JP3158583U - 加速度と角速度との双方を検出するセンサ - Google Patents

加速度と角速度との双方を検出するセンサ Download PDF

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Abstract

【課題】単純な構造で、静的・動的な加速度と角速度との双方を検出するセンサを提供する。【解決手段】加速度検出部100は、重錘体110と、周囲の台座130と、可撓性をもった板状橋梁部121,123と、その表面に埋め込まれたピエゾ抵抗素子Pとによって構成され、角速度検出部200は、重錘体210と、周囲の台座230と、可撓性をもった板状橋梁部221,223と、その上面に固着された圧電素子D,Eとによって構成される。台座130,230は装置筐体400に固定される。加速度により重錘体110が変位すると、板状橋梁部121,123が撓み、ピエゾ抵抗素子Pの電気抵抗の変化として加速度検出がなされる。圧電素子Eに交流信号を供給して重錘体210を振動させた状態で、角速度に基づくコリオリ力により重錘体210が変位すると、板状橋梁部221,223が撓み、圧電素子Dに生じる電荷により角速度検出がなされる。【選択図】図2

Description

本考案は、加速度と角速度との双方を検出するセンサ、特に、重錘体に作用する力に基づいて加速度および角速度の検出を行うセンサに関する。
産業機械や電子機器などでは、加速度や角速度といった物理量を検出する装置が組み込まれることが多い。このため、小型で高精度な加速度センサや角速度センサが多数開発されてきている。特に、二次元あるいは三次元方向の加速度を検出できる多軸加速度センサや、二軸あるいは三軸まわりの角速度を検出できる多軸角速度センサの需要が高まってきている。たとえば、最近のデジタルカメラには、手振れ制御を行うために、多軸加速度センサや多軸角速度センサなどを内蔵したものが少なくない。このような用途では、センサの小型化が重要な課題であり、1つの小型の装置でありながら、加速度と角速度との双方を検出することが可能な兼用センサ(一般に、モーションセンサと呼ばれている)が望まれている。
本願考案者は、このような要望に応えるために、加速度と角速度との双方を検出することが可能なセンサを提案している。たとえば、下記の特許文献1および2には、加速度もしくは角速度の作用によって生じる重錘体(振動子)の変位を圧電素子の撓みとして電気的に検出することにより、加速度と角速度との双方を検出するセンサが開示されている。また、特許文献3には、重錘体(振動子)の変位を静電容量素子の静電容量値の変化として電気的に検出することにより、加速度と角速度との双方を検出するセンサが開示されている。
特開平8−068636号公報 特開2002−350138号公報 特開2005−031096号公報
前述した圧電素子を利用したタイプのセンサは、機械的な変形が加えられると電荷が生じるという圧電素子の性質を利用するものである。そのため、「重錘体の動的な変位(過渡的な運動)」の検出は可能であるが、「重錘体の静的な変位(定位置からのずれ量)」を検出することはできない。したがって、重錘体を運動させることを前提とする角速度検出に関しては、静的な角速度(常に一定方向に一定速度で回転し続ける運動の角速度)も、動的な角速度(回転方向や速度が時間的に変動する運動の角速度)も検出可能であるが、加速度検出に関しては、動的な加速度(加速度の大きさや方向の時間的な変化)の検出は可能であるが、静的な加速度(たとえば、重力加速度のように一定の加速度)の検出を行うことはできない。たとえば、圧電素子に力を加えると、過渡応答として当初は所定の電荷が発生することになるが、加えた力が一定であれば、測定系が安定した後は、電荷の発生は得られなくなる。したがって、重力加速度のように常に一定の加速度(静的加速度)の検出を行うことはできない。
一方、前述した静電容量素子を利用したタイプのセンサは、重錘体の変位そのものを静電容量素子の静電容量値(電極間距離)として検出することができるので、静的な角速度、動的な角速度、静的な加速度、動的な加速度のいずれも検出可能である。しかしながら、静電容量素子を構成する一対の電極のそれぞれに対して配線を施す必要があるため、センサ全体の構造が複雑にならざるを得ない。特に、精度の高い検出値を得るために、重錘体の周囲からダンパーとして機能する空気を除去し、内部を真空にする構成を採る場合、真空状態を維持しつつ内部の電極に対する配線を行う必要が生じるので、非常に複雑な構造が要求される。
そこで本考案は、単純な構造を採りながら、静的および動的な角速度と、静的および動的な加速度とのいずれをも検出可能なセンサを提供することを目的とする。
(1) 本考案の第1の態様は、加速度と角速度との双方を検出するセンサを、加速度検出部と角速度検出部とによって構成し、
加速度検出部には、
加速度検出用重錘体と、この加速度検出用重錘体の周囲を取り囲むように配置された加速度検出用台座と、加速度検出用重錘体と加速度検出用台座とを連結する加速度検出用可撓性連結部と、加速度検出用可撓性連結部の表層部分に埋め込まれたピエゾ抵抗素子と、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路と、を設け、
角速度検出部には、
角速度検出用重錘体と、この角速度検出用重錘体の周囲を取り囲むように配置された角速度検出用台座と、角速度検出用重錘体と角速度検出用台座とを連結する角速度検出用可撓性連結部と、角速度検出用可撓性連結部の表面に直接もしくは間接的に固着された駆動用圧電素子および検出用圧電素子と、駆動用圧電素子に交流信号を供給して角速度検出用可撓性連結部を周期的に変形させ角速度検出用重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路と、を設け、
加速度検出用台座と角速度検出用台座とを一体構造とし、これらを装置筐体に固定するようにしたものである。
(2) 本考案の第2の態様は、上述した第1の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
加速度検出用重錘体、加速度検出用台座、加速度検出用可撓性連結部、角速度検出用重錘体、角速度検出用台座、角速度検出用可撓性連結部が、1枚のシリコン基板もしくはSOI基板によって構成されており、ピエゾ抵抗素子が、基板の表層部分に形成されたシリコンの不純物含有層によって構成されているようにしたものである。
(3) 本考案の第3の態様は、上述した第2の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
1枚の基板の下面側に一対の環状溝が形成されており、第1の環状溝で囲まれた部分により加速度検出用重錘体が構成され、第2の環状溝で囲まれた部分により角速度検出用重錘体が構成され、
第1の環状溝の形成により肉厚が薄くなった部分によって加速度検出用可撓性連結部が構成され、第2の環状溝の形成により肉厚が薄くなった部分によって角速度検出用可撓性連結部が構成され、
加速度検出用可撓性連結部の上面側の表層部分にピエゾ抵抗素子が埋め込まれ、角速度検出用可撓性連結部の上面に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が直接もしくは間接的に固着されているようにしたものである。
(4) 本考案の第4の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
加速度検出用可撓性連結部が複数の板状架橋部によって構成されており、個々の板状架橋部の加速度検出用重錘体に近い内側部分と加速度検出用台座に近い外側部分との双方にピエゾ抵抗素子が配置され、
角速度検出用可撓性連結部が複数の板状架橋部によって構成されており、個々の板状架橋部の角速度検出用重錘体に近い内側部分と角速度検出用台座に近い外側部分との双方に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が配置されているようにしたものである。
(5) 本考案の第5の態様は、上述した第1〜第4の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が角速度検出用可撓性連結部の上面に固着されており、
角速度検出回路が、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して角速度検出用重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うようにしたものである。
(6) 本考案の第6の態様は、上述した第5の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
複数の圧電素子の下方電極が物理的に単一の共通金属層によって構成されているようにしたものである。
(7) 本考案の第7の態様は、上述した第5または第6の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
複数の圧電素子が物理的に単一の共通圧電素子によって構成されているようにしたものである。
(8) 本考案の第8の態様は、加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体と、
この重錘体の周囲を取り囲むように配置され、装置筐体に固定された台座と、
重錘体と台座とを連結する可撓性連結部と、
可撓性連結部の表層部分に埋め込まれたピエゾ抵抗素子と、
可撓性連結部の表面に直接もしくは間接的に固着された駆動用圧電素子および検出用圧電素子と、
ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路と、
駆動用圧電素子に交流信号を供給して可撓性連結部を周期的に変形させ重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路と、
を設けたものである。
(9) 本考案の第9の態様は、上述した第8の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
加速度検出回路は、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化を示す信号に含まれる高周波成分をカットする低域通過フィルタ回路を有し、この低域通過フィルタ回路を通過した信号成分を加速度の検出値として出力し、
角速度検出回路は、駆動用圧電素子に交流信号を供給して重錘体の周期的な運動を制御する駆動制御回路と、検出用圧電素子に生じる交流信号に含まれる低周波成分をカットする高域通過フィルタ回路と、この高域通過フィルタ回路を通過した交流信号に対して、駆動制御回路から与えられる検波信号に基づく同期検波を行う同期検波回路と、を有し、同期検波回路による検波結果を角速度の検出値として出力するようにしたものである。
(10) 本考案の第10の態様は、上述した第8または第9の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体、台座、可撓性連結部が、1枚のシリコン基板もしくはSOI基板によって構成されており、ピエゾ抵抗素子が、この基板の表層部分に形成されたシリコンの不純物含有層によって構成されているようにしたものである。
(11) 本考案の第11の態様は、上述した第10の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
1枚の基板の下面側に環状溝が形成されており、この環状溝で囲まれた部分により重錘体が構成され、この環状溝の形成により肉厚が薄くなった部分によって可撓性連結部が構成され、可撓性連結部の上面側の表層部分にピエゾ抵抗素子が埋め込まれ、可撓性連結部の上面に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が直接もしくは間接的に固着されているようにしたものである。
(12) 本考案の第12の態様は、上述した第11の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体の上面中心部に原点Oが位置し、基板の上面にXY平面が位置するようなXYZ三次元座標系を定義し、
XY平面上のX軸の両脇に、X軸に対して所定間隔dxを保ちながら、X軸に対して平行に伸びるXa軸およびXb軸を定義し、
XY平面上のY軸の両脇に、Y軸に対して所定間隔dyを保ちながら、Y軸に対して平行に伸びるYa軸およびYb軸を定義し、
Xa軸,Xb軸,Ya軸,Yb軸のいずれか1つを補助軸Wと定義し、
可撓性連結部の重錘体に近い部分を内側部分、台座に近い部分を外側部分と定義したときに、
可撓性連結部の正のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、負のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
可撓性連結部の正のXa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のXa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部の正のXb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のXb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部の正のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、負のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
可撓性連結部の正のYa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のYa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部の正のYb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のYb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部の正のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、負のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、
可撓性連結部の正のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、負のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、
可撓性連結部の正のW軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、負のW軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置されているようにしたものである。
(13) 本考案の第13の態様は、上述した第8〜第11の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
可撓性連結部が複数の板状架橋部によって構成されており、個々の板状架橋部の重錘体に近い内側部分と台座に近い外側部分との双方にピエゾ抵抗素子が配置され、個々の板状架橋部の内側部分と外側部分との双方に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が配置されているようにしたものである。
(14) 本考案の第14の態様は、上述した第8〜第13の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が可撓性連結部の上面に固着されており、
角速度検出回路は、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うようにしたものである。
(15) 本考案の第15の態様は、上述した第14の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
複数の圧電素子の下方電極が物理的に単一の共通金属層によって構成されているようにしたものである。
(16) 本考案の第16の態様は、上述した第14または第15の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
複数の圧電素子が物理的に単一の共通圧電素子によって構成されているようにしたものである。
(17) 本考案の第17の態様は、上述した第8〜第16の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
一部の領域において、ピエゾ抵抗素子と圧電素子とが、絶縁層を挟んで積層状態となるように形成されているようにしたものである。
(18) 本考案の第18の態様は、加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体と、
この重錘体の脇に配置され、装置筐体に固定された台座と、
重錘体と台座とを連結する可撓性連結部と、
可撓性連結部の表層部分に埋め込まれたピエゾ抵抗素子と、
可撓性連結部の表面に直接もしくは間接的に固着された駆動用圧電素子および検出用圧電素子と、
ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路と、
駆動用圧電素子に交流信号を供給して可撓性連結部を周期的に変形させ重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路と、
を設けたものである。
(19) 本考案の第19の態様は、上述した第18の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
加速度検出回路は、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化を示す信号に含まれる高周波成分をカットする低域通過フィルタ回路を有し、この低域通過フィルタ回路を通過した信号成分を加速度の検出値として出力し、
角速度検出回路は、駆動用圧電素子に交流信号を供給して重錘体の周期的な運動を制御する駆動制御回路と、検出用圧電素子に生じる交流信号に含まれる低周波成分をカットする高域通過フィルタ回路と、この高域通過フィルタ回路を通過した交流信号に対して、駆動制御回路から与えられる検波信号に基づく同期検波を行う同期検波回路と、を有し、同期検波回路による検波結果を角速度の検出値として出力するようにしたものである。
