JP2009178067A - 分子ディスプレイ法及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な操作で実施でき、ハイスループット化により適する分子ディスプレイ法及びその用途を提供すること。
【解決手段】以下のステップ(1)〜(4)を行い、固相担体−核酸−蛋白質複合体を得る。(1)エマルジョンの水相内において、第1結合物質が表面に結合した固相担体の存在下、第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合したプライマーを用い、ペプチドタグをコードする配列(タグ配列)を含む核酸を鋳型として核酸増幅反応を実施し、第2結合物質が付加された核酸が固相担体に複数連結してなる固相担体−核酸複合体を得るステップ;(2)エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸複合体を回収するステップ;(3)回収した固相担体−核酸複合体に、第2結合物質とペプチドタグの両者に結合性を有する第3結合物質を接触させるステップ;(4)ステップ(3)後の固相担体−核酸複合体を水相に含有するエマルジョンを調製し、無細胞蛋白質合成系を利用して蛋白質を合成するステップ。
【選択図】図2

Description

本発明は、表現型(蛋白質)とその遺伝子型(核酸)を連結した状態で提示する方法(分子ディスプレイ法)及びその用途に関する。
近年、多様性を持つ集団から目的の機能を有する蛋白質を選択する技術の開発が盛んに行われている。これらの選択技術は、in vitroで行うものとin vivoで行うもの(例、DNAライブラリーを大腸菌に形質転換し、寒天培地上で選択を行うもの)に大別されているが、in vitroにおける選択技術では、蛋白質の発現に際して無細胞蛋白質合成系を利用するものも多数報告されている。この場合、発現された蛋白質(表現型)とその遺伝子型とを対応づけることが重要である。
1998年、Griffithsらのグループは油中水型(water-in-oil (w/o))エマルジョンを人工的な細胞と位置付け、コンパートメント化する技術を開発した(非特許文献1)。これをIVC (in vitro compartmentalization)法という。DNAが一分子ずつ封入されたエマルジョン内で無細胞蛋白質合成を行うことで、合成反応後にエマルジョン内に一種類の表現型とそれに対応する遺伝子型を共存させるという手法である。さらに2002年、同グループはIVC法を用いたビーズディスプレイ法を構築した(非特許文献2)。一方、Yanagawaらのグループは上記の手法を改良してSTABLE法と名付けた。この系では、鋳型となるDNAをビオチン化しておき、標的分子をストレプトアビジンとの融合蛋白質として発現させる。エマルジョン内で転写翻訳を行うと、ストレプトアビジンがビオチンと結合するため、DNA‐蛋白質複合体が形成される。従って、エマルジョンを破棄した後、結合親和性を用いた標的分子の選択が可能となる。さらに同グループはこの手法を用い、ランダムペプチドライブラリーからモノクローナル抗体に結合するペプチドを選択することに成功した(非特許文献3)。
また、GriffithsらはW/Oエマルジョンを更に水相で包んだW/O/Wエマルジョンを作製することで、W/Oエマルジョンを維持したままでのフローサイトメトリーによるスクリーニングを可能にした(非特許文献4)。この手法では、分解されると蛍光物質を生じる基質がエマルジョン中に存在するので、目的の活性を持つ酵素が存在するエマルジョンのみを選抜することができる。
Nakanoらのグループは1分子のDNAを鋳型としてPCRを行い、効率的に増幅を行う1分子PCR法を開発した(非特許文献5、6)。そして、この1分子PCRと無細胞蛋白質合成系を組み合わせ、迅速に蛋白質ライブラリーを構築する方法を提唱した(非特許文献7)。これをSIMPLEX(Single-Molecule PCR Linked in vitro Expression)法という。まずプレート上にウェルあたり平均1分子となるようDNAを希釈・分注し、1分子PCRにより増幅する。これを鋳型として無細胞転写翻訳反応液を加えて蛋白質ライブラリーを構築するというものである。一連の操作を全て試験管内で行うため、非常に迅速に蛋白質ライブラリーを構築し、機能を評価することができる。SIMPLEX法では、遺伝子型と表現型の対応付けは、プレートの管理により容易に可能である。
近年、SIMLEX法の問題点を克服するため、W/Oエマルジョン内で1分子PCRを行い、増幅産物を磁性マイクロビーズ上に固定する、「W/Oエマルジョン内固相1分子PCR法(以下、「エマルジョンPCR」と呼ぶ)」が開発された(特許文献1)。この手法では、片方のプライマーを結合させた磁性マイクロビーズとPCR反応液を徐々に油相に添加し、攪拌することによって直径20μm程度のエマルジョンを形成する。この際、1個のエマルジョン内に含まれる鋳型DNAを1分子以下にして、PCRを行う。その結果、ビーズ上には1種類のDNAが多数固定されることになる。このエマルジョンPCRを用いて、ビーズ上にゲノムライブラリーを構築する技術も開発された。児島らはParacoccus denitrificansのGLOBEを作製し、フローサイトメトリーを用いて転写因子PhaRが結合するDNA配列を持つビーズのスクリーニングを行った。その結果、標的としたDNA断片を1200倍濃縮することに成功した(非特許文献8)。このように、エマルジョンPCRはDNA‐蛋白質間相互作用を検出する有用なツールとして応用が可能である。
