JP2009221533A - 耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管及びその製造方法 - Google Patents

耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高い内圧を受ける使用形態において溶接部からの破壊発生が抑制され、バースト破壊や不安定延性破壊が防止できる高強度鋼管を提供する。
【解決手段】UOE製管プロセスにより製造された母材引張強度が600MPa以上の鋼管であって、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)の比[TSw/TSb]が0.95以上であり、母材の管周方向降伏比が92%以下、母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差[HVs−HVm]がHV30以下である。母材の降伏比を低下させ、母材の表層部と内部の硬さの差を小さくすることで、溶接熱影響部への歪集中が抑制され、内圧による溶接部からの破壊発生が防止される。
【選択図】図3

Description

本発明は、ガスパイプラインや水道配管等の流体輸送用配管、ガス貯蔵用鋼管などに好適な高強度鋼管であって、特に内圧による破壊に対して高い抵抗力を有する高強度鋼管に関するものである。
UOE鋼管はガスパイプラインや水道配管等の流体輸送用配管として広く用いられているが、近年、このような輸送用配管による流体の輸送コストを削減するために、パイプラインの高圧化に対する要求が高まっている。ラインパイプの溶接欠陥、外的要因により生じた傷、腐食による減肉部等から延性的にき裂が発生する延性破壊が生じると、これが原因でバースト破壊を生じたり、長距離き裂伝播(不安定延性破壊)を生じる場合がある。特に、パイプラインが高圧化すると、延性破壊がバースト破壊や不安定延性破壊に進展して鋼管が破壊される危険性が高まることが予想される。
不安定延性破壊を防ぐことを目的として、特許文献1には、金属組織をベイナイト単一組織とすることによって吸収エネルギーを高めたラインパイプ用鋼板の製造方法が開示され、また、特許文献2には、鋼板表層部を超微細組織とすることによって不安定延性破壊の停止性能を高めた鋼材が開示されている。
また、UOE鋼管のシーム溶接部は靭性が劣ったり、溶接熱影響部に軟化部が生じたりするため、シーム溶接熱影響部が破壊の発生場所やき裂伝播経路となり、大きな被害を生じる可能性がある。このような溶接部での破壊の発生、伝播を防止するため、特許文献3には、溶接金属の強度を母材より高くし、さらに溶接ビードの高さを一定値以下にする技術が開示され、また、特許文献4には、溶接部のピーキング量と溶接熱影響部の硬さ及び母材の硬さで規定される関係式を満たすように、溶接部のピーキング量と溶接熱影響部の硬さを低減する技術が開示されている。
特開昭62−4826号公報 特開平10−17986号公報 特開2002−309336号公報 特開2002−346629号公報
しかし、特許文献1,2のような技術を適用しても、パイプラインの操業条件によっては、一度発生したき裂の伝播を停止できない場合があり、また、減圧時に相変態挙動(ガス→ガス+ミスト)を示す天然ガスなどでは、相変態によってガスの減圧が阻害されるため、き裂の停止がさらに困難になる場合がある。したがって、ラインパイプの不安定延性破壊を防ぐためには、溶接欠陥や外的要因による傷または腐食による減肉部等からのき裂の発生を抑制することが必要である。このような溶接部からの破壊を抑制する目的で、前述の特許文献3,4の技術が提案されている。特許文献3の技術は、溶接金属の強度を母材より高くし、さらに溶接ビード高さを低減することで、溶接部の止端部への圧力集中を低減でき、溶接部での破壊を抑制するに効果的である。しかしながら、溶接金属強度や母材強度には管長手方向でバラツキがあるため、鋼管全長にわたって溶接金属強度と母材強度の関係を保つことは難しく、また、電流や電圧などの溶接条件のバラツキにより、溶接ビードの高さを鋼管の全長にわたって一定値以下に制御することも困難である。そのため鋼管の中で所定の条件を満たさない、脆弱な部分が発生する可能性がある。また、特許文献4の技術も同様に、鋼管全長にわたってピーキングの高さを制御することは困難であり、鋼管の中に所定の条件を満たさない部分が生じる可能性がある。さらに、いずれの技術も、母材の材質については溶接金属の強度との関係以外は何ら検討しておらず、母材の材質が溶接部への応力集中を生じやすいものである場合、いかに溶接部の形状を制御したとしても、溶接部からの破壊発生を防げない場合がある。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、高い内圧を受ける使用形態において溶接部からの破壊発生が抑制され、バースト破壊や不安定延性破壊が防止できる高強度鋼管及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下とおりである。
