JP2009179019A - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができ、安定した濃度のインクを供給することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 記録ヘッドへインクを供給するためにキャリッジに搭載されたインクタンクと、インクタンク内に重力方向に移動可能に配された攪拌部材とを備え、キャリッジを重力方向に往復移動させることにより、攪拌部材を重力方向に往復移動させてインクタンク内のインクを攪拌する。
【選択図】 図8

Description

本発明は、記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、特に、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することを可能にしたインクジェット記録装置に関する。
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置は、画像情報に基づいて記録ヘッドにより記録媒体に画像を形成するように構成されている。記録装置は、記録方式により、インクジェット式、熱転写式、レーザービーム式などに分類することができる。また、記録媒体としても、普通紙の他、プラスチックシート、写真調印画紙あるいは布など種々の材質のものが使用されている。そのうち、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置においては、インクの発色性や耐候性が要求され、特に写真印刷においては、記録画像を掲示することから、耐候性や耐水性が強く要請される。また、普通紙の記録においても、文字品位や耐マーカー性などに優れたインクが要請される。
インクは、着色剤として染料を用いる染料インクと顔料を用いる顔料インクとに分けることができる。染料インクの場合は、記録濃度の向上が難しく、耐水性や耐光性の面でも不十分な場合が多かった。このような課題はインク受容層を有する専用紙を用いることで解決できるが、これでは、記録媒体のコストが嵩むことになる。これに対し、顔料インクの場合は、顔料の特性により記録濃度の向上が比較的容易であり、耐水性も染料より優れている。このため、文章の出力を主体とする記録装置においては、黒色に顔料インクを採用する場合が増えている。
しかしながら、顔料インクでは、顔料の分子量が大きいことから、インク内の顔料が重力によって沈降する現象が生じる。顔料が沈降すると、インクタンク内に顔料濃度が異なる層が形成され、安定した記録特性を維持することが難くなる。これに対処するため、特許文献1には、記録ヘッドの移動を利用してインクタンク内のインクを攪拌する方法が提案されている。また、特許文献2には、インクタンク内のインクに対流を生じさせる方法が提案されている。
特開2004−216761号公報 特開2003−260803号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、インクタンク内で顔料が重力によって沈降する現象を防止することはできない。このため、インクタンクを同一姿勢で長時間放置すると、顔料がインクタンクの底部に集中してインクに濃度勾配が生じ、初期段階では高濃度のインクが供給され、インク消費に伴って次第に低濃度のインクが供給されることになる。従って、インク濃度を安定させることができず、記録画像の画質低下を招くことになる。特許文献1では、キャリッジの走査方向の移動によってインクを攪拌するため、沈降した顔料による濃度勾配を解消するために長時間の攪拌動作が必要になり、長時間を経た後に使用する場合、直ぐには記録できないという課題があった。
特許文献2の技術は、温度差によりインクの対流を生じさせて攪拌する方法である。このため、インクタンク内に金属板や発泡樹脂などを別途配設する必要があり、インク容量を保つためにインクタンクが大型になったり、コストが嵩むなどの課題があった。
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができ、安定した濃度のインクを供給することが可能なインクジェット記録装置を提供することである。
本発明は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、記録ヘッドと該記録ヘッドに供給するインクを収容するインクタンクとを搭載して移動するためのキャリッジと、前記インクタンク内で移動可能に配された攪拌部材と、前記キャリッジを記録ヘッドの移動方向と交差する方向に移動させる移動機構と、を備え、前記キャリッジを前記交差する方向に移動させることにより前記攪拌部材により前記インクタンク内のインクを攪拌することを特徴とする。
