JP2009187767A - 電子源構造体及び電子源構造体駆動装置 - Google Patents

電子源構造体及び電子源構造体駆動装置 Download PDF

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喜之 山本
Akihiko Ueda
暁彦 植田
Yoshiki Nishibayashi
良樹 西林
Takahiro Imai
貴浩 今井
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Abstract

【課題】本発明は、電子放射陰極を安定に把持し、微小ビームを長期間安定に取り出すことが可能な電子源構造体及び電子源構造体駆動装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る電子源構造体は、少なくとも、ダイヤモンドからなる電子放射陰極と、前記電子放射陰極を把持する一対の導電性支柱と、前記導電性支柱を貫通して前記電子放射陰極を把持する応力を発生させるための金属ネジ及びナットと、前記金属ネジおよびナットが貫通し、前記金属ネジおよびナットと前記導電性支柱との間の電気的絶縁を保つための絶縁碍子と、前記導電性支柱を固定するための一対の電極端子と、前記端子を具備する絶縁体と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子線描画装置や電子顕微鏡、あるいはX線管等の電子ビーム利用装置に用いられる電子源の構造体に関するものである。
電子線描画装置や電子顕微鏡などの電子線利用装置に用いられる電子源としては、例えば特許文献1に記載されているように、高配向性炭素材料などの通電加熱可能なヒーターを用いてLaB6等の電子放射陰極を挟み込み、さらに導電性の支柱で前記ヒーターごと電子放射陰極を把持したものが利用されている。あるいは、先鋭化したタングステンを電子放射陰極として用いる場合には、金属ワイヤにタングステン電子放射陰極を溶接した構造のものが利用されている。
すなわち、金属ワイヤに高い位置精度・高い接合強度を保ちながら接合できる金属製の電子放射陰極以外の電子放射陰極を利用する場合には、機械的に挟み込んで把持する方式が多用されている。
ダイヤモンドは、低い仕事関数・負の電子親和力など、電子放射陰極として類まれな性質を有している(非特許文献1、2)。仕事関数が小さいほど、同一の電界強度、同一の温度であれば電子放出密度を高くできる。電子放出密度が高くなると、電流密度が高くなり、電子放出中の発熱も大きくなるが、ダイヤモンドは室温で物質中最高の熱伝導率を有し、電子放出部で発生した熱を効率的に拡散、冷却することができる。ダイヤモンドは、共有結合性物質であり、そのC−C結合は非常に強固であり、電子源としての耐久性も優れる。また、一般的に電子放出特性はその表面状態に影響を受けやすいが、ダイヤモンドの表面状態は他の材料のそれに比べて安定性にも優れるため、電子放出特性の安定性も高くなる。
また、非特許文献3のような先端径10nmが得られる微細加工技術があるので高輝度化についても問題ない。また、ダイヤモンドについては、上記電子親和力を有することが判明して以来、非特許文献4や特許文献2のような電子源がこれまでに提案されてきた。
ダイヤモンドを電子放射陰極として用いる場合、金属ワイヤに高い位置精度・高い接合強度を保ちながら接合・溶接することは難しく、機械的に挟み込んで把持する方式によって電子源構造体を形成することが多い。
ダイヤモンドを電子放射陰極として用いる場合、その用途によって熱電子放出モード、熱電界放出モード、電界電子放出モード等の動作モードをとりうる。熱電子放出モード、熱電界放出モードでは、チップ自体、もしくはチップ近傍に配置したヒーター部材に通電加熱し、チップ温度を1000℃以上に温度上昇させて動作させる。電界電子放出モードにおいては、動作時には室温もしくはそれに近い温度での動作となるが、動作前や場合によっては動作中も、安定性を確保するために通電加熱による安定化作業が必要になることがある。
