JP2009197318A - 常温溶融塩浴を用いた電気Al−Zr−Mn合金めっき浴、そのめっき浴を用いためっき方法及びAl−Zr−Mn合金めっき皮膜 - Google Patents

常温溶融塩浴を用いた電気Al−Zr−Mn合金めっき浴、そのめっき浴を用いためっき方法及びAl−Zr−Mn合金めっき皮膜 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、空気や水と接触した場合にも爆発の危険性がなく、かつ、高電流密度部分においてもデンドライド析出が発生せず、平滑で、低電流密度部分まで着き回り性の良い均一なめっき皮膜が得られ、かつ、クロメート処理なしでも高い耐食性が得られるめっき皮膜を得ることができる電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、A)アルミニウムハロゲン化物、(B)N−アルキルピリジニウムハライド類、N−アルキルイミダゾリウムハライド類、N,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類、N−アルキルピラゾリウムハライド類、N,N’−アルキルピラゾリウムハライド類、N−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、(C)ジルコニウムハロゲン化物並びに(D)マンガンハロゲン化物を含む電気Al−Zr−Mn合金めっき浴であって、(A)アルミニウムハロゲン化物と(B)化合物とのモル比が1:1〜3:1である、電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、常温で使用できる電気Al−Zr−Mn合金めっき浴に関するものである。特に、腐食防止のための一般的な表面処理として利用できる電気Al−Zr−Mn合金めっき層を形成するための電気Al−Zr−Mn合金めっき浴に関するものである。
アルミニウム金属材が優れた耐食性を有していることはよく知られているが、アルミニウムは酸素に対する親和力が大きく、また還元電位が水素より卑であるため、水溶液からの電析は困難である。そのため従来からアルミニウム電気めっきは有機溶媒系めっき浴や高温溶融塩浴にて行われている。有機溶媒系のめっき浴としては、AlCl3と、LiAlH4又はLiHとをエーテルに溶解したものや、テトラヒドロフランに溶解したもの、NaF・2Al(C253のトルエン溶液が代表的である。しかしながら、これらの浴は、空気や水と接触した場合に爆発する危険性が有り、取り扱いにくいという問題がある。そこで、爆発の危険性がない浴として、アルミニウムハロゲン化物とアルキルピリジニウムハロゲン化物との混合溶融塩浴が提案されている(特許文献1)。また、アルミニウムハロゲン化物とアルキルイミダゾリウムハロゲン化物にハロゲン化ジルコニウムを混合した溶融塩浴も提案されている(非特許文献1)。しかしながら、このようなAl−Zr合金めっきからのめっきは電析が不均一で、平滑性にも乏しい。特に、膜厚を増加した場合や電流密度を高くした場合には、高電流密度部分がデンドライド状析出となり、析出物が簡単に脱落してしまうという問題がある。また、電流密度を低くすると、着き回り性が低下し、めっき未着が発生するという問題がある。さらに、得られためっき皮膜は、6価クロムを用いたクロメート処理なしでは、塩水噴霧試験などを実施した場合、溶解しやすく、期待される防錆力が得られ難く、高耐食性のAl合金めっき皮膜を得ることは困難であった。
特開昭62−70592号公報 Journal of The Electrochemical Society, 151 (7) C447-C454 (2004)
本発明は、空気や水と接触した場合にも爆発の危険性がなく、かつ、高電流密度部分においてもデンドライド析出が発生せず、平滑で、低電流密度部分まで着き回り性の良い均一なめっき皮膜が得られ、かつ、クロメート処理なしでも高い耐食性が得られるめっき皮膜を得ることができる電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を提供することを目的とする。本発明は、又、クロムフリーでの高耐食性Al−Zr−Mn合金防錆皮膜を提供することを目的とする。
本発明は、アルミニウムハロゲン化物とイミダゾリウムハロゲン化物などの混合溶融塩にジルコニウムハロゲン化物とマンガンハロゲン化物を含有させ、Al−Zr−Mn合金めっき皮膜を得ることにより、上記課題である耐食性の改善と皮膜の均一性を達成し得るとの知見に基づいてなされたものである。また、特定の有機重合体又は特定の有機重合体と光沢剤とを添加することによって、さらに皮膜の均一性とデンドライド析出防止効果が高まるとの知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、A)アルミニウムハロゲン化物、(B)N−アルキルピリジニウムハライド類、N−アルキルイミダゾリウムハライド類、N,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類、N−アルキルピラゾリウムハライド類、N,N’−アルキルピラゾリウムハライド類、N−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、(C)ジルコニウムハロゲン化物並びに(D)マンガンハロゲン化物を含む電気Al−Zr−Mn合金めっき浴であって、(A)アルミニウムハロゲン化物と(B)化合物とのモル比が1:1〜3:1である、電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を提供する。
