しかし、かかる要求を満たそうとすると、振動部の振動の過程でその振れ角が大きくなったときに梁部が折れて破損しやすくなるという問題がある。この点、〔特許文献1〕ないし〔特許文献3〕には、梁部の強度が比較的大きいと考えられる構造が示されているが、かかる構造は比較的複雑であるため、より簡易に梁部の強度を向上させることが望ましい。
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置、光走査型のバーコード読取装置、車載用のレーザレーダ装置等に備えられる光走査装置等に用いられる光学素子等の振動素子であって、比較的簡易な構成で梁部の強度を向上した振動素子、これを有するかかる光走査装置、この光走査装置を有するかかる画像形成装置、バーコード読取装置及びレーザレーダ装置等、並びにかかる振動素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、振動素子本体に対して振動する振動部と、この振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを有し、前記振動部と前記梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程によるエッチングと基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程によるエッチングとの出会い位置が、基板の厚さ方向における前記梁部の中央位置と異なる位置である振動素子にある。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の振動素子において、前記梁部の厚さをdとしたとき、前記出会い位置が、前記中央位置からd/4以上離れた位置であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の振動素子において、前記他方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の幅が、前記一方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の幅よりも大きいことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、振動素子本体に対して振動する振動部と、この振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを有し、前記振動部と前記梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅より、基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅の方が大きい振動素子にある。
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の振動素子において、前記他方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の高さが、前記一方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の高さよりも大きいことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の振動素子において、前記出会い位置が、前記厚さ方向において前記梁部の端部位置にあることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか1つに記載の振動素子において、前記振動部が光を反射する反射部を有する光学素子であることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の振動素子と、前記反射部によって反射される光の光源とを有し、前記振動部が振動することで前記反射部によって反射された光を偏向する光走査装置にある。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の光走査装置と、この光走査装置から出射された光によって所定の像が書き込まれる像担持体とを有する画像形成装置にある。
請求項10記載の発明は、振動素子本体に対して振動する振動部とこの振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程と、基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程とを有し、第1のエッチング工程によるエッチングと第2のエッチング工程によるエッチングとの出会い位置が、基板の厚さ方向における前記梁部の中央位置と異なる位置となるように、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を行う振動素子の製造方法にある。
請求項11記載の発明は、振動素子本体に対して振動する振動部とこの振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程と、基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程とを有し、第1のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅より、第2のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅の方が大きい振動素子の製造方法にある。
