JP2009209027A - 改良された化学気相蒸着ダイヤモンド - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質で、しかも均質なCVDダイヤモンド膜を効率よく、経済速度で製造する方法を提供する。
【解決手段】一桁ナノダイヤモンド粒子凝膠体を、ビーズミリングを行なって水性コロイドを作成し、水を除いてフレーク状とした後、非水系分散媒に再分散させて一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドを製造し、前記一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドを、インクジェットプリント原理を利用したパターニング装置を用いて、一桁ナノダイヤモンド粒子が一平方糎当たり2×1011以上の密度となるように基板上に種付けしたあと、真空加熱乾燥法又はマイクロ波照射により、非水系分散媒を除去し、続いて、一桁ナノダイヤモンド粒子を種として、CVD法により基板上にダイヤモンド膜を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、気相ダイヤモンド膜合成技術分野に属する。また人造ダイヤモンドの中の最小粒子、一桁ナノダイヤモンド分散体の製造および応用に関連する。
人類の夢の一つダイヤモンド合成は、1955年にアメリカでGeneral Electric社が始めて成功し、微粒子状のダイヤモンド粉末を得た。GE社が用いた方法は、1400℃・5万4千気圧以上の高温高圧を発生・保持することの出来る静水圧型オートクレーブ中で加熱しつつ、鉄触媒の存在下、ダイヤモンド単結晶を成長させる静的バッチ法であった。引き続きアメリカでdu Pont社が、黒鉛と銅粉など熱伝導性が高い金属粉末との混合物に、火薬爆発によって生じた衝撃波を連続照射して、黒鉛−ダイヤモンド相変換を繰り返し、混合してあった金属粉末を洗い出して多結晶ダイヤモンド粒子を得る方法を開発した。現在でも、人工ダイヤモンドは、GE法およびdu Pont法が主流であって、平均直径50μmの所謂人工ダイヤモンド粒子が年間推定200トン以上生産されている(非特許文献1)。
’Diamonds in Modern Technology:Synthesis and Applications,’Collins,A.T.in The Nature of Diamonds,Harlow,G.E.(Ed.),Cambridge Univ.Press,Cambridge,Cambridge,1998,p.255−272.
ミクロダイヤモンド粒子製造技術は、既にほぼ完成の域に達して、生産コストは1カラット当り数セントまで低下しているにも拘わらず、用途が研磨および金属工具への表面コーティングによる耐久性向上など、比較的狭い範囲に限定され、工業材料としては、汎用性に欠けるために、これ以上の市場拡大が困難であることが明らかとなった。これはミクロダイヤモンド粒子が硬すぎて加工不可能であるため、多目的二次製品を製造することができないからである。ところが、本来ダイヤモンドは光透過性、硬度、ヤング率、熱伝導性など多くの性質が地球上の物質中で最高値を示し、最良の汎用工業素材となる能力を備えていることは良く認識されていて(非特許文献2)、多方面への用途が期待されている。例えば、止め処も無く高性能化・小型化する電子デバイスが動作中に発生する熱を迅速に取り除くための高性能熱伝導物質に対する要請が急を告げているが、ダイヤモンド以外に対応できそうな物質が見当たらない。当然のことながら、このジレンマを克服するために、粒子以外の形を持つ人工ダイヤモンドの出現が待望されている。
Properties and Applications of Diamond,Wilks,E.;Wilks,J.,Butterworth−Heinemann Ltd.,Oxford,1994,pp.525.
1950年代から、画期的な常圧気相合成法によるダイヤモンド膜製造の開発が始まった。1975年になって、Deryaginが化学的気相蒸着(CVD)法を創始して、多結晶ダイヤモンドの薄膜が生成することが確認された。CVD法が世界的に普及したのは、1982年にわが国で再現性の良い実用的CVD法として熱フィラメント方式が考案され、且つ技術の詳細が公開されて以来である。
ところが、現在に至るもCVDダイヤモンド膜生産量は、人工ダイヤモンド生産統計に現れないほど微々たるものである。加工性が欠如したダイヤモンド単結晶のミクロ粒子製品に比べて、明らかに応用性の高い膜状CVDダイヤモンドの開発が遅いのは何故だろう?何がボトルネックとなっているのかを知るために、CVDダイヤモンドの開発過程を調べてみた。CVDダイヤモンドフィルム開発初期には、ダイヤモンド膜の気相成長速度が著しく小さく、毎時数十nmに過ぎず、このため生産性が著しく低かった。これに対して活性炭素種の生成方法および副生物である黒鉛炭素を膜表面から除く方法に関して、多大の研究努力が傾注され、熱フィラメント法に加えて、マイクロ波プラズマ法、アーク放電プラズマジェット法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ法などの活性炭素生成手法および気相成分に改良が加えられ、その結果成長速度に関しては、長足の進歩が見られた。
それでは、何が問題で、CVDダイヤモンド薄膜の応用が展開しないのか?そもそも、CVDダイヤモンドが多結晶であることが問題の根底にある。多結晶体であるがために、結晶子間境界領域が発生し、ここに空隙、無定形炭素、低結晶性炭素、不純物などが集積して、透明性、熱伝導性、ヤング率、化学的安定性、表面平滑性、密度など、単結晶のバルクダイヤモンドに見られる多くの優れた性質が、殆どすべてダメージを受ける。単結晶CVDダイヤモンドが望ましいことが明らかなので、ダイヤモンド研究者は常に気相単結晶ダイヤモンド合成を意識する。
現実問題としては、単結晶CVDダイヤモンドの工業的生産・応用は未だに高嶺の花である。まず多結晶CVDダイヤモンドの品質向上から手をつけるべきであろう。多結晶ダイヤモンド膜の工業的応用においては、高い表面平滑度、粒子充填率、密度、強度、透明性に優れ、空隙率が少なく、ピンホールのない膜構造が要求される。しかしながら、良く知られているように、これまでのCVDダイヤモンドフィルムにおいては、構成単結晶子(以下習慣に従ってグレインと呼ぶ)が膜成長方向に関して、ミクロンオーダーの長大結晶となり、しかも短軸方向の幅が広がる傾向が強いので、そのために充填性が悪く、空隙率が高く、密度の低い、表面にピンホールが多く、表面平滑性の悪い膜しか得られなかった。
この問題に対して、1980年代後半にアメリカ・アルゴンヌ国立研究所のD.Gruenらが、C60を炭素源に用い、またアルゴンをキャリヤーガスに用いるなどの大幅な改良を加えて、常に新しい結晶成長核を出現させることによって、膜成長方向への長大結晶の成長を抑え、平均3nmの超微小結晶から成る等方性生膜技術を開発し、膜の品質を大幅に向上させることに成功した(非特許文献3)。Gruenらは、ナノサイズ一次粒子から成る多結晶ダイヤモンドを超ナノ結晶性ダイヤモンド(ultrananocrystalline diamond、UNCD)と名づけて、従来のミクロ多結晶ダイヤモンドCVD膜と区別するよう提案した。ただし、従来の方法でも、膜面に並行な方向に関してはナノサイズの結晶となるので、従来法の成膜物をナノ結晶性ダイヤモンド(nanocrystalline diamond、NCD)と呼ぶことになった(図1)。GruenのUNCDは、大きなブレークスルーであったが、折角向上した膜成長速度が、再び大幅に低下し、生産性に問題を残した。
"Nanocrystalline diamond films,"Gruen,D.M.Ann.Rev.Mater.Sic.1999,29,211−259.
1991年に、ダイヤモンド以外の特定の結晶面に、バイアス電圧を印加すると、ダイヤモンド結晶成長核となることが、わが国で発見された。これをbias enhanced nucleation(BEN)法というが、さらにこの方法を用いると、グレインが一定方向に配向した高度配向ダイヤモンド(highly oriented diamond,HOD)膜が生成することが見出され、これに刺激されて、ヘテロエピタキシャル成長技術が広く研究された。その結果として、グレインが一部融合したダイヤモンド合成の成功を経て、微小な単結晶ダイヤモンド薄膜が得られるようになった(非特許文献4)。この結果、CVDダイヤモンド研究はBEN/HODヘテロエピタキシャル成長法が本命と受け止められているようである。果たしてそうだろうか?
‘Diamond Films,’Kobashi,K.,Elsevier,Oxford,2005,pp.336.