本発明によれば、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができ、安定した濃度のインクを供給することが可能なインクジェット記録装置が提供される。
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1はインクジェット記録装置の斜視図である。図2はインクジェット記録装置の縦断面図である。図1および図2において、1はインクジェット記録装置の装置本体、10は装置本体を構成するシャーシ、11は吐出口から記録媒体へインクを吐出して画像を形成する記録ヘッド、100は記録ヘッド11へ供給するためのインクを収容したインクタンクである。13は記録ヘッド11及びインクタンク100を搭載して記録媒体に沿って往復移動可能なキャリッジ、14はキャリッジ13の移動を案内するガイドシャフト、15はガイドシャフト14とともにキャリッジ13の移動を案内するガイドレールである。本実施形態では、複数の記録ヘッド11がキャリッジ13に搭載されており、各記録ヘッドにそれぞれ異なるインクを供給する複数のインクタンク100が交換可能に装着されている。
16はキャリッジ13に駆動を伝達するタイミングベルト、17はキャリッジ13を駆動するためのキャリッジモータである。18はキャリッジ13の位置を検出するためのコードストリップ、20はタイミングベルト16を張架するためのプーリである。21は記録ヘッド11により画像を形成する画像形成部を通して記録媒体を搬送するための搬送ローラ、22は搬送ローラ21に押圧されて従動回転するピンチローラ、23はピンチローラ22を軸支するローラホルダである。25は搬送ローラ21の一端部に固定された搬送プーリ、26は搬送ローラ21を駆動するためのLFモータ、27は搬送ローラ21の搬送量を検知するためのコードホイール、29は画像形成される記録媒体を支持するためのプラテンである。搬送ローラ21はプラテン29の搬送上流側に配されている。
プラテン29の搬送下流側には、搬送ローラ21と同期して被記録材を搬送するとともに記録された記録媒体を装置本体から排出するための第1排紙ローラ30および第2排紙ローラ31が配されている。第1排紙ローラ30には第1拍車32が、第2排紙ローラ31には第2拍車33が、それぞれ従動回転可能に押圧されている。第1拍車32および第2拍車33は拍車ホルダ34に軸支されている。キャリッジ13の移動範囲であって画像形成領域を外れた位置には記録ヘッド11の吐出口からのインク吐出性能を維持回復するための吐出回復部36が配設されている。吐出回復部36は、記録ヘッド11の吐出口を覆うためのキャップ、吐出面をワイピングするためのワイパー、キャップを通して吐出口からインクを吸引する吸引ポンプなどで構成されている。
装置本体1の背部には、記録媒体を1枚ずつ画像形成部へ給送するための給紙部(Automatic Sheet Feeder) 37が配されている。38は給紙部37のベース、39は記録媒体を給送するための給紙ローラ、40は給紙ローラ38と協働して記録媒体を1枚ずつ分離して給送する分離ローラである。41は積載された記録媒体を給紙ローラ39へ圧接するための圧板、42は圧板41上の記録媒体の幅方向位置を規制するためのサイドガイドである。44は給紙部37から給送される記録媒体をガイドするためのフラップである。分離ローラ40の近傍には、給紙ローラ39までは送り出されたが分離されずに残された記録媒体を積載位置へ戻すための戻し爪(不図示)が設けられている。
記録命令が出されると、給紙ローラ39により画像形成部へ向けて記録媒体を給送する。画像形成部には、記録ヘッド11を搭載して記録媒体の幅方向に移動(主走査)するキャリッジ13が配されている。給送される記録媒体の先端が停止している搬送ローラ21とピンチローラ22のニップに突き当てられ、記録媒体にループが形成されることで、記録媒体の先端揃えが行われる。次いで、搬送ローラ21が回転を開始して記録媒体を画像形成部における記録開始位置へ搬送する。このとき、給紙ローラ39は、駆動力の伝達が解除されて記録媒体と連れ回りする状態になる。
画像形成部においては、プラテン29に支持された記録媒体に対し、キャリッジ13の移動に同期して、画像情報に基づいて記録ヘッド11の吐出口から記録媒体へインクを吐出することにより記録が行われる。1ライン分の画像形成と記録媒体のピッチ搬送を交互に繰り返すことにより記録媒体の記録が行われる。記録された記録媒体は、搬送ローラ21と同期駆動される第1排紙ローラ30および第2排紙ローラ31を通して装置本体外へ排出され、排紙トレイに載置される。