[1]UOE製管プロセスにより製造された母材引張強度が600MPa以上の鋼管であって、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)の比[TSw/TSb]が0.95以上であり、母材の管周方向降伏比が92%以下、母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差[HVs−HVm]がHV30以下であることを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
[2]上記[1]の鋼管において、母材が、C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:1.5〜2.0質量%、P:0.02質量%以下、S:0.002質量%以下、Al:0.08質量%以下、Nb:0.01〜0.05質量%、Ti:0.005〜0.02質量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
[3]上記[2]の鋼管において、母材が、さらに、Cu:0.5質量%以下、Ni:0.5質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Mo:0.5質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
[4]上記[2]又は[3]の鋼管において、母材が、さらに、V:0.1質量%以下、Ca:0.0005〜0.0030質量%、B:0.005質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法において、
圧延垂直方向の降伏比が88%以下の鋼板を用いてUOE製管プロセスにより鋼管を製造する方法であって、シーム溶接後に施す拡管工程での拡管率を0.6〜1.4%とすることを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
本発明の高強度鋼管は、引張強度600MPa以上の高強度を有するとともに、内圧による溶接部からの破壊発生が抑制される優れた耐内圧破壊特性を有する。このため、特に高い破壊安全性が必要とされるラインパイプ等として有用な高強度鋼管である。また、本発明の製造方法は、このような優れた耐内圧破壊特性を有する高強度鋼管を安定して製造することができる。
本発明者らは、UOE鋼管の内圧による破壊挙動に関して鋭意研究を行い、内圧による溶接部からの破壊発生を抑制するには、管周方向での母材の降伏比を低下させ、母材の表層部と内部の硬さの差を小さくすることが有効であり、これによって溶接熱影響部への歪の集中を防ぐことが可能となり、内圧による溶接部からの破壊発生を抑制することができることを知見した。そして、このような材質を有する母材であれば、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材の引張強度(TSb)との比[TSw/TSb]が0.95以上であれば溶接部からの破壊発生を抑制でき、内圧による鋼管のバーストまでに大きく変形できることになる。
図1(模式図)に示す方法で水圧バースト試験を行った結果を以下に示す。引張強度が630〜750MPaのUOE鋼管を用い、鋼管の両端にエンドキャップを溶接し、鋼管内に水を充填した。そして、高圧ポンプによりさらに鋼管内に水を注入することで、鋼管を破壊させた。図2(模式図)にバーストした鋼管の破壊形態の例を示す。鋼管がシーム溶接部から離れた母材部で破壊する場合、母材の変形によって鋼管全体の変形を吸収できるため、高い圧力まで破壊を抑制できる。一方、シーム溶接部、特に溶接熱影響部(HAZ)に歪が集中すると、その部分で早期に破壊を生じるため、低い圧力、すなわち少ない水注入量でバーストすることになる。水圧バースト試験の結果を、バーストまでに注入した水量(ΔV)の鋼管の初期内容積(V)に対する割合を破壊体積歪として評価し、鋼管の管周方向降伏比との関係で整理したものを図3に示す。これによると、母材の降伏比が低いほど破壊体積歪が大きくなっており、耐内圧破壊特性が優れることが判る。逆に降伏比が一定値以上となると、溶接熱影響部(HAZ)から破壊を生じるため、破壊体積歪が大きく低下することが判る。
以上のように、本発明の最大の特徴は管周方向での母材の降伏比を低下させ、母材の表層部と内部の硬さの差を小さくすることで、溶接熱影響部への歪集中を抑制することである。これによって、内圧による溶接部からの破壊発生を抑制し、耐内圧破壊特性を向上させることができる。
