JP2009226621A - キャリアシート付バリアフィルム、及び当該キャリアシート付バリアフィルムの製造方法 - Google Patents

キャリアシート付バリアフィルム、及び当該キャリアシート付バリアフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】酸素ガス、炭酸ガス等の気体と水蒸気をバリアするバリアフィルムを積層したキャリアシート付バリアフィルムであって、バリアフィルムの表面に炭酸ガスによる凹凸が生じないキャリアシート付バリアフィルム、さらには、バリアフィルムをキャリアシートから剥がした際に、そのバリアフィルムのバリア性を低下させないようなキャリアシート付バリアフィルムを提供する。
【解決手段】粘着剤層に配合する架橋剤として、水蒸気との反応により炭酸ガスを発生する反応基を実質的に有さないものを用いる。好ましい架橋剤としては、エポキシ化合物及びアルミ系金属キレート化合物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、バリアフィルム用のバリアフィルム付キャリア粘着シート、及び当該キャリアシート付バリアフィルムの製造方法に関する。
従来から、被キャリア体であるシート状物品等を、粘着剤層を介してキャリアシート上に固定し、キャリアシート上でエッチング、穴あけ、打ち抜き、印刷、読み取り等の処理が施されることがある。例えば、フレキシブル印刷回路基板の製造においては、ポリイミドフィルム面を粘着剤層や接着剤層を介してキャリアシートに固定して加工が施されてフレキシブル印刷回路基板が製造される(特許文献1)。また、ファックス送信においては、極端に薄い紙、透明な記録物、裏カーボン付原稿等そのままでは送信が困難な場合には、原稿をキャリアシートに接着する方法で送信され(特許文献2)、自動原稿搬送装置を備えた画像読取装置の場合には、原稿が傷つかないように、あるいは原稿が小さい場合や異形で搬送に制約がある場合に、原稿キャリアシートを用いる方式が実用化されている(特許文献3)。
特開2002−113816号公報 国際公開WO 1997/02696号パンフレット 特開2001−341874号公報
ところで、近年、特定の光学部材を製造するにあたっては、無機物蒸着フィルム等のバリアフィルムを被キャリア体とし、これをキャリアシートに固定してキャリアシート付バリアフィルムとし、これを巻き取り(ロール)状態で光学部材メーカーに納入することが行なわれている。この場合、納入先でバリアフィルムは剥離され、単独で光学部材として使用される。このバリアフィルムは通常、酸素や炭酸ガス等の気体や水蒸気等水分の遮断性に優れるものである。
そして、この場合、粘着剤層には公知のイソシアネート系架橋剤が多く用いられているが、このイソシアネートは水蒸気との反応により炭酸ガスを発生する。ここで、上記のキャリアシート付バリアフィルムの場合、バリアフィルムが炭酸ガスの透過を遮断するために、粘着剤層で発生した炭酸ガスがバリアフィルムを透過することなくロール内に残ることになる。この炭酸ガスは加熱等の処理により膨張し、バリアフィルムの外観に凹凸を生じさせる。これは、被キャリア体をバリアフィルムとする際に特有の現象であり、後に光学部材として使用される際の欠陥となる。
また、別の問題として、バリアフィルムをキャリアシートから剥がす際に、バリアフィルムの無機蒸着層が粘着剤層の影響を受け、バリアフィルムのバリア性が低下するという問題も生じる。このようにバリア性が低下することにより、光学部材内部へ水蒸気が浸透し、他の水分耐性の無い部材の性能を著しく劣化させたり、金属製部材を腐食させたりするといったことが考えられる。このように、被キャリア体としてバリアフィルムを用いる際には従来と異なる特有の課題が存在するために、これに適したキャリアシートが必要となるが、このような検討は従来行われていなかった。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、バリアフィルムを被キャリア体とした、キャリアシート付バリアフィルムであって、より具体的には、ロール状態でバリアフィルムの表面にガスによる凹凸が生じないキャリアシート付バリアフィルム、さらには、バリアフィルムをキャリアシートから剥がした際に、そのバリアフィルムのバリア性を低下させないようなキャリアシート付バリアフィルムを提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、粘着剤層に配合する架橋剤が、水蒸気との反応によりガスを発生する反応基を実質的に有さないことにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
(1) バリアフィルムと、当該バリアフィルムを支持する基材フィルムとが、粘着剤層を介して剥離可能に固定されているキャリアシート付バリアフィルムであって、前記粘着剤層は架橋剤を含有し、該架橋剤は、水蒸気との反応によりガスを発生する反応基を実質的に有さないことを特徴とするキャリアシート付バリアフィルム。
