JP2009190165A - 研磨装置用キャリアとその製造方法、両面研磨方法ならびにマスキング治具 - Google Patents

研磨装置用キャリアとその製造方法、両面研磨方法ならびにマスキング治具 Download PDF

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Abstract

【課題】研磨装置用キャリアの基材へのDLC膜の密着性を良好にして、研磨装置用キャリア自身の寿命を長くすると同時に、被研磨物の表面に傷を付けないようにする研磨装置用キャリアを提供する。
【解決手段】樹脂を母材とする研磨装置用キャリア1の基材2のすべり面をプラズマに暴露した後、前記基材のすべり面にDLC膜3を形成することを特徴とする研磨装置用キャリア1の製造方法。前記樹脂が、ガラス繊維、アラミド繊維およびカーボン繊維から選択された1種以上の強化繊維を含有する繊維強化樹脂である研磨装置用キャリア1の製造方法。研磨布を貼り付けた上下研磨プレート間に前記製造方法により製造された研磨装置用キャリア1を配置し、研磨装置用キャリア1の開口部4に被研磨物を挟み込んで被研磨物を両面研磨する両面研磨方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、研磨装置に用いられる被研磨物を保持するための研磨装置用キャリアとその製造方法、および前記研磨装置用キャリアを用いた両面研磨方法、ならびに前記研磨装置用キャリアの製造に用いるマスキング治具に関する。
従来、半導体ウェハや記録メディアなどの研磨に使用する研磨装置用キャリアとしては、金属製のものや樹脂製のものが用いられてきたが、金属製のものは、研磨時において被研磨物の半導体ウェハなどへの金属不純物汚染が発生し、半導体ウェハなどの品質を下げてしまう問題があり、また樹脂製のものは、傷がつき易く、強度が不足しがちで破損し易いという問題がある。その改善策として研磨装置用キャリアの基材を樹脂製とし、前記基材の表面をDLC(Diamond Like Carbon)膜でコーティングした研磨装置用キャリアが登場してきている(たとえば、特許文献1〜3)。
この研磨装置用キャリアは、表面の硬度が高いために研磨時の磨耗を抑制することができると共に、金属不純物汚染も回避することができる。また、表面をコーティングするため、表面粗さを比較的小さくすることができ、そのため高平坦度を有する半導体ウェハなどの製品を効率的に提供することができる。
特開2005−254351号公報 特開2006−303136号公報 特開2007−36225号公報
しかしながら、前記研磨装置用キャリアには、基材とDLC膜の密着性が十分ではなく、DLC膜の剥離が生じ易いという問題があった。剥離が生じることによって、研磨装置用キャリア自身の寿命が短くなるという問題や剥離したDLC膜との摩擦によって被研磨物の表面に傷が発生するという問題が生じる。
このため本発明の目的は、研磨装置用キャリアの基材とDLC膜の密着性を良好にして、基材からのDLC膜の剥離を防止することにより、研磨装置用キャリア自身の長寿命化を図ると同時に、被研磨物の表面の傷付きが抑制された研磨装置用キャリアおよびその製造方法、ならびに前記研磨装置用キャリアを用いた両面研磨方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、DLC膜を形成する前に研磨装置用キャリアの基材をプラズマ暴露することによりDLC膜の基材への密着性が向上し、研磨装置用キャリア自身の長寿命化を図ることができると同時に、被研磨物の表面の傷付きを抑制できることを見出した。さらに基材として繊維強化樹脂製の基材を用い、適切なプラズマ暴露を実施することにより、DLC膜の優れた密着性を得ることができると共に、基材の耐摩耗性の向上を図ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、各請求項の発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、
樹脂を母材とする研磨装置用キャリアの基材のすべり面をプラズマに暴露した後、前記基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする研磨装置用キャリアの製造方法である。
請求項1に記載の発明においては、DLC膜の形成に先立って、基材の前処理としてプラズマ暴露を行うことにより、基材表面が清浄化され、その後基材のすべり面にDLC膜が形成されるため、DLC膜の密着性が向上する。その結果、DLC膜の剥離が減少し、研磨装置用キャリア自身の長寿命化を図ることができると共に、剥離したDLC膜による被研磨物の表面の傷付きを抑制した研磨装置用キャリアを提供することができる。
前記プラズマ暴露は、通常のプラズマCVD装置を用いて行うことができる。プラズマ暴露を行うに際して、暴露が不足すると基材とDLC膜の密着性向上効果を得ることができず、暴露が過剰であると、基材すべり面に荒れが発生する等の悪影響が生じる。好ましいプラズマ暴露の条件は、基材の材質等によって相違するため、数値で特定することは難しいが、例えば対象となる基材と同じ材質、表面状態を有するサンプルを用いて予備実験的にプラズマ暴露を行うことにより、好ましい条件を容易に知ることができる。そして、プラズマを生成させるためのガスの種類、プラズマを生成させるための高周波電力の周波数および出力、基材の温度、暴露雰囲気の圧力、暴露時間等の条件は、基材の材質、求められる基材の表面状態などに基づいて適宜設定される。
