JP2009211030A - マニピュレータシステム及び微小な操作対象物の操作方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞や卵等の微小な操作対象物に関する3次元画像を表示可能なマニピュレータシステム及び微小な操作対象物の操作方法を提供する。
【解決手段】このマニピュレータシステムは、微小な操作対象物Bを操作するために電動により3軸方向に駆動可能なマニピュレータと、微小な操作対象物を観察可能な顕微鏡と、顕微鏡による顕微鏡画像を撮像するカメラと、顕微鏡画像を表示可能な表示部と、カメラから集録した顕微鏡画像情報に基づいて3次元画像情報を画像処理により得る画像処理部と、を備え、画像処理により得た画像情報を表示部に3次元表示する。
【選択図】図8
【解決手段】このマニピュレータシステムは、微小な操作対象物Bを操作するために電動により3軸方向に駆動可能なマニピュレータと、微小な操作対象物を観察可能な顕微鏡と、顕微鏡による顕微鏡画像を撮像するカメラと、顕微鏡画像を表示可能な表示部と、カメラから集録した顕微鏡画像情報に基づいて3次元画像情報を画像処理により得る画像処理部と、を備え、画像処理により得た画像情報を表示部に3次元表示する。
【選択図】図8
Description
本発明は、細胞等の微小な操作対象物を操作するマニピュレータシステム及び微小な操作対象物の操作方法に関する。
バイオテクノロジ分野において顕微鏡観察下で卵や細胞に精子やDNA溶液を注入(インジェクション)するなどのように細胞等の微小な対象物に操作を行うマニピュレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献2は、操作者が頭部装着型ディスプレイを装着し、顕微鏡画像を立体表示しながらマニピュレータを操作するようにしたマイクロマニピュレータを開示する。特許文献3は、顕微鏡画像上にマイクロマニピュレータの先端の高さ位置情報をあわせて表示するマニピュレータを操作するようにしたマイクロマニピュレータシステムを開示する。
特開2004−325836号公報
特開平06−202004号公報
特開平06−109979号公報
特許文献2では、頭部装着型ディスプレイを使用し顕微鏡画像を立体表示させているが、顕微鏡に取り付けているカメラ以外に左右両眼用コンバイナが眼前に配置されたヘルメット等の特別な機器を使用しなければならない。特許文献3の顕微鏡画像上に高さを表示する方法は、数値情報のみであり、特に操作に不慣れなものにとって顕微鏡視野下の位置関係が分かり難いといった問題点がある。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、特別な機器を使用することなく、細胞や卵等の微小な操作対象物に関する3次元画像を表示可能なマニピュレータシステム及び微小な操作対象物の操作方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本実施形態によるマニピュレータシステムは、微小な操作対象物を操作するために電動により3軸方向に駆動可能なマニピュレータと、前記微小な操作対象物を観察可能な顕微鏡と、前記顕微鏡による顕微鏡画像を撮像するカメラと、前記顕微鏡画像を表示可能な表示部と、前記カメラから集録した顕微鏡画像情報に基づいて3次元画像情報を画像処理により得る画像処理部と、を備え、前記画像処理により得た画像情報を前記表示部に3次元表示することを特徴とする。
このマニピュレータシステムによれば、カメラから集録した顕微鏡画像情報に基づいて画像処理により3次元画像情報を得て、その画像情報を表示部に3次元表示できるので、特別な機器を使用することなく、細胞や卵等の微小な操作対象物に関する画像を3次元表示可能となる。この3次元表示により、平面(XY)情報に加えて高さ情報(Z)を画像表示から知ることができるので、マニピュレータによる微小な操作対象物に関する操作を確認し易くなり、マニピュレータの微小な操作対象物に対する調整が容易となる。
上記マニピュレータシステムにおいて、前記表示部の画面を分割し、各分割された画面に前記画像処理前の画像情報を2次元表示するとともに前記画像処理後の画像情報を3次元表示することで、微小な操作対象物についての2次元表示画像と3次元表示画像とを対比しながら微小な操作対象物に関する操作を行うことができる。
また、前記マニピュレータには前記微小な操作対象物を操作するためのキャピラリが装着され、前記キャピラリの少なくとも先端部分を前記微小な操作対象物とともに3次元表示することが好ましい。