また、本発明は前記電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を用いる電気めっき方法を提供する。
さらに、本発明は皮膜中のZrとMnの合計共析率が1〜40重量%であるAl−Zr−Mn合金めっき皮膜を提供する。
本発明のめっき浴は、爆発の危険性がなく、平滑で緻密なAl−Zr−Mn合金めっき皮膜を得ることができる。また、その皮膜は、クロムフリーでも高耐食性を有しているため、環境対応用として自動車部品、家電部品等、幅広い用途で用いることができる。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴は、A)アルミニウムハロゲン化物、(B)N−アルキルピリジニウムハライド類、N−アルキルイミダゾリウムハライド類、N,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類、N−アルキルピラゾリウムハライド類、N,N’−アルキルピラゾリウムハライド類、N−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、(C)ジルコニウムハロゲン化物並びに(D)マンガンハロゲン化物を含む電気Al−Zr−Mn合金めっき浴である。
本発明で用いる(A)アルミニウムハロゲン化物は、AlX3で表され、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンであり、塩素もしくは臭素が好ましい。経済性を考慮すると塩素が最も好ましい。
本発明で(B)化合物として用いるN−アルキルピリジニウムハライド類としては、ピリジウム骨格にアルキル基が置換していてもよく、例えば下記一般式(I)で表される。
Figure 2009197318
(式中、R1は炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、Xはハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては反応性を考慮すると臭素原子が最も好ましい。)
具体的なN−アルキルピリジニウムハライド類としては、例えばN−メチルピリジニウムクロライド、N−メチルピリジニウムブロマイド、N−エチルピリジニウムクロライド、N−エチルピリジニウムブロマイド、N−ブチルピリジニウムクロライド、N−ブチルピリジニウムブロマイド、N−ヘキシルピリジニウムクロライド、N−ヘキシルピリジニウムブロマイド、2−メチル−N−プロピルピリジニウムクロライド、2−メチル−N−プロピルピリジニウムブロマイド、3−メチル−N−エチルピリジニウムクロライド、3−メチル−N−エチルピリジニウムブロマイドなどが挙げられる。
本発明で(B)化合物として用いるN−アルキルイミダゾリウムハライド類及びN,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類としては、例えば下記一般式(II)で表される。
Figure 2009197318
(式中、R3は炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、R4は水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、Xはハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては反応性を考慮すると臭素原子が最も好ましい。)
具体的なN−アルキルイミダゾリウムハライド類及びN,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類としては、例えば1−メチルイミダゾリウムクロライド、1−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチルイミダゾリウムクロライド、1−エチルイミダゾリウムブロマイド、1−プロピルイミダゾリウムクロライド、1−プロピルイミダゾリウムブロマイド、1−オクチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチルイミダゾリウムブロマイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムブロマイド、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1,3−ジエチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジエチルイミダゾリウムブロマイド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムクロライド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムブロマイド、1−ブチル−3−ブチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−ブチルイミダゾリウムブロマイドなどが挙げられる。