ダイヤモンドは、前述のように電子放出陰極として類まれな優れた物性を有している。これにより、従来の電子放出陰極では達成し得ない、寿命が長く、ビーム径が小さく、大電流である特徴を備えた電子ビームを取り出すことができる。特に、微小ビームを長時間安定に取り出すためには、電子放出陰極そのものの長寿命、安定性、小さな仮想電子源径が必要だが、電子放出陰極を電子ビーム利用機器に搭載する際のモジュール(電子源構造体)も、把持力に対して長期間の高い安定性が求められる。
現在広く使用されている電子放射陰極のうち、最もビーム径が絞れ、大電流のビームを得ることができるものの一つとして、ZrO/W系の電子放射陰極を挙げることができるが、これは電子放射陰極材料としては先鋭化されたタングステン針を用いており、金属ワイヤ(一般にはタングステンが用いられる)に接合・溶接する方法で把持されている。
一方、ダイヤモンドは機械的に挟み込んで把持する方式によることが多い。この方法は、接合・溶接方式に比較して簡便に再現性良く位置を確認しながら把持することができる。しかし、ダイヤモンドを電子放射陰極として用いる場合に期待される、長寿命、小ビーム径といった特性を発揮させることを考慮すると、把持した後の位置の安定性において、特に電子放射陰極を高温で動作させたり、安定化作業のために高温に曝したりすると、熱膨張、熱収縮による把持力の低下、ひいては微妙な位置ずれが問題となることがあった。
F. J. Himpsel et al., Phys. Rev. B., Vol.20, Number 2 (1979) 624- J. Ristein et al., New Diamond and Frontier Carbon Technology, Vol. 10,No. 6, (2000) 363- Y. Nishibayashi et al., SEI Technical Review, 57, (2004) 31- W. B. Choi et al., J. Vac. Sci. Technol. B 14, (1996) 2051 - 特公昭60−23456号公報 特開平4−67527号公報
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、電子放射陰極を安定に把持し、微小ビームを長期間安定に取り出すことが可能な電子源構造体及び電子源構造体駆動装置を提供することを課題とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ダイヤモンドからなる電子放射陰極を絶縁碍子を介して導電性支柱により強固に把持することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る電子源構造体及び電子源構造体駆動装置は以下の構成を有する。
1)本発明に係る電子源構造体は、
少なくとも、
ダイヤモンドからなる電子放射陰極と、
前記電子放射陰極を把持する一対の導電性支柱と、
前記導電性支柱を貫通して前記電子放射陰極を把持する応力を発生させるための金属ネジ及びナットと、
前記金属ネジおよびナットが貫通し、前記金属ネジおよびナットと前記導電性支柱との間の電気的絶縁を保つための絶縁碍子と、
前記導電性支柱を固定するための一対の電極端子と、
前記端子を具備する絶縁体と、を有することを特徴とする。
2)上記1)に記載の電子源構造体において、前記導電性支柱が、1200℃、1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値が、10MPa以上である材質からなることを特徴とする。
3)上記1)又は2)に記載の電子源構造体において、前記導電性支柱が、タングステン、モリブデン及びこれらのいずれかにランタンを加えた合金のいずれかからなることを特徴とする。
4)上記1)〜3)のいずれか一に記載の電子源構造体において、前記金属ネジおよびナットが、1200℃、1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値が、10MPa以上である材質からなることを特徴とする。
5)上記1)〜4)のいずれか一に記載の電子源構造体において、前記金属ネジおよびナットが、タングステン、モリブデン及びこれらのいずれかにランタンを加えた合金のいずれかからなることを特徴とする。
