JP2009185426A - 脱墨パルプの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インキ剥離効果に優れた脱墨パルプの製造方法を提供する。
【解決手段】脱墨パルプを製造するにあたり、炭素数14〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも有するアミン化合物を、パルプ濃度が2〜20重量%のパルプスラリーに、パルプ100重量部に対して0.01〜1.0重量部を含有させ、搾水処理を行う工程を設ける。
【選択図】なし

Description

本発明は、国内外から回収される新聞古紙、雑誌古紙等をリサイクルすることによって再生紙を得る際に、フロテーション法、洗浄法もしくは、それらの折衷法で脱墨処理する脱墨パルプの製造方法に関する。
古紙の再生は古紙原料からインクを剥離し、剥離したインキを除去するいわゆる脱墨処理を施すことで、再生パルプを得て再生紙を製造することにより行われる。近年、美しく見栄えのよい印刷に対する需要の増大とそれに伴う印刷技術の進展により、紙とインキの結合が強固になってきている。また、夏場には熱や紫外線の影響で紙からインキが剥離しにくくなる現象(難剥離化)がより顕著になる。
これら印刷技術の進展や夏場の古紙原料の難剥離化に関わらず、安定した品質が得られる脱墨パルプの製造方法への期待が増大している。
一般的に脱墨パルプは、インキ剥離工程、インキ除去工程、パルプ洗浄工程を実施できる装置を備えた脱墨設備にて製造される。脱墨パルプの製造工程は、具体的には、パルパー、ニーダー、ケミカルミキサー、ディスパーザー等によるインキ剥離工程、フローテーター等によるインキ除去工程、シックナー、ウオッシャー、エキスト等による洗浄工程により構成され、所望の脱墨パルプ品質を得るために各製紙会社は、様々に各設備の配列、導入を実施している。
特にニーダーやケミカルミキサーあるいはディスパーザーには良好なインキ剥離効果を示すパルプ濃度範囲が存在する。しかしながら、原料古紙の成分変動や季節による温度の違いにより搾水処理での濃縮が困難となり、達すべきパルプ濃度範囲に到達しないばかりか、濃縮のための余分な動力費を費やすことになる。
一方、良質な脱墨パルプを得るために脱墨剤や脱墨方法を改良することが従来から種々提案されている。特許文献1には、白水循環系においても適度な歩留りを維持しつつ白色度を低下させず、残インキ面積率を低減できる脱墨システムを課題として、白水を含有する処理水を用いるフロテーション工程の少なくとも一部をカチオン性化合物、アミン、アミンの酸塩等の存在下に行う脱墨方法が開示されている。また、特許文献2には、粘着物質の除去にも有効な脱墨剤の提供を課題として、アルキルアミン化合物にアルキレンオキサイドを付加させてなる化合物を含有する脱墨剤をアルコール又は脂肪酸にアルキレンオキサイドを付加させてなる化合物や、脂肪酸と共にフローテーション工程や洗浄工程で用いることが開示されている。
特開平10−158985号公報 特開2002−327385号公報
前述の通り、印刷技術の進展や夏場古紙原料の難剥離化の影響により脱墨パルプの品質コントロールが年々困難になってきている。そのため、このような多様な原料古紙に対しても優れた脱墨効果が得られる技術が望まれている。
本発明の課題は、インキ剥離効果に優れ、例えば、紙とインキの結合が強固な古紙や難剥離化をおこした古紙のような脱墨しにくい原料古紙を用いた場合でも、脱墨パルプの歩留りを維持しつつ、より高い白色度の脱墨パルプが得られる脱墨パルプの製造方法を提供することである。
本発明は、古紙から脱墨パルプを製造する方法であって、炭素数14〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも有するアミン化合物を、パルプ濃度が2〜20重量%のパルプスラリーに、パルプ100重量部に対して0.01〜1.0重量部を含有させ、搾水処理を行う工程を有する、脱墨パルプの製造方法に関する。
本発明によれば、インキ剥離効果に優れた脱墨パルプの製造方法が提供される。本発明では、ニーダーやケミカルミキサーあるいはディスパーザーに導入されるパルプスラリー濃度を適切にコントロールする際、搾水工程前後におけるパルプ濃度の濃縮効率を向上させることができ、直後に実施される他の工程、例えば、ニーダーやディスパーザー等によるインキ剥離工程でのインキ剥離効果、あるいは酸化、還元系漂白剤による漂白工程での漂白効果の改善することで、残インキの少ない高品質な脱墨パルプを安定して得る事が可能になるものと推察される。
