以下、本発明に係る制御方法によって作動するワイパ装置の一実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は車両に搭載されたワイパ装置を説明する説明図を、図2は図1のワイパ装置におけるワイパモータを説明する説明図を、図3は図1のワイパ装置における制御装置を示すブロック図をそれぞれ表している。
図1に示すように、車両10には、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11に付着した雨や雪、前車の飛沫等の付着物を払拭して、運転者の視界を確保するためにワイパ装置12が搭載されている。このワイパ装置12は、図示しない車室内等に設けられるワイパスイッチを操作することにより回転駆動されるワイパモータ(モータ)13と、車両10に回動自在に設けられる一対のワイパ軸14と、各ワイパ軸14に基端側が固定され、先端側がフロントガラス11上を揺動運動する一対のワイパアーム15と、ワイパモータ13の回転運動を各ワイパアーム15に伝達する動力伝達機構16とを有している。
各ワイパアーム15の先端側には、それぞれワイパブレード17が設けられており、各ワイパブレード17は、各ワイパアーム15の内側に設けられたスプリング(図示せず)によってフロントガラス11に対して弾圧的に接触するようになっている。そして、各ワイパブレード17は、ワイパモータ13を正逆方向に回転させることにより、フロントガラス11上の図中二点鎖線で示す下反転位置と上反転位置との間の各払拭範囲18を、各ワイパアーム15の往復動作に従い往復払拭動作するようになっている。
図2に示すように、ワイパモータ13は、モータ部20とこれに接続されるギヤ部30とを有している。モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工することにより有底筒状に形成されたヨーク21を備え、このヨーク21の内側には一対の永久磁石22が装着されている。各永久磁石22の内側には、所定の隙間を介してアーマチュア23が回動自在に設けられており、このアーマチュア23にはコイル24が巻装されている。
アーマチュア23の回転中心にはアーマチュア軸25が固定されており、このアーマチュア軸25の一端側(図中左側)は、ラジアル軸受26を介してヨーク21の底部に回動自在に支持されている。また、アーマチュア軸25の他端側(図中右側)は、図示しないもう一つのラジアル軸受に支持されてギヤ部30のケース31内に延出されている。
アーマチュア軸25の他端側にはウォーム27が一体に形成されており、このウォーム27はウォームホイール35の歯部35aに噛み合わされている。ここで、ウォーム27およびウォームホイール35は減速機構を構成しており、この減速機構は、アーマチュア軸25の回転を減速して高トルク化するとともに、高トルク化された回転をウォームホイール35から動力伝達機構16に向けて出力するようになっている。
アーマチュア軸25のアーマチュア23に近接する位置には、整流子28が一体に設けられており、この整流子28は導電性を有する複数の整流子片28aをモールド成形することにより形成されている。各整流子片28aにはコイル24の端部が電気的に接続されており、整流子28を介してコイル24に駆動電流を供給することでアーマチュア23には電磁力が発生し、これによりアーマチュア軸25が正方向または逆方向に回転するようになっている。
また、アーマチュア軸25のウォーム27と整流子28との間には、多極マグネット29が装着されており、この多極マグネット29は、周方向に等間隔でN極,S極・・・と交互に着磁(例えば6極)することにより形成されている。
ギヤ部30は有底状のケース31を備え、このケース31は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することにより形成されている。ケース31のヨーク21側には、プラスチック等の合成樹脂材料よりなるブラシホルダ32が装着されており、このブラシホルダ32には一対のブラシ33が径方向に移動自在に設けられている。各ブラシ33は、整流子28に駆動電流を供給するために、各スプリング34の弾性力により整流子28に摺接するようになっている。
ケース31には、ウォームホイール35が回転自在に設けられており、このウォームホイール35の歯部35aにはウォーム27が噛み合わされて、ウォーム27の回転が伝達されるようになっている。ウォームホイール35の回転中心には出力軸36が一体に設けられており、この出力軸36の一端側は、ケース31の図示しないボスを介して外部に延出されて動力伝達機構16(図1参照)に連結されている。
