以下、本発明の車両走行制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図13を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、内燃機関と、内燃機関の出力を駆動軸に伝達する無段変速機とが搭載された車両に設けられ、内燃機関の回転数の目標値である目標回転数を実現するように内燃機関および無段変速機を制御する車両走行制御装置に関する。
本実施形態では、エンジン(内燃機関)と、エンジンの出力を駆動軸に伝達する無段変速機とが搭載された車両において、エンジンの回転速度(回転数)の目標値である目標エンジン回転速度(目標回転数)を実現するようにエンジンおよび無段変速機が制御される。加速時には、エンジンの音圧特性に応じて目標エンジン回転速度を制御することにより、加速リニア感を向上させる。
より具体的には、車速に対して比例的に目標エンジン回転速度を変動させる制御を基本とし、エンジン回転速度の増加に対するエンジン音圧の上昇が低い領域においては、変速比をより低速側へ設定する。すなわち、エンジン音圧の上昇が緩やかで運転者が加速感を感じにくいエンジン回転速度の領域では、エンジン回転速度の上昇を促進させる。これにより、エンジン音圧の上昇速度を高めて、加速時に運転者や搭乗者がエンジン回転上昇の停滞感を感じることを抑制する。
一方、エンジン回転速度の増加に対してエンジン音圧の上昇が高い領域においては、変速比をより高速側へ設定する。すなわち、エンジン音圧の上昇が急激で運転者がエンジン音をうるさいと感じやすいエンジン回転速度の領域では、エンジン回転速度の上昇を緩やかにする。これにより、エンジン音圧の上昇速度を抑え、騒音を低減することができる。
ここで、エンジン音圧の特性に応じて目標エンジン回転速度を制御し、車速の増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とすることにより、加速リニア感が向上するものの、車速の上昇に対してエンジン音圧が比例的に上昇する場合、加速が持続している間において、エンジン音圧が単調な変化となる。
本実施形態では、一定レベル以上の加速が長時間続いた場合、運転者はさらなる加速を求めていると判断して、目標エンジン回転速度にエンジン音圧特性に基づいて算出される補正量を加算し、エンジン音圧の上昇を高めることで加速感を向上させる。
本実施形態の構成としては、以下の(1)から(5)の構成を備えていることが前提となる。
(1)内燃機関
(2)無段変速機(CVT,HV車両に設けられる無段変速機(無段式の変速機構)など)
(3)駆動力制御装置(特に、アクセル入力に対して目標駆動力が決定される制御構造)
(4)アクセルペダル
(5)アクセルペダル変位センサー
図1は、本実施形態の駆動力制御に係るブロック図である。
図1において、符号1は、エンジン(内燃機関)を示す。エンジン1の出力トルクは、無段変速機2へ伝達される。無段変速機2は、変速比を無段階(連続的)に制御するものであり、エンジン1の出力を図示しない駆動軸へ伝達する。エンジン1の出力軸(図示せず)は、無段変速機2の入力軸(図示せず)と連結可能に構成されており、無段変速機2の入力回転速度(入力軸回転速度)は、エンジン1の回転速度であるエンジン回転速度(出力軸回転速度)と対応している。なお、本実施形態の車両走行制御装置は、CVTやHV車両の無段変速機(無段式の変速機構)など、車速に応じて無段変速機2の入力回転速度(エンジン回転速度)の目標値が設定される種々の無段変速機に適用可能である。
エンジン1および無段変速機2が搭載された車両(図示せず)には、車両を制御する車両走行制御装置100が設けられている。車両走行制御装置100は、エンジン回転速度の目標値である目標エンジン回転速度を実現するように、エンジン1および無段変速機2を制御する。より具体的には、車両走行制御装置100は、目標駆動力に基づいて目標エンジン回転速度を算出し、算出された目標エンジン回転速度を実現するように無段変速機2の目標入力回転速度を設定する。車両走行制御装置100は、目標エンジン回転速度、およびこれに対応して設定される目標エンジントルクに基づいてエンジン1の運転制御を実行すると共に、目標入力回転速度に基づいて無段変速機2の変速制御を実行する。
車両走行制御装置100は、目標駆動力算出部10と、制御量算出部20と、制御部30とを有する。車両走行制御装置100は、周知のマイクロコンピュータによって構成され、図示しないCPU、RAM、ROM、入力ポート、出力ポート、及びコモンバスを備えている。本実施形態の車両走行制御装置100は、車両が加速状態にあるか否かを判定する状態判定手段、運転者の加速要求を検出する加速要求検出手段、および、加速要求検出手段により加速要求が予め定められた所定時間以上継続して検出されているか否かを判定する継続判定手段としての機能を有する。
目標駆動力算出部10は、アクセル開度(アクセル操作量)accpおよび車速spdに基づいて、目標駆動力Ftgtを算出する。目標駆動力算出部10には、アクセル開度検出手段3、および車速検出手段4が接続されている。アクセル開度検出手段3は、図示しないアクセルに対する運転者の操作量であるアクセル操作量を検出する。なお、アクセルとは、所謂アクセルペダルに限らず、運転者が要求する加速度(駆動力)を車両に指示する操作機器のことである。アクセル操作量に基づいて、運転者の加速要求の大きさが検出(推定)される。アクセル開度検出手段3は、アクセルが全開とされた場合のアクセル開度を100%とするアクセル開度accp[%]を検出し、検出結果に対応する信号を目標駆動力算出部10に出力する。目標駆動力算出部10は、アクセル開度検出手段3から取得した信号に基づいてアクセル開度accpを検出する。
車速検出手段4は、車両の速度である車速spdを検出するものである。車速検出手段4は、例えば、車速spdに比例する無段変速機2の出力軸の回転数を検出し、検出結果に対応する信号を目標駆動力算出部10に出力する。目標駆動力算出部10は、車速検出手段4から取得した信号に基づいて車速spdを検出する。
