JP2009209309A - オレフィン類重合用固体触媒成分、その製造方法及び触媒並びにこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 - Google Patents

オレフィン類重合用固体触媒成分、その製造方法及び触媒並びにこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリマーの立体規則性および収率を高度に維持しつつ、かつ微粉の少ない重合体を得ることのできるオレフィン重合用固体触媒成分および触媒を提供する。
【解決手段】マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)及び、アルコール及びエーテル以外の電子供与性化合物(c)を接触し固体生成物を形成し、次いで該固体生成物にアルコール蒸気及びエーテル蒸気を接触させ、該蒸気接触後の固体生成物に、さらに4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させて得られることを特徴とするオレフィン重合用固体触媒成分、その製造方法及び該固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と有機ケイ素化合物とから形成されるオレフィン類重合用触媒。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリマーの立体規則性および収率を高度に維持することができ、さらに微粉の少ない重合体を得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分、その製造方法および触媒に関する。
従来、オレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有するオレフィン類重合用固体触媒成分が数多く提案されており、特にマグネシウム原料としてジエトキシマグネシウムを代表とするアルコキシマグネシウム化合物を用いて調製された固体触媒成分が、性能が高く工業的にも広く用いられている。
例えば、特許文献1(特開昭63−3010号公報)においては、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素化合物およびチタンハロゲン化物を接触して得られた生成物を、粉末状態で加熱処理することにより調製した固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物よりなるオレフィン類重合用触媒とオレフィンの重合方法が提案されている。
また、特許文献2(特開平11−12316号公報)においては、マグネシウム化合物、チタン化合物及び電子供与性化合物を接触させることによって調製される、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲン原子を含有する固体成分に、アルコールを接触させることにより得られることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物より成るオレフィン類重合用触媒と該触媒の存在下でのオレフィンの重合方法が提案されている。
また、特許文献3(特開2003−261612号公報)においては、マグネシウム化合物、チタン化合物及び電子供与性化合物を接触させることによって調製される、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲン原子を含有する固体成分に、エーテルを接触させることにより得られることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物より成るオレフィン類重合用触媒と該触媒の存在下でのオレフィンの重合方法が提案されている。
上記の各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂、脱灰工程を省略し得る程の高活性を有するとともに、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げているが、この種の高活性型触媒成分と有機アルミニウム化合物およびケイ素化合物に代表される電子供与性化合物とからなる組成の重合用触媒を用いてオレフィン類の重合を行うと、固体触媒成分自体の微粉および重合した際の反応熱による粒子破壊のため、生成重合体中に微粉が多く含まれ、粒度分布もブロード化する傾向があった。微粉重合体が多くなると、均一な反応の継続を妨げ、重合体移送時における配管の閉塞をもたらす等のプロセス障害の原因となり、また粒度分布が広くなると結果的に重合体の成形加工にまで好ましくない影響を及ぼすため、微粉重合体が可及的に少なく、かつ均一粒径で粒度分布の狭い重合体を希求する要因となっていた。
この問題を解決する手段として、特許文献4(特開平6−287225号公報)においては、球状のジアルコキシマグネシウム、芳香族炭化水素化合物およびフタル酸ジエステルとの懸濁液を、芳香族炭化水素化合物と四塩化チタンとの混合溶液に加えて反応させ、得られた反応生成物を芳香族炭化水素化合物で洗浄し、再度四塩化チタンと反応させて得られた固体成分を乾燥させ、微粉除去処理行程を経て得られるオレフィン類重合用固体触媒成分が提案されている。
上記の提案は固体触媒成分自体の微粉を除去し、結果として生成した重合体の微粉量をある程度低減させるという効果は認められるものの、特にマイクロファインと呼ばれる超微粉重合体の発生は依然としてあり、さらなる微粉重合体発生の少ない触媒の開発が望まれていたが、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなかった。
特開昭63−3010号公報(特許請求の範囲) 特開平11−12316号公報(特許請求の範囲) 特開2003−261612号公報(特許請求の範囲) 特開平6−287225号公報(特許請求の範囲)
すなわち、本発明の目的は、オレフィンの重合に供した際、ポリマーの立体規則性および収率を高度に維持でき、しかも微粉が少なくシャープな粒度分布を有する重合体を得ることができるオレフィン類重合触媒の成分となる固体触媒成分、その製造方法並びに触媒を提供することにある。
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、オレフィン類を重合した際の微粉重合体の発生量を抑制するためには、固体触媒成分を形成する際に、微粒子の生成を極力抑えること、また、そのためには、固体触媒成分生成過程で得られる固体生成物にアルコール蒸気とエーテル蒸気の混合蒸気を接触させれば、固体生成物の粒子表面に存在する微粉を除去し、また剥離し易い粒子を除去でき、更に粒子表面の破壊強度が向上すること等を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)及び、アルコール及びエーテル以外の電子供与性化合物(c)を接触し固体生成物を形成し、次いで該固体生成物にアルコール蒸気及びエーテル蒸気を接触させ、該蒸気接触後の固体生成物に、さらに4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させて得られることを特徴とするオレフィン重合用固体触媒成分を提供するものである。