プラズマ暴露した後の基材のすべり面へのDLC膜の形成方法としては、基材を構成する母材が、比較的耐熱性に劣る樹脂であるため、このような基材に熱的損傷を与えない範囲でDLC膜の形成を可能にすることができるプラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが好ましい。また、本発明においては、DLC膜は基材のすべり面に設けられるが、必要に応じて基材の表面全面に設けられてもよい。なお、表面の一部にのみ設ける場合には、研磨装置用キャリアに偏磨耗が生じないようにする必要がある。
本発明における母材は樹脂であるため、金属不純物汚染が発生せず、柔軟で研磨に対応して変形することができる基材とすることができる。本発明においては、従来はDLC膜との密着性が劣るため使用できなかったゴムなどの材料も基材の材料として使用することができ、研磨装置用キャリアの基材として機能する樹脂であれば、基材の材料は特に限定されない。
本発明に用いられる樹脂として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が挙げられる。好ましい熱硬化性樹脂としては、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラニン・ホルムアルデヒド樹脂、エポシキ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルプチラート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホルマール、ポリ2塩化ビニルなどのビニル系樹脂や塩素化ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、変性アクリルなどのアクリル樹脂、ナイロン6、66、610、11などのポリアミド樹脂、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロース、硝酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート、ならびに3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂およびポリウレタンなどが挙げられる。
これらの内、良好な板厚精度が得られやすい熱硬化性樹脂が好ましく、中でも耐アルカリ性に優れ、安価なエポキシ樹脂が好ましい。
なお、被研磨物を挿入するために設けられている開口部の内壁に被研磨物を保護するためのインサート素材を取付けてもよい。インサート素材としては天然ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等を用いることが好ましい。
請求項2に記載の発明は、
前記樹脂が、ガラス繊維、アラミド繊維およびカーボン繊維から選択された1種以上の強化繊維を含有する繊維強化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
前記母材となる樹脂に繊維強化樹脂を用いることにより耐摩耗性に優れた研磨装置用キャリアを提供することができる。一般的に繊維強化樹脂に使用される強化繊維はガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維等であるが、中でもガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維は繊維の強度が高いため、これらの強化繊維が配合されている繊維強化樹脂を用いた研磨装置用キャリアは耐摩耗性に特に優れる。特にガラス繊維は電子部品等に大量に使用されているため、他の繊維に比べ安価であり、品質が安定しており、繊維の強度が特に高いため好ましい。
一方、前記の繊維強化樹脂を基材に用いると、機械的強度の優れた研磨装置用キャリアを提供することができるが、繊維強化樹脂製の基材を過剰にプラズマ暴露するとすべり面に強化繊維露出部が形成されることが分かった。そして、強化繊維、特にガラス繊維はプラズマに暴露した後もDLCとの密着性が低く、強化繊維露出部上に形成されたDLC膜が剥離する恐れのあることが分かった。
しかし、基材のすべり面に強化繊維露出部が形成された場合であっても、1個の強化繊維露出部の面積を小さく、または隣合う強化繊維露出部の間隔を大きくすることによりDLC膜の剥離を抑制できることが分かった。さらに、強化繊維露出部1個の面積を充分に小さく、かつ隣合う強化繊維露出部との間隔を大きくすることにより、両者の効果が相俟って一層確実にDLC膜の剥離を抑制することができることが分かった。請求項3ないし請求項6に記載の発明は、前記の知見に基づく発明である。
請求項3に記載の発明は、
プラズマに暴露することによって前記基材のすべり面に露出したいずれの強化繊維露出部についても、1個の面積が1.0μm未満である基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
いずれの強化繊維露出部についても、1個の面積が1.0μmであれば、実用上問題となるDLC膜の剥離を抑制することができるため好ましい。
請求項4に記載の発明は、
プラズマに暴露することによって前記基材のすべり面に露出したいずれの強化繊維露出部についても、隣合う前記強化繊維露出部との間隔が0.5μm以上である基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
いずれの強化繊維露出部についても、隣合う前記強化繊維露出部との間隔が0.5μmであれば、実用上問題となるDLC膜の剥離を抑制することができるため好ましい。
請求項5に記載の発明は、
プラズマに暴露することによって前記基材のすべり面に露出したいずれの強化繊維露出部についても、1個の面積が0.25μm未満であると共に、隣合う前記強化繊維露出部との間隔が1μm以上である基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
