JP2004322753A - 車両の左右輪駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の小型化が図られた車両の左右輪駆動装置を提供する。
【解決手段】原動機の動力を差動減速機を介して左右車輪に伝達する車両の左右輪駆動装置において、車体に対して回転可能に支持されたアウタロータ11(第2回転要素)と、車体に対して回転可能に支持されたインナロータ12(第1回転要素)とからなり、アウタロータ11(第2回転要素)及びインナロータ12(第1回転要素)とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータ13を有し、アウタロータ11(第2回転要素)の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、インナロータ12(第1回転要素)の回転トルクは左右車輪の他方に伝達される。
【選択図】 図1
【解決手段】原動機の動力を差動減速機を介して左右車輪に伝達する車両の左右輪駆動装置において、車体に対して回転可能に支持されたアウタロータ11(第2回転要素)と、車体に対して回転可能に支持されたインナロータ12(第1回転要素)とからなり、アウタロータ11(第2回転要素)及びインナロータ12(第1回転要素)とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータ13を有し、アウタロータ11(第2回転要素)の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、インナロータ12(第1回転要素)の回転トルクは左右車輪の他方に伝達される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
左右1対の遊星歯車機構と、1対の小型電動モータと、ブレーキ手段とからなる左右輪駆動装置が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0002】
【特許文献1】
特開平9−79348号公報(第3−5頁、第2図)。
【0003】
この従来の左右輪駆動装置においては、各遊星歯車機構のキャリアは車両の左右従動輪に連結され、各遊星歯車機構のサンギアはそれぞれ小型電動モータに連結され、各遊星歯車機構のリンクギアは中間軸によって互いに連結されている。ブレーキ手段は、中間軸の回転を拘束するようになっている。
【0004】
この左右駆動装置において、ブレーキ手段で中間軸の回転を拘束すると、各遊星歯車機構は単なる減速機として機能する。この状態で2つの小型電動モータを同一方向へ回転駆動すると、左右従動輪に前進あるいは後進方向のトルクが伝達され、車両の発進をアシストすることができる。また、中間軸の回転を許容しつつ2つの小型電動モータを互いに反対方同へ回転駆動すると、左右従動輪に反対方向のトルクが伝達され、車両の旋回をアシストすることができる。
【0005】
上記のような発進アシストおよび旋回アシストは、車両の左右従動輪に直接電動モータを連結することでも達成可能であるが、その場合電動モータの回転速度が車速の上昇につれて上昇するため、高車速時に効果的な旋回アシストを行うことができない。この問題は、電動モータのトルク特性(低速域では一定の最大トルクが得られ、中高速域では回転速度に反比例して最大トルクが低下する)に起因して発生するが、上記の従来装置では、中間軸の回転を許容するとモータ回転速度が車輪回転速度と無関係になり、かつその状態で2つの小型電動モータを反対方向へ回転駆動すると車輪ヘモータトルクを伝達することができる。従って、旋回アシストを行う場合は車速に関係なく電動モータの高トルク回転域(低速域)を使用することが可能となり、小型の電動モータを使用しても十分な旋回アシストを行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では2つの遊星歯車機構が必要であり、また遊星歯車機構は車輪へのトルク伝達を実現するだけの大容量のものが必要となるため、装置全体が大型化すると共に高価になってしまうという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両の左右輪駆動装置は、車体に対して回転可能に支持された第1回転要素と、車体に対して回転可能に支持された第2回転要素とからなり、第1回転要素及び第2回転要素とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータを有し、第1回転要素の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは左右車輪の他方に伝達されることを特徴としている。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の旋回時に相反モータを駆動し、左右輪に互いに逆回転方向の駆動力を重畳させることでヨーレートを発生させる旋回アシストが可能となる。また、車両の左右輪駆動装置は、相反モータを備えることで、装置全体を小型化することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1実施例の構成を示している。エンジン1の出力トルクはトランスミッション2を介してドライブピニオン3に伝達され、リングギヤ4に接続された差動減速機5を回転駆動させる。差動減速機5に伝達されたトルクは車両の左側のドライブシャフト6L、および右側のドライブシャフト6Rに分配され、左車輪7L、および右車輪7Rにそれぞれ伝達される。これらの構成は従来のフロントエンジン・フロント駆動車両(FF車両)と同様である。
【0011】
一方、相反モータ13のアウタロータ11はその出力軸10Lにヘリカルギヤ9Lが固定されており、このギヤに噛み合うヘリカルギヤ8Lは車両左側のドライブシャフト6Lに固定されている。また同様に、相反モータ13のインナロータ12はその出力軸10Rにヘリカルギヤ9Rが固定されており、このギヤに噛み合うヘリカルギヤ8Rは車両左側のドライブシャフト6Rに固定されている。