本発明は、振動素子本体に対して振動する振動部と、この振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを有し、前記振動部と前記梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程によるエッチングと基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程によるエッチングとの出会い位置が、基板の厚さ方向における前記梁部の中央位置と異なる位置である振動素子にあるので、比較的簡易な構成で振動部の振動時における応力集中部の強度低下を防止ないし抑制して梁部の強度を向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
前記梁部の厚さをdとしたとき、前記出会い位置が、前記中央位置からd/4以上離れた位置であることとすれば、比較的簡易な構成で振動部の振動時における応力集中部の強度低下をより良好に防止ないし抑制して梁部の強度をより向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
前記他方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の幅が、前記一方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の幅よりも大きいこととすれば、比較的簡易な構成で振動部の振動時における応力集中部の強度低下を防止ないし抑制するとともに出会い位置における形状の不整合性を低減して梁部の強度を向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
本発明は、振動素子本体に対して振動する振動部と、この振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを有し、前記振動部と前記梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅より、基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅の方が大きい振動素子にあるので、比較的簡易な構成で出会い位置における形状の不整合性を低減して梁部の強度を向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
前記他方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の高さが、前記一方の面から前記出会い位置までにおける前記梁部の高さよりも大きいこととすれば、比較的簡易な構成で梁部の強度を向上することができ、また寸法精度よくかつ安定してエッチングを行うことができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
前記出会い位置が、前記厚さ方向において前記梁部の端部位置にあることとすれば、第1のエッチングと第2のエッチングとのずれに起因する出会い位置での梁部の不整合形状が防止され、より簡易な構成で梁部の強度をより向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
前記振動部が光を反射する反射部を有する光学素子であることとすれば、比較的簡易な構成で梁部の強度を向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、光学素子としての特性が向上し適用範囲の大きな振動素子を提供することができる。
本発明は、かかる振動素子と、前記反射部によって反射される光の光源とを有し、前記振動部が振動することで前記反射部によって反射された光を偏向する光走査装置にあるので、比較的簡易な構成で梁部の強度が向上しており、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、光学素子としての特性が向上し適用範囲の大きな振動素子を備えていることにより、光学特性に優れ信頼性の高い光走査装置を提供することができる。
本発明は、かかる光走査装置と、この光走査装置から出射された光によって所定の像が書き込まれる像担持体とを有する画像形成装置にあるので、比較的簡易な構成で梁部の強度が向上しており、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、光学素子としての特性が向上し適用範囲の大きな振動素子を備えた、光学特性に優れ信頼性の高い光走査装置を備えていることから、像担持体に対する光による像の書き込みが高精度で行われ、高画質の画像形成が可能で信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