いずれの強化繊維露出部についても1個の面積が0.25μm未満であると共に、隣合う強化繊維露出部との間隔が1μm以上であれば、DLC膜の剥離がほぼ確実に抑制された研磨装置用キャリアを提供することができるため一層好ましい。
請求項6に記載の発明は、
プラズマに暴露した後の前記基材のすべり面に強化繊維露出部が形成されていないことを特徴とする請求項2に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
プラズマに暴露した後の基材のすべり面に強化繊維露出部が形成されていないと、強化繊維の影響のない優れた密着性を有する研磨装置用キャリアを提供することができる。このため、強化繊維露出部が形成されていない段階でプラズマ暴露を停止することが好ましい。
なお、ガラス繊維の場合はAES分析により強化繊維露出部が形成されているか否かを測定することができ、またSAM(Scanning Auger Microscopy)により強化繊維露出部の大きさや間隔を測定することができる。また、アラミド繊維やカーボン繊維の場合は顕微FT−IRで強化繊維露出部が形成されているか否かを測定することができる。
請求項7に記載の発明は、
前記プラズマが、フッ素含有ガス、水素ガスおよび酸素ガスから選択される1種以上のガスのプラズマであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
研磨装置用キャリアの基材をフッ素含有ガスや水素ガスのプラズマに暴露した場合には、基材の表面がフッ素終端または水素終端されるためにDLC膜との密着性を向上させることができる。また酸素ガスのプラズマで暴露した場合には、基材の表面に付着した有機物などの汚れを特に効率よく除去することができるためDLC膜との密着性を向上させることができる。
好ましいフッ素含有ガスとしては、フッ素(F)ガス、3フッ化窒素(NF)ガス、6フッ化硫黄(SF)ガス、4フッ化炭素(CF)ガス、4フッ化ケイ素(SiF)、6フッ化ケイ素(Si)ガス、3フッ化塩素(ClF)ガス、フッ化水素(HF)ガス等を挙げることができる。
なお、プラズマ暴露は、DLC膜の形成時に用いるプラズマと同種類のプラズマを用いてもよく、異なる種類のプラズマを用いてもよく、また複数回行ってもよい。
請求項8に記載の発明は、
プラズマCVD法により前記DLC膜を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
請求項8に記載の発明においては、DLC膜をプラズマCVD法により形成するに際し、基材のプラズマ暴露と同じ装置を用いて行なうことができるため効率的である。
プラズマCVD法によりDLC膜を形成するための好ましいプロセスガスとしては、メタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)、アセチレン(C)、ベンゼン(C)などの炭化水素化合物のガスを挙げることができる。なお、必要に応じて、これらの炭化水素化合物のガスにキャリアガスとして、水素ガス、不活性ガスなどを混合してもよい。
請求項9に記載の発明は、
前記DLC膜のマルテンス硬さが、100〜2000N/mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
本発明者らは、DLC膜の剥離が生ずる原因は、研磨装置用キャリアのすべり面が柔軟な特性を要求されるのに対して、従来のDLC膜が硬くて変形による内部応力が大きく、基材の変形に追随できないことにあると考え、DLC膜をより柔軟にすることに着目した。そして、DLC膜の硬度を従来よりも十分に低くして、DLC膜を一層柔軟にすることにより、DLC膜が基材の変形に十分追随できるようになり密着性がさらに向上することを確認した。
具体的には、DLC膜のマルテンス硬さが2000N/mm以下であれば基材の変形に追随することができ、基材との密着性が良好でありDLC膜の剥離を充分抑制できることが分かった。一方、良好な耐磨耗性の観点より100N/mm以上であることが好ましい。
マルテンス硬さの測定は、DIN EN ISO 14577に準じて行う。超微小硬さ計を用い、荷重0.5mNとし、押し込み速度0.5mN/7sec、押し込み保持時間10secとする。従来のビッカース、ヌープ法では、圧子が深く入るため、柔らかい基材上のDLC膜の硬さを精度よく計ることは難しい。超微小硬さ計を用いることで、押し込み深さは約0.1μmとなり、基材の硬さ、剛性を除いたDLC膜の硬さ測定を行うことができる。補正は、ガラス標準(BK7)で行う。
なお、DLC膜のマルテンス硬さは、たとえば、プラズマCVDによりDLC膜を形成するときの高周波電力を変えることにより制御でき、DLC膜のマルテンス硬さを前記の範囲に調整することができる。
請求項10に記載の発明は、
前記DLC膜のマルテンス硬さが、被研磨物のマルテンス硬さの±30%以内であることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
DLC膜のマルテンス硬さを被研磨物のマルテンス硬さと同等かそれに近い硬さにすると、DLC膜が剥離脱落しても、被研磨物に傷が入ることを抑制することができる。そして、DLC膜の耐磨耗性と被研磨物への傷防止を考慮すると、DLC膜のマルテンス硬さは、被研磨物のマルテンス硬さの±30%であることが好ましいことが分かった。
本発明に係る研磨装置用キャリアは、半導体ウェハや記録メディアの両面研磨用として好ましく用いることができる。そして、これら半導体ウェハや記録メディアの材料となるシリコンウェハ、ガラス、アルミニウムの一般的なマルテンス硬さは、それぞれ1000N/mm、2000N/mm、200N/mm程度であり、研磨装置用キャリアのすべり面のマルテンス硬さをこれらの±30%の範囲に含まれる値とすることが好ましい。