(2) 該架橋剤は、実質的にイソシアネートを含有しない(1)に記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(3) 前記架橋剤は、エポキシ化合物及びアルミ系金属キレート化合物を含有する(1)又は(2)に記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(4) 前記粘着剤層の粘着剤成分は、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーである(1)から(3)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(5) 前記バリアフィルムは無機酸化物蒸着フィルムであり、蒸着面が前記粘着剤層側となるように固定される(1)から(4)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(6) 剥離後の前記バリアフィルムのJIS K7126における酸素透過度が、0.10cc/m・day・atm以下である(1)から(5)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(7) 剥離後の前記バリアフィルムのJIS Z−0208における水蒸気透過度が、0.20cc/m・day以下である(1)から(6)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(8) 剥離後の前記バリアフィルムが光学部材として用いられる(1)から(7)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
(9) (1)から(8)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルムを、ロール状態又は枚葉状態で積層してなるキャリアシート付バリアフィルム集合体。
(10) 前記基材フィルムの一方の面に前記粘着剤層を形成し、前記粘着剤層上に前記バリアフィルムの蒸着面を貼り合わせた後に、前記架橋剤による架橋反応を行う、(1)から(9)のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルムの製造方法。
本発明によれば、粘着剤層に配合する架橋剤が、水蒸気との反応によりガスを発生する反応基を実質的に有さないことにより、酸素ガス、炭酸ガス等をバリアするバリアフィルムを積層したキャリアシート付バリアフィルムであっても、バリアフィルムの表面にガスによる凹凸が生じず、さらに、バリアフィルムをキャリアシートから剥がした際に、そのバリアフィルムのバリア性を低下させない。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<粘着剤>
[樹脂]
本発明に用いる粘着剤に含まれる樹脂は、従来公知のものを用いることができる。したがって、粘着剤に用いる樹脂としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系のいずれであってもよいが、これらの中ではアクリル系が透明性、耐久性、耐熱性、コストに優れているので好ましい。アクリル系ポリマーとしては、特に限定されず、下記のアクリル系モノマー又はメタクリル系モノマーを重合させることにより得られる従来公知のものを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニル及び(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有モノマー、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー、フッ素置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル等のほか、スチレン及びメチルスチレン等のビニル基含有芳香族化合物、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル化合物等を挙げることができる。
[架橋剤]
本発明の粘着剤には架橋剤として、水蒸気との反応によりガスを発生する反応基を実質的に有さないものを用いる。水蒸気との反応によりガスを発生する反応基としては、例えばイソシアネート化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。
「ガスを発生する反応基を実質的に有さない」とは、粘着剤層に含まれる水蒸気と、ガスを発生する反応基と、が反応して、二酸化炭素等のガスが発生し、バリアフィルム表面に発泡が現れない程度に、架橋剤がガスを発生する反応基を有さないことをいい、粘着剤組成物中におけるガスを発生する反応基の好ましくない含有量は、その反応基の種類や反応のしやすさ等により異なるが、反応基がイソシアネート基である場合には、イソシアネート基の含有量が全組成物中の0.6質量%以下程度であればよい。ただし、好ましくはガスを発生する反応基(特にイソシアネート基)を全く有さない架橋剤である。
