JP2009191919A - 動力伝達制御装置および動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置 - Google Patents

動力伝達制御装置および動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】大型化や複雑化を招くことなく、駆動源と被駆動部材との間における伝達トルク容量を適宜に制御することができる動力伝達制御装置を提供する。
【解決手段】駆動源13と被駆動部材1,2との間の伝達トルクを制御する動力伝達制御装置において、遊星ローラ機構14と、その遊星ローラ機構14の第1回転体21および第2回転体22の少なくともいずれか一方と転動体24との間に設けられた隙間25に介在させられた磁性流体26と、その磁性流体26に作用させる磁気を制御して磁性流体26の流動性を変化させ遊星ローラ機構14の伝達トルク容量を制御する伝達トルク制御手段とを備え、駆動源13が遊星ローラ機構14のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結され、かつ被駆動部材1,2が遊星ローラ機構14の駆動源13が連結されない他のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結されている。
【選択図】 図2

Description

この発明は、複数の回転部材の間で伝達されるトルクを制御する動力伝達制御装置およびその動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置に関するものである。
近年、電気自動車の一形態として、車輪にモータを組み込んで車輪をモータで直接駆動するいわゆるインホイールモータ方式の車両が開発されている。このインホイールモータは、駆動輪の近傍に設けられて駆動輪に直接動力を伝達するものであるから、従来の車両に設けられている変速機やデファレンシャルなどの動力伝達機構を設ける必要がなくなり、車両の構成を簡素化することができる。その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された電動式車輪駆動装置は、電動モータとウェッジローラ型の摩擦ローラ式減速機とを一体的に組み合わせ、それら電動モータと摩擦ローラ式減速機とを、車輪を構成するホイールの内径側に設置した構成となっている。
特開2003−28254号公報
上記の特許文献1に記載されている電動式車輪駆動装置によれば、インホイールモータの出力トルクを、そのインホイールモータと共に車輪のホイール内に設置された摩擦ローラ式減速機で減速(すなわち増幅)することにより、インホイールモータとして高速型で小型・軽量のものを使用することができ、また、インホイールモータと車輪との間の動力伝達を摩擦ローラで行うことにより、運転時の騒音を低減することができる、とされている。
しかしながら、この特許文献1に記載されている電動式車輪駆動装置は、上記のようにインホイールモータの出力トルクを適切に減速して車輪に伝達することができるものの、その出力トルクの車輪への伝達を遮断するための構成に関しては考慮されていない。インホイールモータと車輪との間におけるトルク伝達を遮断するためには、それらインホイールモータと車輪との間に何らかのクラッチ機構を設ける必要があるが、インホイールモータと車輪との間に、具体的には、インホイールモータと減速機との間に、もしくは減速機と車輪との間に、例えば摩擦クラッチや電磁クラッチなどの周知のクラッチ機構を設置したとすると、装置構造の大型化あるいは複雑化を招いてしまう。
このように、例えば上記のインホイールモータなどの駆動源と、車輪などの被駆動部材との間におけるトルクの伝達状態もしくは伝達トルク容量を制御する装置において、装置の大型化や複雑化を伴うことなく駆動源と被駆動部材との間のトルク伝達を適宜に遮断できる構成を実現するためには、未だ改良の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、装置の大型化や複雑化を招くことなく、駆動源と被駆動部材との間における伝達トルク容量をトルク遮断状態(すなわち伝達トルク容量がゼロの状態)を含めて適宜に制御することができる動力伝達制御装置およびその動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、駆動源と被駆動部材との間で伝達されるトルクを制御する動力伝達制御装置において、中心軸線を中心に回転しかつ外周面がトルク伝達面となる第1回転体と、該第1回転体に対して同心円上に配置されかつ内周面がトルク伝達面となる第2回転体と、これらの回転体の間であって前記第1回転体の外周面および前記第2回転体の内周面の少なくともいずれか一方との間に隙間が設けられて配置された転動体と、前記第1回転体に対して同心円上に配置されかつ前記転動体を自転かつ公転自在に保持する第3回転体とを有する遊星ローラ機構と、前記隙間に介在させられるとともに、作用する磁気が増大することにより流動性が低下する磁性流体と、前記磁性流体に作用させる磁気を制御して前記流動性を変化させることにより前記隙間を介して相対する前記第1回転体および前記第2回転体の少なくともいずれか一方と、前記転動体との間における伝達トルク容量を制御する伝達トルク制御手段とを備え、前記駆動源が前記遊星ローラ機構のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結され、かつ前記被駆動部材が遊星ローラ機構の前記駆動源が連結されない他のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結されていることを特徴とする動力伝達制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記伝達トルク制御手段が、前記磁性流体に作用させる磁気を減少させることにより前記駆動源と前記被駆動部材との間の動力伝達を遮断する手段を含むことを特徴とする動力伝達制御装置である。
一方、請求項3の発明は、電動機と車輪との間で伝達されるトルクを制御する動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置において、中心軸線を中心に回転しかつ外周面がトルク伝達面となる第1回転体と、該第1回転体に対して同心円上に配置されかつ内周面がトルク伝達面となる第2回転体と、これらの回転体の間であって前記第1回転体の外周面および前記第2回転体の内周面の少なくともいずれか一方との間に隙間が設けられて配置された転動体と、前記第1回転体に対して同心円上に配置されかつ前記転動体を自転かつ公転自在に保持する第3回転体とを有する遊星ローラ機構と、前記隙間に介在させられるとともに、作用する磁気が増大することにより流動性が低下する磁性流体と、前記磁性流体に作用させる磁気を制御して前記流動性を変化させることにより前記隙間を介して相対する前記第1回転体および前記第2回転体の少なくともいずれか一方と、前記転動体との間における伝達トルク容量を制御する伝達トルク制御手段とを備え、前記電動機の回転軸が前記遊星ローラ機構のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結され、かつ前記車輪のホイールが前記遊星ローラ機構の前記電動機が連結されない他のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結されているとともに、それら前記電動機と前記遊星ローラ機構とが前記ホイールに内蔵されていることを特徴とする動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置である。
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記車両が、前記電動機の力行・回生状態を制御することにより該電動機が前記ホイールに内蔵されている電動機駆動輪に作用させる制動力を制御して前記車両の制動中における該電動機駆動輪の固定を抑制する電動機ABS装置を備え、前記伝達トルク制御手段が、前記電動機ABS装置が作動した際に前記電動機を力行する必要があると判断した場合に、前記磁性流体に作用させる磁気を減少させて前記電動機と前記電動機駆動輪との間の動力伝達を遮断する手段を含むことを特徴とする動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置である。