(20) 本考案の第20の態様は、上述した第18または第19の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体、台座、可撓性連結部が、シリコンを含む材料によって構成されており、ピエゾ抵抗素子が、シリコンに不純物を含有させた層によって構成されているようにしたものである。
(21) 本考案の第21の態様は、上述した第18〜第20の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
可撓性連結部が、重錘体の上部と台座の上部とを連結する板状架橋部によって構成され、台座の下部は装置筐体に固定されており、可撓性連結部の上面側の表層部分にピエゾ抵抗素子が埋め込まれ、可撓性連結部の上面に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が直接もしくは間接的に固着されているようにしたものである。
(22) 本考案の第22の態様は、上述した第21の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体の上面の所定点と台座の上面の所定点とを連結するW軸を定義し、このW軸の両脇に、W軸に対して所定間隔dwを保ちながら、W軸に対して平行に伸びるWa軸およびWb軸を定義し、
可撓性連結部の重錘体に近い部分を重錘体近傍部分、台座に近い部分を台座近傍部分と定義したときに、
可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
可撓性連結部のWa軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部のWb軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置されているようにしたものである。
(23) 本考案の第23の態様は、上述した第21の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
重錘体の上面の所定点と台座の上面の所定点とを連結するW軸を定義し、このW軸の両脇に、W軸に対して所定間隔dwを保ちながら、W軸に対して平行に伸びるWa軸およびWb軸を定義し、
可撓性連結部の重錘体に近い部分を重錘体近傍部分、台座に近い部分を台座近傍部分と定義したときに、
可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
可撓性連結部のWa軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
可撓性連結部のWb軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置されているようにしたものである。
(24) 本考案の第24の態様は、上述した第18〜第23の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が可撓性連結部の上面に固着されており、
角速度検出回路が、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うようにしたものである。
(25) 本考案の第25の態様は、上述した第24の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
複数の圧電素子の下方電極が物理的に単一の共通金属層によって構成されているようにしたものである。
(26) 本考案の第26の態様は、上述した第24または第25の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
複数の圧電素子が物理的に単一の共通圧電素子によって構成されているようにしたものである。
(27) 本考案の第27の態様は、上述した第18〜第26の態様に係る加速度と角速度との双方を検出するセンサにおいて、
一部のピエゾ抵抗素子と一部の圧電素子とが、絶縁層を挟んで積層状態となるように形成されているようにしたものである。
本考案に係るセンサでは、重錘体と台座と、これら両者を連結する可撓性連結部とが設けられ、台座に対する重錘体の変位を検出することにより、作用した加速度もしくは角速度の検出が行われる。しかも、加速度の検出は、可撓性連結部に形成されたピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて行われ、角速度の検出は、可撓性連結部に形成された圧電素子によって行われる。ピエゾ抵抗素子も圧電素子も可撓性連結部に形成されているため、配線を容易に行うことができるので、センサ全体の構造を単純化することができる。また、ピエゾ抵抗素子や圧電素子を用いた検出を行う場合、容量素子を用いた検出のように微小な電極間隔の変化を測定する必要がないため、振動子の周囲を真空に維持する必要はない。しかも、ピエゾ抵抗素子は、静的な加速度(たとえば、重力加速度)が加わっている状態においても、当該静的な加速度を電気抵抗値として検出することが可能なので、この電気抵抗値に基づいて静的な加速度の検出を行うことができる。このように、本考案に係るセンサでは、単純な構造を採りながら、静的および動的な角速度と、静的および動的な加速度とのいずれをも検出することが可能になる。
本考案の第1の実施形態に係る加速度・角速度センサの上面図である。 図1に示すセンサをX軸に沿って切断した側断面図である。 図2に示すセンサを切断線3−3の位置で切断した上断面図である。 図2に示すセンサを切断線4−4の位置で切断した上断面図である。 図1に示すセンサの加速度検出部100および角速度検出部200の主構造体の物理的構造を示す基本モデルの上面図である。 図5に示す基本モデルをX軸に沿って切断した側断面図である。 図6に示す基本モデルの重錘体10に、X軸正方向の力+Fxが作用したときの変形状態を示す側断面図である。 図6に示す基本モデルの重錘体10に、X軸負方向の力−Fxが作用したときの変形状態を示す側断面図である。 図6に示す基本モデルの重錘体10に、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの変形状態を示す側断面図である。 図6に示す基本モデルの重錘体10に、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの変形状態を示す側断面図である。 図5に示す基本モデルの重錘体10に、X軸正方向の力+Fxが作用したときの板状架橋部の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図5に示す基本モデルの重錘体10に、X軸負方向の力−Fxが作用したときの板状架橋部の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図5に示す基本モデルの重錘体10に、Y軸正方向の力+Fyが作用したときの板状架橋部の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図5に示す基本モデルの重錘体10に、Y軸負方向の力−Fyが作用したときの板状架橋部の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図5に示す基本モデルの重錘体10に、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの板状架橋部の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図5に示す基本モデルの重錘体10に、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの板状架橋部の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図1に示すセンサの加速度検出部100の拡大上面図である。 図1に示すセンサのピエゾ抵抗素子の形成部分の拡大側断面図である。 図1に示すセンサに用いる加速度検出回路の一例を示す回路図である。 図1に示すセンサの角速度検出部200の拡大上面図である。 図1に示すセンサの圧電素子の形成部分の拡大側断面図である。 図1に示すセンサの角速度検出用重錘体210を単振動させるために用いる駆動信号を示す波形図である。 図1に示すセンサの角速度検出用重錘体210を円運動させるために用いる駆動信号を示す波形図である。 図1に示すセンサに用いる角速度検出回路の一部を示す回路図である。 本考案の第2の実施形態に係る加速度・角速度センサの上面図である。 図25に示すセンサをXZ平面に沿って切断した側断面図である。 図26に示すセンサを切断線27−27の位置で切断した上断面図である。 図26に示すセンサを切断線28−28の位置で切断した上断面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部321の拡大上面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部323の拡大上面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部322の拡大上面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部324の拡大上面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部上におけるピエゾ抵抗素子および圧電素子の重畳形成部の拡大側断面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部上における圧電素子形成部の拡大側断面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部上におけるピエゾ抵抗素子および圧電素子の重畳形成部の変形例を示す拡大側断面図である。 図25に示すセンサの板状架橋部上における圧電素子形成部の変形例を示す拡大側断面図である。 図2に示すセンサをSOI基板を利用して構成した例を示す側断面図である。 図26に示すセンサをSOI基板を利用して構成した例を示す側断面図である。 図1に示すセンサの変形例を示す上面図である。 図39に示すセンサをX軸に沿って切断した側断面図である。 図25に示すセンサの変形例を示す上面図である。 図41に示すセンサをX軸に沿って切断した側断面図である。 本考案の第3の実施形態に係る加速度・角速度センサの上面図である。 図43に示すセンサをXZ平面に沿って切断した側断面図である。 図43に示すセンサの可撓性連結部620の右側部分の拡大上面図である。 図43に示すセンサの可撓性連結部620の左側部分の拡大上面図である。 図44に示すセンサの重錘体610に、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの可撓性連結部620の上面各位置における伸縮状態を示す側断面図である。 図44に示すセンサの重錘体610に、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの可撓性連結部620の上面各位置における伸縮状態を示す側断面図である。 図44に示すセンサの重錘体610に、Y軸まわりの角速度ωyが作用した状態を示す側断面図である。 図44に示すセンサの可撓性連結部620に、X軸正方向の力+Fxが作用したときの上面各位置における伸縮状態の一態様を示す側断面図である。 図43に示すセンサの変形例を示す上面図である。 図51に示すセンサの重錘体610に、X軸まわりの角速度ωxが作用した状態を示す側断面図である。 図51に示すセンサの重錘体610に、X軸まわりの角速度ωxが作用したときの、ある時点における可撓性連結部620の変形状態および上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図51に示すセンサの重錘体610に、X軸まわりの角速度ωxが作用したときの、別なある時点における可撓性連結部620の変形状態および上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。 図25に示すセンサに用いる加速度および角速度の検出回路の一例を示す回路図である。
以下、本考案を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.第1の実施形態に係るセンサの基本構造 >>>
図1は、本考案の第1の実施形態に係るセンサの一例を示す上面図である。図示のとおり、このセンサの左半分は加速度検出部100を構成し、右半分は角速度検出部200を構成する。加速度検出部100の主構造体は、四角柱状の加速度検出用重錘体110と、4本の板状架橋部121〜124と、加速度検出用台座130である。台座130は、重錘体110の周囲を取り囲むように配置された正方形の輪郭をなす部分であり、4本の板状架橋部121〜124は、これら両者を連結する可撓性連結部として機能する。一方、角速度検出部200の主構造体は、四角柱状の角速度検出用重錘体210と、4本の板状架橋部221〜224と、角速度検出用台座230である。台座230は、重錘体210の周囲を取り囲むように配置された正方形の輪郭をなす部分であり、4本の板状架橋部221〜224は、これら両者を連結する可撓性連結部として機能する。
図2は、図1に示すセンサの側断面図である。ここでは、説明の便宜上、図1に示すように、加速度検出用重錘体110の上面中心位置に原点O1を定義し、角速度検出用重錘体210の上面中心位置に原点O2を定義し、各原点O1,O2について、それぞれXYZ三次元座標系を定義する。図示のとおり、いずれの座標系においても、X軸は図の右方向を向いた座標軸になるが、Y軸およびZ軸は、個々の座標系ごとに異なるので、それぞれY1軸,Y2軸およびZ1軸,Z2軸と呼ぶことにする。図2は、図1のセンサをX軸に沿った位置で切断した側断面図に相当する。
図3は、図2に示すセンサを切断線3−3の位置で切断した上断面図であり、図4は、図2に示すセンサを切断線4−4の位置で切断した上断面図である。図4に示されているとおり、重錘体110,210は、いずれも断面が正方形をなす四角柱であり、その周囲には方環状溝G1,G2が形成されている。台座130,230は、この方環状溝G1,G2を隔てて、重錘体110,210を四方から取り囲む壁状の構造体である。なお、台座130,230は、実際には一体構造をなし、一塊の部材によって構成されている。ここでは、説明の便宜上、加速度検出用重錘体110を取り囲む部分を加速度検出用台座130と呼び、角速度検出用重錘体210を取り囲む部分を角速度検出用台座230と呼んで区別しているが、図示のとおり、台座130の右端と台座230の左端は融合しており、両者の境界は厳密に定義されるわけではない。
実際には、このセンサの主構造体(重錘体110,210、板状架橋部121〜124,221〜224、台座130,230)は、1枚の基板(ここに示す実施例の場合、シリコン基板)を加工することによって構成することができる。すなわち、図2の側断面図に示されているとおり、1枚の基板の下面側から所定の深さの方環状溝G1,G2を堀って重錘体110,210を形成し、この重錘体110,210の底部を若干量だけ除去して底上げした後、図3の上断面図に示されているとおり、この基板の上層部分に開口部W11〜W14,W21〜W24を形成すれば、図示のとおりの主構造体を得ることができる。
図2に示すとおり、台座130,230の底面は、装置筐体400に固定されているが、重錘体110,210の床部は底上げされているため、重錘体110,210は装置筐体400に対して所定間隔を維持しながら宙吊りの状態になっている。なお、ここでは、図示の便宜上、装置筐体400の一部分(台座130,230が固定された底部)のみが示されているが、実際には、装置筐体400は、このセンサの主構造体の全体を包み込む構造になっており、図2の左欄外、右欄外、上欄外には、装置筐体400の壁面が配置されている。
板状架橋部121〜124は、肉厚が薄い部分によって構成されるため、可撓性連結部として機能する。また、重錘体110は、これら板状架橋部121〜124によって四方から支持されているため、重錘体110に対して加速度に基づく力が加わると、板状架橋部121〜124が撓みを生じ、重錘体110が台座130に対して変位することになる。同様に、板状架橋部221〜224は、肉厚が薄い部分によって構成されるため、可撓性連結部として機能する。そして、重錘体210は、これら板状架橋部221〜224によって四方から支持されているため、板状架橋部221〜224に撓みを生じさせることにより、重錘体210を振動させることができ、また、この振動状態において、重錘体210に対して角速度に基づくコリオリ力が加わると、板状架橋部221〜224には当該コリオリ力に基づく撓みが生じ、重錘体210が台座230に対して当該コリオリ力に基づく変位を生じることになる。
以上、図1〜図4を参照しながら、加速度検出部100の主構造体および角速度検出部200の主構造体の構成をそれぞれ述べた。実際、これら主構造体の基本的な構成自体は、両者全く同じである。加速度検出部100と角速度検出部200との大きな違いは、これら主構造体の可撓性連結部(板状架橋部121〜124,221〜224)に形成された各素子にある。すなわち、図1の上面図に示すとおり、加速度検出部100の板状架橋部121〜124には、複数のピエゾ抵抗素子Pが形成されており、角速度検出部200の板状架橋部221〜224には、複数の圧電素子D,Eが形成されている。ピエゾ抵抗素子Pは加速度の検出に利用される素子であり、圧電素子D,Eは角速度の検出に利用される素子である。
図2に示されているとおり、ピエゾ抵抗素子Pは、板状架橋部121〜124(加速度検出用可撓性連結部)の表層部分に埋め込まれており、後述する加速度検出回路は、このピエゾ抵抗素子Pの電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する。一方、圧電素子D,Eは、板状架橋部221〜224(角速度検出用可撓性連結部)の上面に固着されている。図1に示すように、各板状架橋部221〜224には、それぞれ6組の圧電素子が配置されており、角速度検出部200には、合計24組の圧電素子が配置されている。この24組の圧電素子は、いずれも物理的には全く同一の構成をもった素子であるが、ここでは、その用途を考慮して、検出用圧電素子Dと駆動用圧電素子Eに分けて取り扱うことにする。
後に詳述するとおり、図1に示すセンサの場合、X軸上およびY2軸上に配置された8組の圧電素子が検出用圧電素子Dとなり、その両脇に配置された16組の圧電素子が駆動用圧電素子Eになる。後述する角速度検出回路は、駆動用圧電素子Eに交流信号を供給して、各板状架橋部221〜224(角速度検出用可撓性連結部)を周期的に変形させ、角速度検出用重錘体210に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子Dに生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する。