本発明は、振動素子本体に対して振動する振動部とこの振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程と、基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程とを有し、第1のエッチング工程によるエッチングと第2のエッチング工程によるエッチングとの出会い位置が、基板の厚さ方向における前記梁部の中央位置と異なる位置となるように、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を行う振動素子の製造方法にあるので、比較的簡易な構成で振動部の振動時における応力集中部の強度低下を防止ないし抑制して梁部の強度を向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を製造することが可能な振動素子の製造方法を提供することができる。
本発明は、振動素子本体に対して振動する振動部とこの振動部を振動素子本体に振動可能に支持した梁部とを形成するための、基板の一方の面からエッチングを行う第1のエッチング工程と、基板の他方の面からエッチングを行う第2のエッチング工程とを有し、第1のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅より、第2のエッチング工程によって規定される前記梁部の幅の方が大きい振動素子の製造方法にあるので、比較的簡易な構成で出会い位置における形状の不整合性を低減して梁部の強度を向上することができ、振動部の振れ角を大きくしたり、振動部の振動数を大きくしたりしても破壊が生じ難く、適用範囲の大きな振動素子を製造することが可能な振動素子の製造方法を提供することができる。
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置1は、レーザ複写機とプリンタとファクシミリとのモノクロの複合機であるが、カラー機など他のタイプの複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等、他の画像形成装置であっても良い。画像形成装置1は、この画像形成装置1で読み取った原稿の画像データ、または外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。画像形成装置1は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをもシート状の記録媒体として画像形成を行なうことが可能である。
画像形成装置1は、筐体1Aの高さ方向で略中央部に配設された画像形成部4と、画像形成部4の上方に配設された排紙部たる排紙収納部としての排紙トレイ2と、排紙トレイ2を隔てて画像形成部4の上方に位置する、原稿を読み取る読み取り部としての原稿読み取り部3と、画像形成部4の下方に配設された給紙部としての給紙装置11と、画像形成装置1の全般的な制御を行う図示しない制御部と、操作者がコピーボタン押下等による画像形成開始指示、片面画像形成を行うか両面画像形成を行うかの指示等の各種操作を行うことが可能となった図示しない操作パネルとを有している。
画像形成装置1は、筐体1A内で排紙が行われる胴内排紙型の画像形成装置であって、排紙トレイ2が、画像形成部4と原稿読み取り部3との間に位置しており、画像形成が行われた記録媒体としての用紙Pが、排紙トレイ2上に排紙収納されるようになっている。
画像形成部4は、ドラム状の潜像担持体である像担持体としての感光体ドラム5を有している。感光体ドラム5は、図示しない駆動源としてのメインモータによって図中、反時計方向であるX方向に所定の速度で回転する。
画像形成部4はまた、感光体ドラム5の周囲にその回転方向Xに沿って配設された、感光体ドラム5の表面に帯電処理を行う帯電手段としての帯電装置6と、形成すべき画像に対応した画像情報に基づいて、帯電装置6によって帯電した感光体ドラム5の表面を走査するビームLを照射する露光装置としての書き込み手段である光走査装置たる書き込み装置7と、ビームLによって露光された感光体ドラム5の表面に形成された潜像としての静電潜像をトナーによって現像し可視化する現像手段としての現像装置8と、感光体ドラム5上の静電潜像を現像して形成されたトナー像を転写対象である用紙Pに転写する転写手段としての転写装置9と、転写装置9による転写後に感光体ドラム5の表面に残留しているトナー等の不要物を除去し回収する像担持体クリーニング手段としてのクリーニング装置10とを有している。
画像形成部4はまた、感光体ドラム5と転写装置9との間を通る、二点鎖線の矢印で示す用紙Pの搬送経路Yと、搬送経路Yから分岐した、破線の矢印で示す用紙Pの搬送経路Zとを有している。
画像形成部4はまた、搬送経路Yにおける用紙Pの搬送方向の上流側から、給紙装置11から給送されてきた用紙Pの搬送を引き継いで搬送方向Y下流側にさらに搬送する搬送ローラ17と、搬送方向Yにおいて搬送ローラ17の下流側かつ転写装置9の上流側に配設され感光体ドラム5と転写装置9との間の転写部に用紙Pを給送するレジストローラ14と、搬送方向Yにおいて転写装置9の下流側かつ排紙トレイ2の上流側に配設された、定着手段としての定着器である定着装置12と、定着装置12を通過後の用紙Pの後端の通過を検知し用紙Pの排紙トレイ2への排出等を検知するための排紙センサ25と、正逆転する排紙ローラであって正転時に用紙Pを排紙トレイ2上に排出して筐体1A外部に排出する排紙手段としての排紙装置13とを、この順で有している。