目標駆動力算出部10は、検出されたアクセル開度accpおよび車速spdに基づいて、図2に示すマップを参照して目標駆動力Ftgtを算出する。図2において、横軸は車速spd、縦軸は駆動力forceをそれぞれ示す。符号accp1、accp2、およびaccp3は、アクセル開度accpの大きさに応じた車速spdと目標駆動力Ftgtとの関係を示す曲線である。accp1からaccp3の順でアクセル開度accpが大きな値となっている。図2に示すように、所定の車速spdに対して、アクセル開度accpが大きな値となるほど、目標駆動力Ftgtが大きな値として算出される。目標駆動力算出部10は、算出された目標駆動力Ftgt、および車速spdを制御量算出部20に出力する。
図1に示すように、制御量算出部20は、目標出力算出部21および目標制御量算出部(設定手段)22を有する。目標出力算出部21は、目標駆動力算出部10から取得した目標駆動力Ftgtおよび車速spdに基づいて、エンジン1の目標パワー(目標出力)Pを算出する。目標出力算出部21は、目標駆動力Ftgtと車速spdの乗算により目標パワーPを算出する。
目標制御量算出部22は、目標出力算出部21で算出された目標パワーPに基づいて、目標制御量を算出する。ここで、目標制御量は、エンジン回転速度NINの目標値である目標エンジン回転速度nintgt、および、エンジン1の出力トルクTEの目標値である目標エンジントルクtrqtgtである。なお、上述したように、無段変速機2の入力回転速度(入力軸回転速度)は、エンジン回転速度(出力軸回転速度)NINと対応している。以下の説明では、無段変速機2の入力回転速度の目標値である目標入力回転速度が、目標エンジン回転速度nintgtと等しい値に設定されるものとして説明する。すなわち、目標回転速度が、エンジン1の回転速度の目標値を示す場合には、「目標エンジン回転速度nintgt」と記述し、無段変速機2の入力回転速度の目標値を示す場合には、「目標入力回転速度nintgt」と記述する。
図1に示すように、算出された目標エンジン回転速度nintgtおよび目標エンジントルクtrqtgtは、目標制御量算出部22から制御部30へ出力される。制御部30は、エンジン1の運転制御を行う運転制御手段および無段変速機2の変速制御を行う変速制御手段としての機能を有する。制御部30は、エンジン1に接続されており、制御部30からエンジン1へ、エンジン1の運転状態を制御するための指令値が出力される。制御部30は、目標エンジン回転速度nintgtおよび目標エンジントルクtrqtgtを実現するようにエンジン1を制御する。また、制御部30は、無段変速機2に接続されており、制御部30から無段変速機2へ変速比の目標値(目標変速比)を示す信号が出力される。制御部30は、エンジン回転速度NIN(無段変速機2の入力回転速度)を目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtとするように無段変速機2の目標変速比を決定する。無段変速機2は、制御部30から取得した目標変速比に従って変速を実行する。
本実施形態の目標制御量算出部22は、基本的に目標エンジン回転速度nintgtを車速spdに比例させる。すなわち、車速spdの増加に連れて比例的に目標エンジン回転速度nintgtを増加させる。これにより、以下に説明するように、加速時にエンジン音に対して運転者が違和感を覚えることを抑制する。
加速時に、車速spdが増加しているにもかかわらず、エンジン回転速度NINが増加しなかったり、エンジン回転速度NINが増加したとしても、その増加量が車速spdの増加に比例していなかったりした場合、運転者が車速spdの変化に応じた加速感を得ることができずに、エンジン音に対して違和感を覚えることがある。これに対して、基本的に目標エンジン回転速度nintgtを車速spdに比例させることにより、加速時に運転者に違和感を与えることを抑制することができる。
しかしながら、エンジン回転速度NINが車速spdに比例して上昇しているにもかかわらず、エンジン回転速度NINの領域によっては、エンジン音の音圧であるエンジン音圧が上昇せず、もたつき感が感じられたり、逆に、エンジン音圧が急激に上昇してエンジン音がうるさく感じられたりするという問題がある。これは、以下に図3および図4を参照して説明するように、エンジン回転速度NINとエンジン音圧とが非線形の関係にあるためである。
図3は、エンジン回転速度NINとエンジン音圧との関係の一例を示す図である。図3には、車室内で検出されるエンジン音圧が示されている。ここで、エンジン音とは、エンジン1の本体で発生する燃焼音等や、エンジン1の排気通路(図示せず)において発生する排気音等のエンジン1の運転に伴って発生する音である。エンジン1の運転に伴って発生する音を車室内で検出したときの音圧が図3に示すエンジン音圧である。言い換えると、エンジン音圧とは、実際に運転者(搭乗者)が感じるエンジン1の運転に伴って発生する音の大きさである。
符号101(実線)は、エンジン音圧の実測値を示し、符号102(破線)は、エンジン音圧の計算値を示す。エンジン回転速度NINとエンジン音圧101,102とは非線形な関係にあり、符号R1に示すように、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧101,102の上昇が緩やか、もしくはほとんど上昇しない領域がある一方、符号R2に示すように、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧101,102が大きく上昇する領域がある。このため、図4を参照して説明するように、加速条件によっては、エンジン音圧101があまり上昇しない、または過度にエンジン音圧101が上昇する現象が生じていた。
図4は、加速時におけるエンジン回転速度NINとエンジン音圧101の時間的な推移の一例を示す図である。図4において、横軸は時間、縦軸はエンジン回転速度NINおよびエンジン音圧を示す。加速時にエンジン回転速度NINを一律に車速spdに比例させる無段変速機2の変速制御を実施した場合、符号R3に示すようなエンジン音圧101の上昇が停滞する現象や、符号R4に示すようなエンジン音圧101が過度に上昇する現象が生じてしまう。
本実施形態では、以下に図5から図7を参照して説明するように、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となるように、目標エンジン回転速度nintgtが補正される。これにより、加速時に車速spdの増加に対してエンジン音圧の上昇が停滞したり、エンジン音圧が過度に上昇したりすることを抑制できる。