なお、検出用圧電素子Dおよび駆動用圧電素子Eは、板状架橋部221〜224の上面に生じた撓みが各圧電素子に伝達され、逆に、各圧電素子に生じた撓みが板状架橋部221〜224の上面に伝達されるように、板状架橋部221〜224の表面の所定位置に固着されていればよい。したがって、各圧電素子は、板状架橋部221〜224(角速度検出用可撓性連結部)の表面に直接固着されていてもよいし、何らかの別な部材を介して間接的に固着されていてもよい。ここに述べる実施例の場合、各圧電素子の上面には上方電極が形成され、下面には下方電極が形成され、各圧電素子は、下方電極を介して、板状架橋部221〜224の表面に間接的に固着されているが、図2では、図が繁雑になるため、上方電極および下方電極の図示は省略されている。
<<< §2.第1の実施形態に係るセンサの各部の撓み >>>
続いて、図1に示すセンサにおける加速度検出部100の重錘体110に対して、各座標軸方向への力が作用した場合に、板状架橋部121〜124の各位置にどのような撓みが生じるか、を考えるとともに、角速度検出部200の重錘体210に対して、各座標軸方向への力が作用した場合に、板状架橋部221〜224の各位置にどのような撓みが生じるか、を考えてみよう。
上述したとおり、加速度検出部100の主構造体および角速度検出部200の主構造体の基本構成は共通しているので、ここでは、説明の便宜上、図5および図6に示すような基本モデルを考えてみる。この基本モデルは、図1に示すセンサの加速度検出部100および角速度検出部200の主構造体の物理的構造を示すモデルであり、図5はその上面図、図6はその側断面図である。図示のとおり、この基本モデルは、中央に配置された四角柱状の重錘体10と、その周囲を取り囲むように配置された台座30と、両者を連結する4本の板状架橋部21,22,23,24(可撓性連結部)と、によって構成されている。重錘体10の周囲には、方環状溝G0が形成されており、上面には開口部W1,W2,W3,W4が形成されている。また、台座30の底面は装置筐体400に固定されており、重錘体10は、4本の板状架橋部21,22,23,24によって宙吊り状態になっている。
図1および図2に示すセンサは、図5および図6に示す基本モデルを左右に2組並べたものに相当する。この基本モデルにおいても、図5の上面図に示すとおり、重錘体10の上面中心位置に原点Oを定義し、図の右方向にX軸、図の上方向にY軸をとり、XYZ三次元座標系を定義する。図6の側断面図では、右方向がX軸、上方向がZ軸になる。図5に示すY軸は、図1に示すY1軸およびY2軸に対応するものであり、図6に示すZ軸は、図2に示すZ1軸およびZ2軸に対応するものである。また、説明の便宜上、図5に示すように、XY平面上のX軸の両脇に、X軸に対して所定間隔dxを保ちながら、X軸に対して平行に伸びるXa軸およびXb軸を定義し、XY平面上のY軸の両脇に、Y軸に対して所定間隔dyを保ちながら、Y軸に対して平行に伸びるYa軸およびYb軸を定義する。
そして、図5に示されているとおり、4本の板状架橋部21,22,23,24の上面に、X11〜X34およびY11〜Y34という領域(図では矩形で示す)を定義する。ここで、領域X11〜X14は、Xa軸上に定義され、Xa軸方向を長手方向とする細長い領域であり、領域X21〜X24は、X軸上に定義され、X軸方向を長手方向とする細長い領域であり、領域X31〜X34は、Xb軸上に定義され、Xb軸方向を長手方向とする細長い領域である。同様に、領域Y11〜Y14は、Ya軸上に定義され、Ya軸方向を長手方向とする細長い領域であり、領域Y21〜Y24は、Y軸上に定義され、Y軸方向を長手方向とする細長い領域であり、領域Y31〜Y34は、Yb軸上に定義され、Yb軸方向を長手方向とする細長い領域である。いずれの領域も同一形状かつ同一サイズの領域となっており、その配置は、X軸およびY軸に関して線対称になる。
また、これらの各領域は、各板状架橋部21,22,23,24の両端に配置されている。すなわち、各板状架橋部21,22,23,24の重錘体10に近い部分を内側部分、台座30に近い部分を外側部分と定義すれば、領域X11,X21,X31,X14,X24,X34,Y11,Y21,Y31,Y14,Y24,Y34は外側部分に配置され、領域X12,X22,X32,X13,X23,X33,Y12,Y22,Y32,Y13,Y23,Y33は内側部分に配置されている。ここに述べる実施形態では、ピエゾ抵抗素子Pおよび圧電素子D,Eは、図5に示す各領域のいずれかの位置に配置される。
次に、この基本モデルにおいて、重錘体10の重心Gに対して各座標軸方向の力が作用した場合に、主構造体がどのように変形するかを考えてみる。まず、X軸正方向の力+Fxが作用したときの変形状態を、図7の側断面図に示し、X軸負方向の力−Fxが作用したときの変形状態を、図8の側断面図に示す。なお、ここでは、重錘体10および台座30は、十分な剛性を有しているのに対して、肉厚が薄い板状架橋部21,22,23,24(可撓性連結部)は、可撓性を有しているため、変形は板状架橋部21,22,23,24の部分のみに集中するものと仮定した図が示されている。厳密に言えば、重錘体10および台座30の部分にも若干の変形が生じることになるが、各板状架橋部の厚みが十分に薄ければ、実用上は、変形は各板状架橋部に集中するものと考えて問題はない。たとえば、後述するように、主構造体をシリコン基板によって構成した場合、基板全体の厚み(台座30の高さ)を0.3mm程度、板状架橋部21,22,23,24の厚みを、10μm程度に設定すると、変形はほぼ各板状架橋部に集中するものと考えてよい。
ここでは、各板状架橋部21,22,23,24の上面各部の撓みに着目してみよう。特に、図5に示した領域X11〜X34,Y11〜Y34について、それぞれの領域の長手方向に関する伸び縮みに着目してみる。図7および図8において、板状架橋部21,23の上方に記載されている各矢印は、この伸縮状態を示している。外側へ向かう一対の矢印は、当該領域が通常状態(力が作用していない状態)に比べて伸びることを示し、内側へ向かう一対の矢印は、当該領域が通常状態に比べて縮むことを示している。
たとえば、図7に示すとおり、重心Gに対してX軸正方向の力+Fxが作用した場合は、X軸上の領域X21,X23は縮み、領域X22,X24は伸びる。逆に、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、図8に示すとおり、X軸上の領域X21,X23は伸び、領域X22,X24は縮む。X軸の両脇に定義されたXa軸およびXb軸上の各領域も同様の変形を行うことになる。このとき、板状架橋部22,24上の領域Y11〜Y34は、幅方向に関して捩れる変形が生じることになるが、長手方向に関して顕著な変形は生じない。
次に、重心Gに対してY軸正方向の力+FyおよびY軸負方向の力−Fyが作用した場合を考えてみよう。図5に示すとおり、X軸とY軸とは直交しているが、この基本モデルの主構造体を原点Oを中心に90°回転させても、形状は全く同じである。したがって、上述したX軸方向に関する力が作用したときの変形態様は、Y軸方向に関する力が作用したときの変形態様にもそのまま適用することができる。すなわち、Y軸方向に関する力が作用したときの各領域Y11〜Y34の伸縮状態は、上述したX軸方向に関する力が作用したときの各領域X11〜X34の伸縮状態と同じになる。また、Y軸方向に関する力が作用したとき、板状架橋部21,23上の領域X11〜X34は、幅方向に関して捩れる変形が生じることになるが、長手方向に関して顕著な変形は生じない。
続いて、重心Gに対してZ軸方向に関する力が作用した場合を考える。図9は、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの変形状態を示す側断面図である。重錘体10が上方へと移動することにより、X軸上の領域X21,X24は縮み、領域X22,X23は伸びる。このような伸縮状態は、X軸の両脇に配置されたXa軸およびXb軸上の領域に関しても同様であり、更に、Y軸およびその両脇に配置されたYa軸およびYb軸上の領域に関しても同様である。結局、図5の上面図に示されている合計24個の領域について、各板状架橋部21,22,23,24の外側部分の領域X11,X21,X31,X14,X24,X34,Y11,Y21,Y31,Y14,Y24,Y34は縮み、内側部分の領域X12,X22,X32,X13,X23,X33,Y12,Y22,Y32,Y13,Y23,Y33は伸びる。
一方、図10は、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの変形状態を示す側断面図である。重錘体10が下方へと移動することにより、X軸上の領域X21,X24は伸び、領域X22,X23は縮む。結局、図5の上面図に示されている合計24個の領域について、各板状架橋部21,22,23,24の外側部分の領域X11,X21,X31,X14,X24,X34,Y11,Y21,Y31,Y14,Y24,Y34は伸び、内側部分の領域X12,X22,X32,X13,X23,X33,Y12,Y22,Y32,Y13,Y23,Y33は縮む。
以上の検討結果を踏まえて、図5に示す基本モデルの重錘体10に、各座標軸方向の力が作用したときの板状架橋部の上面各位置に定義された領域における長手方向に関する伸縮状態を図11〜図16の上面図にまとめて示す。すなわち、図11はX軸正方向の力+Fxが作用した状態を示す上面図、図12はX軸負方向の力−Fxが作用した状態を示す上面図、図13はY軸正方向の力+Fyが作用した状態を示す上面図、図14はY軸負方向の力−Fyが作用した状態を示す上面図、図15はZ軸正方向の力+Fzが作用した状態を示す上面図、図16はZ軸負方向の力−Fzが作用した状態を示す上面図である。
いずれの図においても、外側へ向かう一対の矢印は、当該領域が通常状態(力が作用していない状態)に比べて伸びることを示し、内側へ向かう一対の矢印は、当該領域が通常状態に比べて縮むことを示している。なお、ここで考慮している伸縮は、あくまでも各領域の長手方向に関する伸縮であり、幅方向の伸縮は考慮していない。矢印の付されていないバーは、長手方向に関して有意な伸縮が生じないことを示している。また、ここで示した伸縮結果は、各板状架橋部21,22,23,24の上面における伸縮の結果であり、内部や下面における伸縮結果ではない。
<<< §3.第1の実施形態に係るセンサの加速度検出の原理 >>>
ここでは、図1および図2に示した第1の実施形態に係るセンサの加速度検出部100における加速度検出の原理を述べる。
図17は、図1に示すセンサの加速度検出部100の拡大上面図である。§1で述べたとおり、加速度検出部100の板状架橋部(加速度検出用可撓性連結部)121〜124の上面表層部分には、複数のピエゾ抵抗素子Pが埋め込まれており、このピエゾ抵抗素子Pの電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度の検出が行われる。図1と同様に、この図17においても、加速度検出用重錘体110の上面中心位置に原点O1を定義し、図の右方向にX軸、図の上方向にY1軸をとって、三次元座標系を定義する。また、X軸に隣接して、X軸と平行なW軸を図示のとおり定義する。この図17に示すW軸は、図5に示すXa軸に対応するものであるが、ここでは、便宜上、W軸と呼ぶことにする。なお、図示の例では、W軸をX軸に平行な軸にしているが、原点O1を通り、X軸に対して所定角度だけ傾斜した軸をW軸としてもよい。
図示のとおり、加速度検出部100には、合計12組のピエゾ抵抗素子Pが設けられている。各ピエゾ抵抗素子Pは、いずれも全く同じサイズの同じ材料からなる素子であり、その配置位置のみが異なる。そこで、図示のとおり、各素子を、「P(領域記号)」の形式で示すことにする。ここで「領域記号」は、図5に示す各領域X11〜X34,Y11〜Y34の記号である。たとえば、図17に示すピエゾ抵抗素子P(X11)は、図5に示す領域X11に配置された素子ということになる。各軸上に配置されたピエゾ抵抗素子Pは、当該配置軸方向を長手方向とする細長い素子となっており、この長手方向に関する電気抵抗の変化が加速度検出に寄与することになる。
図18は、各ピエゾ抵抗素子Pの形成部分の拡大側断面図である。図に示す可撓性連結部120は、板状架橋部121〜124のいずれかに対応するものであり、その上面表層部分に、ピエゾ抵抗素子Pが埋め込まれている。ここに示す実施例の場合、可撓性連結部120はN型シリコン基板の一部によって構成されており、ピエゾ抵抗素子Pは、このN型シリコン基板の一部に形成されたP型不純物領域によって構成されている。なお、図18には、端子T1,T2から伸びる配線が線で示されているが、これは、ピエゾ抵抗素子Pの左右両端と端子T1,T2との間に配線がなされることを便宜上示したものである。実際には、アルミニウムなどの金属を用いて、このような配線層が可撓性連結部120の上面に形成されることになる。
図19は、この第1の実施形態に係るセンサに用いる加速度検出回路の一例を示す回路図である。図19(a) は作用した加速度のX軸方向成分αxの検出を行う回路、図19(b) は作用した加速度のY軸方向成分αyの検出を行う回路、図19(c) は作用した加速度のZ軸方向成分αzの検出を行う回路である。これらの回路における1組のピエゾ抵抗素子は、図18に示すピエゾ抵抗素子から構成されており、図18に示す両端子T1,T2が、図19の各回路図に示す黒丸点に対応する。いずれの回路も、4組のピエゾ抵抗素子Pからなるブリッジ回路を含み、これら各ブリッジ回路には、直流電源50から常に一定の電圧が印加されている。
まず、図19(a) に示すブリッジ回路は、図17のX軸上に配置された4組のピエゾ抵抗素子P(X21),P(X22),P(X23),P(X24)によって構成されており、そのブリッジ電圧Vxは電位差計51によって測定される。何ら力が作用していない状態では、これら4組のピエゾ抵抗素子Pの電気抵抗は互いに等しいので、ブリッジ回路は平衡状態を維持し、電位差計51によって測定されるブリッジ電圧Vxは0になる。ところが、重錘体110にX軸方向に関する力が作用すると、図11または図12に示す伸縮状態が生じることになる。ピエゾ抵抗素子Pは、機械的な伸縮状態に応じて電気抵抗が増減する性質をもった素子であるので、図11または図12に示す伸縮状態が生じると、図19(a) に示すブリッジ回路の平衡状態が崩れ、電位差計51によって測定されるブリッジ電圧Vxは正または負の値となる。
図19(a) に示すブリッジ回路において、対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子P(X21),P(X23)は、X軸方向に関する力の作用に対して同じ伸縮状態をとる関係(一方が伸びれば他方も伸び、一方が縮めば他方も縮む関係)にあり、同様に、別な対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子P(X22),P(X24)も、X軸方向に関する力の作用に対して同じ伸縮状態をとる関係にあるので、電位差計51によって測定されるブリッジ電圧Vxは、作用したX軸方向に関する力の方向と大きさとを示す値になり、加速度のX軸方向成分αxを示す値になる。
なお、Y軸方向に関する力が作用した場合は、図13および図14に示すとおり、図19(a) に示すブリッジ回路を構成する4組のピエゾ抵抗素子P(X21),P(X22),P(X23),P(X24)には、有意な伸縮は生じないので、ブリッジ電圧Vxには有意な変動は生じない。これに対して、Z軸方向に関する力が作用した場合は、図15および図16に示すとおり、図19(a) に示すブリッジ回路を構成する4組のピエゾ抵抗素子P(X21),P(X22),P(X23),P(X24)に、有意な伸縮が生じることになる。しかしながら、このブリッジ回路の対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子P(X21),P(X23)は、Z軸方向に関する力の作用に対して相反する伸縮状態をとる関係(一方が伸びれば他方は縮み、一方が縮めば他方は伸びる関係)にあり、同様に、別な対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子P(X22),P(X24)も、Z軸方向に関する力の作用に対して相反する伸縮状態をとる関係にあるので、Z軸方向に関する力の作用によるブリッジ電圧Vxの変動は相殺されてしまう。結局、図19(a) に示すブリッジ回路は、作用した加速度のX軸方向成分αxのみを独立して検出することができる。
一方、図19(b) に示すブリッジ回路は、図17のY軸上に配置された4組のピエゾ抵抗素子P(Y21),P(Y22),P(Y23),P(Y24)によって構成されており、そのブリッジ電圧Vyは電位差計52によって測定される。何ら力が作用していない状態では、これら4組のピエゾ抵抗素子Pの電気抵抗は互いに等しいので、ブリッジ回路は平衡状態を維持し、電位差計52によって測定されるブリッジ電圧Vyは0になる。ところが、重錘体110にY軸方向に関する力が作用すると、図13または図14に示す伸縮状態が生じることになり、ブリッジ回路の平衡状態が崩れる。結局、電位差計52によって測定されるブリッジ電圧Vyが、加速度のY軸方向成分αyを示す値になる。
この図19(b) に示すブリッジ回路の場合、X軸方向に関する力が作用した場合は、ブリッジ電圧Vyには有意な変動は生じない。また、Z軸方向に関する力が作用した場合は、対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子が相反する伸縮状態をとる関係にあるので、Z軸方向に関する力の作用によるブリッジ電圧Vyの変動は相殺されてしまう。したがって、図19(b) に示すブリッジ回路は、作用した加速度のY軸方向成分αyのみを独立して検出することができる。
また、図19(c) に示すブリッジ回路は、図17のW軸上に配置された4組のピエゾ抵抗素子P(X11),P(X12),P(X13),P(X14)によって構成されており、そのブリッジ電圧Vzは電位差計53によって測定される。何ら力が作用していない状態では、これら4組のピエゾ抵抗素子Pの電気抵抗は互いに等しいので、ブリッジ回路は平衡状態を維持し、電位差計53によって測定されるブリッジ電圧Vzは0になる。ところが、重錘体110にZ軸方向に関する力が作用すると、図15または図16に示す伸縮状態が生じることになり、ブリッジ回路の平衡状態が崩れる。結局、電位差計53によって測定されるブリッジ電圧Vzが、加速度のZ軸方向成分αzを示す値になる。