ウォームホイール35における出力軸36の周囲には、リングマグネット37が装着されており、このリングマグネット37は周方向に2極(N極およびS極)を有するよう着磁して形成されている。なお、S極に着磁された部分は周方向に向けて略3/4を占めており、残りの略1/4はN極に着磁されている。
ケース31には、当該ケース31の開口部分を閉塞するカバー(図示せず)が装着され、このカバーの内側のウォームホイール35と対向する位置には、回路基板38(図中二点鎖線)が装着されている。回路基板38には、トランジスタや抵抗等の複数の電子部品(図示せず)が装着されるとともに、多極マグネット29と対向する位置およびリングマグネット37と対向する位置には、それぞれ一対の第1ホールセンサ39a,39bおよび第2ホールセンサ40が設けられている。
回路基板38に装着された各電子部品は、配線41を介して制御装置50に電気的に接続されている。制御装置50には、配線42a,42bを介して車載バッテリ等の電源43およびワイパスイッチ44が電気的に接続されており、制御装置50は、ワイパスイッチ44のオン操作に伴い電源43からワイパモータ13に駆動電流を供給し、また、アーマチュア軸25の回転状態やウォームホイール35の回転位置、つまり、ワイパアーム15の位置状態を、各ホールセンサ39a,39bおよび40を介して検出するようになっている。
図3に示すように、制御装置50の内部には制御部51が設けられており、この制御部51には、演算処理部(モータ制御手段)52,電圧監視部53,カウンタ部(カウンタ手段)54,相対位置検出部55および絶対位置検出部56が設けられるとともに、ワイパスイッチ44,各ホールセンサ39a,39bおよび40が電気的に接続されている。
相対位置検出部55には、一対の第1ホールセンサ39a,39bが電気的に接続され、この相対位置検出部55は、各第1ホールセンサ39a,39bから出力される多極マグネット29の極性変化に応じた相対位置信号(パルス信号)を受けて、その相対位置信号を演算処理部52に出力するようになっている。また、絶対位置検出部56には、第2ホールセンサ40が電気的に接続され、この絶対位置検出部56は、第2ホールセンサ40から出力されるリングマグネット37の極性変化に応じた絶対位置信号(パルス信号)を受けて、その絶対位置信号を演算処理部52に出力するようになっている。
演算処理部52は、図示しないレギュレータを介して、電源43から供給される駆動電流により作動するようになっている。演算処理部52は、相対位置検出部55および絶対位置検出部56からの相対位置信号および絶対位置信号を受けて、各位置信号に応じてワイパモータ13を回転する駆動信号を所定の演算処理により求めるようになっている。そして、演算処理部52により求めた駆動信号は、その下流側に電気的に接続されたプリドライバ57を介してブリッジ回路58に入力され、ブリッジ回路58は、入力された駆動信号に応じて電源43からの駆動電流を調整してワイパモータ13に供給するようになっている。
なお、図中符号59は分圧回路を示しており、当該分圧回路59は、電源43から供給される電源電圧を分圧するようになっている。分圧された電源電圧はA/D変換部60によりアナログ値からデジタル値へと変換されて制御部51内の電圧監視部53に入力され、これにより、電圧監視部53によって電源電圧の変動を監視できるようになっている。
電圧監視部53には、第1電圧比較部(第1電圧比較手段)53aおよび第2電圧比較部(第2電圧比較手段)53bが設けられている。
第1電圧比較部53aには、ワイパモータ13が作動し得る最小の電源電圧としての最小電圧閾値(第1閾値)V1が予め格納されており、第1電圧比較部53aは、電源43の電源電圧と最小電圧閾値V1とを比較するようになっている。ここで、本実施の形態における最小電圧閾値V1は、「8.5V」に設定され、この最小電圧閾値V1は、ワイパモータ13の仕様により適宜設定するようにする。
第2電圧比較部53bには、ワイパモータ13を十分に作動させることが可能な電源電圧としての駆動電圧閾値(第2閾値)V2が予め格納されており、第2電圧比較部53bは、電源43の電源電圧と駆動電圧閾値V2とを比較するようになっている。ここで、本実施の形態における駆動電圧閾値V2は、「9.0V」に設定(V2>V1)され、この駆動電圧閾値V2においても、ワイパモータ13の仕様により適宜設定するようにする。
カウンタ部54は、電圧監視部53に設けられた各電圧比較部53a,53bからの電圧比較データを受けるとともに、この電圧比較データをワイパモータ13の制御データとして演算処理部52に送出するようになっている。カウンタ部54では、これに加え、電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1を下回った回数をカウントするとともに、当該カウント値を予め設定された所定回数と比較し、この回数比較データをワイパモータ13の制御データとして演算処理部52に送出するようになっている。ここで、本実施の形態における所定回数は「5回」に設定されている。ただし、この所定回数は「5回」に限らず、例えば、それ以下の「4回」やそれ以上の「10回」等に設定することもできる。
