右辺に当たる部分に巻線部がある場合、磁束収束範囲は巻
線部の中心軸を軸とするよりは、上辺と下辺とが延びている左側へとずれる)。
しかしながらアンテナの性能を考えた場合、アンテナコア1が極度に偏芯した構造のアンテナは、磁気抵抗が上昇して性能が低下するために有効でなく、特にアンテナが閉ループに近付きインダクタンスが上昇することが問題となる電波修正時計の場合にはことさら有効でない。そのため、このような大まかな形状を捉えておくだけでも十分であり、特に本発明の電波修正時計用アンテナにあっては、このような大まかな捉え方で十分機能するものである。
もちろん、数値計算によるシミュレーションが可能な環境ならば、磁力線の振る舞いを実用上十分な精度で定めることができて、本発明の方法をより最適化された形態で実施できることはいうまでもない。
いずれにせよ、案内部材3が存在しない場合、最終的にアンテナコア1にどれだけの磁束が収集されるかということは、外部磁束密度場の強度と、アンテナ出力とを比較することで容易に測定可能である。つまり、アンテナ出力とアンテナに収集された磁束量は比例して、かつ磁力線は途切れたり、枝分かれすることがないのだから、どれだけの範囲の磁力線がアンテナコア1に収束されるのかは量的に見積もることができる。
図2(a)において、磁束収束領域の、直線Aに垂直な方向の仮想的な断面で最も面積が大きくなるものを磁束収束面G、磁束集側面の面積を磁束収束面積と定義する。
アンテナコア1にどれだけの磁束が収束されているかは、アンテナ起電力を巻線部2の巻数で割り、更に角周波数で割ることで求めることができる。この値と外部磁束との比率が、磁束収束面積とアンテナコア1の巻線が巻回されている部分の断面積との比に等しくなるのである。図2に示す例では、巻線部2が巻回されている部分の断面積は一様であるが、巻線部2の断面積がさまざまに違う場合もありうる。そのような場合は、断面積の平均値を用いることができる。いずれにしても、このようにして磁束収束面積を求めることができる。
前述のように、磁束収束領域は直線Aに対して対称な砂時計型であると見積もると、磁束収束面Gは、円形となるから、磁束収束面Gの半径を求めることができる。これを磁束収束半径と定義する。図2(a)においては、この大きさは、直線Rの長さに等しい。
このようにして、アンテナコア1に対して磁束収束面の大きさと形状を仮想的に定義することができる。図2(b)に示すように、この磁束収束面を、アンテナコア1の中心軸に沿って動かしたときに通過される円柱状の領域を禁止領域Dと定義する。すなわち、禁止領域Dとは、中心軸からの距離が磁束収束半径以下となる空間領域のことであり、直線F1,F2によって挟まれる領域のことである。
図2(a)に示したように、実際の磁束収束領域は円筒形ではなく、砂時計型をしてアンテナコア1に収集されているが、禁止領域Dはこのように円筒形に定める。この理由については後述する
[案内部材の原理の説明:図3]
次に、本発明の電波修正時計用アンテナが、案内部材3によって高いアンテナ出力を得る原理について、図面を用いて説明する。図3は案内部材によって磁束の流れを制御する様子を説明するための図であり、10は金属部材、S1,S2,H1,H2,H3は磁力線の様子を仮想的に表す線群である。なお、既に説明した構造には同一の番号を付与しているため、説明は省略する。
図3(a)は、金属部材10と磁力線群S1,S2との一般的な関係を説明するため図
であり、図3(b)は案内部材3とアンテナコア1と磁力線群H1,H2,H3との関係を説明するための図である。
広く流通している金属は良導体であり、外部から周期性の磁束が加わると、渦電流が発生して磁束を弾く性質を持っている。すなわち、図3(a)に示すように、金属部材10によって磁力線の振る舞いは、磁力線群S1,磁力線群S2のように分かれて金属部材10の両脇を通り抜けるのである。そのため、図3(b)に示すように良導体からなる案内部材3を配置すると、磁束の幾らかは案内部材3によってアンテナコア1に近接する方向へ弾かれ、そのままアンテナコア1へ流入するのである。
図3(b)に示す例では、案内部材3が存在しないときには、アンテナコア1には磁力線群H3に相当する磁束しか収束させることができないが、案内部材3が存在すれば、案内部材3に衝突する磁束は磁力線群H1,H2に相当する部分に分かれ、磁力線群H2に相当する部分をアンテナコア1に余分に流し込むことができるようになるのである。
つまり、標準電波により発生した磁束のうち案内部材3の一表面に水平な成分を有する磁束よりなる磁束路(磁力線群H2)を形成し、この磁束路をアンテナコア1に集磁させることができるのである。
このようにして、アンテナコア1に流入する磁束量を増大させることができて、アンテナ出力を向上させることができる。
