JP2009215909A - 車載内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車室内の静粛性の向上を図りつつ、筒内噴射弁におけるデポジットの堆積を抑制することのできる車載内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10は、フィードポンプ20から供給される燃料を吸気ポート13内に噴射するポート噴射弁14と、フィードポンプ20から供給される燃料を高圧ポンプ30によって昇圧して気筒11内に直接噴射する筒内噴射弁12とを備えている。電子制御装置100は、機関運転状態に基づいて各噴射弁12,14による燃料噴射態様を設定するとともに、車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されるときに筒内噴射を禁止してポート噴射のみを実行するように強制的に燃料噴射態様を変更する一方、騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されるときであっても筒内噴射弁12の先端温度が所定温度以上であるときには前記変更を無効化してこれを筒内噴射を含む噴射態様に設定する。
【選択図】図1

Description

この発明は、フィードポンプから供給される燃料を吸気ポート内に噴射するポート噴射弁と、前記フィードポンプから供給される燃料を高圧ポンプによって昇圧した燃料を燃焼室内に直接噴射する筒内噴射弁とを備える車載内燃機関の制御装置に関する。
燃料を吸気ポートへ噴射するポート噴射弁に加え、高圧ポンプによって昇圧した燃料を燃焼室内へ直接噴射する筒内噴射弁を備えた車載内燃機関が知られている(例えば特許文献1)。
こうした車載内燃機関にあっては、機関運転状態に基づいて各噴射弁から噴射する燃料噴射量の比率を設定し、いずれか一方の噴射弁のみから燃料を噴射したり、各噴射弁からそれぞれ燃料を噴射したりすることによって燃焼に適した混合気を形成し、排気性状や燃費を向上させている。例えば、高負荷運転時には筒内噴射弁から噴射する燃料噴射量の比率を増大させて燃料が燃焼室で霧化するときの吸気冷却作用を利用して吸気充填効率を向上させる。また、燃料が霧化しにくい機関冷間時及び機関低負荷時にあっては、ポート噴射弁から噴射する燃料噴射量の比率を増大させ、吸気ポート内で予め燃料と空気とを混合させることにより、燃焼に適した混合気を形成してこれを燃焼室に導入する。
ところで、こうした車載内燃機関にあっては、フィードポンプから供給される燃料を高圧ポンプによって更に昇圧し、高圧化した燃料を筒内噴射弁から噴射する。そのため、筒内噴射を含む噴射態様で燃料を噴射しているときには高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音、例えば昇圧動作に伴って開閉するスピル弁の着座音等が発生して機関運転に伴う騒音が通常の車載内燃機関よりも大きくなる傾向にある。
そこで、車室内の騒音レベルが所定レベル未満であり、車室内が比較的静かなときには、機関運転状態に応じて設定される噴射比率に基づく燃料噴射態様の変更を禁止して、ポート噴射弁のみから燃料を噴射するよう噴射態様を強制的に変更する構成を採用することも考えられる(例えば特許文献2)。こうした構成を採用すれば、車室内が静かなときには筒内噴射が実行されず、高圧ポンプの昇圧動作が停止されるため、これに起因する作動音の発生が抑制される。そして、機関回転速度や車速がある程度上昇してエンジン音やロードノイズ、走行に伴う風切り音等が大きくなり、車室内の騒音レベルが所定レベル以上になってから筒内噴射を含む噴射態様による燃料噴射が実行されるようになる。これにより、高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音が乗員に聞こえにくくなってから高圧ポンプの昇圧動作が実行されるようになるため、高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音が発生するようになったとしてもその作動音が騒音として認識されにくくなり、車両の静粛性を向上させることができる。
特開平5‐231221号公報 特開2006‐274923号公報
ところで、筒内噴射弁の噴孔周辺には噴射された燃料の一部が付着することがある。機関運転に伴い筒内噴射弁の先端部は高温の燃焼ガスに晒されるため、機関運転に伴ってその温度は次第に上昇する。筒内噴射弁の先端部が高温になると、その熱により噴孔周辺に付着した燃料が変質してその粘性が高くなり、同先端部にデポジットが堆積するようになる。そして、こうしたデポジットの堆積が進行すると、適切な燃料噴霧を形成することができなくなり、ひいては筒内噴射弁から燃料を噴射することができなくなってしまう。もっとも、筒内噴射弁から燃料が噴射されているときには、噴射される燃料の冷却作用によって筒内噴射弁の先端部が冷却されるため、こうしたデポジットの発生は好適に抑制されることとなる。
しかしながら、上述のように車室内が静かなときに筒内噴射を禁止してポート噴射のみを実行するようにした場合には、車室内の騒音レベルが所定レベル以上になるまでは筒内噴射弁から燃料が噴射されないため、上記のような冷却作用が得られない期間が長くなる。その結果、筒内噴射弁の先端部の温度が上昇しやすくなり、デポジットの堆積が進行しやすくなる。
