JP2009221234A - グリオキシル酸エステル二量体の製造方法及び新規グリオキシル酸エステル二量体 - Google Patents
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Abstract
【課題】
安定なグリオキシル酸エステル二量体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
式:R’−O−C(=O)−CHO(R’は、光学活性体又はラセミ体のメンチル基)で示されるグリオキシル酸エステルを有機溶媒中、水と加温下反応させた後、冷却し、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることにより、式:H−[O−C(−C(=O)−O−R’)−]2−OHで示されるグリオキシル酸エステル二量体が得られる。このグリオキシル酸エステル二量体は安定な化合物であり、適当な溶液中で水を過剰に加えることによりグリオキシル酸エステル・一水和物となり、また共沸性のある溶媒中で加熱還流することにより安易にグリオキシル酸エステルに戻る。
【選択図】 なし
安定なグリオキシル酸エステル二量体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
式:R’−O−C(=O)−CHO(R’は、光学活性体又はラセミ体のメンチル基)で示されるグリオキシル酸エステルを有機溶媒中、水と加温下反応させた後、冷却し、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることにより、式:H−[O−C(−C(=O)−O−R’)−]2−OHで示されるグリオキシル酸エステル二量体が得られる。このグリオキシル酸エステル二量体は安定な化合物であり、適当な溶液中で水を過剰に加えることによりグリオキシル酸エステル・一水和物となり、また共沸性のある溶媒中で加熱還流することにより安易にグリオキシル酸エステルに戻る。
【選択図】 なし
Description
本発明は、グリオキシル酸エステル二量体の製造方法及び新規グリオキシル酸エステル二量体に関する。
グリオキシル酸は古くから知られる化合物で、生体内のアミノ酸代謝に関与する物質であることが知られている。特に植物やある種の微生物においてはグリオキシル酸回路が存在し、糖新生に関与するなど、生体の存続に欠かせない物質である。これらのエステル類は、そのα−オキソエステル基が、数多くの反応に関与することができる非常に反応性の高い基であるため、有機化学において重要な化合物である。それ故、微生物等を用いた生合成原料、医薬中間体原料、医薬品原料、医薬品などとして重要な位置を担う化合物となっている。
例えば、光学活性グリオキシル酸メンチル、即ち、グリオキシル酸l−メンチル及びグリオキシル酸d−メンチルは、不斉合成反応において、オキサチオラン類などの光学活性なアセタール、アルケン及びニトロアルカンに対する立体制御付加反応並びにグリニャール反応における重要なC2構成単位である。更には、光学活性グリオキシル酸メンチルは、不斉合成における光学分割剤としての役割が極めて重要であり、主にアミン、アミノ酸、ヌクレオシド等の光学分割を簡便に行うのに最も優れた化合物である。
しかしながら、グリオキシル酸エステルを通常のエステル化反応、即ち、グリオキシル酸とアルコールとを、酸性触媒を使用して共沸脱水しながらエステル化する方法を適用にするには大きな困難が伴う。一般にグリオキシル酸の市販品は40〜50%の水溶液であり、これと任意のアルコールと反応させてエステル化をするには、含まれている水分、およびエステル化により生じる水分を全て取り除く必要がある。これらの水分を取り除く作業はトルエンやキシレンなどの共沸性のある溶媒を用いて環流することにより行われるが、グリオキシル酸自体はこれら非極性溶媒であるトルエンやキシレンにほとんど溶解しないため、反応の効率が非常に悪い。これは水分の除去が進行するにつれ、溶媒に溶けないグリオキシル酸のみが濃縮され、さらに加熱されることで、グリオキシル酸の分子に含まれる化学的に活性なアルデヒド基やカルボキシル基がグリオキシル酸同士で複雑な重合反応を起こしてしまう。このため、結果的に目的とするグリオキシル酸エステルの収率は非常に低いものとなってしまう。また生成されるグリオキシル酸エステルもまたその分子内に活性なアルデヒド基を持っており、これはやがて同じような自己重合を起こし樹脂化してしまう。この重合反応は室温乃至、冷蔵庫内の温度でも容易に反応が進行するため、このグリオキシル酸エステルの保存方法においても解決しなければならない重要な問題となっている。
これらの合成の困難を回避するために、従来から様々な合成法が研究、開発されてきた。これら合成法としては、例えば次の(1)〜(9)に示すような方法が報告されている。すなわち、まず(1)グリオキシル酸の50%水溶液と過剰のメントールとを、硫酸を使用し共沸脱水することによってエステル化し、反応混合物を亜硫酸水素ナトリウム水溶液で処理し、グリオキシル酸メンチル亜硫酸水素ナトリウム付加体を生成させ、相分離させ、次いでこの付加体から遊離させることによりグリオキシル酸メンチル一水和物を単離する方法がある(特許文献1参照)。しかし、この方法では、グリオキシル酸メンチル一水和物の単離に費用がかかること、生成物を非常に穏やかに乾燥する必要があること、グリオキシル酸メンチルとして得るにはホルマリンで更に分解しなければならないこと、及び亜硫酸水素ナトリウム等の廃棄物がかなりの量生じるという問題がある。
(2)塩化メチレン中で、対応するマロン酸ジエステルをオゾン酸化し、次いでそれをジメチルスルフィドにより還元的に分解し、次いで蒸留する方法(非特許文献1参照)及び(3)マロン酸ジメンチル又はフマール酸ジメンチルを、ハロゲン化炭化水素又はエステルを溶媒として、好ましくは低級アルコールの存在化でオゾン酸化し、得られたオゾニドを、ジメチルスルフィド又は水素で還元してグリオキシル酸メンチルを得る方法(特許文献2参照)がある。しかし、(2)及び(3)の方法は、オゾン酸化することにより、爆発性のある過酸化物であるオゾニドを経由すること、次いで次工程でスルフィド又は水素で還元しなければならないという問題がある。
(4)(2)及び(3)の方法を解決する方法として、原料にマレイン酸モノメンチル−ナトリウム塩を用い、これをオゾン分解する方法が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この方法では、確かに、従来必要であった還元工程はないが、使用する原料の市場での入手が困難である。
(5)グリオキシル酸エチルジエチルアセタールと対応するアルコールとを、チタン(IV)エタノレートを介して、エステル交換する方法がある(非特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、原料が高価であること、更に、反応終了後の触媒の加水分解及び反応混合物からの生成物の単離が困難であることなどの問題があり、工業的な製造方法であるとは言い難い。
(6)酒石酸ジメンチルを、オルト過ヨウ素酸で酸化する方法がある(非特許文献3参照)。しかしながら、この方法では、使用する原料の入手が市場では困難であること、また、試薬が高価であり安全性に問題があることなどの問題があり、工業的な製造方法であるとは言い難い。
(7)オキサリルクロリドモノエステルを、酸クロライド部位をアルデヒドへと還元する方法がある(非特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、刺激性の高いオキサリルクロライドを使用すること、選択的に還元反応を行わなければならないことなどの問題がある。
(7)オキサリルクロリドモノエステルを、酸クロライド部位をアルデヒドへと還元する方法がある(非特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、刺激性の高いオキサリルクロライドを使用すること、選択的に還元反応を行わなければならないことなどの問題がある。
