JP2009196957A - クロル化方法及びその反応終点の検知方法 - Google Patents

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【課題】クロル化方法の反応の終点を確実な方法で検知し、過剰なホスゲンガスの導入を行わず、プロセスの計装化がしやすい製造法を提供する。
【解決手段】有機カルボン酸を仕込み反応槽にホスゲンガスを導入して対応するカルボン酸クロライドを製造するに当たり、ホスゲンガスを一定速度で反応槽内に導入し、副生するカスを吸引して反応槽内の圧力を大気圧より大気圧より0・2kPa以上、好ましくは0.2kPaから1.0kPa減圧に保持し、ホスゲン化反応の副生物である塩化水素ガスおよび炭酸ガスの発生が停止することにより反応槽内の気圧が急激に減圧側に変動したらホスゲンの導入を止めるクロル化方法であり、急激な圧力の低下により反応の終点とする反応終点の検知方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば有機カルボン酸をホスゲン化して酸クロライドにするクロル化方法であり、その反応終点の検知方法に関する。
有機カルボン酸をホスゲンガスでホスゲン化して酸クロライドを製造する方法として知られている従来のものとしては、例えば、仕込みカルボン酸に対して計算量のホスゲンガスを導入し、排ガスをガスクロマトグラフィーなどにより分析して未反応のホスゲンガスを検知して反応の終点を検知する方法が知られている(特許文献1および特許文献2参照)。
また、有機ジヒドロキシ化合物をホスゲンガスでホスゲン化してビスクロロホルメートを製造するに当たり、反応液のpHを測定して反応の終点を検知するものが知られている(特許文献3および特許文献4参照)。あるいは、生成物の沈殿を検知して反応終点とするものや(特許文献3参照)、同様のホスゲン化反応において、反応熱を測定して反応の終点を検知する方法(特許文献5参照)などが報告されている。
特開昭56−103131号 米国特許第4,298,301号公報 特開昭62−26251号公報 特開平2−69444号公報 米国特許第4,814,420号公報
上述した諸方法は、誤差が多い、現象の検出が煩わしい、反応混合物を分取するなどに手間がかかる、などそれぞれ欠点があり、簡便な方法とは言いがたくプロセスの自動計装化には不向きである。
そこでホスゲン化における反応の終点を確実な方法で検知し、過剰なホスゲンガスの導入を行わず、プロセスを計装化しやすい製造法および反応終点を検知する方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明によるクロル化方法は、反応槽にホスゲンガスを導入するクロル化方法において、ホスゲンガスを反応槽内に導入し、副生するガスを吸引して反応槽内の圧力を大気圧より減圧した状態に保持して反応槽内の圧力を検知し、反応槽内の気圧が急激に低下した時点で、上記反応槽内へのホスゲンの導入を停止することを特徴とする。
また、本発明によるホスゲン化の反応終点を検知する方法は、反応槽にホスゲンガスを導入するクロル化方法の反応終点を検知する方法において、ホスゲンガスを反応槽内に導入し、副生するガスを吸引して反応槽内の圧力を大気圧より0.2kPaから1.0kPa減圧した状態に保持して反応槽内の圧力を検知し、反応槽内の気圧が急激に低下した時点で、クロル化方法の反応終点とすることを特徴とする。
本発明においては、例えば有機カルボン酸を用いる場合、有機カルボン酸に対する理論量に近いホスゲンの添加量でホスゲンの導入を停止することができ、圧力の急激な低下で反応を管理することができるので、工程の制御が確実で工程の自動化が容易である。
本発明における有機カルボン酸とは、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸や芳香族カルボン酸であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、アクリル酸、コハク酸、マレイン酸などがある。本発明においては、公知の有機カルボン酸とホスゲンガスの反応方法に準じて、無溶媒で、あるいは、溶媒を使用し、触媒の存在下で反応槽に有機カルボン酸を仕込み、ホスゲンガスを導入してホスゲン化する。
