JP2009205978A - 車両用燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電動車両1に搭載される車両用燃料電池システム2において、液体燃料を燃料とする燃料電池3と、燃料電池3に液体燃料を供給するために稼動する循環ポンプ16と、電動車両1の振動周波数fおよび振幅Gを検出する振動センサ28と、電動車両1の傾斜角度θを検出する傾斜センサ29と、振動センサ28および傾斜センサ29の検出値に基づいて循環ポンプ16の出力を制御して、燃料電池3に供給される液体燃料の供給量を変化させるコントロールユニット24とを設ける。そして、振動センサ28および/または傾斜センサ29の検出値が所定の範囲の場合には、燃料電池3に供給される液体燃料の供給量を変化させるように、循環ポンプ16を制御しない。
【選択図】図1
Description
直接液体燃料形燃料電池は、液体燃料から水素ガスを生成するための改質器を必要としないので、システムとしての構造の簡略化が期待される燃料電池として注目されている。
このような燃料電池システムでは、液体燃料が水とともに燃料電池のアノード(燃料極)に供給され、また、空気が燃料電池のカソード(空気極)に供給されることによって、電気化学反応が生じ、起電力が発生する。
(1)CH3OH+6OH-→CO2+5H2O+6e- (アノードでの反応)
(2)O2+H2O+4e-→4OH- (カソードでの反応)
式(1)で示されるように、アノードでは、反応によりCO2ガスが発生して、液体燃料中に気泡として滞留する。そのため、アノード電極における液体燃料との接触面がCO2ガスに覆われて、燃料電池の出力が低下するおそれがある。
一方、例えば、車両における燃料電池システムの配置により異なるが、車両が傾斜路を上る場合および/または下る場合には、燃料電池が車両とともに水平方向に対して傾くので、それによってアノード電極に接触している気泡がアノード電極から離れることがある。また、例えば、車両が悪路を走行する場合には、燃料電池が車両とともに振動するので、それによってアノード電極に接触している気泡がアノード電極から離れることがある。そして、気泡がアノード電極から離れると、燃料電池の出力低下のおそれがない状態となる。
また、車両では、エアコンディショナなどの補機に供給されるエネルギー消費が多いため、エネルギー消費の低減が望まれている。
また、本発明の車両用燃料電池システムでは、前記検出手段が、車両の傾斜角度を検出する傾斜検出手段であることが好適である。
さらに、本発明の車両用燃料電池システムでは、前記検出手段が、車両の振動数を検出する振動検出手段であることが好適である。
電動車両1は、例えば、燃料電池をその動力源とする車両であって、車両用燃料電池システム2を搭載している。
車両用燃料電池システム2は、燃料電池3と、燃料給排部4と、空気給排部5と、制御部6と、動力部7とを備えている。
(A)燃料電池
燃料電池3は、電動車両1の略中央下側に配置されている。燃料電池3は、液体燃料を燃料とする、例えば、固体高分子形(PEFC)など公知の燃料電池である。燃料電池3では、液体燃料が液体として直接供給されることによって発電が行なわれる。燃料電池3に使用される液体燃料としては、例えば、ヒドラジン、メタノールなどが挙げられる。また、燃料電池3は、膜・電極接合体8と、この膜・電極接合体8を挟んで対向配置されるアノード供給路9およびカソード供給路10とを備えている。
濃度センサ33は、後述するコントロールユニット24と電気的に接続されている(図1の破線参照。)。濃度センサ33では、検出された液体燃料の濃度が電気信号に変換され、その電気信号がコントロールユニット24に入力される。
(B)燃料給排部
燃料給排部4は、液体燃料を貯めるための燃料タンク11と、燃料タンク11からの液体燃料を燃料電池3に供給するための燃料供給管12と、燃料電池3に液体燃料を循環させるための循環管13とを備えている。
燃料供給管12は、上流側の一端が燃料タンク11の燃料流出口(図示せず)に接続され、下流側の他端が循環管13の途中に接続されている。また、燃料供給管12の途中には、燃料供給ポンプ14が介在されている。
インジェクタ15は、その吸込側(上流側)が燃料供給管12の他端に接続され、その注入側(下流側)が循環管13の途中に接続されている。これにより、燃料供給管12は、インジェクタ15を介して循環管13と接続されている。インジェクタ15としては、例えば、電子制御式インジェクタなど公知のインジェクタが挙げられる。また、インジェクタ15は、後述するコントロールユニット24と電気的に接続されており、コントロールユニット24からの入力信号により、インジェクタ15の開度が調節されて、燃料供給管12から循環管13に注入(噴射)される燃料の注入量(噴射量)が制御される。
循環ポンプ16は、循環管13およびアノード供給路9からなる液体燃料の循環路に液体燃料を循環させるためのポンプであって、例えば、公知の送液ポンプなどが用いられる。循環ポンプ16は、循環管13において、インジェクタ15よりも上流側(よりアノード供給路9の燃料流出口に近い側)に設けられている。また、循環ポンプ16は、後述するコントロールユニット24と電気的に接続されており、コントロールユニット24からの入力信号により稼動するとともに、その出力が制御される。循環ポンプ16の出力が制御されることによって、循環管13を流れる液体燃料の流量が制御され、燃料電池3に供給される液体燃料の供給量が変化する。