(8)α−ブロモ酢酸メンチルを、硝酸銀で処理したのち、加水分解する方法がある(非特許文献5参照)。しかしながら、この方法は、試薬として高価な硝酸銀を用いること、爆発性の危険が伴うニトロ体を経由しなければならないことなどで問題がある。
(9)グリオキシル酸エステルアセタールとエステル交換し、その後アセタールの解裂を行うことによる方法がある(特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、グリオキシル酸を一度アセタールとした後、解裂させるというように反応が煩雑であること、エステル交換の際に、高価な触媒で行う必要があることなどで問題がある。
(9)グリオキシル酸エステルアセタールとエステル交換し、その後アセタールの解裂を行うことによる方法がある(特許文献4参照)。しかしながら、この方法では、グリオキシル酸を一度アセタールとした後、解裂させるというように反応が煩雑であること、エステル交換の際に、高価な触媒で行う必要があることなどで問題がある。
J. Org. Chem. Vol.47, pp.891−892,(1982)
Tetrahedron Lett., Vol.39, pp.4223−4226,(1998)
Synthetic Comm.,Vol.20, No.18, pp.2837−2847,(1990)
J. Org. Chem., Vol.35.,No.11, pp.3691−3694,(1990)
Roczniki Chem, Vol.44., p.2257,(1970)
本明細書においては、上記公知の方法における問題を有さないグリオキシル酸エステルの製造方法、より具体的には、入手容易で安価な原料および取り扱い試薬を用い、経済性や効率性に優れ工業的に適したグリオキシル酸エステルの製造方法を開示する。
本発明の目的は、特定のグリオキシル酸エステルにおいて、グリオキシル酸エステルから安定なグリオキシル酸エステル二量体を製造する方法及びこれにより得られたグリオキシル酸エステル二量体を提供することである。
本発明者らは、上記問題を有さないグリオキシル酸エステルの製造方法を鋭意検討を行ってきた。その結果、酸性物質の触媒量の存在下、任意のアルコールとグリオキシル酸の水溶液の混合物を加熱還流し、徐々に水を除去することによりエステル化反応を完結させ、溶媒を留去後、得られたグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物を酸性物質の触媒量の存在下で解重合することにより、グリオキシル酸エステルを定量的に得ることができることを見出した。さらに得られたグリオキシル酸エステルにおいて、グリオキシル酸メンチルは、有機溶媒中で、水と加温下反応させた後、冷却させ、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることにより安定な結晶物を得ることができ、長期間保存することができること、この結晶体のスペクトルデータを分析することによりグリオキシル酸メンチル二量体であることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、新規なグリオキシル酸エステルの製造方法は、以下の方法を包含する。
(1)一般式(1):
(式中、Rは、炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい脂環式基、置換基を有していてもよい脂環式アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラアルキル基、或いは置換基を有していてもよい複素環基を表す。)
で示されるアルコール類と、グリオキシル酸とを、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させ、一般式(2):
(式中、Rは、前記と同義であり、nは、1〜5の整数を示す。)
で示される構造単位を有するグリオキシル酸エステルのモノマー及びオリゴマーの混合物を得、次いで触媒量の酸性物質の存在下で加熱し、オリゴマーの解重合反応を行い、これらの混合物をモノマーに変換させることを特徴とする一般式(3):
(式中、Rは、前記と同義である。)
で示されるグリオキシル酸エステルの製造方法。
(1)一般式(1):
で示されるアルコール類と、グリオキシル酸とを、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させ、一般式(2):
で示される構造単位を有するグリオキシル酸エステルのモノマー及びオリゴマーの混合物を得、次いで触媒量の酸性物質の存在下で加熱し、オリゴマーの解重合反応を行い、これらの混合物をモノマーに変換させることを特徴とする一般式(3):
で示されるグリオキシル酸エステルの製造方法。
(2)上記(1)記載のグリオキシル酸エステルの製造方法において、Rが、炭素数3〜5の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、炭素数6〜10のアラアルキル基、或いは、光学活性体又はラセミ体の環状テルペンアルコールから誘導される脂環式基又は脂環式アルキル基であることを特徴とするグリオキシル酸エステルの製造方法。
(3)上記(1)又は(2)記載のグリオキシル酸エステルの製造方法において、Rが、アリル基、フェネチル基、或いは、光学活性体又はラセミ体のメンチル基であることを特徴とするグリオキシル酸エステルの製造方法。
本発明は、以下のグリオキシル酸エステル二量体の製造方法及びグリオキシル酸エステル二量体に関する。
(4)一般式(3’):
(式中、R’は、光学活性体又はラセミ体のメンチル基である。)
で示されるグリオキシル酸エステルを有機溶媒中、水と加温下反応させた後、冷却し、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることを特徴とする一般式(4):
(式中、R’は、前記と同義である。)
で示されるグリオキシル酸エステル二量体の製造方法。
(4)一般式(3’):
で示されるグリオキシル酸エステルを有機溶媒中、水と加温下反応させた後、冷却し、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることを特徴とする一般式(4):
で示されるグリオキシル酸エステル二量体の製造方法。
なお、上記一般式(4)で示されるグリオキシル酸エステル二量体は適当な溶液中で水を過剰に加えることによりグリオキシル酸エステル・一水和物となり、また共沸性のある溶媒中で加熱還流することにより安易にグリオキシル酸エステルに戻る。
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明のグリオキシル酸エステル及びその二量体の製造方法においては、各反応は以下の式1および式2に示す反応式に従って行われる。
即ち、式1に示されるように、アルコール類(1)とグリオキシル酸とを、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させて、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を製造する。次いで、該グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を、触媒量の酸性物質の存在下で加熱し、解重合反応させることよって、グリオキシル酸エステル(3)が得られる。また、式2に示されるように、特定のグリオキシル酸エステル(3’)を、有機溶媒中で、水と加温下反応させた後、冷却し、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることによって、安定なグリオキシル酸エステル二量体(4)が得られる。