【0012】
ここで、アウタロータ11及びインナロータ12のどちらか一方が第1回転要素に相当し、他方が第2回転要素に相当する。また、ヘリカルギヤ8Lとヘリカルギヤ9Lとからなるギヤセット、及びヘリカルギヤ8Rとヘリカルギヤ9Rとからなるギヤセットが、それぞれ減速機構に相当する。
【0013】
相反モータ13としては、従来の三相同期モータが適用される。そのアウタロータ11は車体との間にベアリング(図示なし)を用いて回転可能に支持されている。また、このアウタロータ11に装着された三相巻線への給電のために、アウタロータ11にはスリップリングが3つ装着(図示なし)され、これらのスリップリングのそれぞれに対応して、ブラシ(図示なし)が車体側に装備される。したがって、車体側で生成される相反モータを駆動する電力は、車体に固定されたブラシと、アウタロータ11と共に回転するスリップリングとを介した摺動接触により三相巻線に供給される。尚、インナロータ12はアウタロータ11との間にベアリング(図示なし)を介して回転可能に支持されている。
【0014】
以上のように相反モータ13とは、従来回転不能に支持していたモータのステータを、回転可能に支持してアウタロータとすることで、インナロータに発生させるトルクの反作用で、自らインナロータとは逆の回転方向にトルクを発生させるものである。
【0015】
このような第1実施例は、車両は従来のFF車両同様にエンジンの駆動力により走行する。このとき、相反モータ13には電力は供給されない。したがって、相反モータ13の各出力軸10Lおよび10Rに発生するトルクはゼロであり、左右各輪7Lと7Rの回転速度Nが、左右それぞれのギヤセット8Lと9L、および8Rと9Rのギヤ比zで増速され、相反モータ13の各ロータ11および12はそれぞれ回転速度zNで同一方向に連れ回されている状態にある。
【0016】
ここで、運転者のステアリング操作などで旋回指令を検知すると、相反モータ13には旋回トルクを発生させるよう電力が供給される。すなわち左旋回する場合、インナロータ12に右車輪7Rの駆動力Fを増加させる回転方向のトルクが発生するような電力が供給される。右車輪7Rにはこのインナロータ12のトルクによる駆動力fが重畳され、F+fの駆動力となる。また一方で、アウタロータ11にはインナロータ12とは逆の回転方向に同一のトルクが発生し、左車輪7Lの駆動力はF−fとなる。これら左右輪の駆動力差により車両にヨーモーメントを発生することで、旋回をアシストするものである。
【0017】
ここで、相反モータ13のトルク特性(NT特性)を図4を用いて説明する。従来のモータのトルク特性と同様に、低速域においては定トルクとなっており、この速度域においてモータは最大のトルクが発生可能である。また、中高速域においては定出力特性となっており、速度が増加するに従って発生可能なトルクは減少する。この図で示した横軸の回転速度Nは、従来のモータで表現される、ステータから見たロータの回転速度であり、相反モータではアウタロータから見たインナロータの回転速度、つまり、各ロータの相対回転速度ということになる。さて、既に説明したように、車両が従来のFF車両同様にエンジンの駆動力により走行している際、相反モータ13の各ロータ11および12はそれぞれ回転速度zNで同一方向に連れ回されている状態にある。したがって、相対回転速度はゼロである。旋回時に相反モータ13に電力が供給されると、図4に示す回転速度ゼロにおけるトルク、つまり相反モータ13に許容される最大トルクを発生することが可能である。
【0018】
このように、この第1実施例によると、旋回アシストトルクを発生させる際、車速に関係なく相反モータ13の最大トルクを発生させることが可能であり、高車速で大きなトルクを発生させるために大容量のモータを使用することがなく、装置の小型化が可能となった。
【0019】
尚、エンジン1には車両走行のための原動機として、電動モータを用いることができる。また、相反モータ13としては三相同期モータに限定するものではなく、誘導モータ、直流モータも適用可能であり、インナロータ11とアウタロータ12の接続輪もその左右を限定するものではない。ヘリカルギヤセット8Lと9Lおよび9Rと9Rは、さらに多段でも構わず、ヘリカルギヤに限定されるものでもない。
【0020】
次に、本発明の第2実施例を図2を用いて説明する。尚、エンジン1、トランスミッション2、ドライブピニオン3、リングギヤ4、差動減速機5、ドライブシャフト6Lおよび6R、車輪7Lおよび右車輪7R、相反モータのアウタロータ11とその出力軸10L、ヘリカルギヤ9Lおよび8L、インナロータ12とその出力軸10R、ヘリカルギヤ9Rおよび8Rの接続は上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。
【0021】
この第2実施例においては、相反モータ13のアウタロータ11の出力軸10Lと、左車輪に接続されるヘリカルギヤ9Lの軸22の間に、回転方向選択機構としての回転方向選択装置20が配される。すなわち、アウタロータ11の出力軸10Lは、これと直結された回転体24と、3段のギヤ列によりその回転方向を逆転された回転体25に接続される。また、左車輪に接続されるヘリカルギヤ9Lの軸22は、軸方向に摺動可能な回転体23に接続されており、この回転体23を回転体24もしくは回転体25に選択的に押圧接触させることで、アウタロータ11の回転方向に対して左車輪7Lの回転方向の正逆を切換え可能な構成となっている。
【0022】
このような第2実施例においては、回転体23が回転体24に押圧接触している場合、すなわちアウタロータ11の回転方向とヘリカルギヤ9Lの回転方向とが同一方向の場合、機能上は上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。また、効果も同様である。
【0023】