燃料処理装置32としては、使用される液体燃料に応じて適切な処理装置が選択され、例えば、液体燃料がヒドラジンの場合、ヒドラジンを分解して、環境負荷の少ない窒素ガスおよび水素ガスなどの処理物質を生成させるための分解装置が選択される。燃料処理装置32が設けられることにより、燃料処理タンク18は、循環管13およびアノード供給路9からなる液体燃料の循環路における液体燃料を、例えば、環境負荷の少ない物質に処理するための処理槽としても使用される。
燃料排出管19は、その上流側の一端が燃料処理タンク18に接続され、その下流側の他端がドレンとされている。また、燃料排出管19の途中には、パージ弁20が設けられている。
(C)空気給排部
空気給排部5は、空気(酸素)をカソード供給路10に供給する空気供給管21と、カソード供給路10から排出される排出物質を排出するための空気排出管22とを備えている。
空気供給ポンプ23は、大気中の空気を、空気供給管21に流すためのポンプであって、例えば、エアコンプレッサなどの公知の送気ポンプが用いられる。また、空気供給ポンプ23は、後述するコントロールユニット24と電気的に接続されており、コントロールユニット24からの入力信号により稼動するとともに、その出力が制御される。空気供給ポンプ23の出力が制御されることによって、空気供給管21を流れる空気(酸素)の流量が制御される。
(D)制御部
制御部6は、制御手段としてのコントロールユニット24と、センサ類25とを備えている。
センサ類25は、電動車両1の各種状態を検出する複数のセンサの総称であり、複数のセンサは、それぞれコントロールユニット24と電気的に接続されている(図1の破線参照。)。複数のセンサには、例えば、電動車両1のアクセル開度を検出するアクセルセンサ26と、電動車両1の速度を検出する車速センサ27と、電動車両1の振動数を検出する振動検出手段としての振動センサ28と、電動車両1の傾斜角度を検出する傾斜検出手段としての傾斜センサ29とが含まれる。
車速センサ27は、例えば、電動車両1の出力軸(アウトプットシャフト)の回転速度を検出する公知の車速センサであって、検出した回転速度を電気信号に変換し、コントロールユニット24に出力する。
(E)動力部
動力部7は、モータ30と、インバータ31とを備えている。
インバータ31は、モータ30と燃料電池3との間に配置されている。インバータ31は、燃料電池3で発電された直流電力を交流電力に変換する装置であって、例えば、公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置を用いて構成されている。また、インバータ31は、配線により、燃料電池3およびモータ30にそれぞれ電気的に接続されている(図1の破線参照。)。
(F)車両用燃料電池システム2での発電
以上説明した車両用燃料電池システム2では、燃料供給ポンプ14および空気供給ポンプ23が稼動されることにより、燃料供給管12に液体燃料が供給され、空気供給管21に空気(酸素)が供給される。
そして、液体燃料がメタノールである場合、各膜・電極接合体8では、下記のように発電が行なわれる。すなわち、メタノールが供給されたアノード電極(図示せず)では、メタノール(CH3OH)と後述するカソード電極における反応で生成した水酸化物イオン(OH-)とが反応して、二酸化炭素(CO2)および水(H2O)が生成するとともに、電子(e-)が発生する(下記反応式(1)参照。)。
一方、カソード電極では、電子(e-)と、外部からの供給もしくは膜・電極接合体8における反応で生成した水(H2O)と、カソード供給路10から供給された空気中の酸素(O2)とが反応して、水酸化物イオン(OH-)が生成する(下記反応式(2)参照。)。
このようなアノード電極およびカソード電極における電気化学的反応が連続的に行なわれることによって、膜・電極接合体8全体として下記反応式(3)で表わされる反応が行なわれて、燃料電池3の発電が行なわれる。
(1) CH3OH+6OH-→CO2+5H2O+6e-(アノード電極での反応)
(2) O2+2H2O+4e-→4OH- (カソード電極での反応)
(3) CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O (膜・電極接合体8全体での反応)
また、液体燃料がヒドラジンである場合、各膜・電極接合体8では、下記反応式(4)〜(6)で表される反応が行なわれて、燃料電池3の発電が行なわれる。
(4) N2H4+4OH-→N2+4H2O+4e- (アノード電極での反応)
(5) O2+2H2O+4e-→4OH- (カソード電極での反応)
(6) N2H4+O2→N2+2H2O (膜・電極接合体8全体での反応)