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は車室内の静粛性の向上を図りつつ、筒内噴射弁におけるデポジットの堆積を抑制することのできる車載内燃機関の制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、フィードポンプから供給される燃料を吸気ポート内に噴射するポート噴射弁と、前記フィードポンプから供給される燃料を高圧ポンプによって昇圧して燃焼室内に直接噴射する筒内噴射弁と、機関運転状態に基づいて前記各噴射弁による燃料噴射態様を設定する噴射態様設定手段と、車室内の騒音レベルが所定レベル未満であるか否かを判定する騒音レベル判定手段と、前記騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されるときに筒内噴射を禁止してポート噴射のみを実行するように強制的に前記設定される燃料噴射態様を変更する変更手段とを備えた車載内燃機関の制御装置において、前記筒内噴射弁の先端温度を推定する先端温度推定手段と、前記騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されるときであっても前記推定される先端温度が所定温度以上であるときには前記変更手段による前記燃料噴射態様の変更を無効化してこれを筒内噴射を含む噴射態様に設定する無効化手段を備えることをその要旨とする。
上記構成によれば、筒内噴射弁の先端温度が所定温度未満である場合には、車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨の判定に基づいて筒内噴射が禁止され、ポート噴射のみを実行するように強制的に燃料噴射態様が変更される。これにより、高圧ポンプの昇圧動作が停止されるため筒内噴射が禁止されて高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音の発生が抑制されるようになる。一方で筒内噴射弁の先端温度が所定温度以上である場合には、車室内の騒音レベルが低く、高圧ポンプの昇圧動作による作動音が認識されやすい状況下にあっても、筒内噴射を禁止せずに筒内噴射弁による燃料噴射を実行する。これにより、筒内噴射弁の先端温度が高く、デポジットが堆積しやすい状態にあるときには筒内噴射弁の燃料噴射による冷却作用によってその先端部が冷却され、デポジットの堆積が抑制されるようになる。そのため、上記請求項1に記載の発明によれば、車室内の静粛性の向上を図りつつ、筒内噴射弁の先端部にデポジットが堆積することを抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載内燃機関の制御装置において、前記先端温度推定手段は、機関回転速度及び機関負荷に基づいて前記筒内噴射弁の先端温度を推定することをその要旨とする。
燃焼室内に露出するように設けられる筒内噴射弁の先端部は、機関運転によって発生する燃焼熱の影響によってその温度が上昇する。この燃焼熱の大きさは、機関回転速度、換言すれば時間当たりの燃料噴射回数、並びに機関負荷、換言すれば1回の燃料噴射における燃料噴射量と高い相関を有して変化する。このため、請求項2に記載の発明のように、機関回転速度及び機関負荷に基づいて筒内噴射弁の先端温度を高い精度をもって推定することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車載内燃機関の制御装置において、前記騒音レベル判定手段は、車速が所定車速未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することをその要旨とする。
車速が高くなるほど、ロードノイズや走行に伴う風切り音等が大きくなるため、車室内の騒音レベルが高くなり、高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音は認識されにくくなる。一方で車速が低いときには、こうしたロードノイズや走行に伴う風切り音が小さくなるため、車室内の騒音レベルは低くなる。そのため、請求項3に記載の発明によるように車速に基づいて車室内の騒音レベルを推定し、車速が所定車速未満であることに基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することもできる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置において、前記騒音レベル判定手段は、機関回転速度が所定回転速度未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することをその要旨とする。
機関回転速度が低下するほど、機関運転に伴う騒音は小さくなるため、高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音は認識されやすくなる。そのため、請求項4に記載の発明によるように、機関回転速度に基づいて車室内の騒音レベルを推定し、機関回転速度が所定回転速度未満であることに基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することもできる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置において、前記騒音レベル判定手段は、車室内に設けられたマイクロフォンを含み、同マイクロフォンによって検出される音の音量が所定音量未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することをその要旨とする。
請求項5に記載の発明によるように、車室内にマイクロフォンを設け、同マイクロフォンによって車室内の騒音レベルを直接検出する構成を採用することもできる。こうした構成によれば、同マイクロフォンによって検出される音の音量が所定音量未満であることに基づいて騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置において、前記噴射態様設定手段は、所定の機関負荷未満の第1の領域ではポート噴射のみを実行する燃料噴射態様を設定する一方、前記所定の機関負荷以上の第2の領域では筒内噴射を含む燃料噴射態様を設定するものであり、前記騒音レベル判定手段は、機関負荷が前記第1の領域から第2の領域へと移行してからの経過期間が所定期間未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することをその要旨とする。