一方、回転体23が回転体25に押圧接触している場合、すなわちアウタロータ11の回転方向とヘリカルギヤ9Lの回転方向とが逆方向の場合は、発進トルクアシストに使用される。車両が停車している状態から加速する速度領域において、相反モータ13のインナロータ12には右車輪7Rの駆動力Fを増加させる回転方向のトルクが発生するような電力が供給される。これにより、右車輪7Rにはこのインナロータ12のトルクによる駆動力fが重畳され、F+fの駆動力となる。また一方で、アウタロータ11にはインナロータ12とは逆の回転方向に同一のトルクが発生するが、そのトルクの方向は回転方向選択装置20により逆転されるので、結果的に左車輪7LにもF+fの駆動力が発生する。このように、この第2実施例においては、車両の発進時にエンジントルクをアシストして加速性能を向上することが可能となった。
【0024】
また、回転体23が回転体25に押圧接触している場合、回生ブレーキとして使用することも可能である。この場合、車両の走行状態において左右各輪7Lと7Rの回転速度Nは、左右それぞれのギヤセット8Lと9L、および8Rと9Rのギヤ比zで増速され、相反モータ13の各ロータ11および12の相対回転速度2zNで逆方向に連れ回されている状態にある。ここで、この相対回転速度を減少させる方向に相反モータ13を制御、つまりブレーキトルクを発生させることで、車両の減速エネルギを回生し発電が可能となる。
【0025】
尚、回転方向選択装置20の構成は上記に限定されるものでなく、回転の正逆を選択的に切換え可能な構成全てが適用可能である。
【0026】
次に、本発明の第3実施例を図3を用いて説明する。尚、エンジン1、トランスミッション2、ドライブピニオン3、リングギヤ4、差動減速機5、ドライブシャフト6Lおよび6R、車輪7Lおよび右車輪7R、ヘリカルギヤ9Lおよび8L、ヘリカルギヤ9Rおよび8Rの接続は上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。
【0027】
この第3実施例においては、相反モータ45の左インナロータ40Lの出力軸10Lはヘリカルギヤ9Lに接続される。また一方で、右インナロータ40Rの出力軸10Rはヘリカルギヤ9Rに接続される。左インナロータ40Lと作用反作用関係にある左アウタロータ41Lと、右インナロータ40Rと作用反作用関係にある左アウタロータ41Rとは、一体に同軸回転可能なように背面42で機械的に接続されている。さらに、この一体となったアウタロータ群42は、車体に設置されたブレーキ手段としてのブレーキ装置43により、その回転が規制可能な構成となっている。
【0028】
換言すれば、相反モータ45は、左相反モータ45Lと右相反モータ45Rとからなり、左相反モータ45Lは左インナロータ40Lと左アウタロータ41Lとから構成され、右相反モータ45Rは右インナロータ40Rと右アウタロータ41Rとから構成されている。そして、左アウタロータ41Lと、右アウタロータ41Rとが同軸回転可能に一体に接続されている。
【0029】
ここで、左相反モータ45L及び右相反モータ45Rのどちらか一方が第1相反モータに相当し、他方が第2相反モータに相当する。そして、この第3実施例においては、左アウタロータ41L及び右アウタロータ41Rのどちらか一方が第2ロータに相当に、他方が第4ロータに相当する。また、左インナロータ40L及び右インナロータ40Rのどちらか一方が第1ロータの相当し、他方が第3ロータに相当する。
【0030】
このような第3実施例においては、車体に設置されたブレーキ装置43を開放、すなわちアウタロータ群42が車体に対してフリーに回転可能な状態においては、左インナロータ40Lは左アウタロータ41Lによってゼロ回転制御が行われる。つまり、左インナロータ40Lと左アウタロータ41Lの相対回転速度がゼロとなる制御であり、この状態において、左右各輪7Lと7Rの回転速度Nは、左右それぞれのギヤセット8Lと9L、および8Rと9Rのギヤ比zで増速され、相反モータのアウタロータ群42と右インナロータ40Rとは、それぞれ回転速度zNで同一方向に連れ回されている状態にある。したがって、この状態は機能上上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。また、効果も同様である。
【0031】
一方、車体に設置されたブレーキ装置43により拘束、すなわちアウタロータ群42が車体に対して回転不能な状態における作動を説明する。この場合、左インナロータ40Lおよび右インナロータ40Rは、車体に回転不能に支持される左アウタロータ41L、および右アウタロータ42Lによりそれぞれ独立に駆動可能であり、左右輪へのアシスト駆動力配分が可能となった。尚、駆動トルクアシスト、回生ブレーキなども上述した第2実施例同様に可能である。
【0032】
次に、本発明の第4実施例について説明する。この第4実施例は、上述した第1〜第3の各実施例の全てに適用される制御モード(差動減速機制限モード)である。
【0033】
第1〜第3の各実施例に示すようなFF車両において、通常の走行時に左右どちらかの車輪が路面摩擦の低い路面上にあると、差動減速機5によってその車輪にエンジンの発生するトルクの殆どが配分されて空転し、車両がスタックすることがある。この第4実施例はこのような車両状態において適用される。
【0034】
つまり、左右輪のそれぞれに装着された車輪速センサ(図示なし)出力値の差分により車輪の相対回転速度を検知し、相反モータにはその相対回転速度を減少するよう回転速度制御がなされる。第1〜第3の各実施例にあっては、左右車輪の相対回転速度△Nは、相反モータのインナロータとアウタロータにおいてギヤ比z倍されたz△Nの相対回転速度となる。この相対回転速度z△Nを減少させる方向、つまり相反モータで回生ブレーキをかける方向に制御される。この制御モードにより、相対回転数を略ゼロに制御すると、左車輪と右車輪は、相反モータを介して相対回転ゼロ、すなわち左右の各車輪とも同一の回転速度で接続されたことになり、エンジンの発生するトルクは左右の各車輪へ等しく配分されることとなる。以上のように、左右どちらかの車輪が路面摩擦の低い路面上にあり、その車輪が空転して車両がスタックするような状況において、差動減速機のトルク配分機能を制限するいわゆるリミテッド・スリップ・デフ(LSD)機能を有することが可能となった。
【0035】