画像形成部4はまた、転写装置9を一体化され搬送経路Zの一部をその内部に備え、転写装置9とともに画像形成装置1の本体51に対して開閉する開閉体としてのカバー24と、搬送経路Y内の用紙Pを搬送経路Z内に導くことを可能にするための分岐爪29とを有している。
図1に示すように、原稿読み取り部3には、原稿載置台としてのコンタクトガラス3Eと、コンタクトガラス3E上に載置された原稿Gを走査するための、原稿照明用光源としての光源3Aおよび光路変換用反射鏡3Bを備えた読み取り走行体3Fと、読み取り走行体3Fによって形成された原稿からの反射光を透過するレンズを含む読み取り光学系3Cと、読み取り光学系3Cを透過した光が入射し、これを画像信号として読み取るCCDなどの光学素子3Dとを有している。光学素子3Dによって読み取られた原稿の画像情報は、制御部に出力され、デジタル化され、画像処理される。
書き込み装置7は、制御部に入力された原稿の画像情報等に応じて照射を行うレーザ光の光源であるレーザダイオードとしての半導体レーザ27と、半導体レーザ27の発光によるレーザ光の光を反射し感光体ドラム5の表面上に結像させるための反射光学系及び結像光学系をなす偏向モジュール28とを有し、偏向モジュール28によって走査された光をビームLとし、感光体ドラム5上に照射して所定の画像情報に応じた所定の像を書き込み静電潜像を形成するようになっている。
半導体レーザ27は、制御部からの画像信号に基づいて発光制御されるようになっており、制御部では、原稿読み取り部3からの画像情報だけでなく、プリンタとして用いられる場合の印字信号およびファクシミリ装置として用いられる場合の送信信号に応じた画像信号によって半導体レーザ27の駆動制御を行う。これにより、画像形成装置1が、複写機だけでなくプリンタおよびファクシミリ装置としての機能を持つデジタル複合機としての機能を持っている。
給紙装置11は、用紙Pを積載するとともに積載した用紙Pを画像形成部4に供給するものであって、用紙Pを積載する周知構造の給紙カセットとしての給紙トレイ11Aと、給紙トレイ11Aに積載された用紙Pのうちの最上位の用紙Pに当接してその回転により画像形成部4、具体的にはレジストローラ14に向けて繰り出す繰り出しローラとしての給紙ローラ11Bと、給紙ローラ11Bによって繰り出された用紙Pが複数枚である場合に最上位の用紙Pを他の用紙Pから分離して搬送ローラ17に向けて送り出す分離ローラ11Cとを備えたものである。給紙装置11には、必要に応じ、別の給紙装置を増設可能となっている。
レジストローラ14は、給紙装置11から給送されてくる用紙Pの先端を突き当てられてその搬送を一時止めるとともに、感光体ドラム5表面のトナー像の先端と用紙Pの先端との位置関係が一致する所定のタイミングで回転を開始するようになっている。
定着装置12は、用紙Pを挟持搬送可能なように互いに対向して当接することにより連動回転が可能な定着ローラ12Aと、定着ローラ12Aに対向して配設された加圧部材としての加圧ローラ12Bとを有しており、転写装置9により表面にトナー像を転写された用紙Pを、定着ローラ12Aと加圧ローラ12Bとの間に通し、このとき加熱および加圧を行うことで、トナー像を用紙Pに融着し、定着させるものである。
分岐爪29は、通常、定着装置12によって一方の面にトナー像が定着された用紙Pを排紙装置13に導くホームポジションを占めているが、操作パネル等によって両面画像形成を行うことが指示されているときは、定着装置12によって一方の面にトナー像が定着された用紙Pの後端の通過が排紙センサ25によって検知されると、その先端が上方に搖動するようになっている。
排紙装置13は、定着装置12によってトナー像を定着された用紙Pを、正転によって排紙トレイ2上に排出するが、操作パネル等によって両面画像形成を行うことが指示されているときには、分岐爪29の先端が上方に搖動すると逆転し、用紙Pをその後端から搬送経路Zに進入させる。
搬送経路Zは、搬送経路Yから進入した用紙Pを、カバー24内を通過させた後、再度用紙Pの搬送経路Yに進入させる。搬送経路Zが用紙Pを搬送経路Yに進入させる位置は、搬送経路Yにおける用紙Pの搬送方向にてレジストローラ14の上流側である。
よって、搬送経路Yから搬送経路Zを経て再度搬送経路Yに進入した用紙Pは、スイッチバックされて反転された状態となっており、すでにトナー像を定着された面とは逆の面が感光体ドラム5側を向くように、レジストローラ14によって感光体ドラム5と転写装置9との間の転写部に給送されることとなる。
なお、分岐爪29は、先端が上方に搖動している状態において搬送経路Zに用紙Pの全体が進入すると、先端が下方に搖動し、ホームポジションに復帰する。分岐爪29は、上述した、用紙Pを搬送経路Yから搬送経路Zに導くとき以外は、ホームポジションを占めた状態を維持される。
感光体ドラム5と、帯電装置6と、現像装置8と、クリーニング装置10とは、プロセスカートリッジ15の一部を構成している。プロセスカートリッジ15は、感光体ドラム5、帯電装置6、現像装置8、クリーニング装置10のほか、これらを一体に支持する図示しない支持体を有している。支持体は、本体51に着脱自在に設けられている。
よって、プロセスカートリッジ15は、感光体ドラム5、帯電装置6、現像装置8、クリーニング装置10を一体で、本体51に着脱可能とするものとなっている。これにより、感光体ドラム5、帯電装置6、現像装置8、クリーニング装置10のメンテナンス、交換などの作業性を向上している。