本発明で(B)化合物として用いるN−アルキルピラゾリウムハライド類及びN,N’−アルキルピラゾリウムハライド類としては、例えば下記一般式(III)で表される。
Figure 2009197318
(式中、R5は炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、R6は水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、Xはハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては反応性を考慮すると臭素原子が最も好ましい。)
具体的なN−アルキルピラゾリウムハライド類及びN,N’−アルキルピラゾリウムハライド類としては、例えば1−メチルピラゾリウムクロライド、1−メチルピラゾリウムブロマイド、1−プロピルピラゾリウムクロライド、1−プロピルピラゾリウムブロマイド、1−ブチルピラゾリウムクロライド、1−ブチルピラゾリウムブロマイド、1−ヘキシルピラゾリウムクロライド、1−ヘキシルピラゾリウムブロマイド、1−メチル−2−エチルピラゾリウムクロライド、1−メチル−2−エチルピラゾリウムブロマイド、1−メチル−2−プロピルピラゾリウムクロライド、1−メチル−2−プロピルピラゾリウムブロマイド、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムクロライド、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムブロマイド、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムクロライド、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムブロマイド、1−へキシル−2−メチルピラゾリウムクロライド、1−へキシル−2−メチルピラゾリウムブロマイド、1,2−ジメチルピラゾリウムクロライド、1,2−ジメチルピラゾリウムブロマイド、1,2−ジエチルピラゾリウムクロライド、1,2−ジエチルピラゾリウムブロマイドなどが挙げられる。
本発明で(B)化合物として用いるN−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類としては、例えば下記一般式(IV)で表される。
Figure 2009197318
(式中、R7は水素原子又は炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、R8は水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素原子数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であるが、但しR7及びR8はともに水素原子であることはなく、Xはハロゲン原子であり、ハロゲン原子としては反応性を考慮すると臭素原子が最も好ましい。)
具体的なN−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類としては、例えば1−メチルピロリジニウムクロライド、1−メチルピロリジニウムブロマイド、1,1−ジメチルピロリジニウムクロライド、1−エチル−1−メチルピロリジニウムクロライド、1−エチルピロリジニウムクロライド、1−プロピルピリジニウムクロライド、1−メチル−1−プロピルピリジニウムクロライド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロライド、1−エチル−1−プロピルピリジニウムクロライド、1−メチル−1−ヘキシルピリジニウムクロライド、1−ブチルピロリジニウムクロライド、1−エチル−1−メチルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
また、(B)化合物は、上記のN−アルキルピリジニウムハライド類、N−アルキルイミダゾリウムハライド類、N,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類、N−アルキルピラゾリウムハライド類、N,N’−アルキルピラゾリウムハライド類、N−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類の2種以上の混合物であってもよく、更にハロゲン原子が異なる2種以上の混合物であってもよい。
本発明において、(A)アルミニウムハロゲン化物のモル数と、(B)化合物のモル数との比率は、1:1〜3:1の範囲が好ましく、より好ましくは2:1である。このような範囲のモル比とすることにより、ピリジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム又はピロリジニウムカチオンの分解と思われる反応が起こるのを防止し、めっき浴の粘度が上昇して浴の劣化及びめっき不良となることを防止することができる。