また、前記マニピュレータを一対備え、一方のマニピュレータには前記微小な操作対象物をインジェクション操作するためのインジェクション用キャピラリが装着され、他方のマニピュレータには前記微小な操作対象物を保持するためのホールディング用キャピラリが装着され、前記インジェクション用キャピラリ及び前記ホールディング用キャピラリの少なくとも先端部分の画像を前記微小な操作対象物の画像とともに3次元表示することが好ましい。
なお、本実施形態によるマニピュレータシステムは、前記キャピラリの動作を制御する制御部と、前記制御部に対し前記キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部と、を備え、前記操作部が、前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記キャピラリによる操作の少なくとも一部の動作が行われるように構成することができる。
本実施形態による微小な操作対象物の操作方法は、上述のマニピュレータシステムを用いて微小な操作対象物を操作する方法であって、前記微小な操作対象物をホールディング用キャピラリに保持し、前記保持された微小な操作対象物に対しインジェクション用キャピラリによりインジェクション操作を行う際に、前記表示部に前記微小な操作対象物の画像情報を3次元表示しながら、前記微小な操作対象物に関する操作を行うことを特徴とする。
この微小な操作対象物の操作方法によれば、細胞や卵等の微小な操作対象物に関する画像情報を3次元表示して立体表示することでキャピラリの高さ方向の位置情報を画像表示で認識できるので、微小な操作対象物に関する操作の確認がし易くなり、微小な操作対象物に対する操作を実行し易くなる。また、インジェクション用キャピラリの高さ方向位置を3次元表示により確認でき容易に調整できるので、インジェクション操作前にインジェクション用キャピラリをホールディング用キャピラリに保持された微小な操作対象物に対し正確に位置決めできる。
上記微小な操作対象物の操作方法において前記マニピュレータシステムは前記インジェクション用キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部を備え、前記操作部が前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記インジェクション操作の少なくとも一部の動作が行われるようにすることが好ましい。これにより、細胞や卵等の微小な操作対象物に関する画像情報を3次元表示して立体表示することでキャピラリの高さ方向の位置情報を画像表示で認識しながら、操作部のボタン操作部を押すことでインジェクション操作の少なくとも一部の動作を行うことができるので、微小な操作対象物に関する操作の確認がし易くなり、微小な操作対象物に対する操作を実行し易くなる。
なお、上述のように、分割された表示部の画面に微小な操作対象物に関する画像情報を2次元表示及び3次元表示することで、2次元表示画像と3次元表示画像とを対比しながら操作できるので、微小な操作対象物に関する操作の確認がよりし易くなる。
本発明のマニピュレータシステムによれば、細胞や卵等の微小な操作対象物に関する画像情報を3次元表示することができ、微小な操作対象物に関する操作の確認が容易となり、微小な操作対象物に対する操作を行い易くなる。
また、本発明の微小な操作対象物の操作方法によれば、微小な操作対象物に関する画像情報を3次元表示することで微小な操作対象物に関する操作の確認がし易くなるので、微小な操作対象物に対する操作を実行し易くなる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態を示すマニピュレータシステムの構成図である。図1において、マニピュレータシステム10は、顕微鏡観察下で試料に人口操作を実施するためのシステムとして、顕微鏡ユニット12と、マニピュレータ14と、マニピュレータ16とを備えており、顕微鏡ユニット12の両側にマニピュレータ14、16が分かれて配置されている。
顕微鏡ユニット12は、CCDやCMOS等からなる撮像素子を用いたカメラ18、顕微鏡20、試料台としてのベース22を備えている。このベース22の直上に顕微鏡20が配置される構造となっている。なお、顕微鏡20とカメラ18とは一体構造となっており、図示は省略したが、ベース22に向けて光を照射する光源を備えている。
ベース22上には試料(図示せず)が乗せられるようになっている。この状態で、ベース22上の試料に顕微鏡20から光が照射され、ベース22上の細胞で反射した光が顕微鏡20に入射すると、細胞に関する光学像は、顕微鏡20で拡大されたあとカメラ18で撮像されるようになっており、カメラ18の撮像による画像を基に試料を観察することができる。