6)上記1)〜5)のいずれか一に記載の電子源構造体において、前記ダイヤモンドからなる電子放射陰極の先鋭部又は該電子放射陰極からの電子線が貫通することが可能な貫通穴が設けられたウエネルトを有し、該ウエネルトが側面に複数の開口部を有し、該開口部のウエネルトの中心軸から見た開口角の合計が100°以上240°以下であり、該開口部の高さ方向の長さが4mm以上12mm以下であることを特徴とする。
7)本発明に係る電子源構造体駆動装置は、上記1)〜6)のいずれか一に記載の電子源構造体を有する電子源構造体駆動装置において、前記開口部を通して、電子源構造体の外部から電子放射陰極の発光特性を測定することにより電子放射陰極の温度を評価する測定器を有し、電子放射陰極に供給する電力を調整して電子放射陰極の温度を設定した温度に維持・調整することができることを特徴とする。
本発明に係る電子源構造体は、電子放射陰極を長期間安定に把持することができるため、微小ビームを長期間にわたって安定に取り出すことが可能となる。
上記本発明に係る電子源構造体は、一対の導電性支柱を、直接金属ネジとナットを用いて電子放射陰極(以下、単にチップ又はダイヤモンドチップとも記す)ごと挟み込むことによって、強固な把持力を得ることができる。このとき、一対の導電性支柱間が、前記金属ネジとナットによって導通することがないように、2個の絶縁碍子を挿入する必要がある。
まず1個の絶縁碍子に前記金属ネジを貫通させ、絶縁碍子を貫通した金属ネジごと一対の導電性支柱を貫通させる。さらに、前記絶縁碍子に接していない方の導電性支柱側からもう一つの絶縁碍子を金属ネジに貫通させ、この絶縁碍子を介してナットで締め付ける。こうすることにより、金属ネジおよびナットと導電性支柱の間の絶縁性を確保する。絶縁碍子には絶縁性のセラミック素材が適当であるが、高い把持力が得られ、かつ真空中、高温にさらされても脱ガスが抑制できる必要がある。材質としては主成分がアルミナであり、純度として99%以上を有するアルミナセラミックが適当である。
一対の導電性支柱でチップごと挟み込む時に、直接導電性支柱でチップを挟み込んでもよいが、主としてグラファイトからなる導電性ブロックを、導電性支柱とチップの間に挿入して挟みこんでも良い。
導電性支柱の高温クリープ強度が大きいものを採用することによって、1000℃以上の高温での把持力低下を防止することができる。具体的には、1200℃、1万時間で1%以上のクリープ変形を生じる応力が10MPa以上であり、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上であるとよい。タングステン、モリブデンおよびこれらにランタンを添加した合金、もしくはチタン、ジルコニウム、炭素を添加したモリブデン合金のいずれかから成ることが好ましい。これ以下の応力で変形するような材料では、ダイヤモンドから成る電子放射陰極を通電加熱等で1000℃以上に加熱した際、電子放射陰極先端の位置ずれや、ひどい場合には把持力が低下し脱落する恐れがある。
また、前記金属ネジおよびナットの高温での高いクリープ強度(1200℃、1万時間で1%のクリープ変形を起こす応力の値が10MPa以上、好ましくは20MPa以上、より好ましくは30MPa以上)も、高温での把持力維持に有効である。具体的には、タングステン、モリブデンおよびこれらのランタンを添加した合金、もしくはチタン、ジルコニウム、炭素を添加したモリブデン合金のいずれかからなることが好ましい。
通常、電子源構造体にはウエネルトと呼ばれる耐熱性金属製のキャップ状の部品が存在する。このキャップは、電子放射陰極の部分のみに貫通穴が開いていて、その穴から電子ビームが取り出せるようになっている。あるいは、電子放射陰極そのものがその貫通穴を貫通し、先端が外部に露出していて、そこから電子ビームが取り出せるようになっている。電子放射陰極がLaB6の場合は前者が多く、ZrO/Wでは後者のタイプが多い。通常、電子放射陰極を加熱して動作させる場合、電子放射陰極だけでなく電子放射陰極の周りの部材の温度も上昇している。ウエネルトで電子放射陰極以外の部分を覆っておかなければ、電子放射陰極の部分以外からの(熱)電子も下流の電子ビーム光学系に入射し、2次電子を発生させたりして、ビームの収束性に悪影響を与えてしまう。