この図19(c) に示すブリッジ回路の場合、対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子は、いずれも内側部分に配置された素子の組合わせか、いずれも外側部分に配置された素子の組合わせか、になっている。したがって、Z軸方向に関する力が作用した場合は、対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子が同じ伸縮状態をとり、ブリッジ電圧Vzに変動が生じることになるが、X軸方向もしくはY軸方向に関する力が作用した場合は、対辺を構成する一対のピエゾ抵抗素子が相反する伸縮状態をとるので、X軸方向もしくはY軸方向に関する力の作用によるブリッジ電圧Vzの変動は相殺されてしまう。したがって、図19(c) に示すブリッジ回路は、作用した加速度のZ軸方向成分αzのみを独立して検出することができる。
なお、Z軸方向に関する力の検出に利用される4組のピエゾ抵抗素子の配置軸Wは、図5に示されている軸X,Xa,Xb,Y,Ya,Ybのいずれであってもかまわない。これは、内側部分に配置された一対の素子を1つの対辺とし、外側部分に配置された一対の素子を1つの対辺とするブリッジ回路を形成すれば、Z軸方向に関する力の検出が可能になるためである。ただ、図5に示す基本モデルにおいて、X軸,Y軸,Z軸の3軸の検出機能をもったセンサを構成する際には、X軸方向に関する力の検出には、X軸上の各領域X21,X22,X23,X24に配置された素子を用い、Y軸方向に関する力の検出には、Y軸上の各領域Y21,Y22,Y23,Y24に配置された素子を用いるのが好ましいので、Z軸方向に関する力の検出に用いる4組のピエゾ抵抗素子を配置するW軸は、Xa軸,Xb軸,Ya軸,Yb軸のいずれかにするか、または原点を通り、X軸に対して所定角度だけ傾斜した軸にするのが好ましい。この第1の実施形態として示した例は、Xa軸をW軸として選択した例ということになる。
<<< §4.第1の実施形態に係るセンサの角速度検出の原理 >>>
続いて、図1および図2に示した第1の実施形態に係るセンサの角速度検出部200における角速度検出の原理を述べる。
図20は、図1に示すセンサの角速度検出部200の拡大上面図である。§1で述べたとおり、角速度検出部200の板状架橋部(角速度検出用可撓性連結部)221〜224の上面には、合計24組の圧電素子が配置されている。各圧電素子は、いずれも物理的には全く同一の構成をもった素子であるが、ここでは、その用途を考慮して、重錘体210に加わった力の検出に利用される圧電素子を検出用圧電素子Dと呼び、重錘体210の駆動に利用される圧電素子を駆動用圧電素子Eと呼ぶことにする。
この図20に示されている合計24組の圧電素子の配置は、図5示す各領域X11〜X34,Y11〜Y34の配置と同じである。そこで、ここでは、検出用圧電素子Dを「D(領域記号)」の形式で示し、駆動用圧電素子を「E(領域記号)」の形式で示すことにする。「領域記号」は、図5に示す各領域X11〜X34,Y11〜Y34の記号である。たとえば、図20に示す圧電素子D(X21)は、図5に示す領域X21に配置された検出用圧電素子であり、圧電素子E(X11)は、図5に示す領域X11に配置された駆動用圧電素子である。また、検出用圧電素子Dと駆動用圧電素子Eとを区別せずに言及する場合には、単に「圧電素子F」と呼ぶことにする。
図20では、図1と同様に、角速度検出用重錘体210の上面中心位置に原点O2を定義し、図の右方向にX軸、図の上方向にY2軸をとって、三次元座標系を定義している。そして、この実施形態では、X軸上に配置された4組の圧電素子およびY2軸上に配置された4組の圧電素子は、いずれも検出用圧電素子Dとなり、X軸の両脇およびY2軸の両脇に配置された圧電素子(図5のXa軸,Xb軸,Ya軸,Yb軸上の領域に配置された素子)は、いずれも駆動用圧電素子Eとなる。
図21は、各圧電素子Fの形成部分の拡大側断面図である。図に示す可撓性連結部220は、板状架橋部221〜224のいずれかに対応するものであり、その上面に、圧電素子Fが配置されている。図示の例では、圧電素子Fは板状形態をしており、その上面に上方電極UEが固着され、下面に下方電極LEが固着されている。そして、下方電極LEの下面は、可撓性連結部220の上面に固着されているので、結局、圧電素子Fは下方電極LEを介して間接的に可撓性連結部220の上面に固着されていることになる。その結果、可撓性連結部220の上面に生じた撓み(機械的な変形)は圧電素子Fへと伝達され、逆に、圧電素子Fに生じた撓みは可撓性連結部220の上面へと伝達されることになる。
ここに示す実施例の場合、可撓性連結部220はシリコン基板の一部によって構成されており、圧電素子Fは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等によって構成されており、上方電極UEおよび下方電極LEはアルミニウム層によって構成されている。なお、図21には、端子U,Lから伸びる配線が線で示されているが、これは、端子Uと上方電極UEとの間および端子Lと下方電極LEとの間に、それぞれ配線がなされることを便宜上示したものである。実際には、アルミニウムなどの金属を用いて、このような配線層が形成されることになる。
一般に、圧電素子は、応力が加えられると電圧が発生し、逆に、電圧が加えられると応力が生じる性質を有している。図21に示す圧電素子Fは、図の横方向(可撓性連結部220の上面に平行な方向)に伸縮させる応力が加えられると、上方電極UEと下方電極LEとの間に電圧が生じる性質をもっている。生じる電圧の極性は、加えられた応力の向き(横方向に伸ばす方向か、縮ませる方向か)に依存して決まり、生じる電圧の大きさは、加えられた応力の大きさに依存して決まる。また、この圧電素子Fは、上方電極UEと下方電極LEとの間に電圧を印加すると、図の横方向に伸縮変形する性質をもっている。伸びるか縮むかは、印加電圧の極性に依存して決まり、伸縮変形の量は、印加電圧の大きさに依存して決まる。
このような圧電素子Fの性質を利用すれば、重錘体210を駆動することができる。すなわち、駆動用圧電素子Eに交流信号を供給して、各板状架橋部221〜224を周期的に変形させれば、重錘体210に周期的な運動を生じさせることができる。
たとえば、図20に示す駆動用圧電素子E(X11),E(X31),E(X13),E(X33)の上下両電極間に第1の極性をもった電圧を印加して、各圧電素子を縮む方向に変形させるとともに、駆動用圧電素子E(X12),E(X32),E(X14),E(X34)の上下両電極間に第2の極性をもった電圧を印加して、各圧電素子を伸びる方向に変形させれば、図7の基本モデルに示すような変形態様が得られることになり、重錘体210の重心GはX軸正方向に移動する。また、各駆動用圧電素子に対する印加電圧の極性を逆にすれば、図8の基本モデルに示すような変形態様が得られることになり、重錘体210の重心GはX軸負方向に移動する。
結局、図22に示すような交流の駆動信号S1,S2(互いに逆位相の一対の正弦波信号)を用意し、各駆動用圧電素子の下方電極LEを接地レベルに保ち、図20に示す駆動用圧電素子E(X11),E(X31),E(X13),E(X33)の各上方電極UEには駆動信号S1を供給し、駆動用圧電素子E(X12),E(X32),E(X14),E(X34)の各上方電極UEには駆動信号S2を供給すれば、重錘体210の重心GをX軸方向に単振動させることができる。
同様に、重錘体210の重心GをY軸方向に単振動させるのであれば、各駆動用圧電素子の下方電極LEを接地レベルに保ち、図20に示す駆動用圧電素子E(Y11),E(Y31),E(Y13),E(Y33)の各上方電極UEには駆動信号S1を供給し、駆動用圧電素子E(Y12),E(Y32),E(Y14),E(Y34)の各上方電極UEには駆動信号S2を供給すればよい。
また、重錘体210の重心GをZ軸方向に単振動させるのであれば、図9に示す変形態様と図10に示す変形態様とが交互に繰り返されるようにすればよい。したがって、各駆動用圧電素子の下方電極LEを接地レベルに保ち、これら各圧電素子のうち、外側部分に配置されている駆動用圧電素子E(X11),E(X31),E(X14),E(X34),E(Y11),E(Y31),E(Y14),E(Y34)の各上方電極UEには駆動信号S1を供給し、内側部分に配置されている駆動用圧電素子E(X12),E(X32),E(X13),E(X33),E(Y12),E(Y32),E(Y13),E(Y33)の各上方電極UEには駆動信号S2を供給すればよい。
このように、特定の駆動用圧電素子Eに対して、図22に示す2通りの駆動信号S1,S2を選択的に供給することにより、重錘体210の重心Gを、X軸、Y軸もしくはZ軸方向に単振動させることができる。また、図23に示すような4通りの駆動信号SS1〜SS4(位相がπ/2ずつずれた正弦波信号)を用意すれば、重錘体210の重心Gを円運動させることも可能である。
たとえば、重心Gを、図20に示されているX・Y2平面(図5の基本モデルにおけるXY平面)に平行な平面内で円運動させるのであれば、各駆動用圧電素子の下方電極LEを接地レベルに保ち、図20に示す駆動用圧電素子E(X11),E(X31),E(X13),E(X33)の各上方電極UEには駆動信号SS1を供給し、駆動用圧電素子E(Y11),E(Y31),E(Y13),E(Y33)の各上方電極UEには駆動信号SS2を供給し、駆動用圧電素子E(X12),E(X32),E(X14),E(X34)の各上方電極UEには駆動信号SS3を供給し、駆動用圧電素子E(Y12),E(Y32),E(Y14),E(Y34)の各上方電極UEには駆動信号SS4を供給すればよい。
同様に、各駆動用圧電素子Eに供給する駆動信号を適宜選択すれば、重心Gを、X・Z2平面(図5の基本モデルにおけるXZ平面)内やY2・Z2平面(図5の基本モデルにおけるYZ平面)内で円運動させることも可能である。
なお、上述の説明では、各駆動用圧電素子Eの下方電極LEを共通の接地レベルに保ち、個々の上方電極UEに個別の駆動信号を供給する例を述べたが、逆に、各駆動用圧電素子Eの上方電極UEを共通の接地レベルに保ち、個々の下方電極ULに個別の駆動信号を供給するようにしてもかまわない。
また、ここに示す実施例では、合計16組の駆動用圧電素子Eを用いているが、理論的には、これら16組の駆動用圧電素子Eのすべてが必要なわけではなく、たとえば、内側部分に位置する8組のみ、あるいは、外側部分に位置する8組のみを用いても、重錘体210の駆動は可能である。ただ、実用上は、重錘体210を効率的にかつ安定して駆動させるには、図示の例のように、合計16組の駆動用圧電素子Eを設けるのが好ましい。
一方、各検出用圧電素子Dを利用すれば、重錘体210に作用した各軸方向の力を検出することができる。図24は、このような力の検出を行うための回路の一例を示す回路図である。図24(a) は作用した力のX軸方向成分の検出を行う回路、図24(b) は作用した力のY1軸(図5の基本モデルにおけるY軸)方向成分の検出を行う回路、図24(c) は作用した力のZ2軸(図5の基本モデルにおけるZ軸)方向成分の検出を行う回路である。この回路では、各検出用圧電素子Dの下方電極LEを共通の接地レベルに保ち、個々の上方電極UEに生じる電圧値に基づくアナログ演算の結果を端子Tx,Ty,Tzに出力するようにしている。
図24(a) に示す回路は、図20に示すX軸上の検出用圧電素子Dについての演算回路であり、検出用圧電素子D(X21)の上方電極D(X21)Uの電圧値と検出用圧電素子D(X23)の上方電極D(X23)Uの電圧値との和を求める演算器61と、検出用圧電素子D(X22)の上方電極D(X22)Uの電圧値と検出用圧電素子D(X24)の上方電極D(X24)Uの電圧値との和を求める演算器62と、演算器61と演算器62の出力の差を求める演算器63と、によって構成されている。
前述した基本モデルの場合、重錘体10に対してX軸正方向の力+Fxが作用すると、板状架橋部21,23の上面には、図7に示すような伸縮が生じる。また、X軸負方向の力−Fxが作用すると、板状架橋部21,23の上面には、図8に示すような伸縮が生じる。いずれの場合も、第1グループに属する検出用圧電素子D(X21)の伸縮状態と検出用圧電素子D(X23)の伸縮状態とは同じになる。また、第2グループに属する検出用圧電素子D(X22)の伸縮状態と検出用圧電素子D(X24)の伸縮状態とは同じになる。したがって、演算器61の出力値は、第1グループに属する素子の伸縮状態を示す値になり、演算器62の出力値は、第2グループに属する素子の伸縮状態を示す値になる。一方、第1グループに属する各素子の伸縮状態と第2グループに属する各素子の伸縮状態とは正反対になるので、演算器63では、演算器61の出力値と演算器62の出力値との差を求め、端子Txに出力している。結局、端子Txに出力される電圧値は、重錘体10に対して作用した力のX軸方向成分を示すものになる。
また、図24(b) に示す回路は、図20に示すY2軸上の検出用圧電素子Dについての演算回路であり、検出用圧電素子D(Y21)の上方電極D(Y21)Uの電圧値と検出用圧電素子D(Y23)の上方電極D(Y23)Uの電圧値との和を求める演算器64と、検出用圧電素子D(Y22)の上方電極D(Y22)Uの電圧値と検出用圧電素子D(Y24)の上方電極D(Y24)Uの電圧値との和を求める演算器65と、演算器64と演算器65の出力の差を求める演算器66と、によって構成されている。このような回路構成によれば、端子Tyに出力される電圧値は、重錘体10に対して作用した力のY軸方向成分を示すものになる。
一方、図24(c) に示す回路は、図20に示すX軸上およびY2軸上の検出用圧電素子Dについての演算回路であり、内側部分に配置された各検出用圧電素子Dの上方電極D(X22)U,D(X23)U,D(Y22)U,D(Y23)Uの電圧値の総和を求める演算器67と、外側部分に配置された各検出用圧電素子Dの上方電極D(X21)U,D(X24)U,D(Y21)U,D(Y24)Uの電圧値の総和を求める演算器68と、演算器67と演算器68の出力の差を求める演算器69と、によって構成されている。
前述した基本モデルの場合、重錘体10に対してZ軸正方向の力+Fzが作用すると、板状架橋部21,23の上面には、図9に示すような伸縮が生じる。また、Z軸負方向の力−Fzが作用すると、板状架橋部21,23の上面には、図10に示すような伸縮が生じる。いずれの場合も、内側部分に配置された検出用圧電素子Dの伸縮状態は相互に同じになり、外側部分に配置された検出用圧電素子Dの伸縮状態も相互に同じになる。したがって、演算器67の出力値は、内側部分に配置された素子の伸縮状態を示す値になり、演算器68の出力値は、外側部分に配置された素子の伸縮状態を示す値になる。一方、内側部分に配置された各素子の伸縮状態と外側部分に配置された各素子の伸縮状態とは正反対になるので、演算器69では、演算器67の出力値と演算器68の出力値との差を求め、端子Tzに出力している。結局、端子Tzに出力される電圧値は、重錘体10に対して作用した力のZ軸方向成分を示すものになる。
ところで、ある物体が三次元直交座標系内の第1の座標軸方向に速度Vで運動している状態において、この物体に第2の座標軸まわりの角速度ωが作用すると、この物体には第3の座標軸方向にコリオリ力Fcが作用することになり、角速度ωは、Fc/Vに比例した値になる。ここに示す角速度検出部200は、この原理を利用して、所望の座標軸まわりの角速度を検出する機能を有している。
たとえば、前述した方法で、重錘体210をX軸方向に単振動させ、その状態において、前述した方法で、重錘体210に作用したY2軸方向の力(コリオリ力)Fcを検出すれば、当該検出値に基づいて、重錘体210に作用したZ2軸まわりの角速度ωzを求めることができる。この場合、たとえば「重錘体210が単振動の中心位置を通過する瞬間のタイミングで、力Fcの検出を行う」というように定めておけば、重錘体210のX軸方向に関する速度Vは常に一定(単振動の最大速度)になるので、力Fcの検出値をそのまま角速度ωzに比例する量として取り扱うことができる。
同様に、重錘体210をX軸方向に単振動させた状態で、Z2軸方向に作用するコリオリ力Fcを検出すれば、Y2軸まわりの角速度ωyの検出が可能である。あるいは、重錘体210をY2軸方向に単振動させた状態で、Z2軸方向に作用するコリオリ力Fcを検出すれば、X軸まわりの角速度ωxの検出が可能である。要するに、この第1の実施形態に係るセンサの角速度検出部200は、重錘体210をX軸,Y2軸,Z2軸の所望の方向に運動させることができ、その状態において、重錘体210に作用したX軸,Y2軸,Z2軸方向のコリオリ力を検出することができるので、駆動軸および検出軸を適宜組み合わせることにより、X軸,Y2軸,Z2軸まわりの角速度の検出が可能になる。
なお、この3軸まわりの角速度検出を所定周期で連続的に行うためには、重錘体210に円運動をさせるのが好ましい。たとえば、前述したとおり、図23に示すような4通りの駆動信号SS1〜SS4(位相がπ/2ずつずれた正弦波信号)を用いれば、重錘体210をX・Y2平面(図5の基本モデルにおけるXY平面)に平行な平面内で円運動させることができる。このような円運動において、重錘体210がX・Z2平面を通過する瞬間に着目すると、重錘体210はY2軸方向に運動していることになるので、この瞬間にX軸方向に作用したコリオリ力を検出すれば、Z2軸まわりの角速度を求めることができ、この瞬間にZ2軸方向に作用したコリオリ力を検出すれば、X軸まわりの角速度を求めることができる。同様に、このような円運動において、重錘体210がY2・Z2平面を通過する瞬間に着目すると、重錘体210はX軸方向に運動していることになるので、この瞬間にZ2軸方向に作用したコリオリ力を検出すれば、Y2軸まわりの角速度を求めることができ、この瞬間にY2軸方向に作用したコリオリ力を検出すれば、Z2軸まわりの角速度を求めることができる。
<<< §5.第1の実施形態に係るセンサの特徴 >>>
これまで、図1および図2に示す構造をもった第1の実施形態に係るセンサについて、その基本構造、変形態様、加速度検出原理、角速度検出原理を順に述べた。ここでは、このセンサの個々の特徴を述べておく。
本考案に係るセンサの最も重要な特徴は、加速度の検出をピエゾ抵抗素子によって行い、角速度の検出を圧電素子によって行う点である。第1の実施形態に係るセンサの場合、加速度の検出は、加速度検出部100内の重錘体110の変位をピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化として検出することによって行われる。ここで、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化は静的な物理現象であり、たとえば、図7に示すように、常に一定の力+Fxが作用し続け、可撓性連結部が常に一定の変形状態を維持していたとしても、可撓性連結部に形成されたピエゾ抵抗素子の電気抵抗は、当該変形状態に依存した一定の値に維持される。したがって、重力加速度のように定常的な加速度が作用している状態でも検出することができる。