溶媒としては、通常使用される公知のものが使用でき、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの炭化水素類、エーテル、テトラヒドロフラン、カルボン酸クロライドなどがある。溶媒を使用すると生成物が着色しにくい利点があるが、一方、溶媒回収設備が必要になったり、反応系が希釈されホスゲン化に要する時問が長くなったり、生産性が低下するなどの不利もあり、反応槽に原料の有機カルボン酸と触媒を入れ、無溶媒下で撹伴しながらホスゲンガスを導入するのが効率的である。触媒としては、公知の触媒が使用できるが、ジメチルホルムアミドなどの低級脂肪酸アミドあるいはイミダゾールが経済的で好ましく、有機カルボン酸に対して1.5重量%以下を添加すれば十分である。
反応温度は、20℃〜120℃が通常採用され、120℃以上になると副反応による収率の低下が目立ち、20℃以下となると反応速度が遅くなり実際的でなくなり、実用的には、30℃〜50℃が望ましい。ホスゲンガスの導入速度は多少変動しても反応に影響しないが、略一定速度で反応槽に導入されるのが反応を安定に進行させるうえで望ましく、先に記載した30℃〜50℃の比較的低温でゆっくり、例えば10時間以上で導入するのが、着色の防止および副反応の防止などの見地から望ましい。
例えば、反応初期にはホスゲンガスの時間当たりの導入量を増加し導入予定量の80%を反応槽に導入し終えた反応終期には、ホスゲンの導入を減らして装置の生産効率を上げることが出来る。しかしながら、ホスゲンの導入速度を変更する場合、反応槽内の減圧度に出来るだけ影響を与えない範囲で、例えば、1分間に1kPa以上の変化を与えない程度に略一定速度で行う必要がある。反応槽内の圧力は、反応槽に連通する排ガス管から排気されて大気圧より0.2kPa以上、好ましくは、0.2kPaないし1.0kPa、さらに好ましくは、0.2kPaから0.5kPa減圧に保持される。大気圧より0.2kPa以下の減圧度になるとホスゲンガスが反応槽外へ漏洩し易くなる。また、1.0kPa以上となると減圧度を保持するための動力が増加するのみでなく、反応終了時の気圧の低下との差が少なくなるために、より精密な操業が要求される。
反応槽内は、ホスゲンガス導入前にあらかじめ減圧に保持するのが望ましく、この場合、大気圧より2kPaから4kPa減圧に保持してホスゲンの導入を開始するのが、その後の反応槽内の圧力管理に便利である。ホスゲンは有機カルボン酸と反応し、塩化水素ガス及び炭酸ガスを発生するが、排ガス管から排気されて所定の減圧度に保持される。反応槽内の有機カルボン酸が消費し尽くされると反応系でのガスの発生がなくなるので、反応槽内は急激に、例えば、1分間に0.5kPaから1kPa以上圧力が低下する。この時直ちにホスゲンガスの導入を停止する。
ホスゲンガスの導入を停止するためにホスゲンガス導入管のバルブを閉じても、バルブ内や反応槽までのホスゲン導入管などにホスゲンガスが残存しているので、これらは反応槽に導入される。しかし、触媒としてジメチルホルムアミドを使用した場合には、ジメチルホルムアミドとホスゲンが反応してビールスマイヤー試薬が生成し、これが有機カルボン酸クロライドに不溶であるので、このような若干のホスゲンガスが過剰に導入されても実質的に問題とならないし、また、不溶のビールスマイヤー試薬を回収して再使用することが出来る。ホスゲン化終了時における圧力の低下の度合いは、排ガスの吸引能力によって変動するが、通常は0.5kPaから1.5kPa程度の変動であり、十分検出可能である。
反応槽としては、通常使用される撹拌機及び冷却ジャケットを備えたグラスライニングの反応器が使用でき、ホスゲンガスは反応槽底部の有機カルボン酸の液面以下の位置に導入されるのが望ましい。反応槽の上部には、排ガス管が設置され、排ホスゲンコンデンサ、排ガスセパレータ、塩化水素ガス吸収塔などの除害設備に連結されている。反応槽の圧力感知器は系内のいずれに設置しても、反応槽内の気圧を測定するものとしての有効な感度が得られれば差し支えないが、塩化水素ガスの腐食性を考慮すると、塩化水素ガス吸収塔の後に設けるのが望ましい。