電子源構造体を電子ビーム利用機器で駆動させる場合、電子源構造体をセットしたチャンバ内を超高真空に排気する。低真空や大気中では気体中の分子に電子が散乱され、所望の微細な電子ビームを取り出して収束させて利用することができない。動作条件の真空度が悪いと、電子放射陰極の寿命劣化や、内部部材のマイクロ放電などの問題を引き起こす。ウエネルトで完全に覆ってしまうと、その内部の排気コンダクタンスが低下し、真空度が悪くなってしまうので、空気抜き用として数箇所の2〜3mm程度の穴を開けている。大きく開けてしまうと前記の(熱)電子抑制の効果や、あるいは下流の電磁レンズ系の電界分布にも悪影響を与えるため、2〜3mm程度の穴を数箇所開けるのが通例であった。しかし、この程度の穴では、電子放射陰極を加熱したときに発生した熱がウエネルト内部に滞留し、導電性支柱や金属ネジ及びナットが、必要以上に高温にさらされ、把持力の低下を招くことがあった。
ダイヤモンドを電子放射陰極に用いた場合に期待される長寿命、小ビーム径といった特性を遺憾なく発揮させるためには、動作条件も高精度な調整が必要となる。電子放射陰極の温度は、電子放出特性に大きく影響するパラメーターである。特に、本発明で電子放射陰極として用いるダイヤモンドは、従来の電子放射陰極と異なり半導体としての性質を示す。そのため、従来の電子放射陰極の場合と比較して、電子放射特性が温度に大きく影響を受ける。従来の電子放射陰極を用いた電子源構造体においては、その電子放射陰極の温度を直接測定する方法がなく、得られる放出電流値等から、供給する電力を調整していたが、ダイヤモンドを用いる場合、特に安定な電子ビームを得るには限界があった。
そこで、本発明に係る電子源構造体は、上記問題点に鑑みて、ウエネルトとして、ダイヤモンドから成る電子放射陰極の先鋭部が貫通する穴が設けられ、このウエネルトの側面に設けられる開口部が、ウエネルト中心軸から見た開口角が100°以上240°以下であり、かつ高さ方向の長さが4mm以上12mm以下であることを特徴とする。ここで開口部は2個以上であり、かつ電子放射陰極の貫通する穴の中心に軸対称的に配置されることが好ましい。複数の開口部の開口角の総和が、好ましくは120°以上240°以下、より好ましくは140°以上200°以下がよい。高さ方向の長さについては、好ましくは4mm以上10mm以下、より好ましくは4mm以上8mm以下がよい。こうすることにより、電子放射陰極を加熱した時に、周囲の導電性支柱等が必要以上に高温に曝されることを防ぎ、把持力の低下を防ぎ、電子放射陰極の微小な位置ずれを防止することができる。ここで規定したよりも大きな穴を開けても、外部への放熱性はあまり変化がなく、逆にウエネルト自体の機械的強度が弱くなって、先端部の穴の位置ずれが生じやすくなったり、ウエネルト先端部からウエネルト下部への熱伝導も抑制されてウエネルト先端部の温度が上がりすぎ、貫通穴の位置ずれ等が生じて好ましくない。
さらにこの開口部を形成することにより、外部からの電子放射陰極の温度測定を可能にする。外部からの電子放射陰極の温度測定を行うためには、電子放射陰極の発光特性を測定する必要がある。従来のような小さな開口部では、その開口部を通して電子放射陰極を直接見込むことができず、電子放射陰極の発光特性を測定することが難しかった。本発明の電子源構造体は、ウエネルトの開口角が100°以上240°以下であり、開口部の高さ方向の長さが4mm以上12mm以下と開口部が十分大きいので、電子放射陰極を高温にした時の発光特性を放射温度計などで測定することが可能となった。この放射温度計などで測定した発光特性から求められる温度の値を基にして、電子放射陰極に供給する電力を調整することにより、電子放射陰極の温度を所望の温度に維持・調整することが可能となり、得られる電子ビームの安定性向上に寄与できる。