このように、ピエゾ抵抗素子は、静的な状態検出が可能になるというメリットを有しているが、駆動素子として用いることはできない。角速度の検出を行うには、前述したとおり、重錘体を所定方向に運動させる必要があり、駆動素子が必要になる。そこで、角速度検出部200内では、圧電素子が採用されている。圧電素子は、可撓性連結部の変形に応じて電圧を発生させる検出素子としての機能を果たすことができるとともに、駆動信号を供給することにより変位を生じる駆動素子としての機能も果たすことができる。
ただし、圧電素子は、ピエゾ抵抗素子のように、静的な変形状態の検出を行うことはできず、その検出素子としての機能は、動的な過渡現象の検出に限定されることになる。たとえば、力+Fxの作用により、重錘体10が図7に示すようにX軸正方向に移動した場合、可撓性連結部の上面に固着されている圧電素子には、その過渡的な変形によって一時的に電荷が発生するが、重錘体10が図7に示す位置で静止し、可撓性連結部が図示の変形状態を維持していると、圧電素子内で電荷は発生しなくなる。
このように、圧電素子の検出機能は動的な変形状態の検出に限定されることになるが、角速度の検出を行う際には、そのような限定的な検出機能だけで十分である。前述したとおり、角速度検出部200内の重錘体210は、単振動や円運動を行うように駆動させられるが、これらの運動は重錘体210の速度Vの大きさもしくは方向が時間的に変化する運動である。したがって、重錘体210に作用するコリオリ力Fcの大きさや方向も時間的に変化することになり、結局、検出対象となるコリオリ力Fcは、静的な量として検出されるわけではなく、動的な過渡現象として検出されることになる。したがって、角速度検出部200内の検出素子としては、圧電素子を用いても何ら問題はない。
本考案において、加速度の検出をピエゾ抵抗素子によって行い、角速度の検出を圧電素子によって行っているのは、このような事情を考慮したためである。また、ピエゾ抵抗素子および圧電素子は、可撓性連結部の上面に形成することができるので、配線が簡素化されるというメリットも得られる。たとえば、検出素子や駆動素子として容量素子を用いた場合、容量素子を構成する一対の電極のうちの一方は、重錘体側に設ける必要があり、個々の電極に対する配線は複雑にならざるを得ない。また、容量素子を用いる場合、微小な電極間距離の変化に基づく検出が必要になるため、実用上は、重錘体の運動が空気によって妨げられないように内部を真空に維持する必要がある。検出素子として、ピエゾ抵抗素子や圧電素子を用いた場合、内部を真空に維持する必要はなくなり、構造を単純化することができる。
第1の実施形態に係るセンサのもう一つの特徴は、加速度検出部100と角速度検出部200の機械的な構成要素として、重錘体と、これを取り囲む台座と、両者を連結する可撓性連結部という構成からなる主構造体を採用し、加速度検出部100側の台座130と角速度検出部200側の台座230とが一体構造をなすようにした点である。
図1の上面図および図2の側断面図を見ればわかるとおり、加速度検出部100側の物理的な構造体と角速度検出部200側の物理的な構造体には、同一の形状をもった構造体が採用されており、両者は一体構造をなしている。これは、加速度検出部100側の物理的な構造体と角速度検出部200側の物理的な構造体とを、共通した製造プロセスで作製できることを意味しており、製造プロセスを簡略化する上で効果的である。
実用上は、1枚のシリコン基板を用いて、加速度検出部100側の物理的な構造体と角速度検出部200側の物理的な構造体とを作製するのが好ましい。すなわち、図2に示す加速度検出用重錘体110、加速度検出用可撓性連結部(板状架橋部)121〜124、加速度検出用台座130、角速度検出用重錘体210、角速度検出用可撓性連結部(板状架橋部)221〜224、角速度検出用台座230は、いずれも1枚のシリコン基板によって構成されることになる。
この実施例の場合、1枚のシリコン基板の下面側に一対の方環状溝G1,G2(図4参照)が形成されており、第1の方環状溝G1で囲まれた部分により加速度検出用重錘体110が構成され、第2の方環状溝G2で囲まれた部分により角速度検出用重錘体210が構成されている。そして、図2に示すとおり、第1の方環状溝G1の形成により肉厚が薄くなった部分によって加速度検出用可撓性連結部(板状架橋部)121〜124が構成され、第2の方環状溝G2の形成により肉厚が薄くなった部分によって角速度検出用可撓性連結部(板状架橋部)221〜224が構成されている。
また、加速度検出用可撓性連結部は、4本の板状架橋部121〜124によって構成されており、個々の板状架橋部121〜124の加速度検出用重錘体110に近い内側部分と加速度検出用台座130に近い外側部分との双方にピエゾ抵抗素子が配置され、角速度検出用可撓性連結部は、4本の板状架橋部221〜224によって構成されており、個々の板状架橋部221〜224の角速度検出用重錘体210に近い内側部分と角速度検出用台座230に近い外側部分との双方に駆動用圧電素子Eおよび検出用圧電素子Dが配置されている。
このように、各板状架橋部の内側部分と外側部分との双方に各素子を配置するのは、重錘体が変位すると、これらの各部分(特に、内側部分の重錘体に対する付け根部分と、外側部分の台座に対する付け根部分)に、変形による応力の集中が見られるためである。これらの部分に各素子を配置することにより、重錘体の効率的な駆動や、撓みの効率的な検出が可能になる。
なお、加速度検出部100に形成される各ピエゾ抵抗素子Pは、図18に示すとおり、加速度検出用可撓性連結部120の上面側の表層部分に埋め込まれており、前述したとおり、シリコン基板の表層部分に形成された不純物含有層(たとえば、P型不純物の拡散層)によって構成されている。
一方、角速度検出部200に形成される各圧電素子Fは、その役割上、駆動用圧電素子Eと検出用圧電素子Dとに分類され、角速度検出用可撓性連結部220の上面に直接もしくは間接的に固着されている。図21に示す例では、各圧電素子Fの下面には下方電極LE、上面には上方電極UEがそれぞれ形成されており、これら各圧電素子Fの下方電極LEの下面が角速度検出用可撓性連結部220の上面に固着されている。角速度検出部200用の角速度検出回路は、駆動用圧電素子Eの上方電極UEと下方電極LEとの間に交流電圧を印加して角速度検出用重錘体210に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子Dの上方電極UEと下方電極LEとの間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うことになる。
<<< §6.第2の実施形態に係るセンサ >>>
続いて、本考案の第2の実施形態に係るセンサを説明する。この第2の実施形態に係るセンサは、図1および図2に示した第1の実施形態に係るセンサにおける加速度検出部100と角速度検出部200とを単一の主構造体上に統合したものと言うことができる。図1の上面図および図2の側断面図を見ればわかるとおり、加速度検出部100側の物理的な構造体と角速度検出部200側の物理的な構造体は、実質的に同一であり、いずれも図5および図6に示す基本モデルと等価である。両者の相違は、加速度検出部100にはピエゾ抵抗素子Pが形成されているのに対し、角速度検出部200には圧電素子Fが形成されている点である。ここで述べる第2の実施形態に係るセンサは、図5および図6に示す基本モデルからなる主構造体上に、ピエゾ抵抗素子Pと圧電素子Fとの双方を形成したものである。
図25は、この第2の実施形態に係るセンサの上面図である。図示のとおり、このセンサの主構造体は、図5に示す基本モデルと同等であり、四角柱状の重錘体310と、4本の板状架橋部321〜324と、台座330と、によって構成されている。台座330は、重錘体310の周囲を取り囲むように配置された正方形の輪郭をなす部分であり、4本の板状架橋部321〜324は、これら両者を連結する可撓性連結部として機能する。
図26は、図25に示すセンサの側断面図である。ここでも、説明の便宜上、図25に示すように、重錘体310の上面中心位置に原点Oを定義し、XYZ三次元座標系を定義する。X軸は図25における右方向を向いた座標軸、Y軸は図25における上方向を向いた座標軸、Z軸は図26における上方向を向いた座標軸になる。図26は、図25のセンサをX軸に沿った位置で切断した側断面図に相当する。また、図25に示すように、XY平面上のX軸の両脇には、X軸に対して所定間隔dxを保ちながら、X軸に対して平行に伸びるXa軸およびXb軸を定義し、XY平面上のY軸の両脇には、Y軸に対して所定間隔dyを保ちながら、Y軸に対して平行に伸びるYa軸およびYb軸を定義する。
図27は、図26に示すセンサを切断線27−27の位置で切断した上断面図であり、図28は、図26に示すセンサを切断線28−28の位置で切断した上断面図である。図28に示されているとおり、重錘体310は断面が正方形をなす四角柱であり、その周囲には方環状溝G3が形成されている。台座330は、この方環状溝G3を隔てて、重錘体310を四方から取り囲む壁状の構造体である。
第1の実施形態と同様に、このセンサの主構造体(重錘体310、板状架橋部321〜324、台座330)は、実際には、1枚の基板(たとえば、シリコン基板)を加工することによって構成することができる。すなわち、図26の側断面図に示されているとおり、1枚の基板の下面側から所定の深さの方環状溝G3を堀って重錘体310を形成し、この重錘体310の底部を若干量だけ除去して底上げした後、図27の上断面図に示されているとおり、この基板の上層部分に開口部W1〜W4を形成すれば、図示のとおりの主構造体を得ることができる。
図26に示すとおり、台座330の底面は、装置筐体400に固定されているが、重錘体310の床部は底上げされているため、重錘体310は装置筐体400に対して所定間隔を維持しながら宙吊りの状態になっている。なお、ここでは、図示の便宜上、装置筐体400の一部分(台座330が固定された底部)のみが示されているが、実際には、装置筐体400は、このセンサの主構造体の全体を包み込む構造になっており、図26の左欄外、右欄外、上欄外には、装置筐体400の壁面が配置されている。
板状架橋部321〜324は、肉厚が薄い部分によって構成されるため、可撓性連結部として機能する。また、重錘体310は、これら板状架橋部321〜324によって四方から支持されているため、重錘体310に対して加速度に基づく力やコリオリ力が加わると、板状架橋部321〜324が撓みを生じ、重錘体310が台座330に対して変位することになる。
図25の上面図に示すとおり、板状架橋部321〜324には、複数のピエゾ抵抗素子Pおよび複数の圧電素子D,Eが形成されている。ピエゾ抵抗素子Pは、第1の実施形態に係るセンサの加速度検出部100上に形成されていた12組の素子(図17参照)と同等の構造および同等の機能を有するものであり、圧電素子D,Eは、第1の実施形態に係るセンサの角速度検出部200上に形成されていた24組の素子(図20参照)と同等の構造および同等の機能を有するものである。
図26に示されているとおり、ピエゾ抵抗素子Pは、板状架橋部321〜324(可撓性連結部)の表層部分に埋め込まれており、圧電素子D,Eは、板状架橋部321〜324の上面に固着されている(実際には、圧電素子D,Eには、上方電極UEおよび下方電極LEが形成されているが、図26では図示を省略している)。ピエゾ抵抗素子Pの具体的な構成は、第1の実施形態と同様である(図18参照)。また、圧電素子D,Eは、実際には同一の構成をもった圧電素子Fによって構成されており、その用途により、検出用圧電素子Dと駆動用圧電素子Eと呼んでいるだけである。この圧電素子Fの具体的な構成も、第1の実施形態と同様である(図21参照)。
このように、ピエゾ抵抗素子Pは、可撓性連結部の表層部分に埋め込まれており、圧電素子E,Dは、可撓性連結部の上面に固着されるため、両者は、同一領域に重ねて形成することが可能である。図25には、両者が必要に応じて同一領域に重ねて形成されている状態が描かれている。第1の実施形態に係るセンサの場合、図17に示すように合計12組のピエゾ抵抗素子Pを設けるとともに、図20に示すように合計24組の圧電素子D,Eを設けていた。したがって、この第2の実施形態に係るセンサの場合、図25に示すように、12箇所の領域については、ピエゾ抵抗素子と圧電素子とが重畳して形成されているが、残りの12箇所の領域については、圧電素子のみが単独で形成されている。
なお、圧電素子E,Dの上下両面には電極が形成され、ピエゾ抵抗素子Pと圧電素子E,Dとの間には絶縁層が形成されているが、この電極や絶縁層は、図26では図示が省略されている。ピエゾ抵抗素子Pや圧電素子E,Dの具体的な構成例は§7で述べる。
図29は、図25に示すセンサの板状架橋部321の拡大上面図であり、図30は、図25に示すセンサの板状架橋部323の拡大上面図であり、図31は、図25に示すセンサの板状架橋部322の拡大上面図であり、図32は、図25に示すセンサの板状架橋部324の拡大上面図である。第1の実施形態と同様に、各ピエゾ抵抗素子の符号は、「P(領域記号)」の形式で示し、各検出用圧電素子の符号は、「D(領域記号)」の形式で示し、各駆動用圧電素子の符号は、「E(領域記号)」の形式で示してある。ここで「領域記号」は、図5に示す基本モデルにおける各領域X11〜X34,Y11〜Y34の記号である。
結局、ここに示すセンサでは、可撓性連結部の正のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子(D(X22),D(X21))が配置され、負のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子(D(X23)とD(X24))が配置され、可撓性連結部の正のXa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(X12),E(X11))が配置され、負のXa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(X13),E(X14))が配置され、可撓性連結部の正のXb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(X32),E(X31))が配置され、負のXb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(X33),E(X34))が配置され、可撓性連結部の正のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子(D(Y22),D(Y21))が配置され、負のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子(D(Y23)とD(Y24))が配置され、可撓性連結部の正のYa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(Y12),E(Y11))が配置され、負のYa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(Y13),E(Y14))が配置され、可撓性連結部の正のYb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(Y32),E(Y31))が配置され、負のYb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子(E(Y33),E(Y34))が配置され、可撓性連結部の正のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子(P(X22),P(X21))が配置され、負のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子(P(X23),P(X24))が配置され、可撓性連結部の正のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子(P(Y22),P(Y21))が配置され、負のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子(P(Y23),P(Y24))が配置され、可撓性連結部の正のW軸(この例では、Xa軸をW軸にとっているが、Xa軸,Xb軸,Ya軸,Yb軸のいずれか1つをW軸(補助軸W)と定義すればよい)上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子(P(X12),P(X11))が配置され、負のW軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子(P(X13),P(X14))が配置されている。
この第2の実施形態に係るセンサにおいて、各ピエゾ抵抗素子Pを用いた加速度の検出原理は、§3で述べた第1の実施形態に係るセンサにおける加速度検出原理と全く同じであり、§3で述べた加速度検出回路による加速度検出が可能である。また、この第2の実施形態に係るセンサにおいて、各圧電素子D,Eを用いた角速度の検出原理は、§4で述べた第1の実施形態に係るセンサにおける角速度検出原理と全く同じであり、§4で述べた角速度検出回路による角速度検出が可能である。したがって、ここでは、これらの基本的な検出原理や検出回路についての説明は省略する。ただ、同一の重錘体310を用いて加速度検出と角速度検出とが行われるため、加速度検出と角速度検出の干渉を防ぐ工夫が必要になる。このような工夫については、§10で詳述する。
<<< §7.ピエゾ抵抗素子および圧電素子の具体的な構成例 >>>
ここでは、ピエゾ抵抗素子および圧電素子の具体的な構成例、特に、§6で述べた第2の実施形態に利用するのに適した構成例を述べておく。
図33は、図25に示すセンサの可撓性連結部320(板状架橋部321〜324)上におけるピエゾ抵抗素子および圧電素子の重畳形成部の拡大側断面図である。この例では、可撓性連結部320は、N型シリコン基板によって構成されており、ピエゾ抵抗素子Pは、このN型シリコン基板の表層部分に形成されたP型不純物含有層からなる。この可撓性連結部320の上面には、絶縁層511,512,513(たとえば、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜)が形成されている。絶縁層511の上部に形成されている配線層521および絶縁層512の上部に形成されている配線層522は、ピエゾ抵抗素子Pの両端部に対する配線を行うための層(たとえば、アルミニウム層)であり、端子T1,T2への配線の用に供される。