また、この第4実施例における相反モータの回転速度制御には、新たに回転速度センサを必要とせず、車両に一般的に装着されている車輪速センサを用いることができる。車輪速センサの装着される車輪軸と、モータ軸との間にはギヤのガタが生じるので、この車輪速センサを用いたモータの位置制御、あるいはモータ自身の励磁位相制御は困難であるが、この第4実施例のようにモータの速度制御のためのフィードバック信号に用いるには十分である。また、インナロータとアウタロータの間に回転速度センサを装着する場合は、相対回転が発生して初めて、つまり、片側車輪がスリップして初めて相対回転信号が出力されるのに対し、車輪速センサの出力値は通常の走行状態、つまり、車速が出ていれば随時車輪速信号を出力しているため、速度制御のためのフィードバック信号としてそのS/Nを上げられるという効果もある。
【0036】
上述した各実施例から把握し得る本発明の技術思想について、その効果とともに列記する。
【0037】
(1) 車両の左右輪駆動装置は、原動機の動力を差動減速機を介して左右車輪に伝達するものであって、車体に対して回転可能に支持された第1回転要素と、車体に対して回転可能に支持された第2回転要素とからなり、第1回転要素及び第2回転要素とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータを有し、第1回転要素の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは左右車輪の他方に伝達される。これによって、車両の旋回時に相反モータを駆動し、左右輪に互いに逆回転方向の駆動力を重畳させることでヨーレートを発生させる旋回アシストが可能となる。また、車両の左右輪駆動装置は、相反モータを備えることで、装置全体を小型化することが可能となる。
【0038】
(2) 上記(1)に記載の車両の左右輪駆動装置において、第1回転要素の回転トルクは第1減速機構を介して左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは第2減速機構を介して左右車輪の他方に伝達される。これによって、相反モータの低速大トルクを車輪に増大させて伝達することで更なるヨーレート発生が可能となる。
【0039】
(3) 上記(1)または(2)に記載の車両の左右輪駆動装置において、第2回転要素の回転トルクは、この回転トルクの回転方向を選択的に切替え可能な回転方向選択機構を介して、左右車輪の他方に伝達される。これによって、車両の発進時には回転方向選択装置を反転モードで用いて相反モータを駆動し、左右輪に同一回転方向の駆動力を重畳させることで車両の駆動力を増加させる駆動アシストが可能となる。更に、車両の減速時にも回転方向選択装置を反転モードで用いて相反モータを駆動し、機械ブレーキの制動力をアシストすると共に、そのエネルギを電力に回生する回生ブレーキが可能となる。
【0040】
(4) 上記(1)または(2)に記載の車両の左右輪駆動装置において、第1回転要素は、車体に対して回転可能に支持された第1ロータからなり、第2回転要素は、車体に対して回転可能に支持された第2ロータ、第3ロータ及び第4ロータからなり、第2ロータと第4ロータとは、同軸回転可能に一体に接続され、相反モータは、第1ロータと第2ロータとが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な第1相反モータと、第3ロータと第4ロータとが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な第2相反モータと、から構成され、第1ロータの回転トルクが左右車輪の一方に伝達され、第3ロータの回転トルクが左右車輪の他方に伝達され、第2ロータ及び第4ロータの車体に対する回転を規制するブレーキ手段を有している。これによって、第2ロータと第4ロータをブレーキ手段で拘束することで、左右各輪への駆動力および制動力配分が可能となる。
【0041】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の車両の左右輪駆動装置において、相反モータを構成する第1回転要素と第2回転要素との相対回転速度が減少するようトルクを発生させ、車両の左右輪の回転速度差を規制する差動減速機制限モードを有する。これによって、左右輪のいずれか一方がスリップした際に差動減速機の機能の制限し、左右輪へのトルク配分を制御可能としたいわゆるリミテッド・スリップ・デフ(LSD)機能を実現することが可能となる。
【0042】
(6) 上記(5)に記載の車両の左右輪駆動装置において、車両の左右輪には車輪の回転速度を検出する車輪速センサがそれぞれ備えられ、これらの回転速度差から左右輪の相対回転速度を検知する。これによって、新たに回転速度センサを付加する必要なく、安価に、左右輪のいずれか一方がスリップした際に差動減速機の機能の制限し、左右輪へのトルク配分を制御可能としたいわゆるリミテッド・スリップ・デフ(LSD)機能を実現することが可能とる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の構成を示す説明図。
【図2】本発明の第2実施例の構成を示す説明図。
【図3】本発明の第3実施例の構成を示す説明図。
【図4】相反モータのトルク特性を示す説明図。
【符号の説明】
1…エンジン
5…作動減速機
6L…左側のドライブシャフト
6R…右側のドライブシャフト
7L…左車輪
7R…右車輪
8L…ヘリカルギヤ
8R…ヘリカルギヤ
9L…ヘリカルギヤ
9R…ヘリカルギヤ
11…アウタロータ
12…インナロータ
13…相反モータ
【発明の属する技術分野】
左右1対の遊星歯車機構と、1対の小型電動モータと、ブレーキ手段とからなる左右輪駆動装置が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0002】
【特許文献1】
特開平9−79348号公報(第3−5頁、第2図)。
【0003】
