JP2009226901A - 液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷画質を損なうことなく、駆動信号のピーク電流を低減することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッド2を複数配設し、各液体噴射ヘッド2には、液体を噴射するためのノズル列を複数形成すると共に各ノズルにノズルアクチュエータ22を配設し、印刷媒体1を相対移動しながらノズルアクチュエータ22を駆動信号COMで駆動することによりノズルから液体を噴射するにあたり、各液体噴射ヘッド2のノズル列同士の距離が、印刷解像度相当の距離の整数倍nに当該印刷解像度相当の距離より小さい所定値αを加算した値となるようにして、各液体噴射ヘッド2の印刷媒体1との相対的な移動方向への位置を設定し、印刷解像度相当の距離より小さい所定値α相当分だけ各液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22への駆動信号COMの印加タイミングをずらす。
【選択図】図7

Description

本発明は、微小な液体を複数のノズルから噴射して、その微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射装置に関するものである。
このような液体噴射装置の1つである液体噴射型印刷装置は、一般に安価で且つ高品質なカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このような液体噴射型印刷装置のうち、液体噴射ノズルの形成された液体噴射ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液体噴射ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。ラインヘッド型の液体噴射ヘッドを構成する場合には、複数のノズルが列状に形成されたブロック状の液体噴射ヘッドを印刷媒体搬送方向と交差する方向に複数配設してラインヘッド型の液体噴射ヘッドを構成する場合がある。
ところで、この種の液体噴射型印刷装置では、液体噴射ヘッドに液体を噴射するためのノズル列を複数形成すると共に各ノズルに圧電素子などのノズルアクチュエータを配設し、液体噴射ヘッドと印刷媒体とをノズル列と交差する方向に相対的に移動しながら、液体噴射ヘッドのノズルアクチュエータに電圧波形信号からなる駆動信号を印加することで該当するノズルから印刷媒体に向けて液体を噴射する。ラインヘッド型印刷装置では、ノズルアクチュエータの数が多いので、消費電流が大きく、大きな電源容量が必要となったり、大電流によって圧電素子などのノズルアクチュエータが損耗したりするという問題が生じる。そこで、下記特許文献1に記載される液体噴射装置では、駆動信号の波形タイミングをずらすことで、電圧波形信号からなる駆動信号のピーク電流を低減することが開示されている。また、下記特許文献2に記載される液体噴射装置では、複数設けられている液体噴射ヘッドの複数のノズル列のうち、例えば同じ色の液体を異なるノズル列から噴射するように駆動信号を印加することで、同じく電圧波形信号からなる駆動信号のピーク電流を低減することが開示されている。
特開平7−125195号公報 特開2001−88291号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載されるように駆動信号の波形タイミングをずらすと、本来、液体を噴射すべきタイミングと異なるタイミングで液体が噴射されることになるから、印刷画質に影響を及ぼす可能性がある。また、前記特許文献2に記載されるように複数の液体噴射ヘッドの複数のノズル列のうち、異なるノズル列から同じ色の液体を噴射するように駆動信号を印加する場合には、ノズル列毎に駆動信号を出力する駆動回路が必要になるので、ラインヘッド型印刷装置のような多駆動方式では現実的でない。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、印刷画質を損なうことなく、駆動信号のピーク電流を低減することが可能な液体噴射装置を提供することを目的とするものである。
上記諸問題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、液体噴射ヘッドを複数配設し、各液体噴射ヘッドには、液体を噴射するためのノズル列を複数形成すると共に各ノズルにノズルアクチュエータを配設し、液体噴射ヘッドと印刷媒体とをノズル列と交差する方向に相対的に移動しながら各液体噴射ヘッドの各ノズルアクチュエータを駆動信号で駆動することにより該当するノズルから印刷媒体に向けて液体を噴射する液体噴射装置であって、各液体噴射ヘッドの同等の機能のノズル列同士の印刷媒体との相対的な移動方向への距離が、印刷解像度相当の距離の整数倍に当該印刷解像度相当の距離より小さい所定値を加算した値となるようにして、各液体噴射ヘッドの印刷媒体との相対的な移動方向への位置を設定し、前記印刷解像度相当の距離より小さい所定値相当分だけ各液体噴射ヘッドのノズルアクチュエータへの駆動信号の印加タイミングをずらしたことを特徴とするものである。
なお、前記印刷解像度相当の距離より小さい所定値相当分とは、当該所定値に相当する距離を印刷媒体又は液体噴射ヘッドが相対的に移動し通過する所要時間分を意味する。また、距離が負値になることはないので、前記整数は、実質的に0を含む自然数である。
而して、本発明の液体噴射装置によれば、複数の液体噴射ヘッドのノズル列は印刷解像度相当の距離より小さい所定値分だけずれていても、その所定値相当分だけ駆動信号の印加タイミングをずらすことにより、印刷画質を損なうことなく、駆動信号のピーク電流を低減することが可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、前記ノズルアクチュエータへの駆動信号の電力増幅回路にアナログ電力増幅回路を用いたことを特徴とするものである。
本発明の液体噴射装置によれば、アナログ電力増幅回路における駆動信号のピーク電流を大きく低減することが可能となる。
次に、本発明の液体噴射装置の第1実施形態について液体噴射型印刷装置を用いて説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、図において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印字領域で印字される、ラインヘッド型印刷装置である。