本発明で用いる(C)ジルコニウムハロゲン化物は、ZrX4で表され、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンであり、取り扱い上、塩素が好ましい。
ジルコニウムハロゲン化物の浴中濃度は、好ましくは4×10-4〜4×10-1モル/lであり、より好ましくは4×10-3〜2×10-1モル/lである。このような浴中濃度とすることで、Al−Zr−Mn合金めっき皮膜中のZr共析率を適切な範囲とすることができ、黒色の粉末として析出することもない。
本発明で用いる(D)マンガンハロゲン化物は、MnX2で表され、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンであり、取り扱い上、塩素が好ましい。
マンガンハロゲン化物の浴中濃度は、好ましくは8×10-4〜8×10-1モル/lであり、より好ましくは8×10-3〜4×10-1モル/lであり、さらに好ましくは8×10-3〜8×10-2モル/lである。このような浴中濃度とすることで、Al−Zr−Mn合金めっき皮膜中のMn共析率を適切な範囲とすることができ、黒色の粉末として析出することもない。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴は、50容量%を超えない範囲で(E)芳香族炭化水素溶媒を含有していてもよい。(E)芳香族炭化水素溶媒としては、溶融塩に溶解可能であり、かつ、溶融塩の電気伝導度を低下させない非水系芳香族溶媒であればどのようなものであってもよい。(E)芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、テトラリン、メシチレン、ヘミメリテン、プソイドクメンなどが挙げられる。これらのうちベンゼン、トルエン、キシレンが好ましく、中でもトルエンが最も好ましい。また、このような芳香族炭化水素溶媒の浴中濃度は、50容量%を超えない範囲が好ましく、より好ましくは1〜50容量%の範囲であり、さらに好ましくは5〜10容量%の範囲である。このような範囲で用いると、着き回り性が改善され、均一なめっきが得られ、電気伝導度の低下や引火性の危険が高くなることもない。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴は、(F)スチレン系ポリマー及び脂肪族ジエン系ポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機重合体を含有していてもよい。本発明で(F)有機重合体として用いるスチレン系ポリマーとしては、具体的には、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、m−メチルスチレンなどのスチレン系ホモポリマー、これら同士のコポリマー、あるいはスチレン系モノマーと他の重合性のビニル系モノマーとのコポリマーが挙げられる。前記ビニル系モノマーの例としては、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸、アクリルアミド、アクリルニトリル、マレイミド、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フマル酸エステル、ビニルエチルエーテル、塩化ビニルなどが挙げられる。これらのうち、炭素数が3〜10のα、β−不飽和カルボン酸又はそのアルキル(炭素数1〜3)エステルが好ましい。
本発明で(F)有機重合体として用いる脂肪族ジエン系ポリマーとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエンなどの重合体などが挙げられる。好ましくは、1,2又は3,4構造の分枝鎖を有する重合体、又はこれらと他の重合性ビニル系モノマーとのコポリマーである。前記ビニル系モノマーとしては、上記スチレン系ポリマーについて記載したものと同様のものが挙げられる。
(F)有機重合体の重量平均分子量は、200〜80000の範囲が好ましい。特に、重量平均分子量が300〜5000程度の低中分子量のポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンは、溶融塩溶解性が良く最も好ましい。その浴中濃度は、0.1〜50g/lの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10g/lの範囲である。(F)有機重合体をこのような範囲で用いると、デンドライド析出を防止し、表面平滑効果を発揮し、めっきやけが発生するのを防止できる。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴は、(G)光沢剤を含有していてもよい。(G)光沢剤としては、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、芳香族ケトン、含窒素不飽和複素環化合物、ヒドラジド化合物、S含有複素環化合物、S含有置換基を有する芳香族炭化水素、芳香族カルボン酸及びその誘導体、二重結合を有する脂肪族カルボン酸及びその誘導体、アセチレンアルコール化合物及び三フッ化塩化エチレン樹脂から選ばれた1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