演算処理部52には、電流供給停止部(電流供給停止手段)52a,電流供給再開部(電流供給再開手段)52bおよび電流供給禁止部(電流供給禁止手段)52cが設けられている。
電流供給停止部52aは、第1電圧比較部53aによる判定結果(電圧比較データ)が、電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1を下回ったとの結果である場合に、演算処理部52からプリドライバ57への駆動信号の送出を停止させ、これにより、ワイパモータ13への駆動電流の供給を停止するようになっている。
電流供給再開部52bは、電流供給停止部52aによりワイパモータ13への駆動電流の供給を停止した後に作動するようになっており、第2電圧比較部53bによる判定結果(電圧比較データ)が、電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2を上回ったとの結果である場合に、演算処理部52からプリドライバ57への駆動信号の送出を再開させ、これにより、ワイパモータ13への駆動電流の供給を再開するようになっている。ここで、演算処理部52は、電流供給再開部52bによりワイパモータ13の回転制御を再開する場合には、各ワイパブレード17を下反転位置方向(図1参照)に移動させるよう駆動信号を調整するとともに、当該調整した駆動信号をプリドライバ57に送出するようになっている。
電流供給禁止部52cは、カウンタ部54によるカウント値(回数比較データ)が、電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1を所定回数(5回)以上下回ったとの結果である場合に、演算処理部52からプリドライバ57への駆動信号の送出を禁止させ、これにより、ワイパモータ13への駆動電流の供給を禁止、つまり、ワイパモータ13への駆動電流の供給を停止した状態を保持する(電流供給再開部52bの動作を不能にする)ようになっている。
次に、以上のように構成した制御装置50の動作について、図4〜図9を用いて詳細に説明する。
図4は図3の制御装置の動作内容を示すメインフローチャートを、図5(a),(b)は往路側ロック検出処理および往路側電圧検出処理のサブフローチャートを、図6(a),(b)は復路側ロック検出処理および復路側電圧検出処理のサブフローチャートを、図7(a),(b)は往路側および復路側におけるロック状態を説明する説明図を、図8(a),(b)はワイパアームの上反転位置および下反転位置における揺動角を説明する説明図を、図9は電源電圧の経時変化に伴うカウント値,駆動信号およびワイパスイッチの状態を説明するタイムチャートをそれぞれ表している。
図4に示すように、ステップS1において図示しないイグニッションスイッチをオン操作する等して制御装置50が起動すると、ステップS2においてシステムの初期化処理(イニシャライズ)を実行する。次いで、ワイパモータ13の停止処理(ステップS3)を経てステップS4に進む。ステップS4では、ワイパスイッチ44の操作状態を検出し、ワイパスイッチ44がオフ操作状態のままであると判定(no)した場合にはステップS3に戻る処理を繰り返して実行し、ワイパスイッチ44がオン操作されてyesと判定するとステップS5に進む。
ステップS5では、演算処理部52から所定の駆動信号を送出してワイパモータ13を往動作(正回転)させ、各ワイパブレード17を上反転位置に向けて移動させる。ステップS6では、別に定義された往路側ロック検出処理(図5(a)参照)を実行する。ステップS7では、別に定義された往路側電圧検出処理(図5(b)参照)を実行する。
ステップS8では、相対位置検出部55および絶対位置検出部56によって、各ホールセンサ39a,39bおよび40からの出力信号を検出する。ステップS9では、演算処理部52によって、各ホールセンサ39a,39bおよび40の出力信号から各ワイパブレード17のフロントガラス11に対する位置(出力軸36の回転位置)を求め、各ワイパブレード17が上反転位置に到達したか否かを判定する。ステップS9で未だ各ワイパブレード17が上反転位置に到達していないと判定(no)した場合にはステップS5に戻り、その後、ステップS6からステップS8の処理を継続して実行する。
ステップS9でyesと判定、つまり、各ワイパブレード17が上反転位置に到達したと判定した場合にはステップS10に進む。ステップS10では、ステップS6でカウントされたワイパモータ13の往路側モータロック回数をクリアする。ステップS11では、前回の制御周期においてカウントされたステップS14におけるカウント値をクリアする。