上記式中、Rは、本発明の製造方法の反応条件下で安定に存在できる基であればよく、特に制限されるものではないが、好ましくは、Rは、炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい脂環式基、置換基を有していてもよい脂環式アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラアルキル基、或いは置換基を有していてもよい複素環基である。また、上記式中、R’は、光学活性体又はラセミ体のメンチル基である。
Rが、炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基であるときの具体例としては、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基(イソプロピル基)、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、3−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、5−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、1−メチルヘキシル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、4,4−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、1,2−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、6−メチルヘプチル基、7−メチルオクチル基、8−メチルノニル基、2,6−ジメチルヘプチル基、3,7−ジメチルオクチル基、3,7,11−トリメチルデセニル基等の分岐状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Rが、炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状のアルケニル基であるときの具体例としては、例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基、8−ノネニル基、9−デセニル基、10−ウンデセニル基、11−ドデセニル基、12−テトラデセニル基、13−ペンタデセニル基等の直鎖状のアルケニル基;2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、4−メチル−4−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−3−ペンテニル基、3−メチル−4−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、5−メチル−4−ヘキセニル基、6−メチル−5−ヘプテニル基、7−メチル−6−オクテニル基、8−メチル−7−ノネニル基、2,6−ジメチル−5−ヘプテニル基、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル(ゲラニル、ネリル)基、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエニル(ファルネシル)基、3,7,11−トリメチル−6,10−ドデカジエニル(ジヒドロファルネシル)基等の分岐状のアルケニル基が挙げられるが、これらに限定されるものでない。
Rが、置換基を有していてもよい脂環式基又は置換基を有していてもよい脂環式アルキル基であるとき、脂環式基又は脂環式アルキル基の脂環式基としては、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノネニル基、シクロデカニル基、シクロウンデカニル、シクロドデカニル基、シクロトリデカニル基、シクロテトラデカニル基、シクロペンタデカニル基等が挙げられ、好ましくはシクロヘキセニル基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
置換基を有していてもよい脂環式基又は置換基を有していてもよい脂環式アルキル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ここで、置換基である炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。また、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。更に、ハロゲン原子の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
置換基を有していてもよい脂環式基又は置換基を有していてもよい脂環式アルキル基として好ましいものは、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−イソプロピルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、2−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシルメチル基、5−メチル−2−イソプロピルシクロヘキシル基(p−メンタン−3−イル基、メンチル基)、1−メチル−4−イソプロピルシクロヘキセニル基(テルペニル基)、1−メチル−4−イソプロピルシクロヘキシル基(ジヒドロテルペニル基)、1−メチル−4−イソプロピル−6−シクロヘキセン−2−イル基(カルベニル基)、6−メチル−3−イソプロペニルシクロヘキセニル基(ジヒドロカルベイル基)、(1−(4−イソプロペニル)シクロヘキシル)メチル基(ペリリル基)、4−メチル−1−イソプロピルジシクロ[3.1.0]ヘキサン−4−イル基(4−ツヤニル基)、4−メチル−1−イソプロピルジシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル基(3−ツヤニル基)、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−エチル基(ノピル基)、1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基(フェンキル基)、エンド−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基(ボルニル基)等が挙げられる。
Rが、置換基を有していてもよいアリール基であるとき、アリール基の具体例としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またアリール基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ここで、置換基である炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。また、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。更に、ハロゲン原子の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
Rが、置換基を有していてもよいアラアルキル基であるとき、アラアルキル基の具体例としては、例えばベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、α−フェニルプロピル基、β−フェニルプロピル基、γ−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アラアルキル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。ここで、置換基である炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。更に、ハロゲン原子の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