CVD法が確立されるよりも早く、1963年に旧ソビエト連邦で、爆轟法ナノダイヤモンド合成法が発見された。酸素欠如型の軍事用爆薬組成物Composition Bを水などの不活性媒体中で爆発させて、使用火薬重量の4%以上の収率で生成する煤を集め、熱濃硝酸酸化によって無定形炭素を除くと、煤重量の半分程度が残り、これは一次粒子の大きさが直径4ないし5nmの立方晶ダイヤモンドの単結晶であるという、驚くべき事実が見出された。爆轟法ナノダイヤモンドは長く軍事機密として封印されたのちに1990年代はじめから世に知られて、生産もはじまったが、予想外に性能が悪く、あまり注目を惹かなかった。漸く今世紀に入って、爆轟法の粗生成物は、ナノダイヤモンド一次粒子の強固な凝膠体であることが認識されたのが契機となって、状況が一変した。爆轟法ナノダイヤモンド一次粒子の凝膠体は、大きさは60−200nmであるために、むしろサブミクロン粒子として挙動し、また多結晶境界相の結晶性が極端に低いため、このままでは微細ダイヤモンド粒子としての性能を発揮できなかった原因が理解された。
2003年に至ってビーズミリングによる凝膠体の解砕が成功を収め、平均直径4.6±0.7nmの一桁ナノダイヤモンド粒子が分散状態として単離されて、従来の凝膠体ナノダイヤモンドとは、画然と異なる性質・挙動を示すことがわかり、俄然注目された。このブレークスルーは二つの大きな意味を持つ。一つはミクロ以上の大きさを持つ古典的ダイヤモンドに対して、サイズ効果、すなわち量子化の始まるナノ領域のダイヤモンドが始めて出現し、炭素ナノテクノロジーの基幹素材の最有力候補となったことである(特許文献1、2および非特許文献5)。もう一つの意義は、CVDダイヤモンドの結晶成長開始剤として、長年探し求められていた、超微細ダイヤモンド粒子が遂に見出されたことである。後者が本発明の骨子となる。
「超分散状態ナノ炭素およびその製造方法」片岡 文昭、大澤 映二、藤野 孝洋、井戸原 修、寺島 章、井上 好明、横田 誠二、川嵜 一博(双葉電子工業、ナノ炭素研究所、高周波熱錬)、特開2005−1983、公開日 平成17年1月6日、特願2004−143529(特願2003−141618優先権主張)。 “Ultra−Dispersed Nanocarbon and Method for Preparing the Same”,Kataoka,F.;▲O▼sawa,E.;Fujino,T.;Takahashi,M.;Idehara,O.;Terajima,A.;Inoue,Y.;Yokota,S.;Kawasaki,K.USP 7,300,958.Patent Issue Date Nov.27,2007.Patent Appl.No.10/847,453.May 17,2004.Priority Claimed by JapanesePatent Appl.No.2003−141618(May 20,2003) "Recent progress and perspectives in single−digit−nano diamond,"▲O▼sawa,E.Diam. & Rel.Mater.2007,16,2018−2022.
上に述べた背景技術の説明から解るように,CVDダイヤモンド膜開発は、既に半世紀近くの間、苦難の歴史を歩んできた。何故、これほど開発に時間がかかったのか、気相ダイヤモンド合成の原点に立ち返って考えてみると、初めから結晶成長開始のための核として、最小サイズの超微小ダイヤモンド単結晶粒子を用い、ホモエピタキシャル成長を目指すのが、本来最良の道であったことに気が付く。結晶核(種)以外の重要因子として、ダイヤモンド結晶気相成長機構の解明、後者に基づく成長方法の確立、気相結晶成長および超薄膜の解析技術などを挙げることができる。これらの問題の究明が過去30年の間に長足の進歩を遂げて、相当実用性の高い水準に達している。しかしそれでも、依然としてCVDダイヤモンド薄膜の大量生産が実現しないのは、種付け技術が最重要先決因子であることを裏付ける。CVDダイヤモンド開発が遅れた原因は、超微小ダイヤモンド単結晶粒子が手に入らなかったことに尽きる。
本発明において解決しようとする課題を、更に具体的に把握するために、CVDダイヤモンド製造における種付け技術の経過を辿ってみる。CVDにおいては、ダイヤモンドのエピタキシャル成長が可能な表面格子を持つ基板を用いるか、あるいは、ダイヤモンド自身を成長核として基板に塗布する必要がある。これまでのところ、前者すなわちダイヤモンドの効率的エピタキシャル成長を可能とする面をもつ非ダイヤモンド物質は、未だに発見されていない。例えば、ケイ素基板をそのまま用いた場合、ダイヤモンド成長核密度は、10個/cmに過ぎない。この密度は、これまでにCVD結晶成長核密度として望ましい目標値とされる1011/cmに比べて、100万分の1に過ぎない。
実際に用いられている、ダイヤモンド結晶成長核発生法は、ダイヤモンド粒子による引掻き種付け、炭素/炭化物層の蒸着、およびバイアス電圧印加法の3方法である。引掻き種付け法は、ダイヤモンドの砕片や屑などでシリコン・ウェファなどの基板表面を摩擦して、傷をつける方法で、引掻き応力によってダイヤモンド結晶が一部僻開して生じた微粒子が基板表面に付着し、ダイヤモンド成長核となる。この方法では、同時にシリコン基板表面に高エネルギー欠陥が生成して、ダイヤモンド成長核となる可能性もあるとされている。残念なことに、引掻き種付け法は基板表面に損傷を与えること自体が大きな欠点であるばかりでなく、表面が汚染されるために、CVDダイヤモンドの重要用途の一つと目されるMEMS用の潤滑性被膜製造法として不適である。また複雑な3次元表面に適用することが出来ない。炭化物中間層蒸着法は、新たな非晶質界面を生成するために、光学的透明度、電子的性質および熱伝導性に悪影響を与えるという欠点がある。バイアス電圧印加法は、この方法に対応する結晶面を持って、しかも電導性を持つ基板をまず探し出す必要があり、バイアス印加装置を必要とし、その上大表面処理が困難である。
結局のところ、最小のナノダイヤモンド結晶を核として用い、CVDダイヤモンドのホモエピタキシャル成長を行なわせる方法が最適である。漸く数年前に、始めて爆轟法ダイヤモンドの一次粒子である一桁ナノダイヤモンドが単離されて、上記の方法を実施することが可能となった。一桁ナノダイヤモンドをCVDダイヤモンド成長の種として用いた例は、我々の知る限り2005年に始めてPCT特許明細書に記載された(特許文献3)。また同様な記述が2007年のPCT特許明細書にも記載された(特許文献4)。一応の成功を収めたようなので、爆轟法ダイヤモンドの一次粒子が役に立ちそうである。しかしながら、これらの特許明細書を読む限りでは、最も重要な生産管理情報である、一桁ナノダイヤモンド粒子の種付け基板へのコーティング前後の粒度と核密度が測定されておらず、詳細が不明である。また種付け基板のAFM,SEM,TEMなども添付されてなく、成功を裏付けるデータが未開示のままである。到底工業的応用を想定して用意周到に行われた発明とは考えられない。
古賀善紀、長谷川雅孝、飯島純男、津川和夫、石原正統「炭素膜」(産総研)、WO 2005/103326 A1,PCT/JP2005/007342. 長谷川雅孝、津川和夫、古賀善紀、石原正統、飯島純男「炭素膜」(産総研)、WO 2007/004647 A1,PCT/JP2006/313315.