運転者のアクセル操作を通じて機関負荷が増大すると、それに遅れて機関回転速度が上昇する。そのため、機関負荷が増大してからある程度の期間が経過するまでは、機関回転速度が未だに低い状態にあり、車室内の騒音レベルが低いと推定することができる一方、機関負荷が増大してから所定期間が経過した後は車室内の騒音レベルが上昇して高圧ポンプの昇圧動作に起因する作動音は認識されにくくなる。そこで、上記請求項6に記載の発明にあっては、第2の領域に機関負荷が移行してからの経過期間が所定期間未満であることに基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨判定するようにしている。こうした構成を採用すれば、機関負荷が増大してからの経過期間が短いことに基づいて機関回転速度が未だに上昇していないことを推定し、この推定に基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することができる。
以下、この発明にかかる車載内燃機関の制御装置を、内燃機関を統括的に制御する電子制御装置に具体化した一実施形態について、図1〜6を参照して説明する。
図1は本実施形態にかかる電子制御装置100とその制御対象である内燃機関10の燃料供給系の構成を示す模式図である。図1の上方に示されるように内燃機関10は6つの気筒11を備えたV型6気筒エンジンであり、吸気ポート13内に燃料を噴射するポート噴射弁14と、各気筒11内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁12とをそれぞれ備えている。
これら各噴射弁12,14には燃料タンク21に貯留された燃料が供給される。図1の下方に示されるように燃料タンク21内にはフィードポンプ20が設けられている。フィードポンプ20は、電動式の燃料ポンプであり、機関運転中に所定の圧力にて燃料を吐出する。フィードポンプ20には、供給通路41が接続されている。供給通路41は図1に示されるように途中で分岐しており、一方はポート噴射弁14が接続された低圧デリバリパイプ16に接続されている。分岐した供給通路41の他方は高圧ポンプ30に接続されており、フィードポンプ20から吐出された燃料の一部は供給通路41を通じて高圧ポンプ30に導入される。尚、供給通路41には、フィルタ22が設けられており、燃料に含まれる細かな異物がこのフィルタ22を通じて取り除かれる。また、供給通路41にはフィードポンプ20から吐出された燃料の一部を燃料タンク21内に戻すリターン通路23が接続されている。リターン通路23にはプレッシャレギュレータ24が設けられており、供給通路41内の燃料の圧力が所定圧力以上になるとプレッシャレギュレータ24が開放され、供給通路41内の燃料の一部が燃料タンク21に戻される。これにより、供給通路41内の燃料の圧力が過度に高くなることが抑制され、フィードポンプ20の駆動に伴って低圧デリバリパイプ16には所定の圧力にて燃料が供給されるようになる。
供給通路41を通じて導入された燃料は高圧ポンプ30によって昇圧される。高圧ポンプ30の吐出側には、高圧通路42が接続されている。この高圧通路42は、筒内噴射弁12が接続された高圧デリバリパイプ15に接続されている。これにより、高圧ポンプ30によって昇圧された燃料は、高圧デリバリパイプ15内に蓄えられて筒内噴射弁12を通じて各気筒11内に直接噴射される。尚、高圧通路42の高圧ポンプ30近傍には高圧ポンプ30側から高圧デリバリパイプ15側への燃料の流動を許容する一方、高圧デリバリパイプ15側から高圧ポンプ30側への燃料の流動を禁止する逆止弁43が設けられている。この逆止弁43により、高圧デリバリパイプ15側から高圧ポンプ30側への燃料の逆流が抑制されている。
高圧デリバリパイプ15には、燃料タンク21に接続されるリリーフ通路44が接続されている。このリリーフ通路44には、高圧デリバリパイプ15内の燃料の圧力が所定の圧力以上になったときに開弁するリリーフ弁45が設けられている。これにより、高圧デリバリパイプ15内の燃料の圧力が所定圧力以上になるとこのリリーフ弁45が開弁し、高圧デリバリパイプ15内の燃料の一部がリリーフ通路44を通じて燃料タンク21に戻される。
このように構成された本実施形態にかかる燃料供給系は、内燃機関10を統括的に制御する電子制御装置100によって制御される。電子制御装置100には、機関冷却水温THWを検出する水温センサ60、機関回転速度NEを検出する回転速度センサ61、内燃機関10の吸入空気量GAを検出するエアフロメータ62、車速SPDを検出する車速センサ63、運転者によるアクセル操作量ACCPを検出するアクセルポジションセンサ64等が接続されている。
電子制御装置100は、これら各種センサ60〜64から出力される信号を取り込み、各種演算処理を実行してその結果に基づいて機関各部を制御する。具体的には、機関回転速度NE及びアクセル操作量ACCPに基づいて吸気通路に設けられたスロットルバルブを制御して吸入空気量GAを調量するとともに、吸入空気量GAに併せて筒内噴射弁12及びポート噴射弁14を制御して燃料噴射量を調量する。
また、機関回転速度NEと負荷率KLとに基づいて各噴射弁12,14から噴射する燃料噴射量の比率を設定し、この噴射比率に基づいて各噴射弁12,14からそれぞれ燃料を噴射することにより、機関運転状態に応じて燃料噴射態様を変更する。尚、このとき機関運転状態によっては筒内噴射弁12のみ、またはポート噴射弁14のみから燃料を噴射することもある。
また、電子制御装置100は、筒内噴射弁12から噴射する燃料の量に応じて高圧ポンプ30から高圧デリバリパイプ15へと圧送する燃料の量を調量する。以下、図2を参照して高圧ポンプ30の構成を詳しく説明し、この圧送量の調量態様を説明する。尚、図2(a),(b)は昇圧動作にかかる高圧ポンプ30の作動態様を示す模式図である。
図2(a)に示されるように高圧ポンプ30はシリンダ31を有しており、このシリンダ31及びこれに内挿されたプランジャ32によって加圧室33が区画形成されている。また、プランジャ32における加圧室33と反対側の端部には、リフタ34が固定されている。このリフタ34はスプリング35の付勢力によって内燃機関10の吸気カムシャフト50に固定された駆動カム51に当接されている。これにより、プランジャ32は吸気カムシャフト50とともに回動する駆動カム51の作用によってシリンダ31内を周期的に往復動する。