エマルジョンPCRは、W/Oエマルジョン内で、マイクロビーズ上に固定したプライマーを用いてPCRを行うことにより、ビーズ表面に1分子の鋳型DNAを増幅・固定する手法である。この「エマルジョンPCR」とW/Oエマルジョン内での無細胞蛋白質合成系とを組み合わせ、マイクロビーズ上に遺伝子型-表現型をリンクさせる新規ディスプレイ法が考案された(図20)。図20の手法は、ヒスチジンタグとFLAGタグがそれぞれGSTとの融合蛋白質として発現するGST-His及びGST-FLAGをモデル蛋白質とした分子ディスプレイ法である。本手法の特色は、W/Oエマルジョンを作製し、その内部でPCRや無細胞蛋白質合成を行う点にある。反応の場を従来のマイクロプレートではなくエマルジョンにすることで、確保できるライブラリーサイズは飛躍的に拡大する。さらに、試薬の使用量が軽減されるため低コスト化が実現できる。また、マイクロビーズ上に蛋白質をディスプレイするため、ビーズを蛍光標識することでフローサイトメトリーによる迅速なスクリーニングが可能となる。
尚、上記の方法の他にも、エマルジョン中でDNA1分子とそれがコードする蛋白質を関連づける方法が開発されている。例えば、非特許文献9では、DNA分子と蛋白質を結合させる方法として、抗体を介するものとストレプトアビジンを介するものが報告されている。
特開2006−211984号公報 Tawfik, D., S. and Griffiths, A., D.(1998) Man-made cell-like compartments for molecule evolution. Nature Biotechnol.,16,652-656 Sepp, A., Tawfik, D., S and Griffiths, A., D.(2002) Microbead display by in vitro compartmentalisation: selection for binding using flow cytometry. FEBS Lett., 532,455-458 Yonezawa, M., Doi, N., Kawahashi, Y., Higashinakagawa. T. and Yanagawa, H.(2003) DNA display for in vitro selection of diverse peptide libraries. Nucleic. Acids. Res.,31, e118. Bernath, K., Hia, M., Mastrobattista, E., Griffiths, A. D., Magdassi, S. and Tawfik, D. S. (2004) In vitro compartmentalization by double emulsions: sorting and gene enrichment by fluorescence activated cell sorting. Anal Biochem., 325, 151-157. Ohuchi, S., Nakano, H. and Yamane, T.( 1998) In vitro method for the generation of protein libraries using PCR amplification of a single DNA molecule and coupled transcription/translation. Nucleic Acids Res., 26, 4339-4346. Nakano, H., Kobayashi, K., Ohuchi, S., Sekiguchi, S. and Yamane, T. (2000) Single-step single-molecule PCR of DNA with a homo-priming sequence using a single primer and hot-startable DNA polymerase.. J. Biosci. Bioeng., 90, 456-458. Rungpragayphan, S., Nakano, H., and Yamane, T. (2003) PCR-linked in vitro expression: a novel system for high-throughput construction and screening of protein libraries. FEBS Lett., 540, 147-150. Kojima, T., Takei, Y., Ohtsuka, M., Kawarasaki, Y., Yamane, T. and Nakano, H.(2005) PCR amplification from single DNA molecules on magnetic beads in emulsion: application for high-throughput screening of transcription factor targets. Nucleic Acids Res., 33, e150. Leemhuis H et al.Curr Opin Struct Biol. 2005 Aug;15(4):472-8. Review.