本発明では、パルプ濃度が2〜20重量%のパルプスラリーに、パルプ100重量部に対して0.01〜1.0重量部の炭素数14〜22、好ましくは炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも有するアミン化合物〔以下、(A)成分という〕を含有させ、その後、搾水処理を行う。(A)成分による搾水処理での脱水促進効果の点から、(A)成分をパルプスラリーに添加後、搾水処理をするまでに、パルパー、ニーダー、ケミカルミキサー、ディスパーザー等のインキ剥離工程を有さないことが好ましい。(A)成分のアミン化合物として、1級アミン、2級アミン、3級アミン及びこれらの酸塩並びに4級アンモニウム塩が挙げられる。酸塩として、酢酸塩等の有機酸塩、塩酸塩等の無機酸塩が挙げられる。4級アンモニウム塩として、水酸化物、塩化物等のハロゲン化物、モノアルキル(炭素数1〜3)硫酸エステル等による硫酸化物、無機又は有機酸の酸塩等が挙げられる。
本発明で(A)成分を用いることにより、搾水処理での脱水を促進する機構は不明であるが、特定のアミン化合物がパルプ表面に吸着しパルプ表面が疎水化され、その結果パルプの水切れが向上するためと考えられる。従って、本発明で用いる(A)成分は、特許文献2で用いられるアミン化合物のようなアルキレンオキサイド等の親水基を持たないものの方が、パルプ表面の疎水化の程度は高くなり、搾水処理での脱水の促進の程度も良好となると考えられるため、好ましい。
こうした観点から、(A)成分は、下記一般式(A1)〜(A4)で表される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。一般式(A1)〜(A3)は酸塩であっても良い。
Figure 2009185426
〔式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ、炭素数1〜22のアルキル基及び炭素数2〜22のアルケニル基から選ばれ、少なくとも1つは炭素数14〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、好ましくは炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基である。これ以外の残りは好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。これらは同一でも異なっていても良い。X-は対イオンであり、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、モノアルキル(炭素数1〜3)硫酸エステルイオン、無機又は有機酸から誘導された陰イオンであり、好ましくは塩化物イオン等ハロゲン化物イオンである。〕
なかでも脱墨パルプの白色度向上の観点から、一般式(A2)〜(A4)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、一般式(A4)で表される化合物がより好ましい。
一般式(A1)で表される化合物としては、脱墨パルプの白色度向上の観点から、R1が炭素数16〜20のアルキル基が好ましく、具体的にはステアリルアミンが好ましい。また、一般式(A2)で表される化合物としては、脱墨パルプの白色度向上の観点から、R1及びR2がいずれも炭素数16〜20のアルキル基が好ましく、具体的にはジステアリルアミンが好ましい。また、一般式(A3)で表される化合物としては、脱墨パルプの白色度向上の観点から、R1及びR2がいずれも炭素数16〜20のアルキル基、R3が炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、具体的にはエチルジステアリルアミンが好ましい。一般式(A4)で表される化合物としては、脱墨パルプの白色度向上の観点から、炭素数16〜20のアルキル基を少なくとも1つと、残りの基として炭素数1〜3のアルキル基を含むものが好ましく、具体的にはトリメチルステアリルアミン塩(なかでも塩化物)及びジメチルジステアリルアミン塩(なかでも塩化物)が好ましい。一般式(A2)で表される化合物及び一般式(A3)で表される化合物においては、炭素数14〜22、好ましくは炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基を2つ以上、更に2つ有するものが好ましい。一般式(A4)で表される化合物で表される化合物においては、炭素数14〜22、好ましくは炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基を1つ又は2つ有するものが好ましい。