加圧室33と供給通路41とが接続される部分には、供給通路41と加圧室33との間を閉塞・開放するスピル弁36が設けられている。スピル弁36は、スプリング38によって開弁方向に付勢されている。そして、スピル弁36は、電子制御装置100からの制御指令に基づいて励磁されるソレノイド39の電磁力によりスプリング38の付勢力に抗して閉弁される。
このように構成された高圧ポンプ30にあっては、図2(a)に示されるように駆動カム51の回転に伴ってプランジャ32が下降するときにスピル弁36が開弁される。これにより、フィードポンプ20から吐出された燃料が加圧室33に導入される。そして、図2(b)に示されるように駆動カム51の回転に伴ってプランジャ32が上昇するときにスピル弁36が閉弁され、プランジャ32の上昇に伴って加圧室33内の燃料が加圧される。これにより、加圧室33内の燃料の圧力が高圧デリバリパイプ15内の燃料の圧力よりも大きくなると逆止弁43が開弁し、加圧された燃料が高圧デリバリパイプ15に供給されるようになる。
電子制御装置100は、筒内噴射弁12からの燃料噴射量に基づいてスピル弁36の閉弁時期を変更することにより、高圧デリバリパイプ15内の燃料の圧力を燃料噴射に適した圧力に保持するように高圧ポンプ30による燃料の圧送量を調量する。具体的には、筒内噴射弁12からの燃料噴射量が多くなるほど、プランジャ32が上昇する間にスピル弁36が閉弁している期間が長くなるようにスピル弁36の閉弁時期を設定する。これにより、燃料噴射量が多いときにはその分だけ多くの燃料が高圧デリバリパイプ15に圧送されるようになり、高圧デリバリパイプ15内の燃料の圧力が保持されるようになる。尚、筒内噴射を実行しない場合には、スピル弁36は開放状態に保持される。これにより、高圧ポンプ30による昇圧動作が停止され、逆止弁43が閉弁状態に保持されて高圧ポンプ30から高圧デリバリパイプ15への燃料の供給が停止される。このとき、プランジャ32の上下動によって加圧室33内の燃料の圧力が増大すると供給通路41側に燃料が逆流し、プレッシャレギュレータ24から余分な燃料が燃料タンク21内に戻されるようになる。
ところで、高圧ポンプ30において昇圧動作が行われているときには、上述したようにスピル弁36及び逆止弁43の開閉が繰り返されることとなる。そのため、筒内噴射が実行されており、昇圧動作が行われているときにはこれらスピル弁36及び逆止弁43の着座音が発生することとなる。特にアイドル運転時等にあっては車室内が比較的静かであるため、こうした着座音が乗員に聞こえやすく、こうした着座音が騒音として認識されやすい。
そこで、車室内が比較的静かなときには、機関運転状態に応じて設定される噴射比率に基づく燃料噴射態様の変更を禁止して、ポート噴射弁14のみから燃料を噴射するよう噴射態様を強制的に変更する構成を採用することも考えられる。こうした構成を採用すれば、車室内が静かなときには筒内噴射が実行されず、高圧ポンプ30の昇圧動作が停止されるため、これに起因するスピル弁36及び逆止弁43の着座音の発生が抑制されるようになる。そして、エンジン音やロードノイズ、走行に伴う風切り音等が大きくなり、車室内の騒音レベルが所定レベル以上になってから筒内噴射を含む噴射態様による燃料噴射が実行されるようになる。これにより、スピル弁36及び逆止弁43の着座音が発生した場合であっても、これが聞こえにくい状況になってから筒内噴射が実行され、高圧ポンプ30の昇圧動作が実行されるようになる。そのため、高圧ポンプ30の昇圧動作に伴い着座音が発生するようになったとしてもそれが騒音として認識されにくくなり、車両の静粛性を向上させることができるようになる。
ところで、筒内噴射弁12の噴孔周辺には噴射された燃料の一部が付着することがある。機関運転に伴い筒内噴射弁12の先端部は高温の燃焼ガスに晒されるため、機関運転に伴ってその温度は次第に上昇する。筒内噴射弁12の先端部が高温になると、その熱により噴孔周辺に付着した燃料が変質してその粘性が高くなり、同先端部にデポジットが堆積するようになる。そして、こうしたデポジットの堆積が進行すると、適切な燃料噴霧を形成することができなくなり、ひいては筒内噴射弁12から燃料を噴射することができなくなってしまう。もっとも、筒内噴射弁12から燃料が噴射されているときには、噴射される燃料の冷却作用によって筒内噴射弁12の先端部が冷却されるため、こうしたデポジットの発生は好適に抑制されることとなる。
しかしながら、上述のように車室内が静かなときに筒内噴射を禁止してポート噴射のみを実行するようにした場合には、車室内の騒音レベルが所定レベル以上になるまでは筒内噴射弁12から燃料が噴射されないため、上記のような冷却作用が得られない期間が長くなる。その結果、筒内噴射弁12の先端部の温度が上昇しやすくなり、デポジットの堆積が進行しやすくなる。
こうした不都合を抑制すべく、本実施形態の内燃機関10にあっては、車室内の騒音レベルに加えて、筒内噴射弁12の先端温度THを推定し、これらに基づいて筒内噴射の実行の可否を判定するようにしている。
以下、図3〜5を参照して本実施形態の燃料噴射制御について説明する。尚、図3は本実施形態の燃料噴射制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
この制御は機関運転中に電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。図3に示されるように、この制御が開始されると電子制御装置100はまずステップS100において、機関回転速度NEと負荷率KLとに基づいて各噴射弁12,14から噴射する燃料噴射量の比率である噴射比率を算出する。この噴射比率の算出は、図4に示されるような演算マップを参照して行う。
