JP2009180713A - 角速度センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】 外乱として作用する重力の影響を排除し、高精度な測定を行う。
【解決手段】
中央の振動子110を、可撓性をもった4本の架橋部121〜124によって、枠状の固定部材130に接続する。架橋部121〜124の上面には、圧電素子を設ける。駆動用圧電素子X12,X13に同位相の交流駆動信号を与え、振動子110をZ軸(紙面垂直)方向に振動させる。このとき、モニタ用圧電素子X12U,X13Uから得られるモニタ電圧の振幅が所定の基準振幅値に維持され、かつ、モニタ電圧の平均電圧値が0に維持されるように、交流駆動信号の振幅をフィードバック制御する。検出用圧電素子X11,X14から得られる電圧に基づいてX軸方向のコリオリ力を検出してY軸まわりの角速度を求め、検出用圧電素子Y11,Y14から得られる電圧に基づいてY軸方向のコリオリ力を検出してX軸まわりの角速度を求める。
【選択図】図28

Description

本発明は、角速度センサに関し、特に、運動中の振動子に作用するコリオリ力を検出することにより角速度の検出を行うセンサに関する。
小型で量産に適した角速度センサとして、圧電素子を用いたタイプのセンサが提案されている。たとえば、下記の特許文献1および2には、装置筐体内の固定部材に可撓性部材を介して振動子を支持した構造体を設け、可撓性部材の表面に形成した駆動用圧電素子に交流駆動信号を供給することにより、振動子を振動状態に維持し、この状態において振動子に作用するコリオリ力を、可撓性部材の表面に形成したコリオリ力検出用圧電素子の発生電荷に基づいて検出することにより、角速度の検出を行う角速度センサが開示されている。
これらの各文献に開示された角速度センサは、振動子を振動させる機構も、コリオリ力を検出する機構も、いずれも可撓性部材の表面に設けた圧電素子によって構成することができる。したがって、物理的には、可撓性部材の所定箇所にそれぞれ必要な数だけ圧電素子を配置した単純な構造により実現が可能であるため、小型で量産される工業製品へ広く利用することができる。
特開平8−35981号公報 特開平8−94661号公報
上述したように、従来の圧電素子型角速度センサは、装置筐体内の固定部材に可撓性部材を介して振動子を支持した構造を有している。この振動子を支持する構造体としては、薄い板状部材(いわゆるダイアフラム)を用いる場合や、複数の架橋部を用いる場合など、様々であるが、いずれも可撓性をもった部材を用いる点では変わりはない。すなわち、振動子を装置筐体内で振動させるために、可撓性部材による撓みを利用することになる。
ところが、この可撓性部材に撓みを生じさせる力は、本来、意図している力だけではなく、測定系に対しては外乱として作用する力も含まれている。そのため、従来の角速度センサには、この外乱の影響を受けて測定精度が低下するという問題がある。たとえば、角速度センサに対して加速度が作用している測定環境では、この加速度に起因する力が振動子に作用することになり、その影響を受けて、可撓性部材に撓みが生じることになる。特に、地球上では、常に重力加速度が作用している測定環境が不可避である。
もちろん、角速度センサを地上に固定して使用するような測定環境であれば、予め、重力加速度の作用を考慮した設定が可能であり、重力加速度の影響を排除した測定値を得ることができよう。しかしながら、角速度センサは、その性質上、空間内で移動したり姿勢を変えたりする物体に取り付けて利用するのが一般的である。このため、実用上は、角速度センサには、重力加速度をはじめとする様々な加速度が、全く予測できない方向から外乱として加わることになり、従来装置では、この外乱による測定精度の低下が避けられない。
そこで本発明は、測定系に対して外乱として作用する力の影響を排除し、高精度な角速度測定を行うことが可能な角速度センサを提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、振動子と、固定部材と、振動子を固定部材に対して接続する可撓性部材と、可撓性部材の表面の所定箇所に、当該所定箇所の撓みに応じて機械的変形を生じるように配置された複数の圧電素子と、を備えた角速度センサにおいて、
複数の圧電素子を、振動子を駆動させるための駆動用圧電素子と、振動子の駆動状態をモニタするためのモニタ用圧電素子と、振動子に作用するコリオリ力を検出するためのコリオリ力検出用圧電素子と、のいずれかとして用いるようにし、
更に、
交流駆動信号を供給して駆動用圧電素子を周期的に変形させ、可撓性部材を周期的に撓ませることにより振動子に周期的運動を生じさせる駆動制御回路と、
振動子が周期的運動を行っている状態において、周期的運動に同期した所定タイミングでコリオリ力検出用圧電素子の発生電荷を測定し、これを所定軸まわりの角速度の検出値として出力する角速度検出回路と、
を設け、
駆動制御回路が、モニタ用圧電素子の発生電荷に基づいて、振動子の周期的運動が、予め設定された基準運動に維持されるようにフィードバック制御を行うようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る角速度センサにおいて、
各モニタ用圧電素子について、それぞれ対応する駆動用圧電素子を定め、
駆動制御回路が、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2の態様に係る角速度センサにおいて、
特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の全振幅が、所定の基準振幅値よりも小さいときには、供給する交流駆動信号の全振幅を大きくする制御を行い、所定の基準振幅値よりも大きいときには、供給する交流駆動信号の全振幅を小さくする制御を行うようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第2または第3の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動制御回路が、更に、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が所定の基準値に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4の態様に係る角速度センサにおいて、
特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が、所定の基準値に対して第1の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて大きくするような制御を行い、所定の基準値に対して第1の方向とは逆の第2の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて小さくするような制御を行うようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第4の態様に係る角速度センサにおいて、
特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が、所定の基準値に対して第1の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号に正のオフセット電圧を加える制御を行い、所定の基準値に対して第1の方向とは逆の第2の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号に負のオフセット電圧を加える制御を行うようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第2〜第6の態様に係る角速度センサにおいて、
複数のモニタ用圧電素子に同一の駆動用圧電素子を対応させ、これら複数のモニタ用圧電素子のモニタ電圧の全振幅値の複数についての平均が所定の基準振幅値に維持されるように、もしくはこれら複数のモニタ用圧電素子のモニタ電圧の時間的な平均値の複数についての平均が所定の基準値に維持されるように、対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第2〜第7の態様に係る角速度センサにおいて、
各圧電素子の一方の面を接地電位に接続し、
駆動用圧電素子の他方の面に交流駆動信号を供給して振動子を駆動させ、
モニタ用圧電素子の他方の面の電位をモニタ電圧として測定し、このモニタ電圧に基づくフィードバック制御を行い、
コリオリ力検出用圧電素子の他方の面の所定タイミングにおける電位に基づいて、角速度の検出値を出力するようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第8の態様に係る角速度センサにおいて、
各圧電素子の上面に上方電極を接合し、下面に下方電極を接合し、下方電極を可撓性部材の上面に接合するようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第9の態様に係る角速度センサにおいて、
可撓性部材の表面に形成した単一の導電層を、各圧電素子に共通する下方電極として用いるようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第8〜第10の態様に係る角速度センサにおいて、
接地電位を基準として、正および負の電圧を交互にとる交流駆動信号を駆動用圧電素子に供給することにより振動子を駆動し、
特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が接地電位に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、可撓性部材が振動子をその周囲から支持する構造をなし、
可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、X′軸上に配置された圧電素子と、Y′軸上に配置された圧電素子と、を有し、
振動子をX軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸に沿って振動させた状態、もしくは、振動子をXY平面,XZ平面,YZ平面のいずれかの平面に沿って円運動させた状態において、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸方向に作用するコリオリ力を測定することにより、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸まわりの角速度を検出するようにしたものである。
(13) 本発明の第13の態様は、上述の第12の態様に係る角速度センサにおいて、
圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成したものである。
(14) 本発明の第14の態様は、上述の第13の態様に係る角速度センサにおいて、
各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されているようにしたものである。
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第13または第14の態様に係る角速度センサにおいて、
X′軸もしくはY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子と、このI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子と、によって圧電素子対が構成されており、
U字状圧電素子は、I字状圧電素子の両脇位置において長手方向軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有しており、
圧電素子対を構成する一方の圧電素子をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子を駆動用圧電素子として用い、モニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(16) 本発明の第16の態様は、上述の第15の態様に係る角速度センサにおいて、
U字状圧電素子の第1の並伸部および第2の並伸部が可撓性部材上に配置され、接続部が振動子上もしくは固定部材上に配置されているようにしたものである。
(17) 本発明の第17の態様は、上述の第13または第14の態様に係る角速度センサにおいて、
可撓性部材の固定部材に対する接続位置近傍に配置された第1の圧電素子と、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍に配置された第2の圧電素子と、を有し、第1の圧電素子と第2の圧電素子とは、同一の軸上に配置されており、これら一対の圧電素子のうち、一方の圧電素子をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子を駆動用圧電素子として用い、モニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(18) 本発明の第18の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、可撓性部材が振動子をその周囲から支持する構造をなし、
可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
を有し、
駆動制御回路は、第1および第2の駆動用圧電素子に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子をZ軸方向に振動させ、第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
角速度検出回路は、第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出するようにしたものである。
(19) 本発明の第19の態様は、上述の第18の態様に係る角速度センサにおいて、
圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
U字状圧電素子は、I字状圧電素子の両脇位置においてX′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有しているようにしたものである。
(20) 本発明の第20の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、可撓性部材が振動子をその周囲から支持する構造をなし、
可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3の駆動用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4の駆動用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3のモニタ用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4のモニタ用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
を有し、
駆動制御回路は、第1〜第4の駆動用圧電素子に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子をZ軸方向に振動させ、第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第3のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第3の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第4のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第4の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
角速度検出回路は、第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出するようにしたものである。
(21) 本発明の第21の態様は、上述の第20の態様に係る角速度センサにおいて、
圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
Y′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
各U字状圧電素子は、各I字状圧電素子の両脇位置においてX′軸もしくはY′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有しているようにしたものである。
(22) 本発明の第22の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、可撓性部材が振動子をその周囲から支持する構造をなし、
可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、
Y′軸の正の領域上に配置された第1および第2のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第3および第4のコリオリ力検出用圧電素子と、 を有し、
駆動制御回路は、第1および第2の駆動用圧電素子に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子をX軸方向に振動させ、第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
角速度検出回路は、第1および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、第2および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をZ軸まわりの角速度として検出するようにしたものである。
(23) 本発明の第23の態様は、上述の第22の態様に係る角速度センサにおいて、
圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されているようにしたものである。
(24) 本発明の第24の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、可撓性部材が振動子をその周囲から支持する構造をなし、
可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3の駆動用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4の駆動用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3のモニタ用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4のモニタ用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
を有し、
駆動制御回路は、第1〜第4の駆動用圧電素子に対して、この順番でπ/2ずつ位相が遅れた交流駆動信号を供給することにより、振動子をXY平面に沿って円運動させ、第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第3のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第3の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第4のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第4の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
角速度検出回路は、
振動子がY軸方向に運動しているタイミングにおいて第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力もしくは振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をZ軸まわりの角速度として検出し、
振動子がY軸方向に運動しているタイミングにおいて第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出し、
振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出するようにしたものである。
(25) 本発明の第25の態様は、上述の第24の態様に係る角速度センサにおいて、
圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
Y′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
各U字状圧電素子は、各I字状圧電素子の両脇位置においてX′軸もしくはY′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有しているようにしたものである。
(26) 本発明の第26の態様は、上述の第1〜第11の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、可撓性部材が振動子をその周囲から支持する構造をなし、
可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、
X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
を有し、
駆動制御回路は、第1の駆動用圧電素子に対して第1の交流駆動信号を供給し、第2の駆動用圧電素子に対して第1の交流駆動信号に対して位相がπ/2だけ遅れた第2の交流駆動信号を供給することにより、振動子をXZ平面に沿って円運動させ、第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
角速度検出回路は、
振動子がZ軸方向に運動しているタイミングにおいて第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力もしくは振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、