図20に示した従来の分子ディスプレイ法では、核酸とビオチンとの結合、ビオチンとストレプトアビジンとの結合、ストレプトアビジンとビオチン標識抗体との結合、更にはビオチン標識抗体と蛋白質との結合、という4段階の結合を介して核酸と蛋白質が連結される。このような多段階の結合による連結は操作を煩雑にすることはもとより、安定した複合体(核酸と蛋白質の複合体)の形成に不利であり検出感度や検出精度の低下を招く。そこで本発明は、これらの問題点を克服し、ハイスループット化により適した新規な分子ディスプレイ法及びその用途を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み鋭意検討した結果、鋳型となる核酸にタグ配列を導入することによって標的蛋白質をペプチドタグとの融合蛋白質として発現させ、核酸とビオチン(第2結合物質)の結合、ビオチンとストレプトアビジン(第3結合物質)との結合、ストレプトアビジンとペプチドタグとの結合を介して核酸と蛋白質を連結する分子ディスプレイ法(図2を参照)を考案した。この方法によれば操作の簡便化が図れるとともに、核酸と蛋白質との連結に抗体を使用しないことから安定な複合体を形成することができる。
ところで、本分子ディスプレイ法では、無細胞蛋白質合成を実施するとペプチドタグ(ストレプトアビジンに結合性を有する)との融合蛋白質が合成された後、融合蛋白質のタグ部分とストレプトアビジンの結合が生ずる。このように、融合蛋白質の合成と融合蛋白質とストレプトアビジンとの結合が連続的に進行することになる。従って、反応溶液中に融合蛋白質以外のビオチン化蛋白質が共存していると、これらの分子が融合蛋白質とストレプトアビジンの結合に競合し、核酸−蛋白質(融合蛋白質)複合体の効率的且つ安定した形成に影響を及ぼすと予想された。実際、予備実験において従来の条件では核酸−蛋白質複合体の形成が確認できなかった(詳細は後述の実施例に記す)。そこで、無細胞蛋白質合成に用いる大腸菌S30抽出液中の遊離のビオチン化蛋白質の量を減らすことが有効であると考え、その検証を行った。具体的には、ビオチン代謝経路に関与する遺伝子(ビオチンシンターゼ(EC 2.8.1.6))を欠損させた大腸菌株を採用するとともに、酵母抽出物(yeast extract)を通常よりも少なくした培地を使用することにした。このようにして調製した大腸菌S30抽出液を用いて無細胞蛋白質合成反応を行うことにした上で、本分子ディスプレイ法を利用した濃縮実験を施行した。その結果、標的蛋白質を1ラウンドで高度に濃縮することに成功し、本分子ディスプレイ法の有効性が確認された。
本発明は主として以上の成果に基づくものであり、以下の通りである。
[1]以下のステップ(1)〜(4)を含む分子ディスプレイ法:
(1)エマルジョンの水相内において、第1結合物質が表面に結合した固相担体の存在下、第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合したプライマーを用い、ペプチドタグをコードする配列(タグ配列)を含む核酸を鋳型として核酸増幅反応を実施し、第2結合物質が付加された核酸が固相担体に複数連結してなる固相担体−核酸複合体を得るステップ;
(2)エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸複合体を回収するステップ;
(3)回収した固相担体−核酸複合体に、第2結合物質とペプチドタグの両者に結合性を有する第3結合物質を接触させるステップ;
(4)ステップ(3)後の固相担体−核酸複合体を水相に含有するエマルジョンを調製し、無細胞蛋白質合成系を利用して蛋白質を合成するステップ。
[2]ステップ(1)のエマルジョンとステップ(4)のエマルジョンがいずれも油中水(W/O)型エマルジョンである、[1]に記載の分子ディスプレイ法。
[3]以下の(a)〜(d)からなる群より選択される1以上の条件を満たす、[1]又は[2]に記載の分子ディスプレイ法:
(a)第1結合物質がストレプトアビジン又はアビジンである;
(b)第2結合物質がビオチンである;
(c)ペプチドタグが、アビジン又はストレプトアビジンに結合する配列である;
(d)第3結合物質がストレプトアビジン又はアビジンである。
[4]固相担体が磁性粒子である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