本実施形態におけるキャリッジ13には異なるインクを用いる複数個の記録ヘッド11が搭載されており、各記録ヘッドには対応するインクを貯留したインクタンク100が交換可能に装着されている。記録ヘッド11にはインクタンク100に接続されるインク流路が形成されている。記録ヘッド11のプラテン29と対向する面(吐出面)には、異なるインクを吐出する複数の吐出口列が主走査方向に並列に配置されている。各吐出口列は、所定ピッチで並べられた複数の吐出口で構成されている。各吐出口に配される吐出用アクチュエータとしては、例えば、電気熱変換体(発熱素子)によるインクの膜沸騰で生じる圧力、もしくは電気機械変換体(ピエゾ素子等)による加圧力などが用いられる。
キャリッジ13は、両端部をシャーシ10で支持されたガイドシャフト14とシャーシ10の一部に形成されたガイドレール15によって案内支持され、キャリッジモータ17によりタイミングベルト16を介して駆動される。この駆動は、画像形成の際にキャリッジ13を往復移動させるための駆動である。また、後述する上下移動機構によりガイドシャフト14を上下動させることで、キャリッジ13を重力方向に往復移動させることができる。
図3はキャリッジの上下移動機構の斜視図である。図4はキャリッジの上下移動機構の駆動伝達部の斜視図である。図5はキャリッジの上下移動機構の動作を示す側面図であり、(a)はキャリッジの第1ポジションを、(b)はキャリッジの第2ポジションを、(c)はキャリッジの第3ポジションを示す。ガイドシャフト14の両端部には第1のカム14a、第2のカム14bが一体に設けられており、第1のカム14aにはギア14cが一体に設けられている。ギア14cはアイドラギア53と噛み合っており、アイドラギア53はリフト軸58と一体のギア52と噛み合っている。つまり、リフト軸58が回転すると、ギア52→アイドラギア53→ギア14cを介して、ガイドシャフト14が回転させられる。
ガイドシャフト14の両端部は、シャーシ10に形成された上下方向の長孔57に支持されており、図3中のZ方向には移動可能であるが、図3中のX方向およびY方向の移動は規制されている。シャーシ10には第1のカム14a、第2のカム14bが当接可能な斜面56が形成されている。ガイドシャフト14の両端部は、シャーシ10との間に装着されたばね55により、下方へ(矢印Zと反対方向へ)付勢されている。また、リフト軸58が回転すると、アイドラギア53を介してギア14cが回転駆動され、ガイドシャフト14が回転する。ガイドシャフト14の下降位置(図5(a)の第1ポジション)では、ばね55によりガイドシャフト14の両端部が各長孔57の下端部に押圧されて位置決めされており、この位置では、第1のカム14a、第2のカム14bは斜面56に接触していない。
ガイドシャフト14の下降位置からリフト軸58が矢印a方向に回転駆動されると、アイドラギア53を介してガイドシャフト14が矢印b方向(矢印aと同方向)に回転し、第1のカム14a、第2のカム14bが斜面56に当接する。第1のカム14a、第2のカム14bが斜面56に当接すると、ガイドシャフト14は、ばね55に抗して、長孔57に沿って重力方向上方へ移動可能になる。カム14a、14bが図5(b)の角度位置まで回転すると、ガイドシャフト14が長孔57に沿って所定距離だけ上昇し、キャリッジ13は第1のポジションに対してプラテン29から離間した第2ポジションまで上昇する。
図5(b)の第2ポジションから第1のカム14a、第2のカム14bがさらに矢印b方向に回転すると斜面56に当接するカム面の半径がさらに増大し、ガイドシャフト14が長孔57に沿って上昇する。第1のカム14a、第2のカム14bが図5(c)の角度位置まで回転させられると、ガイドシャフト14は長孔57の上端近傍まで上昇し、キャリッジ13はプラテン29から最も離間した第3ポジションまで上昇する。なお、上述のキャリッジ13の上下移動機構は、他の用途にも適用でき、例えば、記録する際に記録ヘッド11と記録媒体との間に所定の隙間を設けるために記録ヘッド11を上下移動させる際に適用することができる。その場合、図5(a)の第1ポジションを通常の記録媒体に記録するのに適した状態にする。すると、図5(b)の第2ポジションは、例えば、記録媒体の変形が大きく、第1ポジションでは記録媒体が記録ヘッド11に接触するような場合に設定すると好適である。また、図5(c)の第3ポジションは、通常よりも厚みのある記録媒体を使用する場合などに好適である。
図5(c)の第3ポジションから、さらにリフト軸58を矢印a方向に回転させて第1のカム14a、第2のカム14bが1回転すると、キャリッジ13は再び第1ポジションの下降位置に戻される。以降、リフト軸58を矢印a方向に連続的に回転駆動すれば、カム14a、14bが連続的に回転し、ガイドシャフト14を長孔57に沿って上下方向に往復移動させることができる。すなわち、上述のキャリッジの上下移動機構によれば、リフト軸58を回転駆動することにより、ガイドシャフト14を介してキャリッジ13を重力方向に往復移動させることができる。