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記車両が、前記電動機駆動輪を機械的に制動する機械ブレーキ装置を備え、前記伝達トルク制御手段が、前記電動機ABS装置が作動して前記磁性流体に作用させる磁気を減少させる際に車速が予め定めた閾値以下の場合には、前記機械ブレーキ装置による制動力を減少させる手段を含むことを特徴とする動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置である。
そして、請求項6の発明は、請求項3の発明において、前記電動機が運転される際のモータ効率を求めるモータ効率算出手段と、前記モータ効率算出手段により求められた前記モータ効率と前記電動機に要求される指示トルクとに基づいて、前記電動機で該指示トルクを出力する場合に前記モータ効率が最大になる前記電動機の最大効率回転数を求めるモータ回転数算出手段とを更に備え、前記伝達トルク制御手段が、前記指示トルクを出力するように運転される前記電動機の回転数が、前記モータ回転数算出手段により求められた前記最大効率回転数に追従するように前記磁性流体に作用させる磁気を制御する手段を含むことを特徴とする動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置である。
したがって、請求項1の発明によれば、駆動源と、外部からの動力を受けて駆動される被駆動部材とが、第1ないし第3回転体の3つの回転要素を有する遊星ローラ機構を介して連結される。そしてその遊星ローラ機構は、第3回転体により保持されて第1回転体と第2回転体との間に配置される転動体と第1回転体との間に、もしくは転動体と第2回転体との間に、もしくは転動体と第1および第2回転体との間に、磁性流体が介在させられる隙間が設けられている。したがって、その隙間に介在させた磁性流体に作用する磁気が弱く磁性流体の流動性が十分に高い場合には、遊星ローラ機構の各回転要素の間では動力の伝達は行われない。そして隙間に介在させた磁性流体に作用する磁気が強くなり磁性流体の流動性が低下すると、遊星ローラ機構の各回転要素のトルク伝達面同士の間の摩擦力が増大し、遊星ローラ機構が第1ないし第3回転体を回転要素とする差動機構として機能する。
そのため、遊星ローラ機構に設けた隙間に介在させた磁性流体に対して作用させる磁気の強さを制御することにより、遊星ローラ機構を介して互いに連結される駆動源と被駆動部材との間の動力の伝達状態を、動力遮断状態と動力伝達状態とに切り替えて制御することができる。言い換えると、各回転要素のトルク伝達面同士が対向する部分の少なくともいずれか1個所に磁性流体が介在させられる隙間が設けられた遊星ローラ機構を、伝達トルク容量が可変なクラッチとして機能させることができ、それにより駆動源と被駆動部材との間の伝達トルク容量を適宜に変更することができる。したがって、新たに専用のクラッチ等を設けることなく、すなわち装置の大型化や複雑化を招くことなく、駆動源と被駆動部材との間の動力の伝達状態を制御する構成を容易に得ることができる。
また、請求項2の発明によれば、遊星ローラ機構に設けられた隙間に介在させた磁性流体へ作用させる磁気を弱くすることもしくはゼロにすることにより、駆動源と被駆動部材との間の動力伝達を容易に遮断することができる。
一方、請求項3の発明によれば、車両の電動機と車輪とが、第1ないし第3回転体の3つの回転要素を有する遊星ローラ機構を介して連結されるとともに、それら電動機と遊星ローラ機構とが車輪のホイール内に設置される。すなわち、車輪との間に遊星ローラ機構を備えたインホイールモータが構成される。そしてその遊星ローラ機構は、第3回転体により保持されて第1回転体と第2回転体との間に配置される転動体と第1回転体との間に、もしくは転動体と第2回転体との間に、もしくは転動体と第1および第2回転体との間に、磁性流体が介在させられる隙間が設けられている。したがって、その隙間に介在させた磁性流体に作用する磁気が弱く磁性流体の流動性が十分に高い場合には、遊星ローラ機構の各回転要素の間では動力の伝達は行われない。そして隙間に介在させた磁性流体に作用する磁気が強くなり磁性流体の流動性が低下すると、遊星ローラ機構の各回転要素のトルク伝達面同士の間の摩擦力が増大し、遊星ローラ機構が第1ないし第3回転体を回転要素とする差動機構として機能する。
そのため、遊星ローラ機構に設けた隙間に介在させた磁性流体に対して作用させる磁気の強さを制御することにより、遊星ローラ機構を介して互いに連結される電動機と車輪との間の動力の伝達状態を、動力遮断状態と動力伝達状態とに切り替えて制御することができる。言い換えると、各回転要素のトルク伝達面同士が対向する部分の少なくともいずれか1個所に磁性流体が介在させられる隙間が設けられた遊星ローラ機構を、伝達トルク容量が可変なクラッチとして機能させることができ、それにより電動機と車輪との間の伝達トルク容量を適宜に変更することができる。例えば遊星ローラ機構に設けられた隙間に介在させた磁性流体へ作用させる磁気を弱くすることもしくはゼロにすることにより、電動機と車輪との間の動力伝達を容易に遮断することができる。したがって、新たに専用のクラッチ等を設けることなく、すなわち装置の大型化や複雑化を招くことなく、電動機と車輪との間の動力の伝達状態を制御する構成を容易に得ることができる。
また、請求項4の発明によれば、電動機駆動輪に制動力を作用させた車両の制動中におけるその電動機駆動輪の固定を抑制する電動機ABS装置が作動した際に、例えば回転が固定された電動機駆動輪を車両の走行を安定させるための適切な回転数まで速やかに復帰させるために、電動機でトルクを出力する必要がある場合、すなわち電動機を力行させる必要がある場合には、遊星ローラ機構に設けられた隙間に介在させた磁性流体へ作用させる磁気が弱められもしくはゼロにされて、電動機と電動機駆動輪との間の動力伝達が遮断される。そのため、回転が固定された電動機駆動輪の回転数を復帰させるために電動機を力行する際に、一旦、電動機と電動機駆動輪との間の動力伝達が遮断されて電動機が電動機駆動輪の慣性トルクから解放されるので、その間に電動機の回転数を速やかに上昇させることができる。そして電動機の回転数を所望する回転数まで上昇させた後に、磁性流体へ作用させる磁気を強めて電動機と電動機駆動輪との間を動力伝達状態にすれば、電動機駆動輪の回転を速やかに復帰させることができ、電動機ABS装置による車両の走行安定化制御を適切に行うことができる。
また、請求項5の発明によれば、電動機ABS装置が作動した際に、電動機を力行させる必要がある場合であって、なおかつ車速が予め設定した閾値以下の低車速である場合には、遊星ローラ機構に設けられた隙間に介在させた磁性流体へ作用させる磁気が弱められもしくはゼロにされて、電動機と電動機駆動輪との間の動力伝達が遮断されるとともに、電動機駆動輪に設けられた機械ブレーキ装置による制動力が弱められもしくはゼロにされる。そのため、車速が低く電動機駆動輪よりも電動機の慣性トルクが大きい状態で電動機と電動機駆動輪との間の動力伝達が遮断された場合に、電動機駆動輪を機械ブレーキ装置で制動し続けることによる電動機駆動輪の固定を回避もしくは抑制することができる。
そして、請求項6の発明によれば、電動機を運転して車両を駆動する場合に、電動機のモータ効率と、電動機に要求される出力トルクの指令値である指示トルクとに基づいて、その指示トルクを電動機が出力する場合にモータ効率が最大になる最大効率回転数が求められる。そして電動機の回転制御と併せて、遊星ローラ機構に設けられた隙間に介在させた磁性流体へ作用させる磁気の強弱を制御することにより、出力トルクが指示トルクで一定で、回転数が最大効率回転数となるように電動機が運転される。そのため、電動機を最大効率回転数の近傍で運転することができ、電動機の消費電力を低減することができる。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明で対象とする動力伝達制御装置とそれを搭載した車両の構成および制御系統を図1に示す。この図1に示す車両Veは、左右の前輪1,2および左右の後輪3,4を有している。そして、前輪1,2および後輪3,4は、それぞれ、互いにもしくはそれぞれ独立してサスペンション機構(図示せず)を介して車両Veの車体Boに支持されていている。
この車両Veの駆動力源として、先ず、後輪3,4を駆動する駆動力源5が設けられている。具体的には、駆動力源5の出力側に、駆動力源5の出力トルクを変速する変速機6が配置され、その変速機6の出力側に、出力軸7およびデファレンシャル8ならびに左右の駆動軸9,10を介して左右の後輪3,4が連結されている。