ここで、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的であるとは、例えば、車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量との間の関係が線形である、すなわち、車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量との比が一定であることを示す。また、車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量との間の関係が完全な線形とならなくとも、エンジン1の音圧特性に基づいて、目標エンジン回転速度nintgtを補正することで、エンジン1の音圧特性が考慮されない場合と比較して、車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量との関係をより線形に近くなるようにすることも、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とすることに含まれる。言い換えると、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とすることには、エンジン1の音圧特性に基づいて、エンジン1の音圧特性が考慮されない場合と比較して、車速spdの増加量に対するエンジン音圧の増加量の変動を抑制する、すなわち、車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量との比の変動幅を小さくすることが含まれる。
図5は、エンジン1におけるエンジン回転速度NINとエンジン音圧との関係を示す図である。図6は、エンジン回転速度NINを車速spdに比例させる場合の変速線(符号202参照)と、本実施形態の制御により加速時において目標エンジン回転速度nintgtが補正される場合の変速線(符号203参照)とを示す図である。図7は、本実施形態の制御により加速時において目標エンジン回転速度nintgtが補正された場合の効果について説明するための図である。
図5において、符号201は、エンジン回転速度NINに対する車室内の音圧レベルを示す。上述したように、エンジン音圧201には、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧201の上昇が停滞する領域R5と、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧201が大きく上昇する領域R6とが存在する。
このように、エンジン回転速度NINの領域によってエンジン回転速度NINの増加量に対するエンジン音圧201の増加量の変動があるにもかかわらず、図6に符号202で示すように、一律にエンジン回転速度NINを車速spdに比例させるような変速制御がなされた場合には、以下に図7を参照して説明するように、加速時にエンジン音圧の上昇が停滞したり、エンジン音圧が過度に上昇したりする。
図7において、符号204は、加速時にエンジン回転速度NINを車速spdに比例させた場合(符号206参照)のエンジン音圧の時間的な推移を示し、符号205は、本実施形態において目標エンジン回転速度nintgtが補正された場合(符号207参照)のエンジン音圧の時間的な推移を示す。加速時に一律にエンジン回転速度NINを車速spdに比例させた場合には、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧の上昇が停滞する領域(図5の符号R5参照)に対応して、図7に符号R7に示すように、エンジン回転速度206が増加しているにもかかわらず、エンジン音圧204が上昇しない現象が生じる。このように、エンジン音圧204があまり上昇しない場合、運転者が十分な加速感を感じにくい。このため、運転者が加速に「伸び感」を感じる領域は、矢印Y1で示す狭い領域(加速条件)に限られてしまうという問題があった。
これに対して、本実施形態では、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となるように、目標エンジン回転速度nintgtが補正される。すなわち、本実施形態の加速時の変速線203(図6参照)では、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧の上昇が停滞する領域R5においては、符号210に示すように、車速spdの増加量に対してエンジン回転速度NINを大きく上昇させる。この場合、無段変速機2をより低速側の変速比に変速させることでエンジン回転速度NINを上昇させる。これにより、エンジン音圧205(図7参照)の上昇率の変動を抑制し、エンジン音圧205の上昇が停滞する時間を短くすることで、停滞感を抑制して、運転者が加速に「伸び感」を感じるようにすることができる。
一方、本実施形態の加速時の変速線203(図6参照)において、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧が大きく上昇する領域R6では、符号211に示すように、車速spdの増加に対してエンジン回転速度NINの上昇を抑制させる。この場合、無段変速機2をより高速側の変速比に変速させることでエンジン回転速度NINの上昇を緩やかにする。これにより、エンジン音圧205(図7参照)が過度に上昇することを抑制し、エンジン音がうるさく感じられる領域を減少させることができる。
このように、加速時に車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となるように、目標エンジン回転速度nintgtを補正することにより、幅広い加速条件において、適度なエンジン音圧205の上昇を確保することができる。その結果、エンジン音に対するリニア感が向上して、幅広い加速条件において加速フィーリングが向上する。図7に矢印Y2に示すように、加速時の広い速度領域において運転者が加速に「伸び感」を感じることができるようになる。