マニピュレータ14は、図1に示すように、X軸‐Y軸‐Z軸の3軸構成のマニピュレータとして、ピペット24、X‐Y軸テーブル26、Z軸テーブル28、X‐Y軸テーブル26を駆動する駆動装置30、Z軸テーブルを駆動する駆動装置32を備えて構成されている。ピペット24の先端には、毛細管チップであるキャピラリ25が取り付けられている。
ピペット24は、Z軸テーブル28に連結され、Z軸テーブル28は、X‐Y軸テーブル26上に上下動自在に配置され、駆動装置30、32はコントローラ43に接続されている。
X‐Y軸テーブル26は、駆動装置30の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル28は、駆動装置32の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル28に連結されたピペット24は、X‐Y軸テーブル26とZ軸テーブル28の移動にしたがって3次元空間を移動領域として移動し、ベース22上の細胞などをキャピラリ25で保持するように構成されている。
マニピュレータ16は、直交3軸構成のマニピュレータとして、ピペット(インジェクションピペット)34と、X‐Y軸テーブル36と、Z軸テーブル38と、X‐Y軸テーブル36を駆動する駆動装置40と、Z軸テーブル38を駆動する駆動装置42を備え、ピペット34は、Z軸テーブル38に連結され、Z軸テーブル38は、X‐Y軸テーブル36上に上下動自在に配置され、駆動装置40、42は、コントローラ43に接続されている。ピペット34の先端にはキャピラリ(ガラスキャピラリ)35が取り付けられている。
X‐Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されている。Z軸テーブル38に連結されたピペット34は、X‐Y軸テーブル36とZ軸テーブル38の移動にしたがって3次元空間を移動領域として移動し、ベース22上の試料に人工操作を行うように構成されている。このように、マニピュレータ14、16はほぼ同一構成であり、以下、ピペット34が連結されたマニピュレータ16を例に挙げて説明する。
X‐Y軸テーブル36は、駆動装置40の駆動(モータ)により、X軸またはY軸に沿って移動するように構成され、Z軸テーブル38は、駆動装置42の駆動(モータ)により、Z軸に沿って(鉛直軸方向に沿って)移動するように構成されているとともに、ベース22上の細胞などを、針を挿入するための挿入対象とするピペット34を連結している。
すなわち、X‐Y軸テーブル36とZ軸テーブル38は、駆動装置40、42の駆動により、ベース22上の細胞などを含む3次元空間を移動領域として移動し、ピペット34を、例えば、ピペット34の先端側からベース22上の細胞(試料)に対して、針を挿入するための挿入位置まで粗動駆動する粗動機構(3次元軸移動テーブル)として構成されている。
また、Z軸テーブル38とピペット34との連結部は、ナノポジショナとしての機能を備えている。ナノポジショナは、ピペット34を設置している方向へ自在に移動可能に支持するとともに、さらに、ピペット34をその長手方向(軸線方向)に沿って微動駆動するように構成されている。
具体的には、Z軸テーブル38とピペット34との連結部には、ナノポジショナとして、微動機構44を備えている。
微動機構44は、図2乃至図4に示すように、圧電アクチュエータの本体を構成するハウジング48を備えており、ほぼ筒状に形成されたハウジング48内には、ピペット34を駆動対象として、外周側にねじ部を有するねじ軸52と、ねじ軸52を囲む中空状の回転軸54が挿通されている。ハウジング48はその底部がベース56に固定されている。
ねじ軸52の先端側には、治具58を介してピペット34の根元側が連結されており、ねじ軸52の中程には、ねじ軸52外周のねじ部とねじ結合されるねじ要素としてのボールねじナット(BSナット)60が装着され、治具58とねじ軸52との間にはスライダ62が連結されている。スライダ62はベース56とほぼ直交する方向に配置され、切り欠き64を間にしてリニアガイド66に連結されている。リニアガイド66はベース56底部側に配置され、ベアリング68を介して、ねじ軸52の軸方向に沿って移動自在にベース56に連結されている。
すなわち、リニアガイド66は、ねじ軸52の軸方向の移動に合わせて、ねじ軸52の先端側を支持したスライダ62を、ベース56に沿って往復動させるようになっている。この際、ねじ軸52のうちボールねじナット60よりもピペット34側の部位が、スライダ62を介してリニアガイド66でスライド自在に支持されるので、ねじ軸52の直線運動をピペット34へ伝達することができる。