駆動力源5としては、例えば、内燃機関または電動機の少なくとも一方を用いることができる。電動機としては、例えば電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有するモータ・ジェネレータを用いることが可能である。この実施例では、駆動力源5として、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの内燃機関であって、例えば電子制御式のスロットルバルブ(図示せず)を備え出力を電気的に自動制御可能なエンジン(E/G)5を用いた場合について説明する。
変速機6としては、手動変速機、あるいは自動変速機、あるいは無段変速機などの各種の変速機を用いることが可能である。この実施例では、変速機6として、設定される変速比を電気的に自動制御可能な自動変速機(A/T)6を用いた場合について説明する。
また、エンジン5の出力すなわち駆動力を後輪3,4にそれぞれ伝達する駆動軸9,10には、それぞれ制動装置11が設けられている。この制動装置11は、例えば、マスタシリンダ(図示せず)から圧送される油圧により、駆動軸9,10に機械的な制動力を作用させるブレーキシュー(図示せず)あるいはブレーキキャリパのピストン(図示せず)などを動作させるブレーキアクチュエータ12に接続されている。
一方、前輪1,2のホイール内部には、それぞれ電動機13および遊星ローラ機構14が組み込まれていている。すなわち、それら前輪1,2の電動機13は、いわゆるインホイールモータ13であり、インホイールモータ13のロータ軸と前輪1,2のホイールとが、遊星ローラ機構14を介して動力伝達可能に連結されている。
各インホイールモータ13は、例えば交流同期モータであり、インバータ15を介してバッテリ16に接続されている。そして各インホイールモータ13の駆動時には、バッテリ16の直流電力がインバータ15によって交流電力に変換され、その交流電力が各インホイールモータ13に供給されることにより各インホイールモータ13が力行されて、前輪1,2に駆動トルクが付与される。また、各インホイールモータ13は前輪1,2の回転エネルギを利用して回生制御することも可能である。すなわち、各インホイールモータ13の回生・発電時には、前輪1,2の回転(運動)エネルギが各インホイールモータ13によって電気エネルギに変換され、その際に生じる電力がインバータ15を介してバッテリ16に充電される。このとき、前輪1,2には回生・発電に基づく制動トルクが付与される。
各遊星ローラ機構14は、中心軸線を中心に回転しかつ外周面がトルク伝達面となる第1回転体と、その第1回転体に対して同心円上に配置されかつ内周面がトルク伝達面となる第2回転体と、これらの回転体の間に配置された転動体と、前記の第1回転体に対して同心円上に配置されかつ転動体を自転かつ公転自在に保持する第3回転体とを有する構成となっていて、この発明の動力伝達制御装置の主たる構成部分となっている。なお、この遊星ローラ機構14の詳細な構成の説明については後述する。
また、前輪1,2のホイールもしくはホイールと遊星ローラ機構14とを接続する駆動軸(図示せず)には、制動装置17が設けられている。この制動装置17は、前述の制動装置11と同様、例えば、マスタシリンダ(図示せず)から圧送される油圧により、前輪1,2に機械的な制動力を作用させるブレーキシュー(図示せず)あるいはブレーキキャリパのピストン(図示せず)などを動作させるブレーキアクチュエータ12に接続されている。したがって、この車両Veにおける前輪1,2が、インホイールモータ13により駆動されるこの発明における電動機駆動輪に相当し、また、前輪1,2にそれぞれ設けられてそれら前輪1,2を機械的に制動する制動装置17が、この発明における機械ブレーキ装置に相当している。
そして、上記のエンジン5、自動変速機6、ブレーキアクチュエータ12、インホイールモータ13、遊星ローラ機構14は、それらエンジン5の出力、あるいは自動変速機6の変速比、あるいはインホイールモータ13の力行・回生状態、あるいはブレーキアクチュエータ12の動作状態、あるいは後述する遊星ローラ機構14内の磁性流体に作用させる磁気などを制御する電子制御装置(ECU)18にそれぞれ接続されている。そして、エンジン5の出力は、例えば運転者によるアクセル操作(すなわち要求駆動力)に基づいて制御されるとともに、そのアクセル操作とは別に自動制御されることも可能になっている。また自動変速機6の変速比は、例えば車速と要求駆動力とに基づいて、あるいは運転者によるシフト操作に連動して制御されることが可能になっている。
また、各インホイールモータ13の回転を独立して制御することにより、前輪1,2に作用させる駆動力および制動力をそれぞれ独立して制御することができるようになっている。例えば、前輪1,2を制動する際に、前輪1もしくは前輪2の回転が制動力により固定されてしまうことを回避するためにインホイールモータ13を適宜に力行・回生制御すること、すなわちインホイールモータ13によるABS(anti lock braking system)制御を実行することができる。すなわち、各インホイールモータ13および電子制御装置18により、この発明におけるいわゆる電動機ABS装置が構成されている。
そして、ブレーキアクチュエータ12の動作状態は、運転者によるブレーキ操作に連動して制御されるとともに、そのブレーキ操作とは別に自動制御されることも可能になっている。すなわち、この車両Veは、上記のインホイールモータ13によるABS制御に対して、制動装置11,17によるいわゆる機械ブレーキ装置によるABS制御を実行することもできるように構成されている。
前述したように、この発明では、装置の大型化や複雑化を招くことなく、駆動源と被駆動部材との間におけるトルクの伝達状態をトルク遮断状態を含めて適宜に制御できる装置を提供することを目的としていて、そのために、上記の遊星ローラ機構14の構成に工夫がされている。その遊星ローラ機構14を中心として構成されるこの発明の動力伝達制御装置について、図2に基づいて説明する。
図2において、遊星ローラ機構14は、外周面が転動面とされた第1回転体21と、内周面が転動面とされた第2回転体22とが、同心円上に、かつ相対回転可能に配置され、それらの各回転体の間に、4個の転動体24が自転および公転できるように第3回転体23によって保持されて配置されている。これは、従来知られている遊星歯車機構における歯車を、摩擦接触によりトルク伝達し、もしくはトラクションオイルなどを介してトルク伝達する回転体や転動体に置き換えた構成の装置であり、したがって各回転体21,22,23を3つの回転要素としてこれらの回転要素が相互に差動回転するように構成されている。
第1回転体21は、外周の転動面21aもしくはトルク伝達面21aが真円もしくはこれに近い形状の円柱状もしくは円筒状の部材であり、回転軸として形成したものであってもよい。すなわち、この第1回転体21は、遊星歯車機構におけるサンギヤに相当するものであり、したがって以下の説明では、この第1回転体21をサンローラ21と記すことがある。
また、第2回転体22は、内周の転動面22aもしくはトルク伝達面22aが真円もしくはこれに近い形状の筒状の部材であり、好ましくは円筒状もしくはリング状に構成されている。すなわち、この第2回転体22は、遊星歯車機構におけるリングギヤに相当するものであり、したがって以下の説明では、この第2回転体22をリングローラ22と記すことがある。
さらに、転動体24は上記の第1回転体21と第2回転体22との間に挟み込まれて回転することにより、第1回転体21と第2回転体22との間でのトルク伝達を媒介するものであり、ローラや球体などによって構成することができ、あるいは相互にトルク伝達可能に接触した複数のローラを一対として複数対の転動体24を第1回転体21と第2回転体22との間に配置することができる。この転動体24は、自転かつ公転自在であって、第1回転体21と第2回転体22とに対して、同心円上に、かつ相対回転可能に配置された第3回転体23によって保持されている。すなわち、この転動体24は、遊星歯車機構におけるピニオンギヤに相当するものであり、したがって以下の説明では、この転動体24をピニオンローラ24と記すことがある。また、第3回転体23は、遊星歯車機構におけるキャリアに相当するものであり、したがって以下の説明では、この第3回転体23をキャリア23と記すことがある。
なお、これら「第1回転体(サンローラ)21」および「第2回転体(リングローラ)22」ならびに「第3回転体(キャリア)23」は、相対的な回転を行う部材を意味しており、したがって固定要素とされる場合には回転しない部材となることもある。