請求項11に記載の発明は、
前記DLC膜の膜厚が、0.5〜3μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
研磨装置用キャリアの寿命を長くするためには、DLC膜の膜厚を出来るだけ厚くすることが好ましいが、マルテンス硬さが高い上に膜厚が大きい場合には剥離し易くなる。DLC膜のマルテンス硬さは、耐磨耗性と密着性の観点から前記の通り100〜2000N/mmであることが好ましいが、研磨装置用キャリアの寿命を長くする観点からは1000〜2000N/mmであることが好ましい。そしてこのようなマルレンス硬さを考慮すると、DLC膜の膜厚は0.5μm〜3μmが好ましい。
なお、DLC膜の膜厚は、SEMによる断面膜厚測定により測定することができる。また、DLC膜の膜厚は、成膜時間や高周波電力により制御することができる。
請求項12に記載の発明は、
前記DLC膜の面粗度Rが、0.1μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
研磨装置用キャリア表面の凹凸が大きい部分は、極端に磨耗し易く、磨耗剥離が生じる恐れがある。DLC膜の面粗度Rを0.1μm以下にすれば、DLC膜の磨耗が平均化され、DLC膜の磨耗剥離を抑制することができる。ここでRは最大高さを表し、ミツトヨ社製表面粗さ測定機などにより測定することができる。
請求項13に記載の発明は、
前記研磨装置用キャリアに設けられた被研磨物挿入用の開口部および外周ギア部の少なくとも一方をマスキングした後、前記基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法である。
実際に研磨装置用キャリアに被研磨物を保持させ、研磨装置に組み込んで研磨を行った場合、研磨中に局所面圧がかかる被研磨物挿入用の開口部および外周ギア部においてDLC膜の剥離が生じ易いことが認められた。
請求項13に記載の発明においては、局所面圧がかかる被研磨物挿入用の開口部および外周ギア部の少なくとも一方にマスキングをした後、前記基材のすべり面にDLC膜を形成することにより、これらの部分にはDLC膜が形成されないため、DLC膜の剥離が生じることがない。そして、前記開口部や外周ギア部に限定してDLC膜を形成しない部分を設けても偏磨耗などによる耐久性の低下が生じないことが確認できた。
請求項14に記載の発明は、
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法によって製造されたことを特徴とする研磨装置用キャリアである。
請求項14に記載の発明に係る研磨装置用キャリアは、前記した製法に基づく研磨装置用キャリアであるため、寿命が長く、被研磨物に傷を付けることが少なく、金属不純物汚染を発生させることがない。
請求項15に記載の発明は、
シリコンウェハ、ガラス、アルミニウムの表面を研磨するために用いることを特徴とする請求項14に記載の研磨装置用キャリアである。
本発明の研磨装置用キャリアは、その特性により傷や金属不純物汚染を発生させることがなく、高度に平坦化することが要求される半導体や記録メディアなどに用いられるシリコンウェハ、ガラス、アルミニウムの表面を研磨するための研磨装置用キャリアとして好適である。
請求項16に記載の発明は、
請求項14または請求項15に記載の研磨装置用キャリアを、研磨布が貼付された上下研磨プレートの間に配置し、前記研磨装置用キャリアに形成された開口部に被研磨物を保持させ、その後前記被研磨物を上下研磨プレートで挟み込んで被研磨物の両面を研磨することを特徴とする両面研磨方法である。
請求項16に記載の発明においては、長寿命化が図られ、被研磨物に傷が付かないようにされ、かつ金属不純物汚染を発生しない本発明の研磨装置用キャリアを用いて被研磨物を研磨するため、品質の高い被研磨物を低コストで提供することができる。
請求項17に記載の発明は、
請求項13に記載の研磨装置用キャリアの製造方法に用いられるマスキング治具であって、前記開口部と略等しい平面形状を有し、前記基材の開口部に嵌合される柱状部と、前記柱状部の側面に略直角に突出して設けられた鍔部とを備えることを特徴とするマスキング治具である。
請求項17に記載の発明に係るマスキング治具は、請求項13に記載の研磨装置用キャリアの製造方法に用いるマスキング治具として、構造が簡単でありながら研磨装置用キャリアの開口部の確実なマスキングを実現することができる。
請求項18に記載の発明は、
請求項13に記載の研磨装置用キャリアの製造方法に用いられるマスキング治具であって、前記基材と略等しい大きさの開口部を有し、前記基材の外周部に嵌合される環状部と、前記環状部の開口部側面に略直角に突出して設けられた鍔部とを備えることを特徴とするマスキング治具である。
請求項18に記載の発明に係るマスキング治具は、簡単な構造でありながら研磨装置用キャリアの外周部の確実なマスキングを実現することができるマスキング治具である。
本発明により、基材とDLC膜の密着性を向上させることができるため、研磨装置用キャリア自身の長寿命化を図ることができると同時に、剥離したDLC膜により被研磨物に傷を付けない研磨装置用キャリアを容易に提供することができる。
本発明の研磨装置用キャリアの一例を模式的に示す正面図および平面図である。 本発明に使用されるプラズマCVD装置の概略構成を示す図である。 本発明の研磨方法に用いる両面研磨装置の一例を示す断面図である。 本発明の研磨方法に用いる両面研磨装置の一例を示す平面図である。 本発明におけるマスキング治具の一例を模式的に示す断面図である。 本発明におけるマスキング治具の他の例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