図4に示されるように本実施形態の内燃機関10にあっては、機関回転速度NE及び負荷率KLがともに小さいアイドル運転時等の低負荷低回転領域では、噴射比率を筒内噴射「0」、ポート噴射「10」に設定し、ポート噴射弁14のみによって燃料を噴射する。また、高負荷高回転領域では、噴射比率を筒内噴射「10」、ポート噴射「0」に設定し、筒内噴射弁12のみによって燃料を噴射することにより、燃料の霧化による吸気冷却作用を利用して吸気の充填効率の向上を図る。そして、図4に示されるようにその間の運転領域にあっては、筒内噴射弁12とポート噴射弁14の双方から燃料を噴射する。このとき、機関回転速度NE及び負荷率KLに基づいて設定される各噴射弁12,14からの噴射比率は、燃焼に最適な混合気を形成することができるように予め行う実験の結果に基づいてマップに設定されている。
こうしてステップS100において噴射比率を算出すると、ステップS110へと進む。そして、ステップS110において、機関回転速度NEと負荷率KLとに基づいて筒内噴射弁12の先端温度THを算出する。この先端温度THの算出は、図5に示されるような演算マップを参照して行う。図5に示されるようにこの演算マップには機関回転速度NEと負荷率KLの関数として気筒11内における燃焼熱の大きさを表すパラメータTHp(i)が記憶されている。一般に機関回転速度NEが高いほど単位時間当たりの燃料噴射回数が増大し、負荷率KLが大きいほど1回の燃料噴射における燃料噴射量が増大するため、気筒11内における燃焼熱は大きくなる。そのため、このマップにあっては、基本的に図5に矢印で示されるように機関回転速度NEが高いほど、また負荷率KLが大きいほど大きな値が算出されるように機関回転速度NE及び負荷率KLに対するパラメータTHp(i)の値が設定されている。
そして、ステップS110では、現在の機関回転速度NE及び負荷率KLに基づいてこの演算マップからパラメータTHp(i)を読み出し、下式(1)に示されるようになまし処理を実行する。
TH←{(n−1)TH(i−1)+THp(i)}/n…(1)
n:2以上の整数
TH(i−1):前回の演算周期に算出された先端温度
すなわち、前回の演算周期において算出された先端温度TH(i−1)に対して「(n−1)/n」、現在の演算周期において読み出されたパラメータTHp(i)に対して「1/n」をそれぞれ乗じて重み付けを行い、それらの加算値を現在の先端温度THとして算出する。
こうしてステップS110において、筒内噴射弁12の先端温度THを算出すると、ステップS120へと進む。ステップS120では、車速SPDが基準車速SPDstよりも小さいか否かを判定する。この基準車速SPDstは、車速SPDがこの基準車速SPDst以上であることに基づいて、ロードノイズや走行に伴う風切り音等が大きくなって車室内の騒音レベルが所定レベル以上になり、高圧ポンプ30の昇圧動作に伴う着座音が聞こえにくい状況である旨を推定することのできる値として予め行う実験等の結果に基づいて設定されている。
ステップS120において、車速SPDが基準車速SPDstよりも小さい旨の判定がなされた場合(ステップS120:YES)、すなわち車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨推定される場合には、ステップS130へと進む。そして、ステップS130では、ステップS110において算出した先端温度THが許容温度THdi以上であるか否かを判定する。この許容温度THdiは、先端温度THがこの許容温度THdi以上になってことに基づいて筒内噴射弁12の先端部にデポジットが堆積しやすい状況になりつつある旨を推定することのできる値として予め行う実験等の結果に基づいて設定されている。
ステップS130において、筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi未満である旨の判定がなされた場合(ステップS130:NO)、すなわち筒内噴射弁12の先端部にデポジットが堆積しやすい状況ではない旨判定された場合には、ステップS140へと進む。そして、ステップS100において算出された噴射比率に関わらず、筒内噴射を禁止してポート噴射弁14のみから燃料を噴射する。こうして燃料噴射を実行すると、電子制御装置100はこの処理を一旦終了する。
これに対して、ステップS130において、筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi以上である旨の判定がなされた場合(ステップS130:YES)、すなわち筒内噴射弁12の先端部にデポジットが堆積しやすい状況になりつつある旨判定された場合には、ステップS150へと進む。そして、ステップS150では、筒内噴射を禁止せず、ステップS100において算出された噴射比率に基づいて筒内噴射を含む燃料噴射態様で燃料噴射を行う。こうして燃料噴射を実行すると、電子制御装置100はこの処理を一旦終了する。
また、ステップS120において、車速SPDが基準温度SPDst以上である旨の判定がなされた場合(ステップS120:NO)、すなわち車室内の騒音レベルが所定レベル以上である旨推定された場合には、ステップS150へと進み、噴射比率に基づいて燃料噴射を行う。
こうした燃料噴射制御の作用について図6を参照して説明する。図6は本実施形態にかかる燃料噴射制御における車速SPD及び筒内噴射弁12の先端温度THと、筒内噴射の実行の可否との関係を示すタイミングチャートである。
例えば車両が停車状態から加速していく際には、燃料噴射量が増大されて各気筒11における燃焼熱が増大する。そのため、図6の下段に一点鎖線で示されるように筒内噴射弁12の先端温度THは次第に上昇していく。また、図6の中段に示されるように車速SPDが上昇し、車両は加速していく。このとき、車速SPDが基準車速SPDst未満であり、且つ先端温度THが許容温度THdi未満であるため、筒内噴射は禁止され、ポート噴射のみが実行されることとなる。これにより、車速SPDが基準車速SPDst未満であることに基づいて、車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されている間、すなわち車室内が比較的静かであり高圧ポンプ30の昇圧動作に起因するスピル弁36及び逆止弁43の着座音が認識されやすいときには、高圧ポンプ30の昇圧動作が停止されるようになる。そして、時刻T2において車速SPDが基準車速SPDst以上になると、図6の上段に一点鎖線で示されるように筒内噴射の実行が許可されて、噴射比率に基づく燃料噴射態様で燃料噴射が実行されるようになる。