ステップS12では、演算処理部52から所定の駆動信号を送出してワイパモータ13を復動作(逆回転)させ、各ワイパブレード17を下反転位置に向けて移動させる。ステップS13では、別に定義された復路側ロック検出処理(図6(a)参照)を実行する。ステップS14は、別に定義された復路側電圧検出処理(図6(b)参照)を実行する。
ステップS15では、相対位置検出部55および絶対位置検出部56によって、各ホールセンサ39a,39bおよび40からの出力信号を検出する。ステップS16では、演算処理部52によって、各ホールセンサ39a,39bおよび40の出力信号から各ワイパブレード17のフロントガラス11に対する位置(出力軸36の回転位置)を求め、各ワイパブレード17が下反転位置に到達したか否かを判定する。ステップS16で未だ各ワイパブレード17が下反転位置に到達していないと判定(no)した場合にはステップS12に戻り、その後、ステップS13からステップS15の処理を継続して実行する。
ステップS16でyesと判定、つまり、各ワイパブレード17が下反転位置に到達したと判定した場合にはステップS17に進む。ステップS17では、ステップS13でカウントされたワイパモータ13の復路側モータロック回数をクリアする。
ステップS18では、ワイパスイッチ44の操作状態を検出し、ワイパスイッチ44がオン操作の状態であると判定(yes)した場合には、ステップS5に戻り各ワイパブレード17の往復払拭動作を繰り返して実行し、ワイパスイッチ44がオフ操作されたと判定(no)した場合にはステップS19に進む。
ステップS19では、演算処理部52からワイパモータ13を復動作(逆回転)させる駆動信号を引き続き送出し、各ワイパブレード17を下反転位置よりも車両10の下方側にある格納位置(図1参照)に向けて移動させる格納動作を実行する。その後、ステップS20に進んで制御装置50によるワイパモータ13の回転制御が終了する。
次に、図4のステップS6に示す往路側ロック検出処理の処理内容について、図面を用いて詳細に説明する。
図5(a)のサブフローチャートに示すように、ステップS30で往路側ロック検出処理(ステップS6)が実行されると、続くステップS31においてワイパモータ13のロック状態を判定する。ステップS31では、例えば、図7(a)に示すように、各ワイパブレード17が比較的重量の嵩む雪S等により上反転位置方向への移動が規制された状態(ロック状態)を検出するようにしている。具体的には、演算処理部52から駆動信号を送出しているにも関わらず、ワイパモータ13の動作状態を示す各ホールセンサ39a,39bおよび40からの出力信号が、相対位置検出部55および絶対位置検出部56に入力されないことを検出(非入力を検出)しており、これにより、ワイパモータ13のロック状態を判定することができる。
ステップS31でワイパモータ13が非ロック状態であると判定(no)した場合には図4のステップS7に進み、ステップS31でワイパモータ13がロック状態であると判定(yes)した場合にはステップS32に進む。ステップS32では、演算処理部52からの駆動信号の送出を停止してワイパモータ13の回転制御を停止する。ステップS33では、図示しないロックカウンタ部で「1」インクリメントし、往路側モータロック回数の積算処理を実行する。ステップS34では、ワイパモータ13の往路側モータロック回数がn回以上であるか否かを判定する。ここで、往路側モータロック回数は、ワイパ装置12の仕様に応じて、例えば「3回」等の任意の回数に設定することができる。
ステップS34で、往路側モータロック回数がn回以上でないと判定(no)した場合には図4のステップS5に進み、ワイパモータ13の往動作を再び実行し、雪S等の障害物を取り除く動作(障害物除去動作)を実行する。ステップS34で往路側モータロック回数がn回以上であると判定(yes)した場合には、雪S等の障害物を取り除くことが不可能であるとしてステップS35に進む。ステップS35では、演算処理部52からの駆動信号の送出を停止してワイパモータ13の回転制御を停止する。これにより、ワイパモータ13を焼き付け等から保護するようにしている。
ステップS36では、ワイパスイッチ44がオフ操作された後に再びオン操作されたか否か、つまり、ワイパスイッチ44が再操作されたか否かを判定し、ワイパスイッチ44が再操作されていないと判定(no)した場合には、ステップS35に戻りワイパモータ13の停止状態(ワイパモータ13の保護)を継続する。ワイパスイッチ44が再操作されたと判定(yes)した場合には、ステップS37に進み、ステップS37では、ステップS33でカウントされた往路側モータロック回数をクリアし、図4のステップS12に進む。