反応終了後は、従来公知の有機カルボン酸のホスゲン化と同様に必要に応じて有機カルボン酸クロライドを分離することができる。たとえば、溶媒を使用した場合には溶媒を蒸留などにより除去し、粗製の有機カルボン酸クロライドを得ることが出来る。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)排ガス系に反応槽内の圧力感知器を有するグラスライニングを施した8.0立方メートルの撹搾機付き反応槽に、酪酸6200リットル(d=0.959、6008kg、68kモル)、および触媒としてジメチルホルムアミドを40リットル(d=0.9445、37.8kg、0.517モル、0.9モル%)を添加した。反応槽の内温を40±0.5℃に保持し、反応槽内を大気圧より0.5kPa減圧に保持した。その後、ホスゲンガスを55立方メートル/時で反応槽に約26時間を要して導入した。その間反応槽内は大気圧より0.5kPa低く保持し続けた。ホスゲンガスの予定導入量から予想される反応終点近くで反応槽の圧力が1分間に大気圧より1.8kPa急激に低くなったので、自動的にホスゲン導入管のバルブを閉止した。ホスゲン導入管などの残存ホスゲンガスは反応槽に導入された。ホスゲンガスの導入総量は4900リットル(70.6kモル:1.038モル比)であった。
反応後の反応液の組成は次の通りであった。塩化水素含有量:0.13重量%、ホスゲン含有量:検出せず、ジメチルホルムアミド含有量:0.21重量%、無水プロピオン酸含有量:0.11重量%、色相:黄褐色、純度:酪酸クロライド99.71重量%、酪酸からの収率:97.43%
(実施例2)7.5立方メートルの反応槽を使用し、プロピオン酸5030リットル(d=0.993、5988kg、80.0kモル)、ジメチルホルムアミド61リットル(1.16モル%)、反応槽の内温35±0.5℃、ホスゲンガス導入速度66立方メートル/時で反応槽に約26時間を要して、実施例1に準じて反応させた。ホスゲンガスの予定導入量から予想される反応終点近くで反応槽の圧力が1分間に大気圧より1.6kPa急激に低くなり自動的にホスゲン導入管のバルブを閉止した。ホスゲンガスの導入総量は4912リットル(7033Kg:71.1kモル)であった。
反応後の反応液の組成は次の通りであった。塩化水素含有量:0.23重量%、ホスゲン含有量:検出せず、ジメチルホルムアミド含有量10.65重量%、プロピオン酸含有量:0重量%、無水プロピオン酸含有量:0.78重量%、色相:黄褐色、純度:プロピオン酸クロライド98.2重量%、プロピオン酸からの収率97.7%

Claims (7)

  1. 反応槽にホスゲンガスを導入するクロル化方法において、ホスゲンガスを反応槽内に導入し、副生するガスを吸引して反応槽内の圧力を大気圧より減圧した状態に保持して反応槽内の圧力を検知し、反応槽内の気圧が急激に低下した時点で、上記反応槽内へのホスゲンの導入を停止することを特徴とするクロル化方法。
  2. ホスゲンガスを略一定速度で反応槽に導入する請求項1に記載のクロル化方法。
  3. 反応槽内の圧力の低下速度が1分間当たり0.5kPa以上になったらホスゲンの導入を停止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクロル化方法。
  4. 反応槽内の圧力を大気圧より0.2kPaから1.0kPa減圧することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のクロル化方法。
  5. 上記クロル化方法は、有機カルボン酸を酸クロライドにする方法であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のクロル化方法。
  6. 反応槽にホスゲンガスを導入するクロル化方法の反応終点を検知する方法において、ホスゲンガスを反応槽内に導入し、副生するガスを吸引して反応槽内の圧力を大気圧より0.2kPaから1.0kPa減圧した状態に保持して反応槽内の圧力を検知し、反応槽内の気圧が急激に低下した時点で、クロル化方法の反応終点を検知する方法。
  7. ホスゲンガスを略一定速度で反応槽に導入することを特徴とする請求項6に記載のクロル化方法の反応終点を検知する方法。
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