ボールねじナット60は、回転軸54の軸方向一端側(先端側)の段部54aに固定されているとともに、ねじ軸52外周のねじ部とねじ結合され、ねじ軸52がその軸方向に沿って往復動(直線運動)するのを自在に支持するようになっている。すなわち、ボールねじナット60は、回転軸54の回転運動をねじ軸52の直線運動に変換するための要素として構成されている。
回転軸54の軸方向他端側は、中空モータ70内の回転部に連結している。中空モータ70のハウジング74は、その底部側がベース56に弾性体としてのゴムワッシャ76を介してボルト78が固定されている。中空モータ70が駆動されると回転軸54が回転し、回転軸54の回転運動がボールねじナット60を介してねじ軸52に伝達され、ねじ軸52がその軸方向に沿って直線運動するようになっている。なお、モータ70と回転軸54との連結にカップリングを使用してもよい。
一方、回転軸54の段部54aに隣接して、軸受80、82が内輪間座84を間にして収納されている。軸受80、82は、それぞれ内輪80a、82aと、外輪80b、82bと、内輪と外輪間に挿入されたボール80c、82cを備え、各内輪80a、82aが回転軸54の外周面に嵌合され、各外輪80b、82bがハウジング48の内周面に嵌合され、回転軸54を回転自在に支持するようになっている。軸受80、82は、内輪間座84を間にし、回転軸54にロックナット86により固定されている。軸受80は、ハウジング48内の段部54aと円環状のスペーサ90と当接することにより、回転軸54の軸方向への移動が規制されるようになっている。軸受82の外輪82bとハウジング48の蓋88との間に、円環状の圧電素子92と円環状のスペーサ90が圧入されている。
また、各軸受80、82、圧電素子92は、スペーサ90の長さを調節し、蓋88を閉めることにより、予圧が付与される。
具体的には、スペーサ90の長さを調整し、蓋88を閉めると、その位置に応じた締結力が軸受82と軸受80の外輪82b、80bに、軸方向に沿った押圧力として予圧が付与されるとともに、同時に圧電素子92にも予圧が付与される。これにより、軸受80、82および圧電素子92に所定の予圧が付与され、軸受80、82の外輪間に軸方向間の距離としての間隙94が形成される。
圧電素子92は、リード線(図示せず)を介して制御回路としてのコントローラ43に接続されており、コントローラ43からの電圧に応じて回転軸54の長手方向(軸方向)に沿って伸縮する圧電アクチュエータの一要素として構成されている。すなわち、圧電素子92は、コントローラ43からの印加電圧に応答して、回転軸54の軸方向に沿って伸縮し、回転軸54をその軸方向に沿って微動させるようになっている。回転軸54が軸方向に沿って微動すると、この微動がねじ軸52を介してピペット34に伝達され、ピペット34の位置が微調整されることになる。
圧電素子92に印加する電圧の電圧波形としては、正弦波、矩形波、三角波などを用いることができる。また圧電素子92に電圧を印加する方法としては、操作者がボタン43Bを押している間、信号波形を連続して出力して駆動してもよいし、バースト波形を使用してもよい。
本実施形態においては、軸受80、82のうち軸受80の内輪80aと外輪80bの変位量であって、圧電素子92の変位の半分の変位量がピペット34の変位量に設定されているため、圧電素子92には微動変位量の2倍の変位を与えるための制御電圧と初期設定電圧とを加算した微動用電圧を印加することになる。
例えば、圧電素子92に2xの伸びが生じたときには、この伸びによる押圧力は微動制御を行う前の予圧荷重に加えて軸受82の外輪82bを押圧し、軸受80の外輪80bを軸方向に移動させ、軸受80、82の各外輪間の間隙94が2x分更に狭くなって圧電素子92の軸方向の伸びを吸収する。
この間隙94の変位は、弾性変形に伴って軸受80、82がそれぞれ軸方向にxずつ変位し、軸受80の外輪80bが軸方向に合わせて2x変位することにより生じる。
逆に、圧電素子92が2x縮むと、押圧力が減少し、軸受80、82の弾性変形がそれぞれxずつ減少し、間隙94が広がる方向に、軸受80の外輪80bが軸方向に合わせて2x変位することになり、圧電素子92の縮む分を吸収する。
このように、間隙94の変位xを軸受80、82がxずつ分けて吸収するので、軸受80、82を互いに押圧する力がバランスしたときに、軸受80、82の内輪80a、80bが回転軸54と共に軸方向にx変位する。これにより、回軸軸54にねじ軸52を介して連結されたピペット34が軸方向にxだけ変位する。つまり、圧電素子92の2xの半分の変位量がピペット34の微動変位量となってピペット34が挿入位置に挿入される。ピペット34が挿入位置に位置決めされたあと、圧電素子92にインジェクション用電圧を印加すると、ピペット34がインジェクション動作を行うことになる。