また、本発明は、マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)及び、アルコール及びエーテル以外の電子供与性化合物(c)を接触し固体生成物を形成し、次いで該固体生成物にアルコール蒸気及びエーテル蒸気を接触させ、該蒸気接触後の固体生成物に、さらに4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させることを特徴とするオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、(A)前記オレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(1); R AlQ3−p (1)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物および(C)外部電子供与性化合物によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
また、本発明は、上記のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体又は共重合体の製造方法を提供するものである。
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を用いて形成された触媒を用いれば、ポリマーの立体規則性および収率を高度に維持しながら、極めて微粉の少ない重合体を得ることができる。従って、汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得る。
本発明のオレフィン類重合用触媒のうち固体触媒成分(A)(以下、「成分(A)」ということがある。)の調製に用いられるマグネシウム化合物(以下単に「成分(a)ということがある。」としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中でもジアルコキシマグネシウムが好ましく、具体的には、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられ、ジエトキシマグネシウムが特に好ましい。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得たものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、単独あるいは2種以上併用することもできる。
更に、本発明において成分(A)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウムは、顆粒状又は粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
上記の球状ジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は1から200μmのものが使用し得る。好ましくは5から150μmである。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1から100μm、好ましくは5から50μmであり、更に好ましくは10から40μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、特開昭62−51633号公報、特開平3−74341号公報、特開平4−368391号公報、特開平8−73388号公報などに例示されている。
本発明における成分(A)の調製に用いられる4価のチタンハロゲン化合物(b)(以下「成分(b)」ということがある。)は、一般式Ti(ORCl4−m(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは0または1〜3の整数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。
具体的には、チタンハライドとしてチタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等が例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これら4価のチタンハロゲン化合物は単独あるいは2種以上併用することもできる。
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられるアルコール及びエーテル以外の電子供与性化合物(以下、単に成分(c)ということがある。)は、酸素原子あるいは窒素原子を含有するアルコール及びエーテル以外の有機化合物であり、例えばフェノール類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合およびSi−N−C結合を含む有機ケイ素化合物等が挙げられ、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
具体的には、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジエステル等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリル等のニトリル類、イソシアン酸メチル、イソシアン酸エチル等のイソシアネート類、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等のSi−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)シラン、アルキルアミノシラン等のSi−N−C結合を含む有機ケイ素化合物を挙げることができる。
上記の電子供与性化合物のうち、エステル類、とりわけ芳香族ジカルボン酸ジエステルが好ましく用いられ、特にフタル酸ジエステル及び置換フタル酸ジエステルが重合時の対水素活性を向上させる点で好適である。このうち、フタル酸ジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジ−neo−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
また、置換フタル酸ジエステルとしては、下記一般式(3);
(R(COOR)(COOR) (3)
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基又はハロゲン原子を示し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基を示し、RとRは同一であっても異なってもよく、また、置換基Rの数lは1又は2であり、lが2のとき、Rは同一であっても異なってもよい。)で表わされるものが好ましい。
