JP2009183225A - Dnaマイクロアレイ、dnaマイクロアレイを用いた解析方法 - Google Patents

Dnaマイクロアレイ、dnaマイクロアレイを用いた解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一塩基多型の解析に用いるDNAマイクロアレイにおいて、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーおよび試料に含まれる標的核酸の濃度の最適化を検討しなくとも、標的核酸を検出することができるプローブ核酸セットを提供すること。
【解決手段】標的核酸に相補的な配列からなる複数のプローブ核酸により構成されるプローブ核酸セットが少なくとも一種類以上固定されているDNAマイクロアレイであって、
複数のプローブ核酸が、同一配列を有し、かつこの同一配列を最短の鎖長として互いに異なる鎖長を有することを特徴とするDNAマイクロアレイ。
【選択図】 なし

Description

本発明は、良好な感度と分離性能を示すプローブ核酸セットを搭載するDNAマイクロアレイに関し、またそれを用いたDNAマイクロアレイ解析方法に関する。
ヒトゲノム計画に代表されるように、種々の生物について、そのゲノム遺伝子、ミトコンドリア遺伝子などの塩基配列に関して、全般的な解析がなされてきている。更には、解明された遺伝子と、生命活動のメカニズム、各種疾病、疾患、遺伝的な体質等との関連性に関する研究も進み、次々と研究成果が報告されている。これらの研究結果から、特定の遺伝子の有無、その塩基配列の変異、あるいは、その発現産物の存在量(発現量)を知ることで、例えば、各種疾病、疾患等の要因に関して、より詳細な特徴付けやタイピングを行う上で有用な情報が得られることが判明してきている。また、各種疾病、疾患等の要因に関して、より詳細な特徴付けやタイピングがなされると、効果的な治療方法の選択がより容易となり、疾患の診断のみでなく、その治療にも効果的に利用可能であることも検証されてきている。
検体中における、特定の遺伝子の有無、並びに、その発現量を検出する方法として、従来から多数の方法が提案され、また、実際に利用もされている。検出対象の遺伝子あるいは核酸分子の塩基配列が判明している場合、最も広範に利用されている手法として、プローブ・ハイブリダイゼーション法がある。この手法では、検出対象の遺伝子あるいは核酸分子の塩基配列中から特徴的な部分塩基配列を標的領域として選択し、それに相補的な塩基配列を有するプローブ核酸が利用される。このプローブ核酸によって、かかる特徴的な部分塩基配列を含む核酸鎖の有無、あるいは、含有量を検出する。具体的には、相補的な塩基配列を有するプローブ核酸用DNA鎖を予め調製し、検体中に含まれる遺伝子あるいは核酸分子を一本鎖核酸とした上で、このプローブ核酸とハイブリダイゼーション反応を行わせる。この反応に基づくハイブリッド体形成の有無、あるいは、その形成量を何らかの方法を利用して検出する。
このプローブ・ハイブリダイゼーション法による、特定の核酸分子の検出方法は、形成されるハイブリッド体を分離可能であれば、ハイブリダイゼーション反応自体は、液相中、あるいは、固相担体のいずれで行ってもよい。例えば、固相担体上でハイブリダイゼーション反応を行う場合には、予め、プローブ核酸を固相担体上に結合、または、吸着によって、固定化しておき、形成されるハイブリッド体を固相上に固定、分離する。その際、検体中に含まれる核酸試料に対して、何らかの検出可能な標識物質によって標識化を施しておき、プローブ核酸とハイブリッド体を形成して、固相上に固定、分離された標識化核酸鎖の有無、その量を、該標識物質に起因する信号を利用して、測定する。また、プローブ核酸の固定用固相(基材)としては、ガラスや金属などの平面基板表面を用いるチップ、あるいは、微小粒子表面を用いるビーズ等が体表的な形態である。
プローブ・ハイブリダイゼーション法において、固相上に固定化されたプローブ核酸を利用するハイブリダイゼーション反応が好まれる理由の第一は、B/F分離が容易であることである。加えて、固相上の所定位置に固定化されているプローブ核酸を利用するため、検出領域を物理的に微小化でき、また、検出領域が特定されている結果、高感度の測定が可能となる。その際、複数種のプローブ核酸の固定位置を物理的に隔離することにより、同時に、多項目の検出が可能である。さらには、予め、所定量のプローブ核酸が固相上に固定化されている核酸マイクロアレイ(またはDNAチップ)の形態を選択すると、その取扱いや応用が一層容易になる利点もある。
例えば、特許文献1には、平面基板上において合成されたオリゴDNAに対し、蛍光色素で標識された核酸を作用させ、その結果形成されるハイブリッド体を、蛍光標識に由来する蛍光により検出する手法が開示されている。この基板上において合成されたオリゴDNAで構成されるDNAアレイと、蛍光色素標識による蛍光検出法を利用することで、検体中に含まれる特定の核酸の有無や量の検出を可能としている。
また、特許文献2には、基板表面に予め導入されたアミノ基を利用して、別途作製した複数種のプローブ核酸を固定化する手法を応用してDNAアレイを作製することについて開示されている。特許文献2では、このDNAアレイを用いて、標識された22merの一本鎖DNAを検出している。
米国特許第6,410,229号明細書 特開2001−128683号公報