本実施形態によれば、中空モータ70の駆動に伴う回転軸54の回転運動をボールねじナット60を介して直線運動に変換してねじ軸52に伝達し、中空モータ70の粗動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って粗動駆動し、微動機構44の微動駆動に伴うねじ軸52の直線運動によってピペット34をその軸方向に沿って微動駆動させるようにしたため、ピペット34にガラスキャピラリ35を取り付けるだけで、ピペット34を直線運動させることができ、顕微鏡作業箇所に配置されたベース22へ向けてピペット34を移動させたり、ベース22からピペット34を退避させたりする際に、煩雑な作業を不要とすることができる。
次に、図1〜図6のマニピュレータシステム10のコントローラ43による制御について図7〜図9を参照して説明する。図7は図1のコントローラ43による制御系要部を示すブロック図である。図8は図9の表示部45に表示される画面例を示す図であり、画像処理前の顕微鏡画像の例(a)及び画像処理後の顕微鏡画像の例(b)である。
図1,図7のコントローラ43は、例えば、パーソナルコンピュータ(パソコン、PC)から構成することができ、演算手段としてのCPU(中央演算処理装置)及び記憶手段としてのハードディスク、RAM、ROMなどのハードウエア資源を備え、所定のプログラムに基づいて各種の演算を行い、演算結果に従って各種の制御を行うように駆動指令を出力する。すなわち、コントローラ43は、マニピュレータ14の駆動装置30,32,マニピュレータ16の駆動装置40,42,微動機構44のモータ70,圧電素子92等を制御し、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等を介してそれぞれに駆動指令を出力する。
また、コントローラ43には、情報入力手段としてキーボードの他にジョイスティック47,マウス43A,ボタン43B(図1)が接続されており、さらに、CRTや液晶パネルからなる表示部45が接続されている。表示部45には、カメラ18で撮像したキャピラリ25,35の顕微鏡画像を含めて卵等の微小な操作対象物の顕微鏡画像や演算結果に関する情報や各種制御ボタンを含む制御用画面などが表示されるようになっている。
コントローラ43は、カメラ18で集録した顕微鏡画像情報を画像処理して3次元画像情報を得る画像処理部46を備える。画像処理部46は、カメラ18から集録した2次元画像情報について各画素のXY(XY平面)情報と各画素の数値情報とを用いて高さ(Z)方向の情報を演算することで3次元画像情報を得て、その3次元画像情報に基づいて表示部45にカメラ18で集録した顕微鏡画像を3次元表示する。画像処理部46における画像処理は、CPUによるソフトウエア的処理で実行可能であるが、集積素子を用いたハードウエア的処理でも実行可能である。
カメラ18から集録した顕微鏡画像(2次元画像)の例を図8(a)に示すが、この顕微鏡画像は、ホールディング用キャピラリ25に操作対象物の卵の代わりに同程度のサイズのガラスビーズGBを保持し、その近傍にインジェクション用キャピラリ35をセッティングした状態を示す画像であり、表示部45に2次元表示される。図8(b)の3次元画像は、図8(a)の顕微鏡画像を図7の画像処理部46で画像処理して3次元画像情報を得て、表示部45に3次元表示したものであり、ホールディング用キャピラリ25にガラスビーズGBを保持し、その近傍にインジェクション用キャピラリ35をセッティングした状態の画像である。
図8(a)の画像処理前の2次元表示画像ではキャピラリ25に保持されたガラスビーズGB(操作対象物の模型)に対するキャピラリ35の高さ方向位置(図8(a)の紙面垂直方向位置)を認識することが難しいのに対し、図8(b)の画像処理後の3次元表示画像によれば、3次元表示によりガラスビーズGBに対するキャピラリ35の高さ方向位置を認識でき、キャピラリ35の高さ方向位置を容易に調整できる。
図8(b)の例では、顕微鏡画像を画像情報の輝度情報に基づき3次元表示しているが、その他の情報を用いてもよい。また、画像情報の数値の大きさに対し色付けした色分け表示により3次元表示をしてもよい。また、図8(b)の画像はモノクロ画像であるが、カラー画像でもよい。
次に、コントローラ43の表示部45に表示される画面例について図9を参照して説明する。図9は図1,図7のコントローラ43の表示部45に表示される画面例を示す図である。