高品質で、しかも均質なCVDダイヤモンド膜を効率よく、経済速度で製造するためには、単位製造操作毎に要件を洩れなく管理することが必要であるが、ここでは、問題をホモエピタキシャル成長のための結晶核種コーティングに限って考察する。まず、爆轟法ナノダイヤモンドの分散一桁ナノ一次粒子は炭素原子数約5000と予想され、巨大高分子の範疇に入る為に、超高真空中で高温加熱しても、気化・蒸発せず、したがって基板への塗布手段として蒸着を行なうことができない。また通常のアエロゾール噴霧条件下ではただちに凝集して、巨大な可視凝集体を作るので、吹きつけコーティングを行なうこともできない。しかし、水や限られた種類の有機溶媒中では、コロイド状分散状態で、+40mV以上の高いゼータ電位をもつために、コロイド溶液を安定に作成・保存することができる。したがって、希薄コロイドによる湿式コーティング方式を適用することが可能である。
本発明において解決しようとする課題は次の4点である。
(1)種ダイヤモンドの生産と制御。粒度分布が狭く、球形に近い形をした、できるだけ小さな高純度ナノダイヤモンド単結晶粒子の分散体を大量生産し、安定なコロイド状態として供給すること。この目的のために、爆轟法ナノダイヤモンドの一次粒子の精製条件を整備し、粒度分布を管理し、安定分散状態を実現する。
(2)ナノダイヤモンド粒子のコーティング方法。適当なナノダイヤモンドコロイドが得られたら、これを目的に応じて選んだ基板上に、単粒子層として塗布するための最適条件を求める。この目的のため、新たにインクジェットプリンティングの方法を適用する。この際にインクジェットプリンティングに適した粘度をもつコロイド溶媒を選定する。対象物が非平面の場合には、浸漬法、ディップコーティングなどを用いる。
(3)種付け塗膜の乾燥。塗布したコロイド溶液から高粘性溶媒を迅速に除去乾燥して、基板上に一桁ナノダイヤモンドの単粒子膜を形成させる。この段階は、湿式コーティングにおいては非常に重要で、折角単粒子分散コロイドを作って、均一なコーティングを実現しても、乾燥段階において、基板面上で粒子間凝集が起きては、何にもならない。
(4)種密度および分布の制御。爆轟法ナノダイヤモンド一次粒子の場合、到達可能な最大核密度は、後で詳しく述べるように4×1012個/cmである。均一な種付けを行なう理由は自明であるが、それに加えてCVDダイヤモンド膜合成の次ぎの目標が、多結晶膜から単結晶膜への転移を扱う事になるので、その場合に種結晶の二次元分布と配置が極めて重要な手がかりとなる。
本発明は「一桁ナノダイヤモンド粒子凝膠体を、ビーズミリングを行なって水性コロイドを作成し、水を除いてフレーク状とした後、非水系分散媒に再分散させる、一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドの製造方法。」である。非水系分散媒としてエチレングリコールと水の混合分散媒を用いるのが好ましい。
また、本発明は「一桁ナノダイヤモンド粒子を種として、化学気相蒸着法(CVD)により基板上にダイヤモンド膜を製造する方法であり、請求項1又は請求項2に記載の方法で得られた一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドを、一桁ナノダイヤモンド粒子が一平方糎当たり2×1011個以上の密度となるように、基板上に種付けするダイヤモンド膜を製造する方法。」である。種付けを、インクジェットプリント原理を利用したパターニング装置を用いて実施するのが好ましい。また、基板上に種付けした後に、真空加熱乾燥法又はマイクロ波照射により、非水系分散媒を除去するのが好ましい。
更に、本発明は「前記の方法によって製造された、ダイヤモンド膜被覆物又はダイヤモンド膜。」である。
本発明によれば、粒度分布が狭く、球形に近い形をした、できるだけ小さな高純度ナノダイヤモンド単結晶粒子の分散体を大量生産し、安定なコロイドを製造することができる。
また、本発明によれば、グレインが一桁ナノ、あるいは高々二桁ナノを維持し、結晶子間境界領域の少ないダイヤモンド膜を製造することができる。
以下において、上記4課題を如何に解決したかを詳しく述べて、本発明を開示する。まず、課題1の種ダイヤモンドの生産と制御についてであるが、本発明者の一人が、大過剰のジルコニア製ミクロビーズを用いる高速回転湿式ミリングによって、爆轟法ナノダイヤモンドの粗凝膠体が、一次粒子まで効率よく解砕されることを発見した。この解砕技術は、既に公知であるが、現在までに知られている唯一の実用的方法である(特許文献1,2)。
爆轟法ナノダイヤモンドの一次粒子は、現在単離確認されているダイヤモンド単結晶中最小の粒径を持ち、その値は、凝膠体の小角X線散乱強度および粉末X線回折強度から、干渉性散乱領域の大きさとして繰り返し測定され、報告されていて、最も信頼すべき報告によると4.5±0.5nmである(非特許文献6)。
我々は、凝膠体の解砕に成功した際に、TEMの試料担持用銅ネットに蒸着した炭素薄膜の上に、個々の一次粒子が単粒子層状にばらばらに広がったTEMイメージを撮影することに成功した。そのTEM写真から、300個の粒子像を肉眼判定で円近似して、粒径分布解析ソフトウエアMac−View3.5版(マウンテック社)を使用して統計的画像処理を行い、平均直径として4.76±0.76nmを得た(図2)。
さらに、ビーズミリングによって得た爆轟法ナノダイヤモンドの一次粒子の水性コロイド溶液に対して、動的光散乱法による粒度分布測定を行なった。測定にはオートサンプラーFP3000付き濃厚系粒径アナライザーFPAR1000(大塚電子工業製、解析可能粒径範囲3nm〜5μm)を用いた。この装置では、0.1〜3.0重量%程度の濃度で測定を行なうことが推奨されているが、この濃度範囲では、3〜6nm領域に現われる一次粒子の分布以外に、一次凝集体と思われる、幅の広い分布が50〜60nmの辺に出現するために、面倒な問題が生じる。後者は重量分率にすると1%程度であるが、この粒度範囲では、可視光散乱強度が粒径の6乗に比例して増大するので、目的とする粒子よりも大きな粒径の不純物が少しでも共存すると、後者の影響が非常に強く現れて、前者の観測を妨害する。特に濃度が濃すぎると、大きな粒子の散乱が大きくなって、小さな目的の粒子の散乱が相対的に消失する。濃度が薄すぎると、目的とする小さな粒子の散乱強度が低下する。要するに試料濃度が、濃すぎても薄すぎても測定結果は不安定となるので、最適濃度範囲を探して、測定をおこなうことが必要である。濃度を4.5〜0.1重量%の範囲内で16通り変化させて、1サンプル当たり約400回の測定を繰り返して平均値を求める方法で、安定な測定結果の得られる濃度範囲を求めた。その結果1.1〜2.7重量%が最適であることがわかり、この範囲の濃度の試料の測定結果から、平均粒度4.6±0.8nmを得た。このように四種類の独立した測定方法による結果がすべてほぼ一致したので、中間値4.6±0.7nmを以って代表値とした。大きさが良く揃っていて、平均値からの標準偏差が1nm以下であり、しかも大量に入手可能で、最小のナノダイヤモンド粒子であり、本発明の目的に沿った粒子であることが解る。
"The structure of diamond nanoclusters,"Aleksenskii,A.E.;Baidakova,M.V.;Vul’,A.Ya;Siklitskii,V.I.Phys.Solid State,1999,41,668−671.
CVDダイヤモンドの結晶成長核となる種ダイヤモンドの粒経は、小さいほど良いのは自明であるが、種付けに当たっては分布が均一に且つ最高密度で行なわれて、基板上に空いたスペースのないことが極めて望ましい。というのは、「CVDダイヤモンド薄膜中のグレインの大きさは核種よりも小さく為り得ないという」法則が知られているからである(非特許文献7)。
ダイヤモンド結晶成長の初期においては、基板上で種ダイヤモンドによって占有されていないスペースがあると、その部分では炭化物層が出来ないと結晶成長が始まらない。しかし、炭化物層の生成速度は、隣のダイヤモンドナノ結晶が膜面に平行な横方向へ成長する速度よりも遅いので、基板上の空きスペースを、隣接する結晶が埋め尽くす場合が多い。その結果、空きスペースと隣接した結晶は、成長の初期に、空きスペースに隣接していない結晶よりも大きくなり勝ちである。
実際に、成長開始直後の種結晶の様子をAFMで観察すると、初期核種が横方向に成長し、核種間のスペースには全くダイヤモンド成長が見られない。したがって、基板上に種ダイヤモンド結晶が載っていない空きスペースがあると、上述の機構によって隣接グレインが横方向に増大し、以後は相当する大結晶の成長が続いて表面が粗くなる。
"Enhanced diamond nucleation on monodispersed nanocrystalline daiamond,"Williams,O.A.;Douheret,O.;Daenen,M.;Haenen,K.;▲O▼sawa,E.;Takahashi,M.Chem.Phys.Lett.2007,445,255−258.