図8は、本実施形態の加速時におけるエンジン回転速度NINと出力トルクTEの目標値を示す線図である。図8において、符号103は、エンジン音圧が等しくなるエンジン回転速度NINと出力トルクTEとの組み合わせ(動作点)を結んだ等音圧線を示す。符号104は、エンジン1の音圧特性(等音圧線103の分布)に基づいて、加速時において車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量とが比例的となるように定められたエンジン回転速度NINと出力トルクTEの目標値を示す特性線を示す。
以下に図9を参照して説明するように、加速時には、目標エンジン回転速度nintgtに対して、車速spdに比例させる基本の値に補正量を加算することで、特性線104に基づいて決定される値(車速spdの増加量とエンジン音圧の増加量とを比例させる値)へ変更する補正がなされる。
図9は、本実施形態の加速時における目標エンジン回転速度nintgtと目標エンジントルクtrqtgtの補正内容について説明するための図である。符号P1,P2,およびP3は、エンジン1の出力(パワー)が等しくなる等パワー線を示す。エンジン1の動作点(エンジン回転速度NINと出力トルクTEの組み合わせ)が同一の等パワー線上にある場合には、エンジン1の出力(パワー)が等しくなる。符号P1で示す等パワー線から符号P3で示す等パワー線の順でエンジン1の出力が大きな値となる。
目標出力算出部21で算出された目標パワーPに対応する等パワー線が符号P2で示す等パワー線である場合を例に、目標エンジン回転速度nintgtの補正方法について説明する。エンジン回転速度NINを車速spdに比例させるように算出された基本の目標エンジン回転速度nintgtが、符号NIN1で示す値であった場合、これを等パワー線P2と特性線104との交点に対応する値NIN2とするように、目標エンジン回転速度nintgtに補正量が加算される。すなわち、エンジン1の目標パワーPはそのまま(同一の等パワー線上)で、エンジン1の動作点を特性線104上の点に変更する補正がなされる。この場合、目標エンジン回転速度nintgtの補正に伴い、目標エンジントルクtrqtgtは、符号TE1に示す値から符号TE2に示す値に変更される。
エンジン音圧は、エンジン回転速度NINだけでなく、エンジン1の出力トルクTEによっても異なるため、本実施形態では、目標エンジン回転速度nintgtの補正量は、エンジン回転速度NINと出力トルクTEとに基づいて設定される。それぞれのエンジン回転速度NINと出力トルクTEとの組み合わせに対する目標エンジン回転速度nintgtの補正量を定めたマップが、目標制御量算出部22に記憶されている。目標制御量算出部22は、加速時に上記マップを参照して目標エンジン回転速度nintgtを補正する。
次に、図10および図11を参照して、本実施形態の動作について説明する。図10は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。図11は、本実施形態の制御が行われた場合の無段変速機2の入力回転速度の目標値の推移を示す図である。
まず、ステップS10では、目標駆動力算出部10により、車速spdが検知される。目標駆動力算出部10は、車速検出手段4の検出結果に基づいて車速spdを検知する。
次に、ステップS20では、目標駆動力算出部10により、アクセル開度accpが検知される。目標駆動力算出部10は、アクセル開度検出手段3の検出結果に基づいてアクセル開度accpを検知する。
次に、ステップS30では、車両走行制御装置100により、ステップS10で検知された車速spdとステップS20で検知されたアクセル開度accpとに基づいて判定閾値αが算出される。判定閾値αは、車両が加速状態にあるか否かを判定するためのアクセル開度accpの閾値である。言い換えると、判定閾値αにより、運転者が車両を加速させることを要求しているか否かが判定される。判定閾値αは、例えば、現在の車速spdとアクセル開度accpとから算出される目標駆動力Ftgtが車速spdを増加させる値であるか否かを判定する閾値として算出される。ステップS30が実行されると、ステップS40に進む。
ステップS40では、車両走行制御装置100により、ステップS20で検知されたアクセル開度accpが判定閾値αよりも大であるか否かが判定される。その判定の結果、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であると判定された場合(ステップS40−Y)には、ステップS50に進み、そうでない場合(ステップS40−N)には本制御フローは終了される。ステップS40で否定判定がなされた場合、エンジン回転速度NINを車速spdに比例させるように、目標エンジン回転速度nintgtおよび目標エンジントルクtrqtgtが設定される。
ステップS50では、車両走行制御装置100により、加速判定フラグがセットされる。加速判定フラグは、車両が加速状態にある場合、すなわち、運転者が車両を加速させることを要求している場合にセットされる。
次に、ステップS60では、制御部30により、無段変速機2の入力回転速度の目標値である目標入力回転速度nintgtが算出される。上述したように、目標入力回転速度nintgtは、目標エンジン回転速度nintgtと等しい値である。
目標出力算出部21は、目標駆動力算出部10により算出された目標駆動力Ftgtに基づいて、目標パワーPを算出する。目標制御量算出部22は、目標パワーPに基づいて、目標エンジン回転速度nintgtを算出する。このステップS60で算出される目標エンジン回転速度nintgtは、エンジン回転速度NINを車速spdに比例させる値として算出される基本の値である。目標入力回転速度nintgtは、制御部30により、目標エンジン回転速度nintgtと等しい値に設定される。図11において、符号221は、ステップS60で算出される基本の目標入力回転速度nintgtを示す。
次に、ステップS70では、制御部30により、目標入力回転速度nintgtの補正量が算出される。目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)の補正量は、入力回転速度およびアクセル開度accp(負荷状態)に基づいて算出される。言い換えると、目標入力回転速度nintgtの補正量は、目標エンジン回転速度nintgtの補正量と同様に、エンジン1の目標パワーPはそのままで、エンジン1の動作点を特性線104(図9参照)上の点に変更する値として算出される。