以下、本発明の高強度鋼管の限定理由について説明する。
・母材引張強度:600MPa以上
本発明の目的は、高強度のUOE鋼管で問題となる内圧による溶接部からの破壊を防止することにあるが、引張強度が600MPa未満の鋼管では特に問題とならないため、対象とする鋼管の強度を600MPa以上とする。
・シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)の比[TSw/TSb]:0.95以上
シーム溶接金属の引張強度が母材の引張強度よりも著しく低い場合、内圧による管周方向の応力が付与されると溶接部が優先して変形を生じるようになり、溶接部からの破壊を生じてしまう。しかし、後述するような母材特性を有している場合、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)の比[TSw/TSb]が0.95以上であれば、溶接部からの破壊を抑制できるため、その下限を0.95に規定する。また、シーム溶接金属と母材の引張強度の比が大きいほど、溶接部からの破壊に対する危険性が低下するため、より安定した耐内圧破壊性能を得るためには、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)の比[TSw/TSb]を1.0以上とすることが好ましい。
なお、シーム溶接は通常のUOE鋼管の製造に用いられるサブマージアーク溶接等を適用すればよく、溶接に用いる溶接材料を適宜選択して溶接金属の強度を調節すればよい。
・母材の管周方向降伏比:92%以下
母材の管周方向降伏比が高いと、内圧による管周方向の変形に対して溶接部への歪集中を生じやすくなり、溶接部破壊の原因となる。しかし、母材の管周方向降伏比が92%以下であれば、母材の変形によって溶接部への歪集中が低減され、溶接部からの破壊を抑制できる。このため母材の管周方向降伏比を92%以下に規定する。なお、母材の管周方向の引張試験は、鋼管を矯正して平板とした全厚の試験片が用いられる場合があるが、矯正によって引張特性が大きく変化するため、本発明においては、未矯正の鋼管の管周方向から採取した丸棒引張試験片によって評価する。
・母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差[HVs−HVm]:HV30以下
母材表層部の硬さが中心部の硬さよりも著しく大きい場合、たとえ母材の管周方向降伏比が低くても溶接部への歪集中を生じやすくなる。しかし、母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差[HVs−HVm]がビッカース硬さでHV30以下であれば大きな歪集中を生じないため、その差の上限をHV30に規定する。なお、母材表層部の硬さ(HVs)は、鋼管の表裏面から深さ1mmの位置で測定し、その最大値とする。また、母材中心部の平均硬さ(HVm)は、管厚方向で硬さを測定したときの、表面側の管厚1/4の位置と裏面側の管厚1/4の位置の間の硬さの平均値とする。
なお、母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差が小さい鋼板は、後述する化学成分及び製造条件に従うこと、特に加速冷却の冷却停止温度を500℃以上とし、さらに加速冷却後の再加熱温度を570℃以上とすることで得ることができる。
以上述べたような本発明の高強度鋼管は、以下のような製造方法により製造することができる。
UOE製管プロセスにより鋼管を製造する場合、冷間成形によって鋼板に歪が付与され、特に、シーム溶接後の拡管工程では管周方向に引張変形を受けるため、降伏比が上昇する。そのため管周方向で低い降伏比を得るには、鋼板の状態で降伏比を十分低くする必要がある。さらに、拡管工程での拡管率を一定範囲に制御することで、所定の管周方向降伏比を得ることが可能となる。
以下、本発明の製造方法の限定理由を説明する。
・鋼板の圧延垂直方向の降伏比:88%以下
UOE鋼管は冷間成形によって製造されるために、使用する鋼板と成形後の鋼管とで引張特性が大きく変化する。降伏比の低い鋼管を得るためには、それに用いる鋼板の降伏比を低くする必要があり、管周方向の降伏比が92%以下の鋼管を得るためには、鋼板の圧延垂直方向の降伏比を88%以下にする必要がある。このため、鋼管の製造に用いる鋼板の圧延垂直方向の降伏比の上限を88%に規定する。
・シーム溶接後に施す拡管工程での拡管率:0.6〜1.4%
UOE鋼管の製造工程において、管周方向の降伏比に最も影響を及ぼす工程が拡管工程であり、拡管率が大きいほど管周方向への歪の付与によって降伏比が大きく上昇する。しかし、拡管率が1.4%以下であれば、管周方向の降伏比を92%以下に抑制することができるため、拡管率の上限を1.4%とする。また、拡管率が低すぎると鋼管の真円度が低下し、溶接部への歪集中の原因となるため、その下限を0.6%とする。