脂肪族アルデヒドは、例えば炭素数2〜12の脂肪族アルデヒドであり、具体的にはトリブロモアセトアルデヒド、メタアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ラウリルアルデヒドなどが挙げられる。
芳香族アルデヒドは、例えば炭素数7〜10の芳香族アルデヒドであり、具体的には0−カルボキシベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、0−クロルベンズアルデヒド、p−トルアルデヒド、アニスアルデヒド、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。
芳香族ケトンとしては、例えば炭素数8〜14の芳香族ケトンであり、具体的にはベンザルアセトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩化テレフタロイルベンジルなどが挙げられる。
含窒素不飽和複素環化合物は、例えば炭素数3〜14の窒素複素環化合物であり、具体的にはピリミジン、ピラジン、ピリダジン、s−トリアジン、キノキサリン、フタラジン、1,10−フェナントロリン、1,2,3−ベンゾトリアゾール、アセトグアナミン、塩化シアヌル、イミダゾール−4−アクリル酸などが挙げられる。
ヒドラジド化合物としては、例えばマレイン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド、フタル酸ヒドラジドなどが挙げられる。
S含有複素環化合物は、例えば炭素数3〜14のS含有複素環化合物であり、具体的にはチオウラシル、チオニコチン酸アミド、s−トリチアン、2−メルカプト−4,6−ジメチルピリミジンなどが挙げられる。
S含有置換基を有する芳香族炭化水素は、例えば炭素数7〜20のS含有置換基を有する芳香族炭化水素であり、具体的にはチオ安息香酸、チオインジゴ、チオインドキシル、チオキサンテン、チオキサントン、2−チオクマリン、チオクレゾール、チオジフェニルアミン、チオナフトール、チオフェノール、チオベンズアミド、チオベンズアニリド、チオベンズアルデヒド、チオナフテンキノン、チオナフテン、チオアセトアニリドなどが挙げられる。
芳香族カルボン酸及びその誘導体は、例えば炭素数7〜15の芳香族カルボン酸及びその誘導体であり、具体的には安息香酸、テレフタル酸、安息香酸エチルなどが挙げられる。
二重結合を有する脂肪族カルボン酸及びその誘導体は、例えば炭素数3〜12の二重結合を有する脂肪族カルボン酸及びその誘導体であり、具体的にはアクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
アセチレンアルコール化合物としては、例えばプロパギルアルコールなどが挙げられる。
フッ素樹脂としては、例えば平均分子量が500〜1300の三フッ化塩化エチレン樹脂などが挙げられる。
(G)光沢剤の浴中濃度は、好ましくは0.001〜0.1モル/lの範囲であり、より好ましくは0.002〜0.02モル/lの範囲である。本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴においては、(G)光沢剤をこのような範囲で用いると、平滑効果が得られ、高電流密度でめっきを施した場合でも、黒色スマット状の析出を生じることはない。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴においては、(E)芳香族炭化水素溶媒、(F)有機重合体及び(G)光沢剤のうちの2種を併用しもてよく、これら3種のすべてを併用してもよい。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を用いるめっき方法としては、電気めっきが用いられる。電気めっきは、直流もしくはパルス電流により行うことができるが、特にパルス電流が好ましい。デューティー比(ON/OFF比)を、好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは1:1とし、ON時間を5〜20ms、OFF時間を5〜20msとする条件のパルス電流を用いると電析する粒子が緻密化し、平滑になるので好ましい。浴温は、通常25〜120℃の範囲であり、好ましくは50〜80℃の範囲である。電流密度は、通常0.1〜15A/dm2の範囲であり、好ましくは0.5〜5A/dm2の範囲の電解条件で行うのが良い。尚、本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴は、酸素や水分に触れても安全であるが、めっき浴の安定性維持及びめっき性状などの点から乾燥無酸素雰囲気中(乾燥窒素や乾燥アルゴン中)で行うのが望ましい。また、電気めっきを実施する場合は、液を攪拌するか又は/及び被めっき物を揺動することが望ましい。例えば、ジェット噴流や超音波攪拌などを使用すれば、電流密度をさらに高くすることができる。