上記一般式(3)において、Rの炭素数1〜8のアルキル基は、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、イソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基であり、Rのハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。Rは好ましくはメチル基、臭素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはメチル基または臭素原子である。
上記一般式(3)において、RおよびRはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、またはイソオクチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基である。この中でもエチル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソオクチル基が好ましく、エチル基、n−ブチル基、ネオペンチル基が特に好ましい。また、置換基Rの数lは1又は2であり、lが2のとき、Rは同一でもあっても異なってもよい。lが1の場合、Rは上記一般式(3)の置換フタル酸ジエステルの3位、4位又は5位の位置の水素原子と置換し、lが2の場合、Rは4位および5位の位置の水素原子と置換すると好ましい。
上記一般式(3)で表される置換フタル酸ジエステルとしては、4−メチルフタル酸ジエチル、4−メチルフタル酸ジ−n−ブチル、4−メチルフタル酸ジイソブチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジエチル、4−ブロモフタル酸ジ−n−ブチル、4−ブロモフタル酸ジイソブチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸ジネオペンチル、4−エチルフタル酸ジネオペンチル、4−メチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4−エチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸ジネオペンチル、4,5−ジメチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、4,5−ジエチルフタル酸−t−ブチルネオペンチル、3−フルオロフタル酸ジネオペンチル、3−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−クロロフタル酸ジネオペンチル、4−ブロモフタル酸ジネオペンチルが挙げられる。
なお、上記のエステル類は、2種以上組み合わせて用いることも好ましく、その際用いられるエステルのアルキル基の炭素数合計が他のエステルのそれと比べ、その差が4以上になるように該エステル類を組み合わせることが望ましい。
本発明においては、上記成分(a)、(b)、及び(c)を、芳香族炭化水素化合物(d)(以下単に「成分(d)」ということがある。)の存在下で接触させることによって固体生成物を調製する方法が調製方法の好ましい態様であるが、この成分(d)としては具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点が50〜150℃の芳香族炭化水素化合物が好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
本発明における固体触媒成分(A)の調製においては、上記成分の他、更に、ポリシロキサン(以下単に「成分(e)」ということがある。)を使用することが好ましく、ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm/sを有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。これらの中で、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びジメチルポリシロキサンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンが特に好ましい。
本発明では上記成分(a)、(b)および(c)、また必要に応じて成分(d)または成分(e)を接触させ固体生成物を形成させるが、以下に、本発明の固体生成物の調製方法について述べる。具体的には、マグネシウム化合物(a)を、4価のチタンハロゲン化合物(b)または芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、フタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)及び/または4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触して固体成分を得る方法が挙げられる。該方法において、球状のマグネシウム化合物を用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体生成物や固体触媒成分を得ることができ、また球状のマグネシウム化合物を用いなくとも、例えば噴霧装置を用いて溶液あるいは懸濁液を噴霧・乾燥させる、いわゆるスプレードライ法により粒子を形成させることにより、同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体生成物を得ることができる。
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、撹拌機を具備した容器中で、撹拌しながら行われる。接触温度は、各成分の接触時の温度であり、反応させる温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。接触温度は、単に接触させて撹拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になるなどして、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
本発明の好ましい固体生成物の調製方法としては、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(b)を接触させた後に成分(c)及び成分(d)を接触させ、反応させることにより固体生成物を調製する方法、あるいは、成分(a)を成分(d)に懸濁させ、次いで成分(c)を接触させた後に成分(b)を接触させ、反応させることにより固体生成物を調製する方法を挙げることができる。またこのように調製した固体生成物に再度または複数回成分(b)、または成分(b)および成分(c)を接触させることによって、最終的な固体触媒成分の性能を向上させることができる。この際、芳香族炭化水素(d)の存在下に行うことが望ましい。
上記のようにして得られた固体生成物に、アルコール蒸気とエーテル蒸気(以下、成分(e)ということがある。)を接触させる。これにより、固体生成物の粒子表面に存在する微粉が除去され、また剥離し易い粒子が除去される。また、更に固体生成物の粒子表面の破壊強度が向上する。従って、オレフィン類を重合した際に生成する微粉重合体の生成量を顕著に抑制できる。