本発明のような物の場合には、通常、塗工する基材フィルムへの密着性が良好であるという理由から、イソシアネート系架橋剤を用いることが考えられるが、本発明ではイソシアネート系架橋剤ではなく、ガスを発生する反応基を実質的に有さない架橋剤を用いる点が特徴である。このような架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、アルミ系金属キレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、有機カルボン酸金属塩、亜鉛キレート化合物等が挙げられる。金属キレート化合物を用いることで、粘着剤を基材フィルムに塗布後、粘着剤に含まれる溶剤を揮発させる乾燥の際に、初期段階(被着体を貼り合わせる前)の架橋が行われる。この初期段階の架橋によって、粘着剤層には充分な粘着力が付与され、また、粘着剤層の凝集力が高められ凝集破壊を起こしにくい。このため、粘着剤を塗工した基材フィルムとバリアフィルムを貼り損ねても容易に貼り直すことができる。次いで、エポキシ系架橋剤は粘着剤を塗工した基材フィルムとバリアフィルムを貼り合わせた後、粘着剤層に残る反応基と架橋を行う。この架橋によって、バリアフィルムと粘着剤層との密着性が向上し、バリアフィルムの移送や加工が容易になるので好ましい。また、この架橋によって粘着剤層の凝集力はさらに高められ、バリアフィルムを剥がす際に粘着剤が凝集破壊し糊残りが生じることを防ぐことができ、バリアフィルムを剥がす際の粘着強度がバリアフィルムの蒸着層に影響を与えない程度に低くなるため好ましい。このような二段階の架橋によって、粘着剤層をバリアフィルムの蒸着面上に形成することができる。
エポキシ系架橋剤としては、特に限定はないが、その具体例として、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いられる。
エポキシ系架橋剤の配合量は特に限定されず、用途や用いる架橋剤に応じて適宜変更することができるが、樹脂100質量部に対して1.0質量部〜10.0質量部であることが好ましい。一般的に架橋剤の量が少なすぎると粘着剤層の凝集力が低下し、凝集破壊を生じやすくなるので、バリアフィルムを粘着剤層から剥がす際に糊残しが起こりやすく好ましくない。また、架橋剤の量が多過ぎると、過度に架橋が進み、ぬれ性が低下するので粘着強度が低下し好ましくない。特に本発明の場合においては、バリアフィルムが粘着剤層から剥がされる際にバリアフィルムのバリア性を低下させないようにする必要があることから、使用するバリアフィルムによっても架橋剤の好ましい配合量は異なるが、粘着強度が強すぎる場合にはバリアフィルムのバリア性の低下を招きやすいので、架橋剤の配合量は上記範囲が好ましい。
アルミ系金属キレート化合物としては、特に限定はないが、その具体例としては、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセテート、アルミニウム ジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウム ジ−i−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウム ジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム ジ−sec−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウム トリス(アセチルアセトナート)、アルミニウム トリス(エチルアセトアセトナート)、アルミニウム モノ−アセチルアセトナートビス(エチルアセトアセトナート)が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。なお、ポットライフの長期化、粘着剤を架橋する架橋速度の調整が容易という理由で、金属キレート化合物はアルミ系でなければならない。
アルミ系金属キレート化合物の配合量は特に限定されず、用途や用いるバリアフィルムによって適宜変更することができる。エポキシ系架橋剤と同様の理由で、本発明においてはアルミ系金属キレート化合物の配合量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して0.25質量部〜1.0質量部であることが好ましい。
上述の通り、本発明においては、エポキシ系架橋剤とアルミ系金属キレート化合物との併用が最も好ましい。併用すれば、エポキシ系架橋剤からは後期段階での架橋という効果が得られ、アルミ系金属キレート化合物からは初期段階での架橋という効果が得られるからである。
エポキシ系架橋剤の配合量とアルミ系金属キレート化合物の配合量との質量比(エポキシ系架橋剤:アルミ系金属キレート化合物)は、100:2.5〜100:100であることが好ましい。上記範囲内にあればバリアフィルムから粘着フィルムを剥がす際の剥離強度、粘着フィルムを剥がした後のバリア性が保持できるため好ましい。
[その他の成分]
本発明に用いる粘着剤には、さらに、任意成分として、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の従来公知の各種添加剤が添加されていてもよい。
<バリアフィルム>