絶縁層513の上面に形成されている共通金属層LEは、すべての圧電素子Fについて共通して用いられる下方電極として機能し、この共通金属層LEの上面の所定箇所に、個別の圧電素子F(たとえば、PZT)が形成され、更にその上面に個別の上方電極UEが形成される。このように、圧電素子Fおよび上方電極UEは、図5に示されている合計24箇所の各領域X11〜X34,Y11〜Y34にそれぞれ個別に配置されることになるが、下方電極LEは、個々の圧電素子Fごとに個別のものを形成する代わりに、1枚の共通金属層LEによって代用している。
このような構成を採ると、§4の角速度検出の原理で述べたように、すべての下方電極LEを共通の接地電位に接続して検出を行うような場合に、配線を省略することができるので便利である。図33の例では、共通金属層の端子Lを接地電位に接続すれば、すべての下方電極LEに対する配線が完了する。要するに、複数の圧電素子の下方電極を物理的に単一の共通金属層LEによって構成することにより、配線を単純化するメリットが得られることになる。もちろん、共通金属層LEを用いずに、個々の圧電素子Fの下部の領域のみに、それぞれ個別の金属層を形成するようにしてもよい。
一方、図34は、図25に示すセンサの可撓性連結部320(板状架橋部321〜324)上における圧電素子のみを形成する部分の拡大側断面図である。可撓性連結部320の上面には、絶縁層513(たとえば、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜)が形成されており、その上の層構成は、図33に示すものと全く同一である。別言すれば、図33に示す絶縁層511,512,513と図34に示す絶縁層513とは、実質的には同一の層であり、図33に示す配線層521,522は、この同一の絶縁層内に埋め込まれた配線である。また、図33に示す共通金属層LEと図34に示す共通金属層LEも実質的には同一の層である。結局、図25に示す主構造体の上面全面(図27にハッチングを施して示す領域全面に相当)には、絶縁層513が形成され、更にその上面全面には、共通金属層LEが形成されることになる。
こうして、一部の領域においては、図33に示すように、ピエゾ抵抗素子と圧電素子とが、絶縁層を挟んで積層状態となるように形成されるが、別な一部の領域においては、図34に示すように、圧電素子のみが絶縁層の上に形成されることになる。
下方電極として機能する共通金属層LEや個別の上方電極UEの材質は、電極として機能することが可能な導電性材料であれば、どのような材質のものを用いてもかまわない。一般的には、アルミニウムなどの金属を用いればよい。ただ、ここで示す実施例では、共通金属層LEとして、下層がチタン、上層が白金からなる2層膜を用いている。これは、共通金属層LEの下方に位置する絶縁層513を酸化シリコン膜や窒化シリコン膜で構成し、共通金属層LEの上方に位置する圧電素子FをPZTで構成した場合に、界面の適合性を向上させるための配慮である。すなわち、共通金属層LEの下層をチタンにしておくと、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜からなる絶縁層513に対する接合性に優れ、共通金属層LEの上層を白金にしておくと、PZTからなる圧電素子Fに対する接合性に優れるというメリットが得られる。
なお、個々の下方電極LEを単一の共通金属層LEによって代用することができるのと同様に、個々の圧電素子Fを単一の共通圧電素子Fによって代用することもできる。図35および図36は、このように複数の圧電素子Fを、物理的に単一の共通圧電素子Fによって構成した例を示す拡大側断面図である。図35は、ピエゾ抵抗素子Pと圧電素子Fとの双方を配置する必要がある領域についての図であり、図36は、圧電素子Fのみを配置すれば足りる領域についての図である。図33,図34に示す例では、個々の領域に個別の圧電素子Fが形成されていたのに対し、図35,図36に示す例では、単一の共通圧電素子Fが、図25に示す主構造体の上面全面(図27にハッチングを施して示す領域全面に相当)に形成されている。このように、単一の共通圧電素子Fを形成したとしても、上方電極UEがそれぞれ個別に形成されていれば、単一の共通圧電素子Fの個々の部分がそれぞれ独立した圧電素子Fとしてのふるまいをするため、センサの動作には、何ら支障は生じない。
なお、上述した実施例では、N型シリコン基板の表層部分に形成されたP型不純物含有層によりピエゾ抵抗素子を構成していたが、P型シリコン基板の表層部分に形成されたN型不純物含有層によりピエゾ抵抗素子を構成することも可能である。あるいは、N型シリコン基板の代わりに、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いてもよい。
図37は、図2に示す第1の実施形態に係るセンサをSOI基板を利用して構成した例を示す側断面図である。すなわち、この例では、N型シリコンからなる上層L1、酸化シリコンの絶縁膜からなる中層L2、ベースとなるN型もしくはP型のシリコンからなる下層L3の3層構造を有するSOI基板が用いられている。このSOI基板の中層L2および下層L3の部分に環状溝G1を掘ることによって、重錘体110と台座130とが分離されており、環状溝G2を掘ることによって、重錘体210と台座230とが分離されている。その結果、可撓性連結部(板状架橋部121〜124,221〜224)は上層L1の部分のみによって構成されている。ピエゾ抵抗素子Pが、上層L1の表層部分に形成されたP型不純物含有層により構成されている点は、これまでの実施例と同様である。なお、圧電素子D,E用の電極は、図示が省略されている。
一方、図38は、図26に示す第2の実施形態に係るセンサをSOI基板を利用して構成した例を示す側断面図である。このセンサも、N型シリコンからなる上層L1、酸化シリコンの絶縁膜からなる中層L2、ベースとなるN型もしくはP型のシリコンからなる下層L3の3層構造を有するSOI基板を用いて構成されている。すなわち、このSOI基板の中層L2および下層L3の部分に環状溝G3を掘ることによって、重錘体310と台座330とが分離されており、可撓性連結部(板状架橋部321〜324)は上層L1の部分のみによって構成されている。ピエゾ抵抗素子Pが、上層L1の表層部分に形成されたP型不純物含有層により構成されている点は、これまでの実施例と同様である。なお、圧電素子E,Dの上下両面には電極が形成され、ピエゾ抵抗素子Pと圧電素子D,Eとの間には絶縁層が形成されているが、この電極や絶縁層は、図38では図示が省略されている。
図37や図38に示す例のように、SOI基板を用いる第1のメリットは、上層L1と下層L3とが、絶縁層からなる中層L2によって分離されるため、各素子の電気的な挙動を安定させることができるようになる点である。ピエゾ抵抗素子Pを、N型シリコンの領域に形成されたP型不純物含有層によって構成した場合、その境界面にはPN接合による電位障壁が形成されるため、一応、電気的に独立した素子形成が可能になる。しかしながら、実用上は、PN接合を通したリーク電流が避けられず、このリーク電流が台座を通って装置筐体400側へ流れると、正しい検出を行うことができない。SOI基板を用いると、図37や図38に示すように、ピエゾ抵抗素子Pが形成されている上層L1と、装置筐体400に接合されている下層L3とが、絶縁層からなる中層L2によって電気的に分離されるため、上述したリーク電流による悪影響を防ぐことができる。
SOI基板を用いる第2のメリットは、可撓性連結部(板状架橋部)を加工する際に、その厚みの制御を容易に行うことができる点である。上層L1を構成するN型シリコンと、中層L2を構成する酸化シリコンとは、エッチング特性が異なる。したがって、SOI基板の下面側から、環状溝G1,G2,G3を掘る場合、下層L3に対するエッチングを行い、続いて、中層L2に対するエッチングを行うようにすれば、上層L1に対するエッチングが全く行われない状態で、溝形成のためのエッチングプロセスをストップすることができる。別言すれば、可撓性連結部(板状架橋部)の厚みは、必ず上層L1の厚みになるので、細かなエッチング制御を行うことなしに、設計どおりの正確な厚みをもった主構造体を形成することができる。
<<< §8.可撓性連結部の変形例 >>>
本考案に係るセンサでは、重錘体を可撓性連結部を介して台座によって支持するようにし、重錘体に外力が作用すると、自由に変位できる構造にする必要がある。これまで述べてきた第1の実施形態および第2の実施形態に係るセンサでは、可撓性連結部を4本の板状架橋部によって構成していた。しかしながら、可撓性連結部は、可撓性を有し、重錘体と台座とを連結することができる部材であれば、必ずしも架橋構造(ビーム構造)をなす部材である必要はない。ここでは、可撓性連結部の変形例を述べておく。
図39は、図1に示すセンサの変形例を示す上面図であり、図40は、このセンサをX軸の位置で切断した側断面図である。このセンサも左半分の加速度検出部100′と右半分の角速度検出部200′とによって構成されている。加速度検出部100′の主構造体は、円柱状の加速度検出用重錘体110′と、その周囲に形成されたワッシャ状の可撓性連結部120′と、その周囲に形成された加速度検出用台座130′である。同様に、角速度検出部200′の主構造体は、円柱状の角速度検出用重錘体210′と、その周囲に形成されたワッシャ状の可撓性連結部220′と、その周囲に形成された角速度検出用台座230′である。
図40において、重錘体110′,210′は、いずれも円柱状をしており、その周囲には円環状溝G1′,G2′が形成されている。台座130′,230′は、この円環状溝G1′,G2′を隔てて、重錘体110′,210′を周囲から取り囲む構造体である。台座130′,230′は、実際には一体構造をなし、一塊の部材によって構成されており、その底部は装置筐体400に固着されている。
可撓性連結部120′および220′は、肉厚が薄いワッシャ状の部材(いわゆる、ダイアフラム)によって構成されており、可撓性を有している。重錘体110′に対して加速度に基づく力が加わると、可撓性連結部120′に撓みが生じ、重錘体110′が台座130′に対して変位する。同様に、可撓性連結部220′に撓みを生じさせることにより、重錘体210′を振動させることができ、また、この振動状態において、重錘体210′に対して角速度に基づくコリオリ力が加わると、可撓性連結部220′には当該コリオリ力に基づく撓みが生じ、重錘体210′が台座230′に対して当該コリオリ力に基づく変位を生じることになる。
可撓性連結部120′の上面表層部分には、12組のピエゾ抵抗素子Pが形成されており、可撓性連結部220′の上面には、24組の圧電素子D,Eが形成されている。これら各素子の構成および配置は、図1に示すセンサと全く同様であり、また、これら各素子を用いて加速度および角速度を検出する原理も、図1に示すセンサと全く同様である。図1に示すセンサでは、可撓性連結部を4本の板状架橋部によって構成していたため、主構造体の上面には、開口部W11〜W24が形成されていたが、図39に示すセンサでは、可撓性連結部がワッシャ状の部分によって構成されるため、開口部は一切設けられていない。したがって、必要なら、円環状溝G1′,G2′の部分を真空にすることができる。
なお、図1には、加速度検出部100および角速度検出部200の双方において、可撓性連結部を板状架橋部(ビーム構造)で構成した例を示し、図39には、加速度検出部100′および角速度検出部200′の双方において、可撓性連結部をワッシャ状の部材(ダイアフラム構造)で構成した例を示したが、一方の検出部にビーム構造を採用し、他方の検出部にダイアフラム構造を採用することも可能である。
図41は、図25に示すセンサの変形例を示す上面図であり、図42は、このセンサをX軸の位置で切断した側断面図である。このセンサの主構造体は、円柱状の重錘体310′と、その周囲に形成されたワッシャ状の可撓性連結部320′と、その周囲に形成された台座330′である。
図42において、重錘体310′は円柱状をしており、その周囲には円環状溝G3′が形成されている。台座330′は、この円環状溝G3′を隔てて、重錘体310′を周囲から取り囲む構造体である。台座330′の底部は装置筐体400に固着されている。
可撓性連結部320′は、肉厚が薄いワッシャ状の部材によって構成されており、可撓性を有している。したがって、重錘体310′に対して加速度に基づく力が加わると、可撓性連結部320′に撓みが生じ、重錘体310′が台座330′に対して変位する。逆に、可撓性連結部320′に撓みを生じさせることにより、重錘体310′を振動させることができ、また、この振動状態において、重錘体310′に対して角速度に基づくコリオリ力が加わると、可撓性連結部320′には当該コリオリ力に基づく撓みが生じ、重錘体310′が台座330′に対して当該コリオリ力に基づく変位を生じることになる。
可撓性連結部320′の上面表層部分には、12組のピエゾ抵抗素子Pが形成されており、その上面には、24組の圧電素子D,Eが形成されている。これら各素子の構成および配置は、図25に示すセンサと全く同様であり、その一部は、同じ領域に積層状態で形成されている(図42では、各電極層や絶縁層の図示は省略されている)。また、これら各素子を用いて加速度および角速度を検出する原理も、図25に示すセンサと全く同様である。図25に示すセンサでは、可撓性連結部を4本の板状架橋部によって構成していたため、主構造体の上面には、開口部W1〜W4が形成されていたが、図41に示すセンサでは、可撓性連結部がワッシャ状の部分によって構成されるため、開口部は一切設けられていない。したがって、必要なら、円環状溝G3′の部分を真空にすることができる。
<<< §9.第3の実施形態に係るセンサ >>>
続いて、本考案の第3の実施形態に係るセンサを述べる。これまで述べてきたセンサは、重錘体の周囲を台座で取り囲み、重錘体を可撓性連結部で周囲から支持する構造を採るため、重錘体は三次元座標系の各座標軸方向に変位可能であった。その結果、三次元の各座標軸方向の加速度や、三次元の各座標軸まわりの角速度の検出が可能であった。ここで述べる第3の実施形態に係るセンサは、一次元の加速度および一次元の角速度の検出に特化したセンサであり、その構造はより単純である。
図43は、このセンサの上面図、図44は、その側断面図である。図示のとおり、このセンサの主構造体は、重錘体610、可撓性連結部620、台座630であり、いわゆる「片持ち梁構造」を採る。台座630は、重錘体610の脇に配置され、その下部は装置筐体400に固定されている。可撓性連結部620は、重錘体610の上部と台座630の上部とを連結する板状架橋部によって構成されている。図44に示すとおり、重錘体610、可撓性連結部620、台座630の上面は共通した平面になっている。以下、この共通した平面を「センサ上面」と呼ぶ。
可撓性連結部620の上面側の表層部分には、ピエゾ抵抗素子Pが埋め込まれている。また、可撓性連結部620の上面には、駆動用圧電素子Eおよび検出用圧電素子Dが直接もしくは間接的に固着されている。ここでは、説明の便宜上、図44に示すとおり、重錘体610の重心Gの位置(何ら力が作用していない基準状態における重心位置)に原点Oをとり、図の右方にX軸、上方にZ軸をもったXYZ三次元座標系を定義する。図44は、図43に示すセンサをXZ平面に沿って切断した側断面図に相当する。また、X軸に平行で、「センサ上面」に含まれる軸Wを定義する。この軸Wは、重錘体610の上面の所定点(この例では中心点)と台座630の上面の所定点(この例では中心点)とを連結する軸になる。また、図43に示すように、このW軸の両脇の「センサ上面」に、W軸に対して所定間隔dwを保ちながら、W軸に対して平行に伸びるWa軸およびWb軸を定義する。そして、可撓性連結部620の重錘体610に近い部分(図の右端部分)を重錘体近傍部分、台座630に近い部分(図の左端部分)を台座近傍部分と呼ぶことにする。
このような定義を行うと、各素子の配置は次のとおりである。まず、可撓性連結部620のW軸上の重錘体近傍部分にはピエゾ抵抗素子P(21)が配置され、台座近傍部分にはピエゾ抵抗素子P(22)が配置されている。一方、可撓性連結部620のW軸上の重錘体近傍部分には検出用圧電素子D(21)が配置され、台座近傍部分には検出用圧電素子D(22)が配置されている。また、可撓性連結部620のWa軸上の重錘体近傍部分には駆動用圧電素子E(11)が配置され、台座近傍部分には駆動用圧電素子E(12)が配置されており、可撓性連結部620のWb軸上の重錘体近傍部分には駆動用圧電素子E(31)が配置され、台座近傍部分には駆動用圧電素子E(32)が配置されている。
図45は、図43に示すセンサの可撓性連結部620の右側部分の拡大上面図であり、図46は、その左側部分の拡大上面図である。上記各素子の配置は、これらの拡大上面図に明瞭に示されている。なお、各ピエゾ抵抗素子および各圧電素子の具体的な構成は、これまで述べてきた各実施例のものと同様でよい。駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が可撓性連結部の上面に固着されている。また、図44には、図示の便宜上、ピエゾ抵抗素子P(21),P(22)の上部に検出用圧電素子D(21),D(22)が直接形成されている図が示されているが、実際には、両者間には絶縁層が介挿されており、検出用圧電素子D(21),D(22)の上下両面にはそれぞれ電極層が形成されている。
このセンサにおいても、ピエゾ抵抗素子P(21),P(22)の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路が設けられ、駆動用圧電素子E(11),E(12),E(31),E(32)に交流信号を供給して可撓性連結部620を周期的に変形させ、重錘体610に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子D(21),D(22)に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路が設けられる。より具体的には、角速度検出回路は、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して重錘体610に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うことになる。
続いて、このセンサにおける加速度および角速度の検出原理を説明する。図47は、図44に示すセンサの重錘体610に、Z軸正方向の力+Fzが作用したときの可撓性連結部620の上面各位置における伸縮状態を示す側断面図である。図示のとおり、重錘体610は図の上方へと移動することになり、可撓性連結部620の上面各位置は、いずれも縮む状態になる。一方、図48は、図44に示すセンサの重錘体610に、Z軸負方向の力−Fzが作用したときの可撓性連結部620の上面各位置における伸縮状態を示す側断面図である。図示のとおり、重錘体610は図の下方へと移動することになり、可撓性連結部620の上面各位置は、いずれも伸びる状態になる。