発光特性を評価する方法としては、例えば電子ビーム利用機器の真空チャンバに、赤外線透過窓を設けて、外部よりこの窓を通して一般的な放射温度計を用いて電子放射陰極の発光特性を評価する方法がある。赤外線透過窓としては、評価する発光特性の波長領域によって最適なものを選択すればよいが、例えば室温から1500℃位までの物体の発光特性を連続的に評価するには、波長8〜14μm帯の赤外線領域の測定によることが好ましく、この帯域を透過する窓材として例えばZnSeやダイヤモンドが挙げられる。これらの材料は、真空に対する屈折率が大きい(2以上)ので、表面における反射による透過率の低下が大きくなる。これを防止する意味で、一般的な無反射コート膜を窓材の表面もしくは表裏面に形成し、反射ロスを低減させることが好ましい。この帯域の赤外線を測定し、温度を計測する放射温度計としては、例えばNEC三栄社製のTH9100WRなどを用いることができる。このほか、電子ビーム利用機器の真空チャンバ中に、赤外線等の放射量を直接測定できる半導体素子を組み込むことによっても、発光特性を評価することができる。
(実施例1)
導電性支柱30としてモリブデンランタン合金、金属ネジ40、ナット41としてタングステン、絶縁碍子50として純度99%以上のアルミナ焼結体を利用し、ダイヤチップ10として導電性のB入りダイヤモンド単結晶を利用し、電子源100を構成した(図1)。端子70はコバール合金、碍子60は純度99%以上アルミナ焼結体を用いた。モリブデンランタン合金は、0.7%の酸化ランタンを添加したモリブデン合金を用いた。
ここで、ダイヤチップ10は、サイズが0.5×0.5×3mmであり、0.5×3mmの面4つのうち2面が(111)面であった。このうちの1つの(111)面上に、不純物としてリン(P)を添加したn型のホモエピタキシャルダイヤモンド膜を公知のマイクロ波プラズマCVD法により約1μmの厚さで形成した。この後、0.5mm角の面のうちの片方を先端半径約10μmに先鋭化加工し、電子放出部とした。
使用したモリブデンランタン合金、タングステンと同一製作ロット素材を抜き取り、高温クリープ強度試験を実施したところ、1200℃における1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値は、モリブデンランタン合金は22MPa、タングステンは45MPaであった。
ウエネルト20はモリブデン製のものを用い、側面に約7mm角の開口部21を4回対称に形成した(ウエネルトの中心軸に対する開口角αの合計は、約170度であった)(図2)。電子ビーム利用機器の電子銃室に搭載し、端子70、導電性支柱30を通じてダイヤモンドチップ(電子放射陰極)を通電加熱し、チップ温度として1200℃付近で維持した。引き出し電圧4kV、加速電圧30kVとし、サプレッサ電圧として240V付近で維持した。その結果、エミッション電流として100μA程度の放出電流が得られ、プローブ電流としては3nA、プローブ径10nmが得られた。
この条件で5000時間放置したが、チップ先端の位置ずれ、外れは生じなかった。このとき、同時にウエネルト側面に形成された開口部、アッセンブリの開口部を通して、電子ビーム利用機器の外部から放射温度計にてチップ温度の実測を行った。電子ビーム利用機器には、ウエネルト側面及びアッセンブリに設けられた開口部を通してチップが見込める位置に、波長8〜14μmの赤外線を透過する窓材(ZnSe)を有する窓が設置され、その窓を通して放射温度計でチップの温度を評価した。
ZnSe窓には、表面における反射ロスを抑制するためにフッ化物(BaF2)膜とZnSe膜の積層からなる多層膜を形成することにより、特に波長10〜12μmの領域において透過率を90%以上としたものを用いた。使用した放射温度計はNEC三栄社製のTH9100WRであった。チップ温度実測の結果、時間が経つと共に低下していく傾向にあったので、それを検知して、チップへの通電加熱電力を調整することにより、上記の5000時間にわたり、チップ温度として1200℃±20℃以内に維持することが出来た。更に、上記5000時間での任意の100時間をみたときのプローブ電流の安定度は0.04%であった。
(実施例2)
導電性支柱としてモリブデンにチタン、ジルコニウム、炭素を添加した合金を用いた以外は、実施例1と同様の実験を行った。このとき、導電性支柱に用いられた合金と同一製作ロットの素材について、高温クリープ強度試験を実施したところ、1200℃における1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値は、約68MPaであった。