DNAマイクロアレイは、同一の検体に対して、多項目の同時検出が可能であり、特定遺伝子の有無の判定、およびその発現定量において、有効な手段として用いることができる。検査対象遺伝子の発現量を定量するためのDNAマイクロアレイとしては、プローブ核酸として検査対象遺伝子のcDNA全長を用いたcDNAアレイが知られている。しかしながら、このcDNAアレイでは、一塩基多型(SNP)や突然変異(挿入および欠損を含む)などを精度よく検出することはできない場合が多かった。その理由として、このcDNAアレイは、検体に由来する標識されたDNAとプローブ核酸がともに100塩基を超える長さであることが一般的である点を挙げることができる。このような塩基長では、一塩基多型の存在の有無に係わらずプローブ核酸と標識されたDNAが同程度にハイブリダイゼーションしてしまい、変異判別が不可能になる。したがって、一塩基多型の部分的な検出は、シークエンス法、RFLP法、SSCP法、タックマン法などの一塩基多型の判別が可能な手法によって解析が行われてきた。しかしながら、ヒトの場合においては遺伝子の一塩基多型や突然変異の数は10万ヶ所を超えてゲノム全域に渡り均等に点在しているため、上記の方法で網羅的に遺伝子全体の解析を行うことは困難であった。そこで近年、オリゴDNAをプローブ核酸としたDNAマイクロアレイを用いて、網羅的に一塩基多型の解析を行う試みがなされようとしてきている。10mer〜70merの一本鎖DNAをプローブ核酸とすれば、一塩基程度の違いしかなくともTm(融解温度)に差をつけることが出来る。そのため、ハイブリダイゼーション温度を含む最適なストリンジェンシー条件を設定することによって一塩基多型の解析が可能になると考えられる。そこで、オリゴDNAをプローブ核酸として、複数種のプローブ核酸を用いる場合、次の点のような課題がある。すなわち、塩基組成および塩基数が多種に渡るDNAプローブ核酸間において同時検出が可能な、一定のストリンジェンシー条件を設定するために最適なプローブ核酸配列を各プローブ核酸について設計することが課題となる。
また、DNAマイクロアレイの解析を行う場合においては、実際にハイブリダイゼーションに使用する標的核酸の濃度が想定できない場合がある。血液からのゲノムDNA抽出効率、PCR増幅効率、精製効率、または蛍光色素での標識効率などのゆらぎによって、同一の処理を施したとしても、ハイブリダイゼーション後のシグナルに寄与する標識された標的核酸の量は異なっている場合がある。また、DNAマイクロアレイで使用する検体の量および濃度は低い場合が多いため、これらの処理の効率をモニターして、コントロールすることは困難な場合がある。標的核酸の濃度がばらついてしまう状況で、一塩基多型を見分けるような用途でDNAマイクロアレイを使用する場合、次のような問題が想定される。即ち、設定したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに対して、標的核酸の濃度が高いときは、各プローブ核酸におけるシグナルの強度は強くなるが、完全相補であるプローブ核酸以外ともハイブリダイゼーションする可能性が増える。その結果、一塩基多型を見分ける能力が下がってしまう。一方、標的核酸の濃度が低いときは、一塩基多型を見分ける能力は上がるが、完全相補であるプローブ核酸に対するシグナルの強度も低下してしまう。したがって、標的核酸濃度が規定できない状況下での使用を想定する場合、一塩基多型を精度よく検出することは困難であった。
従って本発明の目的は、プローブ核酸配列の設定対象範囲が限定されるためにプローブ核酸の配列設計が困難である場合でも、一塩基多型を精度よく検出することが可能なDNAマイクロアレイ及びそれを用いたDNAマイクロアレイ解析方法を提供することである。
さらに本発明の目的は、標的核酸濃度が規定できない状況下での使用を想定する場合でも、一塩基多型を精度よく検出することが可能なDNAマイクロアレイ及びそれを用いたDNAマイクロアレイ解析方法を提供することである。
本発明者等は鋭意検討した結果、上記問題点を解決する方法として、以下の方法を見いだすに至った。
本発明にかかるDNAマイクロアレイは、標的核酸に相補的な配列からなる複数のプローブ核酸で構成されるプローブ核酸セットが少なくとも二種類以上固定されているDNAマイクロアレイであって、前記プローブ核酸セットを構成する各プローブ核酸が、同一配列を有し、互いに鎖長の異なることを特徴とするDNAマイクロアレイである。
本発明にかかる解析方法は、本発明にかかるDNAマイクロアレイで標的核酸を含む試料についてハイブリダイゼーションを行った後、前記同一配列内の1塩基のみが異なる以外は同じ構成のプローブ核酸セット間で、前記プローブ核酸と前記標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルの強度を比較することを特徴とする、前記標的核酸の塩基配列を解析する解析方法である。
本発明に係るDNAマイクロアレイによって、プローブ核酸配列の設定対象範囲が限定されるためにプローブ核酸の配列設計が困難である場合や、標的核酸濃度が規定できない状況下での使用を想定する場合でも、一塩基多型を精度よく検出することが可能になる。
標的核酸は、DNAマイクロアレイによる検出の対象となる核酸分子であって、検出しようとする遺伝子配列などの配列を含むゲノムDNA断片、mRNA、cDNAなどを含む。標的核酸が一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)等の一塩基の変異が想定される塩基位置(以下、変異位置ともいう)を有する場合、多型として変異位置が取り得る塩基のうち、標的核酸が有する塩基を分離塩基とする。標的核酸をプローブ核酸と適切な条件でハイブリダイゼーションさせることで、変異位置の塩基のみの違いにより他の核酸と区別して分離することが可能となりうる。本発明における標的核酸は、DNAマイクロアレイ上に固定された複数種のプローブ核酸との相補性を判定するために、これらのプローブ核酸との反応に供される核酸である。標的核酸と複数種のプローブ核酸とをハイブリダイゼーションして形成されるハイブリッド体のシグナルから、標的核酸が各プローブ核酸に対してどのような相補性を有するかを判定することができる。