以下においては、はじめに本実施の形態に係る研磨装置用キャリアおよびDLC膜形成方法の概要を説明し、その後、実施例について説明する。
1.研磨装置用キャリア
本発明の研磨装置用キャリアの一実施の形態を、図1を用いて説明する。図1(a)は本発明の一実施の形態に係る研磨装置用キャリアを模式的に示す正面図であり、(b)は平面図である。なお、図1(a)においては、図面を見易くするため、外周ギア部のギアの記載を省略している。図1において研磨装置用キャリア1の基材2は、材質が樹脂からなり、そのすべり面がDLC膜3でコーティングされている。また、研磨装置用キャリア1は開口部4を有し、必要に応じて開口部4の内周に沿って半導体ウェハなどの被研磨物のエッジ部に傷をつけないようにするためのインサート素材(図示せず)が設けられている。一方、研磨装置用キャリア1の外周には外周歯により構成された外周ギア部5が設けられている。
2.DLC膜の形成方法の概要
(1)前処理(プラズマ暴露)
本発明においては、基材のすべり面へのDLC膜の形成に先だって基材のすべり面とDLC膜の密着性を向上させるため、基材2のプラズマ暴露が行われる。プラズマ暴露は、図2に示すプラズマCVD装置を用いて行う。図2において、チャンバー20には、真空に排気するための排気ポンプ21とプロセスガスを供給するプロセスガスボンベ27が必要な弁などを介して接続されている。排気ポンプ21とチャンバー20間には、圧力調整弁22が設置され、チャンバー20内が所定圧力に調整できるようにされている。プロセスガスボンベ27には圧力調整弁22が取り付けられ、圧力調整弁22とチャンバー20間には、MFC(流量調節器)26が設置され、ガス流量が所定の流量となるようにコントロールされている。チャンバー20内には、接地電極23と高周波電極24が設置され、基材2は高周波電極24上に置かれる。高周波電極24には、任意波形装置30に接続された高周波アンプ29からマッチングボックス28を介して高周波電力が供給され、接地電極23と高周波電極24間にプラズマが生成される。基材2の温度上昇を抑えるため、高周波電極24は、水冷され、またパルス変調運転が可能な装置となっている。高周波電極24には、必要に応じて基材2を成膜温度に加熱するためのヒーター25が設けられる。
以上のプラズマCVD装置を用いて基材2を、高周波電極24の上にセットした状態で、チャンバー20の排気を行った後、チャンバー20内にフッ素含有ガス等の前処理用のプロセスガスを導入して雰囲気の圧力を所定の圧力に設定した後、高周波電力を印加し、プラズマを生成させて基材2をプラズマ暴露する。
(2)DLC膜の形成
次に、前記プラズマ暴露を行った基材2のすべり面に図1に示したDLC膜3を形成する。DLC膜の形成はプラズマ暴露に使用したプラズマCVD装置を用いて行う。プラズマ暴露を行った基材2を、図2に示したプラズマCVD装置の高周波電極24の上にセットした状態で、チャンバー20の排気を行った後、チャンバー20内にメタンガス等のDLC膜形成用のプロセスガスを導入して高周波電力を印加し、プラズマを生成させて基材2のすべり面にDLC膜3を形成する。
なお、DLC膜の形成に際して、プラズマを生成させるために印加する高周波電力(出力)以外の条件を一定とし、高周波電力(出力)の大きさを調節することによりDLC膜のマルテンス硬さを制御することができることを実験により確認した。
具体的には、厚さ1mmのガラス繊維含有エポキシ樹脂製の基材を公知の成形方法により作製し、この基材のすべり面に以下に示す条件において厚さ1μmのDLC膜を形成し、形成されたDLC膜のマルテンス硬さを調べた。
・プロセスガス :メタンガス
・高周波電極の直径:1200mm
・高周波電力 :(周波数)13.56MHz
:(出力)500W、1000W、1500W、2200W、
2700W
高周波電力(出力)を上記した値に設定したときに形成されるDLC膜のマルテンス硬さは表1に示す通りであった。
Figure 2009190165
表1に示した結果から高周波電力(出力)を調節することによって、DLC膜のマルテンス硬さを所望の値に制御することができることが確認できた。
3.実施例および比較例
次に実施例について説明する。以下に記載する実施例においては、前記したDLC膜の形成方法に従って前処理(プラズマ暴露)の条件、DLC膜のマルテンス硬さ、DLC膜形成時のマスキング治具の使用に関して異なる種々の研磨装置用キャリアを作製し、両面研磨装置に装着して行った実装試験によりその性能を評価した。
(1)実施例1、比較例1、2
実施例1、比較例1は、前処理(プラズマ暴露)時間を変えた例である。
イ.研磨装置用キャリアの作製
a.前処理
直径450mm、厚さ1mmの大きさのガラス繊維含有エポキシ樹脂製の基材を、表3に示すように、プロセスガスにHを用い、処理時間を5分、6分、8分、10分、15分と変えて前処理(プラズマ暴露)を行った。
b.ガラス繊維露出部のチェック
前処理(プラズマ暴露)後、DLC膜の形成に先だって基材のすべり面を対象として、ガラス繊維露出部の有無、露出部の大きさ(面積)および隣合う露出部間の距離は、エネルギー分散法により、ガラス繊維に起因する元素Mの濃度分布で調べた。表2に測定方法の具体例の詳細を示す。
Figure 2009190165
尚、測定方法としては、上記のエネルギー分散法以外に、X線光電子分光分析、オージェ電子分光分析、電子エネルギー損失分光分析などを用いることができる。
c.DLC膜の形成
DLC膜形成用プロセスガスにメタンガスを用いて、高周波電力(出力)を前記した500〜2700Wの範囲で変化させてプラズマCVDを行い、基材のすべり面上に膜厚1μmのDLC膜を形成した。また、比較のため基材のプラズマ暴露を実施しない研磨装置用キャリアも比較例1として作製した。
表3に実施例1、比較例1の基材、プラズマ暴露、DLC膜の形成についてまとめて記載する。なお、表3にはDLC膜を形成していない未コート品も比較例2として記載してある。