振動子がZ軸方向に運動しているタイミングにおいて第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出し、
振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をZ軸まわりの角速度として検出するようにしたものである。
(27) 本発明の第27の態様は、上述の第26の態様に係る角速度センサにおいて、
圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
U字状圧電素子は、I字状圧電素子の両脇位置においてX′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有しているようにしたものである。
(28) 本発明の第28の態様は、上述の第1〜第27の態様に係る角速度センサにおいて、
角速度検出回路が、モニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧に基づいて、コリオリ力検出用圧電素子の発生電荷の検出タイミングを決定するようにしたものである。
(29) 本発明の第29の態様は、上述の第1〜第28の態様に係る角速度センサにおいて、
可撓性部材が、可撓性をもった複数の架橋部によって構成されており、各架橋部の一方の端が振動子に接続され、他方の端が固定部材に固定されているようにしたものである。
(30) 本発明の第30の態様は、上述の第1〜第28の態様に係る角速度センサにおいて、
可撓性部材が、振動子の周囲を取り囲む形状をなし、可撓性をもった板状構造体によって構成されており、板状構造体の内側部分が振動子に接続され、外側部分が固定部材に固定されているようにしたものである。
(31) 本発明の第31の態様は、振動子と、固定部材と、振動子を固定部材に対して接続する可撓性部材と、可撓性部材の表面の所定箇所に、当該所定箇所の撓みに応じて機械的変形を生じるように配置された複数の圧電素子と、を備えた角速度センサにおいて、
複数の圧電素子を、振動子を駆動させるための駆動用圧電素子と、振動子に作用するコリオリ力を検出するためのコリオリ力検出用圧電素子と、のいずれかとして用いるようにし、
更に、
振動子の駆動状態をモニタするために、可撓性部材の表面の所定箇所に配置されたモニタ用ピエゾ抵抗素子と、
交流駆動信号を供給して駆動用圧電素子を周期的に変形させ、可撓性部材を周期的に撓ませることにより振動子に周期的運動を生じさせる駆動制御回路と、
振動子が周期的運動を行っている状態において、周期的運動に同期した所定タイミングでコリオリ力検出用圧電素子の発生電荷を測定し、これを所定軸まわりの角速度の検出値として出力する角速度検出回路と、
を設け、
駆動制御回路が、モニタ用ピエゾ抵抗素子の電気抵抗に基づいて、振動子の周期的運動が、予め設定された基準運動に維持されるようにフィードバック制御を行うようにしたものである。
(32) 本発明の第32の態様は、上述の第31の態様に係る角速度センサにおいて、
振動子が特定方向に変位したときに電気抵抗が増加する一対のピエゾ抵抗素子を対辺とし、振動子が上記特定方向に変位したときに電気抵抗が減少する一対のピエゾ抵抗素子を別な対辺とするブリッジ回路を形成し、
駆動制御回路が、このブリッジ回路のブリッジ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持されるように、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにしたものである。
(33) 本発明の第33の態様は、上述の第32の態様に係る角速度センサにおいて、
駆動制御回路が、更に、ブリッジ回路のブリッジ電圧の時間的な平均値が所定の基準値に維持されるように、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにしたものである。
本発明に係る角速度センサでは、駆動用圧電素子およびコリオリ力検出用圧電素子の他に、振動子の運動をモニタするためのモニタ用素子を設け、このモニタ用素子のモニタ結果をフィードバック量として、駆動用圧電素子に供給する駆動信号をフィードバック制御するようにしたため、振動子の周期的運動を、予め設定した基準運動に維持することができるようになる。このため、測定系に対して外乱として作用する加速度などに起因する力が働いたとしても、振動子の運動が予め設定した基準運動を維持するような制御が行われ、測定系を安定させることが可能になる。こうして、本発明によれば、測定系に対して外乱として作用する力の影響を排除し、高精度な角速度測定を行うことが可能になる。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.角速度センサの基本構造 >>>
図1は、本発明に係る圧電素子を用いた角速度センサの基本構造体100の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示す基本構造体100を切断線2−2に沿って切った側断面図である。もっとも、このような基本構造体100は、従来の圧電素子式角速度センサにおいても利用されてきたものであり、本発明に係る角速度センサは、このような従来のセンサで利用されている一般的な基本構造体100をそのまま利用して実現することができる。
図1の平面図に示されているとおり、この基本構造体100は、中央に位置する振動子110と、その上下左右に設けられた4本の架橋部121〜124と、その周囲に配置された枠状の固定部材130と、によって構成されている。図2の側断面図を見ればわかるように、この基本構造体100は、実際には半導体や金属などからなる基板の底面を掘り上げる加工を行うことにより量産することができる。
振動子110は、四角柱状の重錘体を構成しており、ここでは説明の便宜上、この振動子110の重心Gの位置に原点をもつXYZ三次元座標系を定義する。具体的には、図2において右方向をX軸、上方向をZ軸、紙面に垂直方向をY軸と定義する。基本構造体100の上面(図1の平面図に示されている面)は、XY平面に平行な平面になる。図1に示されているH1〜H4は開口部であり、振動子110は、4本の架橋部121〜124によってのみ、固定部材130に対して接続されている。固定部材130は、振動子110の周囲を取り囲むような枠状の構造体であり、装置筐体に対して固定される。装置筐体は、図示されていないが、基本構造体100をそっくり収容する役割を果たす。4本の架橋部121〜124は、図2に示されているように、薄いビーム構造をなしており、可撓性を有する可撓性部材として機能する。
このように、図1および図2に示す基本構造体100は、振動子110と、その周囲に配置された枠状の固定部材130と、振動子110を固定部材130に対して接続する可撓性部材と、によって構成されている。しかも、可撓性部材は、可撓性をもった複数の架橋部121〜124によって構成されており、各架橋部121〜124の一方の端が振動子110に接続され、他方の端が固定部材に固定されている。
ここでは、このような基本構造体100において、振動子110の重心Gに対して、各座標軸方向の力が加わった場合に、可撓性部材(架橋部121〜124)の各部にどのような撓みが生じるかを考えてみる。
まず、X軸正方向の力+Fxが作用した場合は、図3に示すような変形が生じ、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、図4に示すような変形が生じる。図において、円で囲った「+」印は、架橋部の該当箇所の上面が、当該架橋部が配置されている座標軸方向(X軸方向)に関して伸びることを示し、円で囲った「−」印は、架橋部の該当箇所の上面が、当該架橋部が配置されている座標軸方向(X軸方向)に関して縮むことを示している。ここで「+」および「−」を付した箇所は、架橋部121〜124の両端位置であり、可撓性部材の振動子110に対する接続位置近傍および可撓性部材の固定部材130に対する接続位置近傍ということになる。このような接続位置近傍は、可撓性部材に加わる応力が集中する位置であるため、ここに圧電素子を配置すると、極めて効率的な動作(圧電素子に電気信号を供給して機械的な撓みを生じさせる動作と、圧電素子に生じる電気信号に基づいて機械的な撓みを検出する動作)が可能になる。
図3と図4とを比較するとわかるとおり、X軸方向に作用する力の向きが逆転すると、各位置の伸縮状態も逆転する。また、図3あるいは図4を見ればわかるとおり、同じ架橋部であっても、振動子110に対する接続位置近傍と、固定部材130に対する接続位置近傍とでは、伸縮状態が異なっている。たとえば、図3において、架橋部121の右端は縮み(−)、左端は伸び(+)、架橋部123の右端は縮み(−)、左端は伸び(+)ている。
Y軸正方向の力+Fyが作用した場合およびY軸負方向の力−Fyが作用した場合の変形態様は、図3および図4のX軸をY軸に置き換えたものになる。
一方、Z軸正方向の力+Fzが作用した場合は、図5に示すような変形が生じ、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合は、図6に示すような変形が生じる。図示のとおり、Z軸正方向の力+Fzが作用した場合は、架橋部121〜124の振動子110に対する接続位置近傍の上面は伸び(+)、固定部材130に対する接続位置近傍の上面は縮む(−)。逆に、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合は、架橋部121〜124の振動子110に対する接続位置近傍の上面は縮み(−)、固定部材130に対する接続位置近傍の上面は伸びる(+)。
なお、以上述べた伸縮状態は、各架橋部121〜124の上面の状態を示しており、下面では伸縮状態が逆転する。図7〜図12は、振動子110の重心Gに対して、各座標軸の正方向および負方向の力が作用した場合に、各架橋部121〜124の上面の両端位置(上述したように、応力が集中する位置)の伸縮状態を示す平面図である。前述したとおり、図において、円で囲った「+」印は、架橋部の該当箇所の上面が当該架橋部が配置されている座標軸方向(X軸方向もしくはY軸方向)に関して伸びることを示し、円で囲った「−」印は、架橋部の該当箇所の上面が当該架橋部が配置されている座標軸方向(X軸方向もしくはY軸方向)に関して縮むことを示している。
また、図における「0」印は、当該架橋部が配置されている座標軸方向に関しては、機械的な伸縮がほとんど生じないことを示している。たとえば、図7および図8の場合、Y軸に沿って配置されている架橋部122,124上には「0」印が示されている。これは、振動子110に対してX軸方向の力+Fx,−Fxが作用した場合、架橋部122,124についてのY軸方向に関する伸縮はほとんど生じないことを示している。同様に、図9および図10の場合、X軸に沿って配置されている架橋部121,123上には「0」印が示されている。これは、振動子110に対してY軸方向の力+Fy,−Fyが作用した場合、架橋部121,123についてのX軸方向に関する伸縮はほとんど生じないことを示している。
振動子110に対してZ軸正方向の力+Fzが作用した場合は、図11に示すとおり、各架橋部121〜124上面の内側部分(振動子110に対する接続位置近傍)は伸び(+)、外側部分(固定部材130に対する接続位置近傍)は縮む(−)。また、振動子110に対してZ軸負方向の力−Fzが作用した場合は、図12に示すとおり、各架橋部121〜124上面の内側部分(振動子110に対する接続位置近傍)は縮み(−)、外側部分(固定部材130に対する接続位置近傍)は伸びる(+)。
圧電素子を用いた角速度センサは、このような機械的特性をもった基本構造体100の各架橋部121〜124の上面の所定箇所に、それぞれ圧電素子を配置することにより構成される。図13は、この圧電素子の構造とその特性を示す側断面図である。図13(a) に示すように、この圧電素子50は、板状の圧電素子本体部51、その上面に接合された上方電極52、下面に接合された下方電極53によって構成されている。
圧電素子の一般的な性質として、電圧を印加すると機械的変形が生じる性質と、逆に、機械的変形を加えると電荷が生じる性質がある。どのような極性の電圧を印加すると、どのような機械的変形が生じるか、あるいは、どのような機械的変形を加えると、どのような極性の電荷が生じるか、といった特性は、個々の圧電素子ごとに異なる(圧電素子を生成する際に行う分極処理によって決定される)。なお、図13に示す例のように、圧電素子の上下両面に電極を形成した場合、圧電素子に機械的変形を加えることにより生じる電荷は、上下両電極間に生じる電圧に比例する。したがって、以下の説明では、「発生電圧」を「発生電荷」と等価なものとして取り扱うことにする。
ここに例示する圧電素子50は、図13(b) に示すように、上方電極52側を正、下方電極53側を負とする電圧を印加すると、横方向に伸びる機械的変形を生じ、図13(c) に示すように、上方電極52側を負、下方電極53側を正とする電圧を印加すると、横方向に縮む機械的変形を生じる。また、横方向に伸ばす機械的変形を加えると、上方電極52側が正、下方電極53側が負となるような電圧が生じ、横方向に縮める機械的変形を加えると、上方電極52側が負、下方電極53側が正となるような電圧が生じる。
もちろん、本発明は、このような特性をもった圧電素子を用いたセンサに限定されるものではなく、任意の特性をもった圧電素子を利用することが可能である。ただ、ここでは、説明の便宜上、図13(b) ,(c) に示すような特性をもった圧電素子50を用いる場合を例として、以下の説明を行うことにする。
図14は、図1および図2に示す基本構造体100の上面に、図13に示す圧電素子50を配置した状態を示す側断面図である。各圧電素子50の下方電極53が、各架橋部121〜124上面の所定箇所に接合される。このため、各圧電素子50の上下両電極間に所定の電圧を印加し、機械的変形を生じさせると、当該変形は各架橋部121〜124の上面へと伝達され、各架橋部121〜124の各部は伸縮変形を生じることになる。したがって、所定箇所に配置された各圧電素子50にそれぞれ所定の交流駆動電圧を供給すれば、振動子に周期的な運動をさせることができる。逆に、振動子が外力によって所定方向に変位し、各架橋部121〜124の各部に機械的変形が生じると、当該変形は各圧電素子50へと伝達され、各圧電素子50の上下両電極間には所定の電圧が発生する。この発生電圧を測定することにより、振動子の変位状態を検出することができる。
なお、実用上は、図15に示す例のように、図14に示す各圧電素子50の下方電極53を単一の導電層63に置き換えると、個々の下方電極53に対する個別配線が不要になるので、構造をより単純化することができる。このように、各圧電素子50の下方電極53を単一の導電層63に置き換えると、各圧電素子50の圧電素子本体部51の下面は共通電位になるが、上方電極52は個別の電極として機能するため、動作上の支障は生じない。なお、図示の例では、基本構造体100の上面全面に単一の導電層63を形成しているが、少なくとも各架橋部121〜124(可撓性部材)の表面に形成した単一の導電層を、各圧電素子に共通する下方電極として用いるようにすればよい。また、基本構造体100が導電性材料によって構成されている場合は、基本構造体100の上面と導電層63との間に絶縁層を形成しておくのが好ましい。
図16は、図1に示す基本構造体100の各架橋部(可撓性部材)121〜124の上面に複数の圧電素子50を配置した構成をもつセンサの平面図である。図示の例の場合、合計8組の圧電素子50が配置された状態が示されている。ここでは、基本構造体100の上面(可撓性部材121〜124の上面)を投影面(XY平面に平行な面になる)として、X軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義する。そして、図示のとおり、X′軸上に配置された4組の圧電素子を、それぞれ圧電素子X11,X12,X13,X14と呼び、Y′軸上に配置された4組の圧電素子を、それぞれ圧電素子Y11,Y12,Y13,Y14と呼ぶことにする。
結局、図16に示すセンサは、振動子110の重心Gの位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材121〜124を有しており、振動子110を取り囲む位置に固定部材130が配置されており、可撓性部材121〜124が振動子110をその周囲から支持する構造をなし、この可撓性部材121〜124の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、X′軸上に配置された4組の圧電素子X11,X12,X13,X14と、Y′軸上に配置された4組の圧電素子Y11,Y12,Y13,Y14と、を有していることになる。
ここで、X′軸上に配置された4組の圧電素子X11,X12,X13,X14は、いずれもX′軸を長手方向軸とする細長い平面形状をしており、そのうち、X11,X14は、可撓性部材121,123の固定部材130に対する接続位置近傍に配置されており、X12,X13は、可撓性部材121,123の振動子110に対する接続位置近傍に配置されている。同様に、Y′軸上に配置された4組の圧電素子Y11,Y12,Y13,Y14は、いずれもY′軸を長手方向軸とする細長い平面形状をしており、そのうち、Y11,Y14は、可撓性部材122,124の固定部材130に対する接続位置近傍に配置されており、Y12,Y13は、可撓性部材122,124の振動子110に対する接続位置近傍に配置されている。
このように、各圧電素子を、可撓性部材121〜124の振動子110に対する接続位置近傍もしくは固定部材130に対する接続位置近傍に配置するのは、前述したように、このような接続位置近傍は、可撓性部材に加わる応力が集中する位置であるため、ここに圧電素子を配置すると、極めて効率的な動作(圧電素子に電気信号を供給して機械的な撓みを生じさせる動作と、圧電素子に生じる電気信号に基づいて機械的な撓みを検出する動作)が可能になるためである。
また、X′軸上に配置する4組の圧電素子X11,X12,X13,X14を、X′軸を長手方向軸とする細長い平面形状とし、Y′軸上に配置する4組の圧電素子Y11,Y12,Y13,Y14を、Y′軸を長手方向軸とする細長い平面形状とするのは、図7〜図12の平面図に示した特性の感度を高めるためである。すなわち、図16に示す8組の圧電素子X11,X12,X13,X14,Y11,Y12,Y13,Y14の配置は、図7〜図12の平面図における「+」,「−」,「0」の各印を記した位置に対応している。ここで、「+」印は、当該箇所の上面が、当該箇所が置かれた座標軸方向に関して伸びることを示し、「−」印は、当該箇所の上面が、当該箇所が置かれた座標軸方向に関して縮むことを示している。4組の圧電素子X11,X12,X13,X14を、X′軸を長手方向軸とする細長い平面形状とすれば、X′軸方向に関する感度が高まり、Y′軸上に配置する4組の圧電素子Y11,Y12,Y13,Y14を、Y′軸を長手方向軸とする細長い平面形状とすれば、Y′軸方向に関する感度が高まるので好都合である。
更に、図16に示す8組の圧電素子X11,X12,X13,X14,Y11,Y12,Y13,Y14の配置パターンは、XZ平面に対称(すなわちX′軸対称)、かつ、YZ平面にも対称(すなわちY′軸対称)となるように構成されている。このように、圧電素子の配置パターンが、座標軸に関して幾何学的な対称性を維持するようにする第1のメリットは、図7〜図12の平面図における「0」印を記した位置に配置された圧電素子の伸縮がトータルで0に維持される点である。圧電素子は面積をもった領域に配置されることになるので、「0」印を記した位置に配置された圧電素子であっても、厳密には、その一部分は伸び、一部分は縮むことになるが、軸対称性が維持されていれば、1つの圧電素子全体としてみれば、伸縮は相互にキャンセルされ、伸縮が生じなかったものとして取り扱うことができる。
そして、座標軸に関して幾何学的な対称性を維持するようにする第2のメリットは、後述するように、一対の圧電素子を協働させて、振動子110を駆動させたり、振動子110の変位を検出したりする場合に、信号処理が容易になる点である。協働させる一対の圧電素子の形状および配置が、座標軸に関する対称性を維持していれば、両者を対等な構成要素として取り扱うことができるので、同一の挙動をとらせるためには同一の信号を与えればよいし、同一の信号が検出されれば、同一の現象が生じたものとして取り扱うことができる。
図16に示す8組の圧電素子X11,X12,X13,X14,Y11,Y12,Y13,Y14の配置パターンは、このような点において、最も理想的な配置パターンということができる。
<<< §2.角速度センサの基本的な動作原理 >>>
さて、ここでは、図16に示す角速度センサの基本的な動作原理を説明する。この角速度センサでは、振動子110をX軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸に沿って振動させた状態、もしくは、振動子110をXY平面,XZ平面,YZ平面のいずれかの平面に沿って円運動させた状態において、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸方向に作用するコリオリ力を測定することにより、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸まわりの角速度を検出することができる。
振動子110をどのように駆動して、どの座標軸まわりの角速度を検出するかについては、様々な組み合わせが選択できるが、以下、比較的単純な例として、振動子110をZ軸方向に振動させた状態において、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを検出する例を述べる。この例の場合、図16に示す8組の圧電素子をすべて用いる必要はない。具体的には、圧電素子Y12,Y13は利用する必要がない。したがって、実用上は、図17に示すように、6組の圧電素子X11,X12,X13,X14,Y11,Y14を設けておけば足りる。
図17に示されている6組の圧電素子X11,X12,X13,X14,Y11,Y14は、いずれも図13に示す特性をもった圧電素子50によって構成されており、これらはその配置が異なるだけで、物理的な特性はいずれも同じものである。ただ、ここでは、圧電素子X12,X13については、振動子110を駆動するための役割を与え、駆動用圧電素子と呼ぶことにし、圧電素子X11,X14,Y11,Y14については、振動子110に作用するコリオリ力を検出するための役割を与え、コリオリ力検出用圧電素子と呼ぶことにする。