また、図6の下段に実線で示されるように、先端温度THが速やかに上昇し、車速SPDが基準車速SPDst未満であっても筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi以上になったとき(時刻T1)には、これに基づいて図6の上段に実線で示されるように禁止されていた筒内噴射が許可されるようになる。こうして筒内噴射の実行が許可されると、機関運転状態に基づいて算出される噴射比率に基づいて筒内噴射が実行されるようになり、筒内噴射弁12から燃料が噴射されるようになる。これにより、噴射された燃料の冷却作用により筒内噴射弁12の先端温度THは図6の下段に実線で示されるようにその上昇が抑制されるようになる。尚、このように車速SPDが基準車速SPDst以上になる前に筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi以上になる状況は、登坂走行時等のように機関回転速度NE及び負荷率KLが大きいにも関わらず、車速SPDが上昇しにくい状況で発生しやすい。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)筒内噴射弁12の先端温度THが基準温度THst未満である場合には、車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨の判定に基づいて筒内噴射が禁止され、ポート噴射のみを実行するように強制的に燃料噴射態様が変更される。これにより、高圧ポンプ30の昇圧動作が停止されるため筒内噴射が禁止されて高圧ポンプ30の昇圧動作に起因するスピル弁36及び逆止弁43の着座音の発生が抑制されるようになる。一方で筒内噴射弁12の先端温度THが基準温度THst以上である場合には、車室内の騒音レベルが低く、高圧ポンプ30の昇圧動作による着座音が認識されやすい状況下にあっても、筒内噴射を禁止せずに筒内噴射弁12による燃料噴射を実行する。これにより、筒内噴射弁12の先端温度THが高く、デポジットが堆積しやすい状態にあるときには筒内噴射弁12の燃料噴射による冷却作用によってその先端部が冷却され、先端温度THの上昇が抑制されてデポジットの堆積が抑制されるようになる。そのため、上記構成によれば、車室内の静粛性の向上を図りつつ、筒内噴射弁12の先端部にデポジットが堆積することを抑制することができる。
(2)気筒11内に露出するように設けられる筒内噴射弁12の先端部は、機関運転によって発生する燃焼熱の影響によってその温度が上昇する。この燃焼熱の大きさは、機関回転速度NE、換言すれば時間当たりの燃料噴射回数、並びに負荷率KL、換言すれば1回の燃料噴射における燃料噴射量と高い相関を有して変化する。このため、上記実施形態のように機関回転速度NE及び負荷率KLに基づいて筒内噴射弁12の先端温度THを推定する構成によれば、筒内噴射弁12の先端温度THを高い精度をもって推定することができるようになる。
(3)車速SPDが高くなるほど、ロードノイズや走行に伴う風切り音等が大きくなるため、車室内の騒音レベルが高くなり、高圧ポンプ30の昇圧動作に起因する作動音は認識されにくくなる。一方で車速SPDが低いときには、こうしたロードノイズや走行に伴う風切り音が小さくなるため、車室内の騒音レベルは低くなる。そのため、上記実施形態のように車速SPDに基づいて車室内の騒音レベルを推定し、車速SPDが基準車速SPDst未満であることに基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することができる。こうした構成によれば、騒音を検出するためのセンサ等を新たに追加することなく、比較的容易な構成で騒音レベルを判定することができるようになる。
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、筒内噴射弁12の先端温度THを推定する先端温度推定手段として機関回転速度NE及び負荷率KLに基づいて筒内噴射弁12の先端温度TH推定する構成を示したが、先端温度推定手段の構成はこうした構成に限定されるものではない。その他、例えば気筒11内の温度と高い相関を有する燃料噴射量や吸入空気量GAに基づいて筒内噴射弁12の先端温度THを推定することもできる。
・また、内燃機関10のシリンダヘッドにおいて筒内噴射弁12の近傍に温度センサを設け、同温度センサの検出値に基づいて筒内噴射弁12の先端温度THを直接検出する方法や、気筒11内の圧力を検出する筒内圧センサを設け、検出される気筒11内の圧力に基づいて先端温度THを推定する方法を採用することもできる。
・上記実施形態では、騒音レベル判定手段として、車速SPDが基準車速SPDst未満であることに基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定する構成を示したが、騒音レベル判定手段の構成は適宜変更することができる。例えば、機関回転速度NEが低下するほど、機関運転に伴う騒音は小さくなるため、機関回転速度NEに基づいて車室内の騒音レベルを推定し、機関回転速度NEが所定回転速度未満であることに基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することもできる。尚、こうした構成を採用する場合にあっては、図3を参照して説明した燃料噴射制御のステップS120に替えて、機関回転速度NEが以上であるか否かを判定するようにすればよい。
・また、車室内にマイクロフォンを設け、同マイクロフォンによって車室内の騒音レベルを直接検出する構成を採用することもできる。こうした構成によれば、同マイクロフォンによって検出される音の音量が所定音量未満であることに基づいて騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定することができる。尚、こうした構成を採用する場合にあっては、図3を参照して説明した燃料噴射制御のステップS120に替えて、マイクロフォンによって検出される音量が所定音量以上であるか否かを判定するようにすればよい。