Figure 2009190165
ロ.実装試験
作製した研磨装置用キャリアを両面研磨装置に装着し、実装試験(摺動耐久試験)を行い研磨装置用キャリアのDLC膜の剥離の発生状況を調べた。また、DLC膜による磨耗量の減少を確認するため、DLC膜をコートしてない研磨装置用キャリア(未コート品)(比較例2)についても同じ条件の下に実装試験を行い、DLC膜をコートした実施例1aの中のマルテンス硬さ1000N/mmの研磨装置用キャリア(実施例1a−3)と磨耗量を比較した。
a.試験方法
図3、図4に半導体ウェハを挿入した研磨装置用キャリアを装着した両面研磨装置を示す。図3は図4中のX−X’における断面図である。図4は上研磨プレートを取り除いた状態における平面図である。図3において研磨装置用キャリア1を装着した両面研磨装置10は、上下に相対向して設けられた上研磨プレート11と下研磨プレート12を備えており、各研磨プレート11、12の対向面側には、それぞれ研磨布11a、12aが貼付されている。また図4に示すように、研磨装置10の円の中心部にはサンギア13が、周縁部にはインターナルギア14が設けられている。半導体ウェハWは研磨装置用キャリア1の開口部に保持され、上研磨プレート11と下研磨プレート12の間に挟まれている。サンギア13及びインターナルギア14の各歯部には研磨装置用キャリア1の外周歯が噛合しており、サンギア13が駆動源(図示せず)によって回転されるのに伴い、研磨装置用キャリア1は自転しつつサンギア13の周りを公転する。また、上下の研磨プレート11、12も回転する。このとき半導体ウェハWは研磨装置用キャリア1の開口部4で保持されており、上下の研磨布11a及び12aにより両面が同時に研磨される。
なお、実装試験の条件の詳細は表4に示す通りである。
Figure 2009190165
b.試験結果
実施例1および比較例1による各研磨装置用キャリアのガラス繊維露出部のチェック結果、マルテンス硬さおよび実装試験終了後のDLC膜の剥離の程度について表5に示す。併せてDLC膜形成による磨耗量の減少を確認するために行った実施例1a−3と比較例2の磨耗量を調べた結果も表5に示す。
Figure 2009190165
上記表中、DLC膜剥離は目視によって剥離の程度を評価した結果であり、「無し」、「少し」の場合が好ましい。また、測定誤差内とは測定にかからないほど磨耗量が小さかったことを示す。
(DLC膜の剥離の発生状況)
表5に示すように、基材の前処理時間が5分の実施例1aおよび前処理を行っていない比較例1では基材のすべり面にガラス繊維露出部分の形成が認められなかった。一方前処理時間を6分、8分、10分、15分とした実施例1b、1c、1dおよび1eではガラス繊維露出部分が認められ、ガラス繊維露出部の大きさおよびその間隔の大きさは表5に示す通りであった。表5に示す結果より、ガラス繊維露出部の1個の最大面積がそれぞれ0.25μm、0.8μmである実施例1b、1cは、DLC膜のマルテンス硬さが高い領域では1μmである1dに比べてDLC膜の剥離がより抑制されていることが分かる。また、ガラス繊維露出部の形成を抑制するためには、前処理時間が5〜10分が好ましく、5分が最も好ましい。
(研磨装置用キャリアの磨耗量)
なお、実施例1a−3(前処理時間5分、マルテンス硬さ1000N/mmのDLC膜形成は)における研磨装置用キャリアの磨耗量は測定誤差以下だったのに対して、比較例2(未コート品)には24〜26μmの摩滅が見られた。即ち、DLC膜を形成してすべり面の硬さを大きくすることにより研磨装置用キャリアの摩滅を低減し耐久性を向上させることができることが確認された。
表5から以下の傾向があることが分かる。
(イ)すべり面にDLCコート膜を形成することにより、磨耗量が低減される。
(ロ)基材をプラズマ暴露した後にDLC膜を形成するとDLC膜の剥離が抑制される。また、DLC膜のマルテンス硬さが小さい程DLC膜の剥離が抑制される。
(ハ)プラズマ暴露をし過ぎて基材のすべり面に強化繊維露出部分が形成されると、強化
繊維露出部分のDLC膜が剥離し易くなる。
なお、マルテンス硬さが50N/mmのDLC膜を形成した場合はDLC膜が早期に摩滅し、一方マルテンス硬さが2500N/mmのDLC膜を形成した場合は耐摩耗性には優れるが、DLCの剥離粉がウェハに傷を発生させることが分かった。
(2)実施例2
実施例2は、前処理用プロセスガスとしてフッ素含有ガスを用いた例である。
前処理用プロセスガスとしてHに替えて6フッ化硫黄ガス(SF)を用いたこと以外は前処理、DLC膜の形成ともに実施例1aと同じ条件で研磨装置用キャリアを作製し、実施例1と同様に実装試験を行い、DLC膜の剥離の発生状況を調べた。
(3)実施例3
実施例3は、前処理用プロセスガスとしてOを用いた例である。
前処理用プロセスガスとして酸素ガス(O)を用いたこと以外は前処理、DLC膜の形成ともに実施例1aと同じ条件で研磨装置用キャリアを作製し、実施例1と同様に実装試験を行い、DLC膜の剥離の発生状況を調べた。
表6に実施例2および実施例3の研磨装置用キャリアにおける前処理後の基材のすべり面におけるガラス繊維露出部分の有無、実装試験後のDLC膜の剥離状況を調べた結果を示す。
Figure 2009190165
上記表中、DLC膜剥離は目視によって剥離の程度を評価した結果であり、「無し」、「少し」は好ましいことを示す。
前処理用プロセスガスにSF、Oを用い、5分間のプラズマ暴露を行った場合、ガラス繊維露出部が形成されず、Hを用い5分間のプラズマ暴露を行った実施例1aの場合に劣らずDLC膜の剥離が抑制されていることが分かる。
(4)実施例4