アルコールとしては常温で比較的蒸気圧の高いものが好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-ブタノール、t−ブチルアルコール、アリルアルコール、t−ペンチルアルコール、イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、2−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ブテン-1-オール、2−クロロエタノール、2−メチル-1-ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル-1-ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−ヘプタノール、シクロヘキサノール、3−クロロ−1−プロパノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、エチレングリコール、イソアミルアルコールなどが挙げられ、好ましくはメタノールおよびエタノールである。これらのアルコールは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
エーテルとしては常温で比較的蒸気圧の高いものが好ましく、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジネオペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジアリルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチル1−プロペニルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、エチルイソペンチルエーテル、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、イソプロペニルメチルエーテル、イソペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、クロロメチルエチルエーテル、クロロメチルメチルエーテル、ジグリシジルエーテル、1,2−ジクロロエチルエチルエーテル、ジビニルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、ビス(1−クロロエチル)エーテル、ビス(2−クロロエチル)エーテル、ビス(クロロメチル)エーテル、モノクロロジエチルエーテル等が挙げられ、好ましくはジエチルエーテルである。これらのエーテルは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明では成分(e)を直接固体生成物と接触させてもよいが、アルコール蒸気とエーテル蒸気を窒素ガスやアルゴンガスのような不活性ガスに含有させ、この不活性ガスを固体生成物に接触させることが、得られた固体触媒成分の活性の向上や得られる微粉量の抑制のためには好ましい方法である。また、成分(e)として、アルコール蒸気またはエーテル蒸気を別々に固体生成物と接触させてもよく、また、アルコール蒸気及びエーテル蒸気を混合し、この混合物を固体生成物と接触させてもよい。
好適な接触方法としては、不活性ガス雰囲気の容器に固体生成物を充填し、この容器内に予めアルコール蒸気とエーテル蒸気を混合した混合蒸気である成分(e)を含有させた窒素などの不活性ガスを所定量充填し接触する方法、または不活性ガス雰囲気の容器に固体生成物を充填し、さらに不活性有機溶媒を充填し懸濁液を形成し、この懸濁液中に予めアルコール蒸気とエーテル蒸気を混合した混合蒸気である成分(e)を含有させた窒素などの不活性ガスを所定量吹き込むことにより接触する方法が挙げられる。不活性ガスに成分(e)を含有させる際、不活性ガス中にアルコール及びエーテルの各々が飽和するように含有させることが望ましく、そのときの不活性ガスの温度における飽和水蒸気量を測定することによって、固体生成物と接触する成分(e)を定量することができる。該蒸気は、アルコール及びエーテルを加熱又は減圧することにより得ることができる。容器内に固体生成物を充填し、アルコールとエーテルの混合液を含んだ溶媒を加えて攪拌する方法では固体生成物の粒子表面の破壊強度は向上せず、重合の際、マクロファインと呼ばれる超微粒子重合体の生成を抑制することはできない。
固体生成物と成分(e)との接触条件は、−20〜150℃、好ましくは10〜130℃、特に好ましくは30〜110℃である。このとき、成分(e)を含有する不活性ガスの露点より高い温度で接触させることが望ましく、特に成分(e)を飽和させた不活性ガスを用いる際は、露点より高い温度に設定し、不活性ガスの供給管や接触する容器内で成分(e)が結露しないようにする。また、成分(e)は蒸気の状態で不活性ガスに含有させることが望ましく、不活性ガスに成分(e)のミストなどの液状で存在させないことが好ましい。接触時間は1分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは30分〜3時間である。また、上記固体生成物と接触する成分(e)は、固体生成物1gに対して、成分(e)は0.0001g〜0.5g、好ましくは0.005g〜0.5g、特に好ましくは0.001g〜0.2gである。
また、上記固体生成物にアルコール化合物及びエーテル化合物を接触させる前、接触中、あるいは接触の後、界面活性剤を固体生成物に接触させてもよい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤および反応性界面活性剤から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
具体的には、カチオン性界面活性剤としては、脂肪族の1〜3級アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。また、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石けん、N−アシルアミノ酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、アルキルスルホ酢酸塩等のスルホン酸塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート等の硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