この従来の左右輪駆動装置においては、各遊星歯車機構のキャリアは車両の左右従動輪に連結され、各遊星歯車機構のサンギアはそれぞれ小型電動モータに連結され、各遊星歯車機構のリンクギアは中間軸によって互いに連結されている。ブレーキ手段は、中間軸の回転を拘束するようになっている。
【0004】
この左右駆動装置において、ブレーキ手段で中間軸の回転を拘束すると、各遊星歯車機構は単なる減速機として機能する。この状態で2つの小型電動モータを同一方向へ回転駆動すると、左右従動輪に前進あるいは後進方向のトルクが伝達され、車両の発進をアシストすることができる。また、中間軸の回転を許容しつつ2つの小型電動モータを互いに反対方同へ回転駆動すると、左右従動輪に反対方向のトルクが伝達され、車両の旋回をアシストすることができる。
【0005】
上記のような発進アシストおよび旋回アシストは、車両の左右従動輪に直接電動モータを連結することでも達成可能であるが、その場合電動モータの回転速度が車速の上昇につれて上昇するため、高車速時に効果的な旋回アシストを行うことができない。この問題は、電動モータのトルク特性(低速域では一定の最大トルクが得られ、中高速域では回転速度に反比例して最大トルクが低下する)に起因して発生するが、上記の従来装置では、中間軸の回転を許容するとモータ回転速度が車輪回転速度と無関係になり、かつその状態で2つの小型電動モータを反対方向へ回転駆動すると車輪ヘモータトルクを伝達することができる。従って、旋回アシストを行う場合は車速に関係なく電動モータの高トルク回転域(低速域)を使用することが可能となり、小型の電動モータを使用しても十分な旋回アシストを行うことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では2つの遊星歯車機構が必要であり、また遊星歯車機構は車輪へのトルク伝達を実現するだけの大容量のものが必要となるため、装置全体が大型化すると共に高価になってしまうという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両の左右輪駆動装置は、車体に対して回転可能に支持された第1回転要素と、車体に対して回転可能に支持された第2回転要素とからなり、第1回転要素及び第2回転要素とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータを有し、第1回転要素の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは左右車輪の他方に伝達されることを特徴としている。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、車両の旋回時に相反モータを駆動し、左右輪に互いに逆回転方向の駆動力を重畳させることでヨーレートを発生させる旋回アシストが可能となる。また、車両の左右輪駆動装置は、相反モータを備えることで、装置全体を小型化することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1実施例の構成を示している。エンジン1の出力トルクはトランスミッション2を介してドライブピニオン3に伝達され、リングギヤ4に接続された差動減速機5を回転駆動させる。差動減速機5に伝達されたトルクは車両の左側のドライブシャフト6L、および右側のドライブシャフト6Rに分配され、左車輪7L、および右車輪7Rにそれぞれ伝達される。これらの構成は従来のフロントエンジン・フロント駆動車両(FF車両)と同様である。
【0011】
一方、相反モータ13のアウタロータ11はその出力軸10Lにヘリカルギヤ9Lが固定されており、このギヤに噛み合うヘリカルギヤ8Lは車両左側のドライブシャフト6Lに固定されている。また同様に、相反モータ13のインナロータ12はその出力軸10Rにヘリカルギヤ9Rが固定されており、このギヤに噛み合うヘリカルギヤ8Rは車両左側のドライブシャフト6Rに固定されている。
【0012】
ここで、アウタロータ11及びインナロータ12のどちらか一方が第1回転要素に相当し、他方が第2回転要素に相当する。また、ヘリカルギヤ8Lとヘリカルギヤ9Lとからなるギヤセット、及びヘリカルギヤ8Rとヘリカルギヤ9Rとからなるギヤセットが、それぞれ減速機構に相当する。
【0013】
相反モータ13としては、従来の三相同期モータが適用される。そのアウタロータ11は車体との間にベアリング(図示なし)を用いて回転可能に支持されている。また、このアウタロータ11に装着された三相巻線への給電のために、アウタロータ11にはスリップリングが3つ装着(図示なし)され、これらのスリップリングのそれぞれに対応して、ブラシ(図示なし)が車体側に装備される。したがって、車体側で生成される相反モータを駆動する電力は、車体に固定されたブラシと、アウタロータ11と共に回転するスリップリングとを介した摺動接触により三相巻線に供給される。尚、インナロータ12はアウタロータ11との間にベアリング(図示なし)を介して回転可能に支持されている。
【0014】
以上のように相反モータ13とは、従来回転不能に支持していたモータのステータを、回転可能に支持してアウタロータとすることで、インナロータに発生させるトルクの反作用で、自らインナロータとは逆の回転方向にトルクを発生させるものである。
【0015】
このような第1実施例は、車両は従来のFF車両同様にエンジンの駆動力により走行する。このとき、相反モータ13には電力は供給されない。したがって、相反モータ13の各出力軸10Lおよび10Rに発生するトルクはゼロであり、左右各輪7Lと7Rの回転速度Nが、左右それぞれのギヤセット8Lと9L、および8Rと9Rのギヤ比zで増速され、相反モータ13の各ロータ11および12はそれぞれ回転速度zNで同一方向に連れ回されている状態にある。
【0016】
ここで、運転者のステアリング操作などで旋回指令を検知すると、相反モータ13には旋回トルクを発生させるよう電力が供給される。すなわち左旋回する場合、インナロータ12に右車輪7Rの駆動力Fを増加させる回転方向のトルクが発生するような電力が供給される。右車輪7Rにはこのインナロータ12のトルクによる駆動力fが重畳され、F+fの駆動力となる。また一方で、アウタロータ11にはインナロータ12とは逆の回転方向に同一のトルクが発生し、左車輪7Lの駆動力はF−fとなる。これら左右輪の駆動力差により車両にヨーモーメントを発生することで、旋回をアシストするものである。