図9のように、コントローラ43の表示部45には、制御用画面45aと、顕微鏡画像表示用の画像表示部45b、45cとが表示される。制御用画面45aには、例えば、マニピュレータシステム10の停止ボタン45d、マニピュレータ14,16の電動と手動との切り替えボタン45e等が表示され、これらのボタンは、例えば、マウス43Aにより操作されるようになっている。
図9のように、2つの画像表示部45b、45cは横方向に並んでおり、各画像表示部45b、45cにはカメラ18で集録した顕微鏡画像情報をそれぞれ2次元表示及び3次元表示できる。図10の例は、図8(a)、(b)と同様に、ホールディング用キャピラリ25にガラスビーズGB(操作対象物の模型)を保持し、その近傍にインジェクション用キャピラリ35をセッティングした状態を示す顕微鏡画像情報を画像表示部45bに2次元表示し、画像表示部45cに3次元表示したものである。これにより、2つの画像表示部45b、45cに、細胞や卵等の微小な操作対象物に関する2次元表示画像と3次元表示画像とを並べて表示して対比しながら、微小な操作対象物に関する操作を行うことができる。このように、画像処理をしていない2次元表示画像と、画像処理をした3次元表示画像と、を対比しながらマニピュレータ14,16による操作が可能となり、3次元情報を立体的に表示するため、操作者がマニピュレータ14,16を操作する際の高さ方向の調整を容易に行うことが可能となる。
図1のマニピュレータシステム10の操作のため、図1,図7のように、コントローラ43に接続されたジョイスティック47を主に用いることができ、マニピュレータ14,16に対し1つずつ用意する。ジョイスティック47の具体例について図10を参照して説明する。図10は図1,図7のジョイスティックの具体例を示す斜視図である。
ジョイスティック47は、図10のように、複数のボタン47a〜47gとハンドル47hとを有する。ハンドル47hは、右方向R、左方向Lに傾斜させる(倒す)ことで図1の駆動装置30,40を駆動しマニピュレータ14,16をX軸方向、Y軸方向に駆動でき、回転させる(ひねる)ことで駆動装置32,42を駆動しZ軸方向に駆動できる。また、各ボタン47a〜47gに各機能の操作を割り当てることができ、例えば、ボタン47a,47bに図2〜図4の圧電アクチュエータ(微動機構44)の圧電素子92,モータ70の駆動を割り当て、ボタン47cにインジェクションの実行を割り当てることができるが、これらの割り当ては、操作者の好みに応じて適宜変更可能である。
上記構成において、インジェクション用マニピュレータ16を駆動するに際しては、ジョイスティック47のハンドル47hを操作して、XY軸テーブル36とZ軸テーブル38を粗動駆動し、インジェクションピペット34をベース22上の細胞に近づけて位置決めした後、微動機構44を用いてピペット34を微動駆動することができる。
具体的には、ピペット34にガラス製のキャピラリ35を装着するに際しては、図5に示すように、顕微鏡作業箇所に配置されたベース22からピペット34を退避させる状態になるように、マニピュレータ14,16を駆動する。これにより、ピペット34にキャピラリ35を装着する際、十分な作業スペースが得られる。
キャピラリ35をピペット34に装着した後は、ジョイスティック47の操作等に基づくコントローラ43からの指令により、マニピュレータ14を駆動し、図6に示すように、キャピラリ35が装着されたピペット34を顕微鏡作業箇所であるベース22に向けて移動させる。
キャピラリ35を顕微鏡作業箇所に移動させる際、1回目(初めての)の操作の場合、表示部45に表示される画像の顕微鏡視野倍率を低倍にし、マニピュレータ16の駆動装置40,42や微動機構44を駆動することで、顕微鏡20の視野内にキャピラリ35が確認でき次第、駆動装置40,42や微動機構44の駆動を停止する。
このあと、コントローラ43の画像処理を利用し、駆動装置40,42や微動機構44を駆動することで、顕微鏡20の視野内において、キャピラリ35を最適位置へ移動し、駆動装置40,42や微動機構44の駆動を停止する。このとき、1回目の操作の際に駆動した各テーブル36,38や微動機構44による移動量をコントローラ43に記憶させる。なお、上記キャピラリの最適位置への移動は、駆動装置40,42によるXYZの駆動系(X‐Y軸テーブル36,Z軸テーブル38)及び微動機構44の両方または一方を適宜用いる。
次に、マニピュレータ16を操作し、シャーレの交換あるいはキャピラリ35の交換が必要になった場合、駆動装置40,42や微動機構44を駆動し、顕微鏡作業箇所からキャピラリ35を退避させるための操作を行う。このときジョイスティック47の操作により、キャピラリ35をセッティングした位置まで駆動する。なお、ボタン43Bを用いて任意の位置まで退避するようにしてもよい。