Rが、置換基を有していてもよい複素環基であるとき、複素環基の具体例としては、フラニル基、ピロリル基、ピリジニル基、ピラジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複素環基の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基である炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。更に、ハロゲン原子の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
好ましいRの具体例としては、炭素数3〜5の直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えば、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、等の直鎖状のアルケニル基;2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、等の分岐状のアルケニル基)、光学活性又はラセミ体の環状モノテルペンアルコールから誘導される脂環式基又は脂環式アルキル基(例えば、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニル基、2−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−イソプロピルシクロヘキシルメチル基、5−メチル−2−イソプロピルシクロヘキシル基(p−メンタン−3−イル基、メンチル基)、1−メチル−4−イソプロピルシクロヘキセニル基(テルペニル基)、1−メチル−4−イソプロピルシクロヘキシル基(ジヒドロテルペニル基)、1−メチル−4−イソプロピニル−6−シクロヘキセン−2−イル基(カルベニル基)、6−メチル−3−イソプロペニルシクロヘキセニル基(ジヒドロカルベイル基)、(1−(4−イソプロペニル)シクロヘキシル)メチル基(ペリリル基)、4−メチル−1−イソプロピルジシクロ[3.1.0]ヘキサン−4−イル基(4−ツヤニル基)、4−メチル−1−イソプロピルジシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−イル基(3−ツヤニル基)、6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−エチル基(ノピル基)、1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基(フェンキル基)、エンド−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル基(ボルニル基)等、或いは炭素数6〜10のアラアルキル基(例えば、ベンジル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、α−フェニルプロピル基、β−フェニルプロピル基、γ−フェニルプロピル基、ナフチルメチル等)などが例示される。さらに好ましくは、アリル基、フェネチル基、或いは、光学活性又はラセミ体のメンチル基が例示される。
本発明の原料物質となる一般式(1)で示されるアルコール類は、市販品をそのまま用いることができる。また、精製して用いてもよい。一方、グリオキシル酸は、市販されている各種形態、例えば、水溶液、水和物、等のいずれのものをそのまま用いるか、または精製して用いてもよい。これらを用いるときの反応条件等も特に変えることなく、使用することができる。
アルコール類(1)とグリオキシル酸とのエステル化反応は、有機溶媒中で酸性物質の存在下に共沸脱水させながら行うことが必要である。本発明におけるグリオキシル酸とアルコール類(1)との使用割合は、アルコール類(1)の1モルに対し、グリオキシル酸約0.1〜10.0モル、好ましくは約0.8〜1.5モル、より好ましくは約0.9〜1.1モルである。また、酸性物質の使用量は、通常のエステル化反応における触媒量と同程度にすればよく、一般には、アルコール類(1)の100重量部に対して、約0.001〜20重量部、好ましくは約0.01〜5.0重量部、より好ましくは約0.1〜2.0重量部である。
酸性物質としては、反応系中に存在する水によって酸性能の効果が失われない限りにおいて、通常のエステル化反応に用いられる酸性物質を使用すればよく、具体的には、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、スルホン酸系イオン交換樹脂、酸性硫酸ナトリウムなどのスルホン酸類;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などのパーハロゲノ酢酸、リン酸等のブレンステッド酸(プロトン酸)が挙げられる。好ましい酸性物質としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などが挙げられる。この中でも、硫酸、パラトルエンスルホン酸などは汎用性があり、反応の選択性及び収率も高いことからより好ましいものである。これらの酸性物質は1種又は2種以上を混合して使用することができるが、1種を使用する方法が好ましい。
本発明において、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)の製造反応は、有機溶媒中で行われるが、原料として使用するグリオキシル酸は通常水溶液の形態で提供されること、またアルコール類(1)とグリオキシル酸のエステル化反応により水が生成すること、さらに、このエステル化反応を進行させるには、水を共沸脱水により反応系から除くことが必要であることから、使用する溶媒としては、水と共沸する溶媒であり、冷却後溶媒と水との分離が可能なものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、プソイドクメン、等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メチルイソブチルケトン等のケトン類などが挙げられる。これらは単独で用いても、また二種以上の混合溶液として用いてもよい。これら溶媒の中では、芳香族炭化水素類が好ましく、更にその中でも、トルエン、キシレンなどは汎用性があり、反応の選択性および収率が高いことからより好ましい。また、溶媒の使用量は、特に制限はないが、アルコール類(1)の1容量部に対して、約0.1〜20倍容量、好ましくは0.4〜5.0倍容量、さらに好ましくは約0.5〜2.0倍容量の範囲である。また、反応させるアルコールが水に溶けやすい場合や、汎用に用いられる溶媒より沸点が低いときは、溶媒を用いずに無水の原料アルコールを添加しながら水と共に留去させる連続法や、還流管の下部に脱水剤を充填し、これを還流溶媒が通過することにより脱水することが可能である。このときの脱水剤としてはアルミナ、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブス等が考えられるが、特にこれらに限定されるものではない。またこれらの場合は溶媒を用いることなく、反応させるアルコールを過剰に用いることで還流溶媒として代用できる。
また、アルコール類(1)とグリオキシル酸のエステル化反応は、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、反応温度は、約60〜200℃、好ましくは約80〜170℃であり、特に使用する有機溶媒の沸点近辺で行うことが好ましい。上記温度を保ちながら、約0.5〜20時間、好ましくは約1時間〜10時間反応を行うことによって、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を円滑に製造することができる。前記反応温度および反応時間は、使用するアルコール類(1)及び酸性物質の種類や量により適宜変更、調製することができる。さらに、反応形式はバッチ式であっても、連続式であってもよい。