(A)成分の添加量は、パルプ100重量部(絶乾重量基準)に対して0.01〜1.0重量部であり、好ましくは0.1〜0.7重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量部である。
また、本発明では、パルプ濃度が2〜20重量%、好ましくは2〜5重量%のパルプスラリーに(A)成分を添加する。このスラリーは、パルプと水とを含有する。
本発明では、(A)成分を添加したパルプスラリーの搾水処理を行う。搾水処理は、パルプスラリーから水を排除する濃縮により行われるのが好ましく、更に、搾水処理前のパルプ濃度に対する搾水処理後のパルプ濃度で2〜14倍、更に8〜12倍、より更に9〜12倍、更に10〜12倍の濃縮であることが好ましい。すなわち、搾水処理により、パルプ濃度が処理前の2〜14倍、更に8〜12倍、より更に9〜12倍、更に10〜12倍となることが好ましい。搾水処理としての濃縮は、プレス脱水機、減圧式脱水機などを用いて脱水処理により行うことができる。パルプスラリーに対する脱水処理を繰り返してもよく、脱水処理の繰り返しによって搾水処理後のパルプ濃度をより高めることができる。
本発明において、パルプスラリーへの(A)成分の添加、添加後の搾水処理は、脱墨パルプの製造工程の何れにおいて行うこともできるが、インキ剥離性の観点から搾水処理の後にインキ剥離を行う工程を有することが好ましく、更にインキ剥離の後に漂白剤の存在下で熟成を行う工程を有することが好ましい。熟成条件として、過酸化水素等の漂白剤やアルカリ剤等の漂白助剤を含有するパルプスラリーを、例えば、好ましくは50〜70℃の温度で、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1〜5時間保持することが挙げられる。この順序となるように、公知の工程の実施方法に準じて、脱墨パルプを製造すればよい。本発明では、(A)成分を添加したパルプスラリーに搾水処理を施すことでパルプ濃度が速やかに増加し、ニーダー、ディスパーザー等のインキ剥離工程におけるインキ剥離効果を改善することができ、好ましい。また、漂白工程を行う場合、酸化、還元系漂白剤の漂白効果が改善され、残インキの少ない高品質な脱墨パルプを安定して得る事が可能になる。
本発明の製造方法の対象となる古紙としては、新聞紙、チラシ、雑誌、OA古紙、情報古紙、色上古紙、タック古紙、圧着古紙等が挙げられ、これらが混合された古紙を用いることもできる。新聞古紙及び/又は雑誌古紙を含む古紙に対して実施できる。
本発明の脱墨パルプの製造方法は、インキ剥離工程、インキ除去工程、パルプ洗浄工程を含むことができる。前述の通り、(A)成分を添加するパルプスラリーは、インキ剥離工程に供される前のものであることが好ましく、(A)成分を添加した後、搾水処理を行ってからインキ剥離工程に供される。インキ剥離工程では、脱墨剤を存在させても良い。脱墨剤としては、高級アルコールアルキレンオキシド付加物、高級脂肪酸アルキレンオキシド付加物、高級脂肪酸及びその塩等が挙げられる。脱墨剤の添加量は、パルプ100重量部(絶乾重量基準)に対して0.01〜1重量部が好ましい。
〔脱墨処理〕
古紙原料〔新聞紙/チラシ=6/4(重量比)を80℃24時間強制熱劣化させ、夏場の劣化古紙としたもの。新聞紙は、発刊日から一週間以内のサンプルを劣化させ、実験に用いた。〕100重量部(絶乾重量)を卓上離解機に入れ、苛性ソーダ0.5重量部、脱墨剤〔高級アルコールエーテル系脱墨剤、花王(株)製DI−7020〕0.3重量部、40℃の温水2000重量部を加え、10分間、3000rpmで離解処理を行った。次いで、パルプ濃度を2.5重量%まで常温の水道水で希釈後、表1の化合物を添加し、旭プレス社製V型プレス脱水機にて、最低の速度設定(変速機0.2)、圧力50kg/cm2、30秒間隔で500cm3のスラリーを投入する条件で3回脱水処理し〔搾水処理〕、各回数の脱水後のパルプ濃度を計測した。3回脱水処理した後、漂白剤及び漂白助剤として苛性ソーダ、3号珪酸ソーダ、過酸化水素を、絶乾パルプ100重量部あたりそれぞれ0.5重量部、1.5重量部、0.5重量部加え、熊谷理機製PFIミルにて加重3.4kg/cm2/クリアランス0.6mm/30カウント(300回転)の条件で絶乾60gに相当するパルプスラリーを処理し〔インキ剥離〕、その後、55℃で2時間熟成処理〔漂白剤存在下での熟成〕を行った。その後40℃の温工業用水でパルプ濃度5重量%に希釈し、3000rpm、1分間で再離解し、パルプスラリーを得た。続いて、パルプスラリーを40℃の工業用水でパルプ濃度1.0重量%まで希釈し、液1リットル当たり1.50リットル毎分の送気量でMTフローテーターによる処理を6分間行なった。その間、1分間毎にフローテーションセル上に蓄積したインキを含んだ泡沫を除去する操作を実施した。インキ剥離後(PFIミル処理後)及びフローテーション処理後のパルプスラリーについて、パルプ絶乾重量2.5g相当のパルプスラリーを、200倍量の水道水で希釈後、パルプ濃度を13重量%に濃縮する操作を4回繰り返し(完全洗浄操作)、JIS P8209−1976に従い、シート(完全洗浄シート)を作製した。