また、両イオン性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミノ化ルボン酸塩、イニダジリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。また、非イオン性界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が1〜18のポリオキシエチレンモノまたはジアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体等のエーテル型、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩等のエーテルエステル類、ポリエチレングルコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル型、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の含窒素型等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム等が挙げられる。また、反応性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンプロペニルフェニルエーテル等が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独での使用の他、2種以上の組み合わせで使用することもできる。これらの中でも特に、HLB(親水親油バランス)価が通常3〜20である非イオン性界面活性剤が好ましく用いられ、処理方法によって異なるが、使用する溶媒に十分溶解するような非イオン界面活性剤を選択することが望ましい。例えば、アルコール類、エーテル類、アセトン等の極性有機溶媒中で処理する場合は、HLB価が10〜20の親水性の非イオン界面活性剤が好ましく用いられる。またヘキサン、ヘプタン等の炭化水素などの有機溶媒中で処理する場合には、HLB価が3から15のやや親油性の非イオン界面活性剤が好ましく用いられる。
上記のように固体生成物にアルコール蒸気及びエーテル蒸気を接触させた後、再度成分(b)を接触させ固体触媒成分(A)を得る。成分(b)だけではなく、成分(b)および成分(c)を再度接触させることも望ましい。この際、固体生成物の調製と同様に芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させた状態で行うことが望ましい。このように再度接触することによって、活性などの固体触媒成分の性能を向上させることができる。
さらに上記のように再度成分(b)または成分(b)および成分(c)と接触させた場合、この固体触媒成分に再度、不活性溶媒中で界面活性剤を接触させ懸濁液を形成し、その後該懸濁液中の溶媒を除去することもできる。固体生成物にアルコール蒸気とエーテル蒸気を含んだ不活性ガスを接触させた後、再度成分(b)を接触させた固体触媒成分(A)は、不活性ガス接触後の固体生成物と同様に、依然として粒子表面に存在する微粉や剥離し易い粒子は少ないままである。また、固体触媒成分の粒子表面の破壊強度も高いままである。従って、オレフィン類を重合した際に生成する微粉重合体の生成量を顕著に抑制できる。
以上を踏まえ、本願における固体触媒成分(A)の特に好ましい調製方法としては、ジアルコキシマグネシウム(a)を沸点50〜150℃の芳香族炭化水素化合物(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させた後、反応処理を行う。この際、該懸濁液に4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させる前又は接触した後に、フタル酸ジエステルなどの電子供与性化合物(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、反応処理を行い、固体生成物(1)を得る。この際、電子供与性化合物の1種あるいは2種以上を接触させる前または後に、低温で熟成反応を行なうことが望ましい。この固体生成物(1)を常温で液体の炭化水素化合物で洗浄(中間洗浄)した後、再度4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、固体生成物(2)を得る。なお必要に応じ、中間洗浄及び反応処理を更に複数回繰り返してもよい。次いで固体生成物(2)を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄し、洗浄した固体生成物(2)を芳香族炭化水素化合物中に懸濁させ、この懸濁液中にアルコールとエーテル(e)を飽和させた窒素ガスを吹きこみ、攪拌しながら固体生成物(2)に成分(e)を接触させる。その後、デカンテーションにより常温で液体の炭化水素化合物で洗浄した後、4価のチタンハロゲン化合物(b)を、芳香族炭化水素化合物の存在下に、−20〜100℃で接触させ、反応処理を行い、最終的に炭化水素化合物で洗浄し固体触媒成分(A)を得る。
固体触媒成分(A)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物(a)1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、電子供与性化合物(c)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、芳香族炭化水素化合物(d)が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルでである。
また、本発明における固体触媒成分(A)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが0.5〜8.0重量%、好ましくは1.0〜6.0重量%、より好ましくは1.5〜4.0重量%、マグネシウムが10〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは15〜25重量%、ハロゲン原子が20〜85重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%、また電子供与性化合物が合計0.5〜30重量%、より好ましくは合計1〜25重量%、特に好ましくは合計2〜20重量%である。
上記方法で得られた固体触媒成分は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定された平均粒径が10〜150μm、2μm以下の微粒子が全体粒子の0.1重量%以下、好ましくは0重量%、BET法で測定された比表面積が5〜1000m/g、見かけ嵩密度が0.1以上である。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、上記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる外部電子供与性化合物(C)(以下、「成分(C)」ということがある。)としては前記した固体触媒成分の調製に用いることのできる電子供与性化合物と同じもの、更にアルコール類及びエーテル類が用いられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられ、エーテル類としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパン等が挙げられる。成分(C)の中、エーテル類、エステル類又は有機ケイ素化合物が好ましい。エーテル類の中、1,3ジエーテルが好ましく、特に9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3―ジメトキシプロパンが好ましい。また、エステル類の中、安息香酸メチル、安息香酸エチルが好ましい。