本発明では、以上述べたような条件を満たしていれば優れた耐内圧破壊特性が得られるため、それに用いる鋼材の成分及び製造方法は任意の条件でよい。しかし、上述の性能を有する鋼管を安定して得るためには、鋼板の化学成分及び製造条件を以下のようにすることが望ましい。
まず、鋼板の化学成分について説明する。なお、各元素の含有量の「%」は、いずれも質量%を意味する。
・C:0.03〜0.08%
Cは鋼材の強度を確保するとともに、ベイナイトまたはマルテンサイトの生成を促進し、低降伏比に有利な複相組織を得るために必要な元素である。しかし、0.03%未満では十分な強度が得られず、一方、0.08%を超えて添加すると溶接性を劣化させるので、C含有量は0.03〜0.08%とすることが好ましい。
・Si:0.01〜0.5%
Siは脱酸のため添加するが、0.01%未満では脱酸効果が十分でなく、一方、0.5%を超えると靭性や溶接性を劣化させるため、Si含有量は0.01〜0.5%とすることが好ましい。
・Mn:1.5〜2.0%
Mnは強度及び靭性確保のために添加するが、1.5%未満ではその効果が十分でなく、一方、2.0%を超えると溶接性が劣化するため、Mn含有量は1.5〜2.0%とすることが好ましい。
・P:0.02%以下
Pは不可避不純物として含有されるが、靭性及び溶接性を劣化させるため、P含有量は0.02%以下とすることが好ましい。
・S:0.002%以下
Sは不可避不純物として含有されるが、一般的に鋼中においてはMnS介在物となってボイドの発生起点となり、シャルピー吸収エネルギーを低下させるため、その含有量を厳しく規制する必要がある。しかし、0.002%以下であれば問題ないので、S含有量は0.002%以下とすることが好ましい。
・Al:0.08%以下
Alは脱酸剤として添加されるが、0.08%を超えると鋼の清浄度が低下し、靭性が劣化するため、Al含有量は0.08%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.01〜0.08%である。
・Nb:0.01〜0.05%
Nbは制御圧延によって組織を微細化し、靭性及び強度を高めるために必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、一方、0.05%を超えて添加すると溶接熱影響部(HAZ)の靭性を劣化させるので、その添加量は0.01〜0.05%とすることが好ましい。
・Ti:0.005〜0.02%
Tiは炭窒化物として析出し、スラブ加熱時の結晶粒粗大化抑制及び溶接熱影響部の微細化に有効な元素である。しかし、0.005%未満ではその効果が得られず、一方、0.02%を超えると析出物が粗大化し、溶接部の靭性を劣化させるので、その添加量は0.005〜0.02%とすることが好ましい。
鋼板には、さらに、以下のような元素の1種以上を選択的に含有させることができる。
・Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下の中から選ばれる1種以上
Cu、Ni、Cr、Moは、いずれも強度を高めるために有効な元素であるが、いずれも0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化するので、添加する場合は各々0.5%以下とすることが好ましい。
・V:0.1%以下
Vは炭窒化物として析出することで強度向上に有効な元素である。しかし、0.1%を超えて添加すると、溶接熱影響部の靭性が劣化するので、添加する場合は0.1%以下とすることが好ましい。
・Ca:0.0005〜0.0030%
Caは介在物の制御のために添加することができる。0.0005%未満では効果がなく、一方、0.0030%を超えると介在物量が増えて靭性が劣化するので、添加する場合は0.0005〜0.0030%とすることが好ましい。
・B:0.005%以下
Bは強度上昇、HAZ靭性改善に寄与する元素である。その効果を得るためには、0.0005%以上添加することが好ましいが、0.005%を超えて添加すると溶接性を劣化させるため、添加する場合は0.005%以下とすることが好ましい。
上記以外の残部は実質的にFeからなる。残部が実質的にFeからなるとは、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれ得ることを意味する。例えば、Mg:0.02%以下、REM:0.02%以下の1種以上を添加してもよい。
また、鋼板の好ましい製造条件としては、上記の成分組成を有する鋼を用い、加熱温度:1000〜1200℃、圧延終了温度:Ar点以上で熱間圧延を行った後、5℃/s以上の冷却速度で500〜620℃まで加速冷却を行い、その後0.5℃/s以上の昇温速度で、加速冷却停止温度よりも高い温度であって且つ570〜700℃の温度まで再加熱を行うことで、金属組織をベイナイトと島状マルテンサイト(MA)の複相組織とする。