目標制御量算出部22は、エンジン回転速度NINおよび出力トルクTEに基づいて、予め記憶されたマップを参照して目標エンジン回転速度nintgtの補正量を算出する。同様に、制御部30は、入力回転速度および出力トルクTEに基づいて、予め記憶されたマップを参照して目標入力回転速度nintgtの補正量を算出する。図11において、符号223は、目標入力回転速度nintgtの補正量を示す。
次に、ステップS80では、制御部30により、ステップS60で算出された目標入力回転速度nintgt(221)にステップS70で算出された目標入力回転速度nintgtの補正量223が加算される。図11において、符号222は、目標入力回転速度nintgtの補正量223が加算された後の目標入力回転速度nintgt、すなわち、最終的な目標入力回転速度nintgtを示す。また、目標制御量算出部22は、ステップS60で算出された目標エンジン回転速度nintgtにステップS70で算出された目標エンジン回転速度nintgtの補正量を加算して最終的な目標エンジン回転速度nintgtを算出する。ステップS80が実行されると、本制御フローはリターンされる。
制御部30は、ステップS80で算出された最終的な目標入力回転速度nintgt(212)に基づいて無段変速機2を変速制御すると共に、ステップS80で算出された最終的な目標エンジン回転速度nintgtとこれに対応して設定される目標エンジントルクtrqtgtに基づいてエンジン1を運転制御する。
以上説明した制御により、加速時において、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となるように、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtが設定される。これにより、加速時においてエンジン音圧の上昇が停滞したり、エンジン音圧が過度に上昇したりすることを抑制し、適度なエンジン音圧の上昇を確保することができる。その結果、エンジン音に対するリニア感が向上して、幅広い加速条件において加速フィーリングが向上する。
また、本実施形態では、加速時に車速spdの増加に連れてエンジン回転速度NINおよびエンジン音圧が共に上昇するため、運転者に対して車速の変化に応じた加速感を適切に与えることができる。
ここで、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtを補正することに代えて、エンジン音圧を調節する手段として、例えば、排気通路等に音圧を調節する装置を設けることが考えられるが、この場合、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とすることは困難である。これは、エンジン回転速度NINの変化量に対するエンジン音圧の変化量がエンジン回転速度NINの領域によって異なることや、エンジン回転速度NINによりエンジン音の周波数成分が異なることなどによる。これに対して、本実施形態では、予め求められたエンジン回転速度NINとエンジン音圧との間の特性(エンジン音圧の特性)に基づいて、車速spdに応じてエンジン回転速度NINを制御する。これにより、容易に車速spdの増加量に対するエンジン音圧の増加量を比例的とすることができる。
なお、本実施形態では、車速spdの増加量に対して比例的に増加されるエンジン音圧が、車室内で検出されるエンジン音の音圧であったが、これに代えて、例えば、車室の外で検出されるエンジン音の音圧を車速spdの増加量に対して比例的に増加させてもよい。この場合であっても、車速spdの増加に応じて運転者が感じるエンジン音圧を増加させることが可能であり、運転者に対して車速spdの変化に応じた加速感を与える効果を奏することができる。
上記では、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtの補正量が入力回転速度およびアクセル開度accpに基づいて算出されたが、これに代えて、入力回転速度のみに基づいて目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtの補正量が算出されてもよい。
また、上記では、加速時における補正前の目標エンジン回転速度nintgtが車速spdに比例する値として設定されている場合を前提に説明したが、補正前の基本となる目標エンジン回転速度nintgtの算出方法は、これには限定されない。補正前の目標エンジン回転速度nintgtが車速spdに比例する値でなくとも、本実施形態のエンジン音圧特性を考慮した補正により、加速時に車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とさせるような目標エンジン回転速度nintgtの補正を行うことができる。
ここで、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的とされた場合、加速リニア感が向上するものの、加速が持続している間において、エンジン音圧が単調な変化に感じられ、運転者が適切な加速感を得られない場合がある。リニアな特性は、言い換えれば単調な変化となり、加速感を損なう要因ともなりうる。
そこで、本実施形態では、一定レベル以上の加速が長時間続いた場合、運転者はさらなる加速を求めていると判断して、目標エンジン回転速度nintgtにエンジン音圧特性に基づいて算出される補正量を加算し、エンジン音圧の上昇を高めることで加速感を向上させる。なお、以下の説明では、図10のステップS70で算出される補正量、すなわち、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とさせるための目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtの補正量を「第一の回転速度補正量」とし、後述する加速状態が継続した場合にエンジン音圧の上昇を高めるための目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtの補正量を「第二の回転速度補正量」とする。