本発明に用いるバリアフィルムとは、酸素ガス、炭酸ガス等の気体を一定量以下しか透過させないバリアフィルムのことであり、全く気体を透過させないものから一定量の気体を透過させるものまで含まれる。このように一定量の気体が透過してしまうバリアフィルムを含む理由は、気体の膨張と気体の透過のバランスが崩れれば、たとえ気体を透過するフィルムを用いたとしても粘着剤層から発生した炭酸ガス等がバリアフィルム表面に凹凸を作る可能性があるからである。バリアフィルムとしては上記性質を備えるものであれば特に限定されないが、蒸着基材上に蒸着膜を設けたものが特に好ましい。以下この蒸着基材上に蒸着膜を設けるバリアフィルムについて説明する。
[蒸着基材]
蒸着基材は、これに無機酸化物の蒸着膜を設けることから、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ、耐熱性を有する樹脂のフィルムを使用することが好ましい。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。これらの中でも、透明性が良い、表面平滑性が良い、印刷適性が良い、加工適性が良い、耐熱性が良い等の点からポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することが好ましい。
本発明は、バリアフィルム用のキャリア粘着シートであり、バリアフィルムを加工しやすいように加工時に一定の厚みを付与するものであるから、蒸着基材の厚さは、用途に応じて適宜変更することができ、25〜188μmのものが好ましく、特に38〜150μmのものが好ましく使用することができる。
蒸着基材の表面には、後述する無機酸化物の蒸着膜との密接着性等を向上させるために、必要に応じて、予め、所望の表面処理層を設けることができるものである。本発明において、上記の表面処理層は、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理を任意に施して設けることができる。上記の密接着性を改善する方法として、その他に、例えば、各種の樹脂の蒸着基材の表面に、予め、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、あるいは、蒸着アンカーコート剤層等を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。
[蒸着膜]
バリアフィルムを構成する無機酸化物の蒸着膜について説明すると、かかる無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)、又は、物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、その両者を併用して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜又は複合膜を形成して製造することができるものである。無機酸化物の蒸着膜としては、基本的に金属の酸化物を蒸着した薄膜であれば使用可能であり、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましいものとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。
蒸着膜の膜厚としては、使用する金属、又は金属の酸化物の種類等によって異なるが、
50Å〜3,000Åの範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。50Å未満であると、良好なバリア性は得られず、3,000Å以上であると蒸着膜が剥がれやすく、バリアフィルムを粘着剤層から剥がす際にバリアフィルムのバリア性がする。また、本発明において、無機酸化物の蒸着膜として使用する金属、又は金属の酸化物としては、1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
本発明に用いるバリアフィルムの炭酸ガス透過度は特に限定されない。上述の通り、粘着剤層で発生する(又は膨張する)炭酸ガスが、バリアフィルムを透過する前に、バリアフィルムの外観に凹凸を作るものであれば、本発明の効果は発揮されるからである。なお、本発明に用いるバリアフィルムは、酸素透過度(JIS K7126準拠)が0.10cc/m・day・atm以下であることが好ましい。この範囲の透過度であれば、炭酸ガス透過度に換算すると0.40cc/m・day・atm以下になるので、一般的な、水蒸気との反応により炭酸ガスを発生する反応基を有する架橋剤(例えばイソシアネート系架橋剤)を用いると、発生又は膨張した炭酸ガスが透過する前に、バリアフィルムの表面に凹凸を作るからである。
本発明に用いるバリアフィルムの水蒸気透過度は特に限定されない。本発明は粘着剤層で発生する炭酸ガス等のガスによる不具合を解決する技術だからである。したがって、用途に応じたものを使用することができる。なお、酸素ガス、炭酸ガス等気体透過度の低いバリアフィルムは一般的に水蒸気透過度も低いことから、およそ、本発明の効果が顕著に現れる水蒸気透過度(JIS Z−0208準拠)は0.20cc/m・day以下である。なお、水蒸気の透過度が上記範囲であれば、炭酸ガス透過度に換算すると0.40cc/m・day・atm以下になる。