プローブ核酸とは、標的核酸の塩基配列と相補的な配列を有する核酸であって、ハイブリダイゼーション反応によって標的核酸とハイブリッド体を形成することにより、試料から標的核酸を分離するために用いる核酸である。塩基数が特定の範囲内のオリゴヌクレオチドをプローブ核酸として用いると、適切なハイブリダイゼーション条件下では、完全に相補的な配列のみとハイブリッド体を形成させることが可能である。よって、分離塩基を有する標的核酸に対してオリゴヌクレオチドのプローブ核酸を設定すると、変異位置の塩基のみが標的核酸と異なる核酸と区別して標的核酸を分離することが可能となる。プローブ核酸中の分離塩基に相補的な塩基の位置は、分離塩基の種類の違いによってハイブリッド体のTmとして最も大きく差ができる位置に設定することが好ましい。
本発明におけるプローブ核酸としては、プローブ・ハイブリダイゼーション法で通常用いられる核酸をいずれも好ましく用いることができる。具体的にはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよびその誘導体を少なくとも一つ以上含んで構成されるポリヌクレオチドを挙げることができる。PCRなどで調製されたもの、化学的に合成されたもの、天然に由来する核酸を、そのまままたは加工して使用したものなどいずれも使用することができるが、調製の容易さから化学的に合成されたものを使用するのが好ましい。さらに合成の容易さから、オリゴデオキシリボヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を使用するのが好ましい。
プローブ核酸を固相担体上に固定化させる方法としては、インクジェット法等により製造することができ、例えば、特開平11−187900号公報に記載された方法などを用いて好適に製造することができる。
本発明におけるプローブ核酸セットは、同一配列を有し、かつ互いに鎖長が異なる複数のプローブ核酸により構成される。複数のプローブ核酸が共有する同一配列のみからなるプローブ核酸を最短のものとする。
以下に一塩基多型の変異位置を有する標的核酸を分離するためのプローブ核酸セットが固定されたDNAマイクロアレイについて具体的な構成例を記載するが、本発明は下記方法に限定されるものではない。
本発明において、DNAマイクロアレイの基板上に固定化されているプローブ核酸セットは、同一配列を有し、この同一配列を最短の鎖長として、互いに鎖長の異なる複数のプローブ核酸により構成れている。DNAマイクロアレイには、このような構成のプローブ核酸セットが少なくとも1種類以上固定されている。プローブ核酸が有する同一配列は、標的核酸上の一塩基多型の変異位置を含む領域に対して相補的な配列からなり、標的核酸の変異位置に対応する位置に分離塩基に相補的な塩基を有する。つまり、検出を行いたい一塩基多型等の分離塩基を含む領域に対して相補的な同一の塩基配列を含んでいるが、互いに鎖長の異なるプローブ核酸が複数固定化されているということである。
具体的に一塩基多型を分離するプローブの例を表1に示す。*印の塩基が検出したい一塩基多型を示している。
Figure 2009183225
(2)〜(6)の各プローブは、すべて(1)の配列を含んでいるものであるが、(1)の配列の5’および3’側が伸長されており、互いに鎖長が異なっている。このようなプローブセットについて単一のストリンジェンシーでハイブリダイゼーション検出を行うとすると次のような問題が想定される。まず、すべてのプローブ核酸からシグナルを検出することができるような標的核酸の濃度が高い場合は、Tmの高いプローブである(6)のプローブでは多型の差に関わらず強いシグナルが検出されるため、一塩基多型の差を検出することが非常に困難である。一方、(6)のプローブからでも一塩基多型の差をシグナルから検出することが可能であるような標的核酸の濃度が薄い場合は、Tmの低いプローブである(1)のプローブからはシグナルを検出することが非常に困難である。つまり本来、標的核酸濃度が未知の場合は、DNAマイクロアレイを用いて一塩基多型のような僅かな差を見分けることは非常に困難であり、プローブ核酸の配列設計とハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの設定も制限が多くなる。しかし、検出を行いたい分離塩基に相補的な塩基を含む、同一の塩基配列を含んでなる、鎖長の異なるプローブ核酸を複数固定化することによって、標的核酸濃度の有効範囲が拡大し、厳密なハイブリダイゼーションストリンジェンシーの設定が不要になる。最短鎖長のプローブ核酸である(1)のプローブ核酸より鎖長の長い他のプローブ核酸としては、(1)のプローブ核酸の5’側または3’側のいずれかのみが伸張されたものを好適に用いることができる。また、(1)のプローブ核酸の5’側と3’側の両方が伸長されたものであってもよい。この場合、複数のプローブ核酸の各々が、自身より鎖長の短いプローブ核酸の配列を含むように設定することが好ましい。
プローブ核酸セットを構成する複数のプローブ核酸のうち、どのプローブ核酸からのシグナルを用いて一塩基多型等を判定するのかの判断は、特に限定されるものでないが、プローブ核酸のシグナルが得られる最小のTmのプローブ核酸を用いることが、良好な検出を得るためには好ましい。また、10merより少ない塩基長のプローブ核酸は、標的以外の領域とハイブリダイズする確率が高くなるため、プローブ核酸は10塩基以上の塩基鎖長を有することが好ましい。さらに70merより多い塩基長のプローブは、一塩基の違いを見分ける能力が下がってしまうため、プローブ核酸は70塩基以下であることが好ましい。
よって、本発明にかかるDNAマイクロアレイは、一塩基変異の想定される塩基位置に一塩基の差異による分離を可能とする分離塩基を有する標的核酸を検出するために用いるものであって、該同一配列が前記標的核酸の前記分離塩基を含む領域に対して相補的となる前記プローブ核酸セットが固定されているものを包含する。