・また、運転者のアクセル操作を通じて機関負荷が増大すると、それに遅れて機関回転速度NEが上昇する。そのため、機関負荷が増大してからある程度の期間が経過するまでは、機関回転速度NEが未だに低い状態にあり、車室内の騒音レベルが低いと推定することができる。また一方で、機関負荷が増大してから所定期間が経過した後は車室内の騒音レベルが上昇して高圧ポンプ30の昇圧動作に起因する着座音は認識されにくくなる。そこで、ポート噴射のみを実行する運転領域から筒内噴射を実行する運転領域へと移行してからの経過期間が所定期間未満であることに基づいて騒音レベルが所定レベル未満である旨判定する構成を採用することもできる。こうした構成を採用すれば、機関負荷が増大してからの経過期間が短いことに基づいて機関回転速度が未だに上昇していないことを推定し、この推定に基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨判定することができる。
こうした構成を採用する場合には、図3を参照して説明した燃料噴射制御に替えて、図7に示されるような燃料噴射制御を実行すればよい。具体的には、図7に示されるように上記実施形態と同様にステップS100において機関回転速度NE及び負荷率KLに基づいて噴射比率を算出し、ステップS110において機関回転速度NE及び負荷率KLに基づいて筒内噴射弁12の先端温度THを算出する。
そして、ステップS200において、現在の運転領域が筒内噴射を実行する運転領域にあるか否かを判定する。尚、ここでは、ステップS100で算出された噴射比率において筒内噴射の比率が「0」である場合に現在の運転領域が筒内噴射を実行する領域にはない旨の判定がなされる。
ステップS200において、現在の運転領域が筒内噴射を実行する運転領域にはない旨の判定がなされた場合(ステップS200:NO)には、ステップS250へと進み、ポート噴射弁14のみによって燃料を噴射する。
一方、ステップS200において、筒内噴射を実行する運転領域にある旨の判定がなされた場合(ステップS200:YES)には、ステップS210へと進む。そして、ステップS210において、筒内噴射を実行する運転領域に移行してからの経過期間が所定期間以上であるか否かを判定する。
ステップS210において、筒内噴射を実行する運転領域に移行したばかりであり、移行してからの経過期間が所定期間未満である旨の判定がなされた場合(ステップS210:NO)、すなわち機関回転速度NEが未だに低い状態にあり、車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨推定される場合には、ステップS220へと進む。そして、ステップS220において、筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi以上であるか否かを判定する。
ステップS220において、筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi未満である旨の判定がなされた場合(ステップS220:NO)には、ステップS230へと進み、筒内噴射を禁止する。そして、ステップS250へと進み、ポート噴射弁14のみによって燃料噴射を実行する。
一方、ステップS220において、筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi以上である旨の判定がなされた場合(ステップS220:YES)には、ステップS240へと進み、筒内噴射を禁止せずに、算出された噴射比率に基づいて燃料噴射を実行する。
また、ステップS210において、筒内噴射を実行する運転領域に移行してからの経過期間が所定期間以上である旨の判定がなされた場合(ステップS210:YES)、すなわち機関回転速度NEがすでにある程度上昇しており、車室内の騒音レベルが所定レベル以上である旨推定される場合には、ステップS240へと進む。そして、算出された噴射比率に基づいて燃料噴射を実行する。
こうした構成を採用すれば、機関負荷が増大してからの経過期間が短いことに基づいて機関回転速度NEが未だに上昇していないことを推定し、この推定に基づいて車室内の騒音レベルが所定レベル未満である旨判定することができる。そして、この判定に基づいて筒内噴射の実行を禁止し、高圧ポンプ30の昇圧動作に起因する騒音を抑制することができる。また一方で、筒内噴射を実行する運転領域に移行してからの経過期間が短いことに基づいて騒音レベルが所定レベル未満である旨判定された場合であっても、筒内噴射弁12の先端温度THが許容温度THdi以上である旨の判定がなされた場合には筒内噴射が許可されるため、筒内噴射弁12へのデポジットの堆積を抑制することができるようになる。
・また、騒音レベル判定手段として、異なる判定方法を複数組み合わせて判定を行う構成を採用することもできる。例えば、車速SPDに基づいて騒音レベルを推定する方法と、マイクロフォンによって車室内の音を直接検出する方法とを組み合わせて騒音レベルを推定することもできる。こうした構成を採用する場合には、例えば、いずれか一方の方法によって騒音レベルが所定レベル未満である旨の判定がなされたときに最終的に騒音レベルが所定レベル未満である旨の判定を行う構成を採用することができる。また、その他、双方の方法によって騒音レベルが所定レベル未満である旨の判定がなされたときに最終的に騒音レベルが所定レベル未満である旨の判定を行う構成等も採用することもでき、その判定方法は適宜変更することができる。
・その他、車両の窓が開いているか否か、また、オーディオやエアコンが稼働しているか否かによっても車室内の騒音レベルは変化するため、こうした要因を考慮した上で騒音レベルの判定を行う構成を採用することもできる。