したがって、ピエゾ抵抗素子P(21),P(22)の電気抵抗は、図44に示す状態のときの値を基準とすると、図47に示す状態のときにはいずれも増加(もしくは減少)し、図48に示す状態のときにはいずれも減少(もしくは増加)する。そこで、ピエゾ抵抗素子P(21),P(22)の電気抵抗の変化をモニタすれば、Z軸方向の加速度αzの検出が可能になる。もちろん、原理的には、ピエゾ抵抗素子は、いずれか一方のみを設ければ足りるが、より正確な検出を行うためには、一対のピエゾ抵抗素子P(21),P(22)を設け、両者の電気抵抗の変化分の和に基づいて、Z軸方向の加速度αzを得るのが好ましい。
一方、角速度の検出は、重錘体610をZ軸方向に単振動させた状態で行う。すなわち、4組の駆動用圧電素子E(11),E(12),E(31),E(32)の上方電極と下方電極との間に、同位相の交流信号(たとえば、正弦波電圧信号)を供給すれば、各圧電素子は同時に伸びたり縮んだりするので、図47および図48の状態が交互に繰り返されることになり、重錘体610をZ軸方向に単振動させることができる。
このような単振動を行っている状態において、図49に示すように、Y軸まわりの角速度ωyが作用した場合を考えよう。この場合、重錘体610の運動方向はZ軸方向であり、作用した角速度ωyはY軸まわりのものであるから、重錘体610には、X軸方向のコリオリ力が作用することになる。そこで、このようなX軸方向へのコリオリ力により、可撓性連結部620にどのような撓みが生じるかを考えてみる。
いま、角速度ωyに起因して生じるX軸方向へのコリオリ力+Fxが、図50に矢印で示す位置に加わると考えると、可撓性連結部620には、図の右方向へと伸ばす力が働くことになり、可撓性連結部620の各部はすべて伸びることになる。しかしながら、実際には、コリオリ力+Fxは、図50に示す位置に作用するわけではなく、重心Gの位置に作用することになる。したがって、重錘体610がZ軸方向に運動中に、角速度ωyが作用した場合の主構造体の変形状態は、図50のようになるわけではなく、むしろ図47に示すようなものになる。これは、重心Gの位置に糸をつけて右方向に引っ張る力を加えた場合を連想すれば、容易に理解できよう。
もちろん、可撓性連結部620に対しては、図50に示すように、左右に引き伸ばす力も若干加わることになるが、可撓性連結部620の上面に関しては、図47に示すような変形により、縮む方向の力の方が支配的になる。これは、可撓性連結部620が、重錘体610の上部と台座630の上部とを連結する板状架橋部の構造を採っているため、角速度ωyに起因して生じるコリオリ力が、重錘体610全体に対してはモーメントとして作用するためである。したがって、逆向きのコリオリ力−Fxが作用した場合、主構造体の変形状態は、図48に示すようなものになる。
結局、重錘体610がZ軸方向に単振動している状態において、Y軸まわりの角速度ωyが作用すると、可撓性連結部620の上面には、水平方向に縮む力もしくは伸びる力が加わることになる。このような力を、検出用圧電素子D(21),D(22)によって検出すれば、角速度ωyを得ることができる。
ただ、検出用圧電素子D(21),D(22)も駆動用圧電素子E(11),E(12),E(31),E(32)も、可撓性連結部620の上面に形成されている圧電素子という点では全く同じである。したがって、駆動用圧電素子E(11),E(12),E(31),E(32)に交流駆動信号を与えて重錘体610をZ軸方向に単振動させると、可撓性連結部620の上面は、当該交流駆動信号の周期で伸縮することになるので、検出用圧電素子D(21),D(22)からは、常に当該交流駆動信号と同じ周期の交流信号が得られることになる。別言すれば、角速度ωyが全く作用していない状態であっても、検出用圧電素子D(21),D(22)から、交流信号が得られることになる。
そこで、予め、角速度ωyが全く作用していない状態において、重錘体610をZ軸方向に単振動させ、このとき検出用圧電素子D(21),D(22)から出力される交流信号を基本交流信号として測定しておき、角速度ωyの検出を行う際には、検出用圧電素子D(21),D(22)から出力される交流信号と、予め測定しておいた基本交流信号との差分を、角速度ωyの検出値として求める処理を行うようにすればよい。
図51は、図43に示すセンサの変形例を示す上面図である。この図51に示すセンサの物理的構成は、図43に示すセンサの物理的構成と全く同じである。ただ、各圧電素子の用途が全く逆になっている。すなわち、図43に示すセンサにおける4組の駆動用圧電素子E(11),E(12),E(31),E(32)は、図51に示すセンサでは、4組の検出用圧電素子D(11),D(12),D(31),D(32)として利用されており、図43に示すセンサにおける2組の検出用圧電素子D(21),D(22)は、図51に示すセンサでは、2組の駆動用圧電素子E(21),E(22)として利用されている。
要するに各素子の配置は、次のようになっている。まず、可撓性連結部620のW軸上の重錘体近傍部分にはピエゾ抵抗素子P(21)が配置され、台座近傍部分にはピエゾ抵抗素子P(22)が配置されている。一方、可撓性連結部620のW軸上の重錘体近傍部分には駆動用圧電素子E(21)が配置され、台座近傍部分には駆動用圧電素子E(22)が配置されている。また、可撓性連結部620のWa軸上の重錘体近傍部分には検出用圧電素子D(11)が配置され、台座近傍部分には検出用圧電素子D(12)が配置されており、可撓性連結部620のWb軸上の重錘体近傍部分には検出用圧電素子D(31)が配置され、台座近傍部分には検出用圧電素子D(32)が配置されている。
この図51に示すセンサにおける加速度検出の原理は、図43に示すセンサにおける原理と全く同様であり、ピエゾ抵抗素子P(21),P(22)の電気抵抗の変化に基づいて、加速度のZ軸方向成分αzの検出が行われる。一方、角速度検出の原理は、若干異なっている。まず、重錘体610をZ軸方向に単振動させるために、2組の駆動用圧電素子E(21),E(22)に、同位相の交流駆動信号を供給する。このように、重錘体610をZ軸方向に単振動させた状態において、角速度の検出を行う点は、図43に示すセンサと同じであるが、図51に示すセンサの場合、検出対象となる角速度がY軸まわりの角速度ωyではなく、X軸まわりの角速度ωxになる。
図52は、図51に示すセンサの重錘体610に、X軸まわりの角速度ωxが作用した状態を示す側断面図である。重錘体610の運動方向はZ軸方向であり、その状態において、X軸まわりの角速度ωxが作用すると、Y軸方向(図52における紙面に垂直な方向)にコリオリ力が作用することになる。図53および図54は、図51に示すセンサの重錘体610に、X軸まわりの角速度ωxが作用したときの、それぞれ所定の時点における可撓性連結部620の上面各位置における伸縮状態を示す上面図である。
すなわち、X軸まわりの角速度ωxが作用している場合、重錘体610がZ軸正方向に運動中であると(単振動の前半周期)、図53に示すように、重錘体610に対してY軸正方向のコリオリ力+Fyが作用して、可撓性連結部620が図示のように湾曲し、重錘体610がZ軸負方向に運動中であると(単振動の後半周期)、図54に示すように、重錘体610に対してY軸負方向のコリオリ力−Fyが作用して、可撓性連結部620が図示のように湾曲する(あるいは、角速度ωxの向きによっては、これと全く逆の挙動になる)。各状態における可撓性連結部620の各位置の伸縮状態は、図に矢印もしくはバーで示すとおりである。
具体的には、図53に示す湾曲状態では、検出用圧電素子D(11),D(12)には縮む方向の力が加わり、検出用圧電素子D(31),D(32)には伸びる方向の力が加わる。逆に、図54に示す湾曲状態では、検出用圧電素子D(11),D(12)には伸びる方向の力が加わり、検出用圧電素子D(31),D(32)には縮む方向の力が加わる。したがって、検出用圧電素子D(11),D(12)に生じる電圧値の和と、検出用圧電素子D(31),D(32)に生じる電圧値の和と、の差を求める検出回路を用意しておけば、当該検出回路の検出値は、X軸まわりの角速度ωxを示すものになる。実用上は、重錘体610の重心GがXY平面をZ軸正方向に向かって通過する瞬間と、Z軸負方向に向かって通過する瞬間とにおいて、当該検出回路の検出値を求め、これを角速度ωxの検出値として出力すればよい。なお、作用している角速度ωxが同じでも、両瞬間では、検出値の符号が逆になるので、符号を考慮した取り扱いが必要になる。
なお、この§9で述べた第3の実施形態における検出原理では、検出用圧電素子や駆動用圧電素子は必ずしも複数設ける必要はないが、実用上は、安定した駆動および正確な検出を行うために、上述した実施例のように、複数の検出用圧電素子および複数の駆動用圧電素子を設けるのが好ましい。特に、可撓性連結部620の両端には、撓みの応力が集中するため、この部分に検出用圧電素子や駆動用圧電素子を配置すると非常に効果的である。ピエゾ抵抗素子Pの配置についても同様である。
また、この第3の実施形態に係るセンサにおいても、複数の圧電素子の下方電極を物理的に単一の共通金属層によって構成することが可能であり、複数の圧電素子を物理的に単一の共通圧電素子によって構成することも可能である。また、重錘体610、可撓性連結部620、台座630を、シリコンを含む材料によって構成し、ピエゾ抵抗素子を、シリコンに不純物を含有させた層によって構成することができる。
<<< §10.加速度検出と角速度検出の干渉を防ぐ工夫 >>>
本考案に係るセンサは、加速度と角速度との双方を検出する機能を有している。しかしながら、両者を同時に検出しようとすると、相互の干渉が生じ、正しい検出値が得られない可能性がある。たとえば、加速度の検出は、加速度に基づく重錘体の変位を検出することによって行われるが、角速度検出のために重錘体を駆動させていると、この駆動による変位が誤って加速度として検出されてしまう可能性がある。また、角速度の検出は、コリオリ力に基づく重錘体の変位を検出することによって行われるが、加速度に基づく変位が誤って角速度として検出されてしまう可能性がある。
このように、加速度検出と角速度検出との相互干渉を防ぐためには、加速度の検出対象周波数帯域よりも十分に高い周波数で重錘体を駆動し(たとえば、単振動や円運動)、加速度検出回路と、角速度検出回路とに、それぞれ不要な信号成分をカットするフィルタ回路を設けるようにすればよい。
一般的な用途では、加速度の検出対象周波数帯は、数十Hz程度あれば十分である。そこで、重錘体の駆動周波数(図22に示す駆動信号S1,S2や、図23に示す駆動信号SS1〜SS4の周波数)を数十kHzに設定すれば、加速度検出に必要な周波数帯域と角速度検出に必要な周波数帯域とをフィルタ回路により分離することができる。たとえば、重錘体の駆動周波数を20kHzに設定し、加速度検出回路には、100Hz以上の高周波成分をカットするフィルタ回路を設けて、重錘体の振動に起因する信号ノイズ成分を除外するようにし、角速度検出回路には、100Hz以下の低周波成分をカットするフィルタ回路を設けて、加速度に起因する信号ノイズ成分を除外するようにすればよい。
図55は、このようなフィルタ回路を採用した検出回路を示す回路図であり、図25に示すセンサに用いる加速度および角速度の検出回路に相当する。図の上段が加速度検出回路710、図の下段が角速度検出回路720である。加速度検出回路710の各端子T11〜T13は、それぞれX軸方向の加速度αx、Y軸方向の加速度αy、Z軸方向の加速度αzの初期検出値を示す電圧が与えられる端子である。すなわち、端子T11,T12,T13には、図19に示す電位差計51,52,53からの出力電圧が与えられる。これらの出力電圧は、アンプ回路71,72,73で増幅された後、フィルタ回路81,82,83を通って、端子Tαx,Tαy,Tαzに与えられる。これらの端子Tαx,Tαy,Tαzから出力される信号は、それぞれX軸方向の加速度αx、Y軸方向の加速度αy、Z軸方向の加速度αzの検出値を示すものになる。
ここで、フィルタ回路81,82,83は、たとえば、100Hz以上の高周波成分をカットする低域通過フィルタ回路であり、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化を示す信号に含まれる高周波成分がカットされる。したがって、図19に示す電位差計51,52,53からの出力電圧に、重錘体の駆動周波数帯域のノイズ信号が含まれていたとしても、端子Tαx,Tαy,Tαzから出力される検出信号には、そのようなノイズ信号は含まれていない。
一方、角速度検出回路720には、端子T14,T15に与えられる電圧を増幅するアンプ回路74,75と、フィルタ回路84,85と、同期検波回路91と、駆動制御回路92と、最終段のアンプ回路76,77,78と、が設けられている。ここに示す回路は、図25に示すセンサの重錘体310をXY平面に平行な平面内で円運動させながら、X軸まわりの角速度ωx,Y軸まわりの角速度ωy,Z軸まわりの角速度ωzを検出する機能を有している。駆動制御回路92は、各駆動用圧電素子に図23に示すような交流駆動信号SS1〜SS4を供給して、重錘体310を円運動させる機能を有する。駆動制御回路92から同期検波回路91に対しては、駆動信号SS1〜SS4に同期した検波信号が与えられる。同期検波回路91は、この検波信号に基づいて、検波のタイミングを認識することができる。逆に、同期検波信号91から駆動制御回路92に対しては、フィードバック信号が与えられ、駆動制御回路92は、必要に応じて、このフィードバック信号に基づく駆動補正を行うことができる。
端子T14には、図24(a) の端子Txの電圧値(重錘体310に作用したX軸方向の力を示す値)が与えられ、端子T15には、図24(c) の端子Tzの電圧値(重錘体310に作用したZ軸方向の力を示す値)が与えられる。なお、この角速度検出回路720では、上述したとおり、重錘体310をXY平面に平行な平面内で円運動させながら、3軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzの検出を行うため、図24(b) に示す回路は利用されない(重錘体310に作用したY軸方向の力を示す値を用いることなしに、3軸まわりの角速度検出が行われる)。
端子T14,T15に与えられた検波対象信号は、アンプ回路74,75で増幅された後、フィルタ回路84,85を通って同期検波回路91に与えられる。ここで、フィルタ回路84,85は、検出用圧電素子に生じる交流信号に含まれる低周波成分をカットする高域通過フィルタ回路である。たとえば、100Hz以下の低周波成分をカットする高域通過フィルタ回路を用いれば、一般的な用途における加速度に起因した信号成分を除去することができる。
同期検波回路91は、この高域通過フィルタ回路84,85を通過した交流信号に対して、駆動制御回路92から与えられる検波信号に基づく同期検波を行う回路である。具体的には、検波信号に基づいて、重錘体310がXZ平面を通過した瞬間(重錘体がY軸方向の速度成分をもって運動している瞬間)を検知し、その時点の検波対象信号(端子T14からの重錘体に作用したX軸方向の力を示す信号、および端子T15からの重錘体に作用したZ軸方向の力を示す信号)に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzおよびX軸まわりの角速度ωxを求めることができる。また、重錘体310がYZ平面を通過した瞬間(重錘体がX軸方向の速度成分をもって運動している瞬間)を検知し、その時点の検波対象信号(端子T15からの重錘体に作用したZ軸方向の力を示す信号)に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを求めることができる。
かくして、同期検波回路91で求められた角速度ωx,ωy,ωzを示す信号は、それぞれアンプ回路76,77,78で増幅された後、端子Tωx,Tωy,Tωzから出力されることになる。
なお、同期検波回路91は、検波対象信号に基づいて、重錘体が正しい振幅(円運動の場合は半径)をもって運動しているか否かをモニターし、その結果をフィードバック信号として駆動制御回路92に与える。駆動制御回路92は、このフィードバック信号に基づいて、各駆動信号SS1〜SS4の振幅を適正に制御する。
以上、図25に示すセンサに利用する検出回路の一例を述べたが、他の実施形態に係るセンサについても同様に、所定のフィルタ回路を用いることにより、加速度検出と角速度検出の干渉を防ぐことが可能である。
10:重錘体
21〜24:板状架橋部(可撓性連結部)
30:台座
50:直流電源
51〜54:電位差計
61〜69:演算器
71〜78:アンプ回路
81〜85:フィルタ回路
91:同期検波回路
92:駆動制御回路
100,100′:加速度検出部
110,110′:加速度検出用重錘体
120,120′:可撓性連結部
121〜124:板状架橋部(加速度検出用可撓性連結部)
130,130′:加速度検出用台座
200,200′:角速度検出部
210,210′:角速度検出用重錘体
220,220′:可撓性連結部
221〜224:板状架橋部(角速度検出用可撓性連結部)
230,230′:角速度検出用台座
310,310′:重錘体
320,320′:可撓性連結部
321〜324:板状架橋部(可撓性連結部)
330,330′:台座
400:装置筐体
511,512,513:絶縁層
521,522:配線層
610:重錘体
620:可撓性連結部
630:台座
710:加速度検出回路
720:角速度検出回路
D:検出用圧電素子
D(11)〜D(31):検出用圧電素子
D(領域記号):各領域に配置された検出用圧電素子
D(領域記号)U:各領域に配置された検出用圧電素子の上方電極
E:駆動用圧電素子
E(11)〜E(31):駆動用圧電素子
E(領域記号):各領域に配置された駆動用圧電素子
F:圧電素子
:共通圧電素子
+Fx:X軸正方向に作用した力
+Fy:Y軸正方向に作用した力
+Fz:Z軸正方向に作用した力
−Fx:X軸負方向に作用した力
−Fy:Y軸負方向に作用した力
−Fz:Z軸負方向に作用した力
G:重錘体の重心
G1,G2,G3:方環状溝
G1′,G2′,G3′:円環状溝
L1〜L3:SOI基板の各層
L:下方電極の端子
:共通金属層の端子
LE:下方電極
LE:下方電極を構成する共通金属層
O,O1,O2:座標系の原点
P:ピエゾ抵抗素子
P(21),P(22)
P(領域記号):各領域に配置されたピエゾ抵抗素子
S1,S2:駆動信号
SS1〜SS4:駆動信号
T1,T2:端子
T11〜T15:端子
Tx,Ty,Tz:端子
Tωx,Tωy,Tωz:端子
t:時間
U:上方電極の端子
UE:上方電極
Vx,Vy,Vz:ブリッジ電圧
W,Wa,Wb:軸
W1〜W4:開口部
W11〜W14:開口部
W21〜W24:開口部
X:座標軸
X11〜X34:可撓性連結部上の各領域
Xa,Xb:X軸に平行な軸