そして、この発明における遊星ローラ機構14は、互いに相対するサンローラ21の外周の転動面21aと各ピニオンローラ24の外周の転動面24aとの間に、隙間25が設けられている。すなわち、それらサンローラ21と各ピニオンローラ24とは、通常の状態では互いに摩擦接触しない位置に、言い換えると、通常の状態では互いにトルク伝達しない位置に、それぞれ配置されている。なお、各ピニオンローラ24とリングローラ22とは、互いに摩擦接触する位置に、言い換えると、互いにトルク伝達する位置に、それぞれ配置されている。またリングローラ22は、インホイールモータ13のケーシング(図示せず)などと共に、例えばサスペンション機構のアーム(図示せず)などに固定されていて、その回転が規制されている。
また、上記の隙間25には、磁性流体(もしくは磁気粘性流体)26が介在させられている。具体的には、遊星ローラ機構14の各ローラ21,22,24およびキャリア23を収容して保持するケーシング(図示せず)の内部に磁性流体26が充填されていて、隙間25に常時磁性流体26が介在するようになっている。
この磁性流体26は、従来知られているもので、例えばマグネタイトなどの磁性体を油や水溶液中に分散させた流体状の物質であって、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。この発明における磁性流体26は、摩擦接触する機械部品に対して潤滑および冷却機能を有する潤滑油に、上記のような磁性体を混合して分散させたものであって、磁気が印加されていない通常の状態では、所定の流動性を有していて潤滑油として機能するようになっている。そして、磁気が印加された状態では、その流動性が低下し、もしくは固化するようになっている。
また、上記のサンローラ21の回転軸であって、サンローラ21と一体回転するサンローラ軸21sに、電磁コイル27が取り付けられている。またこの電磁コイル27は、直流電源28と、ON・OFFスイッチおよび可変抵抗の機能を有するスイッチ機構29と共に電気回路を構成している。そしてスイッチ機構29は、前述の電子制御装置18に接続されていて、その電子制御装置18により、スイッチ機構29のスイッチの開閉状態および可変抵抗の抵抗値が制御されるようになっている。
さらに、サンローラ軸21sおよびサンローラ21は、いずれも磁性体によって形成されていて、それらサンローラ軸21sとサンローラ21とは互いに磁力の伝達が可能に連結されている。もしくはそれらサンローラ軸21sとサンローラ21とは一体に形成することもできる。そのため、スイッチ機構29を制御して電磁コイル27に通電した状態では、サンローラ軸21sおよびサンローラ21は電磁石となり磁気を発生するようになっている。したがって、電子制御装置18により電磁コイル27の通電量を制御することによって、サンローラ21を電磁石として機能させてそのサンローラ21から発生させる磁気の強さを制御することができる。例えば、スイッチ機構29をOFFの状態に制御してサンローラ21からは磁気が発生しない状態に制御することができる。またスイッチ機構29をONの状態にし、その抵抗値を増減させることにより、電磁コイル27の通電量を増減させてサンローラ21から発生させる磁気の強さを増減制御することができる。
そして、この遊星ローラ機構14のサンローラ21のサンローラ軸21sが、前述の図1に示したインホイールモータ13のロータ軸13sに動力伝達可能に連結されている。また、遊星ローラ機構14のキャリア23が、前輪(すなわち電動機駆動輪)1,2のホイール1w,2wに動力伝達可能に連結されている。
上記のように、インホイールモータ13のロータ軸13sと前輪1,2のホイール1w,2wとを互いに連結する遊星ローラ機構14が、サンローラ21とピニオンローラ24との間に磁性流体26が介在させられる隙間25が設けられて、サンローラ21を電磁石として機能させてそのサンローラ21から発生する磁気の強弱を制御できるように構成されていることにより、隙間25に介在させられている磁性流体26に作用させる磁気を制御して、磁性流体26の流動性を変化させることができる。
隙間25に介在させられている磁性流体26の流動性が低下すると、サンローラ21の転動面21aと各ピニオンローラ24の転動面24aとの間で摩擦力が発生し、その結果、サンローラ21と各ピニオンローラ24との間で、すなわちサンローラ21とキャリア23との間でトルクの伝達を行うことが可能になる。
すなわち、サンローラ21のサンローラ軸21sに設けられた電磁コイル27への通電を停止することにより、磁性流体26への磁気の印加を停止して磁性流体26を通常の所定の流動性を有する状態にして、サンローラ21とキャリア23との間のトルクの伝達を遮断した状態にすることができる。一方、電磁コイル27へ通電することにより、磁性流体26へ磁気を印可して磁性流体26の流動性を低下させた状態にして、サンローラ21とキャリア23との間でトルクの伝達が可能な状態にすることができる。さらに、電磁コイル27への通電量を制御することにより、磁性流体26へ印可する磁気の強弱を制御して磁性流体26の流動性を変化させて、サンローラ21とキャリア23との間の伝達トルク容量を変化させることができる。
したがって、上記のサンローラ21およびサンローラ軸21s、およびサンローラ軸21sに設けられた電磁コイル27、および電磁コイル27と電気回路を構成する直流電源28およびスイッチ機構29、そしてスイッチ機構29の動作を制御する電子制御装置18等が、この発明における伝達トルク制御手段として機能している。そして、その伝達トルク制御手段と、上記のようにサンローラ21とピニオンローラ24との間の隙間25に磁性流体26を介在させた遊星ローラ機構14とによって、駆動源としてのインホイールモータ13と、被駆動部材としての前輪1,2のホイール1w,2wとの間で伝達されるトルクを制御するこの発明における動力伝達制御装置が構成されている。
(第1の制御例)
つぎに、上記のように構成されたこの発明の動力伝達制御装置を搭載した車両Veの制御例を説明する。図3は、この発明の動力伝達制御装置を搭載した車両Veの制御装置による第1の制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。図3において、先ず、インホイールモータ13によるABS制御(モータABS)が開始され、その制御が実行中であるか否かが判断される(ステップS11)。前述したように、この発明における車両Veは、制動装置11,17すなわち機械ブレーキ装置の動作を自動制御することによるABS制御に加えて、インホイールモータ13の力行・回生状態を自動制御することによるABS制御(モータABS)を実行することができるように構成されている。ここでは、インホイールモータ13によるABS制御の実行状態について判断される。
インホイールモータ13によるABS制御が未だ開始されていないことにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。これに対して、インホイールモータ13によるABS制御が開始されたこと、もしくは実行中であることにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS12へ進み、インホイールモータ13を力行制御する必要があるか否かが判断される。
インホイールモータ13によるABS制御が実行される場合、車輪(すなわち電動機駆動輪)1,2の回転数や回転の固定状態に応じて、インホイールモータ13の回転が力行状態もしくは回生状態に適宜切り替えられて制御される。例えば車輪1,2が制動されてその回転が固定され、もしくは車速に対して車輪1,2の回転数が低下し過ぎて、車両Veの走行安定性や操舵性が低下する場合には、車輪1,2への制動を解除するとともに、車輪1,2に駆動トルクを付与して、すなわちインホイールモータ13を力行制御して、車輪1,2の回転数が車両Veの走行を安定させる所定の回転数まで上昇させられる。
この場合、インホイールモータ13と車輪1,2との間が動力伝達状態のままで、インホイールモータ13を力行制御して車輪1,2に回転数を上昇させるとすれば、車輪1,2の慣性トルクがインホイールモータ13に負荷として作用することになり、車輪1,2を所定の回転数まで上昇させるのに要する時間が長くなってしまう。そこで、この発明の制御装置による第1の制御例では、インホイールモータ13によるABS制御の実行中に、インホイールモータ13を力行制御する必要がある場合に、インホイールモータ13と車輪1,2との動力伝達経路の間に設けられた遊星ローラ機構14を動力遮断状態すなわち動力伝達が不可能な状態に制御してインホイールモータ13を車輪1,2の慣性トルクから一旦解放し、先ずインホイールモータ13の回転数を所定の回転数まで速やかに上昇させることにより、インホイールモータ13によるABS制御を適切に実行できるように構成されている。