上記の有機ケイ素化合物としては、下記一般式(2)
Si(NR(OR4−(q+r) (2)
(式中、qは0、1〜4の整数、rは0、1〜4の整数、但し、q+rは0〜4の整数、R、R又はRは水素原子、炭素数1〜12の直鎖または分岐状アルキル基、置換又は未置換のシクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基のいずれかで、ヘテロ原子を含有してもよく、同一または異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基を示し、ヘテロ原子を含有してもよく、同一または異なってもよく、RとRは結合して環状を形成してもよい。)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2)中、Rは炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。また、R又はRは炭素数1〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜8の直鎖又は分岐状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。また、RとRが結合して環状を形成する(NR)はパーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基が好ましい。また、Rは炭素数1〜6の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、特に炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましい。
このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)シラン、アルキルアミノシラン等を挙げることができる。
式中、rが0の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2 −エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ビス(3 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(4 −メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(3,5 −ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、4 −メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、3,5 −ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、2-エチルヘキシルトリメトキシシラン、2-エチルヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましい。
式中、rが1〜4の有機ケイ素化合物としては、(アルキルアミノ)トリアルキルシラン、(アルキルアミノ)ジアルキルシクロアルキルシラン、(アルキルアミノ)アルキルジシクロアルキルシラン、(アルキルアミノ)トリシクロアルキルシラン、(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)ジアルキルシラン、(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)ジアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)アルキルシラン、ビス(アルキルアミノ)(ジアルキルアミノ)シクロアルキルシラン、ジ(アルキルアミノ)ジアルキルシラン、ジ(アルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン、ジ(アルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジアルキルシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)アルキルシクロアルキルシラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジシクロアルキルシラン、トリス(アルキルアミノ)アルキルシラン、トリス(アルキルアミノ)シクロアルキルシラン、トリ(アルキルアミノ)アルキルシラン、トリ(アルキルアミノ)シクロアルキルシラン、トリ(シクロアルキルアミノ)アルキルシラン、トリ(シクロアルキルアミノ)シクロアルキルシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、トリス(アルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、トリス(シクロアルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、ビス(ジアルキルアミノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルアミノトリス(アルキルアミノ)シラン、ビス(パ−ヒドロイソキノリノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、ビス(シクロアルキルアミノ)ビス(アルキルアミノ)シラン、テトラ(アルキルアミノ)シラン、トリ(アルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、トリ(シクロアルキルアミノ)ジアルキルアミノシラン、ジ(ジアルキルアミノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルアミノトリ(アルキルアミノ)シラン、ジ(アルキル置換パ−ヒドロイソキノリノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、ジ(アルキル置換パーヒドロキノリノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、ジ(シクロアルキルアミノ)ジ(アルキルアミノ)シラン、アルキル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、ビニル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アリル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アラルキル(ジアルキルアミノ)(アルキルアミノ)アルコキシシラン、ジアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン等を挙げることができる。