一塩基多型のように同一の変異位置に対して複数の塩基を取り得ると想定される場合は、各塩基を分離塩基とする夫々の標的核酸に対して、本発明のプローブ核酸セットを設定する。各分離塩基を有する標的核酸のそれぞれに対して設定される各プローブ核酸セットにおける同一配列は、標的核酸上の変異位置を含む領域に対して相補的な配列からなり、標的核酸の変異位置に対応する位置に各分離塩基に相補的な塩基を有する。このように設定した分離塩基に相補的な塩基のみ異なる複数のプローブ核酸セットを用いることで、試料に含まれる標的核酸がいずれの分離塩基を含むかを決定することができる。
よって、本発明は、本発明にかかるプローブ核酸セットが、前記一塩基変異の想定される塩基位置に、変異型として取り得る塩基の夫々を分離塩基として有する少なくとも二以上の標的核酸について設定されているDNAマイクロアレイを包含する。つまり、プローブ核酸セットが二種類以上固定されていることが好ましい。
また、特定の分離塩基を有する標的核酸の有無を判定するために、DNAマイクロアレイを用いる場合は、以下の(A)のプローブ核酸セットとともに(B)参照用プローブ核酸セットを設定することが望ましい。
(A)標的核酸の分離塩基を含む領域に完全に相補的な同一配列を有し、かつ同一配列を最短鎖長として互いに異なる鎖長を有する複数のプローブ核酸からなるプローブ核酸セット(以下、検査プローブ核酸セットともいう)。
(B)検査プローブ核酸セットと分離塩基に対応する塩基位置の塩基のみが異なる参照用プローブ核酸セット。
参照用プローブ核酸セットは、検査プローブ核酸セットを構成する各鎖長のプローブ核酸と同鎖長の参照用プローブ核酸を有しており、夫々の参照用プローブ核酸では、分離塩基に対応する塩基位置以外の塩基配列は同一鎖長の検査プローブ核酸と同じである。
よって、本発明にかかるDNAマイクロアレイは、分離塩基に対応する塩基位置の塩基のみが本発明にかかるプローブ核酸セット(検査用プローブ核酸セット)と異なる参照プローブ核酸セットが更に固定されているDNAマイクロアレイを含む。
同一の変異位置が取り得る複数の塩基を分離塩基とする夫々の標的核酸に対して本発明のプローブ核酸セットを設定する態様では、検査する試料に含まれる型の標的核酸と相補的でないプローブ核酸セットが、上記の参照用プローブセットとして機能することができる。例えば、正常アレルA、異常アレルGを有する対立遺伝子のいずれを標的核酸として含むかを検査する場合、AおよびGを分離塩基とする各標的核酸についてプローブ核酸セットを設定する。そうすると、試料に含まれる標的核酸に対するプローブ核酸セットが検査プローブ核酸セットとして、試料に含まれない標的核酸に対するプローブ核酸セットが参照用プローブ核酸セットとして機能することになる。また、取り得る分離塩基を含む標的核酸のいずれものが試料に含まれる可能性がある場合には、分離塩基と相補的でない塩基を変異位置に有する参照用プローブ核酸セットを設定してもよい。
(DNAマイクロアレイを用いる解析方法)
本発明に係るプローブ核酸セットを固定したDNAマイクロアレイを用いて、標的核酸の塩基配列を推定する解析方法は次のとおりである。まず、本発明にかかるDNAマイクロアレイで標的核酸を含む試料についてハイブリダイゼーションを行う。その後、プローブ核酸セット間で、プローブ核酸と標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルの強度を比較することによって、標的核酸の塩基配列を推定する。どのプローブ核酸セットでシグナルを比較するかについては、プローブ核酸セットを構成するプローブ核酸が共有する同一配列内において1塩基のみ配列が異なる以外は同じ構成であるプローブ核酸セット間で比較することが好ましい。
標的核酸が分離塩基を含む場合は次のようになる。まず、標的核酸を含む試料について、プローブ核酸が共有する同一配列において一塩基のみ異なる以外は同じ構成である二以上のプローブ核酸セットが固定されたDNAマイクロアレイを用いてハイブリダイゼーションを行う。その後、この二以上のプローブ核酸セットについて、同一鎖長のプローブ核酸間で、プローブ核酸と標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルの強度を比較することによって、標的核酸の塩基配列を推定する。ここで、同じ構成とは、プローブ核酸の構成数および各プローブ核酸の配列および鎖長が同じであることをいう。
本発明に係るプローブ核酸セットとして、検査用プローブ核酸セットと参照プローブ核酸セットを固定したDNAマイクロアレイを用いて、一塩基多型等の分離塩基を有する標的核酸の有無を判定するための解析方法は次の(i)から(iii)工程を有する。
(i)標的核酸の有無を判定したい試料をDNAマイクロアレイに供して、ハイブリダイゼーション反応を行う工程。
(ii)標的核酸について設定した検査プローブ核酸セットを構成する検査プローブ核酸および参照プローブ核酸セットを構成する参照プローブ核酸について標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルを検出する工程。
(iii)同鎖長の検査プローブ核酸と参照プローブ核酸との間で検出されるシグナル強度を比較することにより標的核酸の有無を判定する工程。
(i)の工程におけるハイブリダイゼーション反応には、通常のハイブリダイゼーション条件を適応することができ、当業者であれば適宜選択することができる。ハイブリダイゼーション温度は、例えば、検査プローブ核酸セットを構成するプローブ核酸セットの中で中間となる鎖長のプローブ核酸の、使用するハイブリダイゼーション溶液でのTm(融解温度)に対して、15℃前後で設定することができる。