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数の液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。各液体噴射ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射する液体の色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全ての液体噴射ヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない各色の液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。そして、各液体噴射ヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを出力する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、所謂1パスによる印刷を行うことができる。
液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の噴射量を調整することが可能となる。なお、ピエゾ方式に用いられる圧電素子は容量性負荷である。また、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。
この印刷装置内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データ読込むための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、各液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、各ドライバ63、65、66と外部の給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2,3、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れの液体噴射ヘッド2の何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動信号選択データ)を算出し、この印刷データや駆動信号選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63、65、66に制御信号を出力する。各ドライバ63、65、66からはアクチュエータを駆動するための駆動信号が出力され、給紙ローラモータ17、電動モータ7が夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、本実施形態では、後述するように、各液体噴射ヘッド2に駆動回路が搭載されているので、ヘッドドライバ65からは制御信号のみが各液体噴射ヘッド2に出力される。また、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
図4には、各液体噴射ヘッド2に搭載されている駆動回路の具体的な構成を示す。液体噴射ヘッド2に駆動回路を搭載すると、ノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号の信号線が短くなり、損失を低減したり、ノズルアクチュエータのレスポンスを向上したりすることができ、これらにより印刷所要時間を短くすることが可能となる。本実施形態の駆動回路は、マイクロコンピュータなどで構成されて独自の演算処理を行う制御回路23と、駆動信号を創成出力するための駆動波形データや演算処理のプログラミングを記憶するメモリ24と、前記駆動波形データに基づいて、駆動信号の元、つまりノズルアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路25と、駆動波形信号発生回路25で生成された駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号を電力増幅するデジタル電力増幅器、所謂D級アンプ28と、デジタル電力増幅器28で電力増幅された電力増幅変調信号を平滑化して、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)として選択スイッチ201からノズルアクチュエータ22に供給する平滑フィルタ29とを備えて構成される。また、前記図3の制御装置からの制御信号を入出力する制御信号用接続部13i,13o及びノズルアクチュエータ駆動用電力を入出力する電力用接続部14i,14oが設けられている。
制御回路23は、図示しない演算処理に従って、メモリ24に記憶されているデジタル駆動波形データを読出し、所定サンプリング周期で駆動波形信号発生回路25に出力したり、トランスミッションゲートで構成される選択スイッチ201のオンオフ制御を行ったりする。駆動波形信号発生回路25は、制御回路23から出力された駆動波形データを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールドすると共に、それをD/A変換器でアナログ変換して駆動波形信号WCOMとして出力する。本実施形態では、この駆動波形信号WCOMをパルス変調する変調回路26に、一般的なパルス幅変調(PWM)回路を用いた。パルス幅変調は、周知のように、三角波信号発生回路で所定周波数の三角波信号を発生し、この三角波信号と駆動波形信号WCOMとをコンパレータで比較して、例えば三角波信号より駆動波形信号WCOMが大きいときにオンデューティとなるパルス信号を変調信号として出力する。デジタル電力増幅器28は、実質的に電力を増幅するためのハイサイドのスイッチング素子Q1及びローサイドのスイッチング素子Q2からなるハーフブリッジD級出力段21と、変調回路26からの変調信号に基づいて、それらのスイッチング素子Q1、Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲート駆動回路30とを備えて構成されている。また、平滑フィルタ29は例えばコイルとコンデンサの組合せからなるローパスフィルタ(低域通過フィルタ)で構成され、このローパスフィルタによって電力増幅変調信号の変調周期成分、この場合は三角波信号の周波数成分が除去される。