上記の反応より得られるグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)は、グリオキシル酸エステルモノマーと、グリオキシル酸エステルが2〜5の範囲で重合したオリゴマーとの混合物である。モノマーとオリゴマーとの生成比率は、アルコール類(1)の種類や量、前記した他の成分(酸性物質、有機溶媒など)の種類や量、反応温度などにより変化する。
上記の反応により得られる反応溶媒、酸触媒などを含んだグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)は、通常油状を呈し、保存可能である。得られたグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)は、精製処理を行わず、反応が完結した反応溶液をそのまま、或いは使用した有機溶媒を留去した状態で保存しておき、グリオキシル酸エステル(3)の製造時に保存容器から取り出して用いてもよい。或いは、上記の反応によって生成したグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を、必要に応じて冷却した後、精製などの後処理を施すことなく、そのままグリオキシル酸エステル(3)の製造に直接使用してもよい。
上記のエステル反応において、不飽和結合を有するアルコール類(1)を使用して、グリオキシル酸と、有機溶媒中で、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させると、不飽和結合の部位(シス−トランス異性及び位置異性など)が保持された、不飽和結合を有するグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を得ることができる。例えば、アルコール類(1)としてアリルアルコールを使用し、グリオキシル酸と、有機溶媒中で、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させることにより、不飽和結合の部位が保持されたグリオキシル酸アリルエステルモノマー及びオリゴマーの混合物を得ることができる。
また、上記のエステル化反応において、光学活性なアルコール類(1)を、グリオキシル酸と共に、有機溶媒中で、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させると、光学活性が保持された、光学活性なグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を得ることができる。具体的には、アルコール類(1)として、l−メントールを用い、これをグリオキシル酸と、有機溶媒中で、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させることによって、光学活性が保持されたグリオキシル酸l−メンチルエステルモノマー及びオリゴマーの混合物を得ることができる。また、アルコール類(1)としてd−メントールを用い、これをグリオキシル酸と、有機溶媒中で、触媒量の酸性物質の存在下、共沸脱水させることにより、光学活性が保持されたグリオキシル酸d−メンチルエステルモノマー及びオリゴマーの混合物を得ることができる。
前記エステル化反応により得られるグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を解重合反応させることによって、グリオキシル酸エステル(3)が生成する。グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)の解重合反応は、触媒量の酸性物質の存在下で行うことで、短時間で、反応混合物からグリオキシル酸エステル(3)を分取することができる。斯かるグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)の解重合反応は、熱エネルギーだけでも進行するが、その速度は極めて遅く、酸性物質を触媒として使用すると解重合反応は飛躍的に向上する。
上記解重合反応は、無溶媒で進行するが、必要に応じて、グリオキシル酸エステル(3)より沸点の高い炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒およびシリコン系溶媒、例えば、パラフィン、ポリエチレン、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、NeoSK−Oil(総研化学社製)、シリコン油(東レ−ダウコーニング社製 SH−200、GE東芝シリコン社製 YF33−100、YF33−1000、YF33−3000)等の一種又は二種以上を用いることができる、この場合、溶媒の使用量は、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)の1容量部に対して、0.5〜20容量部、特に経済性と反応性を考慮して1〜5容量部が好ましい。
また、酸性物質の使用量は、通常の解重合反応における触媒量と同程度にすればよく、一般には、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)の100重量部に対して、約0.001〜20重量部、好ましくは約0.01〜5.0重量部、さらに約0.1〜2.0重量部であることがより好ましい。酸性物質としては、解重合反応によって酸性能の効果が失われない限りにおいて、通常の解重合反応などに用いられる酸性物質を使用すればよく、具体的には、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、スルホン酸系イオン交換樹脂、酸性硫酸ナトリウムなどの酸類;トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などのパーハロゲノ酢酸:リン酸等のブレンステッド酸(プロトン酸);三フッ化ホウ素エーテルコンプレックス、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第二鉄などのルイス酸が挙げられる。好ましい酸性物質としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素エーテルコンプレックスなどが挙げられる。このうちでも、硫酸、パラトルエンスルホン酸などが汎用性があり、反応の選択性及び収率も高いことからより好ましい。これらの酸性物質は1種又は2種以上を混合して使用することができるが、1種を使用する方法が好ましい。
また、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)の解重合反応に用いる酸性物質としては、前述したグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を製造する際に使用し、前記混合物中に残存する酸性物質をそのまま利用してもよいし、解重合反応の際更に酸性物質の追加を行ってもよいし、解重合時に新たに酸性物質を添加してもよい。この場合、使用する酸性物質は、エステル化反応で用いたものと同一のものであってもよいし、異なったものであってもよい。
解重合反応の反応温度は、高ければ高いほど反応速度が速くなるが、500℃以上であると樹脂化等の副反応を併発するため500℃以上の温度は好ましくない。したがって、反応温度は、通常約40〜350℃であり、好ましい反応温度は約80〜280℃である。また、工業的には、経済性と反応性を考慮すると約120〜190℃が好ましく、特に副反応を併発せず反応速度も速い160℃前後の反応温度がより好ましい。また、反応圧力には制限はなく、加圧、常圧、減圧を問わないが、減圧下で行うことが好ましい。減圧度は、1〜100mmHg(133〜13300Pa)が好ましい。本発明における前記解重合反応の反応形式は、バッチ式でも連続式でもよい。