書き込み装置7は、偏向モジュール28内に、半導体レーザ27から射出されたレーザ光を反射する反射光学系を構成する、図2に示す振動素子51を備えている。なお、同図は、本発明にかかる振動素子51を(a)、(b)に示し、従来の振動素子51’を(c)に示している。同図(a)、(b)に示した振動素子51はそれぞれ、第1の形態、第2の形態にかかるものである。なお、ここでは第1の形態の構成要素、第2の形態の構成要素について、互いに区別することなく説明する。また、振動素子51’の構成要素については、振動素子51の構成要素に付した符号の末尾に「’」を付加した符号を付して説明を省略することとする。このことは図3においても同様である。
振動素子51は、シリコン基板で構成されるPZT駆動型のマイクロスキャナとして機能するものであって、方形の枠形状をなした本体52と、本体52に囲まれるようにして振動素子51の中央部に位置し本体52に対して振動する振動部53と、振動部53をその両側において本体52に連結し本体52に搖動可能に支持した一対の梁部としての捩り梁54と、各捩り梁54にそれぞれ対をなして設けられ、本体52側の端部近傍の部分において各捩り梁54を本体52に連結したカンチレバー55と、各カンチレバー55表面上に形成され、対をなしているカンチレバー55を互いに逆方向に湾曲させ捩り梁54を介して振動部53を振動させる圧電素子であるPZT56とを有している。
振動部53は、半導体レーザ27から射出されたレーザ光を反射する反射部としてのミラー反射膜である反射膜57を同図の紙面手前側の面上に有し、これにより、振動素子51を光学素子として機能させるとともに、書き込み装置7に、振動部53が振動することで反射膜57によって反射されたレーザ光を偏向し感光体ドラム5に所定の像を書き込み静電潜像を形成する機能を与えるようになっている。
振動部53は、同図に示すように各側縁の中央部を捩り梁54に支持された平面視方形状をなしている。反射膜57は、振動部53の中心部に振動部53より小さく平面視方形状をなすように形成されている。
振動部53は、同図中破線で示すように、反射膜57の形成面と反対側かつ反射膜57の形成範囲内に、捩り梁54による支持位置を中心として対称に、振動部53を肉抜きした2組のリブ58を有している。リブ58は、振動部53の剛性を維持あるいは向上しつつ軽量化して、振動部53の振動の応答性を向上し、また振動部53の振動時における反射膜57の反りを防止ないし抑制するものである。
各PZT56は、偏向モジュール28本体側に備えられた図示しない電極に接続されており、この電極からの通電により、各カンチレバー55を同期して湾曲させ、振動部53を振動させて、半導体レーザ27から射出されたレーザ光を反射膜57で反射し、偏向する。かかる電極への通電制御及びこれによる振動部53の駆動制御及びかかるレーザ光の偏向制御は制御部によって行われる。
図3に示すように、振動素子51の本体52及び捩り梁54は、1枚のシリコン製の基板50をその両面からエッチングすることによって形成される。なおこのとき振動部53も同時に形成される。このように、1枚の基板をその両面からエッチングするのは、1枚のシリコンウエハーに複数種の素子を造り込むのに適した手法であって、広く用いられている方法である。
同図は、図2と同様に、本発明にかかる第1の形態、第2の形態の振動素子51をそれぞれ(a)、(b)に示し、従来の振動素子51’を(c)に示している。同図において、黒色の層は、エッチングにあたって基板50表面に形成される所定のパターンのレジストを示している。このレジストは、本体52、振動部53、捩り梁54を合わせた形状となっている。
同図に示されているように、振動素子51、振動素子51’は、同図において上側の一方の面から下向きの矢印で示すようにエッチングを行う第1のエッチング工程と、同図において下側の他方の面から上向きの矢印で示すようにエッチングを行う第2のエッチング工程とを経て形成される。同図(3)において、符号Mは、第1のエッチング工程によるエッチングと、第2のエッチング工程によるエッチングとの出会い位置を示している。なおこの出会い位置Mは、第1のエッチング工程によるエッチングと、第2のエッチング工程によるエッチングとが基板50において連通した位置と言い換えることもできる。
ここで、振動素子51’の出会い位置M’における形状について図4を参照して説明する。この形状は、理想的には、同図(A)に示すように、本体52’、捩り梁54’のそれぞれにおいて、出会い位置M’で平面状となることが望ましいが、実際には、同図(B)に示すように、本体52’、捩り梁54’のそれぞれにおいて、出会い位置M’において、ノッチが入ったような形状となってしまう。
これは、基板50’の両面からエッチングを行って振動部53’、捩り梁54’を形成するには、エッチングで基板50’を貫通する必要があるが、基板50’の厚さのばらつきやエッチング精度のばらつきを考慮すると、エッチングによる基板50’の貫通を確実に行うために、ある程度オーバーエッチングすることを要するためである。