ある大きさを持つ種ダイヤモンド粒子が与えられた場合、これを基板表面上に正方最密単粒子分散させることが、グレインを最小の大きさに保持して、空隙のない緻密な膜構造に近づける最良の方策である。ここで出てきた用語「最密単粒子分散」は、まだ公に認められた術語ではないが、結晶のような3次元スペース内の最大密度充填(最密充填)に相当して、厚さが粒子の直径に等しい2次元単粒子層中に最大密度になるように粒子を並べた状態に対応する。球状粒子にたいする最密単粒子分散は、正方分散である。単一粒子中の干渉性散乱領域の大きさを4.5nm,表面層の有効van der Waals厚さを、O,N原子含有官能基を含む地点で0.45nm、C−H結合を含む地点で0.25nmとすると、爆発法ナノダイヤモンド一次粒子の平均van der Waals直径をおよそ5nmと見積もることが出来る。正方最密単粒子分散を実現するのは、現在のところ技術的に困難であると思われるので、有効van der Waals直径として、7および10nmの場合も考慮する。
これら3種類の有効核種サイズを当てはめて、単位面積あたりの成長核充填最大密度を計算すると、それぞれ4×1012、2×1012、1×1012/cmとなり、これまでの目標密度とされていた2×1011/cmを一桁上回る核密度が、計算上は可能となる。これにたいして、解砕不十分な小凝膠体または一次粒子の初期再凝集体などが混入する場合を想定し、種ダイヤモンド粒子の平均van der Waals直径が50nmに増大する場合を想定すると、この場合の最大核密度期待値は4×1010/cmと、二桁低下する。初期核密度が低いと、グレインが大きく成長し、内部構造が粗大となりやすいことが予想される。
ビーズミリング法によって爆轟法ナノダイヤモンドの一次粒子まで完全に解砕した一桁ナノダイヤモンドの分散コロイドを得たとしても、コーティング前後に凝集を起こすと、CVDダイヤモンド膜のグレインが大きくなる。従って、種付け用一桁ナノダイヤモンドコロイド分散を安定に保持する技術が重要である。
ビーズミリング法で調製した、濃度数%の単粒子分散一桁ナノダイヤモンド水性コロイド母液(実施例1)は、とくに分散剤・凝集防止剤などを添加しなくても、長期間貯蔵・使用することができるが、望ましくは褐色ガラス瓶、硬質着色ポリエチレン瓶などに移し、瓶内空気を窒素またはアルゴンガスで置換して、冷暗所に静置保存することが望ましい。というのは、このようにして得られた、一次粒子の表面積合計は700m/gにも達するので、従来知られていたミクロコロイドに比べて著しい表面活性を示し、何らかの影響によって粒子表面の電気化学的状態が変化すると、ただちに凝集を始めるからである。
一桁ナノダイヤモンドコロイド溶液製造後のpHは約4、表面ゼータ電位は約+40mVを示す。pHおよびゼータ電位は、粒度分布と共に、コロイド粒子安定性を判定するのに、便利な尺度である。すなわち、pH値は3以下、10以上で、またゼータ電位は絶対値30mV以下で凝集が始まり、粒度が急速に増大する。とくにゼータ電位は強電解質による汚染に対して極度に敏感である(非特許文献8)。
"Preparation and behaviors of brownish clear nanodiamond colloids,"Ozawa,M.;Inakuma,M.;Takahashi,M.;Kataoka,F.;Kr▲u▼ger,A.;▲O▼sawa,E.Adv.Mater.2007,19,1201−1206.
光、酸素などがナノコロイドの安定性に与える影響は、まだ良く調べられていないが、ESR測定の結果によると、爆発法によって得られたナノダイヤモンド一次粒子中には常磁性中心が約2.5×1019スピン/cmの濃度で存在する。この不対電子は、粒子表面の黒鉛型部分層とダイヤモンドコアの間に存在するために、水などの湿式媒体中でも反応しないで残存すると考えられている。
この部分黒鉛層は、ビーズミリング中に遊離してきた一次粒子の表面で、ミリングの衝撃によってダイヤモンド−黒鉛転移を起こした結果として生成すると信じられているが、入射光を良く吸収して、コロイドが黒色を呈する原因となっている(非特許文献9)。もう一つの黒色発生原因として考えられるのは、ダイヤモンドの結晶成長中に、各種の不純物を格子中に取り込むことである。天然ダイヤモンドのなかにも往々にして黒いもの見られるが、これは内部不純物による効果と考えられている。爆発法ナノダイヤモンドの成長時にも、火薬に初めから含まれる不純物、爆発槽内部の損傷によって生じる不純物などが多種類存在するので、黒色化の原因となり得る。
"Correlation between viscosity and absorption of electromagnetic waves in an aqueous UNCD suspension,"Vul’,A.Y.;Eydelman,E.D.;Inakuma,M.;▲O▼sawa,E.Diam. & Rel.Mater.2007,16,2023−2028
黒色発色のために、紫外可視部の光がナノダイヤモンドコロイド溶液に良く吸収される。このため、室内迷光および空気に晒されると、ダイヤモンド一次粒子間にラジカル再結合による凝膠現象が再び起こる可能性がある。従って、コロイド母液の貯蔵には十分注意する必要がある。
ビーズミリングによる爆発法ナノダイヤモンド粗製凝膠体の解砕・分散を効率的に行うためには、出きるだけ高濃度の粗生成物スラリーを用いるのが望ましいが、実際には濃度が8%を越すと、解砕が進行するにつれてスラリーの粘度が上昇し、ゲル化が起きることがある。従って、一般的にはビーズミリングに用いるナノダイヤモンド粗製凝膠体の初期スラリー濃度は5−7%程度が望ましい。
初期濃度5−7%のスラリーをビーズミリングにかけて解砕すると、同じ濃度のコロイドが得られるが、透明で且つ強い黒色を呈する。透明なのは、平均粒度が一桁ナノ領域に入って、肉眼で識別できる限界の凝集体、凝膠体(60−100nm以上)が消滅したからである。黒色発現の理由については上で延べた。しかし、黒色はCVDダイヤモンド成長に対して強い障害にはならないようである。
ビーズミリングによって得られた濃度5−7%のコロイド溶液には、ビーズ破片、金属不純物、ごみなどが含まれるので、遠心分離またはろ過を行って、これらを取り除く必要がある。後者の場合は濾紙が詰まりやすいので、コロイド濃度1−2%まで希釈する。また種付けに用いるには、ナノダイヤモンドコロイド溶液の濃度を0.1%以下に下げることが多いので、その際にも希釈が必要である。
ここで注意しなければならないことは、一桁ナノダイヤモンドコロイドが、希釈によって凝集を起こすことである。この理由はよくわかっていないが、一つの手がかりは、一次粒子の表面に強く配向吸着した不凍水層が存在するという事実である。8%以上の一桁ナノダイヤモンドを含む高濃度コロイドを放置すると、数時間乃至数日間でゲル化を起こし、ゲルのTGA分析によると、−8℃で始めて氷結する不凍水相が発生していることが確認されている。この不凍水は、最大1nm程度の厚さにダイヤモンド粒子表面に接し、水分子が粒子表面に強く配向吸着していると考えられる(非特許文献10)。強い配向のために粘度が高く、ブラウン運動による一次粒子間の衝突に起因する自己会合を防ぎ、安定な分散状態を保持する役割を果たすと思われる。8%以上の高濃度溶液においては、バルク水相内の水素結合構造を強化、発達させて、ゲル化の原因となる。
"Nanophase of water in nanodiamond gel,"Korobov M.V.,Avramenko N.V.;Bogachev,A.G.;Rozhkova N.V.;▲O▼sawa E.J.Phys.Chem.C.2007,111,7330−7334.