一方、再度、顕微鏡作業箇所へキャピラリ35を移動する場合、1回目にセッティングした際の位置をコントローラ43が記憶しているため、マニピュレータ16で、容易にキャピラリ35の位置を調整可能になる。
また、一連の細胞操作作業中にキャピラリ35を交換する必要があった場合でも、ピペット34をマニピュレータ16から外すことなく、キャピラリ35をセッティングすることが可能となるので、作業効率を向上することができる。
キャピラリ35として、その形状が均一なものを使用する場合は、本実施形態に係るマニピュレータ16を用いることで、従来のものよりも効率を向上させることができる。また、キャピラリ35の形状にばらつきがある場合でもピペット34をアクチュエータ(ねじ軸52)の駆動によって直線往復運動させることができるため、キャピラリ35の位置を微細に調整できる。
また、キャピラリ35が細胞の挿入位置に位置決めされたときには、ジョイスティック47を操作して圧電素子92にインジェクション用の電圧を印加し、微動機構44を微動駆動することで、ピペット34によるインジェクション動作を行うことができる。この際、圧電素子92からピペット34を支持する治具58までの間には弱いばね要素を配置していないため、高い応答性を得ることが可能である。
上述のインジェクション用キャピラリ35をインジェクション操作前に最適位置へ移動させてセッテイングする際に、図8(b)のように、キャピラリ25,35の各先端を含む顕微鏡画像を3次元表示することで、キャピラリ25に保持された微小な操作対象物に対するキャピラリ35の高さ方向位置を認識できるので、キャピラリ35の高さ方向位置を容易に調整でき微小な操作対象物に対して正確に位置決めできる。または、図9のように、2つの画像表示部45b、45cに2次元表示画像と3次元表示画像とを並べて表示して対比することで、キャピラリ25,35の平面位置を確認しながらキャピラリ35の高さ方向位置を容易に調整でき微小な操作対象物に対して正確に位置決めできる。
次に、図1のマニピュレータシステム10による微小な操作対象物(卵)に対するインジェクション操作について図11を参照して説明する。図11は、図1の顕微鏡20による顕微鏡視野を模式的に示し、卵に対するインジェクションのための各ステップ(a)〜(d)を説明するための図である。
図11(a)のように、ホールディング用マニピュレータ14を駆動し、ホールディング用キャピラリ25によりベース22上の卵Dを保持した状態で、図10のジョイスティック47のハンドル47hを操作し、インジェクション用キャピラリ35の先端35aを卵Dに接近させる。このとき、インジェクション用キャピラリ35は、上述のようにしてホールディング用キャピラリ25に保持された卵Dに対し位置決めされている。
次に、図11(b)のように、ジョイスティック47のハンドル47hを操作したりボタン47a,47bを押すことで、インジェクション用キャピラリ35の先端35aを卵Dに当接させる。
次に、図11(c)のように、図10のジョイスティック47のボタン47cを押すと、コントローラ43からインジェクション用電圧を印加して圧電素子92を駆動し、初期設定されたインジェクション用電圧の信号波形に基づいて圧電素子92によりインジェクション用キャピラリ35が先端35aで穿孔動作を行い、インジェクション用キャピラリ35の先端35aが前進方向Bに卵Dの透明帯を通して卵D内へと挿入され、インジェクション用キャピラリ35から精子の入った溶液を注入する。
次に、上述のインジェクション動作の後、図11(d)のように、図10のジョイスティック47のボタン47dを押すと、モータ70を駆動し、インジェクションピペット34の軸長手方向に沿って駆動して、後退方向Cにインジェクション用キャピラリ35を駆動することで細胞D内から抜く。
上述のように、本実施形態によれば、圧電素子92による穿孔動作・インジェクション開始からインジェクション用キャピラリ35を細胞(卵D)から抜くまでの操作を押しボタンスイッチ47a〜47dの押す動作だけで実行することができ、ジョイスティックのレバー操作の必要がなくなり、操作が容易になる。また、上記操作をボタン操作とすることで、初期設定した動作を安定して実行させることができ、このため、人為的な誤差が少なくなるとともに、各操作を安定して繰り返し行うことが可能となる。