図12および図13を参照して、加速が予め定められた所定時間以上続いた場合に目標エンジン回転速度nintgtおよび無段変速機2の目標入力回転速度nintgtを補正する補正制御について説明する。
図12は、加速が予め定められた所定時間以上続いた場合の補正制御の動作を示すフローチャートである。図12に示すフローチャートは、例えば、所定間隔で繰り返し実行される。
図13は、加速が予め定められた所定時間以上続いた場合に目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtの補正制御がなされる場合のそれぞれの値の推移を示すタイムチャートである。図13において、(a)は目標入力回転速度nintgt、(b)はアクセル開度、(c)は後述する加速継続判定フラグをそれぞれ示す。符号401は、図10に示す制御フローにおいて、加速時に車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となるように算出された目標入力回転速度nintgt、言い換えると、基本の目標入力回転速度nintgtに第一の回転速度補正量が加算された目標入力回転速度nintgtを示す。符号402は、加速が予め定められた所定時間以上続いた場合に第二の回転速度補正量が加算される目標入力回転速度nintgtを示す。
図12のステップS110およびステップS120は、図10のステップS10およびステップS20と同様であることができる。すなわち、車速spdを検知し(ステップS110),アクセル開度accpを検知する(ステップS120)と、ステップS130に進む。
ステップS130では、車両走行制御装置100により、アクセル開度の変化量であるアクセル開度変化量Δaccpが算出(検知)される。車両走行制御装置100は、前回本制御フローを実行した際にステップS120で検知されたアクセル開度accpと今回ステップS120で検知されたアクセル開度accpとからアクセル開度変化量Δaccpを算出する。
次に、ステップS140では、車両走行制御装置100により、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であり、かつ、アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上である状態が予め定められた所定時間t0以上継続しているか否かが判定される。ステップS140では、運転者の加速要求が上記所定時間t0以上継続して検出されているか否かが判定される。判定閾値αは、図10のステップS30で算出されたものであり、車両が加速状態にあるか否かを判定するためのアクセル開度accpの閾値である。
変化量判定閾値βは、運転者が一定レベル以上の加速を要求しているか否かを判定するためのアクセル開度変化量Δaccpの閾値である。アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上である場合には、運転者が一定レベル以上の加速を要求している(一定レベル以上の加速要求が検出されている)と判定される。図13においては、時刻T1にアクセル開度accpが判定閾値αよりも大であり、かつ、アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上であると判定される状態が開始している。なお、変化量判定閾値βは、正の値には限定されない。
運転者がアクセル開度accpを判定閾値αよりも大きい一定開度に保って加速が継続している状態や、運転者がアクセルペダルを徐々に踏み増して加速している状態などが、上記所定時間t0以上継続した場合に、ステップS140で肯定判定がなされる。
ステップS140の判定の結果、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であり、かつ、アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上である状態が上記所定時間t0以上継続していると判定された場合(ステップS140−Y)には、ステップS150に進み、そうでない場合(ステップS140−N)には、本制御フローはリターンされる。
ステップS150では、車両走行制御装置100により、加速継続判定フラグがセットされる。加速継続判定フラグは、運転者の加速要求が上記所定時間t0以上継続して検出されている場合にセットされる。図13においては、時刻T2において、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であり、かつ、アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上である状態が上記所定時間t0以上継続したと判定されて加速継続判定フラグがセットされる。
ステップS160では、制御部30により、無段変速機2の目標入力回転速度nintgtの補正量(第二の回転速度補正量)が算出される。第二の回転速度補正量は、入力回転速度およびアクセル開度accp(負荷状態)に基づいて、予め記憶されたマップを参照して算出される。第二の回転速度補正量は、車速spdの増加量に対して、エンジン音圧の増加量を大きくする値、言い換えると、車速spdの増加量に対して無段変速機2の入力回転速度の増加量を大きくする値である。第二の回転速度補正量は、例えば、アクセル開度accpが大きい場合には、アクセル開度accpが小さい場合に比べて、大きな値に設定される。
第二の回転速度補正量は、アクセル開度accpに加えて、または、アクセル開度accpに代えて、アクセル開度変化量Δaccpに基づいて算出されてもよい。この場合、第二の回転速度補正量は、例えば、アクセル開度変化量Δaccpが大きい場合には、アクセル開度変化量Δaccpが小さい場合に比べて、大きな値に設定される。また、第二の回転速度補正量は、加速状態の継続時間に基づいて調節されてもよい。例えば、加速状態の継続時間が長い場合には、継続時間が短い場合に比べて第二の回転速度補正量が大きな値に設定される。
次に、ステップS170では、制御部30により、目標入力回転速度nintgtに第二の回転速度補正量が加算される。また、これに対応して目標エンジン回転速度nintgtが更新される。目標エンジン回転速度nintgtは、第二の回転速度補正量が加算された後の目標入力回転速度nintgt(402)と等しい値に補正される。ステップS170が実行されると、本制御フローはリターンされる。