このセンサを動作させるには、まず、図18(a) に示すような交流電圧信号φ1を用意し(横軸は時間軸t,縦軸は電圧軸V)、駆動用圧電素子X12,X13に供給する。ここでは、図15に示す例のように、全圧電素子の下方電極を、単一の導電層63によって構成し、これを接地電位に固定して用いるものとしよう。この場合、6組の圧電素子の下方電極の電位は、いずれも接地電位に固定されることになる。そして、図18(a) に示す交流電圧信号φ1を駆動用圧電素子X12,X13の上方電極に与えることにする。この交流電圧信号φ1は、接地電位0Vを基準レベルとして、正側のピーク電圧Vp,負側のピーク電圧−Vpをとる正弦波信号であるから、駆動用圧電素子X12,X13の上方電極には、半周期ごとに正および負の電圧が印加されることになる。
駆動用圧電素子X12,X13の上方電極に、正の電圧が印加されている半周期の間は、駆動用圧電素子X12,X13は、図13(b) に示す状態になるので、いずれもX′軸方向に伸びる変形を生じることになる。このように、架橋部121,123(可撓性部材)の上面における圧電素子X12,X13の双方の配置箇所において、X′軸方向に伸びる応力が加わると、図11に示すように、振動子110に対して、Z軸正方向の力+Fzが作用したのと等価な状態になり、振動子110はZ軸正方向に変位する。
一方、駆動用圧電素子X12,X13の上方電極に、負の電圧が印加されている半周期の間は、駆動用圧電素子X12,X13は、図13(c) に示す状態になるので、いずれもX′軸方向に縮む変形を生じることになる。このように、架橋部121,123(可撓性部材)の上面における圧電素子X12,X13の双方の配置箇所において、X′軸方向に縮む応力が加わると、図12に示すように、振動子110に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用したのと等価な状態になり、振動子110はZ軸負方向に変位する。
結局、図17に示す角速度センサにおいて、駆動用圧電素子X12,X13に対して、図18(a) に示すような交流電圧信号φ1を供給すると、振動子110はZ軸に沿って振動することになる。図18(b) は、振動子110の重心Gの変位を示すグラフであり、横軸は図18(a)の横軸と同期した時間軸tであり、縦軸は変位Zを示している。ここで、変位0は、重心Gが座標系の原点Oの位置にあることを示している。
振動子110は、振幅Aをもって上下方向に振動し、その周期は、交流電圧信号φ1の周期に一致する。ただし、振動子110の変位の位相は、交流電圧信号φ1の位相に対して所定の位相差dだけ遅れることになる。これは、駆動用圧電素子X12,X13に所定の電圧が加えられてから、実際に振動子110が、圧電素子の機械的変形に基づく変位を生じるまでに、機械系や回路系の遅延により若干の時間的な遅れが生じるためである。位相差dは、振動子110や可撓性部材121〜124といった機械的な振動系に固有の特性と振動周波数に応じて定まる値であり、たとえば、振動系のもつ共振周波数で振動子を振動させた場合、d=π/2になることが知られている。
さて、こうして、振動子110をZ軸方向に振動させた状態において、角速度が作用すると、作用した角速度に応じて、振動子110に対してコリオリ力が作用する。たとえば、Y軸まわりの角速度ωyが作用したとすると、振動子110の運動方向はZ軸方向であるから、X軸方向のコリオリ力Fxが作用することになる。そして、X軸正方向のコリオリ力+Fxが作用した場合は、振動子110は図3に示すように傾くことになり、X軸負方向のコリオリ力−Fxが作用した場合は、振動子110は図4に示すように傾くことになる。
このような振動子110のX軸方向への傾斜は、コリオリ力検出用圧電素子X11,X14の発生電荷として検出することができる。すなわち、X軸正方向のコリオリ力+Fxが作用した場合は、図7に示すとおり、圧電素子X11は縮み、圧電素子X14は伸びるので、圧電素子X11の上方電極には負の電圧が生じ、圧電素子X14の上方電極には正の電圧が生じる。逆に、X軸負方向のコリオリ力−Fxが作用した場合は、図8に示すとおり、圧電素子X11は伸び、圧電素子X14は縮むので、圧電素子X11の上方電極には正の電圧が生じ、圧電素子X14の上方電極には負の電圧が生じる。したがって、両者の電位差をとれば、その絶対値は作用したコリオリ力の大きさを示し、符号は作用したコリオリ力の向きを示すことになる。このコリオリ力の大きさと向きは、Y軸まわりの角速度ωyの大きさと向きを示している。
同様に、X軸まわりの角速度ωxが作用したとすると、振動子110の運動方向はZ軸方向であるから、Y軸方向のコリオリ力Fyが作用することになり、振動子110はY軸方向に傾斜する。このような振動子110のY軸方向への傾斜は、コリオリ力検出用圧電素子Y11,Y14の発生電荷として検出することができる。すなわち、Y軸正方向のコリオリ力+Fyが作用した場合は、図9に示すとおり、圧電素子Y11は縮み、圧電素子Y14は伸びるので、圧電素子Y11の上方電極には負の電圧が生じ、圧電素子Y14の上方電極には正の電圧が生じる。逆に、Y軸負方向のコリオリ力−Fyが作用した場合は、図10に示すとおり、圧電素子Y11は伸び、圧電素子Y14は縮むので、圧電素子Y11の上方電極には正の電圧が生じ、圧電素子Y14の上方電極には負の電圧が生じる。したがって、両者の電位差をとれば、その絶対値はX軸まわりの角速度ωxの大きさを示し、符号は向きを示すものになる。
かくして、図17に示す角速度センサでは、振動子をZ軸方向に振動させた状態において、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを検出することが可能になる。もっとも、この図17に示す角速度センサの動作方法は、上述した方法に限定されるものではない。
たとえば、圧電素子X12とX14とを駆動用圧電素子として用い、圧電素子X11,X13,Y11,Y14をコリオリ力検出用圧電素子として用いることも可能である。この変形例の場合、振動子110をZ軸方向に振動させるためには、図19(a) に示す交流電圧信号φ1と、図19(b) に示す交流電圧信号φ2とを用意し、駆動用圧電素子X12の上方電極には信号φ1を供給し、駆動用圧電素子X14の上方電極には信号φ2を供給すればよい。信号φ1とφ2とは互いに逆位相の信号になっている。駆動用圧電素子X12,X14に対して、互いに逆位相の交流電圧信号φ1,φ2を供給するのは、振動子110のZ軸方向への変位に関して、駆動用圧電素子X12,X14の位置における可撓性部材の伸縮の関係が逆になるためである(図11および図12における駆動用圧電素子X12,X14の対応位置の伸縮状態参照)。
なお、この変形例の場合、圧電素子X11,X13,Y11,Y14をコリオリ力検出用圧電素子として用いているため、コリオリ力検出原理も若干変更する必要がある。すなわち、Y軸方向のコリオリ力Fyの検出に関しては、前述の基本例と同様に、圧電素子Y11の上方電極の電位と圧電素子Y14の上方電極の電位との差をとればよいが、X軸方向のコリオリ力Fxの検出に関しては、前述の基本例とは異なり、圧電素子X11の上方電極の電位と圧電素子X13の上方電極の電位との和をとる必要がある。これは、X軸方向のコリオリ力Fxが作用したときに、コリオリ力検出用圧電素子X11,X13の位置における可撓性部材の伸縮の関係が同じになるためである(図7および図8におけるコリオリ力検出用圧電素子X11,X13の対応位置の伸縮状態参照)。
このように、本発明に係る角速度センサにおいて、各駆動用圧電素子に同位相の交流電圧信号を供給すべきか、逆位相の交流電圧信号を供給すべきかは、各駆動用圧電素子の配置に応じて適宜決定すべき事項であり、また、各コリオリ力検出用圧電素子に生じた電圧の和をとるべきか、差をとるべきかも、各コリオリ力検出用圧電素子の配置に応じて適宜決定すべき事項である。また、ここでは、説明の便宜上、各圧電素子の特性が、図13に示すようなものであるという前提に立っているが、分極処理の極性を逆にすることによって得られた圧電素子は、図13に示す特性とは逆の特性をもつことになる。したがって、そのような逆の特性をもつ圧電素子を駆動用圧電素子として用いた場合には、交流電圧信号の位相は逆転させる必要があり、コリオリ力検出用圧電素子として用いた場合には、信号処理の正負を逆転させる必要がある。
<<< §3.本発明の基本的な着眼点 >>>
さて、§2では、図17に示す角速度センサを例にとって、その検出動作を述べた。しかしながら、この説明は、「角速度センサには外乱となる力が作用しない」という理想的な測定環境における説明であり、実用上は、このような理想的な測定環境でセンサが利用されることは稀である。前述したとおり、センサが実際に利用される環境では、たとえば、重力加速度などの外乱要因が存在するため、§2で説明した角速度センサには、この外乱の影響を受けて測定精度が低下するという問題がある。
たとえば、図17に示す角速度センサの振動子110を静止状態にして、無重力空間内に放置した場合であれば、振動子110は、図2の側断面図に示すような基準位置をとる(重心Gが座標系の原点Oに位置する)。ところが、重力の影響下にある地球上では、図20に示すように、振動子110の重心Gには、重力加速度αgに基づく力が作用するため、図2に示す状態に比べて、振動子110の静止状態の基準位置は若干下方に変位した状態になる。一方、図21に示すように、この角速度センサを地球上で天地逆の状態にすれば、振動子110の重心Gには、図示の方向に重力加速度αgに基づく力が作用する。これは、図2において、振動子110の静止状態の基準位置が若干上方に変位した状態に相当する。
角速度センサは、その性質上、空間内で移動したり姿勢を変えたりする物体に取り付けて利用するのが一般的であるから、振動子に作用する重力加速度αgの向きは、全く予想することができない。また、運動中の物体にセンサを取り付けて利用する場合、当該物体には、その運動に起因する加速度も作用することになるので、振動子の静止状態の基準位置に影響を与える要因は、重力加速度だけではなく、運動に起因する加速度も加わることになる。
振動子は、その静止状態の基準位置を中心として振動することになるので、この基準位置が変化すると、振動の運動系全体の位置がずれることになる。図22は、図20に示すような重力加速度αgの影響を受けている角速度センサ(図17に示すセンサ)において、供給する交流電圧信号φ1と振動子の重心Gの変位との関係を示すグラフである。ここで、図22(a) に示す交流電圧信号φ1は、図18(a) に示すものと全く同じである。ところが、図20に示すように、振動子の静止状態の基準位置が重力加速度αgの作用によってZ軸負方向にずれるため、図22(b) に示すように、振動子の振動中心位置Lが下方にずれ、振動子はこの振動中心位置Lを中心として上下に振動することになる。
図22(b) に一点鎖線で示す振動中心位置Lは、図20に示す振動子110の静止状態(駆動させるための交流電圧信号を供給しない状態)における重心Gの位置に対応するものになり、振動子110は、この位置を基準にして上下に振動する。但し、図22(b) に示されているように、振動中心位置Lを基準とした上方向の振幅A1と下方向の振幅A2とは等しくならず、A1>A2になる。これは、図20に示す重心Gの位置を基準にすると、上方向に変位させるためのエネルギー変換効率の方が、下方向に変位させるためのエネルギー変換効率よりも勝っているためである。すなわち、振動子110を、図20に示す状態から上方向に変位させるためのエネルギーEupを加えた場合の上方向の変位量をA1とし、下方向に変位させるためのエネルギーEdownを加えた場合の下方向の変位量をA2とすれば、Eup=Edownであったとしても、A1>A2になる。
図20に示すように、静止状態における重心Gの位置が重力αgの作用によってZ軸負方向にずれていた場合に、これを上下方向に変位させるためのエネルギー変換効率に差が生じる理由は、可撓性部材121〜124がばねとして機能することを考えれば、容易に理解できよう。すなわち、図20に示す状態から、振動子110を上方向に変位させる場合、当初は(重心GのZ座標値が負の値である間は)、ばねの復元力は変位方向に作用するのに対して、振動子110を下方向に変位させる場合、ばねの復元力は常に変位方向に対して反対方向に作用するのである。このため、図22(a) に示すような交流電圧信号φ1(正方向の振幅と負方向の振幅とが等しい信号)を供給した場合、図22(b) に示すように、上方向の振幅A1の方が下方向の振幅A2よりも大きくなる。したがって、図示する振動中心位置Lは、幾何学的な意味での振動中心にはならないが、ここでは説明の便宜上、「振動中心位置」と呼ぶことにする。
一方、図23は、図21に示すような重力加速度αgの影響を受けている角速度センサにおいて、供給する交流電圧信号φ1と振動子の重心Gの変位との関係を示すグラフである。図23(a) に示す交流電圧信号φ1は、図18(a) に示すものと全く同じである。ところが、図21に示すように、振動子の静止状態の基準位置が重力加速度αgの作用によってZ軸正方向にずれるため、図23(b) に示すように、振動子の振動中心位置Lが上方にずれ、振動子はこの振動中心位置Lを中心として上下に振動することになる。
しかも、図21に示す重心Gの位置を基準にすると、Z軸負方向(図21における上方向)に変位させるためのエネルギー変換効率の方が、Z軸正方向(図21における下方向)に変位させるためのエネルギー変換効率よりも勝っているため、図23(b) に示されているように、振動中心位置Lを基準としたZ軸正方向(図23(b) のグラフにおける上方向)の振幅A1とZ軸負方向(図23(b) のグラフにおける下方向)の振幅A2とは等しくならず、A2>A1になる。
結局、角速度センサに対する重力加速度αgは、振動子110の運動に関する2通りの要素に影響を与えることになる。第1の要素は、振動中心位置である。振動中心位置Lは、重力加速度αgが作用していない場合、図18(b) に示すように、Z座標値=0の位置になるが、重力加速度αgが作用すると、図22(b) および図23(b) に示すように、Z軸負方向もしくは正方向にずれることになる。第2の要素は、振幅である。振動子の振幅は、重力加速度αgが作用していない場合、図18(b) に示すように、正方向および負方向ともにAであり、1周期の振幅値(1周期の最大電圧値と最小電圧値との間の幅、以下、「全振幅値」と呼ぶ)は2Aになる。ところが、重力加速度αgが作用すると、図22(b) および図23(b) に示すように、全振幅値は「A1+A2」になり、この値は、重力加速度αgの作用する向きや、可撓性部材121〜124に固有のばね定数によって定まることになる。
このように、振動子の振動中心位置Lや全振幅値「A1+A2」が一定でないと、コリオリ力検出用圧電素子に生じる電荷(電圧)に基づく正確な角速度検出を行うことができず、測定精度の低下が避けられない。たとえば、交流電圧信号φ1の周波数が一定であるとすると、振動子の振幅が変化すると、振動子の速度も変化することになる。そして、振動子の速度が変化すると、角速度に応じて生じるコリオリ力の大きさも変化することになる。したがって、「コリオリ力の大きさを検出して角速度の検出を行う」という基本原理を採る本発明に係るセンサの場合、振動子の予期せぬ振幅変化は測定誤差を生む要因となる。また、たとえ振幅が一定であったとしても、振動子の振動中心位置Lが変化すると、検出用圧電素子の検出感度(変位に対する発生電荷量)が変化するため、やはり測定誤差を生む要因となる。
結局、図17に示す角速度センサを用いた測定では、検出対象となる角速度が同一であったとしても、図20に示すような姿勢で検出を行った場合と、図21に示すような姿勢で検出を行った場合とを比較すると、振動子の振動中心位置および振幅に変動が生じるため、両者の測定値は一致しなくなる。本願発明者が行った実験によると、特に、振幅の変動による測定誤差の影響はかなり大きい。
もちろん、このような測定誤差は、コリオリ力検出用圧電素子の所定タイミングにおける発生電荷を角速度の大きさを示す値として出力する際に、その時点の振動子の位置や振幅に応じた補正を行えば相殺可能である。しかしながら、そのような補正処理を行うためには、余分な回路が必要になり、実用上は好ましくない。
本発明は、このような問題を解決するための新技術を提案するものであり、その目的は、測定系に対して外乱として作用する力の影響を排除し、高精度な角速度測定を行うことを可能にすることにある。
上記問題を解決するためには、センサの姿勢に拘わらず、振動子が常に同一の振幅をもって、常に同一の振動中心位置を中心として、安定した振動を行うようにすればよい。そのために、本発明では、振動子の駆動状態をモニタするためのモニタ用素子を設け、このモニタ用素子のモニタ結果をフィードバック量として、振動子の振動が、予め設定された基準振動(予め設定された所定の振幅をもち、予め設定された所定の振動中心位置を中心とした振動)に維持されるようにフィードバック制御を行うようにする。
図24は、図20に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサ(図17に示すセンサ)において、供給する交流電圧信号φ1の振幅制御方法と、そのときの重心Gの変位を示すグラフである。図20に示す重力加速度αgの影響を受けると、そのままでは、図22(b) に示すように、振動中心位置Lが下方にずれ、その結果として、前述したような振幅変動が生じることになる。そこで、図24(a) に示すように、交流電圧信号φ1の奇数番目の半周期(正の電圧の区間)の振幅を大きく(ピーク電圧「Vp」の絶対値は大きくなる)、偶数番目の半周期(負の電圧の区間)の振幅を小さくする(ピーク電圧「−Vp」の絶対値は小さくなる)ような制御を行うのである。図24(a) において、破線で示す信号は制御前の信号(図22(a) と同じ信号)を示し、実線で示す信号は制御後の信号を示している。
このような制御後の交流電圧信号φ1を図17に示す角速度センサの駆動用圧電素子X12,X13に供給すると、振動子を上方向(Z軸正方向)に移動させる力はより大きくなり、振動子を下方向(Z軸負方向)に移動させる力はより小さくなるので、図24(b) に示すように、振動中心位置Lは本来の位置(座標系の原点Oの位置)へ復帰する。したがって、図18(b) に示すように、重力加速度αgが作用していない測定環境と同一の振動状態を維持することができ、正しい検出結果を得ることができる。
一方、図25は、図21に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサ(図17に示すセンサ)において、供給する交流電圧信号φ1の振幅制御方法と、そのときの重心Gの変位を示すグラフである。図21に示す重力加速度αgの影響を受けると、そのままでは、図23(b) に示すように、振動中心位置Lが上方にずれ、その結果として、前述したような振幅変動が生じることになる。そこで、図25(a) に示すように、交流電圧信号φ1の奇数番目の半周期(正の電圧の区間)の振幅を小さく(ピーク電圧「Vp」の絶対値は小さくなる)、偶数番目の半周期(負の電圧の区間)の振幅を大きくする(ピーク電圧「−Vp」の絶対値は大きくなる)ような制御を行うのである。図25(a) において、破線で示す信号は制御前の信号(図23(a) と同じ信号)を示し、実線で示す信号は制御後の信号を示している。
このような制御後の交流電圧信号φ1を図17に示す角速度センサの駆動用圧電素子X12,X13に供給すると、振動子を上方向(Z軸正方向)に移動させる力はより小さくなり、振動子を下方向(Z軸負方向)に移動させる力はより大きくなるので、図25(b) に示すように、振動中心位置Lは本来の位置(座標系の原点Oの位置)へ復帰する。したがって、図18(b) に示すように、重力加速度αgが作用していない測定環境と同一の振動状態を維持することができ、正しい検出結果を得ることができる。
以上、振動中心位置Lに関する制御を述べたが、同時に、振幅に関する制御を行うようにする。すなわち、図22(b) および図23(b) に示す振動子の全振幅値「A1+A2」が、所定の基準値(図18(b) に示す振動子の全振幅値2A)に一致するようなフィードバック制御を行うようにする。具体的には、振動子の全振幅値「A1+A2」が基準値より小さければ、交流電圧信号φ1の全振幅値をより大きくし、振動子の全振幅値「A1+A2」が基準値より大きければ、交流電圧信号φ1の全振幅値をより小さくする制御を行えばよい。
振動中心位置Lに関する制御と全振幅値に関する制御との関係をもう少し詳しく説明すれば、次のとおりである。すなわち、いずれの制御も、制御対象となる信号が、駆動用圧電素子に供給する交流電圧信号である点に相違はない。ただ、振動子の振動中心位置Lに関する制御は、奇数番目の半周期の振幅値(半振幅値)と偶数番目の半周期の振幅値(半振幅値)との大小関係のバランスを調整する制御(一方を大きくしたら、他方を小さくする制御)であるのに対して、振動子の全振幅値に関する制御は、交流電圧信号の全振幅値の大小を調整する制御になる。これは、ステレオオーディオシステムの音量調節において、左右のスピーカのバランス調整と主音量の調整との関係に似ている。
このように、振動子の駆動状態をモニタして、振動子の振動を安定させるフィードバック制御を行う点が、本発明の重要な特徴である。なお、図19に示す変形例のように、互いに逆位相となる交流電圧信号φ1,φ2を利用する場合も、上述の例と同様に、それぞれの信号について、半振幅値のバランス調整および全振幅値の大小調整を行えばよい。要するに本発明では、図18(b) に示すように、測定系に対して外乱として作用する力が何ら作用していない理想的な測定環境における振動子の運動を予め基準運動として設定しておき、実際の振動子の運動がこの基準運動に維持されるようなフィードバック制御を行うようにすればよい。
なお、振動子の振動中心位置Lを基準位置(座標系の原点Oの位置)に維持する制御を行うために、前述の例では、交流駆動信号の半周期ごとの振幅を増減する制御を行っているが、振動子の振動中心位置Lに対する制御方法は、このような半周期ごとの振幅を制御する方法に限定されるものではない。たとえば、振動中心位置Lが第1の方向にずれてしまった場合は、供給する交流電圧信号に正のオフセット電圧を加え、第2の方向にずれてしまった場合は、供給する交流電圧信号に負のオフセット電圧を加えるという制御方法を採ることも可能である。