このことを図5を用いてより詳しく説明する。かかるエッチングは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野において、シリコン基板をエッチングする際に一般的に用いられるBoshプロセスでのICPエッチングであり、エッチングとパッシベーションとを交互に高速に行うことにより、横方向の広がりを抑えつつ、深くエッチングすることができるプロセスであって、同図(1)から(3)を繰り返し行うことによってエッチングを行うものである。
すなわち、同図(1)に示すように、基板50’の表面保護膜であるCFnポリマーによるパッシベーション膜を形成するパッシベーションを行ってから、同図(2)に示すように、指向性のあるイオンによりパッシベーション膜を除去するエッチングを行い、同図(3)に示すように、パッシベーション膜の除去により露出した基板50’のシリコン面をFラジカルによってエッチングするという工程を繰り返して振動素子51’を形成していく。
このとき、上述のようにオーバーエッチングをした際に、コンフォーマルにエッチングが進行して、出会い位置M’における形状が図4(A)に示した理想形状となれば問題ないのであるが、実際には、図5(3)に示すように、Fラジカルによるエッチングの際にノッチが発生し、出会い位置M’において図4(B)に示したノッチの入った形状となってしまうのである。
このようなノッチは、捩り梁54’において特に問題となる。ノッチにより捩り梁54’の強度が低下し、振動部53’の振動の際に捩り梁54’の破壊が生じ得るためである。
ここで、捩り梁54’のような断面長方形状の部材が捩られた際に破壊する原因の1つとなるせん断応力について、図6を用いて説明する。同図(a)のように、直方体形状の部材を捩ると、すなわち同部材にねじりが生じるようにトルクが加えられると、同部材の軸線に垂直な、b,cをそれぞれ長辺,短辺とする断面は、ゆがみ状態となって方形状でなくなり、同図(b)に示されているように、かかる断面の中心から出る3つの径方向線上のせん断応力の分布は、矢印で示されるようになって、最大せん断応力が長辺上の中点に発生する。またかかる断面の角におけるせん断応力は零である。
かかる最大せん断応力τmaxは、
τmax=T/αbc2
で表される。ここで、Tは加えられたトルク、αはb/cにより定まるパラメータである。
同図(b)における幅bの方向は、基板50’の厚み方向に対応している。
よって、ノッチが基板50’の厚み方向において捩り梁54’の中央位置に生じている場合には、振動部53’の振動時において捩り梁54’に生じる最大せん断応力が、ノッチの発生位置に作用するため、せん断応力による捩り梁54’の破壊が最も生じやすいこととなる。
そこで、振動素子51においては、図3(a)、(b)に示すように、出会い位置Mが、基板50の厚さ方向における捩り梁54の中央位置Oと異なる位置になるように、第1のエッチング工程、第2のエッチング工程を行う。したがって、捩り梁54の機械的強度が、出会い位置Mと中央位置Oとが一致する場合より高くなっている。
このように、振動素子51においては、出会い位置Mが、基板50の厚さ方向における捩り梁54の中央位置Oからずれた位置、言い換えるとシフトした位置となるように、第1のエッチング工程、第2のエッチング工程を行うが、かかるずれ量言い換えるとシフト量は、基板50の厚さ方向における捩り梁54の幅すなわち捩り梁54の厚さを図3(a)、(b)に示すようにdとしたとき、d/4以上となるように設定されている。
このように、出会い位置Mを、基板50の厚さ方向における捩り梁54の中央位置からd/4以上離れた位置とするのは、図6(b)から明らかなように、基板50の厚さ方向における捩り梁54の中央位置からd/4以上離れた位置では、捩り梁54に生ずる最大せん断応力による作用が無視できる程度の大きさとなるからである。
また、振動素子51は、第1のエッチング工程によって規定される捩り梁54の幅(図3(a)における梁部1の幅)よりも第2のエッチング工程によって規定される捩り梁54の幅(図3(a)における梁部2の幅)を大きく設定し、第1のエッチング工程、第2のエッチング工程を行うことで、出会い位置Mにおけるノッチそのものが生じないように形成されている。
これにより、出会い位置Mにおける振動素子51の形状は、図4(A)に示したような理想形状となり、ノッチによる捩り梁54の強度低下が防止されている。
振動素子51のように、基板を両面からエッチングして形成される素子においては、各面からのエッチングのアライメントずれ等の影響により、出会い位置で、基板厚さ方向に垂直な方向における各エッチングの位置ずれが避けられない。そこで、第1のエッチング工程によって規定する捩り梁54の幅よりも第2のエッチング工程によって規定する捩り梁54の幅を、積極的に大きく設定し、基板50の他方の面から出会い位置Mまでにおける捩り梁54の幅を、基板50の一方の面から出会い位置Mまでにおける捩り梁54の幅よりも大きくすることで、ノッチの発生を防止しているのである。
第2の形態の振動素子51においてはさらに、第1のエッチング工程によって規定する捩り梁54の幅を0とし、出会い位置Mが、捩り梁54の端部位置にあるようにすることで、段差自体をも備えていない形状になっている。これによって、捩り梁54の強度が極めて大きく向上している。なお、その一方で、第1の形態の振動素子51においては、第1のエッチング工程によって規定する捩り梁54の幅に厚みがあるため、基板50の厚さ方向における捩り梁54の厚みを大きくしやすいという利点があり、上述のような各エッチングの位置ずれが高精度で抑制ないし防止できる場合にはねじり梁54の厚みを大きくしてその強度を高めることが可能となるという利点がある。