【0017】
ここで、相反モータ13のトルク特性(NT特性)を図4を用いて説明する。従来のモータのトルク特性と同様に、低速域においては定トルクとなっており、この速度域においてモータは最大のトルクが発生可能である。また、中高速域においては定出力特性となっており、速度が増加するに従って発生可能なトルクは減少する。この図で示した横軸の回転速度Nは、従来のモータで表現される、ステータから見たロータの回転速度であり、相反モータではアウタロータから見たインナロータの回転速度、つまり、各ロータの相対回転速度ということになる。さて、既に説明したように、車両が従来のFF車両同様にエンジンの駆動力により走行している際、相反モータ13の各ロータ11および12はそれぞれ回転速度zNで同一方向に連れ回されている状態にある。したがって、相対回転速度はゼロである。旋回時に相反モータ13に電力が供給されると、図4に示す回転速度ゼロにおけるトルク、つまり相反モータ13に許容される最大トルクを発生することが可能である。
【0018】
このように、この第1実施例によると、旋回アシストトルクを発生させる際、車速に関係なく相反モータ13の最大トルクを発生させることが可能であり、高車速で大きなトルクを発生させるために大容量のモータを使用することがなく、装置の小型化が可能となった。
【0019】
尚、エンジン1には車両走行のための原動機として、電動モータを用いることができる。また、相反モータ13としては三相同期モータに限定するものではなく、誘導モータ、直流モータも適用可能であり、インナロータ11とアウタロータ12の接続輪もその左右を限定するものではない。ヘリカルギヤセット8Lと9Lおよび9Rと9Rは、さらに多段でも構わず、ヘリカルギヤに限定されるものでもない。
【0020】
次に、本発明の第2実施例を図2を用いて説明する。尚、エンジン1、トランスミッション2、ドライブピニオン3、リングギヤ4、差動減速機5、ドライブシャフト6Lおよび6R、車輪7Lおよび右車輪7R、相反モータのアウタロータ11とその出力軸10L、ヘリカルギヤ9Lおよび8L、インナロータ12とその出力軸10R、ヘリカルギヤ9Rおよび8Rの接続は上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。
【0021】
この第2実施例においては、相反モータ13のアウタロータ11の出力軸10Lと、左車輪に接続されるヘリカルギヤ9Lの軸22の間に、回転方向選択機構としての回転方向選択装置20が配される。すなわち、アウタロータ11の出力軸10Lは、これと直結された回転体24と、3段のギヤ列によりその回転方向を逆転された回転体25に接続される。また、左車輪に接続されるヘリカルギヤ9Lの軸22は、軸方向に摺動可能な回転体23に接続されており、この回転体23を回転体24もしくは回転体25に選択的に押圧接触させることで、アウタロータ11の回転方向に対して左車輪7Lの回転方向の正逆を切換え可能な構成となっている。
【0022】
このような第2実施例においては、回転体23が回転体24に押圧接触している場合、すなわちアウタロータ11の回転方向とヘリカルギヤ9Lの回転方向とが同一方向の場合、機能上は上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。また、効果も同様である。
【0023】
一方、回転体23が回転体25に押圧接触している場合、すなわちアウタロータ11の回転方向とヘリカルギヤ9Lの回転方向とが逆方向の場合は、発進トルクアシストに使用される。車両が停車している状態から加速する速度領域において、相反モータ13のインナロータ12には右車輪7Rの駆動力Fを増加させる回転方向のトルクが発生するような電力が供給される。これにより、右車輪7Rにはこのインナロータ12のトルクによる駆動力fが重畳され、F+fの駆動力となる。また一方で、アウタロータ11にはインナロータ12とは逆の回転方向に同一のトルクが発生するが、そのトルクの方向は回転方向選択装置20により逆転されるので、結果的に左車輪7LにもF+fの駆動力が発生する。このように、この第2実施例においては、車両の発進時にエンジントルクをアシストして加速性能を向上することが可能となった。
【0024】
また、回転体23が回転体25に押圧接触している場合、回生ブレーキとして使用することも可能である。この場合、車両の走行状態において左右各輪7Lと7Rの回転速度Nは、左右それぞれのギヤセット8Lと9L、および8Rと9Rのギヤ比zで増速され、相反モータ13の各ロータ11および12の相対回転速度2zNで逆方向に連れ回されている状態にある。ここで、この相対回転速度を減少させる方向に相反モータ13を制御、つまりブレーキトルクを発生させることで、車両の減速エネルギを回生し発電が可能となる。
【0025】
尚、回転方向選択装置20の構成は上記に限定されるものでなく、回転の正逆を選択的に切換え可能な構成全てが適用可能である。
【0026】
次に、本発明の第3実施例を図3を用いて説明する。尚、エンジン1、トランスミッション2、ドライブピニオン3、リングギヤ4、差動減速機5、ドライブシャフト6Lおよび6R、車輪7Lおよび右車輪7R、ヘリカルギヤ9Lおよび8L、ヘリカルギヤ9Rおよび8Rの接続は上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。
【0027】
この第3実施例においては、相反モータ45の左インナロータ40Lの出力軸10Lはヘリカルギヤ9Lに接続される。また一方で、右インナロータ40Rの出力軸10Rはヘリカルギヤ9Rに接続される。左インナロータ40Lと作用反作用関係にある左アウタロータ41Lと、右インナロータ40Rと作用反作用関係にある左アウタロータ41Rとは、一体に同軸回転可能なように背面42で機械的に接続されている。さらに、この一体となったアウタロータ群42は、車体に設置されたブレーキ手段としてのブレーキ装置43により、その回転が規制可能な構成となっている。