しかし、5%以下の濃度では、バルク水相と粒子表面不凍水層間の水分子交換平衡が、前者に対して有利となり、その結果、不凍水層は次第に厚みを失い、ナノダイヤモンド粒子同士のブラウン運動衝突による自己会合が促進され、みかけ粒度が増大すると解釈することができよう。
この種の凝集力は一次粒子表面間に直接働く、吸引van der Waals相互作用であるので、希釈による凝集はその機構上、溶媒除去に伴う凝集と同程度に強い筈である。凝集体は、直径数百nm〜数μmまで、ゆっくりと数日間をかけて成長する。経験によると、この希釈凝集体の生成期間中は、超音波照射を行なっても、あまり効果が見られない。凝集体の成長が終了した後、上述の200W以上の振動子直接投入型超音波照射装置で処理すると、容易にもとの一次粒子に解砕される。
0.1%以下の高希釈溶液にたいしては、動的光散乱法による直接粒度分布測定が、散乱強度不足のために失敗することがある。その場合には、濃縮して再測定することが必要であるが、高温で溶媒を留去すると、熱によって凝集が促進されるので、できるだけ低温で濃縮を行うことが必要である。
一桁ナノダイヤモンド粒子の分散を、CVDダイヤモンド薄膜製造の種として適用するに当たって、浸漬法およびディップ・コート法を用いる場合には、上記水性コロイドを、適度の濃度に希釈調整後そのまま使用すればよいが、インクジェットプリント法を用いる場合は、分散媒を水からエチレングリコールあるいはエチレングリコールを主成分とする混合分散媒系に置き換える必要がある。そのためには、一旦水性コロイドから水を除いて、フレーク状の一桁ナノダイヤモンド凝集体に変え、エチレングリコール系分散媒を使って、再分散してコロイド溶液を作る。コロイド状態のままで分散媒置換を行おうとすると、加熱をともなう濃縮、希釈操作中にナノダイヤモンドが凝集する危険があるので、勧められない(フレーク戻し法)。
水性コロイドから水を除いて、フレーク状のナノダイヤモンド凝集体を作る場合、上に述べたナノダイヤモンド一次粒子の表面に強く配向吸着した不凍水層が問題になる。この吸着水層を除くのはかなり困難で、高真空下120℃、12時間程度の処理が必要であり、しかも一旦絶対乾燥しても空気に晒すと、凝集体表面が急速に湿度を吸収する。この状態では、凝集体内部の一次粒子同士はお互いに強く吸着し合っていて、再分散はかなり困難となるので、強熱絶乾は勧められない。
一つの良い方法は、バルク水のみを除いて、不凍水だけが残った時点で乾燥を終了し、含水フレークとすることである。不凍水層の重量は、ナノダイヤモンド重量の42%であることがDSC測定結果の解析から解っている(非特許文献10)ので、ナノダイヤモンド重量の42%に相当する水が残った時点で、乾燥を止める。この乾燥操作は次のようにして行う:(1)コロイド濃度が10%以下の場合には、ロータリーエバポレーターなどを用いて10%台まで濃縮する、(2)得られたソフトゲルが温かく流動性のあるうちに、大きな蒸発皿、金属製バットなどに移して、真空乾燥機、デシケータなどの密閉容器中、モレキュラーシーブ、シリカゲルなどの乾燥剤共存下に、常圧ないし500hPa以上の圧力下で徐々に水分を低下させ(isopiestic drying定圧乾燥)、ときどき重量を測り、乾燥剤を入れ替える。ほぼ2週間で漆黒色の42%含水フレークが出来上がるが、全重量の3分の1弱が水であるにも関わらず、表面が金属光沢をもつ脆くサラサラした感触の固体で、扱い易い。フレークは、一般に輸送時に便利であり、再び水性コロイドに再分散して使われるが、本発明におけるように、エチレングリコール・水混合系分散媒中に再分散する場合にも、便利に使うことができる。
もう一つの方法は、ロータリーエバポレーターを用いて、60℃、50hPaといった温和な条件で、水を出来るだけ除くことである。含水率42%の点を越すと、不凍水層の一部が蒸発を始め、黒い塊状の残渣は細かく崩壊して、やや褐色を帯びた数mmの長さの細い棒状フレークに変化する。これ以上水分が留出して来なくなったら乾燥を終了する。この時点で、含水率は2〜5%となる。ナノダイヤモンドに対してとくに親和性の高い溶媒(例えばジメチルスルフォキシドやエチレングリコール)中であれば、比較的容易に再分散することができる。
つぎに、第二課題であるナノダイヤモンド粒子のコーティング方法について、本発明の内容を開示する。まず浸漬法およびディップ・コート法を用いて、脱脂洗浄したシリコンウエファ基板に、一桁ナノダイヤモンド水性コロイドをコートしたところ、いずれも簡単な操作であるにも拘らず、種密度1011/cmが達成された(表1)。これらの値は、これまでに報告されたダイヤモンド成長核密度の最高到達水準に近いことを考慮すると、爆轟法起源一桁ナノダイヤモンドの一次粒子コロイドが、有効な種付け剤であることは明らかである。なお、始めはコロイド分散媒として沸点の低いエタノールを用いたが、エタノールはナノダイヤモンド保持力が弱く、希釈・濃縮などの弱いショックによって容易に強い凝集を起こすことがわかり、以後使用を中止した。
これら種付け基板のSEMおよびAFMイメージ(図3、5)を見ると、基板上にかなりの空きがあり、また一次粒子が数個凝集して生じたと思われる大きな粒子が、相当の割合を占めていて、改善の余地が窺える。また、特にディップコーティングの場合、種の分布に明らかなムラが見られる(図5)。ムラは、一層大きなグレイン生成の原因となるので、好ましくない。これらの欠陥の改善方法として、まず考えられるのは、重ね塗りである。一桁ナノ粒子の場合、表面原子数が粒子一個当たりの全原子数の10−15%程度にも達することから窺えるように、表面積が大きいので、単粒子層コーティングに必要な粒子・基板表面間の接着力はvan der Waals力だけで十分である。一回毎に超音波洗浄を繰り返して、望ましくない多粒子積層部分の上部表面層を除去すると、更に有効である。
このような一見不利な状況にも拘らず、浸漬法種付け基板上に、NCD条件下でCVD操作を行ったところ、スムースにダイヤモンドが成長し、良好な表面を持つ薄膜を与えた(図4)。
しかし、浸漬法およびディップ・コート法によって到達した種密度1.1ないし1.4×1011/cm(表1)は、計算上最高到達可能密度の40分の1に過ぎないし、またBEN/HODヘテロエピタキシャルCVD法などにおいても既に、達成されている水準でもあるので、更に有効なコーティング技術を開発すべく、インクジェットプリンターに着目した。インクの代わりに一桁ナノダイヤモンド粒子のコロイドを、常に一定微小量、一定圧力で、同じ形式のノズルから吐出させ、一定距離飛行させて基板に着弾させ、基板上に広がった吐出液から、コロイド分散剤を減圧高温下で速やかに気化させ手除去すれば、常に同一密度・同一分布の結晶生長核の「種付け」を、再現性良く実施することが出来ると考えた。既にインクジェットプリンター技術の工業的応用は、世界各地で始まっているが、我々の知る限り気相CVDダイヤモンド合成用の種付けコーティング方法として利用されるのは、初めてである。
ただし、CVD用種付けコーティングへのインクジェットプリンターの適用については、いくつかの問題がある。一つは、現時点ではインクジェットノズルがかなり太く、入手可能な最小直径は40ミクロンである。ナノダイヤモンド粒子の直径に比べて1万倍もあるので、これではジェット吐出条件を以下に調整しても、ナノダイヤモンド粒子の配列を制御することは不可能である。しかし、現時点では作業をクリーンルームで行なっていないので、細いノズルでは埃による詰まりが頻発すると思われ、予備実験の段階としては40ミクロンノズルも止むを得ないと考える。
決定的に重要で、もしも良い答えが得られない場合には本発明にとって致命的な障害を与えたかも知れなかった問題は、コロイド分散媒の選択である。インクジェットプリントにおいては、8〜20mPa・sの粘度を持つ高粘性分散媒を使う必要があり、一桁ナノダイヤモンドコロイドの分散媒として、これまで専ら用いてきた水、DMSOなど低粘性分散媒を使うことが出来ない。また経験上、一桁ナノダイヤモンドに対して、親和性を有し、安定なコロイド溶液を与えるよい有機溶媒が非常に少ないので、探索には困難が予想された。しかし、鋭意検討を重ねたところ、エチレングリコールが、一桁ナノダイヤモンドフレークをよく分散し、インクジェットプリントにおける扱い易さ、プリント後の乾燥も容易であることがわかった。実際には、後で詳しく述べるように、エチレングリコール単独では、インクジェットプリンター媒体に対する推奨粘度範囲の上限に近く、着弾後の粒子の分散が遅いので、エタノールまたは水を少量添加して混合分散媒として使用するのが望ましい(表2)。本発明においては水の添加が最良の結果を与えた。
図番号に対応.