このように、ステップS36からステップS35に戻る処理を繰り返している間に、操作者は雪S等の障害物を取り除く作業を行うことができ、その後、ワイパスイッチ44を再操作することでワイパモータ13の回転制御を復路側から復帰(図7(a)矢印方向)させることができるようにしている。
次に、図4のステップS7に示す往路側電圧検出処理の処理内容について、図面を用いて詳細に説明する。
図5(b)のサブフローチャートに示すように、ステップS40で往路側電圧検出処理(ステップS7)が実行されると、続くステップS41において、第1電圧比較部53aの作動により電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1(8.5V)以下であるか否か、つまり、電源電圧が最小電圧閾値V1を下回って不安定となっているか否かを判定する。ステップS41で電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1以上であると判定(no)した場合には、ワイパモータ13を継続して回転制御できるとして図4のステップS8に進む。一方、ステップS41で電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1以下であると判定(yes)した場合にはステップS42に進む。ステップS42では、電流供給停止部52aの作動により演算処理部52からの駆動信号の送出を停止し、ワイパモータ13の回転制御を停止する。ここで、ステップS41およびステップS42におけるワイパモータ13の停止処理が、本発明における第1ステップ(往路側)を構成している。
ステップS43では、第2電圧比較部53bの作動により電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2(9.0V)以上であるか否か、つまり、ワイパモータ13の停止により電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2を上回ったか否かを判定する。ステップS43で電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2以下であると判定(no)した場合にはステップS42に戻り、ワイパモータ13の停止状態を継続させて電源43の電源電圧の回復を待つ。一方、ステップS43で電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2以上であると判定(yes)した場合には、電源43の電源電圧が回復したとして図4のステップS12に進む。ステップS12では、電流供給再開部52bの作動によりワイパモータ13の回転制御を復路側から復帰、つまり、各ワイパブレード17を下反転位置方向に移動させるようワイパモータ13の回転制御を再開する。ここで、ステップS43およびステップS12におけるワイパモータ13の回転制御再開処理が、本発明における第2ステップ(往路側)を構成している。
ここで、図8(a),(b)に示すように、本実施の形態におけるワイパ装置12は動力伝達機構16を備えているので、出力軸36の回転量Mに対する各ワイパブレード17の移動量が、上反転位置付近にある場合と下反転位置付近にある場合とで異なるようになっている。つまり、出力軸36の回転量Mに対する各ワイパアーム15(図1参照)の揺動角が、上反転位置付近と下反転位置付とで異なっており、各ワイパアーム15の揺動角は、上反転位置付近ではα°となり下反転位置付近ではβ°(α°>β°)となっている。したがって、本実施の形態におけるワイパ装置12では、各ワイパブレード17の作動速度が上反転位置付近の方が速くなるため、上記のようなワイパモータ13の回転制御再開処理(各ワイパブレード17を下反転位置方向に移動させる処理)が、上反転位置を超えるオーバーランの抑制に特に有効となっている。
次に、図4のステップS13に示す復路側ロック検出処理の処理内容について、図面を用いて詳細に説明する。
図6(a)のサブフローチャートに示すように、ステップS50で復路側ロック検出処理(ステップS13)が実行されると、続くステップS51においてワイパモータ13のロック状態を判定する。ステップS51では、例えば、図7(b)に示すように、各ワイパブレード17が雪S等により下反転位置方向への移動が規制された状態(ロック状態)を検出するようにしている。なお、ステップS51におけるロック状態の判定は、図5(a)のステップS31と同様である。