上記した発電では、アノード電極において、CO2ガスまたはN2ガスが発生して、液体燃料中に気泡として滞留する。そのため、アノード電極における液体燃料との接触面が気泡(CO2ガスまたはN2ガス)に覆われて(接触面に気泡が接触して)、燃料電池3の発電が阻害されるおそれがある。
(G)気泡除去処理
図2は、図1のコントロールユニット24において実行される制御処理の流れを表すフローチャートである。
気泡除去処理では、まず、電動車両1の走行中、すなわち、燃料電池3の発電中、電動車両1のアクセル開度および速度(車速)が、アクセルセンサ26および車速センサ27によりそれぞれ検出され、その検出信号がコントロールユニット24に入力される(ステップS1)。
要求駆動力は、目標速度と検出速度との差1km/hあたり、例えば、0.5〜5kwである。
発電電流指令量は、膜・電極接合体8のセル電圧が0.7Vの場合、上記した範囲の要求駆動力に対して、例えば、5〜50Aである。
そして、濃度センサ33によりアノード供給路9内の液体燃料の濃度が検出され、その入力信号がコントロールユニット24に入力される(ステップS4)。
ベース(通常)流量Vbは、液体燃料が、例えば、3〜5%のメタノールの場合、0.5〜15ml/sであり、例えば、3〜30%のヒドラジンの場合、0.1〜15ml/sである。こうして、液体燃料が、ベース(通常)流量Vbで燃料電池3に供給される。
すなわち、電動車両1が、砂利などが散乱した凸凹の悪路を走行することによって、燃料電池3が電動車両1とともに振動し、それによって、アノード電極に接触している気泡がアノード電極から離れることがある。そして、気泡がアノード電極から離れることによって、燃料電池3の発電を阻害する気泡が除去されて、燃料電池3の出力低下のおそれがない状態となる。そのため、気泡除去処理では、電動車両1の振動により、燃料電池3の出力が低下するおそれがあるか否か判別するため、電動車両1の振動状態が検出される。
そして、傾斜センサ29により、傾斜角度θが検出され(ステップS8)、その傾斜角度θが、1°<θ<10°であると(ステップS9のYES)、電動車両1の傾斜により、発電を阻害する気泡が除去されて燃料電池3の出力低下のおそれがなくなっていると判断される。こうして、循環ポンプ16の出力が、液体燃料をベース(通常)流量Vbで流す出力に保持されて、気泡除去処理が終了となり、燃料電池3の発電が継続される。
循環ポンプ16の出力は、液体燃料をベース(通常)流量Vbで流すときの出力から、例えば、10〜100%増加するように制御され、これにより、液体燃料が、気泡除去流量Vnで燃料電池3に供給される。
液体燃料の流量を、気泡除去流量Vnに増加させることによって、液体燃料の流量が増加して、アノード電極に接触している気泡がアノード電極から離れる。これによって、液体燃料中の、燃料電池3の発電を阻害する気泡が除去されるので、燃料電池3の出力低下のおそれがなくなっていると判断され、気泡除去処理が終了となる。
その結果、液体燃料中の、燃料電池3の発電を阻害する気泡を除去することができるので、燃料電池3の出力低下を抑制することができる。
一方、電動車両1の振動または傾斜のいずれか一方により、アノード電極に接触している気泡をアノード電極から離すことができるとき(気泡による発電の阻害度合が小さいとき)には、循環ポンプ16の出力を、液体燃料をベース(通常)流量Vbで流す出力に保持する。そして、それによって、燃料電池3への液体燃料の供給量をベース(通常)流量Vbに保持する。
そのため、振動周波数f、振幅Gおよび傾斜角度θが所定の範囲であるか否かを判別するだけで、上記したエネルギー消費の低減を達成することができる。
例えば、前述の実施形態では、電動車両1の振動または傾斜により、燃料電池3の発電を阻害する気泡を除去することができないときにのみ、循環ポンプ16の出力を制御して、液体燃料の流量を、ベース(通常)流量Vbから気泡除去流量Vnに増加させたが、例えば、電動車両1の振動および傾斜の組み合わせにより、燃料電池3の発電を阻害する気泡を除去することができないときに、循環ポンプ16の出力を制御して、液体燃料の流量を、ベース(通常)流量Vbから気泡除去流量Vnに増加させてもよい。
3 燃料電池
16 循環ポンプ
24 コントロールユニット
28 振動センサ
29 傾斜センサ
Claims (3)
- 液体燃料を燃料とする燃料電池と、
前記燃料電池に液体燃料を供給するための燃料供給手段と、
液体燃料中の気泡が前記燃料電池の発電を阻害する度合を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出する度合に基づいて、前記燃料供給手段を制御して液体燃料の供給量を変化させる制御手段と
を備えることを特徴とする、車両用燃料電池システム。 - 前記検出手段が、車両の傾斜角度を検出する傾斜検出手段であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用燃料電池システム。
- 前記検出手段が、車両の振動数を検出する振動検出手段であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用燃料電池システム。
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