また、案内部材3を設けても共振時にアンテナコア1より発せられる磁束量はほとんど増大しない。なぜならば、案内部材3は共振時にアンテナコア1から発せられる磁束に対しては渦電流を引き起こして、ほとんどの場合、アンテナコア1の内部の磁束量を減らすように作用するからである。そのため、アンテナの自己インダクタンスはほとんど上昇せず、自己共振周波数が低下することがない。
[案内部材の配置に関する説明:図4]
図4において、7は案内部材3の内縁部、Eは案内部材3の内縁部を起点として直線Aに垂直な直線、Jは拡張部4の端部を起点として直線Aに垂直な直線である。すでに示した構成には同一の番号を付与している。
図4に示すように、案内部材3は、禁止領域D内には存在しない。なぜならば、禁止領域Dはアンテナコア1そのものの能力で磁束を収束できる領域であり、案内部材3による収束が本来必要無い部分である。案内部材3はアンテナコア1に磁束をより多く導く役割を果たすが、同時に、共振時にアンテナコア1から発する磁束に対して渦電流を発生させてアンテナ9としての損失を引き起こす。すなわち、アンテナコア1単体で収束できる磁束にまで案内部材3を用いると、案内部材3によって生じる損失の分だけアンテナ出力としては不利なのである。
また、図2において禁止領域Dを砂時計型でなく、円筒形にとったのもこのためである。アンテナコア1が外部磁束を収集する現象と、共振時にアンテナコア1から磁束を放出される現象とは、アンテナコア1を構成する磁性体の磁荷に依存しており、その影響の到達範囲はどちらの現象においても同等である。すなわち、禁止領域Dとは、受信時か共振時のどちらかにおいてもアンテナコア1の影響を受ける範囲の目安なのである。
そのため、磁束収束に寄与していない、砂時計のくびれ部分に相当する部分であっても、共振時にはアンテナコア1から発せられる磁束の影響を強く受けるのである。そのため、磁束の流入に影響しないとしても、アンテナとしての損失を増大させるために、結局のところアンテナの出力を低下させてしまうのである。そのため、禁止領域Dは円筒形にとったのである。
図4に示す例では、案内部材3の内縁部7は禁止領域Dに接しているが、必ずしも接していなければならないというわけではない。しかしながら、禁止領域Dを離れて案内部材3を構成すると、アンテナコア1と案内部材3との干渉が低下してゆくので、案内部材3をより大型に設ける必要がある。そのため、案内部材3の内周部は禁止領域Dに接していることが望ましい。
案内部材3は、磁束を弾くために設けるのであるから、極端に分厚くする必要はなく、表皮厚さ(磁束の周波数と部材の透磁率、電気伝導率とで決まる)程度の厚みがあれば十分である。これ以上に厚くしても弾く効果がさほど向上しないばかりか、やはり、共振時にアンテナコア1から放出される磁束に対する渦電流が増大してアンテナ損失が増大してアンテナ出力が低下してしまうのである。
[スリットの説明]
図1(a)に示すように、案内部材3にはスリット5が必要である。これは、案内部材3にスリット5が無く、電気的に禁止領域Dを一周するように構成されていると、外部磁束に対してアンテナコア1の周囲を旋回する渦電流が生じることで、案内部材3に衝突する磁束量が激減して、結果としてアンテナコア1に磁束が流入していかなくなるためである。そのため、スリット5を設けて案内部材3を流れる電流が、禁止領域Dを周回するための経路を切断するのである。
案内部材3は大きければ大きいほどアンテナ出力は向上するが、少なくとも、案内部材3の、直線A方向から見たときの面積は、磁束収束面積の2倍以上の大きさがあることが望ましい。図3(a)を用いて前述したように、良導体は外部磁束をおおよそ半々に分割して流す能力を持つため、案内部材3を除いたアンテナ本来の力で収束できる磁束量と同程度の磁束を案内部材3でアンテナコア1収束することを考えるならば、案内部材3は磁束収束面積の倍以上の面積を持つことが望ましいのである。
案内部材3の角度は、図1と図4に示すように、アンテナ9から離れる方向に従って、案内部材3の内径が開いていく、いわゆる漏斗状になっていることが望ましい。これが逆にアンテナ9に近付くにつれて案内部材3の内径が閉じていくようにすると、磁束が外側方向へと弾かれやすくなるため、案内部材3の効力が低下してしまうのである。
このようにすると、図1に示したように案内部材3の立体構造は切頭円錐形もしくは漏斗状の形状となり、その細くなる方の端部がアンテナコア1に近い側へ位置することとなる。