したがって、インホイールモータ13を力行制御する必要があることにより、ステップS12で肯定的に判断された場合には、ステップS13へ進み、磁性流体26への印加電流がOFFにされる。すなわち、遊星ローラ機構14の隙間25に介在させられた磁性流体26に磁気を作用させるためにサンローラ21の電磁コイル27に印可される電流がゼロにされる。その結果、サンローラ21の転動面21aと各ピニオンローラ24の転動面24aとの間の隙間25に介在させられている磁性流体26に磁気が作用しなくなり、磁性流体26の流動性が増大して、サンローラ21と各ピニオンローラ24との間、すなわちサンローラ21とキャリア23との間の動力伝達が遮断される。すなわち、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断される。
一方、インホイールモータ13を力行制御する必要がないことにより、ステップS12で否定的に判断された場合には、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。なお、インホイールモータ13による通常のABS制御は、別ルーチンで実行されることになる。
前記のステップS13で、電磁コイル27に印可される電流がゼロにされて、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断されると、インホイールモータ13の目標回転数Nm0が、その時点の車輪1,2の実回転数Nwに相当する値Nm0'に変換され、その変換された目標回転数値Nm0'に基づいてインホイールモータ13の回転が制御される(ステップS14)。車輪1,2の実回転数Nwに相当する値Nm0'とは、仮にインホイールモータ13と車輪1,2との間が動力伝達状態である場合における遊星ローラ機構14のローラ比から、車輪1,2を回転数Nwで駆動する際のインホイールモータ13の回転数Nm0'のことである。
インホイールモータ13の回転が目標回転数Nm0'で制御されると、車輪1,2の実回転数Nwに相当するインホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が、予め設定した閾値αを超えて小さくなったか否かが判断される(ステップS15)。この場合の閾値αは、例えば、実験的あるいは設計的に予め設定した一定値であってもよく、あるいは、予め閾値αと車速vとの関係を表すマップを設定しておき、そのマップから車速vをパラメータとして閾値αを求めてもよい。
インホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が、未だ閾値αを超えて小さくなっていない、すなわち実回転数Nmと車速vとの偏差が未だ閾値αよりも大きいことにより、このステップS15で否定的に判断された場合は、前述のステップS13に戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、上記のステップS13ないしS15の制御が、インホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が閾値αを超えて小さくなるまで、繰り返し実行される。
この場合、上記のようにインホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断されて、インホイールモータ13に車輪1,2の慣性トルクによる負荷が作用しないようになっているため、インホイールモータ13の回転数を速やかに上昇させることができ、上記のステップS13ないしS15の制御、すなわちインホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差を閾値αよりも小さくする制御を速やかに完了させることができる。
そして、インホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が、閾値αを超えて小さくなった、すなわち実回転数Nmと車速vとの偏差が閾値αよりも小さくなったことにより、ステップS15で肯定的に判断された場合には、ステップS16へ進み、磁性流体26への印加電流がONにされる。すなわち、サンローラ21の電磁コイル27に電流が印加されて、遊星ローラ機構14の隙間25に介在させられた磁性流体26に磁気が作用させられる。その結果、磁性流体26の流動性が低下して、サンローラ21と各ピニオンローラ24との間、すなわちサンローラ21とキャリア23との間の動力伝達が可能になる。すなわち、インホイールモータ13と車輪1,2と間が、遊星ローラ機構14のサンローラ21とキャリア23との間のローラ比により変速される状態で動力伝達可能に連結される。
したがって、回転数が上昇させられた状態のインホイールモータ13と車輪1,2とが動力伝達可能に連結されて、その結果、車輪1,2の回転数が所望する回転数まで速やかに上昇させられる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
(第2の制御例)
図4は、この発明の動力伝達制御装置を搭載した車両Veの制御装置による第2の制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。この第2の制御例は、車速が遅い状態で、インホイールモータ13によるABS制御が実行される際に、回転が固定された車輪1,2の回転数を上昇させるためにインホイールモータ13を力行制御させる場合に、一旦、遊星ローラ機構14の磁性流体26に作用させる磁気を解消させてインホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達を遮断し、インホイールモータ13の回転数を上昇させる場合に、インホイールモータ13と車輪1,2との慣性トルクの大きさの違いを考慮して、機械式の制動装置17を適宜に制御するようにした制御例である。
図4において、先ず、インホイールモータ13によるABS制御(モータABS)が開始され、その制御が実行中であるか否かが判断される(ステップS21)。インホイールモータ13によるABS制御が未だ開始されていないことにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。これに対して、インホイールモータ13によるABS制御が開始されたこと、もしくは実行中であることにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、ステップS22へ進み、インホイールモータ13を力行制御する必要があるか否かが判断される。
前述の第1の制御例の場合と同様に、インホイールモータ13によるABS制御の実行中に、インホイールモータ13を力行制御する必要がある場合に、インホイールモータ13と車輪1,2との動力伝達経路の間に設けられた遊星ローラ機構14を動力遮断状態してインホイールモータ13を車輪1,2の慣性トルクから一旦解放し、先ずインホイールモータ13の回転数を所定の回転数まで速やかに上昇させる。
したがって、インホイールモータ13を力行制御する必要があることにより、ステップS22で肯定的に判断された場合には、ステップS23へ進み、磁性流体26への印加電流がOFFにされる。すなわち、遊星ローラ機構14の隙間25に介在させられた磁性流体26に磁気を作用させるためにサンローラ21の電磁コイル27に印可される電流がゼロにされる。その結果、サンローラ21の転動面21aと各ピニオンローラ24の転動面24aとの間の隙間25に介在させられている磁性流体26に磁気が作用しなくなり、磁性流体26の流動性が増大して、サンローラ21と各ピニオンローラ24との間、すなわちサンローラ21とキャリア23との間の動力伝達が遮断される。すなわち、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断される。
一方、インホイールモータ13を力行制御する必要がないことにより、ステップS22で否定的に判断された場合には、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。なお、インホイールモータ13による通常のABS制御は、別ルーチンで実行されることになる。
前記のステップS23で、電磁コイル27に印可される電流がゼロにされて、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断されると、その時点の車速vが、予め設定された閾値β以下であるか否かが判断される(ステップS24)。