デジタル電力増幅器28では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジD級出力段21の出力は、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力は0となる。
このようにハイサイド及びローサイドのスイッチング素子がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅器28の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。ちなみに、本実施形態では、各液体噴射ヘッド2にデジタル駆動回路を搭載したが、液体噴射ヘッド2数に相当するデジタル駆動回路を印刷装置本体側に設け、それらから液体噴射ヘッド2に個別に駆動信号を出力するようにしてもよい。
図5には、本実施形態の印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電位を中心に電位が変化する信号とした。この駆動信号COMは、ノズルアクチュエータを駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、各駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液滴がノズルから噴射される。
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液滴の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液滴を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。駆動信号選択データSI&SPで駆動信号を選択する仕組みとしては、例えば特開2003−1824号公報に記載されるような形態で実現が可能である。なお、図5の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液滴を噴射せずに、例えばノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
各液体噴射ヘッド2には、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのノズルアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動信号選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動信号選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。なお、これ以後、ノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
図6には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をノズルアクチュエータ22に供給するために制御回路23内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるべきノズルに対応した圧電素子などのノズルアクチュエータ22を指定するための駆動信号選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのノズルアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
シフトレジスタ211には、駆動信号選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動信号選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのノズルアクチュエータは駆動信号選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動信号選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのノズルアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、圧電素子などのノズルアクチュエータを駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該ノズルアクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
このような電圧波形信号からなる駆動信号COMを、ラインヘッドを構成する全てのノズルアクチュエータ22に同時に印加すると、消費電流が大きく、大きな電源容量が必要となったり、大電流によって圧電素子などのノズルアクチュエータが損耗したりするという問題が生じる。この問題を回避するには、電圧波形信号からなる駆動信号COMの波形タイミングをずらせばよいが、単に波形タイミングをずらすだけだと、前記特許文献1のように、印刷媒体1の所定位置に液体を噴射(着弾とも言う)することができない。そこで、本実施形態では、例えば要求される印刷解像度が360dpiであるばあい、図7に示すように、各液体噴射ヘッド2の同じ機能のノズル列同士、つまり同じ色を噴射するノズル列同士の印刷媒体搬送方向の距離を、印刷解像度相当の距離、即ち1/360インチの整数n(nは0及び自然数とする)倍に、同じく印刷解像度相当の距離1/360インチより小さい所定値αを加算した値とする。本実施形態のように、隣合う液体噴射ヘッド2が隣接するように千鳥状に配列されている場合、例えば印刷媒体搬送方向と交差する方向に並んでいる液体噴射ヘッド2のノズル列同士は、整数nを0として、印刷解像度相当の距離1/360インチより小さい所定値αだけ印刷媒体搬送方向にずらし、斜めに隣接している液体噴射ヘッド2のノズル列同士は、1/360インチ×n+α(α<1/360インチ)とする(図は、分かり易く強調して描画されている)。