上述の図11(a)〜(d)の各操作の際に、図8(b)のように顕微鏡画像を3次元表示することで、または、図9のように2つの画像表示部45b、45cに2次元表示画像と3次元表示画像とを並べて表示して対比することで、キャピラリ25,35の位置を確認しながら上述の各操作を確実に実行することができる。例えば、図11(b)の操作の際に、図8(b)のように顕微鏡画像を3次元表示し、または、図9のように画像表示部45b、45cに2次元表示画像と3次元表示画像とを表示し、ジョイスティック47を操作して、インジェクション用キャピラリ35の先端35aを卵Dに確実に当接させることができる。
以上のように、本実施形態によれば、マニピュレータシステム10の顕微鏡20に装着されたカメラ18で集録した微小な操作対象物に関する顕微鏡画像を表示部45に3次元表示することで、操作者はコントローラの表示部45をみながらジョイスティックによりマニピュレータ14,16を操作する際に、微小な操作対象物やキャピラリ25,35の各位置(特に高さ方向)の確認がし易くなり、その結果、微小な操作対象物に対するインジェクション操作が実行し易くなる。かかる3次元表示画像を、本実施形態では、特殊な機器を使用することなく、顕微鏡に装着のカメラからの画像を画像処理することで容易に得ることができるので、マニピュレータシステム10を低コストでかつ簡単な構成で提供することができる。
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図9では顕微鏡画像の1組の2次元表示画像及び3次元表示画像を表示するようにしたが、本発明はこれに限定されず、2組(またはそれ以上)を表示するようにしてもよく、この場合、別の1組は表示倍率を変えて表示するようにしてもよい。また、図9にもう1つ画像表示部を追加し、2次元表示画像または3次元表示画像を表示倍率を変えて表示してもよい。
10 マニピュレータシステム、14 ホールディング用マニピュレータ、16 インジェクション用マニピュレータ、マニピュレータ、18 カメラ、20 顕微鏡、25 ホールディング用キャピラリ、キャピラリ、35 インジェクション用キャピラリ、キャピラリ、43 コントローラ、45 表示部、45b、45c 画像表示部、46 画像処理部、47 ジョイスティック、70 モータ、92 圧電素子、D 卵(微小な操作対象物)
Claims (6)
- 微小な操作対象物を操作するために電動により3軸方向に駆動可能なマニピュレータと、
前記微小な操作対象物を観察可能な顕微鏡と、
前記顕微鏡による顕微鏡画像を撮像するカメラと、
前記顕微鏡画像を表示可能な表示部と、
前記カメラから集録した顕微鏡画像情報に基づいて3次元画像情報を画像処理により得る画像処理部と、を備え、
前記画像処理により得た画像情報を前記表示部に3次元表示することを特徴とするマニピュレータシステム。 - 前記表示部の画面を分割し、各分割された画面に前記画像処理前の画像情報を2次元表示するとともに前記画像処理後の画像情報を3次元表示する請求項1に記載のマニピュレータシステム。
- 前記マニピュレータには前記微小な操作対象物を操作するためのキャピラリが装着され、前記キャピラリの少なくとも先端部分を前記微小な操作対象物とともに3次元表示する請求項1または2に記載のマニピュレータシステム。
- 前記マニピュレータを一対備え、一方のマニピュレータには前記微小な操作対象物をインジェクション操作するためのインジェクション用キャピラリが装着され、他方のマニピュレータには前記微小な操作対象物を保持するためのホールディング用キャピラリが装着され、
前記インジェクション用キャピラリ及び前記ホールディング用キャピラリの少なくとも先端部分の画像を前記微小な操作対象物の画像とともに3次元表示する請求項1または2に記載のマニピュレータシステム。 - 請求項4に記載のマニピュレータシステムを用いて微小な操作対象物を操作する方法であって、
前記微小な操作対象物をホールディング用キャピラリに保持し、前記保持された微小な操作対象物に対しインジェクション用キャピラリによりインジェクション操作を行う際に、前記表示部に前記微小な操作対象物の画像情報を3次元表示しながら、前記微小な操作対象物に関する操作を行うことを特徴とする微小な操作対象物の操作方法。 - 前記マニピュレータシステムは前記インジェクション用キャピラリの動作を指示するために操作者により操作される操作部を備え、
前記操作部が前記指示の少なくとも一部を押されることで実行するボタン操作部を有し、前記ボタン操作部を押すことで、前記インジェクション操作の少なくとも一部の動作が行われる請求項5に記載の微小な操作対象物の操作方法。
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