EG=エチレングリコール、EtOH=エタノール
メーカーの推奨値6〜10m/s
インクジェットプリント方式に用いる適切なコロイド濃度を、次のようにして決定した。予備プリントを繰り返し行ない、一滴当たりの吐出液量24.2±0.2p1、吐出速度6−10m/sの条件で、液滴をSiウエファに着弾させると、直径80μmの一様な円状液膜に広がることを確認したので、当面この条件で吐出実験を行なうことにした。この装置ではノズル先端からSiウエファ表面までの距離は、対象に応じて手動で調節することになっていて、正確に測定できないが、ほぼ100ミクロン程度であると推定される。直径80μmの円状液膜面積は5.0×10−5cmとなる。用いたナノダイヤモンド粒子の、van der Waals半径を考慮に入れた実効粒径を、先に述べたように5nmとすると、この円内に最大2.0×10個を単粒子層として敷き詰めることができる。粒子一個当たりの原子数5000とすると(非特許文献5)、この単粒子層の重量、すなわち吐出液一滴当たりに含まれるナノダイヤモンド重量の最大値は2.0×10−11g、これを濃度に直すと0.08wt%となる。
インクジェットプリント方式による一桁ナノダイヤモンド粒子のコーティングは、変更可能な変数が多く、最適化すれば高密度コーティングを迅速かつ再現性良く実現することが出来る。そのような試みを行い、詳細を実験例に記した。結果は良好で、種密度を2×1011個/cm以上とすることができ、これまでの最高密度2.4×1011/cmを得ることができた。
つぎに第3の課題、溶媒の除去について述べる。これは本発明の対象とするコーティング3方法すべてに共通して重要な段階であり、単粒子層として基板上に広げたナノダイヤモンドの分散状態を保ったまま、分散媒を除く作業である。とくにインクジェットプリント方式の場合、分散媒が高粘度、低蒸気圧であるために困難な操作となる。
高温高真空下の迅速蒸発。幸いにしてナノダイヤモンド粒子は分子量6万程度の高分子であり、超高真空中でも気化するおそれがなく、化学的にも安定であり、黒鉛化が約1000℃という低温で起きるにしても、この反応は活性化エネルギーが高く進行が遅いので、短時間であれば高温高真空乾燥にも耐えることができる。浸漬法およびディップコーティングに対しては、通常の真空オーブン中で手早く乾燥するだけで十分である。真空オーブンを予め高温に加熱しておく事が望ましい。低沸点溶媒との置換も有効である。この場合は、超音波照射のもとに、低沸点溶媒浴中に短時間浸漬する方法が良い。
マイクロ波照射。インクジェットプリント方式の場合に極めて有効である。Siウエファを基板とする場合には、基板が極めて短時間内に高温に達するので、エチレングリコールが常圧でも瞬間的に気化する。家庭用500Wマイクロ波オーブンを用いた場合、20秒間の照射で十分である。
第4の課題、結晶成長核種の分布および密度の管理については、これまで本明細書中で随時言及してきたので、ここで改めて説明するまでもない。すでに述べたように、爆轟法ナノダイヤモンド一次粒子を用いる場合、目標密度は4×1012/cmであるが、現時点における最高記録は2.4×1011/cm、目標達成率6%である。
分布に対しても数値的評価方法を考案中であるが、前述の粒度分布画像解析ソフトを利用して二次元正方分散からのずれを数値的に求めるアルゴリズムを書き下ろすことが可能であろう。
発明開示の最後に、本発明によって得られるCVDダイヤモンド膜の特徴について述べる。CVDダイヤモンド膜のパーフォマンスは表面および内部構造の均一性、規則性によって決まり、とくに構造欠陥に相当する結晶子境界領域(grain boundary)の質によって大きく左右される(図1)。これら構造因子のゆらぎに対して最も大きな影響を与えるのが、種つけにおける成長核密度と粒度分布である。図1には、本発明によって得られる製品の一例として「理想的NCD」の構造的特徴を概念図として示したが、全てのgrainが膜厚に等しい長軸と、種ダイヤモンド粒子の直径よりも約0.2nm大きな短軸方向の幅とをもつ、ナノ針状単結晶がバンドル状に集合・結合した多結晶ダイヤモンドである。
なお、CDV法は公知の熱フィラメント、マイクロ波プラズマ、電子サイクロトロン共鳴プラズマ法によって実施できる。
これまでに作られてきたNCDおよびUNCD多結晶ダイヤモンドにおいては、結晶成長時にあまりの多くの自由度が許されたために、図1に示したような不規則性な内部および表面構造を取っていた。従来は、これらの不規則な粗密構造がCVDダイヤモンドの典型であると考えられてきたようであるが、これは粒度分布の極めて広い、大きな種ダイヤモンドなどを用いたために起きた人為的結果であって、決してCVD法の本質的な特徴ではない。
本発明はNCD型CVDダイヤモンド膜に留まらず、当然UNCD型にも適用され、また構造の規則性(膜としての結晶性)が高く、「非常に高度に配向したダイヤモンド(Very highly oriented diamond)」であるが故に、隣接する長大grain相互間の融合が起き易く、多結晶から単結晶への転移も低エネルギーで起きると予想される。これらの予想の当否は、今後本発明を契機として、超微小ダイヤモンド粒子を種とするホモエピタキシャルCVDダイヤモンド生長法の開発が展開するにつれて、次第に明らかになると思われる。
一桁ナノダイヤモンド一次結晶粒子の水性コロイド調製
ジルコニア内張り160mL縦型ステンレス鋼ミル(コトブキエンジニアリング社製ウルトラアペックスミル、UAM−015型)に平均直径30ミクロンのイットリウム安定化ジルコニアビーズ(トーソー社製)をミル室容積の70%まで充填し,ジルコニア性攪拌羽根を周速度毎秒7m(約4,000rpm)で攪拌しつつ、市販爆轟法ナノダイヤモンド凝膠体(中国甘粛省凌雲納米材料公司製「金剛石納米粉末」)の10%水性スラリー0.5Lを、毎分0.2Lの流速で、80分間回流した。この間、ナノダイヤモンド凝膠体スラリーは、垂直ミルの底部から、流体ポンプによってミル室に圧入されて、高速回転ビーズの摺動衝突による挟み込みミリングを受けつつミル室内部を上昇し、最上部の遠心分離室でビーズと分離されて、ミルの天井から系外に出て、液貯めに入り、回流される。ミリング操作は発熱を伴うので、ミル室は外套付きとし、流水によって冷却する。
ミリングが進行するにつれて、スラリーの濁りが徐々に消えて透明度を増すと共に、それまで殆ど灰色に近かった色が茶色から漆黒にまで変化する。15ないし30分おきにミル室出口でスラリーをサンプリングして動的光散乱法で粒度分布を追跡し、90重量%以上が一桁ナノサイズ、好ましくは4〜5nmに至ったところで、ミリングを終了する。ミリングが完了した時点で、真黒色透明なコロイド溶液が得られ、数時間放置すると柔らかいゲルとなる。ゲルに水を加えて、濃度を2%まで下げ、時折少量残存する不溶固形物を遠心分離後、400ミクロンPTFEフィルターでろ過すると、安定な保存用コロイド母液が得られる。ミリング中に、ダイヤモンドによってジルコニアビーズが一部破壊されて製品を汚染する恐れがあったので、母液を一部取り出し、乾固して固体残渣をICP分析にかけたところ、ジルコニア汚染は固形分の0.17%に過ぎなかった。
上に示したように解砕して得られた典型的なナノコロイド溶液中の粒度分布を、動的光散乱法によって測定した結果、コロイド溶液には、4.6±0.7nmの直径を持つ極超微粒子が圧倒的な割合を占めた。残りは二裄ナノの大きさを持つ、分布幅の広い粒子群であった。しかし、ビーズミリング前の試料に見られたサブミクロン、ミクロンサイズの粒子は、ビーズミリング後では全く検出されなかったので、これら凝集・凝膠体はビーズミリングによって完全に解砕されたと考えられる。したがって、ビーズミリングによって得られた透明黒色コロイド溶液は、事実上超微細ダイヤモンド単結晶粒子による単粒子分散と見做して良い。
一桁ナノダイヤモンドコロイドは輸送、貯蔵などに不便なので、通常は水を除いてフレークとする。また本発明における最重要コーティング方法であるインクジェットプリントのように、エチレングリコール系分散媒を用いる場合にも、フレークをエチレングリコール系分散媒中で再分散してコロイドを作るのが最も便利である。フレークとしては、明細書中に述べたように、42%および2〜5%含水フレークの2種類があるが、ここでは後者の作成例を記載する。