上記の解重合反応においては、不飽和結合を有するグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を使用し、触媒量の酸性物質の存在下、解重合反応させることにより、不飽和結合の部位(シス−トランス異性及び位置異性など)が保持された、不飽和結合を有するグリオキシル酸エステル(3)を得ることができる。例えば、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)が、グリオキシル酸アリルエステルモノマー及びオリゴマーの混合物である場合、触媒量の酸性物質の存在下、解重合させることにより、不飽和結合の部位が保持されたグリオキシル酸アリルエステルを得ることができる。また、光学活性なグリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)を使用して、触媒量の酸性物質の存在下、解重合反応させると、光学活性が保持された、光学活性なグリオキシル酸エステル(3)を得ることができる。例えば、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)が、グリオキシル酸l−メンチルエステルモノマー及びオリゴマーの混合物である場合、触媒量の酸性物質の存在下、解重合させることにより、光学活性なグリオキシル酸l−メンチルエステルを得ることができる。また、グリオキシル酸エステルモノマー及びオリゴマーの混合物(2)が、グリオキシル酸d−メンチルエステルモノマー及びオリゴマーの混合物である場合、触媒量の酸性物質の存在下、解重合させることにより、光学活性なグリオキシル酸d−メンチルエステルを得ることができる。
上記の解重合反応により得られるグリオキシル酸エステル(3)は、通常油状を呈している。グリオキシル酸エステル(3)は、そのまま放置しておくと重合して樹脂化してしまう。従って、得られたグリオキシル酸エステル(3)は、直ちに次の反応に用いることが好ましい。
前記反応により得られるグリオキシル酸エステル(3)を、有機溶媒中で、水と加温下反応させることにより、水和物が生成する。また、特定のグリオキシル酸エステル(3’)(R’は、光学活性又はラセミ体のメンチル基)においては、グリオキシル酸エステル(3’)を、有機溶媒中で、水と加温反応させた後、冷却し、生じた結晶物を減圧下で乾燥させることによって、グリオキシル酸エステル二量体(4’)が生成する。このグリオキシル酸エステル二量体(4’)は安定であり、長期保存が可能であるとともに、過剰量の水と接触させることにより簡単にグリオキシル酸エステルに転換することができる。
グリオキシル酸エステル二量体の形成におけるグリオキシル酸エステル(3’)と水との反応に当たっては、有機溶媒と前記解重合反応により生成したグリオキシル酸エステル(3’)とを混合し加温させた後、ここに水を滴下して反応させる方法(方法1);有機溶媒と水を混合し加温させた後、ここに前記解重合反応により生成したグリオキシル酸エステル(3’)を滴下して反応させる方法(方法2);加温した水中に有機溶媒と前記解重合反応により生成したグリオキシル酸エステル(3’)とを混合しこれを滴下して反応させる方法(方法3);有機溶媒と水と前記解重合反応により生成したグリオキシル酸エステル(3’)の混合物を加温し、反応させる方法(方法4)などが好ましく採用される。グリオキシル酸エステル二量体(4’)の製造反応は、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明におけるグリオキシル酸エステル(3’)に対する水の使用割合は、グリオキシル酸エステル(3’)の1モルに対し、水約1〜20モルが好ましく、より好ましくは約1〜10モルであり、さらに好ましくは約1〜5モルである。
本発明における二量体化反応は有機溶媒中で行われる。この反応では、グリオキシル酸エステルが、アルデヒド基およびエステル基のような活性基をもっていることから、使用される有機溶媒はこれら活性基と反応しないものであることが好ましく、さらに、冷却することによって結晶物がより純粋で収率よく得られる有機溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、プソイドクメン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。これらは単独で用いても、また二種以上の混合溶液を用いてもよい。溶媒は、好ましくは炭化水素類で、そのうちでも、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどは、汎用性があり、反応の選択性および収率が高いことからより好ましい。また、これら溶媒の使用量については、特に制限はないが、グリオキシル酸エステル(3’)(R’は、光学活性又はラセミ体のメンチル基)の1容量部に対して、約1〜30倍容量、好ましくは約2〜10倍容量、さらに好ましくは約3〜5倍容量の範囲である。
上記グリオキシル酸エステル二量体(4’)を製造するための方法1では、有機溶媒とグリオキシル酸エステル(3’)との混合物を約10〜100℃、好ましくは約20〜80℃の範囲で加温し、前記温度を保ちながら、水を通常約0.1〜5時間、好ましくは約0.5〜2時間で滴下することにより反応が行われるが、滴下時間についでは特にこれらの範囲に特定されるものではない。また、方法2においては、有機溶媒と水との混合物を約10〜100℃、好ましくは約20〜80℃の範囲で加温し、前記温度を保ちながら、グリオキシル酸エステル(3’)を通常約0.1〜5時間、好ましくは約0.5〜2時間で滴下する。その後、前記温度を保ちながら滴下終了後に約0.5〜5時間、好ましくは約1〜3時間反応させる。
さらに、方法3においては、水を約10〜100℃、好ましくは約20〜80℃の範囲で加温し、前記温度を保ちながら、有機溶媒とグリオキシル酸エステル(3’)との混合物を通常約0.1〜5時間、好ましくは約0.5〜2時間で滴下する。その後、前記温度を保ちながら滴下終了後に約0.5〜5時間、好ましくは約1〜3時間反応させる。また、方法4においては、水と有機溶媒とグリオキシル酸エステル(3’)との混合物を約10〜100℃、好ましくは約20〜80℃の範囲で加温し、前記温度を保ちながら、約0.5〜5時間、好ましくは約1〜3時間反応させる。
いずれの方法においても、滴下時間、反応温度、熟成時間等はグリオキシル酸エステルの性質により適宜変更可能であり、前記範囲に限定されるものではない。上記有機溶媒中で加温した後、結晶化が可能なものについては、反応系を約−70〜60℃、好ましくは約−30〜40℃の範囲に冷却し、冷却後この温度を保ちながら約1〜14時間、好ましくは約2〜5時間でグリオキシル酸エステル二量体の結晶化が行われる。結晶化温度はグリオキシル酸エステル二量体の性質により、特にこれらに限定されるものではない。
かくして得られた結晶物を乾燥させることにより、グリオキシル酸エステル二量体(4’)が得られる。ここで、乾燥方法としては、減圧下で乾燥することが好ましい。グリオキシル酸エステル二量体(4’)の乾燥した結晶物を得るための減圧度は、約0.01〜760mmHg(約1.33〜101080Pa)が好ましく、この減圧度で乾燥温度は、約0〜150℃、好ましくは約10〜80℃の範囲であり、前記温度を保ちながら、通常約1〜14時間で、好ましくは約1〜8時間範囲で乾燥が行われる。ただし、乾燥条件はグリオキシル酸エステル二量体の性質により、特にこれらの範囲に限定されるものではない。
上記の反応より得られるグリオキシル酸エステル二量体(4’)は、従来にない新規な化合物であり、保存可能である。特にグリオキシル酸メンチルエステル二量体は結晶状態を呈し、極めて保存安定性が高い。
グリオキシル酸エステル二量体(4’)は、上記二量化反応で用いることのできる適当な有機溶媒中で水を過剰に加えることにより、容易にモノマーであるグリオキシル酸エステル・一水和物に転換される。