図26は、重力加速度αgの影響を受けている角速度センサ(図17に示すセンサ)において、供給する交流電圧信号φ1にオフセット電圧を印加することにより、振動子の運動が所定の基準振動に維持されるような制御を行う例を示すグラフである。図20に示す重力加速度αgの影響を受けると、そのままでは、図22(b) に示すように、振動中心位置Lが下方にずれることになる。そこで、図26(a) に示すように、交流電圧信号φ1に正のオフセット電圧+ΔVを加えるようにし、交流信号に正の直流バイアス成分が重畳されるようにする(正のピーク電圧「Vp」の絶対値は大きく、負のピーク電圧「−Vp」の絶対値は小さくなる)。図26(a) において、破線で示す信号は制御前の信号(図18(a) と同じ信号)を示し、実線で示す信号は制御後の信号を示している。
このような制御後の交流電圧信号φ1を図17に示す角速度センサの駆動用圧電素子X12,X13に供給すると、振動子を上方向(Z軸正方向)に移動させる力はより大きくなり、振動子を下方向(Z軸負方向)に移動させる力はより小さくなるので、振動中心位置Lは本来の位置(座標系の原点Oの位置)へ復帰する。したがって、図18(b) に示すように、重力加速度αgが作用していない測定環境と同一の振動状態を維持することができ、正しい検出結果を得ることができる。
これに対して、図21に示す重力加速度αgの影響を受けると、そのままでは、図23(b) に示すように、振動中心位置Lが上方にずれることになる。そこで、図26(b) に示すように、交流電圧信号φ1に負のオフセット電圧−ΔVを加えるようにし、交流信号に負の直流バイアス成分が重畳されるようにする(正のピーク電圧「Vp」の絶対値は小さく、負のピーク電圧「−Vp」の絶対値は大きくなる)。図26(b) において、破線で示す信号は制御前の信号(図18(a) と同じ信号)を示し、実線で示す信号は制御後の信号を示している。
このような制御後の交流電圧信号φ1を図17に示す角速度センサの駆動用圧電素子X12,X13に供給すると、振動子を上方向(Z軸正方向)に移動させる力はより小さくなり、振動子を下方向(Z軸負方向)に移動させる力はより大きくなるので、振動中心位置Lは本来の位置(座標系の原点Oの位置)へ復帰する。したがって、図18(b) に示すように、重力加速度αgが作用していない測定環境と同一の振動状態を維持することができ、正しい検出結果を得ることができる。
なお、これまでの説明では、振動子を駆動させるための交流駆動信号として、正弦波形をとる交流電圧信号φ1を用いた例を述べたが、交流電圧信号φ1は必ずしも正弦波信号である必要はなく、矩形波や三角波など任意の波形をもった交流信号でかまわない。矩形波や三角波などを交流駆動信号として用いた場合でも、振動子はほぼ単振動に近い運動を行うことになり、実用上、何ら支障は生じない。
図27は、図17に示す角速度センサに対して供給する矩形波状の交流電圧信号φ1と、その電圧制御方法を示すグラフである。図27(a) は、角速度センサに対して何ら外力が作用していない場合に供給すべき矩形波の交流電圧信号φ1である。接地電圧0を基準として、正のピーク電圧「Vp」と負のピーク電圧「−Vp」とが半周期ごとに交互に現れる信号になっており、このような信号を図17に示す角速度センサの駆動用圧電素子X12,X13に供給すると、振動子をZ軸方向に振動させることができる。
これに対して、図27(b) に示す交流電圧信号φ1は、図20に示す重力加速度αgの影響を排除する場合に供給する信号であり、奇数番目の半周期(正の電圧の区間)の振幅を大きく(ピーク電圧「Vp」の絶対値は大きくなる)、偶数番目の半周期(負の電圧の区間)の振幅を小さくする(ピーク電圧「−Vp」の絶対値は小さくなる)ような制御が行われている(矩形波信号であるため、正のオフセット電圧+ΔVを加えることにより、正の直流バイアス成分を重畳する制御が行われていると見ることもできる)。図27(b) において、破線で示す信号は制御前の信号(図27(a) と同じ信号)を示し、実線で示す信号は制御後の信号を示している。
一方、図27(c) に示す交流電圧信号φ1は、図21に示す重力加速度αgの影響を排除する場合に供給する信号であり、奇数番目の半周期(正の電圧の区間)の振幅を小さく(ピーク電圧「Vp」の絶対値は小さくなる)、偶数番目の半周期(負の電圧の区間)の振幅を大きくする(ピーク電圧「−Vp」の絶対値は大きくなる)ような制御が行われている(矩形波信号であるため、負のオフセット電圧−ΔVを加えることにより、負の直流バイアス成分を重畳する制御が行われていると見ることもできる)。図27(c) において、破線で示す信号は制御前の信号(図27(a) と同じ信号)を示し、実線で示す信号は制御後の信号を示している。
以上、本発明の基本原理を説明したが、続いて、本発明に係る角速度センサをいくつかの具体的な実施形態に基づいて説明する。
<<< §4.第1の実施形態に係る角速度センサ >>>
図28は、本発明の第1の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である。この角速度センサにおける基本構造体100は、既に§1で述べた構造体(図1の平面図および図2の側断面図参照)と全く同じものである。すなわち、振動子110と、固定部材130と、振動子110を固定部材130に対して接続する可撓性部材(4本の架橋部121〜124)とを備えており、固定部材130は、装置筐体に固定される。そして、可撓性部材の表面の所定箇所には、当該所定箇所の撓みに応じて機械的変形を生じるように配置された複数の圧電素子が固定されている。
この第1の実施形態の場合、全部で8組の圧電素子X11,X12,X13,X14,X12U,X13U,Y11,Y14が設けられている(いずれも図13に示す特性をもった圧電素子50)。ここで、圧電素子X11,X12,X13,X14,Y11,Y14は、図17に示す角速度センサに用いられていたものと全く同じものである。したがって、図28に示す角速度センサの圧電素子配置は、図17に示す角速度センサに用いられていた6組の圧電素子に、更に、X12U,X13Uを追加したものということができる。
図28では、一部の圧電素子にハッチングを施して示してあるが、これは各圧電素子の用途を示すための便宜であって、断面を示すものではない(後述する図33,図34,図36の平面図も同様)。すなわち、内部を黒く塗りつぶした圧電素子X12,X13は、駆動用圧電素子であり、内部に斜線ハッチングを施した圧電素子X12U,X13Uは、モニタ用圧電素子であり、内部にハッチングが施されていない圧電素子X11,X14,Y11,Y14は、コリオリ力検出用圧電素子である。なお、これらのハッチングの意味は、図28,図33,図34,図36に示す平面図における意味であり、その他の図におけるハッチングは、単に断面を示すだけのものである。
結局、この実施形態には、振動子を駆動させるための駆動用圧電素子と、振動子の駆動状態をモニタするためのモニタ用圧電素子と、振動子に作用するコリオリ力を検出するためのコリオリ力検出用圧電素子と、が含まれていることになる。この実施形態においても、各圧電素子の下方電極は、図15に示すような単一の導電層63によって構成されており、接地電位に固定されている。
このように、各圧電素子の一方の面を接地電位に接続しておくと、駆動用圧電素子の他方の面に交流駆動信号(接地電位を基準として、正および負の電圧を交互にとる交流駆動信号)を供給して振動子を駆動させ、モニタ用圧電素子の他方の面の電位をモニタ電圧として測定し、このモニタ電圧に基づくフィードバック制御を行い、コリオリ力検出用圧電素子の他方の面の所定タイミングにおける電位に基づいて、角速度の検出値を出力することができる。
ここで、駆動用圧電素子X12,X13による振動子の駆動動作は、§2で述べた図17に示す角速度センサの駆動動作と全く同様である。すなわち、駆動用圧電素子X12,X13の上方電極に対して交流電圧信号を供給することにより、振動子をZ軸方向に振動させることができる。また、コリオリ力検出用圧電素子X11,X14,Y11,Y14によるコリオリ力の検出動作も、§2で述べた図17に示す角速度センサの検出動作と全く同様である。すなわち、振動子をZ軸方向に振動させた状態において、圧電素子X11,X14の上方電極に生じる電圧に基づいて、X軸方向に作用したコリオリ力Fxを測定し、Y軸まわりの角速度ωyを検出し、圧電素子Y11,Y14の上方電極に生じる電圧に基づいて、Y軸方向に作用したコリオリ力Fyを測定し、X軸まわりの角速度ωxを検出する。
§2で述べた図17に示す角速度センサとの相違は、更に、振動子の駆動状態をモニタするためのモニタ用圧電素子X12U,X13Uが付加されており、このモニタ用圧電素子X12U,X13Uの発生電荷をフィードバック量として、振動子の周期的運動(Z軸方向の振動)が、予め設定された基準運動(座標系の原点Oを振動中心位置として、所定の振幅をもった振動)に維持されるようにフィードバック制御を行う点にある。
この実施形態の場合、モニタ用圧電素子X12Uは駆動用圧電素子X12に供給する交流電圧信号をフィードバック制御するために利用され、モニタ用圧電素子X13Uは駆動用圧電素子X13に供給する交流電圧信号をフィードバック制御するために利用される。そのため、モニタ用圧電素子X12Uは駆動用圧電素子X12の近傍に配置され、モニタ用圧電素子X13Uは駆動用圧電素子X13の近傍に配置されている。図28の平面図に示されているように、駆動用圧電素子X12,X13が、X′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状の圧電素子であるのに対して、モニタ用圧電素子X12U,X13Uは、これらI字状圧電素子のそれぞれ近傍に配置されたU字状圧電素子となっている。モニタ用圧電素子X12U,X13Uの符号末尾の「U」は、形状がU字状であることを示している。
図29は、図28に示す角速度センサの一部分(圧電素子X12,X12Uの部分)を拡大して示す拡大平面図である。圧電素子X12,X12Uは、いずれもX′軸に関して軸対称となっている。図に破線で示すエッジ部Eは、可撓性部材(架橋部121)と振動子110との接続位置を示している。図2の側断面図に示されているとおり、振動子110は、かなりの厚みをもった重錘体であるのに対して、架橋部121は厚みが薄い可撓性部材である。このため、架橋部121の振動子110に対する接続位置近傍(図29におけるエッジ部Eの右側部分)は、架橋部121が撓みを生じたときに応力が集中する領域になる。圧電素子X12をこの領域に配置することにより、振動子110を効率的に駆動することが可能になる。
U字状の圧電素子X12Uは、図29に示されているとおり、I字状圧電素子X12の両脇位置において長手方向軸(X′軸)に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部X12Uaおよび第2の並伸部X12Ubと、この一対の並伸部X12Ua,X12Ubの両端を接続する接続部X12Ucと、を有している。しかも、一対の並伸部X12Ua,X12Ubは可撓性部材(架橋部121)上に配置され、接続部X12Ucは振動子110上に配置されている。上述したとおり、架橋部121の振動子110に対する接続位置近傍(図29におけるエッジ部Eの右側部分)は、架橋部121が撓みを生じたときに応力が集中する領域になるので、一対の並伸部X12Ua,X12Ubをこの領域に配置することにより、振動子110の駆動状態を効率的にモニタすることが可能になる。
図30は、図28に示す角速度センサに用いる信号処理回路の一例を示す回路図である。図の右上に示された2組の圧電素子X12,X13は、図28に示す駆動用圧電素子であり、その下方電極は接地されている。駆動制御回路30は、交流信号源31から与えられる交流信号を調整して、駆動用圧電素子X12,X13に交流駆動信号を供給する機能を果たす。具体的には、たとえば、図18(a) に示すような交流電圧信号φ1を発生させて、駆動用圧電素子X12,X13の上方電極に印加する。これにより、駆動用圧電素子X12,X13が周期的に変形し、可撓性部材に周期的な撓みが生じ、振動子110が周期的運動(Z軸方向の振動)を生じることは、既に述べたとおりである。
一方、図の左上に示された2組の圧電素子X12U,X13Uは、図28に示すモニタ用圧電素子であり、やはりその下方電極は接地されているが、その上方電極の電圧信号は、モニタ電圧値V(X12),V(X13)として駆動制御回路30に与えられている。駆動制御回路30は、モニタ用圧電素子X12U,X13Uの発生電荷、すなわち、各上方電極に生じるモニタ電圧値V(X12),V(X13)をフィードバック量として、振動子110の周期的運動が、予め設定された基準運動(座標系の原点Oを振動中心位置として、所定の振幅をもったZ軸方向の振動)に維持されるようにフィードバック制御を行う。
また、図の左下に示された4組の圧電素子X11,X14,Y11,Y14は、図28に示すコリオリ力検出用圧電素子であり、その下方電極は接地されている。圧電素子X11,X14の上方電極の電圧値V(X11),V(X14)は、差分回路21によってその差が電圧値Vxとして求められる。同様に、圧電素子Y11,Y14の上方電極の電圧値V(Y11),V(Y14)は、差分回路22によってその差が電圧値Vyとして求められる。
角速度検出回路40は、振動子110が周期的運動(Z軸方向の振動)を行っている状態において、この周期的運動に同期した所定タイミングで、コリオリ力検出用圧電素子X11,X14,Y11,Y14の発生電荷を測定し、これを所定軸まわりの角速度の検出値として出力する処理を行う。図28に示す角速度センサの場合、差分回路21によって求められた電圧値VxがX軸方向に作用したコリオリ力Fxの検出値になるため、Y軸まわりの角速度ωyを示す検出値として出力され、差分回路22によって求められた電圧値VyがY軸方向に作用したコリオリ力Fyの検出値になるため、X軸まわりの角速度ωxを示す検出値として出力されることになる。
なお、角速度検出回路40が、電圧値Vx,Vyを角速度ωy,ωxの検出値として出力するタイミングは、振動子110の重心Gが原点O(すなわち、振動中心)を通過する瞬間に設定するのが好ましい。振動子110の運動が予め設定された基準振動に維持されていれば、重心Gが原点Oを通過する瞬間に、振動子の速度は最大値に達するので、作用するコリオリ力も最大値に達することになる。したがって、このタイミングで取り込んだ電圧Vx,Vyを、そのまま角速度ωy,ωxを示す検出値として出力するようにすれば、最も効率が良い検出が可能になる。
角速度検出回路40に、振動子の重心Gが原点Oを通過する測定タイミングを認識させる1つの方法は、交流信号源31からの交流信号と遅延時間に相当する位相差dを角速度検出回路40に与える方法である。図30の回路図において、角速度検出回路40に入力されている交流信号源31からの交流信号と位相差dは、このタイミング認識に利用するための情報である。図18(b) に示すように、振動子の振動変位を示す波形は、交流電圧信号φ1に対して所定の位相差dをもっている。この位相差dは、センサを構成する構造体に固有の機械的特性と振動周波数に応じて定まる。したがって、交流信号源31からの交流信号と位相差dとを角速度検出回路40に与えておけば、振動子の重心Gが原点Oを通過するタイミング(図18(b) において、変位0を示す水平線を横切るタイミング)を把握することができる。
角速度検出回路40に、振動子の重心Gが原点Oを通過する測定タイミングを認識させる別な方法は、モニタ用圧電素子X12U,X13Uの発生電荷を示すモニタ電圧V(X12),V(X13)を利用する方法である。図30の回路図において、角速度検出回路40にモニタ電圧V(X12),V(X13)が入力されているのは、この方法によるタイミング認識を行う例を示すためのものである。モニタ電圧V(X12),V(X13)は、後述するように、振動子の周期的な運動位置を示す情報になるので、このモニタ電圧V(X12),V(X13)をモニタすることにより、振動子の重心Gが原点Oを通過する測定タイミングを認識することが可能になる。
図31および図32は、図30に示す回路におけるモニタ電圧V(X12)の変動の一例を示すグラフである。駆動制御回路30は、各モニタ用圧電素子について、それぞれ対応する駆動用圧電素子を定め、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の全振幅値および平均電圧値(時間的な平均値)が所定の基準に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行う。ここに示す例では、前述したとおり、モニタ用圧電素子X12Uと駆動用圧電素子X12とを対応させ、モニタ用圧電素子X13Uと駆動用圧電素子X13とを対応させているため、駆動制御回路30は、モニタ電圧V(X12)に基づいて、駆動用圧電素子X12に供給する交流電圧信号をフィードバック制御し、モニタ電圧V(X13)に基づいて、駆動用圧電素子X13に供給する交流電圧信号をフィードバック制御することになる。
ここで行うフィードバック制御の目的は、§3で述べたとおり、振動子110の全振幅を一定にすることと、振動子110の振動中心位置を一定にすることである。そして、モニタ用圧電素子X12Uの発生電荷を示すモニタ電圧V(X12)は、このような制御を行うために必要な情報を含んでいる。
ここで、振動子110の全振幅が、モニタ電圧V(X12)の全振幅値としてモニタされることは容易に理解できよう。振動子110が上下(Z軸方向)に振動すれば、モニタ用圧電素子X12Uは、伸びたり縮んだりを繰り返すことになり、正の電荷と負の電荷とが交互に発生する(図11および図12参照)。したがって、モニタ電圧V(X12)は、正および負の値を繰り返す波形となり、モニタ電圧V(X12)の全振幅値は、振動子110の全振幅に対応したものになる。
続いて、モニタ電圧V(X12)に、振動子110の振動中心位置の情報が含まれることを説明する。そのためには、圧電素子では、振動子の静的位置の検出を行うことができない点を理解しておく必要がある。§1で述べたとおり、圧電素子には、機械的変形を加えると電荷が生じる性質がある。しかしながら、電荷の生成は過渡的な現象であるから、図20に示すように、重力加速度αgによって振動子110がZ軸負方向に変位した状態で静止していた場合、モニタ電圧V(X12)は0(接地電位)を維持する。図21に示すように、振動子110がZ軸正方向に変位した状態で静止していた場合も、同様に、モニタ電圧V(X12)は0(接地電位)を維持する。
結局、振動子110が静止している限り、図2の状態(振動子が原点Oに位置する状態)、図20の状態(振動子がZ軸負方向に変位している状態)、図21の状態(振動子がZ軸正方向に変位している状態)のいずれの場合も、モニタ電圧V(X12)=0となるので、振動子110の静的な位置情報をモニタ電圧V(X12)から得ることはできない。それにもかかわらず、モニタ電圧V(X12)から、振動子110の振動中心位置を把握することができる理由は、振動中心位置のずれを、半振幅値のバランス変化として検出できるためである。
図22および図23に示すとおり、奇数番目の半周期の振幅と偶数番目の半周期の振幅とが等しい交流電圧信号φ1を供給したとしても、振動子110の振動中心位置Lが変化すると、振動子の奇数番目の半周期の振幅A1と偶数番目の半周期の振幅A2との大小関係に変化が生じる。したがって、振動子110の振動中心位置Lが変化すると、図31,図32に示すようにモニタ電圧V(X12)の奇数番目の半周期の振幅Am1と偶数番目の半周期の振幅Am2との大小関係に変化が生じることになり、モニタ電圧V(X12)の時間的な平均値に変化が生じることになる。
ここでは、仮に、この角速度センサを重力が作用しない宇宙空間に設置し、図18(a) に示すような交流電圧信号φ1を供給して振動子をZ軸方向に振動させた場合に、図31の実線で示すようなモニタ電圧V(X12)が得られるものとしよう。図31に実線で示すグラフは、縦軸の電圧値0を中心として、上下に同じ半振幅をもった正弦波となっている。上述したとおり、モニタ用圧電素子X12Uは、振動子110の静的な位置検出を行うことができないので、図31に示すモニタ電圧V(X12)は、振動子110の絶対的な位置(重心GのZ座標値)を直接的に示すものではない。しかしながら、振動子の振動中心位置の変化は、モニタ電圧V(X12)の平均電圧値(時間的な平均値)に影響を及ぼすことになる。
本願発明者が行った実験によると、図20に示すように、重力加速度αgの影響により振動子110の静止状態の位置がZ軸負方向にずれた測定環境下において、図18(a) に示すような交流電圧信号φ1を供給して振動子をZ軸方向に振動させると、モニタ電圧V(X12)として、図31の破線に示すような波形の電圧値が得られた。電圧値0を基準として、奇数番目の半周期の振幅Am1と偶数番目の半周期の振幅Am2とを比較すると、Am1>Am2となっており、その結果、平均電圧値は一点鎖線で示すように正の電圧値V(+)となる。ここで、図31の実線の波形は、重力加速度αgの影響を受けない測定環境下で得られるであろうと推定される波形(地球上における通常の測定環境では実測することができない波形)ということになる。
一方、図21に示すように、重力加速度αgの影響により振動子110の静止状態の位置がZ軸正方向にずれた測定環境下において、図18(a) に示すような交流電圧信号φ1を供給して振動子をZ軸方向に振動させると、モニタ電圧V(X12)として、図32の破線に示すような波形の電圧値が得られた。電圧値0を基準として、奇数番目の半周期の振幅Am1と偶数番目の半周期の振幅Am2とを比較すると、Am2>Am1となっており、その結果、平均電圧値は一点鎖線で示すように負の電圧値V(−)となる。なお、図32の実線の波形は、図31の実線の波形と同様に、重力加速度αgの影響を受けない測定環境下で得られるであろうと推定される波形である。
図20に示すような方向に重力加速度αgが作用する測定環境下において、図31の破線で示すように、Am1>Am2となるモニタ電圧波形が得られた理由は、図22(b) に示すように、振動子110の振動中心位置LがZ軸負方向に移動し、この振動中心位置Lを基準とした上方向の振幅A1が下方向の振幅A2よりも大きくなったためと考えられる。同様に、図21に示すような方向に重力加速度αgが作用する測定環境下において、図32の破線で示すように、Am2>Am1となるモニタ電圧波形が得られた理由は、図23(b) に示すように、振動子110の振動中心位置LがZ軸正方向に移動し、この振動中心位置Lを基準とした下方向の振幅A2が上方向の振幅A1よりも大きくなったためと考えられる。