[5]ステップ(1)の核酸増幅反応がPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
[6]ステップ(1)における鋳型として2種類以上の核酸を使用し、
ステップ(1)の核酸増幅反応を、エマルジョン1個あたり平均1分子以下の鋳型が含まれる条件下で実施する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
[7]プライマーが、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)からなり、
第1プライマーを予め固相担体に結合した状態で使用する、[5]に記載の分子ディスプレイ法。
[8]プライマーが、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)からなり、
第1プライマーを2種類以上用意して種類毎に特定の固相担体に結合した状態で使用し、
ステップ(1)の核酸増幅反応を、エマルジョン1個あたり平均1個以下の固相担体が含まれる条件下で実施する、[7]に記載の分子ディスプレイ法。
[9]ステップ(1)が以下のステップ(1−1)〜(1−5)を含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法:
(1−1)第1結合物質が表面に結合した固相担体を用意するステップ;
(1−2)第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合した、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)を用意するステップ;
(1−3)固相担体に第1プライマーを結合させるステップ;
(1−4)固相担体、第2プライマー、ペプチドタグをコードする配列を含む核酸からなる鋳型、及び核酸増幅反応用試薬を水相に含有するエマルジョンを調製するステップ;
(1−5)エマルジョン内で核酸酸増幅反応を実施するステップ。
[10]ステップ(1−4)における水相が、更なる要素として遊離の第1プライマーを含有する、[9]に記載の分子ディスプレイ法。
[11]ステップ(1−1)と(1−2)の間に、固相担体を第2結合物質でブロッキングするステップを実施する、[9]又は[10]に記載の分子ディスプレイ法。
[12]第1プライマーに第2結合物質が2分子以上結合している、[7]〜[11]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
[13]ステップ(4)を、エマルジョン1個あたり平均1個以下の固相担体−核酸複合体が含まれる条件下で実施する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
[14]ステップ(4)の無細胞蛋白質合成系が、大腸菌S30抽出液の系である、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
[15]大腸菌S30抽出液の系が、ビオチン代謝経路に関与する遺伝子を欠損させた大腸菌のS30抽出液を用いた系である、[14]に記載の分子ディスプレイ法。
[16]大腸菌の培養の際、ビオチン及びビオチン化蛋白質の少ない培地を使用する、[15]に記載の分子ディスプレイ法。
[17]遺伝子がビオチンシンターゼ(EC 2.8.1.6)をコードする、[15]又は[16]に記載の分子ディスプレイ法。
[18]以下のステップ(i)〜(iii)を含むスクリーニング法:
(i)[1]〜[17]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法を実施した後、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体を回収するステップ;
(ii)回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体に、標的蛋白質に特異的結合性を有する標識物質を接触させるステップ;
(iii)標識された固相担体−核酸−蛋白質複合体を検出するステップ。
[19]標識物質が標識化抗体である、[18]に記載のスクリーニング法。
[20]以下のステップ(i)〜(iii)を含むスクリーニング法:
(i)[1]〜[17]のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法を実施した後、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体を回収するステップ;