ここで、上記の加熱温度、圧延終了温度、加速冷却停止温度(冷却終了温度)、再加熱温度等の温度は、鋼板の板厚方向平均温度とする。この板厚方向平均温度は、スラブまたは鋼板の表面温度から、板厚、熱伝導率等のパラメータを考慮して、計算により求められる。また、冷却速度は、熱間圧延終了後、加速冷却停止温度までの冷却に必要な温度差をその冷却するに要した時間で割った平均冷却速度である。また、昇温速度は、冷却後、再加熱に必要な温度差を再加熱するに要した時間で割った平均昇温速度である。
以下、上記製造条件の限定理由を説明する。
熱間圧延での加熱温度は1000〜1200℃とする。加熱温度が1000℃未満では、炭化物の固溶が不十分で必要な強度と降伏比が得られず、一方、1200℃を超えると母材靭性が劣化する。
熱間圧延の圧延終了温度はAr点以上とする。圧延終了温度がAr点未満であると、その後のフェライト変態速度が低下するため、再加熱によるフェライト変態時に十分な微細析出物の分散析出が得られず、強度が低下する。また、再加熱時の未変態オーステナイトへのCの濃縮が不十分となり、島状マルテンサイトが生成しない。ここで、Ar点はフェライト変態が開始する温度であり、例えば、下記(1)式により求めることができる。
Ar(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo …(1)
但し、(1)式に示す元素記号は各元素の質量%を表す。
圧延終了後、直ちに5℃/s以上の冷却速度で冷却(加速冷却)する。冷却速度が5℃/s未満では冷却時にパーライトが生成するため、島状マルテンサイトが生成せず、またベイナイトによる強化が得られないため、十分な強度が得られない。また、冷却開始温度がAr点未満となりフェライトが生成すると、再加熱時に微細析出物の分散析出が得られず、強度不足を招き、且つ島状マルテンサイトの生成も起こらないため、冷却開始温度はAr点以上とする。このときの冷却方法については、製造プロセスによって任意の冷却設備を用いることが可能である。
上記加速冷却の冷却停止温度は500〜620℃とする。このプロセスは、本発明において重要な製造条件である。本発明では、再加熱後に存在するCの濃縮した未変態オーステナイトがその後の空冷時に島状マルテンサイトへと変態する。すなわち、ベイナイト変態途中の未変態オーステナイトが存在する温度域で冷却を停止する必要がある。冷却停止温度が500℃未満では、ベイナイト変態が完了するため空冷時に島状マルテンサイトが生成せず、低降伏比化が達成できない。また、冷却停止温度が低くなると、鋼板表層部はさらに低温まで冷却され、上部ベイナイトやマルテンサイト等の硬化組織が形成されるなどして、表面の硬度が著しく上昇するので、この点からも冷却停止温度の下限を500℃とする。一方、冷却停止温度が620℃を超えると、冷却中にパーライトが析出するため微細炭化物の析出が不十分となり、十分な強度が得られず、また、パーライトにCが消費され島状マルテンサイトが生成しない。
加速冷却停止後、直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で、加速冷却停止温度よりも高い温度であって且つ570〜750℃の温度まで再加熱を行う。このプロセスも、本発明において重要な製造条件である。強化に寄与する微細複合炭化物の析出物は、再加熱時に析出する。さらに、再加熱時の未変態オーステナイトからのベイナイト変態と、それに伴う未変態オーステナイトへのCの排出により、再加熱後の空冷時にCが濃化した未変態オーステナイトが島状マルテンサイトへと変態する。このような微細複合炭化物の析出物ならびに島状マルテンサイトを得るためには、加速冷却停止温度よりも高い温度であって且つ570〜750℃の温度域まで再加熱する必要がある。昇温速度が0.5℃/s未満では、目的の再加熱温度に達するまでに長時間を要するため製造効率が悪化し、またパーライト変態が生じるため、微細複合炭化物の分散析出や島状マルテンサイトが得られず、十分な強度、低降伏比を得ることができない。再加熱温度が570℃未満では十分な析出駆動力が得られず、微細複合炭化物の量が少ないため、十分な析出強化が得られない。また、加速冷却後の再加熱によって、加速冷却時の硬化した表層部分が焼戻しされて硬度が低下し、鋼板中央部と表層部の硬さの差が小さくなるが、再加熱温度が低いと、表層部の硬さの低減が十分でないため、この点からも再加熱温度の下限を570℃とする。一方、再加熱温度が700℃を超えると、析出物が粗大化して十分な強度が得られない。