本発明に用いるバリアフィルムは、バリアフィルム表面に生じる凹凸を抑えることができるため、光学用途に用いるような高い透明性が求められるバリアフィルムであっても好ましく用いることができる。光学用途に必要な透明性とはJISK−7613の方法を用いて測定される全光線透過率によって測定した場合、全光線透過率が85〜99%程度の透明性のことを示す。なお、透明性の高い蒸着基材(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等)を用いる必要がある。
本発明のキャリアシート付バリアフィルムは、加工が困難なバリアフィルムの加工が容易になるように、上記バリアフィルムをキャリアシートに貼り合わせる。本発明を用いることで、上記のような高い透明性が求められ、高度な加工技術が要求されているような光学用バリアフィルムの加工を容易にすることができる。
[基材フィルム]
本発明に用いる基材フィルムは特に限定されず従来公知のものを用いることができる。従来公知の基材フィルムとしては、例えばプラスチックフィルム、紙等のことである。プラスチックフィルムとしては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール若しくはエチレン−ビニルアルコール共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン若しくはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル若しくはポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、又は、ポリアミド系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも特にポリエチレンテレフタレートが透明性、耐熱性、コストで優れているので好ましい。
基材フィルム表面には粘着剤層との密着性を向上するために、易接着処理をすることが好ましい。バリアフィルムの加工後、容易にバリアフィルムを粘着剤層から剥がすことができるからである。易接着処理としては、従来公知のものを用いることができる。
基材フィルムの厚みは特に限定されず、バリアフィルムの加工が容易になるような厚さに適宜変更することができる。25〜188μmのものが好ましく、特に38〜150μmのものが好ましく使用することができる。
基材フィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、押し出して冷却することにより、製造することができる。
<キャリアシート付バリアフィルム集合体>
キャリアシート付バリアフィルム集合体とは、バリアフィルム/粘着剤層/基材フィルムの積層構成が複数重なる部分が含まれるものをいう。例えば、本発明のキャリアシート付バリアフィルムを複数枚重ねた枚葉状態の集合体、1枚又は複数のキャリアシート付バリアフィルムをロール状に巻き取って、ロール状態で積層してなる集合体が挙げられる。このように、上記積層構成が複数重なると、粘着剤層がバリアフィルムとバリアフィルムとで挟まれた部分が集合体中に現れる。このため、粘着剤層でガスが発生又は膨張した場合に、このガスがバリアフィルム表面に凹凸を作る危険性が高まるので、本発明の効果が十分に発揮される。なお、通常の基材フィルムであれば、十分にガスを透過するため、このような集合体でなければ本発明の必要性は見出せないようにも思われるが、たとえ一枚のキャリアシート付バリアフィルムであっても、基材フィルムの裏面をガスが透過しないような部材で、さらに仮止めして、バリアフィルムの加工を行うことも考えられることから、基材フィルムがガスを透過することが、バリアフィルム表面にガスの不具合による凹凸を生じさせないこととはいえない。
バリアフィルムを粘着剤層に貼り合わせ、粘着剤を硬化させた後に、粘着剤層とバリアフィルムとの間に空間があると、後の加熱処理によって空間が膨張しバリアフィルムの表面に凹凸が生じる。本発明を用いれば、粘着剤層からガスが発生しないのでバリアフィルムと粘着剤層との間に空間が発生することを抑えることができる。
また、バリアフィルムを粘着剤層に貼り合わせた後に、圧力を加える場合も考えられるが、その場合であっても、本発明の集合体は、粘着剤層からの発泡を抑えるため、バリアフィルムの表面に凹凸が生じることを防げる。
本発明のキャリアシート付バリアフィルムはバリアフィルムに対して加工を行いやすいように、バリアフィルムをキャリアシートに積層させている。したがって、加工後にはバリアフィルムを粘着剤層から剥がすことになる。加工後のバリアフィルムを粘着剤層から剥がす際にバリアフィルムの蒸着膜に剥離力が加わり、バリアフィルムの蒸着膜にクラック等が発生することによってバリアフィルムのバリア性が低下してしまう。これを防止するために粘着剤層の粘着強度はバリアフィルムを加工の際に仮止めする程度は必要であるが、それ以上の剥離強度はバリアフィルムのバリア性低下を防ぐという観点から不要である。必要な粘着強度はその加工によって異なるため、用途に応じて適宜変更することになるが、粘着強度は10gf/25mm〜35gf/25mmであることが好ましい。粘着強度が上記範囲内にあれば、バリアフィルムのバリア性にほとんど影響を与えないからである。バリアフィルムのバリア性が著しく低下すれば、実質的に剥離可能とはいえないからである。上記の通り、バリアフィルムのバリア性(酸素透過度、水蒸気透過度)は、上記剥離前のバリア性よりも低下するが、一般的には、剥離後の酸素透過度が0.10cc/m・day・atm以下、水蒸気透過度が0.20cc/m・dayであれば、バリアフィルムとして好ましく利用できる。