(ii)の工程におけるハイブリッド体の形成を示すシグナルの検出は、後述する標識方法により、DNAマイクロアレイ上のハイブリッド体を形成しているプローブ核酸が発信するシグナルを検出する。検出する手段としては、DNAマイクロアレイに用いる通常の検出装置を用いることができ、標識の特性に応じて適宜選択する。
(iii)の工程で同鎖長の検査プローブ核酸と参照プローブ核酸間におけるシグナル強度を比較した結果から有意差がある場合に標的核酸が存在すると判定する。どの鎖長のプローブ核酸を判定に用いるかは、特に限定されるものでないが、プローブのシグナルが得られる最小のTmのプローブを用いることで良好に検出することが可能となる。
よって、DNAマイクロアレイとして、分離塩基に対応する塩基位置の塩基のみが本発明にかかるプローブ核酸セット(検査用プローブ核酸セット)と異なる参照プローブ核酸セットが更に固定されているDNAマイクロアレイを用いた解析方法は次のようになる。すなわち、このDNAマイクロアレイで標的核酸を含む試料についてハイブリダイゼーションを行う。その後、検査用プローブ核酸セットと参照プローブ核酸セットとについて、同一鎖長のプローブ核酸間で、標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルの強度を比較することによって、標的核酸の塩基配列を推定する。
同一の変異位置に対して異なる分離塩基が取り得ると想定され、試料に含まれる標的核酸がいずれの分離塩基を含むかを決定する場合は、本発明の解析析方法は次の(a)から(c)工程を有する。
(a)分離塩基を決定しようとする標的核酸を含む試料を、同一変異位置が取り得る塩基の夫々を分離塩基として有する二以上の標的核酸に対して設定したプローブ核酸セットが固定されたDNAマイクロアレイに供して、ハイブリダイゼーション反応を行う工程。
(b)同一変異位置が取り得る塩基の夫々を分離塩基として有する二以上の標的核酸に対して設定したプローブ核酸セットにおいて、プローブ核酸と標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルを検出する工程。
(c)(b)で検出されたシグナルについて、同鎖長のプローブ核酸間で検出されるシグナル強度を比較することにより試料に含まれる標的核酸の分離塩基を決定する工程。
(c)の工程で同鎖長のプローブ核酸間でシグナル強度を比較した結果から有意にシグナル強度が高いものを試料に含まれる標的核酸の分離塩基として決定する。
よって、本発明にかかるプローブ核酸セットが前記一塩基変異の想定される塩基位置に、変異型として取り得る塩基の夫々を分離塩基として有する少なくとも二以上の標的核酸について設定されているDNAマイクロアレイを用いる解析方法は次にとおりである。すなわち、このDNAマイクロアレイで標的核酸を含む試料についてハイブリダイゼーションを行う。その後、二以上の標的核酸について設定されたプローブ核酸セットにおいて、同一鎖長のプローブ核酸間で、標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルの強度を比較することによって、標的核酸の塩基配列を推定する。
(試薬キット、解析キット)
本発明は、本発明にかかるプローブ核酸セットを少なくとも一種類以上固定したDNAマイクロアレイと、本発明の解析方法を説明した解説書とを含む一塩基多型等の変異の解析キットを包含する。また、本発明の解析方法を実行させるコンピュータが読取り可能なプログラム、およびそのプログラムを格納した情報記憶媒体も本発明は包含する。
(標識方法)
シグナルの発信を可能とするために、標的核酸または、ハイブリッド体を標識する必要がある。標識法には標的核酸分子を予め標識する直接法と、ハイブリダイゼーション中または後に標識を付与する間接法があり、いずれも使用することができるが、良好な検出結果を得るためには直接法を用いることがより好ましい。標的核酸に、標識物質を取り込ませる方法としては、例えば、PCR増幅を行う際に、標識付きデオキシヌクレオチド(例えば、Cy3−dUTPなど)を付加する方法がある。また、PCR増幅を行う際、DNAポリメラーゼ酵素の基質となるATCG4種のデオキシヌクレオチド(dATP、dCTP、dGTP、dTTP:総称してdNTP)と標識付きデオキシヌクレオチド(例えば、Cy3−dUTP)をそれぞれ調製する。そして、各dNTPの終濃度を揃えることで、作製される増幅産物中に標識付きデオキシヌクレオチドを取り込ませる方法もある。
また、予め標識されたプライマーを用いて、PCR反応を行い、核酸を標識する方法が知られている。この予め標識されたプライマーを利用する場合、作製される標的核酸一分子当り、付与される標識物質の量比が制御できるという利点があり、高い定量性が要求される際には、この手法が好適である。
標識物質としては蛍光物質またはビオチンのいずれか一つ以上を含んでいることが、検出感度および標識の簡便さの点から好ましい。蛍光物質としては、従来公知の蛍光色素等をいずれも使用することが出来るが、量子収率、耐光性、耐ガス性、化学的安定性、DNAポリメラーゼの基質としての特性の点においてFITC(Fluorescein isothiocianate)、FAM、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、TAMRA、Dabcyl、ROX、TET、Rhodamine(ローダミン)、Texas Red(テキサスレッド)、HEX、Cyber Green(サイバーグリーン)等を好ましく用いることが出来る。ビオチンおよびジゴキシゲニンの場合は、各種ビオチン結合型の標識酵素タンパク質を反応させ、かかる標識酵素タンパク質の酵素活性を指標として、検出を可能とする。
蛍光標識として利用される各種蛍光物質は、かかる蛍光物質に由来する蛍光強度を観測する光学的検出手段を利用することで、高感度の検出を可能とする。また、前記標識酵素タンパク質の酵素活性を指標とする検出法も、酵素活性は、各種発色反応を利用するものとすることで、光学的検出手段の利用が可能であり、高感度の検出を可能とする。