次に、リフト軸58の駆動機構について説明する。本実施形態では、リフト軸58の駆動源として給紙部37を駆動するASFモータ46が使用されており、ASFモータ46の回転方向及び回転量の制御により、給紙部37を動作させたり、リフト軸58を動作させている。図4において、ASFモータ46の出力ギアにより太陽ギア48を回転させる。太陽ギア48は、振り子アーム47の揺動中心に所定の摩擦力をもって回転可能に取り付けられており、振り子アーム47の端部に軸支された遊星ギア49aと噛み合っている。ASFモータ46の矢印c方向の回転により太陽ギア48を回転させると、振り子アーム47が入力軸50aに接近する方向(矢印d方向)へ移動することで、遊星ギア49aが入力軸50a上の入力ギア50bと噛み合う。入力軸50aの他端部には伝達ギア50cが固定されている。
伝達ギア50cは、減速ギア列51を介して、リフト軸58に固定されたギア52と連結されている。従って、ASFモータ46の駆動は入力軸50aおよび減速ギア列51を介してリフト軸58へ伝達される。これにより、図5の上下移動機構で説明したように、リフト軸58が矢印a方向に駆動され、ガイドシャフト14の上下移動によりキャリッジ13を重力方向に往復移動させることができる。
なお、リフト軸58を駆動するときは、振り子アーム47が矢印d方向に移動するため、給紙部37を駆動するためのギア列への駆動伝達は遮断されている。また、給紙部37を駆動する場合は、ASFモータ46を矢印cと反対方向に回転させて振り子アーム47を矢印dと逆の方向へ移動させる。これにより、遊星ギア49aと入力ギア50bとの噛み合いが解除されるとともに、太陽ギア48と噛み合ったもう一つの遊星ギア49bが給紙部37のギアと噛み合うことになる。また、本実施形態では、ASFモータ46としてステッピングモータを使用することでオープンループで制御しているが、これは、DCモータなどにエンコーダを使用してクローズドループで制御しても良い。
図6はインクジェット記録装置の制御部のブロック図である。19はコードストリップ18を読み取るためにキャリッジ13に搭載されたエンコーダセンサ、28は搬送ローラ21のコードホイール27を読み取るためのエンコーダセンサである。46は給紙部37の各動作機構を駆動するASFモータ、67はセンサレバーの動作を検知することで記録媒体の先後端を検知するPE(ペーパーエンド)センサ、69はリフト軸58の回転位置を検知するリフトカムセンサである。302は吐出回復部36を駆動するためのPGモータ、303は吐出回復部36の動作を検知するためのPGセンサ、305は給紙部37の動作を検知するためのASFセンサである。
17はキャリッジ13を駆動するためのキャリッジモータ、26は搬送ローラ21および排紙ローラ30、31を駆動するLFモータである。307は記録ヘッド11を駆動するためのヘッドドライバ、308は記録情報を記録装置へ送るホスト装置、309はホスト装置308と記録装置とを電気的に接続して仲立ちをするI/F(インターフェース)である。310は記録装置の制御指令を出すCPU、311は制御データなどが書き込まれたROM、312は記録データ等を展開する領域となるRAMである。301は、CPU310並びにROM311およびRAM312等を搭載した制御基板である。
次に、キャリッジ13に搭載されたインクタンク100について説明する。本実施形態に係るインクジェット記録装置では、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクタンクと、フォトブラックのインクタンクが使用されている。これらのインクタンクに加えて、淡シアンや淡マゼンタなどのインクタンクを用いることもある。各インクタンク100は、それぞれ、キャリッジ13に搭載された記録ヘッド11に対し交換可能である。図7は第1の実施形態に係るインクタンクの一部を破断して内部を示す斜視図である。図8は第1の実施形態に係るインクタンクの縦断面図である。
インクタンク100Aの内部には液密性のインク収容室101Aが形成されており、このインク収容室にインクが充填されている。インクタンク100Aの底部にインク供給口104Aが設けられている。インク供給口104Aの入口はインク収容室101Aの底面より一段低い凹部102A内に開口している。インク供給口104Aには、記録ヘッド11のインク流入口に装着されたフィルタ(不図示)に圧着される圧接体108Aが配されている。圧接体108Aはインクを透過させる多孔質体で形成されている。インク収容室101Aの上部には大気連通孔が形成されている。