このように、モニタ用圧電素子X12Uの発生電荷を示すモニタ電圧V(X12)には、駆動用圧電素子X12に供給する交流電圧信号φ1に対するフィードバック制御を行うために必要な情報がすべて含まれていることになり、振動子110について、1周期の振幅(全振幅)を一定にする制御と、振動子110の振動中心位置を一定にする制御との双方を行うことが可能になる。
具体的には、振動子110の全振幅を一定にする制御を行うには、モニタ電圧V(X12)の全振幅(最大電圧値と最小電圧値との間の幅)を所定の基準振幅値と比較し、基準振幅値よりも大きい場合には、交流電圧信号φ1の全振幅を小さくし、基準振幅値よりも小さい場合には、交流電圧信号φ1の全振幅を大きくする制御を行えばよい。この振幅制御は、いわばステレオオーディオシステムの音量調節における主音量の調整に比喩することができる。
要するに、振動子110の全振幅を一定にする制御を行うには、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の全振幅を所定の基準振幅値と比較し、基準振幅値よりも大きい場合には、対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号の全振幅を小さくし、基準振幅値よりも小さい場合には、対応する駆動用圧電素子に供給する交流電圧信号の全振幅を大きくする制御を行えばよい。
一方、振動子110の振動中心位置を一定にする制御を行うには、交流電圧信号φ1の奇数番目の半周期の振幅と偶数番目の半周期の振幅との大小関係のバランスを調整すればよい。これは、いわばステレオオーディオシステムの音量調節における左右のスピーカのバランス調整に比喩することができる。
具体的には、図31に一点鎖線で示すように、モニタ電圧V(X12)の平均電圧値(時間的な平均値)が正の値V(+)になった場合には、駆動用圧電素子X12に供給する交流電圧信号を図24(a) に示すように修正する制御を行い、図32に一点鎖線で示すように、モニタ電圧V(X12)の平均電圧値が負の値V(−)になった場合には、駆動用圧電素子X12に供給する交流電圧信号を図25(a) に示すように修正する制御を行えばよい。同様に、駆動用圧電素子X13に供給する交流電圧信号は、モニタ電圧V(X13)に基づいて同様の制御を行えばよい。
以上、図28に示す具体的な実施例についての具体的な制御方法を説明したが、モニタ電圧の極性は、用いるモニタ用圧電素子の特性(施した分極処理によって定まる固有の特性)に応じて正/負の関係が逆転するものであり、また、モニタ用圧電素子の伸縮特性は、その配置に依存して決まるものである。
したがって、一般論として述べれば、振動子の振動中心位置を一定にする制御を行うには、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の平均電圧値が、所定の基準値に対して第1の方向に変動したときには(ここに示す実施例の場合には、モニタ電圧の平均電圧値が正の極性を示している場合には)、対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて大きくするような制御を行い、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の平均電圧値が、所定の基準値に対して第1の方向とは逆の第2の方向に変動したときには(ここに示す実施例の場合には、モニタ電圧の平均電圧値が負の極性を示している場合には)、対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて小さくするような制御を行うようにすればよい。
もちろん、振動子の振動中心位置を一定にする制御は、図26(a) ,(b) に示すように、駆動用圧電素子に供給する交流電圧信号にオフセット電圧ΔVを増減する方法で行うこともできる。この場合は、特定のモニタ用圧電素子の平均電圧値が、所定の基準値に対して第1の方向に変動したときには(ここに示す実施例の場合には、モニタ電圧の平均電圧値が正の極性を示している場合には)、供給する交流駆動信号に正のオフセット電圧を加える制御を行い、特定のモニタ用圧電素子の平均電圧値が、所定の基準値に対して第2の方向に変動したときには(ここに示す実施例の場合には、モニタ電圧の平均電圧値が負の極性を示している場合には)、供給する交流駆動信号に負のオフセット電圧を加える制御を行うことになる。
駆動制御回路30によって、このような制御を行えば、図20もしくは図21に示すような重力加速度αgが作用していたとしても、振動子は、予め設定された基準振幅をもち、本来の振動中心位置(座標系の原点Oの位置)を中心とした基準振動を行うことになり、正しい検出結果を得ることができる。
<<< §5.U字状圧電素子の特徴 >>>
さて、§4で述べた第1の実施形態に係る角速度センサは、図28に示すように、振動子110の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材(架橋部121〜124)を有しており、振動子110を取り囲む位置に固定部材130が配置されており、可撓性部材121〜124が振動子110をその周囲から支持する構造をもつ基本構造体100に8組の圧電素子を付加することにより構成されている。
各圧電素子の具体的な構成は、可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義すれば、X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子X12、X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子X13、X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子X12U、X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子X13U、X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子X11、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子Y11、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子X14、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子Y14ということになる。
そして、図30に示す駆動制御回路30は、第1および第2の駆動用圧電素子X12,X13に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子110をZ軸方向に振動させ、第1のモニタ用圧電素子X12Uの発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子X12に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子X13Uの発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子X13に供給する交流駆動信号に対する制御を行う。また、角速度検出回路40は、X′軸上に配置された第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子X11,X14によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力FxをY軸まわりの角速度ωyとして検出し、Y′軸上に配置された第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y11,Y14によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力FyをX軸まわりの角速度ωxとして検出する。
この第1の実施形態および後述する第2〜第5の実施形態の特徴は、各圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称(X′軸に関して対称)、かつ、YZ平面にも対称(Y′軸に関して対称)となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材(架橋部121〜124)の振動子110に対する接続位置近傍もしくは固定部材130に対する接続位置近傍に配置されている点にある。
§1で述べたとおり、各圧電素子の配置パターンを、座標軸に関して幾何学的な対称性を維持するようにする第1のメリットは、駆動や検出に関与しない軸方向の機械的変形に対して、1つの圧電素子全体としてみれば、伸縮状態が相互にキャンセルされるようになることであり、第2のメリットは、一対の圧電素子を協働させて、駆動や検出の動作を行う際に、信号処理が容易になることである。また、各圧電素子を、可撓性部材(架橋部121〜124)の振動子110に対する接続位置近傍もしくは固定部材130に対する接続位置近傍に配置するメリットは、この領域には可撓性部材に加わる応力が集中するため、極めて効率的な動作(圧電素子に電気信号を供給して機械的な撓みを生じさせる動作と、圧電素子に生じる電気信号に基づいて機械的な撓みを検出する動作)が可能になることである。
図28に示すように、第1の実施形態に係る角速度センサでは、モニタ用圧電素子X12U,X13Uとして、U字状圧電素子が用いられている。また、後述する第2、第4、第5の実施形態においても、U字状圧電素子が用いられている。本発明を実施する上で、このようなU字状圧電素子の採用は、極めて重要な意味をもつ。以下、その理由を説明しよう。
既に述べたとおり、本発明では、モニタ用圧電素子の発生電荷を示す信号をフィードバック信号として、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御する。このようなフィードバック制御を良好に行うためには、制御対象となる駆動用圧電素子と、フィードバック信号を得るためのモニタ用圧電素子とは、できるだけ近くに配置するのが好ましい。理論的には、両者を完全に同一位置に配置するのが理想的であるが、一方の圧電素子には駆動用の交流信号を供給し、他方の圧電素子からは発生電荷を示す電圧信号をとり出す必要があるため、両者は物理的に独立した圧電素子である必要があり、次善の策として、両者をできるだけ近傍に配置するという方法を採らざるを得ない。
その一方で、上述したように、各圧電素子は、座標軸に関して幾何学的な対称性を維持するような配置パターンにするのが好ましく、しかも可撓性部材(架橋部121〜124)の表面における応力集中領域、すなわち、振動子110に対する接続位置近傍もしくは固定部材130に対する接続位置近傍に配置するのが好ましい。U字状圧電素子の採用は、このような要望を満足させるために最適である。
図29の拡大平面図には、X′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子X12と、このI字状圧電素子X12の近傍に配置されたU字状圧電素子X12Uが示されている。ここで、U字状圧電素子X12Uは、I字状圧電素子X12の両脇位置においてX′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部X12Uaおよび第2の並伸部X12Ubと、この一対の並伸部の両端を接続する接続部X12Ucを有しており、I字状圧電素子X12,並伸部X12Ua,並伸部X12Ubは、いずれも架橋部121の表面における振動子110に対する接続位置近傍に配置されている。
このようなI字状圧電素子X12とU字状圧電素子X12Uとの組み合わせは、上述の要望を満足させるために最適である。すなわち、両者の一方を駆動用圧電素子とし、他方をその制御に利用するモニタ用圧電素子とすれば、両者を極めて近傍に配置することができる。しかも、両者はいずれも座標軸に関して幾何学的な対称性を維持する配置にすることができ、また応力が集中する接続位置近傍に配置することができる。実際、図28の平面図を参照すれば、このような理想的な配置が実現されていることが理解できよう。
図29の拡大平面図において、第1の並伸部X12Ua、第2の並伸部X12Ub、I字状圧電素子X12は、いずれもX′軸を長手方向軸として、架橋部121上の応力が集中する領域に隣接配置された圧電素子を構成しており、架橋部121の撓みに対して、ほぼ同一の挙動をとる。このため、I字状圧電素子X12を駆動用圧電素子として用い、その制御のために、U字状圧電素子X12Uをモニタ用圧電素子として用いると(あるいは、その逆でもよい)、極めて安定した効率的なフィードバック制御が可能になる。しかも、接続部X12Ucは、架橋部121上ではなく、振動子110上に形成されているため、架橋部121に撓みが生じても、不動の状態を維持するため、外部に対する配線を行うために利用するのに適している。もちろん、接続部X12Ucは、下部に圧電素子のない単なる配線層によって構成してもかまわない。
このように、U字状圧電素子をI字状圧電素子と組み合わせて利用すると、両者を、座標軸に関して幾何学的な対称性を維持したまま、応力が集中する領域に、互いに極めて近傍にくるように配置することができ、しかも接続部を撓みの生じない領域(振動子110上もしくは固定部材130上)に形成することが可能になる。
このようなU字状圧電素子は、後述する第2、第4、第5の実施形態においても利用されている。そのメリットを十分に享受するには、要するに、X′軸もしくはY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子と、このI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子と、によって圧電素子対を構成し、U字状圧電素子を、I字状圧電素子の両脇位置において上記長手方向軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、によって構成し、この圧電素子対を構成する一方の圧電素子をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子を駆動用圧電素子として用い、モニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うようにすればよい。特に、U字状圧電素子の第1の並伸部および第2の並伸部が可撓性部材上に配置され、接続部が振動子上もしくは固定部材上に配置されるようにするのが好ましい。
<<< §6.第2の実施形態に係る角速度センサ >>>
図33は、本発明の第2の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である。この角速度センサにおける基本構造体100は、既に§1で述べた構造体(図1の平面図および図2の側断面図参照)と全く同じものである。すなわち、この角速度センサは、振動子110の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材(架橋部121〜124)を有しており、振動子110を取り囲む位置に固定部材130が配置されており、可撓性部材121〜124が振動子110をその周囲から支持する構造をもつ基本構造体100に12組の圧電素子(いずれも図13に示す特性をもった圧電素子50)を付加することにより構成されている。
この図33においても、各圧電素子の用途がハッチングの相違によって示されている。すなわち、内部を黒く塗りつぶした圧電素子は駆動用圧電素子であり、内部に斜線ハッチングを施した圧電素子はモニタ用圧電素子であり、内部にハッチングが施されていない圧電素子は、コリオリ力検出用圧電素子である。また、この実施形態においても、各圧電素子の下方電極は、図15に示すような単一の導電層63によって構成されており、接地電位に固定されている。
各圧電素子の具体的な構成は、可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義すれば、次のとおりである。
まず、駆動用圧電素子としては、X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子X11、Y′軸の正の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子Y11、X′軸の負の領域上に配置された第3の駆動用圧電素子X14、Y′軸の負の領域上に配置された第4の駆動用圧電素子Y14が設けられている。これら4組の圧電素子に、たとえば、図18(a) に示すような交流駆動信号を供給することにより、振動子110をZ軸方向に振動させることができる。4組の駆動用圧電素子を用いているため、前述の第1の実施形態に係る角速度センサに比べて、振動子110の駆動をより安定させることが可能になる。
一方、モニタ用圧電素子としては、X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子X11Uと、Y′軸の正の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子Y11U、X′軸の負の領域上に配置された第3のモニタ用圧電素子X14U、Y′軸の負の領域上に配置された第4のモニタ用圧電素子Y14Uが設けられている。駆動制御回路30は、上述したように、第1〜第4の駆動用圧電素子X11,Y11,X14,Y14に対してそれぞれ所定の交流駆動信号を供給することにより、振動子をZ軸方向に振動させるが、このとき、第1のモニタ用圧電素子X11Uの発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子X11に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子Y11Uの発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子Y11に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第3のモニタ用圧電素子X14Uの発生電荷をフィードバック量として第3の駆動用圧電素子X14に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第4のモニタ用圧電素子Y14Uの発生電荷をフィードバック量として第4の駆動用圧電素子Y14に供給する交流駆動信号に対する制御を行う。
具体的には、既に述べたとおり、各モニタ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持され、かつ、各モニタ電圧の平均電圧値が0に維持されるように、各交流電圧信号に対する制御を行えばよい。正しいフィードバック制御が行われれば、振動子110は、所定の基準位置(座標系の原点Oの位置)を振動中心として、所定の基準振幅をもってZ軸方向に振動することになる。
また、コリオリ力検出用圧電素子としては、X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子X12、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子X13、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13が設けられている。角速度検出回路40が、第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子X12,X13によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力FxをY軸まわりの角速度ωyとして検出し、第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y12,Y13によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力FyをX軸まわりの角速度ωxとして検出する点は、第1の実施形態に係る角速度センサと全く同様である。
この第2の実施形態に係る角速度センサの場合も、図33に示すとおり、圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されている。また、このような配置を実現するために、X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方(この例の場合は駆動用圧電素子)はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子X11,X14からなり、他方(この例の場合はモニタ用圧電素子)はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子X11U,X14Uからなり、Y′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方(この例の場合は駆動用圧電素子)はY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子Y11,Y14からなり、他方(この例の場合はモニタ用圧電素子)はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子Y11U,Y14Uからなる。
<<< §7.第3の実施形態に係る角速度センサ >>>
図34は、本発明の第3の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である。この角速度センサにおける基本構造体100も、既に§1で述べた構造体(図1の平面図および図2の側断面図参照)と全く同じものである。この角速度センサは、この基本構造体100に8組の圧電素子(いずれも図13に示す特性をもった圧電素子50)を付加することにより構成されている。
この図34においても、各圧電素子の用途がハッチングの相違によって示されている。すなわち、内部を黒く塗りつぶした圧電素子は駆動用圧電素子であり、内部に斜線ハッチングを施した圧電素子はモニタ用圧電素子であり、内部にハッチングが施されていない圧電素子は、コリオリ力検出用圧電素子である。また、この実施形態においても、各圧電素子の下方電極は、図15に示すような単一の導電層63によって構成されており、接地電位に固定されている。