特に集合体はRoll to Rollで製造する場合が多い。本発明の集合体も加工が困難な薄いバリアフィルムを加工が行いやすいようにキャリア粘着シートに積層させた製品であり、基材フィルム、粘着剤層、バリアフィルムはRoll to Rollで製造することが本発明の集合体の生産を容易にする観点から好ましい。したがって、Roll to Rollで製造するために本発明の集合体はロール状であることが好ましい。
また、バリアフィルムに対しての加工においては、さらなる層を積層する場合が考えられる。その積層の際にもRoll to Rollで行う場合が多い。したがって、本発明の使用を容易にする観点からも本発明の集合体はロール状であることが好ましい。
さらに、保管や運搬の際においても、ロール状であれば、より多くのバリアフィルムを貼り付けたキャリア粘着シートがよりコンパクトになるので好ましい。
<キャリアシート付バリアフィルムの製造方法>
先ず、基材フィルムに粘着剤を塗工し、基材フィルム表面に粘着剤層を形成する。粘着剤の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、公知の塗布方法を用いることができる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレ−コート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法、ダイコート法、ドクターブレ−ド法、コンマコート法等を挙げるコートができ、中でもロールコート法、リバースコート法、ダイコート法、コンマコート法が好ましい。また、塗布された粘着剤層の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥法、赤外線乾燥法等を挙げることができる。
粘着剤層を基材フィルム表面に形成後、その粘着剤層に上記バリアフィルムを貼り合わせる。貼りあわせる方法は特に限定されないが、生産効率を高める観点からRoll to Rollであることが好ましい。
また、粘着剤層の硬化は、バリアフィルム貼り合わせ前に行ってもよいが、バリアフィルム貼り合わせ後に行うことが好ましい。バリアフィルム貼り合わせ後に粘着剤層の硬化を行うことで、硬化前の粘着剤はバリアフィルム表面の微小な凹凸に入り込むことができる。このため、バリアフィルム貼り合わせ後の架橋剤の硬化は、バリアフィルム貼り合わせ前の硬化と比較して、粘着剤層とバリアフィルムとの間に微小な空間が生じることを防ぐ効果がある。微小な空間であればバリアフィルムの表面に凹凸を生じさせることはないため問題ないようにも思われるが、バリアフィルムはキャリア粘着シートとともに何らかの加工が施される。このような加工には、加熱や加圧を含むものもあり、特に加熱すれば空間が膨張して、バリアフィルムの表面に凹凸が生じてしまう。したがって、本発明のキャリアシート付バリアフィルムは、バリアフィルムを粘着剤層に貼り付けた後、粘着剤を硬化させることで、加熱加工が必要なバリアフィルム用に好ましく使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<集合体の製造1>
表1、表2に示す材料を表1、表2に示す割合で均一に混合し、実施例用及び比較例用の粘着剤を製造した。
基材フィルムとして厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(東洋紡製、商品名「E5100」)を用い、当該基材フィルムに対して実施例及び比較例の粘着剤を表1、表2に示す塗工量で塗工し、塗工後オーブンにて100℃×1分の乾燥条件で溶媒を揮発させ、当該基材フィルム表面に粘着剤層を形成した。
バリアフィルムとして厚さ12μmのバリアPET(大日本印刷製、商品名「IB−PET−XB」)を用い、蒸着面が粘着剤層と接するようにラミネートし、キャリアシート付バリアフィルムを作製した。そのキャリアシート付バリアフィルムを3インチ紙間にロール状に巻き取り(幅1,000mm、長さ2,000m)、オーブンにて40℃×3日間の条件でエージング処理を行った。上記操作によって、ロール状の実施例のキャリアシート付バリアフィルム集合体及び比較例のキャリアシート付バリアフィルム集合体を得た。
<評価1>
実施例及び比較例のキャリアシート付バリアフィルムの粘着剤層とバリアフィルムとの間に発泡(空間)があるか否かを調べた。発泡が確認できた場合を×、発泡が確認できなかった場合を○として評価した。評価結果を表1、表2に示す。
<評価2>