インク収容室101Aには、充填されたインクを攪拌するための攪拌部材が設けられている。本実施形態では、この攪拌部材は、インク供給口104Aの近傍(従ってインク収容室101Aの底部に近い位置)に配された弾性部材110で構成されている。弾性部材110は重力方向に弾性変位可能である。また、インクタンク100Aは、キャリッジの上下移動機構(図3〜図5)によりキャリッジ13とともに重力方向に往復移動可能である。そこで、キャリッジの上下移動機構を作動させてインクタンク100Aを重力方向の往復移動させると、弾性部材110は慣性力で弾性変位を繰り返しながら重力方向に移動する。この弾性部材110の重力方向の移動によって、インク収容室101A内のインクを上下方向に攪拌することができる。図示の例では、弾性部材110として、重力方向と交差する面を有する弾性材の薄板が使用されている。
次に、キャリッジ13の上下移動によるインクタンク100A内のインクの攪拌動作について説明する。制御部のCPU310からインク攪拌の指令が発せられると、キャリッジの上下移動機構(図3〜図5)が駆動され、キャリッジ13の重力方向の往復移動が行われる。このとき、インクタンク100Aの重力方向の往復移動に伴って弾性部材110が慣性力によって弾性変位しながら重力方向(図8中の両矢印f)に往復移動する。弾性部材110は重力方向と交差する面を有する薄板であることから、その変位によってインク収容室101A内のインクを上下方向に効率よく攪拌し、インク中の着色剤を効率よく全体に拡散させることができる。
ところで、従来のインクタンクでは、使用しないまま長時間が経過すると、インク中の着色剤がインク供給口に向かって沈降することになる。着色剤としての顔料を含有する顔料インクの場合は、染料インクに比べて、沈降の程度が顕著になり、濃度勾配を生じる。これに対し、本実施形態に係るインクタンク100Aでは、インクタンクを重力方向に往復移動可能にするとともに、インクタンク内に重力方向に移動可能な弾性部材110を配している。かかる構成によれば、顔料インクのように上下方向の濃度勾配が生じやすいインクを用いる場合でも、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができ、安定した濃度のインクを供給することが可能になる。
なお、本実施形態では、上下移動機構によるキャリッジ13の移動速度に応じて、攪拌部材としての弾性部材110の厚さ、幅および形状などを適宜選定することにより最適な攪拌効果を実現することができる。また、攪拌部材を複数枚の薄板で構成したり、異なる形状の薄板で構成するなどの方法により、攪拌効率をさらに高めることも可能である。
図9は第2の実施形態に係るインクタンクの一部を破断して内部を示す斜視図である。図10は第2の実施形態に係るインクタンクの縦断面図である。本実施形態に係るインクタンク100Bでも、その内部に液密性のインク収容室101Bが形成されており、このインク収容室にインクが充填されている。インクタンク100Bの底部にインク供給口104Bが設けられている。インク供給口104Bの入口はインク収容室101Bの底面より一段低い凹部102B内に開口している。インク供給口104Bには、記録ヘッド11のインク流入口に装着されたフィルタ(不図示)に圧着される圧接体108Bが配されている。圧接体108Bはインクを透過させる多孔質体で形成されている。インク収容室101Bの上部には大気連通孔が形成されている。
インク収容室101Bには、充填されたインクを攪拌するための攪拌部材が設けられている。本実施形態に係る攪拌部材は、重力方向に移動可能であると同時に記録媒体に沿う方向(ほぼ水平方向)にも移動可能な可動部材として球状部材120が使用されている。この球状部材120は、インク収容室101B内のインクより比重が大きい部材であり、インク中を移動することができる。前述のキャリッジの上下移動機構によるキャリッジ13の往復移動によりインクタンク100Bが重力方向に往復移動すると、球状部材120は、その慣性力で重力方向へ移動する。
本実施形態でも、インク供給口104Bが配される凹部102Bがインクタンク100Bの底部に形成されているが、凹部102Bの周囲に内方へ向けて低くなる方向の傾斜面からなるガイド面112が形成されている。また、インク収容室101Bの底面も凹部102へ向けて小さな角度で徐々に低下する斜面113になっている。従って、インク収容室101Bの底面上にある球状部材120は、斜面113及びガイド面112に案内されて凹部102B内へ容易に移動する。このため、インクタンク100Bが上下移動しない通常の状態では、球状部材120は、凹部102Bの内部、つまりインク供給口104Bの近傍に位置している。また、インクタンク100Bが移動すると、球状部材120はその慣性力により凹部102Bから容易に飛び出すことができ、そしてインク中を自由に移動することができる。