該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの外部電子供与性化合物は、1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
次に本発明のオレフィン類重合用触媒は、前記したオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含有し、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行う。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましくはプロピレンである。プロピレンの重合の場合、他のオレフィン類との共重合を行うこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またプロピレン等のオレフィン単量体は、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
予備重合を行うに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いでオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいは2種以上の他のオレフィン類を接触させる。成分(C)を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(B)を装入し、次いで成分(C)を接触させ、更にオレフィン類重合用固体触媒成分(A)を接触させた後、プロピレン等のオレフィンおよび/または1種あるいはその他の2種以上のオレフィン類を接触させる方法が望ましい。
本発明によって形成されるオレフィン類重合用触媒の存在下で、オレフィン類の重合を行った場合、従来の触媒を使用した場合に比べ、得られるポリマーは微粉が極めて少なく、また粒径の大きさが揃ったシャープな粒度分布を有し、かつポリマーの立体規則性および収率を高度に維持することができる。本発明のオレフィン類重合用触媒は、特に気相法によるポリオレフィンの製造プロセスに非常に有利である。
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
〔固体触媒成分(A)の調製〕
窒素ガスで十分置換され、攪拌器および還流冷却器を具備した容量500ミリリッターの丸底フラスコにジエトキシマグネシウム10g、トルエン50mlおよびフタル酸ジ−n−ブチル2.4mlを投入して懸濁液を形成した。一方、窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成しておき、この混合溶液中に上記懸濁液を添加した。その後、混合溶液を昇温し、90℃で2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで3回洗浄し、次いで新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、112℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。その後デカンテーションにて上澄液を除去した後、40℃のn−ヘプタン100mlで5回洗浄し、乾燥した。次に窒素ガスで十分に置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに、生成した固体物10g、トルエン70mlを加え、懸濁液を得た。窒素雰囲気下、この懸濁液に0.03g-(ジブチルエーテル-エタノール)/g-固体物になるようにジブチルエーテルとエタノールの混合飽和窒素ガスをバブリングさせて固体生成物と水を接触させた。接触温度は25℃、接触時間は5分であった。バブリングを停止した後、接触後の懸濁液に新たに四塩化チタン30mlを加え、112℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。その後デカンテーションにて上澄液を除去した後、40℃のn−ヘプタン100mlで5回洗浄し固体触媒成分を得た。なお、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、3.1重量%であった。
〔重合用触媒の形成及び重合〕
窒素ガスで十分に乾燥し、次いでプロピレンガスで置換された内容積1800mlの攪拌装置付きステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン700mlを装入し、プロピレンガス雰囲気下に保ちつつ、トリエチルアルミニウム2.10mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.21mmol、及び前記固体触媒成分をTiとして0.0053mmol装入し、重合用触媒を形成した。次いで、0.2MPaのプロピレン圧をかけ、攪拌を保ちながら20℃で30分間予備的な重合を行った。その後、150mlの水素を装入し、系内のプロピレン圧を0.7MPaとして70℃で2時間重合を継続した。なお、重合が進行するにつれて低下する圧力は、プロピレンのみを連続的に供給することにより補い、重合中一定の圧力に保持した。上記重合方法に従い、プロピレンの重合を行い、生成された重合体をろ別し、減圧乾燥して固体重合体を得た。一方、ろ液を凝縮して重合溶媒に溶存する重合体を得、その量を(M) とし、固体重合体の量を(N) とする。また、得られた固体重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出し、n−ヘプタンに不溶解の重合体を得、この量を(P) とする。固体触媒成分当たりの重合活性(Y) を下記式で表す。
(Y)=[ (M) +(N)](g)/固体触媒成分量(g)
また、n−ヘプタンに不溶な全ポリマー(HI)を下記式で表わす。
(HI)={ (P) (g)/ [(M)+(N) ] (g) } ×100
さらに、生成固体重合体のメルトフローレイト(MFR) 、嵩比重(BD)および生成固体重合体の微粉(44μm以下、105μm以下)、平均粒径および粒度分布〔(D90−D10)/D50〕を測定したところ、表1に示すような結果が得られた。
なお、生成固体重合体(N)のメルトフローレイトの値(MFR)は、ASTM D 1238、 JIS K 7210に準じて測定した。また、表1中、添加量の(g-アルコール等/g-固体物)は、(g-エーテル-アルコール/g-固体物)を言う。
実施例2〜実施例4
0.03g-(ジブチルエーテル-エタノール)/g-固体物に代えて、0.08g-(ジブチルエーテル-エタノール)/g-固体物(実施例2)、0.20g-(ジブチルエーテル-エタノール)/g-固体物(実施例3)、0.01g-(ジブチルエーテル-エタノール)/g-固体物(実施例4)とした以外は、実施例1と同様に固体触媒成分の調製、重合触媒の形成および重合を行った。重合結果を表1に示した。
実施例5〜実施例7