【0028】
換言すれば、相反モータ45は、左相反モータ45Lと右相反モータ45Rとからなり、左相反モータ45Lは左インナロータ40Lと左アウタロータ41Lとから構成され、右相反モータ45Rは右インナロータ40Rと右アウタロータ41Rとから構成されている。そして、左アウタロータ41Lと、右アウタロータ41Rとが同軸回転可能に一体に接続されている。
【0029】
ここで、左相反モータ45L及び右相反モータ45Rのどちらか一方が第1相反モータに相当し、他方が第2相反モータに相当する。そして、この第3実施例においては、左アウタロータ41L及び右アウタロータ41Rのどちらか一方が第2ロータに相当に、他方が第4ロータに相当する。また、左インナロータ40L及び右インナロータ40Rのどちらか一方が第1ロータの相当し、他方が第3ロータに相当する。
【0030】
このような第3実施例においては、車体に設置されたブレーキ装置43を開放、すなわちアウタロータ群42が車体に対してフリーに回転可能な状態においては、左インナロータ40Lは左アウタロータ41Lによってゼロ回転制御が行われる。つまり、左インナロータ40Lと左アウタロータ41Lの相対回転速度がゼロとなる制御であり、この状態において、左右各輪7Lと7Rの回転速度Nは、左右それぞれのギヤセット8Lと9L、および8Rと9Rのギヤ比zで増速され、相反モータのアウタロータ群42と右インナロータ40Rとは、それぞれ回転速度zNで同一方向に連れ回されている状態にある。したがって、この状態は機能上上述した第1実施例と同様であり、説明を省略する。また、効果も同様である。
【0031】
一方、車体に設置されたブレーキ装置43により拘束、すなわちアウタロータ群42が車体に対して回転不能な状態における作動を説明する。この場合、左インナロータ40Lおよび右インナロータ40Rは、車体に回転不能に支持される左アウタロータ41L、および右アウタロータ42Lによりそれぞれ独立に駆動可能であり、左右輪へのアシスト駆動力配分が可能となった。尚、駆動トルクアシスト、回生ブレーキなども上述した第2実施例同様に可能である。
【0032】
次に、本発明の第4実施例について説明する。この第4実施例は、上述した第1〜第3の各実施例の全てに適用される制御モード(差動減速機制限モード)である。
【0033】
第1〜第3の各実施例に示すようなFF車両において、通常の走行時に左右どちらかの車輪が路面摩擦の低い路面上にあると、差動減速機5によってその車輪にエンジンの発生するトルクの殆どが配分されて空転し、車両がスタックすることがある。この第4実施例はこのような車両状態において適用される。
【0034】
つまり、左右輪のそれぞれに装着された車輪速センサ(図示なし)出力値の差分により車輪の相対回転速度を検知し、相反モータにはその相対回転速度を減少するよう回転速度制御がなされる。第1〜第3の各実施例にあっては、左右車輪の相対回転速度△Nは、相反モータのインナロータとアウタロータにおいてギヤ比z倍されたz△Nの相対回転速度となる。この相対回転速度z△Nを減少させる方向、つまり相反モータで回生ブレーキをかける方向に制御される。この制御モードにより、相対回転数を略ゼロに制御すると、左車輪と右車輪は、相反モータを介して相対回転ゼロ、すなわち左右の各車輪とも同一の回転速度で接続されたことになり、エンジンの発生するトルクは左右の各車輪へ等しく配分されることとなる。以上のように、左右どちらかの車輪が路面摩擦の低い路面上にあり、その車輪が空転して車両がスタックするような状況において、差動減速機のトルク配分機能を制限するいわゆるリミテッド・スリップ・デフ(LSD)機能を有することが可能となった。
【0035】
また、この第4実施例における相反モータの回転速度制御には、新たに回転速度センサを必要とせず、車両に一般的に装着されている車輪速センサを用いることができる。車輪速センサの装着される車輪軸と、モータ軸との間にはギヤのガタが生じるので、この車輪速センサを用いたモータの位置制御、あるいはモータ自身の励磁位相制御は困難であるが、この第4実施例のようにモータの速度制御のためのフィードバック信号に用いるには十分である。また、インナロータとアウタロータの間に回転速度センサを装着する場合は、相対回転が発生して初めて、つまり、片側車輪がスリップして初めて相対回転信号が出力されるのに対し、車輪速センサの出力値は通常の走行状態、つまり、車速が出ていれば随時車輪速信号を出力しているため、速度制御のためのフィードバック信号としてそのS/Nを上げられるという効果もある。
【0036】
上述した各実施例から把握し得る本発明の技術思想について、その効果とともに列記する。
【0037】
(1) 車両の左右輪駆動装置は、原動機の動力を差動減速機を介して左右車輪に伝達するものであって、車体に対して回転可能に支持された第1回転要素と、車体に対して回転可能に支持された第2回転要素とからなり、第1回転要素及び第2回転要素とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータを有し、第1回転要素の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは左右車輪の他方に伝達される。これによって、車両の旋回時に相反モータを駆動し、左右輪に互いに逆回転方向の駆動力を重畳させることでヨーレートを発生させる旋回アシストが可能となる。また、車両の左右輪駆動装置は、相反モータを備えることで、装置全体を小型化することが可能となる。
【0038】
(2) 上記(1)に記載の車両の左右輪駆動装置において、第1回転要素の回転トルクは第1減速機構を介して左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは第2減速機構を介して左右車輪の他方に伝達される。これによって、相反モータの低速大トルクを車輪に増大させて伝達することで更なるヨーレート発生が可能となる。
【0039】