実施例4は、研磨装置用キャリアの外周ギア部にマスキングしてDLC膜を形成する例であり、図5に模式的に示した断面図で表されるマスキング治具41を用いてマスキングしてDLC膜を形成する。マスキング治具41は基材2の外周と略等しい大きさを有する環状部42の開口部側面に略直角に突出して設けられた鍔部43を備えている。基材2の外周ギア部に環状部42が嵌合され、外周ギア部の近辺が鍔部43で覆われてマスクされている。この結果、DLC膜3はマスキング領域R2を除いた部分に形成される。
実施例4においては、研磨装置用キャリアの外周ギアの溝底から1mm内側までの外周ギア部をマスキングしてDLC膜を形成したこと以外は、前処理、DLC膜の形成共に強化繊維露出部が形成されない実施例1aと同じ条件で研磨装置用キャリアを作製した。
(5)実施例5
実施例5は、被研磨物を挿入するために設けた開口部にマスキングしてDLC膜を形成する例である。図6に模式的に示した断面図で表されるマスキング治具31を用いてマスキングしてDLC膜を形成する。マスキング治具31は、基材2の開口部4と略等しい断面を有する柱状部32の上部側面に略直角に突出して設けられた鍔部33を備えている。基材2の開口部4に柱状部32が嵌合され、開口部4の周辺部が鍔部33で覆われてマスクされている。この結果、DLC膜3は基材2のすベリ面のうちマスキング領域R1を除いた部分に形成される。
実施例5においては、研磨装置用キャリアの開口のエッジから外側1mmまでの開口部をマスキングしてDLC膜を形成したこと以外は、前処理、DLC膜の形成ともに実施例1aと同じ条件で研磨装置用キャリアを作製した。
実施例4および実施例5の実装試験
実施例4および実施例5で作製した研磨キャリアを用いて前記実施例1と同じ条件において実装試験を行った。なお、剥離の発生状況に替えて、剥離の影響が一層顕著に現れる被研磨物の傷の発生状況を調べた。また、比較のためマスキングをしていない前記実施例1aと同一条件で作製した研磨装置用キャリアについても同様の試験を行った。試験結果を表7に示す。
Figure 2009190165
上記表中、被研磨物の傷は目視によって傷の程度を評価した結果であり、「無し」、「少し」の場合が好ましい。
表7より、剥離が生じやすい開口部や外周ギア部をマスクすることで、被研磨物の傷の発生が抑制されることが分かる。即ち、マルテンス硬さが1000N/mm以上のDLC膜の剥離が生じ易い条件下でも、外周ギア部とその周辺、開口部とその周辺をマスキングした場合、DLC膜の剥離が抑制され、被研磨物の傷の発生が抑制できることが分かる。
なお、図5や図6に示したマスキング治具41、31が研磨装置用キャリア1にのり上げる幅(マスキング領域R2、R1)は外周ギアの溝底および開口のエッジから1mm以下が好ましい。この幅が大き過ぎると、この部分の偏磨耗から、研磨装置用キャリアの寿命が短くなる場合がある。
(6)強化繊維露出部が無いことおよび強化繊維露出部の面積、間隔の判定方法
前記エネルギー分散法を用いた強化繊維に起因する元素の濃度分布の測定結果から強化繊維露出部の面積が所定の大きさ以下であるか否か、また強化繊維露出部の間隔が所定の大きさ以上であるか否かを判定することができる。以下ガラス繊維露出部を例に採って強化繊維露出部の面積および間隔の判定方法について説明する。なお、以下に示すエネルギー分散法を用いた強化繊維に起因する元素の濃度分布の具体的な測定は前記表2に示した方法に基づく。
イ.ガラス繊維露出部の有無の判定について
エネルギー分散法を用いたガラス繊維に起因する元素M(O、Si、Ca)およびCの濃度分布の測定においてC:82atm%以上、O:14atm%以下、Si:3.5atm%以下、Ca:1.4atm%以下であればガラス繊維露出部が無いと見做すことができる。表8に測定結果の1例を示す。比較のためにガラス繊維完全露出の測定結果を示す。また参考データとして、樹脂のみからなる試料、樹脂の表面にDLC膜をコートした試料の測定結果を表8に併せて示す。
Figure 2009190165
ロ.ガラス繊維露出部1個の面積の大きさの判定について
ガラス繊維露出部の中心でエネルギー分散法により測定した結果が、C:80atm%以上、O:14atm%以下、Si:4.0atm%以下、Ca:2.0atm%以下であればガラス繊維露出部1個の面積が1.0μm未満であると見做すことができる。表9に1例としてガラス繊維露出部1個の面積が1.0μm未満に該当する0.8μmである試料の測定結果を示す。また比較のためガラス繊維露出部1個の面積が1.2μmである試料の測定結果を表9に併せて示す。
Figure 2009190165
ハ.ガラス繊維露出部同士の間隔とガラス繊維露出部1個の面積の大きさの判定
ガラス繊維露出部同士の間隔の中心位置でエネルギー分散法により測定した結果が、C:78atm%以上、O:16atm%以下、Si:3.6atm%以下、Ca:2.0atm%以下であればガラス繊維露出部同士の間隔が0.5μm以上であると見做すことができる。1例として表10にガラス繊維露出部同士の間隔が0.5μmである試料の測定結果を示す。また、比較のためガラス繊維露出部1個の面積が前記と同じで、間隔が0.4μmの試料の測定結果を表10に併せて示す。
また、ガラス繊維露出部同士の間隔の中心位置でエネルギー分散法により測定した結果が、C:79atm%以上、O:15atm%以下、Si:4.0atm%以下、Ca:2.0atm%以下であればガラス繊維露出部1個の面積が0.25μm未満であって、間隔が1μm以上であると見做すことができる。1例として表10にガラス繊維露出部1個の面積が0.25μm未満に該当する0.16μmであって、間隔が1μmである試料の測定結果を示す。また、比較のためガラス繊維露出部1個の面積が0.25μmであって、間隔が0.9μmである試料の測定結果を併せて表10に示す。
Figure 2009190165