エタノールに代えて2-ブタノールとしたこと(実施例5)、エタノールに代えて2-ブタノールとし、ジブチルエーテルに代えてジエチルエーテルとしたこと(実施例6)、エタノールに代えて2-エチル-1-ヘキサノールとし、ジブチルエーテルに代えてジイソアミルエーテルとしたこと(実施例7)以外は、実施例1と同様に固体触媒成分の調製、重合触媒の形成および重合を行った。重合結果を表1に示した。
比較例1
固体生成物と、アルコール及びエーテルの飽和窒素ガスの接触を行わなかったこと、接触後の四塩化チタンを投入しなかったこと以外は、実施例1と同様に固体触媒成分を調製し、重合触媒の形成および重合を行った。その結果を表1に示した。
比較例2
〈固体触媒成分の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g及びトルエン750mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁溶液を、攪拌機を具備し窒素ガスで充分に置換された、容量3000mlの丸底フラスコ中に予め装入されたトルエン450ml及び四塩化チタン300mlの溶液中に、装入した。次いで、ジ-n- ブチルフタレート54mlを添加し、110℃まで昇温し、その途中で、ジメチルポリシロキサン60mlを添加した。110℃まで昇温後、攪拌しながら2時間反応させた。反応終了後、生成物をトルエンで洗浄し、新たにトルエン1200ml、四塩化チタン300mlを加えて、100℃で2時間攪拌しながら接触反応させた。次いで、生成物をヘプタンで洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体成分を得た。この固体成分中のチタン含有量を測定したところ、1.4重量%であった。
(固体成分のアルコール処理)
次に、攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、上記の固体成分10g、ヘプタン50mlを装入し、懸濁溶液とした。次いで、該懸濁溶液中に、予め準備された、ヘプタン50ml中にエタノール0.01mlを添加した混合溶液を全量添加し、50℃で1時間、攪拌しながら接触させて、固体触媒成分を得た。この固体触媒成分を固液分離して、固体中のチタン含有率を測定したところ、1.4重量%であった。
上記のようにして調製した固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に、重合触媒の形成および重合を行った。その重合結果を表1に示した。
比較例3
〈固体成分の調製〉
撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム150g及びトルエン750mlを装入し、懸濁状態とした。次いで、該懸濁液を、撹拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量2000mlの丸底フラスコに予め装入されたトルエン450ml及びチタンテトラクロライド300mlの溶液中に添加した。次いで、該懸濁液を5℃で1時間反応させた(低温熟成処理)。その後、フタル酸ジ−n−ブチル22.5mlを添加して、90℃まで昇温した後、撹拌しながら2時間反応処理(第1処理)を行った。反応終了後、生成物を80℃のトルエン1300mlで4回洗浄(中間洗浄)し、新たにトルエン1200ml及びチタンテトラクロライド300mlを加えて、撹拌しながら112℃で2時間の反応処理(第2処理)を行った。この後、中間洗浄及び第2処理を、更にもう一度繰り返した。次いで、生成物を40℃ヘプタン1300mlで7回洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体成分を得た。この固体成分中のチタン含有量を測定したところ、2.9重量%であった。
(固体成分のエーテル処理)
上記のようにして得られた固体成分10gをヘプタン100ml中に懸濁させ、この懸濁液中にジブチルエーテル0.6mlを添加した。その後40℃で1時間、攪拌しながら処理を行い、次いで、40℃のヘプタン1300mlで7回洗浄し固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.2重量%であった。
上記のようにして調製した固体触媒成分を用いた以外は実施例1と同様に、重合触媒の形成および重合を行った。その重合結果を表1に示した。
Figure 2009209309
表1の結果から、本発明の固体触媒成分および触媒を用いてプロピレンの重合を行うことにより、高活性および高立体規則性を維持し、微粉重合体の発生が極めて少ないことがわかる。
本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。

Claims (7)

  1. マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)及びアルコール及びエーテル以外の電子供与性化合物(c)を接触し固体生成物を形成し、次いで該固体生成物にアルコール蒸気及びエーテル蒸気を接触させ、該蒸気接触後の固体生成物に、さらに4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させて得られることを特徴とするオレフィン重合用固体触媒成分。
  2. 前記マグネシウム化合物がジアルコキシマグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
  3. 前記4価のチタンハロゲン化合物が四塩化チタンであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
  4. 前記固体生成物と、アルコール蒸気及びエーテル蒸気との接触が、前記固体生成物と、アルコールとエーテルを飽和させた不活性ガスの接触であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
  5. マグネシウム化合物(a)、4価のチタンハロゲン化合物(b)及び、アルコール及びエーテル以外の電子供与性化合物(c)を接触し固体生成物を形成し、次いで該固体生成物にアルコール蒸気及びエーテル蒸気を接触させ、該蒸気接触後の固体生成物に、さらに4価のチタンハロゲン化合物(b)を接触させることを特徴とするオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
  6. (A)請求項1〜5に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(1); R AlQ3−p (1)
    (式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物および(C)外部電子供与性化合物によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
  7. 請求項6記載のオレフィン類重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体又は共重合体の製造方法。
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