上で製造した、4.6±0.7nmの直径を持つ爆轟法起源ナノダイヤモンド一次粒子を主成分とする2%水性コロイド500mLを1L丸底フラスコに入れて、ヤマト科学製ロータリーエバポレーターRE440型に東京理化製溶媒回収ユニットEYELA、DPE−2110型およびアズ・ワン社製低温サーキュレーターLTC−1200型を組み合わせた濃縮装置を用いて、60℃、50hPaで3時間かけて水を追い出し、淡褐色フレーク状凝集体を得た。収率は定量的であった。
エチレングリコール系分散媒については、まずエチレングリコール中に上で得た一桁ナノダイヤモンドフレークを再分散し、粒度を確認した後、このエチレングリコールコロイド母液に所定量の水あるいはエタノールを加えて、必要あれば更に同じ組成の混合分散媒で希釈し、最終的にインクジェットプリント式コーティング用に最適の粘度をもつダイヤモンドコロイドを作成した。
キャップ付50mL遠沈管に上記一桁ナノダイヤモンドフレーク2.0gと和光純薬製試薬特級エチレングリコール約45mLを入れ、本田電子製超音波洗浄浴「爆洗」MK−II型(110W,24+31kHz)に浸して99分間超音波照射を行ったところ、漆黒透明の分散コロイドが得られた。念のために、Dr.Hielscher社製超音波処理装置UP400S型(400W,24kHz)に円錐型垂直振動ソノトロッドH3型を装填して、氷水冷却下、80%出力で30分間処理し、更に久保田製作所製マイクロ冷却遠心機3700型によって5000rpm、10分間遠心処理を行い、沈降した粗粒を残して上澄みをメスフラスコに移し、容積を50mLに調整して、4.0wt%コロイドを調製した。
上記エチレングリコールコロイド中の4%ナノダイヤモンド母液は、動的光散乱法による粒度測定を行なうには濃度が高過ぎるので、一部をとって2倍に希釈し、希釈によって起きる再凝集(希釈凝集)を解除するために上に述べた「爆洗」超音波処理を繰り返してから、大塚電子製オートサンプラーFP3000型付き粒径アナライザーFPAR1000型による動的光散乱法粒度測定を行なった。約90回の連続測定を行なって平均値を求める操作を5回繰り返し、以下に示す5つの平均値を得た。:
1.4.2±0.5nm(重量基準分率98.8%),および49.9±20.5nm(1.2%)
2.4.1±0.5nm(99.2%),および54.5±18.8nm(0.8%)
3.5.1±0.8nm(98.2%),および49.0±19.6nm(1.8%)
4.5.3±0.4nm(94.9%),および47.5±19.6nm(5.1%)
5.6.1±1.3nm(97.7%),および55.9±19.4nm(2.3%)
この測定結果は、上に述べた多成分系の動的光散乱法による粒度分布測定例に相当し、測定精度が試料の濃度に依存して変化する系である。ここに示した結果は、5回毎平均値の再現性が非常によく、全体として測定結果が安定しており、用いた試料濃度が妥当であることがわかる。そのため、成分比も真の値に近いと考えられる。このような考察の結果として、主成分粒度分布の中間値5.1±0.8nmをもって最終粒径とした。
以下において、上で作ったコロイド溶液を用いてCVD用種付けをおこなったが、ここに他の実験例にも共通する操作と使用機器をまとめておく。
シリコンウエファの洗浄。市販のシリコン・ウェファ(東洋アドテック製、φ50mm,P<100>,1−10Ω,280±20μm,TNP−ST−2PA13)は各種パーティクル、アルカリ金属、重金属、有機物などで汚染されているため、以下の方法に従って、RCA洗浄を行った:
▲1▼1000mLビーカーに25%アンモニア水(和光純薬工業、試薬特級)140mL、30%過酸化水素水(和光純薬工業、試薬特級)140mL、純水(自家製蒸留水)700mLを入れて、NHOH:H:HO=1:1:5組成の洗液をつくる。この中にシリコンウエファを浸し、80℃まで加熱し、10分間この温度に保つ(SC1)。
▲2▼純水リンス。
▲3▼▲1▼においてアンモニア水を35〜37%塩酸(和光純薬工業、試薬特級)140mLで置き換え、HCl:H:HO=1:1:5組成の洗液をつくり、同様に加熱処理する(SC2)。
▲4▼純水リンス後、窒素気流を吹き付けて乾燥。
種付け後の基板の乾燥。基板がシリコンウエファの場合には、SHARP社製家庭用マイクロ波オーブン500WRE−S130−H型中で20秒間照射してウエファ自体を高温に加熱すると、瞬間的乾燥が可能であることを上に述べた。基板がガラス、セラミックなどの場合は、スピン乾燥または6〜8mmHgの真空中120−200℃加熱によって溶媒を蒸発させた。スピン乾燥はアイデン社製スピンコーターSC2005型(円盤直径108mm)を用いて4000rpm,5分間回転させて行った。真空乾燥機を用いて加熱する場合には、水準器を用いて乾燥台を水平にしておかないと、溶媒が流れて種の分布に偏りを生じる。
埃除け。ナノダイヤモンドコロイドの製造から始めて、種付け、CVD操作などは、本来はクリーンルーム中で行うべきであるが、そうでない場合でも、少なくともディップコーターと、インクジェットプリンターはダストボックスに入れて、外からパソコン操作を行うことによって、埃の侵入を防ぐべきである。
電界放出型走査式電子顕微鏡(FE−SEM)。日立製S−5000型、走査電圧10kV。
原子間力電子顕微鏡(AFM)。Pacific Nanotechnology社製Nano−Rシステムを非接触モードで行い、プローブにはナノワールド社製スーパーシャープSiプローブ、背面アルミコートSSS−NCHR−10型を用いた。
実験例1
浸漬法による種付け.上記母液を希釈して0.05wt%とし、99分間「爆洗」処理して希釈凝集を解除してから、浸漬用コロイドを作った。これをビーカーに入れて、洗浄済みのシリコンウエファを浸漬し、ビーカー共々BRANSONULTRASONICS社製超音波洗浄浴Bransonic 3210J−DTH型(120W,47kHz)に浸して30分間超音波処理を施した。シリコンウエファを取り出して、脱イオン水を張った別のビーカーに移し、同じ装置で超音波洗浄を5分間行った後乾燥した。SEMおよびAFMイメージ(図3)に示すように、単純なコーティング法にも拘わらず、ほぼ満足すべき密度とかなり均一な分布が得られた(表1)。ここで得られた種付け基板は、下に述べるように、そのまま熱フィラメントおよびマイクロ波プラズマCVD法にかけて、表面の平滑なNCD型薄膜を得ることができた。
上記浸漬種付け基板を用いて、セキテクノトロン社製大面積HF−CVD装置650型上でダイヤモンド成膜実験を試み、厚さ約200nmの薄膜を得た。SEM画像(図4)によると表面は平均40nmのグレインで覆われ、ピンホールは見受けられず、かなり平滑であった。
実験例2
ディップ・コーティング法による種付け。清浄化処理後のシリコン・ウエファを、0.01wt%一桁ナノダイヤモンド水性コロイドに浸し、SDI社製ディップコーターMD−0408型をもちいて、0.1mm/secの速さで引き上げた。その後は、浸漬法と同様な処方によって、水中超音波洗浄、真空加熱による迅速乾燥を行った。種付け基板表面のSEM,AFMイメージはムラが多いように見受けられるが(図5)、AFMから求めた種密度は浸漬法よりも3割近く優れていた(表1)。
実験例3
インクジェットプリント法による種付け
ここまでは水を分散媒とする一桁ナノダイヤモンドコロイド溶液を用いて湿式コーティングを行ったが、インクジェットプリント方式では、高粘度のエチレングリコールを主分散媒とし、エタノールまたは水を副分散媒に用いて、試行錯誤法で最適粘度分散倍を作った。上に述べたフレーク再分散法によって2−4wt%の母液コロイドを作り、これから0.01−0.08wt%の希薄コロイドを調製して、超音波処理によって希釈凝集を解除し、本実験の吐出液とした。