なお、上記に示した判定方法は、O、Si、Ca、Cの濃度分布が特定の条件を満たす場合に、強化繊維露出部の面積や間隔が特定値以下あるいは以上と見做すことができることを示すものであり、O、Si、Ca、Cの濃度分布が、上記以外の場合には、強化繊維露出部の面積や間隔が上記の値以下あるいは以上とはならないことまでを示すものではない。
1 研磨装置用キャリア
2 基材
3 DLC膜
4 開口部
5 外周ギア部
11 上研磨プレート
12 下研磨プレート
11a 12a 研磨布
13 サンギア
14 インターナルギア
20 チャンバー
21 排気ポンプ
22 圧力調整弁
23 接地電極
24 高周波電極
25 ヒーター
26 MFC
27 プロセスガスボンベ
28 マッチングボックス
29 高周波アンプ
30 任意波形装置
31 41 マスキング治具
32 柱状部
33 43 鍔部
42 環状部
R1 R2 マスキング領域
W 半導体ウェハ

Claims (18)

  1. 樹脂を母材とする研磨装置用キャリアの基材のすべり面をプラズマに暴露した後、前記基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする研磨装置用キャリアの製造方法。
  2. 前記樹脂が、ガラス繊維、アラミド繊維およびカーボン繊維から選択された1種以上の強化繊維を含有する繊維強化樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  3. プラズマに暴露することによって前記基材のすべり面に露出したいずれの強化繊維露出部についても、1個の面積が1.0μm未満である基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  4. プラズマに暴露することによって前記基材のすべり面に露出したいずれの強化繊維露出部についても、隣合う前記強化繊維露出部との間隔が0.5μm以上である基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  5. プラズマに暴露することによって前記基材のすべり面に露出したいずれの強化繊維露出部についても、1個の面積が0.25μm未満であると共に、隣合う前記強化繊維露出部との間隔が1μm以上である基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項2に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  6. プラズマに暴露した後の前記基材のすべり面に強化繊維露出部が形成されていないことを特徴とする請求項2に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  7. 前記プラズマが、フッ素含有ガス、水素ガスおよび酸素ガスから選択される1種以上のガスのプラズマであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  8. プラズマCVD法により前記DLC膜を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  9. 前記DLC膜のマルテンス硬さが、100〜2000N/mmであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  10. 前記DLC膜のマルテンス硬さが、被研磨物のマルテンス硬さの±30%以内であることを特徴とする請求項9に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  11. 前記DLC膜の膜厚が、0.5〜3μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  12. 前記DLC膜の面粗度Rが、0.1μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  13. 前記研磨装置用キャリアに設けられた被研磨物挿入用の開口部および外周ギア部の少なくとも一方をマスキングした後、前記基材のすべり面にDLC膜を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法。
  14. 請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の研磨装置用キャリアの製造方法によって製造されたことを特徴とする研磨装置用キャリア。
  15. シリコンウェハ、ガラス、アルミニウムの表面を研磨するために用いることを特徴とする請求項14に記載の研磨装置用キャリア。
  16. 請求項14または請求項15に記載の研磨装置用キャリアを、研磨布が貼付された上下研磨プレートの間に配置し、前記研磨装置用キャリアに形成された開口部に被研磨物を保持させ、その後前記被研磨物を上下研磨プレートで挟み込んで被研磨物の両面を研磨することを特徴とする両面研磨方法。
  17. 請求項13に記載の研磨装置用キャリアの製造方法に用いられるマスキング治具であって、前記開口部と略等しい平面形状を有し、前記基材の開口部に嵌合される柱状部と、前記柱状部の側面に略直角に突出して設けられた鍔部とを備えることを特徴とするマスキング治具。
  18. 請求項13に記載の研磨装置用キャリアの製造方法に用いられるマスキング治具であって、前記基材と略等しい大きさの開口部を有し、前記基材の外周部に嵌合される環状部と、前記環状部の開口部側面に略直角に突出して設けられた鍔部とを備えることを特徴とするマスキング治具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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