(3) 上記(1)または(2)に記載の車両の左右輪駆動装置において、第2回転要素の回転トルクは、この回転トルクの回転方向を選択的に切替え可能な回転方向選択機構を介して、左右車輪の他方に伝達される。これによって、車両の発進時には回転方向選択装置を反転モードで用いて相反モータを駆動し、左右輪に同一回転方向の駆動力を重畳させることで車両の駆動力を増加させる駆動アシストが可能となる。更に、車両の減速時にも回転方向選択装置を反転モードで用いて相反モータを駆動し、機械ブレーキの制動力をアシストすると共に、そのエネルギを電力に回生する回生ブレーキが可能となる。
【0040】
(4) 上記(1)または(2)に記載の車両の左右輪駆動装置において、第1回転要素は、車体に対して回転可能に支持された第1ロータからなり、第2回転要素は、車体に対して回転可能に支持された第2ロータ、第3ロータ及び第4ロータからなり、第2ロータと第4ロータとは、同軸回転可能に一体に接続され、相反モータは、第1ロータと第2ロータとが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な第1相反モータと、第3ロータと第4ロータとが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な第2相反モータと、から構成され、第1ロータの回転トルクが左右車輪の一方に伝達され、第3ロータの回転トルクが左右車輪の他方に伝達され、第2ロータ及び第4ロータの車体に対する回転を規制するブレーキ手段を有している。これによって、第2ロータと第4ロータをブレーキ手段で拘束することで、左右各輪への駆動力および制動力配分が可能となる。
【0041】
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の車両の左右輪駆動装置において、相反モータを構成する第1回転要素と第2回転要素との相対回転速度が減少するようトルクを発生させ、車両の左右輪の回転速度差を規制する差動減速機制限モードを有する。これによって、左右輪のいずれか一方がスリップした際に差動減速機の機能の制限し、左右輪へのトルク配分を制御可能としたいわゆるリミテッド・スリップ・デフ(LSD)機能を実現することが可能となる。
【0042】
(6) 上記(5)に記載の車両の左右輪駆動装置において、車両の左右輪には車輪の回転速度を検出する車輪速センサがそれぞれ備えられ、これらの回転速度差から左右輪の相対回転速度を検知する。これによって、新たに回転速度センサを付加する必要なく、安価に、左右輪のいずれか一方がスリップした際に差動減速機の機能の制限し、左右輪へのトルク配分を制御可能としたいわゆるリミテッド・スリップ・デフ(LSD)機能を実現することが可能とる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の構成を示す説明図。
【図2】本発明の第2実施例の構成を示す説明図。
【図3】本発明の第3実施例の構成を示す説明図。
【図4】相反モータのトルク特性を示す説明図。
【符号の説明】
1…エンジン
5…作動減速機
6L…左側のドライブシャフト
6R…右側のドライブシャフト
7L…左車輪
7R…右車輪
8L…ヘリカルギヤ
8R…ヘリカルギヤ
9L…ヘリカルギヤ
9R…ヘリカルギヤ
11…アウタロータ
12…インナロータ
13…相反モータ
Claims (6)
- 原動機の動力を差動減速機を介して左右車輪に伝達する車両の左右輪駆動装置において、
車体に対して回転可能に支持された第1回転要素と、車体に対して回転可能に支持された第2回転要素とからなり、第1回転要素及び第2回転要素とが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な相反モータを有し、
第1回転要素の回転トルクは左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは左右車輪の他方に伝達されることを特徴とする車両の左右輪駆動装置。 - 第1回転要素の回転トルクは第1減速機構を介して左右車輪の一方に伝達され、第2回転要素の回転トルクは第2減速機構を介して左右車輪の他方に伝達されることを特徴とする請求項1に記載の車両の左右輪駆動装置。
- 第2回転要素の回転トルクは、この回転トルクの回転方向を選択的に切替え可能な回転方向選択機構を介して、左右車輪の他方に伝達されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の左右輪駆動装置。
- 第1回転要素は、車体に対して回転可能に支持された第1ロータからなり、
第2回転要素は、車体に対して回転可能に支持された第2ロータ、第3ロータ及び第4ロータからなり、
第2ロータと第4ロータとは、同軸回転可能に一体に接続され、
相反モータは、第1ロータと第2ロータとが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な第1相反モータと、第3ロータと第4ロータとが互いに逆回転方向にトルクを発生させることが可能な第2相反モータと、から構成され、
第1ロータの回転トルクが左右車輪の一方に伝達され、第3ロータの回転トルクが左右車輪の他方に伝達され、
第2ロータ及び第4ロータの車体に対する回転を規制するブレーキ手段を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の左右輪駆動装置。 - 相反モータを構成する第1回転要素と第2回転要素との相対回転速度が減少するようトルクを発生させ、車両の左右輪の回転速度差を規制する差動減速機制限モードを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両の左右輪駆動装置。
- 車両の左右輪には車輪の回転速度を検出する車輪速センサがそれぞれ備えられ、これらの回転速度差から左右輪の相対回転速度を検知することを特徴とする請求項5に記載の車両の左右輪駆動装置。
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Legal Events
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