ステップS51でワイパモータ13が非ロック状態であると判定(no)した場合には図4のステップS14に進み、ステップS51でワイパモータ13がロック状態であると判定(yes)した場合にはステップS52に進む。ステップS52では、演算処理部52からの駆動信号の送出を停止してワイパモータ13の回転制御を停止する。ステップS53では、ロックカウンタ部で「1」インクリメントし、復路側モータロック回数の積算処理を実行する。ステップS54では、ワイパモータ13の復路側モータロック回数がn回以上であるか否かを判定する。なお、復路側モータロック回数についても、ワイパ装置12の仕様に応じて、例えば「3回」等の任意の回数に設定することができる。
ステップS54で、復路側モータロック回数がn回以上でないと判定(no)した場合には図4のステップS12に進み、ワイパモータ13の復動作を再び実行し、障害物除去動作を実行する。ステップS54で復路側モータロック回数がn回以上であると判定(yes)した場合には、雪S等の障害物を取り除くことが不可能であるとしてステップS55に進む。ステップS55では、演算処理部52からの駆動信号の送出を停止してワイパモータ13の回転制御を停止する。これにより、ワイパモータ13を焼き付け等から保護するようにしている。
ステップS56では、ワイパスイッチ44がオフ操作された後に再びオン操作されたか否か、つまり、ワイパスイッチ44が再操作されたか否かを判定し、ワイパスイッチ44が再操作されていないと判定(no)した場合には、ステップS55に戻りワイパモータ13の停止状態(ワイパモータ13の保護)を継続する。ワイパスイッチ44が再操作されたと判定(yes)した場合には、ステップS57に進み、ステップS57では、ステップS53でカウントされた復路側モータロック回数をクリアし、図4のステップS14に進む。
このように、ステップS56からステップS55に戻る処理を繰り返している間に、操作者は雪S等の障害物を取り除く作業を行うことができ、その後、ワイパスイッチ44を再操作することでワイパモータ13の回転制御を復路側から復帰(図7(b)矢印方向)させることができるようにしている。
次に、図4のステップS14に示す復路側電圧検出処理の処理内容について、図面を用いて詳細に説明する。
図6(b)のサブフローチャートに示すように、ステップS60で復路側電圧検出処理(ステップS14)が実行されると、続くステップS61において、第1電圧比較部53aの作動により電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1以下であるか否かを判定する。ステップS61で電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1以上であると判定(no)した場合には、ワイパモータ13を継続して回転制御できるとして図4のステップS15に進む。一方、ステップS61で電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1以下であると判定(yes)した場合にはステップS62に進む。ステップS62では、電流供給停止部52aの作動により演算処理部52からの駆動信号の送出を停止し、ワイパモータ13の回転制御を停止する。ここで、ステップS61およびステップS62におけるワイパモータ13の停止処理が、本発明における第1ステップ(復路側)を構成している。
ステップS63では、ステップS61において電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1以下であるとした回数をカウント、つまり、演算処理部52のカウンタ部54によって、カウント値を「1」インクリメントする処理を実行する。続くステップS64では、カウント値が5回以上となったか否かを判定し、5回未満であると判定(no)した場合にはステップS65に進み、5回以上であると判定(yes)した場合にはステップS67に進む。
ステップS65では、電流供給停止部52aの作動によるワイパモータ13の回転制御を継続して停止、つまり、ステップS62における動作を継続させる。次いで、ステップS66では、第2電圧比較部53bの作動により電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2以上であるか否かを判定する。ステップS66で電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2以下であると判定(no)した場合にはステップS65に戻り、ワイパモータ13の停止状態を継続させて電源43の電源電圧の回復を待つ。一方、ステップS66で電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2以上であると判定(yes)した場合には、電源43の電源電圧が回復したとして図4のステップS15に進む。ステップS15では、電流供給再開部52bの作動によりワイパモータ13の回転制御を再開する。ここで、ステップS66およびステップS15におけるワイパモータ13の回転制御再開処理が、本発明における第2ステップ(復路側)を構成している。