各圧電素子の具体的な構成は、可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義すれば、次のとおりである。すなわち、X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子X12、X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子X13、X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子X11、X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子X14、Y′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子Y11および第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12、Y′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子Y13および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y14である。
この第3の実施形態に係る角速度センサでは、振動子110をX軸方向に振動させる方法が採られる。そのために、駆動制御回路30は、第1および第2の駆動用圧電素子X12,X13に対して逆位相の交流駆動信号を供給する。そうすると、圧電素子X12,X13の伸縮の状態は逆になるので、図7および図8に示されている関係から、振動子110はX軸方向に振動することになる。なお、圧電素子X12,X13として、分極特性が互いに逆のものを用いれば、両者に同位相の交流駆動信号を供給することにより、振動子110をX軸方向に振動させることができる。
このとき、駆動制御回路30は、第1のモニタ用圧電素子X11の発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子X12に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子X14の発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子X13に供給する交流駆動信号に対する制御を行う。具体的には、既に述べたとおり、各モニタ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持され、かつ、各モニタ電圧の平均電圧値が0に維持されるように、各交流電圧信号に対する制御を行えばよい。正しいフィードバック制御が行われれば、振動子110は、所定の基準位置(座標系の原点Oの位置)を振動中心として、所定の基準振幅をもってX軸方向に振動することになる。
一方、角速度検出回路40は、第1のコリオリ力検出用圧電素子Y11および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y14によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力FzをY軸まわりの角速度ωxとして検出する。具体的には、圧電素子Y11から得られる電圧と圧電素子Y14から得られる電圧との和を、Z軸方向に作用するコリオリ力Fzの測定値として利用することができる(図11,図12に示す関係参照)。
また、角速度検出回路40は、第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12および第3のコリオリ力検出用圧電素子Y13によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力FyをZ軸まわりの角速度ωzとして検出する。具体的には、圧電素子Y12から得られる電圧と圧電素子Y13から得られる電圧との差を、Y軸方向に作用するコリオリ力Fyの測定値として利用することができる(図9,図10に示す関係参照)。
この第3の実施形態に係る角速度センサの場合も、図34に示すとおり、圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されている。
この第3の実施形態の場合、このような配置を実現するために、U字状圧電素子を用いる代わりに、別なアプローチを採っている。すなわち、可撓性部材の固定部材に対する接続位置近傍に配置された第1の圧電素子と、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍に配置された第2の圧電素子と、を設け、第1の圧電素子と第2の圧電素子とは、同一の軸上に配置されるようにし、これら一対の圧電素子のうち、一方の圧電素子をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子を駆動用圧電素子として用い、このモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として、この駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うようにしている。
具体的には、図34のX′軸の正の部分に関して言えば、可撓性部材(架橋部121)の固定部材130に対する接続位置近傍に配置された第1の圧電素子X11と、可撓性部材(架橋部121)の振動子110に対する接続位置近傍に配置された第2の圧電素子X12と、を設け、第1の圧電素子X11と第2の圧電素子X12とは、同一の軸X′上に配置されるようにし、これら一対の圧電素子のうち、一方の圧電素子(この例の場合はX11)をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子(この例ではX12)を駆動用圧電素子として用い、モニタ用圧電素子X11の発生電荷をフィードバック量として、駆動用圧電素子X12に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うようにしている。図34のX′軸の負の部分に配置された圧電素子X13,X14についても同様である。
第1の実施形態および第2の実施形態の場合、制御対象となる駆動用圧電素子と、当該制御に利用するフィードバック信号を得るためのモニタ用圧電素子との組み合わせを、I字状圧電素子とU字状圧電素子との組み合わせによって実現していたため、両圧電素子の位置を極めて近接させることが可能になった。これに対して、図34に示す第3の実施形態の場合、圧電素子X11とX12の組み合わせ、あるいは、圧電素子X13とX14の組み合わせ、というように、同じ軸上ではあるが、「固定部材に対する接続位置近傍に配置された圧電素子」と「振動子に対する接続位置近傍に配置された圧電素子」との組み合わせを用いてフィードバック制御を行っている。その結果、両圧電素子の位置は若干遠ざかるものの、圧電素子の形状は非常に単純なものになる。
なお、この第3の実施形態の場合、制御対象となる駆動用圧電素子が配置された領域と、当該制御に利用するフィードバック信号を得るためのモニタ用圧電素子が配置された領域との伸縮関係が逆になるため、フィードバック制御を行う上では、その点を考慮する必要がある。たとえば、モニタ用圧電素子X11が基準よりも伸び過ぎていた場合、駆動用圧電素子X12は基準よりも縮み過ぎているとの認識を行い、駆動用圧電素子X12に対して、その縮みを少なくするような制御が必要になる。
<<< §8.第4の実施形態に係る角速度センサ >>>
これまで述べてきた実施形態は、いずれも振動子を1軸方向に振動させながら、当該振動軸に直交する2軸まわりの角速度を検出する2軸角速度センサに関するものであった。ここで述べる第4の実施形態および後述する第5の実施形態は、振動子を所定平面内で円運動させながら、所定タイミングでコリオリ力の検出を行い、3軸まわりの角速度を検出する3軸角速度センサに関するものである。
この第4の実施形態に係る角速度センサの構造は、前述した第2の実施形態に係る角速度センサの構造と全く同じである。すなわち、図33の平面図に示されているように、12組の圧電素子を用いる。各圧電素子の役割も、第2の実施形態と全く同様である。すなわち、X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子X11、Y′軸の正の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子Y11、X′軸の負の領域上に配置された第3の駆動用圧電素子X14、Y′軸の負の領域上に配置された第4の駆動用圧電素子Y14という4組の駆動用圧電素子によって、振動子110を駆動することになる。
但し、駆動制御回路30は、第1〜第4の駆動用圧電素子に対して、この順番でπ/2ずつ位相が遅れた交流駆動信号を供給することにより、振動子をXY平面に沿って円運動させる。たとえば、図35には、矩形波からなる交流電圧信号φ11,φ12,φ13,φ14を示す(もちろん、正弦波からなる交流電圧信号を用いてもかまわない)。このように、順にπ/2ずつ位相が遅れた交流電圧信号φ11,φ12,φ13,φ14を、それぞれ駆動用圧電素子X11,Y11,X14,Y14に供給すると、振動子をXY平面に沿って円運動させることができる(振動子の重心Gが、XY平面に平行な平面内で円運動する)。
このとき、X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子X11U、Y′軸の正の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子Y11U、X′軸の負の領域上に配置された第3のモニタ用圧電素子X14U、Y′軸の負の領域上に配置された第4のモニタ用圧電素子Y14Uの4組を用いたフィードバック制御が行われる。
すなわち、駆動制御回路30は、第1のモニタ用圧電素子X11Uの発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子X11に供給する交流電圧信号φ11に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子Y11Uの発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子Y11に供給する交流電圧信号φ12に対する制御を行い、第3のモニタ用圧電素子X14Uの発生電荷をフィードバック量として第3の駆動用圧電素子X14に供給する交流電圧信号φ13に対する制御を行い、第4のモニタ用圧電素子Y14Uの発生電荷をフィードバック量として第4の駆動用圧電素子Y14に供給する交流電圧信号φ14に対する制御を行う。
具体的には、これまで述べた実施形態と同様に、各モニタ用圧電素子から得られるモニタ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持され、かつ、各モニタ電圧の平均電圧値が0に維持されるように、各交流電圧信号に対する制御を行えばよい。正しいフィードバック制御が行われれば、振動子110は、所定の半径をもった円軌道上を円運動することになる。
一方、コリオリ力検出用圧電素子としては、X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子X12、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子X13、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13が設けられている。
角速度検出回路40による角速度の検出動作は次のとおりである。まず、振動子がY軸方向に運動しているタイミング(振動子の円運動の接線成分がY軸を向いたタイミング)において第1のコリオリ力検出用圧電素子X12および第3のコリオリ力検出用圧電素子X13によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力Fx(両圧電素子から得られる電圧の差)をZ軸まわりの角速度ωzとして検出する。あるいは、振動子がX軸方向に運動しているタイミング(振動子の円運動の接線成分がX軸を向いたタイミング)において第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力Fy(両圧電素子から得られる電圧の差)をZ軸まわりの角速度ωzとして検出することもできる。
また、振動子がY軸方向に運動しているタイミングにおいて第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子X12,Y12,X13,Y13によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力Fz(全圧電素子から得られる電圧の和)をX軸まわりの角速度ωxとして検出し、振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子X12,Y12,X13,Y13によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力Fz(全圧電素子から得られる電圧の和)をY軸まわりの角速度ωyとして検出する。
かくして、3軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzのすべてを検出することができる。この第4の実施形態においても、一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方をI字状圧電素子とし、他方をその近傍に配置されたU字状圧電素子とすることにより、両者を極めて近傍に配置している点は、第2の実施形態の場合と全く同様である。
<<< §9.第5の実施形態に係る角速度センサ >>>
図36は、本発明の第5の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である。この角速度センサにおける基本構造体100も、既に§1で述べた構造体(図1の平面図および図2の側断面図参照)と全く同じものである。この角速度センサは、この基本構造体100に8組の圧電素子(いずれも図13に示す特性をもった圧電素子50)を付加することにより構成されている。
この図36においても、各圧電素子の用途がハッチングの相違によって示されている。すなわち、内部を黒く塗りつぶした圧電素子は駆動用圧電素子であり、内部に斜線ハッチングを施した圧電素子はモニタ用圧電素子であり、内部にハッチングが施されていない圧電素子は、コリオリ力検出用圧電素子である。また、この実施形態においても、各圧電素子の下方電極は、図15に示すような単一の導電層63によって構成されており、接地電位に固定されている。
各圧電素子の具体的な構成は、可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義すれば、次のとおりである。すなわち、X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子X11、X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子X14、X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子X11U、X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子X14U、X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子X12、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子X13、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13である。
図37は、図36に示す角速度センサの動作を説明するチャートである。この角速度センサの場合、駆動制御回路30は、図37(a) に示す交流電圧信号φ21(第1の交流駆動信号)を第1の駆動用圧電素子X11に供給し、図37(b) に示す交流電圧信号φ24(第1の交流駆動信号に対して位相がπ/2だけ遅れた第2の交流駆動信号)を第2の駆動用圧電素子X14に供給する。すると、振動子をXZ平面に沿って円運動させることができる(振動子の重心Gが、XZ平面内で円運動する)。なお、図37では、矩形波を交流駆動信号として用いているが、正弦波を交流駆動信号として用いてもかまわない。
このように、2組の駆動用圧電素子X11,X14と、2組の交流駆動信号のみを用いて、振動子を円運動させる動作態様は、非常にユニークなものである。このような動作態様によって、振動子がXZ平面に沿って円運動する理由は、図37(c) の動作テーブルを参照すると理解できよう。動作テーブルの1行目には、交流電圧信号φ21の符号が示され、2行目には、交流電圧信号φ24の符号が示されている。そして、3行目には、これらの符号の組み合わせによる振動子の変位方向が示され、4行目には、当該変位方向に関連する参考図が示されている(変位が生じるまでの遅延時間dは考慮していない)。
まず、第1の四半周期では、交流電圧信号φ21が正、φ24が負となるので、駆動用圧電素子X11が伸び、X14が縮むので、図8に示す変形状態が生じることになり、振動子は−X軸方向に変位する。続く第2の四半周期では、交流電圧信号φ21が正、φ24が正となるので、駆動用圧電素子X11が伸び、X14も伸びるので、図12に示す変形状態が生じることになり、振動子は−Z軸方向に変位する。次の第3の四半周期では、交流電圧信号φ21が負、φ24が正となるので、駆動用圧電素子X11が縮み、X14が伸びるので、図7に示す変形状態が生じることになり、振動子は+X軸方向に変位する。最後の第4の四半周期では、交流電圧信号φ21が負、φ24が負となるので、駆動用圧電素子X11が縮み、X14も縮むので、図11に示す変形状態が生じることになり、振動子は+Z軸方向に変位する。
結局、振動子の変位方向は、−X軸,−Z軸,+X軸,+Z軸と順に遷移してゆくことになる。そして、このような周期的な変位が連続することにより、振動子は、XZ平面上で円運動を行うことになる。
このとき、第1のモニタ用圧電素子X11Uの発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子X11に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子X14Uの発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子X14に供給する交流駆動信号に対する制御が行われる。すなわち、駆動制御回路30は、第1のモニタ用圧電素子X11Uの発生電荷をフィードバック量として第1の駆動用圧電素子X11に供給する交流電圧信号φ21に対する制御を行い、第2のモニタ用圧電素子X14Uの発生電荷をフィードバック量として第2の駆動用圧電素子X14に供給する交流電圧信号φ24に対する制御を行う。
具体的には、これまで述べた実施形態と同様に、各モニタ用圧電素子から得られるモニタ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持され、かつ、各モニタ電圧の平均電圧値が0に維持されるように、各交流電圧信号に対する制御を行えばよい。正しいフィードバック制御が行われれば、振動子110は、所定の半径をもった円軌道上を円運動することになる。
一方、コリオリ力検出用圧電素子としては、X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子X12、Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12、X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子X13、Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13が設けられている。
角速度検出回路40による角速度の検出動作は次のとおりである。まず、振動子がZ軸方向に運動しているタイミング(振動子の円運動の接線成分がZ軸を向いたタイミング)において第1のコリオリ力検出用圧電素子X12および第3のコリオリ力検出用圧電素子X13によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力Fx(両圧電素子から得られる電圧の差)をY軸まわりの角速度ωyとして検出する。あるいは、振動子がX軸方向に運動しているタイミング(振動子の円運動の接線成分がX軸を向いたタイミング)において第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子X12,Y12,X13,Y13によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力Fz(全圧電素子から得られる電圧の和)をY軸まわりの角速度ωyとして検出することもできる。
また、振動子がZ軸方向に運動しているタイミングにおいて第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力Fy(両圧電素子から得られる電圧の差)をX軸まわりの角速度ωxとして検出し、振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて第2のコリオリ力検出用圧電素子Y12および第4のコリオリ力検出用圧電素子Y13によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力Fy(両圧電素子から得られる電圧の差)をZ軸まわりの角速度ωzとして検出する。
かくして、3軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzのすべてを検出することができる。この第5の実施形態においても、図36に示すとおり、圧電素子の配置パターンは、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されている。また、一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方をI字状圧電素子とし、他方をその近傍に配置されたU字状圧電素子とすることにより、両者を極めて近傍に配置している点も、第2の実施形態の場合と全く同様である。
<<< §10.いくつかの変形例 >>>
最後に、本発明のいくつかの変形例を述べておく。
(1)板状構造体を用いた例