ハイブリダイゼーション中に標識する方法としては、インターカレーターを用いる方法がある。インターカレーターはハイブリダイゼーション溶液中に混入させて使用することができる。インターカレーターはそれ自身が蛍光を示す物質であってもよいが、共有結合等で蛍光物質等が結合されているものであってもよい。インターカレーターとしては、Ethidium bromide(エチジウムブロマイド)やcyber green(アプライドバイオシステム社)などの、一般的に二本鎖DNAを染色できるものを好ましく用いることができる。
(実施例1)
<プローブ核酸の作製>
検出の例として、Staphylococcus aureus(スタフィロコッカス・アウレウス)、Staphylococcus epidermidis(スタフィロコッカス・エピデルミディス)の菌分離検出の例を示す。
Staphylococcus aureusとStaphylococcus epidermidis菌由来の核酸分子の選択的検出用プローブ核酸として、表2に示す塩基配列を有するプローブ核酸を設計した。
具体的には、Staphylococcus aureusとStaphylococcus epidermidis菌の16s rRNAをコーディングしているゲノム領域の塩基配列に基づき、表2に示すプローブ核酸の塩基配列を選択した。これらのプローブ核酸の塩基配列は、Staphylococcus aureusとStaphylococcus epidermidisで一塩基の違いをもっている。
Figure 2009183225
表2中に示す各プローブ核酸に対して、DNA鎖の合成後、DNAマイクロアレイに固定するための官能基として、核酸の5’末端にチオール基を定法に従って導入した。官能基の導入後、精製し、凍結乾燥した。凍結乾燥した内部標準用プローブ核酸は、−30℃の冷凍庫内に保存した。
<検体中の核酸鎖増幅用PCRプライマーの作成>
具体的には、Staphylococcus aureus菌の16s rRNA遺伝子(標的遺伝子)増幅用PCRプライマーとして、表3に示す核酸配列を有するDNAプライマーを作成した。
Figure 2009183225
<Staphylococcus aureusDNAの抽出>
[微生物の培養とゲノムDNA抽出の前処理]
始めにStaphylococcus aureus標準株(ATCC 12600)を定法に従って培養した。当該菌株は、米国のAmerican Type Culture Collectionなどの公的機関より入手可能である。
この微生物培養液180μlに溶菌処理用酵素溶液をLysozyme(リゾチーム)20μl(酵素濃度:20mg/ml in Enzyme Buffer)を加えて、37℃のインキュベーター内で30分間静置し、該微生物の細胞膜の溶解処理を行った。その後、核酸抽出・精製キット(MagExtractor−Genome−:TOYOBO社製)を用いて抽出を行った。
<ゲノムDNA抽出物中の検体DNAのPCR増幅>
Staphylococcus aureusのゲノムDNA抽出物中から、検体DNAとなる、16s rRNAの遺伝子のPCR増幅を、下記の手順・条件で行う。
先ず、上記フォワードプライマー 3種を含むフォワードプライマー混合物および上記リバースプライマー 3種を含むリバースプライマー混合物を用いて、ゲノムDNAを鋳型としてPCR増幅反応を行う。該PCR増幅反応は、市販のPCRキット(TAKARA ExTaq)を利用して行い、その反応溶液組成を表4に示す。
一方、PCR反応の温度条件は、下記表4に示すプロトコールに従って、市販のサーマルサイクラーを利用して増幅反応を行った。
Figure 2009183225
このPCR増幅反応の終了後、市販のPCR産物精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いてプライマーを除去し、PCR増幅産物を回収した。その際得られたPCR増幅産物の定量を行った。
<PCR増幅産物を鋳型とした、標的核酸の調製>
蛍光標識としてリバースプライマーにCy3を5’末端に結合した標識付きオリゴヌクレオチドを利用して、標識化DNA鎖の調製を下記の手順・条件で行った。
ヌクレオチド鎖の合成後、常法に従って、蛍光標識化合物Cy3を該ヌクレオチド鎖の5’末端に共有的に結合させた。その後HPLCを用いて標識付きオリゴヌクレオチドの精製を行った。合成された標識付きオリゴヌクレオチドの塩基配列を以下に示す。
Figure 2009183225
上記PCR増幅反応で得られるPCR増幅産物を鋳型とし、リバースプライマーとして上記塩基配列を有する標識付きオリゴヌクレオチドの混合物を利用して、相補的なDNA鎖の伸長反応を下記の手順・条件で行った。
該DNA鎖の伸長反応は、市販のPCRキット(TAKARA ExTaq)を利用して片鎖PCR反応の形態で実施した。その反応溶液組成を以下に示す。
一方、この伸長反応の温度条件は、下記プロトコールに従って、市販のサーマルサイクラーを利用して、増幅反応を行った。
Figure 2009183225
この標識反応の終了後、市販のPCR産物精製用カラム(QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit)を用いてプライマーを除去し、50μLの純水で溶出し、標識された標的核酸を作成した。
<DNAマイクロアレイの作製>
[1]ガラス基板の洗浄
合成石英製ガラス基板(サイズ:25mm(幅)×75mm(長さ)×1mm(厚さ)、飯山特殊ガラス社製)を耐熱、耐アルカリ性のラックに入れ、所定の濃度に調製した超音波洗浄用の洗浄液に浸した。一晩洗浄液中に浸した後、20分間超音波洗浄を行った。続いて、基板を取り出し、軽く純水で濯いだ(リンス洗浄)後、超純水中で20分超音波洗浄を行った。次に、80℃に加熱した1N水酸化ナトリウム水溶液中に10分間基板を浸した。その後、基板を取り出し、純水によるリンス洗浄と、超純水中で超音波洗浄を施した。以上の洗浄操作により、洗浄済みのDNAチップ用石英ガラス基板を用意した。