制御部30は、ステップS170で算出された目標入力回転速度nintgt(402)に基づいて無段変速機2を変速制御すると共に、ステップS170で算出された目標エンジン回転速度nintgtとこれに対応して設定される目標エンジントルクtrqtgtに基づいてエンジン1を運転制御する。
本実施形態によれば、一定レベル以上の加速が長時間続いた(ステップS140−Y)場合、運転者はさらなる加速を求めていると判断して、目標エンジン回転速度nintgtにエンジン音圧特性に基づいて算出される第二の回転速度補正量を加算し、エンジン音圧の上昇を高めることで加速感を向上させる。このように、エンジン音圧を上昇させてさらなる加速感を付与することで、運転者に対して適切な加速感を与えることができる。
なお、本実施形態では、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となるように目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtが設定される制御が実行されていることを前提に、一定レベル以上の加速が長時間続いた場合にエンジン音圧の上昇を高める目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtの補正がなされたが、補正対象の目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtの設定方法はこれには限定されない。車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例させる制御がなされていなくとも、一定レベル以上の加速が長時間続いた場合にエンジン音圧の上昇を高めるような目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtの補正を実行することにより、運転者に対してより適切な加速感を与えることができる。つまり、運転者が加速を要求している状態が長く続いた場合に、エンジン音圧を上昇させてさらなる加速感を付与することで、運転者に対して適切な加速感を与えることができる。
(第1実施形態の変形例)
図14から図16を参照して第1実施形態の変形例について説明する。
上記第1実施形態(図10)では、加速時に車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とするために、車速spdに比例させるように算出された基本の目標エンジン回転速度nintgtに対して、加速時には車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とさせるような補正がなされた。本変形例では、加速時の変速線と加速時でない場合の変速線の2本の変速線が選択的に参照されて目標エンジン回転速度nintgtが算出される。加速時に選択される加速時用の変速線では、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例させるように、目標エンジン回転速度nintgtが設定されている。
図14は、本変形例で参照される2本の変速線に基づいて決定される車速spdと目標入力回転速度nintgtとの関係を示す図である。符号301は、加速時でない場合の変速線に基づいて決定される車速spdと目標入力回転速度nintgtとの関係を示す。加速時でない場合には、目標入力回転速度nintgtは、車速spdに比例した値に設定される。
符号302は、加速時の変速線に基づいて決定される車速spdと目標入力回転速度nintgtとの関係を示す。エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧の上昇が停滞する領域では、符号310に示すように、加速時に車速spdの増加量に対して目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtを大きく上昇させる。一方、エンジン回転速度NINの増加に対してエンジン音圧が大きく上昇する領域では、符号311に示すように、加速時に車速spdの増加量に対して目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtの上昇を小さなものとする。
図15および図16を参照して本変形例の動作について説明する。図15は、本変形例の動作を示すフローチャートである。図16は、本変形例の制御が行われた場合の目標入力回転速度nintgtの推移を示す図である。
ステップS210からステップS250までは、上記第1実施形態(図10)のステップS10からステップS50までと同様であることができる。すなわち、車速spdを検知し(ステップS210)、アクセル開度accpを検知し(ステップS220)、車速spdとアクセル開度accpに基づいて判定閾値αを算出する(ステップS230)と、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であるか否かが判定される(ステップS240)。その判定の結果、肯定判定がなされる(ステップS240−Y)と、ステップS250で加速判定フラグがセットされる。
次に、ステップS260では、制御部30により目標入力回転速度nintgtが算出される。制御部30は、目標制御量算出部22で算出された目標エンジン回転速度nintgtに基づいて、目標入力回転速度nintgtを算出する。ステップS260で算出される目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)は、エンジン音圧の特性を考慮した加速時における目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgt2である。エンジン音圧の特性を考慮した目標入力回転速度nintgt2は、加速時の変速線に基づいて算出されるものであり、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とする値である。図16において、符号313は、エンジン音圧の特性を考慮した加速時の目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgt2を示す。ステップS260が実行されると本制御フローはリターンされる。