上記のように、インホイールモータ13によるABS制御の実行中に、インホイールモータ13を力行制御してその回転数を速やかに上昇させるために、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達を遮断する際に、車両Veが、例えば予め実験的にもしくは設計的に求めた閾値βよりも遅い低車速で走行している場合は、車輪1,2の慣性トルクよりもインホイールモータ13の慣性トルクの方が大きい場合がある。その場合、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断されると、車輪1,2においては、インホイールモータ13の慣性トルクから解放された状態になり、その際に制動装置17による制動力を車輪1,2のそのまま作用し続けたとすると、車輪1,2の回転が固定されてしまう可能性がある。そこで、この発明の制御装置による第2の制御例では、所定の低車速で走行中の場合には、上記のように磁性流体26に作用させる磁気を解除してインホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達を遮断するとともに、制動装置17による制動力も解除するように制御される。
したがって、車速vが閾値β以下であることにより、このステップS24で肯定的に判断された場合は、ステップS25へ進み、制動装置17が解放するように制御された後に、インホイールモータ13の目標回転数Nm0が、その時点の車輪1,2の実回転数Nwに相当する値Nm0'に変換され、その変換された目標回転数値Nm0'に基づいてインホイールモータ13の回転が制御される(ステップS26)。一方、車速vが閾値βよりも速いことにより、ステップS24で否定的に判断された場合には、ステップS25の制御を行わずに、上記のステップS26へ進む。
インホイールモータ13の回転が目標回転数Nm0'で制御されると、車輪1,2の実回転数Nwに相当するインホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が、予め設定した閾値αを超えて小さくなったか否かが判断される(ステップS27)。
インホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が、未だ閾値αを超えて小さくなっていない、すなわち実回転数Nmと車速vとの偏差が未だ閾値αよりも大きいことにより、このステップS27で否定的に判断された場合は、前述のステップS23に戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、上記のステップS23ないしS27の制御が、インホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が閾値αを超えて小さくなるまで、繰り返し実行される。
この場合、上記のようにインホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断されて、インホイールモータ13に車輪1,2の慣性トルクによる負荷が作用しないようになっているため、インホイールモータ13の回転数を速やかに上昇させることができ、上記のステップS23ないしS27の制御、すなわちインホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差を閾値αよりも小さくする制御を速やかに完了させることができる。
また、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達が遮断された際に、車速が閾値βよりも遅い低車速の状態で、車輪1,2よりもインホイールモータ13の慣性トルクが大きい場合であっても、制動装置17による制動力も解放されているので、制動装置17の制動力により車輪1,2の回転が固定されてしまうことを回避することができる。
インホイールモータ13の実回転数Nmと車速vとの偏差が、閾値αを超えて小さくなった、すなわち実回転数Nmと車速vとの偏差が閾値αよりも小さくなったことにより、ステップS27で肯定的に判断された場合には、ステップS28へ進み、磁性流体26への印加電流がONにされる。すなわち、サンローラ21の電磁コイル27に電流が印加されて、遊星ローラ機構14の隙間25に介在させられた磁性流体26に磁気が作用させられ、インホイールモータ13と車輪1,2と間が、遊星ローラ機構14のサンローラ21とキャリア23との間のローラ比により変速される状態で動力伝達可能に連結される。その結果、回転数が上昇させられた状態のインホイールモータ13と車輪1,2とが動力伝達可能に連結されて、車輪1,2の回転数が所望する回転数まで速やかに上昇させられる。
つづいて、制動装置17が解放されているか否かが判断される(ステップS29)。制動装置17の解放が既に終了していること、すなわち既に制動装置17により車輪1,2に制動力が作用させられていることにより、このステップS29で否定的に判断された場合は、このルーチンを一旦終了する。
そして、制動装置17が未だ解放されていることにより、ステップS29で肯定的に判断された場合には、ステップS30へ進み、制動装置17の解放が終了させられる。すなわち制動装置17により車輪1,2へ制動力が作用させられる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
(第3の制御例)
図5は、この発明の動力伝達制御装置を搭載した車両Veの制御装置による第3の制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。この第3の制御例は、上記のように構成されたこの発明の動力伝達制御装置が、磁性流体26に作用させる磁気の強さを制御することにより、遊星ローラ機構14の入力要素と出力要素との間の伝達トルク容量を変化させることができる機能を有していることを利用して、その動力伝達制御装置を搭載した車両Veのインホイールモータ13を常にモータ効率の良い領域で運転させるようにした制御例である。
図5において、先ず、インホイールモータ13の実回転数Nmと、インホイールモータ13に対する指示トルクTm0が読み込まれる(ステップS31)。ここで、指示トルクTm0は、車両Veの要求駆動量等に基づいてインホイールモータ13に要求される出力トルクの指令値である。
ついで、インホイールモータ13の実回転数Nmと指示トルクTm0から、その時点のインホイールモータ13のモータ効率ηmが算出される(ステップS32)。これは、インホイールモータ13の性能諸元等を基に算出することができる。
インホイールモータ13のモータ効率ηmが算出されると、インホイールモータ13を現在の指示トルクTm0で運転する場合に、モータ効率ηmの向上が望めるインホイールモータ13の回転数領域が存在するか否かが判断される(ステップS33)。この制御は、例えば図6に示すような、モータ効率ηmと、モータ回転数NmおよびモータトルクTmとの関係を示したモータ効率マップから、現在の指示トルクTm0のレベルにおいてモータ効率ηmがより良い回転数領域の有無を判断することにより実行することができる。
指示トルクTm0で運転する場合に、モータ効率ηmの向上が望めるインホイールモータ13の回転数領域が存在しないことにより、このステップS33で否定的に判断された場合は、すなわち、その時点でインホイールモータ13が運転されている回転数領域が、モータ効率ηmが最良であると判断でき、特にこの第3の制御例で示す制御を行う必要がないため、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、指示トルクTm0で運転する場合に、モータ効率ηmの向上が望めるインホイールモータ13の回転数領域が存在することにより、ステップS33で肯定的に判断された場合には、ステップS34へ進み、上記のモータ効率マップから、指示トルクTm0で運転した場合に、モータ効率ηmが最大になるインホイールモータ13の最大効率回転数Nm1が求められ、その最大効率回転数Nm1がインホイールモータ13の回転を制御する際の指示回転数Nm1として設定される。
そして、インホイールモータ13の回転数Nmが、上記のステップS34で求められた指示回転数Nm1に追従するように、磁性流体26に作用させる磁気がフィードバック制御される(ステップS35)。具体的には、磁性流体26に作用させる磁気を制御するためにサンローラ21の磁気コイル27に印加する電流値がフィードバック制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