実施例1と同様の電子ビーム利用機器に搭載し、導電性支柱を通してダイヤモンドチップを通電加熱し、チップ温度として1400℃とした。引き出し電圧3.5kV,加速電圧30kV,サプレッサ電圧220Vとしたところ、エミッション電流として約110μAが得られた。また、プローブ電流は4nA,プローブ径は10nmであった。
放射温度計によるチップ温度実測及び通電加熱電力調整も実施例1と同様に実施した。5000時間にわたって安定して電子放出を行うことができ、チップ先端の位置ずれや、チップのはずれ等のトラブルは皆無であった。また、チップ温度は約1400℃±20℃以内に維持することができた。更に、上記5000時間での任意の100時間をみたときのプローブ電流の安定度は0.05%であった。
(実施例3)
ダイヤチップとして、高圧合成ダイヤモンド単結晶Ib型を用いた。サイズ、面方位は実施例1と同様である。実施例1と同様に、(111)面にリン(P)添加ホモエピタキシャルダイヤモンド膜を形成した後、先端の先鋭化加工を施した。先端から約300μmを残して、ほぼ全面にチタン膜を0.05μm、モリブデン膜を約0.2μm、公知のマグネトロンスパッタ法により形成して使用した。
これ以外については、実施例2と同様の試験を行ったところ、エミッション電流として約125μA,プローブ電流約5nA,プローブ径10nmが得られた。さらに、5000時間の電子放出においてもチップ先端の位置ずれや、チップのはずれ等のトラブルは皆無であった。また、チップ温度は約1400℃±20℃以内に維持することができた。更に、上記5000時間での任意の100時間をみたときのプローブ電流の安定度は約0.05%であった。
(実施例4)
ダイヤチップとして、高圧合成ダイヤモンド単結晶IIa型を用いた。サイズ、面方位は実施例1と同様である。(111)面に、まず不純物としてホウ素(B)添加ホモエピタキシャルダイヤモンド膜を約1μm厚形成した上に、リン(P)添加ホモエピタキシャルダイヤモンド膜を形成した。その後の工程は実施例2と同様である。
エミッション電流としては、約130μA、プローブ電流約6nA,プローブ径10nmが得られた。さらに、5000時間の電子放出においてもチップ先端の位置ずれや、チップのはずれ等のトラブルは皆無であった。また、チップ温度は約1400℃±20℃以内に維持することができた。更に、上記5000時間での任意の100時間をみたときのプローブ電流の安定度は約0.05%であった。
(実施例5)
導電性支柱としてインコネル、金属ネジ、ナットとしてモリブデン、絶縁碍子としてステアタイト材を使用した以外は、実施例1と同様の電子源構造体を2組構成した。使用したインコネル、モリブデンと同一製作ロット素材を抜き取り、高温クリープ強度試験を実施したところ、1200℃における1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値は、インコネルは0.5MPa、モリブデンは12MPaであった。
まず1組目を電子ビーム利用機器の電子銃室に搭載し、端子70、導電性支柱30を通じてダイヤモンドチップ(電子放射陰極)を通電加熱し、チップ温度として550℃付近で維持した。引き出し電圧5kV、加速電圧30kVとし、サプレッサ電圧として370V付近で維持した。その結果、エミッション電流として25μA程度の放出電流が得られ、プローブ電流としては0.1nA、プローブ径10nmが得られた。5000時間にわたって安定して電子放出を行うことができ、チップ先端の位置ずれや、チップのはずれ等のトラブルは皆無であった。また、チップ温度は約550℃±10℃以内に維持することができた。更に、上記5000時間での任意の100時間をみたときのプローブ電流の安定度は0.03%であった。
残りの1組を同様に電子ビーム利用機器の電子銃室に搭載し、今度はチップ温度として1200℃付近で維持した。引き出し電圧4kV,加速電圧30kV,サプレッサ電圧240V付近で維持した。その結果、エミッション電流として約95μA程度の放出電流が得られ、プローブ電流としては約2nA、プローブ径10nmが得られた。このまま長時間維持しようとしたところ、約100hr維持したところで、突然チップ温度が低下し、エミッション電流も観測されなくなった。電子銃室から取り出したところ、チップが導電性支柱の把持から外れて脱落していた。