例えば、図7aの図示上端の液体噴射ヘッド2の所定色のノズル列と図示上から3番目も液体噴射ヘッド2の同じ色のノズル列から、同じ波形タイミングの駆動信号COMで液体を噴射すると、当然、図8aのようにドットは所定値αだけずれる。図8bは、それらのドットを重ね合わせたものであるが、所定値αは印刷解像度相当の距離1/360インチより小さいので、これらのドットでも印刷画質が著しく低下することはない。しかしながら、液体噴射ヘッド2中の全てのノズル列のドットが、このように一様にずれると、その部分だけ、色が薄かったり濃かったりして、所謂スジ状に見えることがある。
そのため、本実施形態では、図9に示すように、例えば液体噴射ヘッド2の同じ機能のノズル列同士の距離が印刷解像度相当の距離1/360インチより小さい所定値αである場合、当該所定値α相当分、つまり所定値αを印刷媒体1が通過する所要時間tα分だけ各液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22への駆動信号COMの印加タイミングをずらす。同図では、図示上側の液体噴射ヘッド2のノズル列が図示下側の液体噴射ヘッド2のノズル列より印刷媒体搬送方向先方に所定値α分だけずれているので、印刷基準信号の検出から所定時間t0経過したときに図示上方の液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22に駆動信号COMAを出力した後、所要時間tαが経過したとき、図示下側の液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22への駆動信号COMBを印加する。このようにすることで、2つの液体噴射ヘッド2の同じ機能のノズル列から噴射される液体を印刷媒体の所定位置に確実に着弾させることができる。なお、液体噴射ヘッド2の同じ機能のノズル列が前記整数n分だけ離れている場合には、駆動信号COMの生成サイクルを当該整数n分だけ早めたり遅らせたりし、その後、前述と同様に駆動信号COMの印加タイミングをずらせばよい。
なお、前記図7や図9では、各液体噴射ヘッド2のノズル列をノズル列方向に一直線に並べたときに、各液体噴射ヘッド2のノズル列の端部ノズル同士のノズルピッチは各ノズル列内のノズルピッチと同ピッチになるような構成となっているが、前記図2に示すように、各液体噴射ヘッド2を印刷媒体搬送方向にずらして配置し、各液体噴射ヘッド2のノズル列の端部ノズルをノズル列方向に重複させて配置させた配置でもよい。また、図中のαは、互いに同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。要は、所定値αが印刷解像度相当の距離より小さい値であれば、その所定値α分だけ、駆動信号をずらしたとき、互いの駆動信号のピークをずらすことが可能となるのである。
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッド2を複数配設し、各液体噴射ヘッド2には、液体を噴射するためのノズル列を複数形成すると共に各ノズルにノズルアクチュエータ22を配設し、液体噴射ヘッド2と印刷媒体1とをノズル列と交差する方向に相対的に移動しながら各液体噴射ヘッド2の各ノズルアクチュエータ22を駆動信号COMで駆動することにより該当するノズルから印刷媒体1に向けて液体を噴射するにあたり、各液体噴射ヘッド2の同等の機能のノズル列同士の印刷媒体1との相対的な移動方向への距離が、印刷解像度相当の距離1/360インチの整数倍nに当該印刷解像度相当の距離1/360インチより小さい所定値αを加算した値となるようにして、各液体噴射ヘッド2の印刷媒体1との相対的な移動方向への位置を設定し、印刷解像度相当の距離1/360インチより小さい所定値α相当分だけ各液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22への駆動信号COMの印加タイミングをずらす構成としたため、複数の液体噴射ヘッド2のノズル列は印刷解像度相当の距離1/360インチより小さい所定値α分だけずれていても、その所定値α相当分だけ駆動信号COMの印加タイミングをずらすことにより、印刷画質を損なうことなく、駆動信号COMのピーク電流を低減することが可能となる。
次に、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型印刷装置に用いた第2実施形態について説明する。本実施形態では、前記第1実施形態のデジタル駆動回路に代えて、図10に示すアナログ駆動回路を用いた点を除き、他は全て第1実施形態と同様である。
このアナログ駆動回路は、図4のデジタル駆動回路の駆動波形信号発生回路から平滑フィルタまでの部分が変更されており、駆動信号を創成出力するために制御回路23から出力された駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号の元、つまりノズルアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路31と、駆動波形信号発生回路31で発生された駆動波形信号WCOMをアナログ変換するD/A変換回路(アナログ変換回路)32と、D/A変換回路24でアナログ変換されたアナログ駆動波形信号AWCOMを電力増幅するアナログ電力増幅回路33とを備えて構成される。アナログ電力増幅回路33は、プッシュプル接続されたトランジスタ対35と、当該トランジスタ対35の各トランジスタTr1,Tr2を駆動するためのプリドライバ回路34とを備えて構成される。
駆動波形信号発生回路31は、制御回路23から出力された駆動波形データDWCOMを読込み、それを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールドすることで、デジタルデータの駆動波形信号WCOMを出力する。D/A変換回路32には、一般的なデジタル−アナログ変換回路を用い、これによってデジタルデータの駆動波形信号WCOMをアナログ駆動波形信号AWCOMに変換出力する。プリドライバ回路34は、プッシュプル接続されたトランジスタ対35の各トランジスタTr1,Tr2のベース電圧を制御することで、例えば接続されるノズルアクチュエータの数が変化することにより上昇する充電用トランジスタのベース電流を抑制する。このプリドライバ回路34としては、例えば本出願人が先に提案した特開2004−306434号公報に記載されるものが適用可能である。トランジスタ対35は、充電用トランジスタTr1と放電用トランジスタTr2とをプッシュプル接続して構成され、一方のNPN型充電用トランジスタTr1のコレクタは電源電圧VDDが供給され、エミッタは選択スイッチ201を介してノズルアクチュエータに接続され、ベースがプリドライバ回路34の一方の出力に接続されている。