なお、上記のステップS35の制御では、磁性流体26に作用させる磁気を変化させて遊星ローラ機構14の伝達トルク容量を変化させるため、すなわち遊星ローラ機構14の入力側と出力側との間の変速比を変化させるために、磁気コイル27に印可する電流値をフィードバック制御する例を示しているが、磁気コイル27に印可する電流値に対応する遊星ローラ機構14の入力側と出力側との間の変速比を、予め実験的に求めておくことにより、上記のステップS35のフィードバック制御に代えてフィードフォワード制御を行うことも可能である。
このように、磁性流体26に作用させる磁気を制御して遊星ローラ機構14の入力側と出力側との間、すなわちインホイールモータ13と車輪1,2との間の変速比を無段階に変化させることにより、インホイールモータ13を、その出力トルクTmを一定に維持させた状態で回転数Nmを無段階に変化させて、モータ効率ηmが良好な領域で運転することができ、インホイールモータ13の消費電力を抑制することができる。
ここで、上述した具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS13,S16,S23,S28,S35の機能的手段が、この発明の伝達トルク制御手段に相当する。また、ステップS33の機能的手段が、この発明のモータ効率算出手段に相当し、ステップS34の機能的手段が、この発明のモータ回転数算出手段に相当する。
以上のように、この発明による動力伝達制御装置、およびその動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置によれば、例えば、インホイールモータ13などの駆動源と、車輪1,2などの被駆動部材とが、サンローラ21,リングローラ22,キャリア23の3つの回転要素を有する遊星ローラ機構14を介して連結される。そしてその遊星ローラ機構14は、上記の実施例では、キャリア23により保持されてサンローラ21とリングローラ22との間に配置されるピニオンローラ24との間に、磁性流体26が介在させられる隙間25が設けられている。したがって、その隙間25に介在させた磁性流体26に作用する磁気が弱く磁性流体26の流動性が十分に高い場合には、遊星ローラ機構14の各回転要素の間では動力の伝達は行われない。そして隙間25に介在させた磁性流体26に作用する磁気が強くなり磁性流体26の流動性が低下すると、遊星ローラ機構14の各回転要素のトルク伝達面同士、具体的にはサンローラ21のトルク伝達面21aとピニオンローラ24のトルク伝達面24aとの間の摩擦力が増大し、遊星ローラ機構14がサンローラ21およびリングローラ22ならびにキャリア23を回転要素とする差動機構として機能する。
そのため、遊星ローラ機構14に設けた隙間25に介在させた磁性流体25に対して作用させる磁気の強さを制御することにより、遊星ローラ機構14を介して互いに連結されるインホイールモータ13と車輪1,2との間の動力の伝達状態を、動力遮断状態と動力伝達状態とに切り替えて制御することができる。言い換えると、サンローラ21とピニオンローラ24とのトルク伝達面21a,24a同士が対向する部分に磁性流体26が介在させられる隙間25が設けられた遊星ローラ機構14を、伝達トルク容量が可変なクラッチとして機能させることができる。その結果、インホイールモータ13と車輪1,2との間の伝達トルク容量を適宜に変更することができる。したがって、新たに専用のクラッチ等を設けることなく、すなわち装置の大型化や複雑化を招くことなく、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力の伝達状態を制御する構成を容易に得ることができる。
また、遊星ローラ機構14に設けられた隙間25に介在させた磁性流体26へ作用させる磁気を弱くすることもしくはゼロにすること、具体的には、サンローラ21およびサンローラ軸21sに設けられた磁気コイル27へ印可する電流を低下させることもしくはゼロにすることにより、インホイールモータ13と車輪1,2との間の動力伝達を容易に遮断することができる。
また、インホイールモータ13が内蔵された車輪1,2すなわち電動機駆動輪1,2に制動力を作用させて、車両Veを制動している際の電動機駆動輪1,2の固定を抑制する電動機ABS装置が作動した際に、例えば回転が固定された電動機駆動輪1,2を車両Veの走行を安定させるための適切な回転数まで速やかに復帰させるために、インホイールモータ13でトルクを出力する必要がある場合、すなわちインホイールモータ13を力行させる必要がある場合には、遊星ローラ機構14に設けられた隙間25に介在させた磁性流体26へ作用させる磁気が弱められもしくはゼロにされて、インホイールモータ13と電動機駆動輪1,2との間の動力伝達が遮断される。そのため、回転が固定された電動機駆動輪1,2の回転数を復帰させるためにインホイールモータ13を力行させてその回転数を上昇させる場合に、一旦、インホイールモータ13と電動機駆動輪1,2との間の動力伝達が遮断されてインホイールモータ13が電動機駆動輪1,2の慣性トルクから解放されるので、その間にインホイールモータ13の回転数を速やかに上昇させることができる。そしてインホイールモータ13の回転数を所望する回転数まで上昇させた後に、磁性流体26へ作用させる磁気を強めてインホイールモータ13と電動機駆動輪1,2との間を動力伝達状態にすれば、電動機駆動輪1,2の回転を速やかに復帰させることができ、電動機ABS装置による車両Veの走行安定化制御を適切に行うことができる。
また、電動機ABS装置が作動した際に、インホイールモータ13を力行させる必要がある場合であって、なおかつ車速vが予め設定した閾値β以下の低車速である場合には、遊星ローラ機構14に設けられた隙間25に介在させた磁性流体26へ作用させる磁気が弱められもしくはゼロにされて、インホイールモータ13と電動機駆動輪1,2との間の動力伝達が遮断されるとともに、電動機駆動輪1,2に設けられた機械式のブレーキ装置である制動装置17による制動力が弱められもしくはゼロにされる。そのため、車速vが低く電動機駆動輪1,2よりもインホイールモータ13の慣性トルクが大きい状態でインホイールモータ13と電動機駆動輪1,2との間の動力伝達が遮断された場合に、電動機駆動輪1,2を制動装置17で制動し続けることによる電動機駆動輪1,2の固定を回避もしくは抑制することができる。
そして、インホイールモータ13を運転して車両Veを駆動する場合に、インホイールモータ13のモータ効率ηmと、インホイールモータ13に要求される出力トルクの指令値である指示トルクTm0とに基づいて、その指示トルクTm0をインホイールモータ13が出力する場合にモータ効率ηmが最大になる最大効率回転数Nm1が求められる。そしてインホイールモータ13の回転制御と併せて、遊星ローラ機構14に設けられた隙間25に介在させた磁性流体26へ作用させる磁気の強弱を制御することにより、出力トルクが指示トルクTm0で一定で、回転数が最大効率回転数Nm1となるようにインホイールモータ13が運転される。そのため、インホイールモータ13を最大効率回転数Nm1の近傍で運転することができ、インホイールモータ13の消費電力を低減することができる。
なお、この発明は、上記の具体例に限定されないのであって、具体例では、磁性流体26を介在させるために、遊星ローラ機構14の互いに相対するサンローラ21のトルク伝達面21aとピニオンローラ24のトルク伝達面24aとの間に隙間25を設けた例を示しているが、この磁性流体26を介在させるための隙間25は、例えば、互いに相対するリングローラ22のトルク伝達面22aとピニオンローラ24のトルク伝達面24aとの間に設けられてもよく、あるいは、互いに相対するサンローラ21のトルク伝達面21aとピニオンローラ24のトルク伝達面24aとの間、および互いに相対するリングローラ22のトルク伝達面22aとピニオンローラ24のトルク伝達面24aとの間の両方に隙間25を設けることもできる。
また、上記の具体例では、インホイールモータ13すなわち駆動源および車輪1,2すなわち被駆動部材と、遊星ローラ機構14との連結が、遊星ローラ機構14のサンローラ21と駆動源とが動力伝達可能に連結され、遊星ローラ機構14のキャリア23と被駆動部材とが動力伝達可能に連結され、遊星ローラ機構14のリングローラ22が固定要素となっている例を示している。この場合、遊星ローラ機構14の磁性流体26に磁気が作用していて遊星ローラ機構14が動力伝達状態にある際には、サンローラ21に入力された駆動源のトルクが減速されてキャリア23を介して被駆動部材へ伝達される。すなわち、遊星ローラ機構14が減速機として機能することになる。