(ii)平均1個以下の回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体と、酵素である標的蛋白質の基質と、を含有する内水相の水中油中水(W/O/W)型エマルジョンを調製するステップ;
(iii)酵素反応を認めるエマルジョンを検出するステップ。
本発明の第1の局面は分子ディスプレイ法に関する。本明細書において「分子ディスプレイ法」とは、表現型(蛋白質)とその遺伝子型(核酸)を関連付けた(連結した)状態で提示する方法をいう。本発明の分子ディスプレイ法では、固相担体、核酸、及び蛋白質の複合体が形成される。その結果、固相担体上に、蛋白質とそれをコードする核酸が連結した状態で提示されることになる。
本発明の分子ディスプレイ法では、以下のステップ(1)〜(4)を実施する。
(1)エマルジョンの水相内において、第1結合物質が表面に結合した固相担体の存在下、第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合したプライマーを用い、ペプチドタグをコードする配列(タグ配列)を含む核酸を鋳型として核酸増幅反応を実施し、第2結合物質が付加された核酸が固相担体に複数連結してなる固相担体−核酸複合体を得るステップ;
(2)エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸複合体を回収するステップ;
(3)回収した固相担体−核酸複合体に、第2結合物質とペプチドタグの両者に結合性を有する第3結合物質を接触させるステップ;
(4)ステップ(3)後の固相担体−核酸複合体を水相に含有するエマルジョンを調製し、無細胞蛋白質合成系を利用して蛋白質を合成するステップ。
1.ステップ(1)・・エマルジョン内核酸増幅反応
ステップ(1)では、エマルジョンの水相内において、第1結合物質が表面に結合した固相担体の存在下、第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合したプライマーを用い、ペプチドタグをコードする配列(タグ配列)を含む核酸を鋳型として核酸増幅反応を実施する。これによって、第2結合物質が付加されつつ核酸が増幅する。増幅した核酸は、第1結合物質と第2結合物質の結合によって固相担体に連結される。その結果、第2結合物質が付加された核酸が固相担体に複数連結してなる固相担体−核酸複合体が得られる。
エマルジョンの種類は特に限定されないが、調製が容易であること及び以降の操作が簡便になること等の理由から油中水(W/O)型エマルジョンを採用することが好ましい。エマルジョンは常法で調製すればよい。例えば「新しい分散・乳化の科学と応用技術の新展開」(株式会社情報機構)等に各種のエマルジョンの調製法が記載されている。
エマルジョンの調製には、攪拌処理(磁気攪拌子、プロペラ式などの使用)、ホモジナイズ(ホモジナイザー、乳鉢などの使用)、超音波処理(ソニケーターなどの使用)、膜などを利用できる。
エマルジョンの大きさは特に限定されないが、平均粒径が例えば1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μm、更に好ましくは10μm〜30μmのエマルジョンを形成するとよい。例えば、平均粒径を15μmとすれば20μl中に1.13×107個のエマルジョンミセルが存在することになる。エマルジョン全体の体積(総量)、及び反応系全体の体積(エマルジョンと油相の総量)は必要に応じて適宜設定できる。例えば、前者を1μL〜10L、好ましくは5μL〜1Lとし、後者を1μL〜20L、好ましくは10μl〜5Lとすることができる。
特開特開2006−211984号公報に開示される方法に従って調製した、熱安定性に優れたエマルジョンを用いることにしてもよい。このようなエマルジョンを用いれば、PCR法などの高温処理を伴う核酸増幅反応の間、エマルジョンの各コンパートメント(ミセル)を安定して維持することができ、コンパートメント内での期待される核酸増幅が進行し、またコンパートメント間でコンタミネーションが起こることを防止できる。従って、各コンパーメント内で効率的かつ独立した核酸増幅が行われる。