また、他方のPNP型放電用トランジスタTr2のエミッタが選択スイッチ201を介してノズルアクチュエータに接続され、コレクタが接地され、ベースがプリドライバ回路25の他方の出力に接続されている。このトランジスタ対35では、一方の充電用トランジスタTr1は、選択スイッチ201を介して、駆動信号COMに応じた電圧波形を伴いながら電源電圧VDDから容量性負荷であるノズルアクチュエータ22に電荷を供給する、即ち充電し、他方の放電用トランジスタTr2は、選択スイッチ201を介して、駆動信号COMに応じた電圧波形を伴いながら容量性負荷であるノズルアクチュエータ22の電荷を放電する。ちなみに、本実施形態では、前記第1実施形態と同様に、各液体噴射ヘッド2にアナログ駆動回路を搭載したが、液体噴射ヘッド2数に相当するアナログ駆動回路を印刷装置本体側に設け、それらから液体噴射ヘッド2に個別に駆動信号を出力するようにしてもよい。
本実施形態のアナログ駆動回路は、前記第1実施形態のデジタル駆動回路と異なり、例えばノズルアクチュエータの充放電中、常時電流が流れるので、各液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータ22への駆動信号の波形をずらすことができれば、ピーク電流の低減効果が大きい。
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、ノズルアクチュエータ22への駆動信号の電力増幅回路にアナログ電力増幅回路33を用いたことにより、アナログ電力増幅回路33における駆動信号のピーク電流を大きく低減することが可能となる。
次に、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型印刷装置に用いた第3実施形態について説明する。本実施形態では、前記第1及び第2実施形態の制御装置に代えて、図11に示す制御装置を用いた点を除き、他は全て第1及び第2実施形態と同様である。
本実施形態では、ヘッドドライバ65内に、液体噴射ヘッド2数分の駆動回路が設けられており、それらの駆動回路から各液体噴射ヘッド2に駆動信号COMが個別に出力される。この駆動回路には、例えば前記第1実施形態の図4のデジタル駆動回路中の制御回路23〜平滑フィルタ29までの構成を用いたり、前記第2実施形態の図10のアナログ駆動回路中の制御回路23〜アナログ電力増幅回路33までの構成を用いたりすることで、前記第1実施形態或いは第2実施形態と同様に機能させることができる。従って、このような構成でも、前記第1実施形態或いは第2実施形態と同様の効果が得られる。なお、各液体噴射ヘッド2には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPがインタフェース67を介して直接的に入力される。
なお、前記実施形態では、本発明の液体噴射装置をラインヘッド型印刷装置に用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の液体噴射装置は、マルチパス型印刷装置にも同様に適用可能である。
また、前記実施形態では、本発明の液体噴射装置をインクジェット式印刷装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
本発明の液体噴射装置を用いた印刷装置の第1実施形態を示す概略構成正面図である。 図1の液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッド近傍の平面図である。 図1の液体噴射型印刷装置の制御装置のブロック図である。 各液体噴射ヘッドに設けられた駆動回路のブロック図である。 各液体噴射ヘッド内のノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。 スイッチングコントローラのブロック図である。 図1の液体噴射ヘッドの配置状態の詳細を示す平面図である。 図7の液体噴射ヘッドから噴射された液体ドットの説明図である。 図7の液体噴射ヘッドのノズルアクチュエータに印加される駆動信号の説明図である。 本発明の液体噴射装置を用いた印刷装置の各液体噴射ヘッドに設けられた駆動回路の第2実施形態を示すブロック図である。 本発明の液体噴射装置を用いた印刷装置の制御装置の第3実施形態を示すブロック図である。
符号の説明
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11は固定プレート、12はスライドスイッチ、13i,13oは制御信号用接続部、14i,14oは電力用接続部、21はハーフブリッジD級出力段、22はノズルアクチュエータ、23は制御回路、24はメモリ、25は駆動波形信号発生回路、26は変調回路、28はデジタル電力増幅器、29は平滑フィルタ、30はゲート駆動回路、31は駆動波形信号発生回路、32はA/D変換回路(アナログ変換回路)、33はアナログ電力増幅回路、34はプリドライバ回路、35はトランジスタ対、62は制御部、65はヘッドドライバ

Claims (2)

  1. 液体噴射ヘッドを複数配設し、各液体噴射ヘッドには、液体を噴射するためのノズル列を複数形成すると共に各ノズルにノズルアクチュエータを配設し、液体噴射ヘッドと印刷媒体とをノズル列と交差する方向に相対的に移動しながら各液体噴射ヘッドの各ノズルアクチュエータを駆動信号で駆動することにより該当するノズルから印刷媒体に向けて液体を噴射する液体噴射装置であって、各液体噴射ヘッドの同等の機能のノズル列同士の印刷媒体との相対的な移動方向への距離が、印刷解像度相当の距離の整数倍に当該印刷解像度相当の距離より小さい所定値を加算した値となるようにして、各液体噴射ヘッドの印刷媒体との相対的な移動方向への位置を設定し、前記印刷解像度相当の距離より小さい所定値相当分だけ各液体噴射ヘッドのノズルアクチュエータへの駆動信号の印加タイミングをずらしたことを特徴とする液体噴射装置。
  2. 前記ノズルアクチュエータへの駆動信号の電力増幅回路にアナログ電力増幅回路を用いたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
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