これに対して、駆動源および被駆動部材と遊星ローラ機構14との連結を、上記の具体例と反対にすることもできる。すなわち、遊星ローラ機構14のキャリア23と駆動源とが動力伝達可能に連結され、遊星ローラ機構14のサンローラ21と被駆動部材とが動力伝達可能に連結され、遊星ローラ機構14のリングローラ22を固定要素としてもよい。この場合、遊星ローラ機構14が動力伝達状態にある際には、キャリア23に入力された駆動源のトルクが増速されてサンローラ21を介して被駆動部材へ伝達される。すなわち、遊星ローラ機構14が増速機として機能することになる。あるいは、これら以外の組み合わせで連結されてもよい。すなわち、駆動源が、遊星ローラ機構14のサンローラ21およびリングローラ22ならびにキャリア23の3つの回転要素のうちのいずれか1つの回転要素に動力伝達可能に連結され、かつ被駆動部材が、遊星ローラ機構14の3つの回転要素のうち、駆動源が連結される回転要素以外の他の2つのうちのいずれか一方に動力伝達可能に連結された構成であればよい。
また、この発明で対象とする車両Veは、少なくとも前輪1,2と後輪3,4とが、それぞれ独立して駆動力および制動力を作用させることができる構成であればよい。例えば、前輪1,2にインホイールモータがそれぞれ設けられるとともに、後輪3,4にもインホイールモータがそれぞれ設けられた四輪駆動車の構成であってもよい。
この発明の動力伝達制御装置を適用可能な車両の構成および制御系統を模式的に示す概念図である。 この発明の動力伝達制御装置の構成および制御系統を説明するための模式図である。 この発明の制御装置による第1の制御例を説明するためのフローチャートである。 この発明の制御装置による第2の制御例を説明するためのフローチャートである。 この発明の制御装置による第3の制御例を説明するためのフローチャートである。 図5のフローチャートに示す制御例において用いられるマップの一例を説明するための模式図である。
符号の説明
1,2…前輪(被駆動部材,電動機駆動輪)、 1w,2w…ホイール、 3,4…後輪、 5…エンジン、 12…ブレーキアクチュエータ、 13…インホイールモータ(駆動源,電動機)、 13s…ロータ軸(回転軸)、 14…遊星ローラ機構、 15…インバータ、 16…バッテリ、 17…制動装置(機械ブレーキ装置)、 18…電子制御装置(ECU)、 21…サンローラ(第1回転体)、 21a,22a,24a…転動面(トルク伝達面)、 22…リングローラ(第2回転体)、 23…キャリア(第3回転体)、 24…ピニオンローラ(転動体)、 28…直流電源、 29…スイッチ機構、 Ve…車両。

Claims (6)

  1. 駆動源と被駆動部材との間で伝達されるトルクを制御する動力伝達制御装置において、 中心軸線を中心に回転しかつ外周面がトルク伝達面となる第1回転体と、該第1回転体に対して同心円上に配置されかつ内周面がトルク伝達面となる第2回転体と、これらの回転体の間であって前記第1回転体の外周面および前記第2回転体の内周面の少なくともいずれか一方との間に隙間が設けられて配置された転動体と、前記第1回転体に対して同心円上に配置されかつ前記転動体を自転かつ公転自在に保持する第3回転体とを有する遊星ローラ機構と、
    前記隙間に介在させられるとともに、作用する磁気が増大することにより流動性が低下する磁性流体と、
    前記磁性流体に作用させる磁気を制御して前記流動性を変化させることにより前記隙間を介して相対する前記第1回転体および前記第2回転体の少なくともいずれか一方と、前記転動体との間における伝達トルク容量を制御する伝達トルク制御手段と
    を備え、
    前記駆動源が前記遊星ローラ機構のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結され、かつ前記被駆動部材が遊星ローラ機構の前記駆動源が連結されない他のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結されていることを特徴とする動力伝達制御装置。
  2. 前記伝達トルク制御手段は、前記磁性流体に作用させる磁気を減少させることにより前記駆動源と前記被駆動部材との間の動力伝達を遮断する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達制御装置。
  3. 電動機と車輪との間で伝達されるトルクを制御する動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置において、
    中心軸線を中心に回転しかつ外周面がトルク伝達面となる第1回転体と、該第1回転体に対して同心円上に配置されかつ内周面がトルク伝達面となる第2回転体と、これらの回転体の間であって前記第1回転体の外周面および前記第2回転体の内周面の少なくともいずれか一方との間に隙間が設けられて配置された転動体と、前記第1回転体に対して同心円上に配置されかつ前記転動体を自転かつ公転自在に保持する第3回転体とを有する遊星ローラ機構と、
    前記隙間に介在させられるとともに、作用する磁気が増大することにより流動性が低下する磁性流体と、
    前記磁性流体に作用させる磁気を制御して前記流動性を変化させることにより前記隙間を介して相対する前記第1回転体および前記第2回転体の少なくともいずれか一方と、前記転動体との間における伝達トルク容量を制御する伝達トルク制御手段と
    を備え、
    前記電動機の回転軸が前記遊星ローラ機構のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結され、かつ前記車輪のホイールが前記遊星ローラ機構の前記電動機が連結されない他のいずれか1つの回転体に動力伝達可能に連結されているとともに、それら前記電動機と前記遊星ローラ機構とが前記ホイールに内蔵されている
    ことを特徴とする動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置。
  4. 前記車両は、前記電動機の力行・回生状態を制御することにより該電動機が前記ホイールに内蔵されている電動機駆動輪に作用させる制動力を制御して前記車両の制動中における該電動機駆動輪の固定を抑制する電動機ABS装置を備え、
    前記伝達トルク制御手段は、前記電動機ABS装置が作動した際に前記電動機を力行する必要があると判断した場合に、前記磁性流体に作用させる磁気を減少させて前記電動機と前記電動機駆動輪との間の動力伝達を遮断する手段を含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置。
  5. 前記車両は、前記電動機駆動輪を機械的に制動する機械ブレーキ装置を備え、
    前記伝達トルク制御手段は、前記電動機ABS装置が作動して前記磁性流体に作用させる磁気を減少させる際に車速が予め定めた閾値以下の場合には、前記機械ブレーキ装置による制動力を減少させる手段を含む
    ことを特徴とする請求項4に記載の動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置。
  6. 前記電動機が運転される際のモータ効率を求めるモータ効率算出手段と、
    前記モータ効率算出手段により求められた前記モータ効率と前記電動機に要求される指示トルクとに基づいて、前記電動機で該指示トルクを出力する場合に前記モータ効率が最大になる前記電動機の最大効率回転数を求めるモータ回転数算出手段と
    を更に備え、
    前記伝達トルク制御手段は、前記指示トルクを出力するように運転される前記電動機の回転数が、前記モータ回転数算出手段により求められた前記最大効率回転数に追従するように前記磁性流体に作用させる磁気を制御する手段を含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の動力伝達制御装置を搭載した車両の制御装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013085376A (ja) * 2011-10-11 2013-05-09 Toyota Motor Corp 車両の駆動力制御装置
CN103335085A (zh) * 2013-07-17 2013-10-02 重庆大学 一种可换向磁流变无级变矩器
JP2014043198A (ja) * 2012-08-28 2014-03-13 Fuji Heavy Ind Ltd 回収装置および回収方法
CN110925380A (zh) * 2019-12-06 2020-03-27 山东科技大学 基于剪切-挤压效应的行星式磁流变传动装置

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