図3または図4に示すように、案内部材3の内縁部7は、アンテナコア1の端部よりもアンテナコア1の内側(アンテナの中心方向)に位置していることが望ましい。すなわち、直線Eが直線Jよりもアンテナコア1の内部に位置することが望ましい。このようにすると、案内部材3で弾いた磁束を緩やかな角度でそのままアンテナコア1に導くことができて、磁気抵抗が減少するため、アンテナコア1に導かれる磁束量が上昇するからである。
[案内部材の他の形状の説明:図5]
案内部材3の形状は、図1(a)に示すような特定の形状に限定されるものではない。これまでに挙げた条件を満たしていれば、さまざまな形状に変形可能である。以下、図面を用いて本発明の電波修正時計用アンテナの第2の実施形態について説明する。
図5(a)は、案内部材3のスリット5の数を6つにした例である。図5(b)は、ス
リット5の数を更に増やした例である。図5(c)は、スリット5にデザイン的な要素を取り入れたものである。図5(d)は、案内部材3そのものを平板状の部材にて構成する例を示すものであって、特にアンテナコア1の一方の端部に4枚の平板で構成する切頭角錐状を有するものである。他にも、図示はしないが、ワイヤー部材を束ねてブラシ状にすることもできる。勿論、このとき、ワイヤー部材が互いに導通し合わないように、ワイヤー部材は絶縁コーティングされていることが必要である。
ただし、アンテナ9の出力はスリット5が少ない方が案内部材3の効力が上昇するため高くなる。そのため、案内部材3のスリット5を増やすことは、時計内部の他の部材との兼用や、制作上の都合を考える場合において有効なのである。
いずれにせよ、必要なことは、禁止領域を一周するような電気的導通の経路が存在しないことである。また、すでに説明した例では案内部材3は、アンテナコア1の両方の端部に設けられているが、スペースの問題などがある場合、片方だけに設けても良いことはいうまでもない。
このようにして、金属部材を案内部材3として用いてアンテナ出力を向上させることができる。多くの金属部材は機械的性質に優れるから、成型や微細な形状を保持することが容易であり、また、時計内部において他の部材としての兼用も容易である。例えば、ムーブメントの地板や歯車といった部材である。
以上の説明で明らかなように、本発明の電波修正時計用アンテナは、良導体である金属の、磁性を弾く効果を利用した案内部材3を設けることで、アンテナ9のインダクタンスを上昇させることなくアンテナ出力を向上させるものである。
さらに、案内部材3は、金属であるから加工上や大きさの自由度が大きく、他の部材と兼用することも容易である。これにより、時計内部の空間を圧迫することなく、出力の高いアンテナ9を構成することができるのである。
本発明の電波修正時計用アンテナは、良導体である金属の磁束を弾く効果を利用して、アンテナに到達する磁束量を向上させ、標準電波の受信感度が向上する。そのため、小型化の要求のある電波修正時計に好適である。
本発明の電波修正時計用アンテナの構造を説明するための図である。 本発明の電波修正時計用アンテナの原理を説明するための図である。 本発明の電波修正時計用アンテナの原理を説明するための図である。 本発明の電波修正時計用アンテナの案内部材の配置を説明するための図である。 本発明の電波修正時計用アンテナの異なる構造を説明するための図である。 特許文献1に示した従来技術を説明するための図である。
符号の説明
1 アンテナコア
2 巻線部
3 案内部材
4 拡張部
5 スリット
7 内縁部
9 アンテナ
10 金属部材
21 時計外装
22 バンド
23 裏蓋外縁部
24 裏蓋端部
25 裏蓋内部

Claims (4)

  1. 標準電波を受信して時刻情報を得る電波修正時計に備える電波修正時計用アンテナにおいて、
    良導体で構成する案内部材を前記アンテナの端部に対向して設け、
    前記案内部材は、前記標準電波により発生した磁束のうち前記案内部材の一表面に水平な成分を有する磁束よりなる磁束路を形成し、該磁束路を前記アンテナの端部に集磁させることを特徴とする電波修正時計用アンテナ。
  2. 前記案内部材は、前記アンテナの端部と対向する第1の仮想平面と、該第1の仮想平面と対向する第2の仮想平面と、を有し、
    前記第2の仮想平面は、前記標準電波の受信面となると共に前記第1の仮想平面より大きいことを特徴とする請求項1に記載の電波修正時計用アンテナ。
  3. 前記案内部材の前記第1の仮想平面は、前記アンテナの端部より前記アンテナの中心方向に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電波修正時計用アンテナ。
  4. 前記案内部材は、スリットを有する切頭円錐状や漏斗状または切頭角錐状であることを特徴とする請求項1または2に記載の電波修正時計用アンテナ。
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