・上記実施形態では噴射態様設定手段として、予め運転領域に基づいて燃料噴射態様が設定された演算マップを参照し、低負荷低回転のアイドル運転領域にあってはポート噴射のみを実行し、高負荷高回転領域にあっては筒内噴射のみを実行するように噴射態様を設定する例を示したがこれは噴射態様設定手段の一例である。つまり、噴射態様設定手段は適宜変更することができる。例えば、高負荷高回転領域にあっても、筒内噴射とポート噴射とをともに実行する燃料噴射態様や、アイドル運転領域にあっても筒内噴射を実行する内燃機関であっても本願発明を適用することができる。すなわち、燃料噴射態様の設定方法やその変更態様によらず、機関運転状態に応じた燃料噴射態様の変更に伴って高圧ポンプ30の昇圧動動作に伴う騒音が発生するものであれば本願発明を適用することができる。
・上記実施形態では、スピル弁36を開放状態に保持することによって、高圧ポンプ30の昇圧動作を停止する構成を示したが、これは高圧ポンプ30の昇圧動作を停止する方法の一例であり、本願発明はこうした構成に限定されるものではない。例えば、その他、吸気カムシャフト50と高圧ポンプ30の駆動カム51との連結を断接するクラッチを設け、同クラッチによって吸気カムシャフト50と駆動カム51との連結を解除することによって高圧ポンプ30の駆動を停止する構成を採用することもできる。
・また、電動式の高圧ポンプを備える内燃機関にあっては、高圧ポンプへの電力の供給を停止して高圧ポンプの駆動を停止する構成を採用することもできる。
この発明の一実施形態にかかる車載内燃機関の電子制御装置と、その制御対象である燃料供給系の概略構成を示す模式図。 (a),(b)は高圧ポンプの昇圧動作にかかる作動態様を示す模式図。 同実施形態にかかる燃料噴射制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。 機関回転速度及び負荷率と燃料噴射態様との関係を示すマップ。 機関回転速度及び負荷率と筒内噴射弁の先端温度との関係を示すマップ。 車速及び筒内噴射弁の先端温度と筒内噴射の実行可否との関係を示すタイミングチャート。 本実施形態の変更例にかかる燃料噴射制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
符号の説明
10…内燃機関、11…気筒、12…筒内噴射弁、13…吸気ポート、14…ポート噴射弁、15…高圧デリバリパイプ、16…低圧デリバリパイプ、20…フィードポンプ、21…燃料タンク、22…フィルタ、23…リターン通路、24…プレッシャレギュレータ、30…高圧ポンプ、31…シリンダ、32…プランジャ、33…加圧室、34…リフタ、35…スプリング、36…スピル弁、38…スプリング、39…ソレノイド、41…供給通路、42…高圧通路、43…逆止弁、44…リリーフ通路、45…リリーフ弁、50…吸気カムシャフト、51…駆動カム、60…水温センサ、61…回転速度センサ、62…エアフロメータ、63…車速センサ、64…アクセルポジションセンサ、100…電子制御装置。

Claims (6)

  1. フィードポンプから供給される燃料を吸気ポート内に噴射するポート噴射弁と、前記フィードポンプから供給される燃料を高圧ポンプによって昇圧して燃焼室内に直接噴射する筒内噴射弁と、機関運転状態に基づいて前記各噴射弁による燃料噴射態様を設定する噴射態様設定手段と、車室内の騒音レベルが所定レベル未満であるか否かを判定する騒音レベル判定手段と、前記騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されるときに筒内噴射を禁止してポート噴射のみを実行するように強制的に前記設定される燃料噴射態様を変更する変更手段とを備えた車載内燃機関の制御装置において、
    前記筒内噴射弁の先端温度を推定する先端温度推定手段と、
    前記騒音レベルが所定レベル未満である旨判定されるときであっても前記推定される先端温度が所定温度以上であるときには前記変更手段による前記燃料噴射態様の変更を無効化してこれを筒内噴射を含む噴射態様に設定する無効化手段を備える
    ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
  2. 請求項1に記載の車載内燃機関の制御装置において、
    前記先端温度推定手段は、機関回転速度及び機関負荷に基づいて前記筒内噴射弁の先端温度を推定する
    ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車載内燃機関の制御装置において、
    前記騒音レベル判定手段は、車速が所定車速未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定する
    ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置において、
    前記騒音レベル判定手段は、機関回転速度が所定回転速度未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定する
    ことを特徴とする車載内燃機関の制御装置。
  5. 前記騒音レベル判定手段は、車室内に設けられたマイクロフォンを含み、同マイクロフォンによって検出される音の音量が所定音量未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定する
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置。
  6. 前記噴射態様設定手段は、所定の機関負荷未満の第1の領域ではポート噴射のみを実行する燃料噴射態様を設定する一方、前記所定の機関負荷以上の第2の領域では筒内噴射を含む燃料噴射態様を設定するものであり、
    前記騒音レベル判定手段は、機関負荷が前記第1の領域から第2の領域へと移行してからの経過期間が所定期間未満であることに基づいて前記騒音レベルが所定レベル未満である旨を判定する
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の車載内燃機関の制御装置。
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