JP2009215247A - スルホニルイミデートのアリル化反応方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような有機化合物の製造においては、新しい有機化合物の合成手法の開発が望まれてきている。求核反応は有機化合物を製造する際の代表的な化学反応のひとつとして知られており、多くの産業分野で利用されてきている。特に、アリル化物は、医薬、農薬、電子材料などを製造する際の中間体としても重要な物質である。アリル化物は、その二重結合を酸化してエポキシ体としたり、また環化させてシクロプロパン誘導体とすることができることから、極めて重要な中間体となってきている。
また、アリル位に脱離基を有するアリル化合物と、非求核性強塩基とを、不活性溶剤中で、触媒量の非求核性のより弱い塩基の存在下で反応させてシクロプロペン類を製造する方法(特許文献6参照)も報告されている。
より詳細には、本発明は、次の一般式(1)、
で表されるスルホニルイミデートと、次の一般式(2)、
で表されるアリル化合物とを、遷移金属触媒及び塩基の存在下に反応させて、次の一般式(3)、
で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法に関する。
(1)アリル位に脱離基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとを遷移金属触媒及び塩基の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法。
(2)前記した一般式(1)で表されるスルホニルイミデートと、前記した一般式(2)で表されるアリル化合物とを、遷移金属触媒及び塩基の存在下に反応させて、前記した一般式(3)で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法。
(3)遷移金属触媒が、パラジウム触媒である前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)パラジウム触媒が、パラジウム錯体触媒である前記(3)に記載の方法。
(5)塩基が、有機塩基である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)一般式(2)における脱離基が、アルコキシカルボニルオキシ基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)アリル化スルホニルイミデートを製造する方法が、さらに2座ホスフィンリガンドの存在下で行われる前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)2座ホスフィンリガンドが、次の式(4)、
また、このようにして製造されたアリル化物は、エポキシ体やシクロプロパン体に容易に変換することができ、本発明の方法は医薬や農薬の製造のみならず、各種の電子材料や産業基材となる有機化合物の製造に有用である。
一般式(1)及び一般式(2)における「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、無置換の炭化水素基、或いは複素環基、又はハロゲン、カルボキシル基、水酸基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル基、チオール基、アミド基、アミノ基、チオエーテル基等の置換基を1個以上有していてもよい炭化水素基を意味する。
また、「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」としては、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基など)、炭素数が2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えばエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基又は2−ペンテニル基)、炭素数が2〜20、好ましくは2〜10の直鎖状又は分岐状のアルキニル基(例えばエチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−メチル−3−ブチニル基、フェニルエチニル基など)、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基など)、炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、又はアントリル基など)、炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基に、前記した炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が結合した、炭素数7〜40、好ましくは炭素数7〜20、炭素数7〜15のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、又はα−ナフチル−メチル基など)などの基が挙げられる。
この様なスルホニルイミデートは、文献(Kupfer, R.; Nagel, M.; Wurthwein, E.-U.; Allmann, R. Chem. Ber. 1985, 118, 3089.)に記載の方法を参考にして、当業者が適宜製造し、あるいは入手することができる。
一般式(2)における「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、前述の一般式(1)において説明してきた基が挙げられる。
一般式(2)における好ましいR5、R6、R7、R8及びR9の基としては、水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基などの炭素数が1〜20、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。さらに好ましい基としては水素原子が挙げられる。
一般式(2)における脱離基Zとしては、脱離能を有するものであれば特に制限はないが、例えば、脱離基としては、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;チオメチル基、チオエチル基等の硫黄原子と炭素数1〜6の低級アルキル基とから構成されるチオアルキル基;例えばチオフェニル基等の硫黄原子とアリール基とから構成されるチオアリール基;例えばトリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリアルキルシリル基;例えばトリス(トリメチルシリル)シリル基等のトリス(トリアルキルシリル)シリル基;i−プロポキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基などのアルコキシカルボニルオキシ基などが挙げられる。本発明の方法における好ましい脱離基としては、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基からなるアルコキシカルボニルオキシ基が挙げられる。