これまで述べた実施形態は、いずれも、可撓性をもった複数の架橋部121〜124によって可撓性部材を構成し、各架橋部の一方の端を振動子110に接続し、他方の端を固定部材130に固定した構造を有するものであったが、可撓性部材は必ずしも架橋部によって構成する必要はない。図38は、本発明に係る角速度センサに利用可能な別な基本構造体200の一例を示す平面図であり、図39は、この基本構造体200をX′軸に沿って切った側断面図である。図38の平面図を見ればわかるとおり、この基本構造体200は、全体的に円盤状をしており、その上面は平面となっている。
図39に示すように、この基本構造体200は、振動子210と、この振動子の周囲を取り囲む形状をなし、可撓性をもった板状構造体220と、その周囲に位置する固定部材230とによって構成されている。ここでも、振動子210の重心Gの位置に原点OをもつXYZ三次元座標系が定義されており、板状構造体220の上面を投影面としたX軸の正射影像となるX′軸とY軸の正射影像となるY′軸とが定義されている。振動子210は、円柱状の物体をなし、その周囲に厚みの薄いワッシャ状の板状構造体220が位置しており、この板状構造体220が振動子210を支持する可撓性部材として機能する。板状構造体220の外側部分は、固定部材230に固定されている。
本発明に係る角速度センサは、これまで述べてきた各実施形態における基本構造体100の代わりに、図38および図39に示す基本構造体200を用いても構成することが可能である。もちろん、各圧電素子の配置は、これまで述べてきた実施形態と全く同様でよい。
(2)モニタ用圧電素子と駆動用圧電素子との対応関係
これまで述べた実施形態では、特定のモニタ用圧電素子と特定の駆動用圧電素子とを1対1に対応させ、当該特定のモニタ用圧電素子から得られたモニタ電圧に基づいて、当該特定の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御する形態をとっていた。しかしながら、モニタ用圧電素子と駆動用圧電素子との対応関係は、必ずしも1対1に定義する必要はない。
たとえば、1つのモニタ用圧電素子に複数の駆動用圧電素子を対応させ、当該1つのモニタ用圧電素子から得られたモニタ電圧に基づいて、当該複数の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するようにしてもよい。逆に、複数のモニタ用圧電素子に同一の駆動用圧電素子を対応させ、当該複数のモニタ用圧電素子から得られたモニタ電圧に基づいて、当該1つの駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するようにしてもよい。後者の場合、複数のモニタ用圧電素子のモニタ電圧の全振幅の平均値(複数の素子についての平均値)が所定の基準振幅値に維持され、かつ、各モニタ電圧の平均電圧値(時間的な平均値)の平均値(複数の素子についての平均値)が0に維持されるように、対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うようにすればよい。
(3)役割の交換
これまで述べた各実施形態に係る角速度センサでは、駆動用圧電素子、モニタ用圧電素子、コリオリ力検出用圧電素子という3種類の圧電素子が用いられるが、これらの圧電素子は、単に役割が異なるだけであり、物理的にはいずれも同一の圧電素子である。したがって、必要に応じて、役割を交換することも可能である。特に、互いに近傍に配置された一対の駆動用圧電素子とモニタ用圧電素子とは、相互に役割を交換しても、実質的なセンサの動作に変更は生じない。
たとえば、互いに近傍位置に配置されたI字状圧電素子とU字状圧電素子とを設けた実施形態において、これまでの説明では、I字状圧電素子を駆動用圧電素子として用い、U字状圧電素子をモニタ用圧電素子として用いた例を述べたが、両者の役割を逆にしても何ら支障は生じない。もちろん、コリオリ力検出用圧電素子とモニタ用圧電素子との役割を交換することもできるし、コリオリ力検出用圧電素子と駆動用圧電素子との役割を交換することもできる。たとえば、図33に示す例の場合、内部を黒く塗りつぶした圧電素子、内部に斜線ハッチングを施した圧電素子、内部にハッチングが施されていない圧電素子の3種類が設けられているが、この3種類のうち、どれをどの役割に割り当てても、実質的な動作に変わりはない。
(4)圧電素子の分極特性
これまで述べた実施形態では、図13に示すような分極特性をもつ圧電素子50を用いた例を述べたが、これと逆の分極特性(上方電極52を負、下方電極53を正とする電圧印加を行うと伸び、上方電極52を正、下方電極53を負とする電圧印加を行うと縮む特性)をもった圧電素子を用いることも勿論可能である。その場合は、交流駆動信号の極性(位相)を逆にしたり、生じた電圧信号の符号の取り扱いを逆にしたりすればよい。
(5)モニタ用ピエゾ抵抗素子を用いた例
これまで述べた実施形態では、振動子の運動をモニタするためにモニタ用圧電素子を設けていたが、圧電素子の代わりにピエゾ抵抗素子を用いて振動子の運動をモニタすることも可能である。図40は、§4で述べた第1の実施形態に係る角速度センサにおけるモニタ用圧電素子X12U,X13Uの代わりに、4個のピエゾ抵抗素子R1〜R4を用いた変形例を示す側断面図である。
図40に示すX11,X14は、図28に示されているコリオリ力検出用圧電素子X11,X14であり、図40に示すX12,X13は、図28に示されている駆動用圧電素子X12,X13である。また、図40には示されていないが、ここで述べる変形例に係るセンサは、図28のY′軸上に配置されているコリオリ力検出用圧電素子Y11,Y14も備えている。ただ、ここで述べる変形例に係るセンサには、図28に示すモニタ用圧電素子X12U,X13Uは設けられておらず、その代わりに、図40に示すように、4個のピエゾ抵抗素子R1〜R4が設けられている。
図40に示すとおり、ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、それぞれ圧電素子X11〜X14の真下の位置に配置されている。ここに示す例では、基本構造体100はn型シリコン基板によって構成されており、各ピエゾ抵抗素子R1〜R4は、このn型シリコンから構成されている可撓性部材121,123の上面に形成されたp型の不純物層からなる。基本構造体100の上面には絶縁膜150が形成されているが、これは各ピエゾ抵抗素子R1〜R4と各圧電素子X11〜X14とを電気的に絶縁するためである。
各ピエゾ抵抗素子R1〜R4に対しては、図41に示すような配線が施されている。すなわち、4個のピエゾ抵抗素子R1〜R4によってブリッジ回路が構成されており、直流電源Evからこのブリッジ回路に対して一定の電圧が印加されている。また、ブリッジ回路の下端は、所定の基準電圧St(この例では接地電位)に固定されている。この場合、各抵抗素子R1〜R4の電気抵抗の変化は、端子T1,T2間のブリッジ電圧Vmの変化として検出できる。すなわち、各抵抗素子R1〜R4の電気抵抗が互いに等しい場合には、ブリッジ電圧Vm=0であるが、可撓性部材121,123の上面が伸縮すると、ブリッジのバランスが崩れ、伸縮態様に応じて、ブリッジ電圧Vmは正または負の値をとる。
たとえば、振動子110がZ軸正方向に変位すると、抵抗素子R1,R4は長手方向(電流路方向)に関して縮むため電気抵抗が減少し、抵抗素子R2,R3は長手方向(電流路方向)に関して伸びるため電気抵抗が増加する。その結果、端子T1の電位Vt1と端子T2の電位Vt2との関係はVt2>Vt1になる。逆に、振動子110がZ軸負方向に変位すると、抵抗素子R1,R4は長手方向(電流路方向)に関して伸びるため電気抵抗が増加し、抵抗素子R2,R3は長手方向(電流路方向)に関して縮むため電気抵抗が減少する。その結果、端子T1の電位Vt1と端子T2の電位Vt2との関係はVt1>Vt2になる。振動子110の変位が大きければ大きいほど、Vt1とVt2との差は大きくなる。したがって、ブリッジ電圧Vmの極性は、振動子110の変位方向(Z軸正方向か負方向か)を示し、ブリッジ電圧Vmの絶対値は、振動子110の変位の絶対値を示すことになるので、ブリッジ電圧Vmは、振動子110の運動をモニタするためのモニタ電圧として利用することができる。
振動子の運動をモニタするためのモニタ用素子として、圧電素子ではなく、ピエゾ抵抗素子を用いる利点は、圧電素子では振動子の静的位置の検出を行うことができないのに対して、ピエゾ抵抗素子では振動子の静的位置の検出が可能になる点である。すなわち、図41に示す回路のブリッジ電圧として得られるモニタ電圧Vmは、振動子のZ軸方向に関する位置に対応した値になるので、振動子の位置を直接的に把握することが可能になる。
振動子に対するフィードバック制御の方法は、これまで述べてきた実施形態と同様である。すなわち、振動子の全振幅を一定に維持するには、モニタ電圧Vmの全振幅が一定になるようなフィードバック制御を行えばよい。具体的には、モニタ電圧Vmの全振幅を所定の基準振幅値と比較し、基準振幅値よりも大きい場合には、駆動用圧電素子X12,X13に供給する交流駆動信号の全振幅を小さくし、基準振幅値よりも小さい場合には、交流駆動信号の全振幅を大きくする制御を行えばよい。一方、振動子の振動中心位置を一定に維持するには、モニタ電圧Vmの平均電圧値が0になるようなフィードバック制御を行えばよい。具体的には、モニタ電圧Vmの平均電圧値が第1の極性を示している場合には、駆動用圧電素子X12,X13に供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて大きくするような制御を行い、モニタ電圧Vmの平均電圧値が第2の極性を示している場合には、駆動用圧電素子X12,X13に供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて小さくするような制御を行うようにすればよい。
以上、§4で述べた第1の実施形態に係る角速度センサについて、モニタ用圧電素子の代わりにモニタ用ピエゾ抵抗素子を用いる変形例を述べたが、もちろん、その他の実施形態に係る角速度センサについても、モニタ用圧電素子の代わりにモニタ用ピエゾ抵抗素子を用いることが可能である。
要するに、この変形例では、モニタ用ピエゾ抵抗素子の電気抵抗に基づいて、振動子の周期的運動が、予め設定された基準運動に維持されるようなフィードバック制御が行われるようにすればよい。特に、図41に示すように、振動子が特定方向に変位したときに電気抵抗が増加する一対のピエゾ抵抗素子を対辺とし、振動子が上記特定方向に変位したときに電気抵抗が減少する一対のピエゾ抵抗素子を別な対辺とするブリッジ回路を形成しておけば、駆動制御回路は、このブリッジ回路のブリッジ電圧Vmの全振幅が所定の基準振幅値に維持されるように、また、ブリッジ電圧Vmの平均値が所定の基準値に維持されるように、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことができる。
本発明に係る圧電素子を用いた角速度センサの基本構造体100の一例を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100を切断線2−2に沿って切った側断面図である。 図2に示す基本構造体100の振動子110にX軸正方向の力+Fxが作用した状態を示す側断面図である。 図2に示す基本構造体100の振動子110にX軸負方向の力−Fxが作用した状態を示す側断面図である。 図2に示す基本構造体100の振動子110にZ軸正方向の力+Fzが作用した状態を示す側断面図である。 図2に示す基本構造体100の振動子110にZ軸負方向の力−Fzが作用した状態を示す側断面図である。 図1に示す基本構造体100の振動子110にX軸正方向の力+Fxが作用したときの各可撓性部材121〜124の上面の伸縮状態を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100の振動子110にX軸負方向の力−Fxが作用したときの各可撓性部材121〜124の上面の伸縮状態を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100の振動子110にY軸正方向の力+Fyが作用したときの各可撓性部材121〜124の上面の伸縮状態を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100の振動子110にY軸負方向の力−Fyが作用したときの各可撓性部材121〜124の上面の伸縮状態を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100の振動子110にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの各可撓性部材121〜124の上面の伸縮状態を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100の振動子110にZ軸負方向の力−Fzが作用したときの各可撓性部材121〜124の上面の伸縮状態を示す平面図である。 本発明に係る角速度センサに利用される圧電素子の構造とその特性を示す側断面図である。 図1および図2に示す基本構造体100の上面に、図13に示す圧電素子50を配置した状態を示す側断面図である。 図14に示す各圧電素子の下方電極を単一の導電層63に置き換えた変形例を示す側断面図である。 図1に示す基本構造体100の各可撓性部材121〜124の上面に複数の圧電素子を配置した状態を示す平面図である。 図1に示す基本構造体100を用いて設計された角速度センサの一例を示す平面図である。 図17に示す角速度センサに対して供給する交流電圧信号φ1と、これによって生じる振動子110の変位を示すグラフである。 図17に示す角速度センサに対して供給する互いに逆位相の交流電圧信号φ1,φ2を示すグラフである。 図17に示す角速度センサに重力加速度αgが加わった状態を示す側断面図である。 図17に示す角速度センサを転置した場合に重力加速度αgが加わった状態を示す側断面図である。 図20に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサにおいて、供給する交流電圧信号φ1と振動子110の変位との関係を示すグラフである。 図21に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサにおいて、供給する交流電圧信号φ1と振動子110の変位との関係を示すグラフである。 図20に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサに対して供給する交流電圧信号φ1の振幅制御方法と、そのときの振動子110の変位を示すグラフである。 図21に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサに対して供給する交流電圧信号φ1の振幅制御方法と、そのときの振動子110の変位を示すグラフである。 図20もしくは図21に示す重力加速度αgの影響を受けている角速度センサに対して供給する交流電圧信号φ1に印加するオフセット電圧の制御方法を示すグラフである。 図17に示す角速度センサに対して供給する矩形波状の交流電圧信号φ1と、その電圧制御方法を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である(ハッチングは、圧電素子の用途を示す)。 図28に示す角速度センサの一部分(圧電素子X12,X12Uの部分)を拡大して示す拡大平面図である。 図28に示す角速度センサに用いる信号処理回路の一例を示す回路図である。 図30に示す回路におけるモニタ電圧V(X12)の変動の一例を示すグラフである。 図30に示す回路におけるモニタ電圧V(X12)の変動の別な一例を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である(ハッチングは、圧電素子の用途を示す)。 本発明の第3の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である(ハッチングは、圧電素子の用途を示す)。 本発明の第4の実施形態に係る角速度センサに供給する交流電圧信号φ11〜φ14を示すグラフである。 本発明の第5の実施形態に係る角速度センサを示す平面図である(ハッチングは、圧電素子の用途を示す)。 図36に示す角速度センサの動作を説明するチャートである。 本発明に係る圧電素子を用いた角速度センサに利用可能な別な基本構造体200の一例を示す平面図である。 図38に示す基本構造体200をX′軸に沿って切った側断面図である。 モニタ用ピエゾ抵抗素子を用いた変形例に係る角速度センサを示す側断面図である。 図40に示す変形例に用いるモニタ回路を示す回路図である。
符号の説明
21,22:差分回路
30:駆動制御回路
31:交流信号源
40:角速度検出回路
50:圧電素子
51:圧電素子本体部
52:上方電極
53:下方電極
60:圧電素子
63:単一の導電層
100:角速度センサの基本構造体
110:振動子
121〜124:架橋部(可撓性部材)
130:固定部材
150:絶縁膜
200:角速度センサの基本構造体
210:振動子
220:可撓性部材
230:固定部材
A,A1,A2:振動の振幅(半振幅)
Am1,Am2:モニタ電圧の振幅(半振幅)
d:位相差/遅延時間
E:エッジ部
Ev:直流電源
+Fx,−Fx:X軸方向に作用する力
+Fy,−Fy:Y軸方向に作用する力
+Fz,−Fz:Z軸方向に作用する力
G:振動子の重心
H1〜H4:開口部
L,L+,L−:振動中心位置/振動中心レベル
R1〜R4:ピエゾ抵抗素子
St:基準電圧
t:時間
T1,T2:端子
V,Vx,Vy:電圧値
V(+),V(−):モニタ電圧の平均電圧値
Vm:モニタ電圧
Vp:ピーク電圧
X,Y,Z:座標軸
X′,Y′:各座標軸の正射影像
X11〜X14:X′軸上に配置された圧電素子
X11U〜X14U:X′軸上に配置されたU字状圧電素子
X12Ua,X12Ub:U字状圧電素子の一部(並伸部)
X12Uc:U字状圧電素子の一部(接続部)
Y11U,Y14U:Y′軸上に配置されたU字状圧電素子
αg:重力加速度
ΔV:オフセット電圧
φ,φ1,φ2,φ11〜φ14,φ21,φ22:交流電圧信号
ωx,ωy,ωz:角速度

Claims (33)

  1. 振動子と、固定部材と、前記振動子を前記固定部材に対して接続する可撓性部材と、前記可撓性部材の表面の所定箇所に、当該所定箇所の撓みに応じて機械的変形を生じるように配置された複数の圧電素子と、を備えた角速度センサであって、
    前記複数の圧電素子には、前記振動子を駆動させるための駆動用圧電素子と、前記振動子の駆動状態をモニタするためのモニタ用圧電素子と、前記振動子に作用するコリオリ力を検出するためのコリオリ力検出用圧電素子と、が含まれており、
    前記角速度センサは、更に、
    交流駆動信号を供給して前記駆動用圧電素子を周期的に変形させ、前記可撓性部材を周期的に撓ませることにより前記振動子に周期的運動を生じさせる駆動制御回路と、
    前記振動子が前記周期的運動を行っている状態において、前記周期的運動に同期した所定タイミングで前記コリオリ力検出用圧電素子の発生電荷を測定し、これを所定軸まわりの角速度の検出値として出力する角速度検出回路と、
    を備えており、
    前記駆動制御回路が、前記モニタ用圧電素子の発生電荷に基づいて、前記振動子の前記周期的運動が、予め設定された基準運動に維持されるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  2. 請求項1に記載の角速度センサにおいて、
    各モニタ用圧電素子について、それぞれ対応する駆動用圧電素子を定め、
    駆動制御回路が、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  3. 請求項2に記載の角速度センサにおいて、
    特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の全振幅が、所定の基準振幅値よりも小さいときには、供給する交流駆動信号の全振幅を大きくする制御を行い、所定の基準振幅値よりも大きいときには、供給する交流駆動信号の全振幅を小さくする制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  4. 請求項2または3に記載の角速度センサにおいて、
    駆動制御回路が、更に、特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が所定の基準値に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  5. 請求項4に記載の角速度センサにおいて、
    特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が、所定の基準値に対して第1の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて大きくするような制御を行い、所定の基準値に対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号の奇数番目の半周期の振幅を偶数番目の半周期の振幅に比べて小さくするような制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  6. 請求項4に記載の角速度センサにおいて、
    特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が、所定の基準値に対して第1の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号に正のオフセット電圧を加える制御を行い、所定の基準値に対して前記第1の方向とは逆の第2の方向に変動したときには、供給する交流駆動信号に負のオフセット電圧を加える制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  7. 請求項2〜6のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    複数のモニタ用圧電素子に同一の駆動用圧電素子を対応させ、前記複数のモニタ用圧電素子のモニタ電圧の全振幅値の複数についての平均が所定の基準振幅値に維持されるように、もしくは前記複数のモニタ用圧電素子のモニタ電圧の時間的な平均値の複数についての平均が所定の基準値に維持されるように、対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  8. 請求項2〜7のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    各圧電素子の一方の面を接地電位に接続し、