次に、インクタンク100B内のインクの攪拌動作について説明する。制御部のCPU310からインク攪拌の指令が発せられると、キャリッジの上下移動機構が駆動されてキャリッジ13の重力方向の往復移動が行われる。すると、球状部材120は、その慣性力によってインク中を重力方向(図10中の両矢印h)に往復移動する。これにより、インク収容室101B内のインクが上下方向に攪拌され、インク中の着色剤を効率よく全体に拡散させることができる。こうして、本実施形態によっても、顔料を含有する顔料インクのように上下方向に濃度勾配が生じやすいインクを使用する場合でも、インクタンク内のインクを効率よく攪拌することができ、安定した濃度のインクを供給することが可能になる。
本実施形態では、上下移動機構によるキャリッジ13の移動速度に応じて、球状部材120の大きさや重さなどを適宜選定することにより最適な攪拌効果を実現することができる。また、球状部材を複数個備えたり、異なる形状の可動部材で構成したりすることで、インクの攪拌効率をさらに高めることも可能である。
なお、第1の実施形態における弾性部材110および第2の実施形態における球状部材120は、SUS等のインクによる侵食が生じない材質で形成することが好ましい。また、前述の各実施形態に係るインクタンクでは、インク攪拌用の弾性部材110もしくは球状部材120のいずれかを配する構成を例示したが、これは、1つのインクタンクに両方を組み合わせて配することも可能である。また、前述の実施形態では、記録ヘッド11とインクタンク100を別体としたが、本発明は、記録ヘッドとインクタンクを一体化した交換可能なインクジェットカートリッジなど、その他の形態のインクタンクにおいても同様に適用可能である。さらに、前述の実施形態では、記録ヘッドを搭載したキャリッジ13を用いるシリアルタイプのインクジェット記録装置を説明したが、本発明は、1ラインずつ一括して画像形成を行うラインタイプのインクジェット記録装置に対しても適用可能である。
インクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の縦断面図である。 キャリッジの上下移動機構の斜視図である。 キャリッジの上下移動機構の駆動伝達部の斜視図である。 キャリッジの上下移動機構の動作を示す側面図であり、(a)はキャリッジの第1ポジションを、(b)はキャリッジの第2ポジションを、(c)はキャリッジの第3ポジションを示す。 インクジェット記録装置の制御部のブロック図である。 第1の実施形態に係るインクタンクの一部を破断して内部を示す斜視図である。 第1の実施形態に係るインクタンクの縦断面図である。 第2の実施形態に係るインクタンクの一部を破断して内部を示す斜視図 である。 第2の実施形態に係るインクタンクの縦断面図である。
符号の説明
11 記録ヘッド
13 キャリッジ
14 ガイドシャフト
14a、14b カム
58 リフト軸
100 インクタンク
110 弾性部材(攪拌部材)
120 球状部材(攪拌部材)

Claims (7)

  1. 記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
    記録ヘッドと該記録ヘッドに供給するインクを収容するインクタンクとを搭載して移動するためのキャリッジと、
    前記インクタンク内で移動可能に配された攪拌部材と、
    前記キャリッジを記録ヘッドの移動方向と交差する方向に移動させる移動機構と、
    を備え、
    前記キャリッジを前記交差する方向に移動させることにより前記攪拌部材により前記インクタンク内のインクを攪拌することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記攪拌部材は重力方向に弾性変位可能な弾性部材であり、前記インクタンクを重力方向に往復移動させることにより、前記弾性部材を弾性変位により往復移動させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記弾性部材は重力方向と交差する面を有する薄板であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記攪拌部材は前記インクタンク内で移動可能な可動部材であり、前記インクタンクを重力方向に往復移動させることにより、前記可動部材を重力方向に往復移動させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記可動部材は記録媒体に沿う方向にも移動可能であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記可動部材はインクより比重が大きい球状部材であることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記インクは顔料インクであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
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