いずれの形態の振動素子51も、基板50の他方の面から出会い位置Mまでにおける捩り梁54の高さ言い換えると第2のエッチング工程によるエッチングの深さが、基板50の一方の面から出会い位置Mまでにおける捩り梁54の高さ言い換えると第1のエッチング工程によるエッチングの深さよりも大きくなるように形成されている。これにより、エッチング特性が安定し、また途中のプロセスフローも容易となっている。
図7ないし図9を参照して、振動素子51の製造工程を図3に示したものより詳しく説明する。この製造工程は図5に示したプロセスと同様の技術を用いて行われる。図7ないし図9は何れも、図2におけるA’−A断面に相当する。図7は、第1の形態、第2の形態に共通の、第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程に先立って行われるPZTの加工工程を示している。図8は、第1の形態の基板50の加工工程を示しており、図9は第2の形態の基板50の加工工程を示している。
図7に示すPZTの加工工程においては、同図(1)に示すように、基板50であるシリコンウエハーに、絶縁のための熱酸化膜を厚さ0.5μmで形成し、同図(2)に示すように、酸化膜上に下部電極、PZT、上部電極を順次成膜する。下部電極は、厚さ0.05μmのTi層と厚さ0.15μmのPt層とからなり、PZTは、厚さ3μmであり、上部電極は、厚さ0.15のPt層からなる。下部電極、上部電極の成膜方法としては、スパッタリング法等が挙げられ、PZTの成膜方法としては、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposotion)法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
続いて、同図(3)に示すように、フォトリソを行って、上部電極及びPZTをRIE(Reactive Ion Etching)にてドライエッチングし、同図(4)に示すように、フォトリソを行って、下部電極及び酸化膜をRIEにてドライエッチングすることで、図2に示したPZT56を形成する。
続いて、同図(5)に示すように、リフトオフ法により、反射膜57を形成する。反射膜57は、厚さ0.05μmのTi層と、厚さ0.05μmのPt層と、厚さ0.1μmのAu層とをこの順で成膜して形成する。
図8に示す第1の形態の基板50の加工工程においては、上述の図7(5)に続いて、図8(6)に示すように、フォトリソを行い、レジストによって基板50の上面に対して本体52、振動部53、捩り梁54に対応する部分にマスクを行い、同図(7)に示すように、1回目のシリコンエッチングを行う。これが第1のエッチング工程に対応している。
続いて、同図(8)に示すように、マスク及び酸化膜を除去し、フォトリソを行い、レジストによって基板50の下面に対して本体52、振動部53(リブ58に対応する部分を除く)、捩り梁54に対応する部分にマスクを行い、同図(9)に示すように、2回目のシリコンエッチングを行う。これが第2のエッチング工程に対応している。
最後に、マスクを除去すると光学素子である振動素子51が得られる。
図9に示す第2の形態の基板50の加工工程は、フォトリソに使用するフォトマスクを変更して図8に示した第1の形態の基板50の加工工程と同様にして行われる。なお、これによって得られる振動素子51では、捩り梁54自体にはエッチングによる出会い位置Mにおける段差は生じないが、図2(b)を参照すれば分かるように、捩り梁54と振動部53との間には第1のエッチング工程による段差が微小に生じている。しかし、この段差は、振動素子51の上面に近い位置にあるため、上述したようなせん断力の作用による破壊等の影響は無視できる程度となっている。また、同様の段差は図2(a)にも生じるが、同図(b)との対比で明らかなように、この段差は同図(b)よりも小さく、せん断力の作用による破壊等の影響はさらに小さい。またこれらの加工工程は一般的に用いられるものであり、比較的低コストによる振動素子51の製造が可能となっている。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、本発明にかかる振動素子において、第1のエッチング工程によるエッチングと第2のエッチング工程によるエッチングとの出会い位置を基板の厚さ方向における梁部の中央位置と異なる位置とする構成と、第1のエッチング工程によって規定される梁部の幅より第2のエッチング工程によって規定される梁部の幅の方を大きくする構成とは、何れか一方のみが備えられていてもよい。前者の構成のみを備えている場合には、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程との順番は逆であっても良い。
本発明にかかる振動素子は、光走査型のバーコード読取装置、車載用のレーザレーダ装置に用いることも可能である。また本発明にかかる振動素子は、光学素子としてではなく、他の用途に用いることが可能であり、このときは反射部を省略された構成となる。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。