上記グリオキシル酸エステルの製造方法により、市場から容易に入手できるグリオキシル酸及びアルコール類から直接エステル化反応を行う方法により容易にグリオキシル酸エステルを製造することができ、またこの方法によれば、原料として用いたアルコールの不飽和結合、光学的性質をそのまま保った状態でエステル化物が得られる。さらに、原料として市場から容易に入手可能で安価な原料が用いられ、収率も良好であることから、経済性及び効率が優れており、グリオキシル酸エステルの工業的製法として特に優れている。また、合成されたグリオキシル酸エステルは安定な二量体とすることができ、このグリオキシル酸エステル二量体は長期保存が可能である。しかも二量体化されたグリオキシル酸エステルは、簡単にグリオキシル酸エステルモノマーとすることができるため、グリオキシル酸エステルを使用する直前にモノマーとすればよく、実質的にグリオキシル酸エステルを安定した状態で長期に保存することができるという効果が得られる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更されてもよい。なお、実施例、参考例中での生成物の確認、物性測定に用いた機器・装置類は次の通りである。
1Hおよび13C NMR:日本ブルカー DRX−500
IR:Nicolet AVATAR 360FT−IR
MS:島津製作所 GCMS−QP2010
IR:Nicolet AVATAR 360FT−IR
MS:島津製作所 GCMS−QP2010
参考例1(グリオキシル酸l−メンチルの製造)
メントール100g(分子量156.27、640mmol)、グリオキシル酸(50%水溶液)104.2g(分子量74.04、704mmol)、硫酸1.0g、トルエン200mlの混合物を温度計、Dean−Stalk管、還流管を付した反応フラスコに入れ、窒素気流下、トルエンの還流温度で加熱攪拌した。このとき、トルエンの還流に伴い、共沸した水がDean−Stalk管に溜まっていった。還流を続け、生成する水が出てこなくなった時点がエステル化反応の終点と判断し、加熱を終了した。63.2mlの水が採取できた。この反応においては、理論上グリオキシル酸水溶液より52.1ml、エステル化反応により11.5mlの水が生成するから、ほぼ定量的に水が採取されたこととなる。反応溶液は均一な淡黄色の溶液であった。
メントール100g(分子量156.27、640mmol)、グリオキシル酸(50%水溶液)104.2g(分子量74.04、704mmol)、硫酸1.0g、トルエン200mlの混合物を温度計、Dean−Stalk管、還流管を付した反応フラスコに入れ、窒素気流下、トルエンの還流温度で加熱攪拌した。このとき、トルエンの還流に伴い、共沸した水がDean−Stalk管に溜まっていった。還流を続け、生成する水が出てこなくなった時点がエステル化反応の終点と判断し、加熱を終了した。63.2mlの水が採取できた。この反応においては、理論上グリオキシル酸水溶液より52.1ml、エステル化反応により11.5mlの水が生成するから、ほぼ定量的に水が採取されたこととなる。反応溶液は均一な淡黄色の溶液であった。
得られた反応溶液をロータリーエバポレーターに入れ、減圧下でトルエンを留去した後、触媒として硫酸1gをさらに加え、クライゼン蒸留器をつけ、17mmHgで油浴温140〜170℃で解重合蒸留を行った。この結果、グリオキシル酸l−メンチル125.6g(収率92.4%)が黄色の油状物質として得られた。この油状物質は、GC及びNMRで標品のグリオキシル酸メンチルと一致した。
実施例1(グリオキシル酸l−メンチル二量体の製法)
参考例1で得られたグリオキシル酸l−メンチル125.6gをトルエン500mlに溶かし、水100mlを入れ、窒素気流下で加温攪拌し、温度を80℃にまで上昇させた後、加温を停止し、攪拌しながら徐々に室温下で冷却した。この間に、l−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマーが結晶として得られてくる。温度が10℃になったところでブフナー漏斗によりろ過し、減圧下で乾燥し(15mmHg、2時間)本発明化合物であるグリオキシル酸l−メンチル二量体125.7g(収率96.0%)を得た。融点(mp.)は76−78℃であった。
参考例1で得られたグリオキシル酸l−メンチル125.6gをトルエン500mlに溶かし、水100mlを入れ、窒素気流下で加温攪拌し、温度を80℃にまで上昇させた後、加温を停止し、攪拌しながら徐々に室温下で冷却した。この間に、l−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマーが結晶として得られてくる。温度が10℃になったところでブフナー漏斗によりろ過し、減圧下で乾燥し(15mmHg、2時間)本発明化合物であるグリオキシル酸l−メンチル二量体125.7g(収率96.0%)を得た。融点(mp.)は76−78℃であった。
1HNMR(500MHz、Acetone−d6、δ)ppm:0.76(d.J=7.0Hz,6H)、0.91(dd,J=7.1Hz,7.3Hz,12H)、0.83−0.97(m,2H)、0.97−1.20(m,4H)、1.32−1.57(m,4H)、1.60−1.73(m,4H)、4.62−4.76(m,2H)、5.06−5.17(m,2H)、5.45−5.60(m,2H).
IR(KBr)cm-1:3422、2961、2874、1741、1409、1373、1312、1224、1184、1100、1035、982、957.
MS(m/e):139、123、97、95、83、86、69、67、57、55、43、41、29、27.
[α]D 25:−72.7°(c=1.00、MeOH)
IR(KBr)cm-1:3422、2961、2874、1741、1409、1373、1312、1224、1184、1100、1035、982、957.
MS(m/e):139、123、97、95、83、86、69、67、57、55、43、41、29、27.
[α]D 25:−72.7°(c=1.00、MeOH)
参考例2(グリオキシル酸l−メンチル・一水和物の合成)
l−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマー10.6mgをNMR測定用の重アセトンに溶解しl−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマーの水素核NMRを測定後(この測定結果は参考例1に示したものと同じ)、この溶液に水を2滴加え、同様に水素核NMRを測定した。この結果、l−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマーが解重合を起しハイドレートした既知化合物であるl−メンチルグリオキシレートハイドレートを示唆するチャートが得られた。
l−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマー10.6mgをNMR測定用の重アセトンに溶解しl−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマーの水素核NMRを測定後(この測定結果は参考例1に示したものと同じ)、この溶液に水を2滴加え、同様に水素核NMRを測定した。この結果、l−メンチルグリオキシレートハイドレートダイマーが解重合を起しハイドレートした既知化合物であるl−メンチルグリオキシレートハイドレートを示唆するチャートが得られた。
1HNMR(500MHz、Acetone−d6、δ)ppm:0.73(d.J=7.0Hz,3H)、0.88(dd,J=14.6Hz,6.8Hz,6H)、0.86−0.93(m,1H)、0.97−1.16(m,2H)、1.38−1.64(m,2H)、1.62−1.71(m,2H)、1.85−1.98(m,2H)、4.69(td,J=10.9Hz,4.4Hz,1H)、5.12(t,J=8.2Hz,1H)、5.95(t,J=7.8Hz,1H).