    駆動用圧電素子の他方の面に交流駆動信号を供給して振動子を駆動させ、
    モニタ用圧電素子の他方の面の電位をモニタ電圧として測定し、このモニタ電圧に基づくフィードバック制御を行い、
    コリオリ力検出用圧電素子の他方の面の所定タイミングにおける電位に基づいて、角速度の検出値を出力することを特徴とする角速度センサ。
  9. 請求項8に記載の角速度センサにおいて、
    各圧電素子の上面に上方電極を接合し、下面に下方電極を接合し、前記下方電極を可撓性部材の上面に接合したことを特徴とする角速度センサ。
  10. 請求項9に記載の角速度センサにおいて、
    可撓性部材の表面に形成した単一の導電層を、各圧電素子に共通する下方電極として用いることを特徴とする角速度センサ。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    接地電位を基準として、正および負の電圧を交互にとる交流駆動信号を駆動用圧電素子に供給することにより振動子を駆動し、
    特定のモニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧の時間的な平均値が接地電位に維持されるように、これに対応する駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、前記振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、前記可撓性部材が前記振動子をその周囲から支持する構造をなし、
    前記可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、前記X′軸上に配置された圧電素子と、前記Y′軸上に配置された圧電素子と、を有し、
    振動子をX軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸に沿って振動させた状態、もしくは、振動子をXY平面,XZ平面,YZ平面のいずれかの平面に沿って円運動させた状態において、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸方向に作用するコリオリ力を測定することにより、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの座標軸まわりの角速度を検出することを特徴とする角速度センサ。
  13. 請求項12に記載の角速度センサにおいて、
    圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されていることを特徴とする角速度センサ。
  14. 請求項13に記載の角速度センサにおいて、
    各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されていることを特徴とする角速度センサ。
  15. 請求項13または14に記載の角速度センサにおいて、
    X′軸もしくはY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子と、このI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子と、によって圧電素子対が構成されており、
    前記U字状圧電素子は、前記I字状圧電素子の両脇位置において前記長手方向軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有しており、
    前記圧電素子対を構成する一方の圧電素子をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子を駆動用圧電素子として用い、前記モニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として、前記駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  16. 請求項15に記載の角速度センサにおいて、
    U字状圧電素子の第1の並伸部および第2の並伸部が可撓性部材上に配置され、接続部が振動子上もしくは固定部材上に配置されていることを特徴とする角速度センサ。
  17. 請求項13または14に記載の角速度センサにおいて、
    可撓性部材の固定部材に対する接続位置近傍に配置された第1の圧電素子と、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍に配置された第2の圧電素子と、を有し、前記第1の圧電素子と前記第2の圧電素子とは、同一の軸上に配置されており、これら一対の圧電素子のうち、一方の圧電素子をモニタ用圧電素子、他方の圧電素子を駆動用圧電素子として用い、前記モニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として、前記駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号を制御するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  18. 請求項1〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、前記振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、前記可撓性部材が前記振動子をその周囲から支持する構造をなし、
    前記可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
    を有し、
    駆動制御回路は、前記第1および第2の駆動用圧電素子に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子をZ軸方向に振動させ、前記第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
    角速度検出回路は、前記第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、前記第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出することを特徴とする角速度センサ。
  19. 請求項18に記載の角速度センサにおいて、
    圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
    X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
    前記U字状圧電素子は、前記I字状圧電素子の両脇位置において前記X′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有していることを特徴とする角速度センサ。
  20. 請求項1〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、前記振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、前記可撓性部材が前記振動子をその周囲から支持する構造をなし、
    前記可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3の駆動用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4の駆動用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3のモニタ用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4のモニタ用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
    を有し、
    駆動制御回路は、前記第1〜第4の駆動用圧電素子に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子をZ軸方向に振動させ、前記第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第3のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第3の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第4のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第4の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
    角速度検出回路は、前記第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、前記第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出することを特徴とする角速度センサ。
  21. 請求項20に記載の角速度センサにおいて、
    圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
    X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
    Y′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
    前記各U字状圧電素子は、前記各I字状圧電素子の両脇位置において前記X′軸もしくは前記Y′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有していることを特徴とする角速度センサ。
  22. 請求項1〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、前記振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、前記可撓性部材が前記振動子をその周囲から支持する構造をなし、
    前記可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、
    前記Y′軸の正の領域上に配置された第1および第2のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第3および第4のコリオリ力検出用圧電素子と、 を有し、
    駆動制御回路は、前記第1および第2の駆動用圧電素子に対して交流駆動信号を供給することにより、振動子をX軸方向に振動させ、前記第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
    角速度検出回路は、前記第1および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、前記第2および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をZ軸まわりの角速度として検出することを特徴とする角速度センサ。
  23. 請求項22に記載の角速度センサにおいて、
    圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されていることを特徴とする角速度センサ。
  24. 請求項1〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、前記振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、前記可撓性部材が前記振動子をその周囲から支持する構造をなし、
    前記可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3の駆動用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4の駆動用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3のモニタ用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4のモニタ用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
    を有し、
    駆動制御回路は、前記第1〜第4の駆動用圧電素子に対して、この順番でπ/2ずつ位相が遅れた交流駆動信号を供給することにより、振動子をXY平面に沿って円運動させ、前記第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第3のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第3の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第4のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第4の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
    角速度検出回路は、
    振動子がY軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力もしくは振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をZ軸まわりの角速度として検出し、
    振動子がY軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出し、
    振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出することを特徴とする角速度センサ。
  25. 請求項24に記載の角速度センサにおいて、
    圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
    X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
    Y′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はY′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
    前記各U字状圧電素子は、前記各I字状圧電素子の両脇位置において前記X′軸もしくは前記Y′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有していることを特徴とする角速度センサ。
  26. 請求項1〜11のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座標系を定義したときに、XY平面に平行な上面をもった可撓性部材を有しており、前記振動子を取り囲む位置に固定部材が配置されており、前記可撓性部材が前記振動子をその周囲から支持する構造をなし、
    前記可撓性部材の上面を投影面としてX軸の正射影像となるX′軸およびY軸の正射影像となるY′軸を定義したときに、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1の駆動用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第2の駆動用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のモニタ用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第2のモニタ用圧電素子と、
    前記X′軸の正の領域上に配置された第1のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の正の領域上に配置された第2のコリオリ力検出用圧電素子と、前記X′軸の負の領域上に配置された第3のコリオリ力検出用圧電素子と、前記Y′軸の負の領域上に配置された第4のコリオリ力検出用圧電素子と、
    を有し、
    駆動制御回路は、前記第1の駆動用圧電素子に対して第1の交流駆動信号を供給し、前記第2の駆動用圧電素子に対して前記第1の交流駆動信号に対して位相がπ/2だけ遅れた第2の交流駆動信号を供給することにより、振動子をXZ平面に沿って円運動させ、前記第1のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第1の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、前記第2のモニタ用圧電素子の発生電荷をフィードバック量として前記第2の駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対する制御を行い、
    角速度検出回路は、
    振動子がZ軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第1および第3のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたX軸方向に作用するコリオリ力もしくは振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第1〜第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたZ軸方向に作用するコリオリ力をY軸まわりの角速度として検出し、
    振動子がZ軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をX軸まわりの角速度として検出し、
    振動子がX軸方向に運動しているタイミングにおいて前記第2および第4のコリオリ力検出用圧電素子によって検出されたY軸方向に作用するコリオリ力をZ軸まわりの角速度として検出することを特徴とする角速度センサ。
  27. 請求項26に記載の角速度センサにおいて、
    圧電素子の配置パターンが、XZ平面に対称、かつ、YZ平面にも対称となるように構成されており、各圧電素子が、可撓性部材の振動子に対する接続位置近傍もしくは固定部材に対する接続位置近傍に配置されており、
    X′軸上に配置されている一対の駆動用圧電素子およびモニタ用圧電素子のうち、一方はX′軸を長手方向軸とする細長い形状をしたI字状圧電素子からなり、他方はこのI字状圧電素子の近傍に配置されたU字状圧電素子からなり、
    前記U字状圧電素子は、前記I字状圧電素子の両脇位置において前記X′軸に対して平行な方向に伸びる第1の並伸部および第2の並伸部と、この一対の並伸部の両端を接続する接続部と、を有していることを特徴とする角速度センサ。
  28. 請求項1〜27のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    角速度検出回路が、モニタ用圧電素子の発生電荷を示すモニタ電圧に基づいて、コリオリ力検出用圧電素子の発生電荷の検出タイミングを決定することを特徴とする角速度センサ。
  29. 請求項1〜28のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    可撓性部材が、可撓性をもった複数の架橋部によって構成されており、各架橋部の一方の端が振動子に接続され、他方の端が固定部材に固定されていることを特徴とする角速度センサ。
  30. 請求項1〜28のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    可撓性部材が、振動子の周囲を取り囲む形状をなし、可撓性をもった板状構造体によって構成されており、前記板状構造体の内側部分が振動子に接続され、外側部分が固定部材に固定されていることを特徴とする角速度センサ。
  31. 振動子と、固定部材と、前記振動子を前記固定部材に対して接続する可撓性部材と、前記可撓性部材の表面の所定箇所に、当該所定箇所の撓みに応じて機械的変形を生じるように配置された複数の圧電素子と、を備えた角速度センサであって、
    前記複数の圧電素子には、前記振動子を駆動させるための駆動用圧電素子と、前記振動子に作用するコリオリ力を検出するためのコリオリ力検出用圧電素子と、が含まれており、
    前記角速度センサは、更に、
    前記振動子の駆動状態をモニタするために、前記可撓性部材の表面の所定箇所に配置されたモニタ用ピエゾ抵抗素子と、
    交流駆動信号を供給して前記駆動用圧電素子を周期的に変形させ、前記可撓性部材を周期的に撓ませることにより前記振動子に周期的運動を生じさせる駆動制御回路と、
    前記振動子が前記周期的運動を行っている状態において、前記周期的運動に同期した所定タイミングで前記コリオリ力検出用圧電素子の発生電荷を測定し、これを所定軸まわりの角速度の検出値として出力する角速度検出回路と、
    を備えており、
    前記駆動制御回路が、前記モニタ用ピエゾ抵抗素子の電気抵抗に基づいて、前記振動子の前記周期的運動が、予め設定された基準運動に維持されるようにフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  32. 請求項1に記載の角速度センサにおいて、
    振動子が特定方向に変位したときに電気抵抗が増加する一対のピエゾ抵抗素子を対辺とし、振動子が前記特定方向に変位したときに電気抵抗が減少する一対のピエゾ抵抗素子を別な対辺とするブリッジ回路が形成されており、
    駆動制御回路が、前記ブリッジ回路のブリッジ電圧の全振幅が所定の基準振幅値に維持されるように、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
  33. 請求項32に記載の角速度センサにおいて、
    駆動制御回路が、更に、ブリッジ回路のブリッジ電圧の時間的な平均値が所定の基準値に維持されるように、駆動用圧電素子に供給する交流駆動信号に対するフィードバック制御を行うことを特徴とする角速度センサ。
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