パラジウム触媒としては、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウムなどのパラジウム塩、π−アリルパラジウムクロリドダイマー、1,5−シクロオクタジエンパラジウムクロリド、Pd2(dba)3(式中、dbaはジベンジリデンアセトンを表す。)などの有機パラジウム錯体などが挙げられる。これらの錯体はさらに、ホスフィン類やアミン類をリガンドとして有していてもよい。
本発明のパラジウム触媒は、前記したパラジウム化合物を単独で使用するのではなく、ホスフィン類やアミン類のようなパラジウム原子のリガンドとなり得る化合物と共に使用するか、このようなリガンドを有するパラジウム錯体として使用するのが好ましい。さらに、本発明の方法において、分子中に2個のホスフィンを有する2座ホスフィン類などをリガンドとして使用することがより好ましい。
2座のリガンドとしては、配位可能な孤立電子対を有するリン原子を2個有するものが挙げられ、好ましい例としては、ビスホスフィン類が挙げられる。このような2座ホスフィン類はキラルなものであってもよい。
特に好ましい2座ホスフィンリガンドとしては、前記した式(4)で表されるビスホスフィンなどが挙げられる。
塩基の使用量は特に制限はないが、従来の方法のように等量使用する必要が無いことが本発明の方法の特徴のひとつである。好ましい塩基の量は、一般式(1)で表されるスルホニルイミデートに対して0.01〜30モル%、より好ましくは10〜20モル%程度である。
また、本発明の方法は、モレキュラーシーブ(好ましく4オングストロームのもの)の存在下に行うこともできる。
溶媒としては、この反応に不活性なものであれば各種の有機溶媒を使用することができる。好ましい溶媒の例としては、ジクロルメタン(DCM)などのハロゲン化アルキル、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(DME)、ジグライムなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。好ましい溶媒としては、THFやトルエンが挙げられる。
遷移金属触媒の使用量は、触媒量でよく、通常は一般式(2)で表されるアリル化合物1モルに対して、0.001〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.1モル程度が使用される。また、一般式(1)で表されるスルホニルアミデートの使用量としては、一般式(2)で表されるアリル化合物1モルに対して、等量とすればよいが、通常は0.8〜1.5モル、0.9〜1.2モルの範囲で使用される。
本発明の方法はアルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
反応混合物中から、目的物を単離精製する方法としては、特に制限はなく、通常の抽出操作、分液操作、結晶化方法、蒸留法、クロマトグラフィーなどの単離精製手段により単離精製することができる。
また、本発明の方法により得られたアリル化スルホニルアミデート誘導体は、通常の合成化学における加水分解反応、還元反応、脱炭酸反応の反応条件により処理することができる。
以下の実施例においては、1H−NMRと13C−NMRは、JNM-ECX400,JNM-ECX500,JNM-ECX600を使用しCDCl3を溶媒とし(他の溶媒を使用した場合は個別に記載)、テトラメチルシラン(δ=0、1H−NMR)またはCDCl3(δ=77.0、13C−NMR)を内部標準物質として測定した。HPLCの測定にはSHIMADZU LC-10AT 、SHIMADZU SPD-10A及びSHIMADZU C-R6A Cを使用した。カラムクロマトグラフィーにはSilica gel 60(Merck)を分取用薄層クロマトグラフィーにはWakogel B-5Fを使用した。全ての反応はアルゴン雰囲気下で実施し、溶媒は定法に従い蒸留したものを使用した。アリルカルボナートは常法(Weix,D.J.;Hartwig,J.F., J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 7720.)に従い合成したものを用いた。スルホニルイミデートは文献(Matsubara,R.;Berthiol,F.;Kobayashi,S J. Am. Chem. Soc., 2008, 130, 1804.)の記載に従い製造した。
標記化合物を次に示す反応式にしたがって製造した。
1H−NMR(CDCl3,500MHz); δ :
8.13 (dt, J = 9.0, 2.1 Hz, 2H), 7.95 (dt, J = 9.0, 2.1 Hz, 2H),
6.31 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 6.09-6.03 (m, 1H),
4.90 (septet, J = 6.5 Hz, 1H), 3.72 (td, J = 7.5, 6.0 Hz, 1H),
2.46-2.52 (m, 1H), 2.32-2.37 (m, 1H), 1.23 (d, J = 6.5 Hz, 3H),
1.18 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 1.13 (d, J = 6.0 Hz, 3H);
13C−NMR(CDCl3) δ:
178.8, 149.6, 147.6, 137.0, 132.4, 128.5, 127.7, 127.3, 126.3,
126.0, 123.9, 72.6, 39.4, 37.6, 39.4, 37.6, 21.2, 21.0, 17.6.
Claims (7)
- アリル位に脱離基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとを遷移金属触媒及び塩基の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法。
- 次の一般式(1)、
で表されるスルホニルイミデートと、次の一般式(2)、
で表されるアリル化合物とを、遷移金属触媒及び塩基の存在下に反応させて、次の一般式(3)、
で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法。 - 遷移金属触媒が、パラジウム触媒である請求項1又は2に記載の方法。
- パラジウム触媒が、パラジウム錯体触媒である請求項3に記載の方法。
- 塩基が、有機塩基である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 一般式(2)における脱離基が、アルコキシカルボニルオキシ基である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- アリル化スルホニルイミデートを製造する方法が、さらに2座ホスフィンリガンドの存在下で行われる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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