ただし、複雑な形状部品をめっきする場合は、着き回り性をよくするために攪拌を行わないか弱くし、0.5〜1A/dm2の低い陰極電流密度で長時間めっきを行うことが望ましい。陽極としては、AlとMnとZr板の組み合わせが望ましいが、Al板又は不溶性陽極でも構わない。ただし、この場合は、アルミニウムハロゲン化物、ジルコニウムハロゲン化物及びマンガンハロゲン化物を補給して浴組成を一定に保持する必要がある。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を用いて、鉄、亜鉛、セラミックなど種々の金属あるいはセラミック素地に平滑で緻密なAl−Zr−Mn合金めっき皮膜を被覆することができる。前記素地と本発明のめっき皮膜の密着性は、めっき前に素地を前処理するとより一層向上するので好ましい。このような前処理方法としては、例えば下地処理としてNiめっきを行うか、めっき素地を本発明のめっき浴と同じ組成の溶液に浸漬するか、又は好ましくは0.5〜5A/dm2で30秒〜10分間陽極電解する方法が好ましく用いられる。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を用いて得られるAl−Zr−Mn合金めっき皮膜中のZrとMnの合計共析率は、好ましくは2〜40重量%(Alは98〜60重量%)であり、より好ましくは3〜35重量%であり、最も好ましくは15〜35重量%である。このようなZrとMnの合計共析率とすることにより、Al−Zr−Mn合金めっき皮膜の耐食性が良好となる。また、好ましくはAl−Zr−Mn合金めっき皮膜中において、Zr共析率は1〜39重量%であり、より好ましくは5〜30重量%であり、さらに好ましくは10〜30重量%であり、最も好ましくは10〜25重量%である。また、好ましくはMnの共析率は1〜39重量%であり、より好ましくは2〜25重量%であり、最も好ましくは3〜20重量%である。鉄素地の防錆、特に疵付き部からの赤さび発生を抑制し、耐食性を良好にする。
本発明の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を用いて得られるAl−Zr−Mn合金めっき皮膜の厚さは、通常2〜40μmであり、好ましくは5〜15μmである。
(実施例1〜4)
AlCl3と1−メチル−3プロピルイミダゾリウムブロマイドとを2:1のモル比に混合溶融してなる浴に、芳香族炭化水素溶媒のトルエンを35容量%混合し、塩化マンガン及び塩化ジルコニウムを下記表1の通り添加して電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を調製した。次に陰極として用いる鉄板(板厚0.5mm)に対し、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗し、水洗後エチルアルコール洗浄し乾燥を行った。前記鉄板を陰極、アルミニウム板(純度99.9%)を陽極として、乾燥窒素ガス雰囲気中で、60℃に保った前記電気Al−Zr−Mn合金めっき浴に5分間浸漬し、同じめっき浴でパルス電流(デューティー比:1/1、ON時間:10ms、OFF時間:10ms)にてAl−Zr−Mn合金めっきを行った。尚、めっき浴はスターラーで強く攪拌した。表1に、塩化マンガン、塩化ジルコニウムの浴中濃度、電解条件及び得られたAl−Zr−Mn合金めっき皮膜のMnとZrの共析率(%)、耐食性の評価結果を示す。
Figure 2009197318
(実施例5〜8)
AlCl3と1−メチル−3プロピルイミダゾリウムブロマイドとを2:1のモル比に混合溶融してなる浴に、塩化マンガン0.02モル/l及び塩化ジルコニウム0.015モル/lを添加した。さらに、下記表2の通り各種添加剤を添加して電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を調製した。次に陰極として用いる鉄板(板厚0.5mm)に対し、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗し、水洗後エチルアルコール洗浄し乾燥を行った。前記鉄板を陰極、アルミニウム板(純度99.9%)を陽極として、乾燥窒素ガス雰囲気中で、50℃に保った前記電気Al−Zr−Mn合金めっき浴に5分間浸漬し、同じめっき浴で直流にてAl−Zr−Mn合金めっきを行った。尚、めっき浴はスターラーで攪拌した。表2に、添加剤の浴中濃度、電解条件及び得られたAl−Zr−Mn合金めっき皮膜のMnとZrの共析率(%)、耐食性の評価結果を示す。
Figure 2009197318
1)イーストマンケミカル社製、Piccolastic A75、MW 1300
(実施例9〜11)
溶剤、添加剤未使用の場合の実施例を以下に示す。
AlCl3と1−メチル−3プロピルイミダゾリウムブロマイドとを2:1のモル比に混合溶融してなる浴に、塩化マンガン及び塩化ジルコニウムを下記表3の通り添加して電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を調製した。次に陰極として用いる鉄板(板厚0.5mm)に対し、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗し、水洗後エチルアルコール洗浄し乾燥を行った。前記鉄板を陰極、アルミニウム板(純度99.9%)を陽極として、乾燥窒素ガス雰囲気中で、80℃に保った前記電気Al−Zr−Mn合金めっき浴に5分間浸漬し、同じめっき浴でパルス電流(デューティー比:1/1、ON時間:10ms、OFF時間:10ms)にてAl−Zr−Mn合金めっきを行った。尚、めっき浴はスターラーでゆるく攪拌した。表3に、Mn、Zrの浴中濃度、電解条件及び得られたAl−Zr−Mn合金めっき皮膜のMnとZrの共析率(%)、耐食性の評価結果を示す。