ステップS240で否定判定がなされてステップS270に進むと、ステップS270では、目標入力回転速度nintgtが算出される。ステップS270で算出される目標入力回転速度nintgtは、車速spdにエンジン回転速度NINを比例させる値である。図16において、符号312は、ステップS270で算出される目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtを示す。ステップS270が実行されると本制御フローはリターンされる。
(第2実施形態)
図17および図18を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第1実施形態では、一定レベル以上の加速が長時間続いた場合に、エンジン音圧の上昇を高めるために、目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtに第二の回転速度補正量が加算された。本実施形態では、これに代えて、異なる2つの変速線が選択的に用いられる。一定レベル以上の加速が長時間続いた場合以外の通常時には、一方の変速線に基づいて目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtが設定される。この場合、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的となる。一定レベル以上の加速が長時間続いたと判定された場合には、通常時の変速線に代えて、もう一方の変速線が参照されて、通常時と比較してエンジン音圧の上昇を高めるように目標エンジン回転速度(目標入力回転速度)nintgtが設定される。
図17および図18を参照して本実施形態の動作について説明する。
図17は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。図17に示すフローチャートは、例えば、所定間隔で繰り返し実行される。
図18は、加速の継続時間に応じて異なる変速線に基づく変速制御がなされるときのそれぞれの値の推移を示すタイムチャートである。図18において、(a)は目標入力回転速度nintgt、(b)はアクセル開度、(c)は加速継続判定フラグをそれぞれ示す。符号501は、一定レベル以上の加速が長時間続いた場合以外の通常時の変速線に基づく変速制御がなされる場合の目標入力回転速度nintgtの推移を示す。通常時の変速線に基づく変速制御では、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量が比例的とされる。
一方、符号502は、一定レベル以上の加速が予め定められた所定時間以上継続している場合の変速線に基づく変速制御がなされる場合の目標入力回転速度nintgtの時間的な推移を示す。符号503は、時刻T2において加速継続判定フラグがONとされて、車速spdの増加量に対してエンジン音圧の増加量を比例的とする制御から、エンジン音圧の上昇を高める制御へ移行する場合の目標入力回転速度nintgtの推移を示す。
図17に示すフローチャートにおいて、ステップS310からステップS340は、上記第1実施形態(図12)と同様であることができる。すなわち、車速spdを検知し(ステップS310)、アクセル開度accpを検知し(ステップS320)、アクセル開度変化量Δaccpを算出する(ステップS330)と、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であり、かつ、アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上である状態が予め定められた所定時間t0以上継続しているか否かが判定される。その判定の結果、アクセル開度accpが判定閾値αよりも大であり、かつ、アクセル開度変化量Δaccpが変化量判定閾値β以上である状態が上記所定時間t0以上継続していると判定された場合(ステップS340−Y)にはステップS350に進み、そうでない場合(ステップS340−N)には、ステップS370に進む。
ステップS350で加速継続判定フラグがセットされると、ステップS360に進む。ステップS360では、制御部30により、エンジン音圧特性を考慮した目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgt3が算出される。ステップS360では、目標入力回転速度が、加速要求が所定時間t0以上継続している場合のエンジン音圧の上昇を高める値に設定される。目標制御量算出部22は、一定レベル以上の加速が予め定められた所定時間t0以上継続している場合の変速線に基づいて、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgt3を算出する。ステップS360が実行されると、本制御フローはリターンされる。
ステップS340で否定判定がなされてステップS370に進むと、ステップS370では、制御部30により、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtが算出される。目標制御量算出部22は、一定レベル以上の加速が上記所定時間t0以上続いた場合以外の通常時の変速線に基づいて、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgtを算出する。ステップS370が実行されると、本制御フローはリターンされる。
なお、ステップS350で加速継続判定フラグがセットされた場合に、通常時の変速線に基づく目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgt(図18の符号501参照)から、エンジン音圧特性を考慮した目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)nintgt3(図18の符号502参照)まで一度にエンジン回転速度NINを増加させると、変速ショックが大きくなる可能性があるため、目標入力回転速度(目標エンジン回転速度)を漸増させることが望ましい。