[2]表面処理
シランカップリング剤KBM−603(信越シリコーン社製)を、1%の濃度となるように純水中に加え、室温で2時間攪拌し、均一に溶解した。続いて、前記洗浄済み石英ガラス基板をシランカップリング剤水溶液中に浸し、室温で20分間放置した。石英ガラス基板を引き上げ、軽く純水で表面をリンス洗浄した後、窒素ガスを基板の両面に吹き付けて乾燥させた。次に、乾燥した基板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークし、前記アミノシランカップリング剤の基板表面への結合処理を完結させた。基板表面には、該アミノシランカップリング剤由来のアミノ基が導入された。
同仁化学研究所社製のN−マレイミドカプロイロキシスクシイミド(N−(6-Maleimidocaproyloxy)succinimido;以下、EMCSと略す)を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合溶媒中に最終濃度が0.3mg/mlとなるように溶解したEMCS溶液を調製した。前記ベーク処理の終了後、石英ガラス基板を室温まで放冷した。次いで、表面にアミノ基が導入された石英ガラス基板を、EMCS溶液中に室温で2時間浸した。この浸漬処理の間に、アミノシランカップリング剤処理によって基板表面に導入されたアミノ基と、EMCSのスクシイミド基とが反応し、石英ガラス基板表面にEMCS由来のマレイミド基が導入された。EMCS溶液から引き上げた石英ガラス基板を、ジメチルスルホキシドとエタノールの1:1混合溶媒を用いて洗浄し、未反応のEMCSを除去した。さらに、エタノールにより洗浄した後、窒素ガス雰囲気下で前記表面処理済み石英ガラス基板を乾燥した。
[3]プローブ核酸
上記の方法で作製された検出用プローブ核酸を純水に溶解し、それぞれ最終濃度(インク溶解時)が10μMとなるように、マイクロ・バイアルに分注した後、凍結乾燥を行った。水分を除いたプローブ核酸をそれぞれ収納するマイクロ・バイアルは、下記の手順でインクジェット方式によるスポッティング用のDNA溶液の調製に利用した。
[4]BJプリンターによるDNA溶液の吐出、および基板表面への固定化
グリセリン7.0wt%、エチレングリコール5.0wt%、ヘキサントリオール5.0wt%、アセチレノールEH(川研ファインケミカル社製)1.0wt%を含む水溶液を調製した。続いて、先に用意した8種類のプローブ核酸をそれぞれ収納するマイクロ・バイアル中に、DNA濃度が、最終濃度(インク溶解時)10μMとなるように、前記混合溶媒を所定量加えて、DNA溶液(インク)を調製した。得られたDNA溶液をインクジェットプリンター(商品名:BJF−850、キヤノン社製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。
なお、基板面上へのDNA溶液のスポッティングに使用するために、前記インクジェットプリンターは平板への印字が可能なように改造が施されている。また、このインクジェットプリンターの印字ヘッドは、所定のファイル作成方法に従って印字パターンを入力することにより、約5ピコリットルのDNA溶液液滴を約120マイクロメートルピッチでスポッティングすることが可能となっている。
続いて、上記インクジェットプリンターを用いて、表面にマレイミド基が導入された石英ガラス基板に対して、所定の印字パターンに従って各DNA溶液のスポッティング操作を行い、アレイを作製した。アレイ状のスポッティング操作が確実に行われていることを確認した後、30分間加湿チャンバー内に静置し、石英ガラス基板表面のマレイミド基とプローブ核酸5’末端のチオール基とを反応させ、プローブ核酸の固定を行った。
[5]洗浄
30分間の反応後、100mMのNaClを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)により、基板表面に残ったDNA溶液を洗い流した。石英ガラス基板表面に目的とする複数種の一本鎖DNAがアレイ状に固定されている遺伝子チップが得られた。
<ハイブリダイゼーション法による標的核酸の検出および、品質管理>
前記方法で作製したDNAマイクロアレイと、標識化標的核酸を用いて、ハイブリダイゼーション反応を行い、蛍光標識を利用して、形成されるハイブリッドの検出を行った。
(遺伝子チップのブロッキング)
100mM NaCl/ 10mM Phosphate Buffer中に、BSA(牛血清アルブミンFraction V:Sigma社製)を濃度1wt%となるように添加し、BSA溶液を調製する。このBSA溶液中に、<DNAマイクロアレイの作製>で作製した遺伝子チップを室温で2時間浸し、遺伝子チップの石英ガラス基板表面に対して、BSAによるブロッキング処理を施した。ブロッキング処理の終了後、0.1wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む2×SSC溶液(NaCl 300mM、Sodium Citrate (trisodium citrate dihydrate, Na3C6H5O7・2H2O) 30mM、pH 7.0)で、遺伝子チップの石英ガラス基板表面に残余するBSA溶液を洗浄した。次いで、純水でリンス洗浄した後、スピンドライ装置で遺伝子チップ表面の水切りを行った。
(ハイブリダイゼーション反応)
前記ブロッキング処理を施した遺伝子チップをハイブリダイゼーション装置(Genomic Solutions Inc. Hybridization Station)にセットし、標識化検体DNAとプローブ核酸とのハイブリダイゼーション反応を下記の手順・条件で行った。