Y,Y1,Y2:座標軸
Y11〜Y34:可撓性連結部上の各領域
Ya,Yb:Y軸に平行な軸
Z,Z1,Z2:座標軸
ωx:X軸まわりの角速度
ωy:Y軸まわりの角速度
ωz:Z軸まわりの角速度

Claims (27)

  1. 加速度検出部と角速度検出部とを備え、
    前記加速度検出部は、
    加速度検出用重錘体と、この加速度検出用重錘体の周囲を取り囲むように配置された加速度検出用台座と、前記加速度検出用重錘体と前記加速度検出用台座とを連結する加速度検出用可撓性連結部と、前記加速度検出用可撓性連結部の表層部分に埋め込まれたピエゾ抵抗素子と、前記ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路と、を備え、
    前記角速度検出部は、
    角速度検出用重錘体と、この角速度検出用重錘体の周囲を取り囲むように配置された角速度検出用台座と、前記角速度検出用重錘体と前記角速度検出用台座とを連結する角速度検出用可撓性連結部と、前記角速度検出用可撓性連結部の表面に直接もしくは間接的に固着された駆動用圧電素子および検出用圧電素子と、前記駆動用圧電素子に交流信号を供給して前記角速度検出用可撓性連結部を周期的に変形させ前記角速度検出用重錘体に周期的な運動を生じさせながら、前記検出用圧電素子に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路と、を備え、
    前記加速度検出用台座と前記角速度検出用台座とが一体構造をなし、装置筐体に固定されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  2. 請求項1に記載のセンサにおいて、
    加速度検出用重錘体、加速度検出用台座、加速度検出用可撓性連結部、角速度検出用重錘体、角速度検出用台座、角速度検出用可撓性連結部が、1枚のシリコン基板もしくはSOI基板によって構成されており、ピエゾ抵抗素子が、前記基板の表層部分に形成されたシリコンの不純物含有層によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  3. 請求項2に記載のセンサにおいて、
    1枚の基板の下面側に一対の環状溝が形成されており、第1の環状溝で囲まれた部分により加速度検出用重錘体が構成され、第2の環状溝で囲まれた部分により角速度検出用重錘体が構成され、
    前記第1の環状溝の形成により肉厚が薄くなった部分によって加速度検出用可撓性連結部が構成され、前記第2の環状溝の形成により肉厚が薄くなった部分によって角速度検出用可撓性連結部が構成され、
    前記加速度検出用可撓性連結部の上面側の表層部分にピエゾ抵抗素子が埋め込まれ、前記角速度検出用可撓性連結部の上面に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が直接もしくは間接的に固着されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のセンサにおいて、
    加速度検出用可撓性連結部が複数の板状架橋部によって構成されており、個々の板状架橋部の加速度検出用重錘体に近い内側部分と加速度検出用台座に近い外側部分との双方にピエゾ抵抗素子が配置され、
    角速度検出用可撓性連結部が複数の板状架橋部によって構成されており、個々の板状架橋部の角速度検出用重錘体に近い内側部分と角速度検出用台座に近い外側部分との双方に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が配置されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のセンサにおいて、
    駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が角速度検出用可撓性連結部の上面に固着されており、
    角速度検出回路は、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して角速度検出用重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うことを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  6. 請求項5に記載のセンサにおいて、
    複数の圧電素子の下方電極が物理的に単一の共通金属層によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  7. 請求項5または6に記載のセンサにおいて、
    複数の圧電素子が物理的に単一の共通圧電素子によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  8. 重錘体と、
    この重錘体の周囲を取り囲むように配置され、装置筐体に固定された台座と、
    前記重錘体と前記台座とを連結する可撓性連結部と、
    前記可撓性連結部の表層部分に埋め込まれたピエゾ抵抗素子と、
    前記可撓性連結部の表面に直接もしくは間接的に固着された駆動用圧電素子および検出用圧電素子と、
    前記ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路と、
    前記駆動用圧電素子に交流信号を供給して前記可撓性連結部を周期的に変形させ前記重錘体に周期的な運動を生じさせながら、前記検出用圧電素子に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路と、
    を備えることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  9. 請求項8に記載のセンサにおいて、
    加速度検出回路は、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化を示す信号に含まれる高周波成分をカットする低域通過フィルタ回路を有し、この低域通過フィルタ回路を通過した信号成分を加速度の検出値として出力し、
    角速度検出回路は、駆動用圧電素子に交流信号を供給して重錘体の周期的な運動を制御する駆動制御回路と、検出用圧電素子に生じる交流信号に含まれる低周波成分をカットする高域通過フィルタ回路と、この高域通過フィルタ回路を通過した交流信号に対して、前記駆動制御回路から与えられる検波信号に基づく同期検波を行う同期検波回路と、を有し、前記同期検波回路による検波結果を角速度の検出値として出力することを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  10. 請求項8または9に記載のセンサにおいて、
    重錘体、台座、可撓性連結部が、1枚のシリコン基板もしくはSOI基板によって構成されており、ピエゾ抵抗素子が、前記基板の表層部分に形成されたシリコンの不純物含有層によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  11. 請求項10に記載のセンサにおいて、
    1枚の基板の下面側に環状溝が形成されており、この環状溝で囲まれた部分により重錘体が構成され、この環状溝の形成により肉厚が薄くなった部分によって可撓性連結部が構成され、前記可撓性連結部の上面側の表層部分にピエゾ抵抗素子が埋め込まれ、前記可撓性連結部の上面に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が直接もしくは間接的に固着されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  12. 請求項11に記載のセンサにおいて、
    重錘体の上面中心部に原点Oが位置し、基板の上面にXY平面が位置するようなXYZ三次元座標系を定義し、
    XY平面上のX軸の両脇に、X軸に対して所定間隔dxを保ちながら、X軸に対して平行に伸びるXa軸およびXb軸を定義し、
    XY平面上のY軸の両脇に、Y軸に対して所定間隔dyを保ちながら、Y軸に対して平行に伸びるYa軸およびYb軸を定義し、
    前記Xa軸,Xb軸,Ya軸,Yb軸のいずれか1つを補助軸Wと定義し、
    可撓性連結部の重錘体に近い部分を内側部分、台座に近い部分を外側部分と定義したときに、
    可撓性連結部の正のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、負のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部の正のXa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のXa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部の正のXb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のXb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部の正のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、負のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部の正のYa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のYa軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部の正のYb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、負のYb軸上の内側部分と外側部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部の正のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、負のX軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、
    可撓性連結部の正のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、負のY軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、
    可撓性連結部の正のW軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置され、負のW軸上の内側部分と外側部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  13. 請求項8〜11のいずれかに記載のセンサにおいて、
    可撓性連結部が複数の板状架橋部によって構成されており、個々の板状架橋部の重錘体に近い内側部分と台座に近い外側部分との双方にピエゾ抵抗素子が配置され、個々の板状架橋部の前記内側部分と前記外側部分との双方に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が配置されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  14. 請求項8〜13のいずれかに記載のセンサにおいて、
    駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が可撓性連結部の上面に固着されており、
    角速度検出回路は、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うことを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  15. 請求項14に記載のセンサにおいて、
    複数の圧電素子の下方電極が物理的に単一の共通金属層によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  16. 請求項14または15に記載のセンサにおいて、
    複数の圧電素子が物理的に単一の共通圧電素子によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  17. 請求項8〜16のいずれかに記載のセンサにおいて、
    一部の領域において、ピエゾ抵抗素子と圧電素子とが、絶縁層を挟んで積層状態となるように形成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  18. 重錘体と、
    この重錘体の脇に配置され、装置筐体に固定された台座と、
    前記重錘体と前記台座とを連結する可撓性連結部と、
    前記可撓性連結部の表層部分に埋め込まれたピエゾ抵抗素子と、
    前記可撓性連結部の表面に直接もしくは間接的に固着された駆動用圧電素子および検出用圧電素子と、
    前記ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化に基づいて作用した加速度を検出する加速度検出回路と、
    前記駆動用圧電素子に交流信号を供給して前記可撓性連結部を周期的に変形させ前記重錘体に周期的な運動を生じさせながら、前記検出用圧電素子に生じる信号に基づいて作用した角速度を検出する角速度検出回路と、
    を備えることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  19. 請求項18に記載のセンサにおいて、
    加速度検出回路は、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化を示す信号に含まれる高周波成分をカットする低域通過フィルタ回路を有し、この低域通過フィルタ回路を通過した信号成分を加速度の検出値として出力し、
    角速度検出回路は、駆動用圧電素子に交流信号を供給して重錘体の周期的な運動を制御する駆動制御回路と、検出用圧電素子に生じる交流信号に含まれる低周波成分をカットする高域通過フィルタ回路と、この高域通過フィルタ回路を通過した交流信号に対して、前記駆動制御回路から与えられる検波信号に基づく同期検波を行う同期検波回路と、を有し、前記同期検波回路による検波結果を角速度の検出値として出力することを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  20. 請求項18または19に記載のセンサにおいて、
    重錘体、台座、可撓性連結部が、シリコンを含む材料によって構成されており、ピエゾ抵抗素子が、シリコンに不純物を含有させた層によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  21. 請求項18〜20のいずれかに記載のセンサにおいて、
    可撓性連結部が、重錘体の上部と台座の上部とを連結する板状架橋部によって構成され、台座の下部は装置筐体に固定されており、前記可撓性連結部の上面側の表層部分にピエゾ抵抗素子が埋め込まれ、前記可撓性連結部の上面に駆動用圧電素子および検出用圧電素子が直接もしくは間接的に固着されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  22. 請求項21に記載のセンサにおいて、
    重錘体の上面の所定点と台座の上面の所定点とを連結するW軸を定義し、このW軸の両脇に、W軸に対して所定間隔dwを保ちながら、W軸に対して平行に伸びるWa軸およびWb軸を定義し、
    可撓性連結部の重錘体に近い部分を重錘体近傍部分、台座に近い部分を台座近傍部分と定義したときに、
    可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部のWa軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部のWb軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  23. 請求項21に記載のセンサにおいて、
    重錘体の上面の所定点と台座の上面の所定点とを連結するW軸を定義し、このW軸の両脇に、W軸に対して所定間隔dwを保ちながら、W軸に対して平行に伸びるWa軸およびWb軸を定義し、
    可撓性連結部の重錘体に近い部分を重錘体近傍部分、台座に近い部分を台座近傍部分と定義したときに、
    可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに駆動用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部のWa軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部のWb軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれに検出用圧電素子が配置され、
    可撓性連結部のW軸上の重錘体近傍部分および台座近傍部分のそれぞれにピエゾ抵抗素子が配置されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  24. 請求項18〜23のいずれかに記載のセンサにおいて、
    駆動用圧電素子および検出用圧電素子の下面には下方電極、上面には上方電極がそれぞれ形成されており、これら各圧電素子の下方電極の下面が可撓性連結部の上面に固着されており、
    角速度検出回路は、駆動用圧電素子の上方電極と下方電極との間に交流電圧を印加して重錘体に周期的な運動を生じさせながら、検出用圧電素子の上方電極と下方電極との間に生じる交流電圧に基づいて作用した角速度の検出を行うことを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  25. 請求項24に記載のセンサにおいて、
    複数の圧電素子の下方電極が物理的に単一の共通金属層によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  26. 請求項24または25に記載のセンサにおいて、
    複数の圧電素子が物理的に単一の共通圧電素子によって構成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
  27. 請求項18〜26のいずれかに記載のセンサにおいて、
    一部のピエゾ抵抗素子と一部の圧電素子とが、絶縁層を挟んで積層状態となるように形成されていることを特徴とする加速度と角速度との双方を検出するセンサ。
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