(実施例6)
ウエネルトのモリブデンの側面に開ける開口部のサイズを、従来電子銃と同様の約2mmφの円形とし、個数も回転対称に3個とした。αは20°以下となった。これ以外は実施例1と同様として、試験を行った。
電子ビーム利用機器の電子銃室に搭載し、チップ温度800℃付近で維持した。引き出し電圧4.5kV,加速電圧30kV,サプレッサ電圧300Vとした。その結果、エミッション電流として約40μA、プローブ電流は約0.5nA、プローブ径は約10nmが得られた。5000時間にわたって電子放出実験を行ったが、ウエネルトの側面の穴が小さいために、実施例1で実施したようなチップ温度の微調整は行うことができず、エミッション電流やプローブ電流の変化を見ながらチップ加熱への投入電力のフィードバックを行った。なお、初期に800℃と設定したのは、実施例1での投入電力とチップ温度の相関を元に推定したものである。その結果、上記5000時間での任意の100時間をみたときのプローブ電流の安定性は約0.2%となった。チップ先端の位置ずれやチップのはずれ等のトラブルは発生しなかった。
本発明に係る電子源構造体の構造の一例の概略を示す図である。 本発明に係る電子源構造体駆動装置の一例の概略を示す図である。
符号の説明
10 ダイヤモンドチップ
20 ウエネルト
21 開口部
22 貫通穴
30 導電性支柱
40 金属ネジ
41 ナット
50 絶縁碍子
60 碍子
70 端子
100 電子源

Claims (7)

  1. 少なくとも、
    ダイヤモンドからなる電子放射陰極と、
    前記電子放射陰極を把持する一対の導電性支柱と、
    前記導電性支柱を貫通して前記電子放射陰極を把持する応力を発生させるための金属ネジ及びナットと、
    前記金属ネジおよびナットが貫通し、前記金属ネジおよびナットと前記導電性支柱との間の電気的絶縁を保つための絶縁碍子と、
    前記導電性支柱を固定するための一対の電極端子と、
    前記端子を具備する絶縁体と、を有することを特徴とする電子源構造体。
  2. 前記導電性支柱が、1200℃、1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値が、10MPa以上である材質からなることを特徴とする、請求項1に記載の電子源構造体。
  3. 前記導電性支柱が、タングステン、モリブデン及びこれらのいずれかにランタンを加えた合金のいずれかからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電子源構造体。
  4. 前記金属ネジおよびナットが、1200℃、1万時間で1%のクリープ変形を生じる応力の値が、10MPa以上である材質からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の電子源構造体。
  5. 前記金属ネジおよびナットが、タングステン、モリブデン及びこれらのいずれかにランタンを加えた合金のいずれかからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の電子源構造体。
  6. 前記ダイヤモンドからなる電子放射陰極の先鋭部又は該電子放射陰極からの電子線が貫通することが可能な貫通穴が設けられたウエネルトを有し、該ウエネルトが側面に複数の開口部を有し、該開口部のウエネルトの中心軸から見た開口角の合計が100°以上240°以下であり、該開口部の高さ方向の長さが4mm以上12mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の電子源構造体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一に記載の電子源構造体を有する電子源構造体駆動装置において、前記開口部を通して、電子源構造体の外部から電子放射陰極の発光特性を測定することにより電子放射陰極の温度を評価する測定器を有し、電子放射陰極に供給する電力を調整して電子放射陰極の温度を設定した温度に維持・調整することができる電子源構造体駆動装置。
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