使用したハイブリダイゼーション溶液の組成、条件を以下に示す。
[ハイブリダイゼーション溶液]
前記方法で作製した、精製済み標識化検体DNA50μLと、品質管理試薬10μLを、10%HCONH2を添加した6×SSPE緩衝液中に溶解した溶液を使用した。
6×SSPE/ 10% フォルムアミド / 標的核酸 (2nd PCR Products 全量)
(6×SSPE: NaCl 900mM、NaH2PO4・H2O 60mM、EDTA 6mM、pH 7.4)
[ハイブリダイゼーション条件]
ハイブリダイゼーション反応および反応後の洗浄・乾燥の操作の条件を以下に示す。
Figure 2009183225
<ハイブリット体の検出(蛍光測定)>
ハイブリダイゼーション反応終了後、遺伝子チップ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて、スピンドライ乾燥済み遺伝子チップ上の各プローブ核酸のスポットについて、蛍光標識Cy3の蛍光強度の測定を行った。(532 nm Laser Power: 100% PMT Gain:400 )
以下に各プローブ核酸のスポット点で観測された蛍光強度を示す。
Figure 2009183225
表9のハイブリダイゼーションの結果より、Cy3のシグナルはすべてのプローブで検出されている(200以上の蛍光輝度を有意のシグナルとする場合)。従って、シグナルが検出されていて最も塩基長が短く、Tmが低いプローブの対であるSA-3とSE-3でのシグナル比はSA-3/SE-3=7.2となり、標的核酸は分離塩基がAであるStaphylococcus aureusであることが分かる。(1.5以上を有意のシグナル比とする場合)。
(実施例2)
実施例1の<PCR増幅産物を鋳型とした、標的核酸の調製>でのTemplate DNAの使用量を100ngから1ngに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてハイブリッド体の検出を行った。
<ハイブリット体の検出(蛍光測定)>
ハイブリダイゼーション反応終了後、遺伝子チップ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて、スピンドライ乾燥済み遺伝子チップ上の各プローブ核酸のスポットについて、蛍光標識Cy3の蛍光強度の測定を行った。(532 nm Laser Power: 100% PMT Gain:400 )。
以下に各プローブ核酸のスポット点で観測された蛍光強度を示す。
Figure 2009183225
表9のハイブリダイゼーションの結果より、Cy3のシグナルはSA-1とSE-1のプローブで検出されている(200以上の蛍光輝度を有意のシグナルとする場合)。従って、シグナルが検出されていて最も塩基長が短く、Tmが低いプローブの対であるSA-1とSE-1でのシグナル比はSA-1/SE-1=2.0となり、標的核酸は分離塩基がAであるStaphylococcus aureusであることが分かる。(1.5以上を有意のシグナル比とする場合)。
(比較例1)
実施例1の<プローブ核酸の作製>において、プローブをSA-1とSE-1のみを使用すること意外は、実施例1と同様にしてハイブリッド体の検出を行った。
<ハイブリット体の検出(蛍光測定)>
ハイブリダイゼーション反応終了後、遺伝子チップ用蛍光検出装置(Axon社製、GenePix 4000B)を用いて、スピンドライ乾燥済み遺伝子チップ上の各プローブ核酸のスポットについて、蛍光標識Cy3の蛍光強度の測定を行った。(532 nm Laser Power: 100% PMT Gain:400 )。
以下に各プローブ核酸のスポット点で観測された蛍光強度を示す。
Figure 2009183225
表10のハイブリダイゼーションの結果より、Cy3のシグナルはすべてのプローブで検出されている(200以上の蛍光輝度を有意のシグナルとする場合)。従って、シグナルが検出されていて最も塩基長が短く、Tmが低いプローブの対であるSA-1とSE-1でのシグナル比はSA-1/SE-1=1.0となり、標的核酸の分離塩基は検出されず、Staphylococcus aureusとStaphylococcus epidermidisの区別はつかない(1.5以上を有意のシグナル比とする場合)。

Claims (5)

  1. 標的核酸に相補的な配列からなる複数のプローブ核酸で構成されるプローブ核酸セットが少なくとも二種類以上固定されているDNAマイクロアレイであって、
    前記プローブ核酸セットを構成する各プローブ核酸が、同一配列を有し、互いに鎖長の異なることを特徴とするDNAマイクロアレイ。
  2. 前記プローブ核酸セットを構成する各プローブ核酸のうち、前記同一配列より鎖長が長いプローブ核酸は、該同一配列の5’側もしくは3’側のいずれかのみ、または5’側と3’側の両方が伸長されたものであることを特徴とする請求項1に記載のDNAマイクロアレイ。
  3. 前記プローブ核酸セットを構成する各プローブ核酸が10塩基以上の塩基鎖長を有することを特徴とする請求項1または2に記載のDNAマイクロアレイ。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のDNAマイクロアレイで標的核酸を含む試料についてハイブリダイゼーションを行った後、前記同一配列内の1塩基のみが異なる以外は同じ構成のプローブ核酸セット間で、前記プローブ核酸と前記標的核酸とのハイブリッド体の形成を示すシグナルの強度を比較することを特徴とする、前記標的核酸の塩基配列を解析する解析方法。
  5. 前記シグナルが、前記標的核酸に標識された蛍光物質によって発信される請求項4に記載のDNAマイクロアレイ解析方法。
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