Figure 2009197318
(比較例1〜3)
AlCl3と1−メチル−3プロピルイミダゾリウムブロマイドとを2:1のモル比に混合溶融してなる浴に、下記表3の通り各種添加剤を添加して電気Alめっき浴を調製した。次に陰極として用いる鉄板(板厚0.5mm)に対し、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗し、水洗後エチルアルコール洗浄し乾燥を行った。前記鉄板を陰極、アルミニウム板(純度99.9%)を陽極として、乾燥窒素ガス雰囲気中で、50℃に保った前記電気Alめっき浴に5分間浸漬し、同じめっき浴で直流にてAlめっきを行った。尚、めっき浴はスターラーで攪拌した。表3に、添加剤の浴中濃度、電解条件及び得られたAlめっき皮膜の耐食性の評価結果を示す。
Figure 2009197318
1)イーストマンケミカル社製、Piccolastic A75、MW 1300
(比較例4〜6)
AlCl3と1−メチル−3プロピルイミダゾリウムブロマイドとを2:1のモル比に混合溶融してなる浴に、塩化マンガンを下記表4の通り添加して電気Al−Mn合金めっき浴を調製した。次に陰極として用いる鉄板(板厚0.5mm)に対し、前処理として、アルカリ脱脂、アルカリ電解洗浄及び酸洗し、水洗後エチルアルコール洗浄し乾燥を行った。前記鉄板を陰極、アルミニウム板(純度99.9%)を陽極として、乾燥窒素ガス雰囲気中で、50℃に保った前記電気Al−Mn合金めっき浴に5分間浸漬し、同じめっき浴で直流にてAl−Mn合金めっきを行った。尚、めっき浴はスターラーで攪拌した。表4に、塩化マンガンの浴中濃度、電解条件及び得られたAl−Mn合金めっき皮膜のMnの共析率(%)、耐食性の評価結果を示す。
Figure 2009197318
(金属共析率(%)及び厚さの測定方法)
Al合金めっき皮膜のMn及びZr共析率(%)並びに厚さは、蛍光X線分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、マイクロエレメントモニターSEA5120)を用いて測定した。
(SSTでの赤錆発生時間の測定方法)
SSTでの赤錆発生時間は、塩水噴霧試験方法(JIS Z2371)に従って測定した。

Claims (10)

  1. (A)アルミニウムハロゲン化物、(B)N−アルキルピリジニウムハライド類、N−アルキルイミダゾリウムハライド類、N,N’−アルキルイミダゾリウムハライド類、N−アルキルピラゾリウムハライド類、N,N’−アルキルピラゾリウムハライド類、N−アルキルピロリジニウムハライド類及びN,N−アルキルピロリジニウムハライド類からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、(C)ジルコニウムハロゲン化物並びに(D)マンガンハロゲン化物を含む電気Al−Zr−Mn合金めっき浴であって、(A)アルミニウムハロゲン化物と(B)化合物とのモル比が1:1〜3:1である、電気Al−Zr−Mn合金めっき浴。
  2. (C)ジルコニウムハロゲン化物の浴中濃度が4×10-4〜4×10-1モル/lであり、(D)マンガンハロゲン化物の浴中濃度が8×10-4〜8×10-1モル/lである、請求項1記載の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴。
  3. (E)芳香族炭化水素溶媒を、50容量%を超えない範囲で含有する、請求項1又は2記載の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴。
  4. (F)スチレン系ポリマー及び脂肪族ジエン系ポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上の有機重合体を0.1〜50g/l含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴。
  5. (G)光沢剤を0.001〜0.1モル/l含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の電気Al−Zr−Mn合金めっき浴を用いる電気めっき方法。
  7. 電気めっきをパルス電流及び/又は強制攪拌下で行う請求項6記載のめっき方法。
  8. 皮膜中のZrとMnの合計共析率が2〜40重量%であるAl−Zr−Mn合金めっき皮膜。
  9. 皮膜中のZr共析率が1〜39重量%であり、Mnの共析率が1〜39重量%であるAl−Zr−Mn合金めっき皮膜。
  10. 鉄素地上に被覆された請求項9記載のAl−Zr−Mn合金めっき皮膜。
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