ステップS67では、ステップS64におけるカウント値が5回以上であるとの判定に従い、電流供給禁止部52cにより演算処理部52からの駆動信号の送出を禁止してワイパモータ13の回転制御再開処理を禁止するようになっている。ここで、図9に示すように、ステップS67における処理は時間t11での処理を示しており、図9の黒丸印Pのように、演算処理部52からの駆動信号の送出(HI)を禁止、つまり、駆動信号の停止(LO)を継続させている。そして、図9に示す時間t11から時間t12までの間、電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2以上に回復したとしても、ワイパモータ13の回転制御再開処理を禁止させている。なお、図9に示す時間t2から時間t10の間においては、駆動信号のHI(送出)とLO(停止)とを繰り返し、カウンタ部54によるカウント値の積算処理を実行している。ここで、ステップS63,ステップS64およびステップS67における回転制御再開禁止処理が、本発明における第3ステップを構成している。この回転制御再開禁止処理を実行することにより、電源43の電源電圧が低下して不安定となった場合であっても、ワイパモータ13が連続して停止または再作動する(4回以上)ことを抑制できるようにしている。
ステップS68では、ワイパスイッチ44がオフ操作された後に再びオン操作されたか否か、つまり、ワイパスイッチ44が再操作されたか否かを判定(図9の時間t12から時間t13の間)し、ワイパスイッチ44が再操作されていないと判定(no)した場合には、ステップS67に戻りワイパモータ13の停止状態を継続する。ワイパスイッチ44が再操作されたと判定(yes)した場合(図9の時間t13)には、ステップS69に進み、ステップS69では、ステップS63でカウントされたカウント値をクリアしてステップS65に進む。なお、図9に示す時間t13においては、ワイパスイッチ44のオン操作(HI)と略同時に駆動信号が送出(HI)されているが、これは、制御周期が短時間であることから、ワイパスイッチ44のオン操作と略同時にステップS65とステップS66との処理を終えることによる。
以上詳述したように、本実施の形態によれば、電源43の電源電圧が最小電圧閾値V1を下回った場合に電流供給停止部52aによりワイパモータ13への駆動電流の供給を停止し、電源43の電源電圧が駆動電圧閾値V2(V2>V1)を上回った場合に電流供給再開部52bによりワイパモータ13への駆動電流の供給を再開し、この場合には、演算処理部52は各ワイパブレード17を下反転位置方向に移動させるようワイパモータ13を回転制御するので、ワイパモータ13の停止後における電源43の電源電圧の回復時に、各ワイパブレード17を下反転位置方向に移動させることができる。したがって、電源43の電源電圧が低下して不安定となった場合に各ワイパブレード17が上反転位置を超えてオーバーランするのを抑制することができ、フェイルセーフ動作を確立することが可能となる。
また、本実施の形態によれば、電源43の電源電圧の最小電圧閾値V1を下回った回数をカウントするカウンタ部54と、カウント値が5回以上となった場合に、電流供給再開部52bによるワイパモータ13への駆動電流の供給を禁止する電流供給禁止部52cとを備えるので、電源43の電源電圧が低下して不安定となった場合に、ワイパモータ13が停止または再作動を連続して繰り返すのを抑制することができ、ひいては、電源43が必要以上に消耗することを抑制できる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、図6(b)に示すように、復路側電圧検出処理の中のみにおいて、カウンタ部54によるカウント処理と電流供給禁止部52cによる回転制御再開禁止処理とを実行、つまり、本発明の第3ステップを実行するものを示したが、本発明はこれに限らず、図5(b)に示す往路側電圧検出処理の中においても、カウンタ部54によるカウント処理と電流供給禁止部52cによる回転制御再開禁止処理とを実行するようにしても良い。
また、上記実施の形態においては、ワイパモータ13の動作状態を検出するセンサとして、ホールセンサとマグネットとを有する磁気式センサを用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、MRセンサを有する他の磁気式センサや、フォトインタラプタを有する光学式センサ等を用いることもできる。
さらに、上記実施の形態においては、車両10のフロントガラス11を払拭するワイパ装置12に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、ウィンシールドとしてのリヤガラスを払拭するワイパ装置にも適用することができる。