実施例2 d−グリオキシル酸メンチル二量体の製法
l−体の代わりにd−メントールを用い、窒素気流下にかえて大気下で操作を行うことを除き、参考例1および実施例1と同様な操作を行い、収率95.0%でd−グリオキシル酸メンチル二量体が得られた。
[α]D 25:+72.6°(c=1.00、MeOH)
l−体の代わりにd−メントールを用い、窒素気流下にかえて大気下で操作を行うことを除き、参考例1および実施例1と同様な操作を行い、収率95.0%でd−グリオキシル酸メンチル二量体が得られた。
[α]D 25:+72.6°(c=1.00、MeOH)
参考例3 グリオキシル酸フェネチルの製造
フェネチルアルコール50g(分子量122.17、409mmol)、グリオキシル酸(50%水溶液)72.72g(分子量74.04、491mmol)、硫酸0.5g、トルエン100mlの混合物を、温度計、Dean−Stalk管、環流管を付した反応フラスコに入れ、加熱攪拌する。トルエンが還流することにより、共沸した水がDean−Stalk管にたまっていく。環流を続けて生成する水が出てこなくなるのがエステル化反応の終点であり、ほぼ定量的に水が採取される。本参考例では43.70mlの水が採取できた。(理論上グリオキシル酸水溶液より36.36ml、エステル化反応により、7.36mlの水が生成する)反応溶液は均一な無色の溶液となる。
得られた反応溶液を減圧下ロータリーエバポレーターでトルエンを留去し、触媒として硫酸1gをさらに加え、クライゼン蒸留器をつけ、4mmHgで油浴温140〜145℃で解重合蒸留を行った。この結果、グリオキシル酸フェネチル68.5g(収率94.1%)が無色の油状物質として得られた。
フェネチルアルコール50g(分子量122.17、409mmol)、グリオキシル酸(50%水溶液)72.72g(分子量74.04、491mmol)、硫酸0.5g、トルエン100mlの混合物を、温度計、Dean−Stalk管、環流管を付した反応フラスコに入れ、加熱攪拌する。トルエンが還流することにより、共沸した水がDean−Stalk管にたまっていく。環流を続けて生成する水が出てこなくなるのがエステル化反応の終点であり、ほぼ定量的に水が採取される。本参考例では43.70mlの水が採取できた。(理論上グリオキシル酸水溶液より36.36ml、エステル化反応により、7.36mlの水が生成する)反応溶液は均一な無色の溶液となる。
得られた反応溶液を減圧下ロータリーエバポレーターでトルエンを留去し、触媒として硫酸1gをさらに加え、クライゼン蒸留器をつけ、4mmHgで油浴温140〜145℃で解重合蒸留を行った。この結果、グリオキシル酸フェネチル68.5g(収率94.1%)が無色の油状物質として得られた。
参考例4
参考例3で得られたグリオキシル酸フェネチルの油状物を水300mlに分散させ、加熱攪拌し温度を80℃にまで上昇させた後、加熱を停止し、攪拌しながら−15℃まで冷却した。この間に、フェネチルグリオキシレートハイドレートが結晶として得られてくる。ブフナー漏斗によりろ過し、減圧下で乾燥(15mmHg、2時間)することにより、グリオキシル酸フェネチルハイドレートが得られた。
参考例3で得られたグリオキシル酸フェネチルの油状物を水300mlに分散させ、加熱攪拌し温度を80℃にまで上昇させた後、加熱を停止し、攪拌しながら−15℃まで冷却した。この間に、フェネチルグリオキシレートハイドレートが結晶として得られてくる。ブフナー漏斗によりろ過し、減圧下で乾燥(15mmHg、2時間)することにより、グリオキシル酸フェネチルハイドレートが得られた。
1HNMR(500MHz、Acetone−d6、δ)ppm:2.97(t.J=7.0Hz,2H)、4.33(t,J=7.0Hz,2H)、5.16(s,1H)、7.20−7.24(m,1H)、7.27−7.31(m,4H).
IR(KBr)cm-1:3556、2944、2897、1731、1497、1460、1304、1247、1217、1102、1065、971、741、703、679、615.
MS(m/e):178、149、131、120、105、104、91、79、77、65、51、37.
IR(KBr)cm-1:3556、2944、2897、1731、1497、1460、1304、1247、1217、1102、1065、971、741、703、679、615.
MS(m/e):178、149、131、120、105、104、91、79、77、65、51、37.
参考例5 グリオキシル酸アリルの製造
グリオキシル酸(50%水溶液)50.0g(分子量74.04、338mmol)、トルエン100mlの混合物を、温度計、Dean−Stalk管、環流管を付した反応フラスコに入れ、加熱攪拌する。トルエンが還流することにより、共沸した水がDean−Stalk管にたまっていく。22.2gの水を回収したところで加熱を停止し、2層になった状層のトルエン層を取り除き、タール状になったグリオキシル酸が得られた。これにアリルアルコール51.0g(分子量58.08、878mmol)および硫酸0.5gを加え、モレキュラーシーブ3Aを充填したDean−Stalk管および環流管を付し、還流を行った。エステル化により生じてくる水はアリルアルコールと共に還流されるが、Dean−Stalk管内のモレキュラーシーブにより水が取り除かれ、エステル化が進行するようになる。還流開始後6時間後に加熱を停止し、減圧下ロータリーエバポレーターで過剰のアリルアルコールを留去した後、硫酸0.5gを加え、油浴温140〜150、減圧度2660〜2793Paで解重合を行うことにより、留出温69〜71℃で目的とするグリオキシル酸アリルが33.6g(収率87.3%)、淡黄色油状物質として得られた。
グリオキシル酸(50%水溶液)50.0g(分子量74.04、338mmol)、トルエン100mlの混合物を、温度計、Dean−Stalk管、環流管を付した反応フラスコに入れ、加熱攪拌する。トルエンが還流することにより、共沸した水がDean−Stalk管にたまっていく。22.2gの水を回収したところで加熱を停止し、2層になった状層のトルエン層を取り除き、タール状になったグリオキシル酸が得られた。これにアリルアルコール51.0g(分子量58.08、878mmol)および硫酸0.5gを加え、モレキュラーシーブ3Aを充填したDean−Stalk管および環流管を付し、還流を行った。エステル化により生じてくる水はアリルアルコールと共に還流されるが、Dean−Stalk管内のモレキュラーシーブにより水が取り除かれ、エステル化が進行するようになる。還流開始後6時間後に加熱を停止し、減圧下ロータリーエバポレーターで過剰のアリルアルコールを留去した後、硫酸0.5gを加え、油浴温140〜150、減圧度2660〜2793Paで解重合を行うことにより、留出温69〜71℃で目的とするグリオキシル酸アリルが33.6g(収率87.3%)、淡黄色油状物質として得られた。
参考例6
参考例5で得られたグリオキシル酸アリルの油状物に室温下5.3gの水を加えて攪拌し、水和物とした。
参考例5で得られたグリオキシル酸アリルの油状物に室温下5.3gの水を加えて攪拌し、水和物とした。
1HNMR(500MHz、CDCl3、δ)ppm:4.60−4.90(m,2H)、5.10−5.40(m,2H)、5.80−6.10(m,1H)、4.80−6.40(brs,2H).
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JP2020528446A (ja) * | 2017-07-28 | 2020-09-24 | ローディア オペレーションズ | 新規なバニリン及び/又はエチルバニリン、それらの調製方法、並びにそれらの使用 |
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JP2005343795A (ja) * | 2004-05-31 | 2005-12-15 | Takasago Internatl Corp | グリオキシル酸メンチルエステル類及びそれを含有する冷感剤組成物 |
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