InkJetパターニング装置(マイクロジェット社製NanoPrinter−500D)の液供給ユニットに用意したコロイドを充填し、液滴スピード6−10m/sで連続吐出を行なった。分散媒組成、ナノダイヤモンド分散濃度、吐出ピッチなどの条件を変えて、一連の種付け試行実験を行ない、コーティング条件を探索した(表1)。このときの実験経過を一連のSEM写真によって示す(図6)。図6aは、最適濃度計算前に、おおまかな着弾条件を定めるために行なった予備的結果の一つで、写真としてはコントラストが悪いが、着弾痕のイメージがぼんやりと見える。良く見ると着弾痕が一滴毎に乱れのない円形に広がり、全体としてバランスよい配置をとってプリントされていることがわかり、ピッチや吐出液量の設定がほぼ妥当な範囲に入っていることがわかる。白い小さな点はナノダイヤモンド凝集体であるが、濃度が低すぎて粒子数が不足していることが一目瞭然である。また凝集体粒子が円形着弾痕の一方の端に寄っているが、これはゆっくりと時間をかけて乾燥したので、その際に吐出液が基板の傾斜に沿って動いたためと考えた。乾燥を、迅速に行い、且つ水準器を用いて、乾燥室内に基板を水平に置くようにした結果、この状況は改善された。
着弾痕の大きさが決まったので、この大きさの円形着弾痕にナノダイヤモンド一次粒子を最密単粒子分散させるに必要なコロイド濃度を、簡単な計算によって求めた。手続きは明細書本文に示したが、これによって決めた最適濃度0.08wt%のコロイドを用いてテストを繰り返した結果が図6bである。ナノダイヤモンド粒子の全体の量はほどよいレベルに達したように見えるが、中央部分に集中して盛り上がり、粒子が分散していない。これは、乾燥中の凝集ではなくて、分散媒の粘度が高すぎたため、着弾点から周囲に向かう流れが遅かったためと解釈して、分散媒の成分と組成を変更して粘度を下げた。その結果図6cに示すように改善された。場所によっては4dに示すように隣り合う液滴が部分的に合体して、中に含まれるダイヤモンド粒子が広がり、液滴間の空きスペースを埋めることが解った。これは好都合なので、図6cから隣接着弾痕間距離を求め、その分だけ着弾ピッチを縮めることにして、試行錯誤を繰り返した。その結果、ピッチ75μとして描画を行うと、図7に見るように、全液滴が融合し、ダイヤモンド粒子が表面全体に分散して、円形の弾痕は完全に消滅することが解った。重なり合った粒子が散見されるものの、緻密で均一なコーティングが実現し、これまでの最高密度を実現した。ここで得られた種付け基板は、熱フィラメントCVD法にかけて、表面の平滑なNCD型薄膜を得ることができた。
上に述べたような、内部および表面に高度の秩序構造をもつCVDダイヤモンドは、おのずから品質の高いダイヤモンド薄膜を与え、多方面への応用が期待される。本発明によって得られる「理想的NCD」について、従来のNCDおよびUNCDを対照として、用途別に性能を比較した(表3)。
このうちで、表面潤滑性の応用について、具体的な二例について説明する。一つは、ダイヤモンド工具製造である。すなわち、浸漬法およびディップコーティングによって、ドリル・ビットなど任意の形状をもつ金属製工具の刃先に、一桁ナノダイヤモンド粒子を均一且つ高密度でコートし、CVDダイヤモンド膜をホモエピタキシャル成長させることによって、ダイヤモンド工具を製造する。ホモエピタキシャルダイヤモンドを被覆した工具は、つぎのような特徴をもつ:(1)種ダイヤモンドは、表面活性が高いために、面倒な前処理を行なわなくても金属工具表面に強くvan der Waals接着し、耐久性が高い、(2)ダイヤモンド被膜の表面平滑性が高く、切削時に出る金属屑を速やかに表面から排出する能力がある、(3)ダイヤモンド膜の結晶性が高いために、被覆は薄くても切れ味が良く、膜の耐久性が高い。
二つめの例は、自動車、電車、トラクター、航空機などの金属部材間の褶動接触面にコーティングすることによって、金属面間摩擦係数を大幅に低減する応用である。現在、このような乾式潤滑被膜として水素フリー型ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜が注目を浴びているが、本発明によるダイヤモンド被膜は、より一層高い潤滑作用と、高温条件下でも長い寿命を示すと期待される。この用途は、自動車などの燃費向上、炭酸ガス排出削減、さらには油性潤滑剤の使用を抑制することによって環境保護にも繋がると思われる。
以上2つの具体的応用例は、一桁ダイヤモンド種付けコーティングおよびそこからホモエピタキシャルに成長させたダイヤモンド成膜の対象基質が、非平面の複雑な表面を持つ物体を対象とする。発明の詳細な説明においては平面基質を対象として取り上げたが、本発明が非平面物体を含む場合に拡張できることは容易に類推される通りである。
CVDダイヤモンド薄膜の断面構造概念図。NCDおよびUNCDは既知であり、本発明の対象は「理想的NCD」。 爆轟法ナノダイヤモンド一次粒子のTEM写真から視覚判定と画像処理ソフトウエアを組み合わせて求めた粒度分布、4.76±0.76nm。縦軸は細分粒径分布率、右側が累積分布率、横軸はnmで表した対数粒径。 Siウエファ上に浸漬法によって種付けした一桁ナノダイヤモンド粒子のSEM(a)およびAFM(b)イメージ[実験例1]。 一桁ナノダイヤモンド種付け(浸漬法)Siウエファ基板上に、熱フィラメントCVD法によって成長させたダイヤモンド超薄膜表面のFE−SEMイメージ[実験例1]。 Siウエファ上にディップ・コート法によって種付けした一桁ナノダイヤモンド粒子のSEM(a)およびAFM(b)イメージ[実験例2]。 Siウエファ上にインクジェットプリント法による一桁ナノダイヤモンド粒子種付け条件を探索した経過を示すSEMイメージ。(a)第一回試行、濃度不足、粒子は凝集した偏在。(b)濃度は適正化したが、着弾痕中央に集まり、流動性不足。(c)コロイド分散媒の粘度を下げて、着弾後の液滴流動性を増す。(d)一部の場所では隣り合う液滴同士の融合が起きて、同時に粒子が均一に広がる。[実験例3] インクジェットプリント方式による一桁ナノダイヤモンド粒子種付けを最適条件でおこなった結果の基板表面AFMイメージ。(a)1×1μ範囲の鳥瞰図、(b)同三次元図[実験例3]。

Claims (7)

  1. 一桁ナノダイヤモンド粒子凝膠体を、ビーズミリングを行なって水性コロイドを作成し、水を除いてフレーク状とした後、非水系分散媒に再分散させる、一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドの製造方法。
  2. 請求項1において、非水系分散媒としてエチレングリコールと水の混合分散媒を用いる、一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドの製造方法。
  3. 一桁ナノダイヤモンド粒子を種として、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により基板上にダイヤモンド膜を製造する方法であり、請求項1又は請求項2に記載の方法で得られた一桁ナノダイヤモンド粒子の非水系分散媒中コロイドを、一桁ナノダイヤモンド粒子が一平方糎当たり2×1011以上の密度となるように、基板上に種付けするダイヤモンド膜を製造する方法。
  4. 種付けを、インクジェットプリント原理を利用したパターニング装置を用いて実施する、請求項3に記載のダイヤモンド膜を製造する方法。ただし、ダイヤモンド膜の被覆対象物体が非平面であってインクジェットプリント方式に対応出来ない場合には、浸漬法およびディップコーティング法を用いる。その場合でも請求項3に記載した条件に従う。
  5. 基板上に種付けした後に、真空加熱乾燥法又はマイクロ波照射により、非水系分散媒を除去する、請求項3又は請求項4に記載のダイヤモンド膜を製造する方法。
  6. 請求項3〜請求項5のいずれかの方法によって製造された、ダイヤモンド膜被覆物。
  7. 請求項3〜請求項5のいずれかの方法によって製造された、ダイヤモンド膜。
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