上記の製造条件であれば、再加熱後直ちに冷却しても、十分な微細複合炭化物が得られるため高い強度が得られるが、さらに十分な微細複合炭化物を確保するために、再加熱した状態で30分以内の温度保持を行うこともできる。30分を超えて温度保持を行うと複合炭化物の粗大化を生じ、強度が低下する場合がある。また、再加熱後の冷却過程においては、冷却速度に関わりなく微細複合炭化物は粗大化しないため、再加熱後の冷却速度は基本的には空冷とすることが好ましい。
以上のような条件で製造した鋼板を用い、UOE製管プロセスにより鋼管を製造することで、より耐内圧破壊性能に優れた鋼管を安定して得ることができる。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜G)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて種々の板厚の厚鋼板(No.1〜17)を製造した。
加熱したスラブを熱間圧延し、熱間圧延後の鋼板を直ちに水冷型の加速冷却設備を用いて冷却し、次いで、加速冷却設備と同一ライン上に設置した誘導加熱炉を用いて再加熱した。加速冷却時の冷却速度は40〜55℃/s、再加熱時の加熱速度は20〜30℃/sとした。また、一部の鋼板については、比較のため再加熱を行わなかった。これらの鋼板を用いてUOE製管プロセスにより鋼管を製造した。
製造された各鋼管に対して、図1に示す方法で水圧バースト試験を実施した。試験鋼管の両端部にエンドキャップを溶接し、内部を水で充填した。その後、さらに高圧ポンプで水を注入し、鋼管がバーストするまでに注入した水量(ΔV)の鋼管の初期内容積(V)に対する割合(百分率)を破壊体積歪として評価した。表2に使用した鋼板の製造条件と特性を、表3に鋼管の製造条件と特性をそれぞれ示す。
表2及び表3において、本発明例であるNo.1〜10の鋼管は、いずれも母材の管周方向降伏比が92%以下、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)との比[TSw/TSb]が0.95以上、母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差[HVs−HVm]がHV30以下であるため、水圧バースト試験の破壊体積歪が大きく、且つき裂発生位置が全て母材となっている。
一方、比較例であるNo.11〜17は、母材の管周方向降伏比が高いか、若しくはシーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)との比[TSw/TSb]が小さいため、水圧バースト試験での破壊体積歪が小さく且つ全てHAZ部から破断している。
Figure 2009221533
Figure 2009221533
Figure 2009221533
水圧バースト試験の試験方法を示す説明図 水圧バースト試験後のき裂発生位置を示す説明図 母材の管周方向降伏比と水圧バースト試験で測定された破壊体積歪との関係を示すグラフ 母材の引張強度と水圧バースト試験で測定された破壊体積歪との関係を示すグラフ

Claims (5)

  1. UOE製管プロセスにより製造された母材引張強度が600MPa以上の鋼管であって、シーム溶接金属の引張強度(TSw)と母材引張強度(TSb)の比[TSw/TSb]が0.95以上であり、母材の管周方向降伏比が92%以下、母材表層部の硬さ(HVs)と母材中心部の平均硬さ(HVm)の差[HVs−HVm]がHV30以下であることを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
  2. 母材が、C:0.03〜0.08質量%、Si:0.01〜0.5質量%、Mn:1.5〜2.0質量%、P:0.02質量%以下、S:0.002質量%以下、Al:0.08質量%以下、Nb:0.01〜0.05質量%、Ti:0.005〜0.02質量%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
  3. 母材が、さらに、Cu:0.5質量%以下、Ni:0.5質量%以下、Cr:0.5質量%以下、Mo:0.5質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
  4. 母材が、さらに、V:0.1質量%以下、Ca:0.0005〜0.0030質量%、B:0.005質量%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の高強度鋼管の製造方法において、
    圧延垂直方向の降伏比が88%以下の鋼板を用いてUOE製管プロセスにより鋼管を製造する方法であって、シーム溶接後に施す拡管工程での拡管率を0.6〜1.4%とすることを特徴とする耐内圧破壊特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
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