〔性能評価〕
上記の脱墨方法において、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)サンプルシートの白色度(JIS P8123−1961による)評価
インキ剥離後(PFIミル処理後)の完全洗浄シートと、フローテーション処理後の完全洗浄シートについて、JIS P8123−1961による白色度を測定した。白色度が高いほど紙が白く、インキ剥離が効果的になされていることを示す。
(2)サンプルシートのダート数
インキ剥離後(PFIミル処理後)の完全洗浄シートについて、王子計測機器(株)製紙塵計測装置DF−1000にてシート0.01m2上に残存する0.01mm2以上の大きさのダート数を測定した。ダート数が1500以下では、脱墨パルプの品質上大きな問題とならず、1501以上3000以下では、脱墨パルプの品質問題を頻発する可能性があり、3001以上では、他のパルプと配合して紙にしたときの印刷に悪影響を与え、事実上不適格と判断される。
(3)歩留り
フローテーション処理で泡沫として排出される固形分の量により得られる脱墨パルプの歩留りを求めた。具体的には以下の方法で求めた。フローテーション処理中、セル上に蓄積したインキを含んだ泡沫を採取し、その泡沫の重量を測定した。そして、その泡沫を105℃1時間乾燥機に入れて乾固させ、乾固物の重量を測定した。測定したそれぞれの重量から歩留まりを下記の式にて算出した。歩留りの値が大きいほど、得られる脱墨パルプの収量が多いこと示す。
歩留り(%)=(1−泡沫の乾固物の重量/泡沫の重量)×100
Figure 2009185426
(注)比較例2では、最初に入れる脱墨剤とは別に、脱水前に再度脱墨剤を添加した。また、濃縮倍率は、V型プレス脱水機による3回目の処理後(3パス後)のパルプ濃度(搾水処理前)と、化合物の添加時のパルプ濃度(搾水処理後)とを対比したものである。
*1:2種の混合物を使用
*2:アクリルアミドとN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートの単量体モル比50/50の共重合体
*3:アクリルアミドとアクリル酸の単量体モル比85/15の共重合体
*4:炭素数16の直鎖アルコールにエチレンオキシドを平均で3モル付加した化合物
比較例も実施例と同様の搾水処理の条件では、濃縮倍率は最大でも8.8であった。濃縮倍率が8.2の実施例13を比べると、いずれの比較例も白色度又は歩留まりのいずれかで劣っていた。

Claims (5)

  1. 古紙から脱墨パルプを製造する方法であって、炭素数14〜22のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも有するアミン化合物を、パルプ濃度が2〜20重量%のパルプスラリーに、パルプ100重量部に対して0.01〜1.0重量部を含有させ、搾水処理を行う工程を有する、脱墨パルプの製造方法。
  2. 搾水処理が、処理前に対する処理後のパルプ濃度で2倍〜14倍の濃縮である請求項1記載の脱墨パルプの製造方法。
  3. 搾水処理の後にインキ剥離を行う工程を有する、請求項1又は2記載の脱墨パルプの製造方法。
  4. インキ剥離の後に、更に漂白剤の存在下で熟成を行う工程を有する、請求項3記載の脱墨パルプの製造方法。
  5. アミン化合物が、下記一般式(A1)〜(A4)で表される化合物から選ばれる1種以上である、請求項1〜4いずれか記載の脱墨パルプの製造方法。
    Figure 2009185426

    〔式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ、炭素数1〜22のアルキル基及び炭素数2〜22のアルケニル基から選ばれ、少なくとも1つは炭素数14〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、X-は対イオンであり、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、モノアルキル(炭素数1〜3)硫酸エステルイオン、無機又は有機酸から誘導された陰イオンである。〕
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