実施例及び比較例のキャリアシート付バリアフィルム集合体からキャリアシート付バリアフィルムを切り出し、JIS Z0237の規格に準拠した条件でそのキャリアシート付バリアフィルムからバリアフィルムを剥離角180°、剥離速度300mm/分、室温下の条件で、キャリアシート付バリアフィルムの長さ方向に剥がすことにより、剥離強度(粘着強度)を測定した。測定はキャリアシート付バリアフィルム集合体の作製後、30分室温常湿度環境下に放置した後に行った。なお、180°剥離強度測定には、エーアンドディー社製の万能試験機RTF−1150−Hを用いた。測定結果を表1、表2に示した。
<評価3>
剥離後の実施例及び比較例のバリアフィルムの酸素透過度と水蒸気透過度を測定した。酸素透過度は、JIS K7126の規格に準拠した条件である23℃、90%RHの条件で、酸素透過度装置(MOCON社製、商品名「OX−TRAN2/20」)を用いて測定した。水蒸気透過度は、JIS Z−0208の規格に準拠した条件である40℃、90%RHの条件で、透湿度測定装置(MOCON社製、商品名「PERMATRAN3/31」)を用いて測定した。それぞれの測定結果を表1、表2に示した。なお、剥離前のバリアフィルムの酸素透過度と水蒸気透過度はそれぞれ0.03cc/m・day・atm、0.10cc/m・dayであった。
表1、表2の結果から分かるように、エポキシ系架橋剤を用いることで、集合体中に現れる発泡を防ぐことができること、バリアフィルムのバリア性が低下しないこと、が確認された。
Figure 2009226621
Figure 2009226621
<集合体の製造2>
表3に示す材料を表3に示す割合で均一に混合し、実施例6、及び実施例7に用いる粘着剤を作製した。そして、実施例6については、上記集合体の製造と同様の方法でキャリアシート付バリアフィルム集合体を作製した。実施例7については、基材フィルムに粘着剤を塗工し、塗工後オーブンにて100℃×1分間の乾燥条件で溶媒を揮発させ、当該基材表面に粘着層を形成させ、PETセパレーター(藤森工業製、商品名「フィルムバイナ38E−0010BD」)とラミネートし、巻き取り集合体とした後、エージング処理を行い、エージング完了後、PETセパレーターを剥がし、バリアフィルムとラミネートを行った。
<評価4>
実施例6、及び実施例7の集合体に対して、150℃×10分間の条件で加熱を行った。その後、実施例6、7の集合体に現れた発泡数を比較した。結果を表3に示した。
表3から分かるように、バリアフィルムとラミネートされた集合体を巻き取り後にエージング処理を行うことで、より、バリアフィルム表面に気泡原因の凹凸が生じることを防ぐことが確認された。
Figure 2009226621

Claims (10)

  1. バリアフィルムと、当該バリアフィルムを支持する基材フィルムとが、粘着剤層を介して剥離可能に固定されているキャリアシート付バリアフィルムであって、
    前記粘着剤層は架橋剤を含有し、該架橋剤は、水蒸気との反応によりガスを発生する反応基を実質的に有さないことを特徴とするキャリアシート付バリアフィルム。
  2. 該架橋剤は、実質的にイソシアネートを含有しない請求項1に記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  3. 前記架橋剤は、エポキシ化合物及びアルミ系金属キレート化合物を含有する請求項1又は2に記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  4. 前記粘着剤層の粘着剤成分は、アクリル系ポリマーである請求項1から3のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  5. 前記バリアフィルムは無機酸化物蒸着フィルムであり、蒸着面が前記粘着剤層側となるように固定される請求項1から4のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  6. 剥離後の前記バリアフィルムのJIS K7126における酸素透過度が、
    0.10cc/m・day・atm以下である請求項1から5のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  7. 剥離後の前記バリアフィルムのJIS Z−0208における水蒸気透過度が、
    0.20cc/m・day以下である請求項1から6のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  8. 剥離後の前記バリアフィルムが光学部材として用いられる請求項1から7のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルム。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルムを、ロール状態又は枚葉状態で積層してなるキャリアシート付バリアフィルム集合体。
  10. 前記基材フィルムの一方の面に前記粘着剤層を形成し、
    前記粘着剤層上に前記バリアフィルムの蒸着面を貼り合わせた後に、前記架橋剤による架橋反応を行う、請求項1から9のいずれかに記載のキャリアシート付バリアフィルムの製造方法。
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