特開2006−211984号公報に開示される方法では、水性成分に、油性成分、及び親水親油バランス(HLB)が4以下の非イオン性界面活性剤を混合して油中水型エマルジョンを調製する。界面活性剤としてHBL値が2.5以下の非イオン性界面活性剤を用いることが特に好ましい。例えばこの条件を満たすポリグリセリン酸脂肪酸エステルを非イオン性界面活性剤として用いるとよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルの中でも縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステルを用いることが好ましい。尚、いくつかの縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステルが市販されており、例えば太陽化学株式会社(四日市市、日本)が提供するサンソフトNo.818SK(カタログ番号)を採用することができる。
尚、油性成分としては通常、ミネラルオイル(鉱物油)が使用される。
核酸増幅反応は、第1結合物質が表面に結合した固相担体の存在下で行われる。第1結合物質としては例えばストレプトアビジン又はアビジンが好適である。固相担体は微少な粒子(ビーズ)状であることが好ましい。エマルジョン内への効率的な取り込み、及び高い操作性が得られるからである。ビーズ状の固相担体を用いる場合の大きさは特に限定されないが、例えば粒径が1μm〜20μm、好ましくは2μm〜10μmの微少ビーズを採用する。
固相担体の材料は特に限定されない。例えば、ガラス、ポリスチレン、アクリルアミドゲル、磁性材料等を用いて固相担体を構成することができる。磁性粒子(ビーズ)からなる固相担体を採用することが特に好ましい。磁性粒子を用いれば、磁石を利用して容易に固相担体(又は固相担体−核酸複合体)を回収することができる。また、固相担体(又は固相担体−核酸複合体)を簡便な手段で洗浄することが可能であり、通常の核酸増幅反応後に必要とされる煩雑な精製操作(ゲル電気泳動、有機溶媒抽出、遠心処理、カラムクロマトグラフィーなど)を省略することができる。ストレプトアビジンが表面に結合した磁性粒子が市販されており(Dynabeads(登録商標)Streptavidin、DYNAL BIOTECH社)、これを「第1結合物質が表面に結合した固相担体」として用いることができる。尚、固相化に関してAdessi, C., Matton, G., Kawashima, E. (2000) Solid phase DNA amplification: characterisation of primer attachment and amplification mechanisms.Nucleic Acids Res., 28, e87、及びMitra, R., D. and Church, G., M.(1999)In situ localized amplification and contact replication of many individual DNA molecules.Nucleic Acids Res., 27, e34などを参照することができる。
核酸増幅反応では、第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合したプライマーを用いる。第2結合物質は、第1結合物質に特異的な結合性を示す限り特に限定されない。例えば、第1結合物質としてストレプトアビジン又はアビジンを用いた場合、第2結合物質としてはビオチン又はその誘導体を用いるとよい。尚、好ましくは、プライマーの5'末端に第2結合物質が結合している。
プライマーは、鋳型となる核酸(以下、「鋳型核酸」と呼ぶ)を増幅する際の開始領域を提供する。複数種類の核酸分子の集合から鋳型核酸が構成されている場合には、少なくとも一種類の鋳型核酸を合成可能なように、一種類以上の鋳型核酸の一部領域に対してハイブリダイズ可能なプライマーを設計する。
鋳型核酸には、ペプチドタグをコードする配列(タグ配列)を含む核酸が用いられる。用語「核酸」は、DNA(cDNA及びゲノムDNAを含む)、RNA(mRNAを含む)、DNA類似体、及びRNA類似体を含む。鋳型核酸の形態は限定されず、即ち1本鎖及び2本鎖のいずれであってもよい。好ましくは2本鎖DNAを鋳型核酸とする。また、典型的には、本発明では複数個の鋳型核酸を用いる。この場合、実施形態に応じて、単一種類の核酸の集合、又は複数種類の核酸の集合を「鋳型核酸」とする。例えば、ある細胞から調製されたゲノムDNAの集合、市販の又は常法で調製した各種cDNAライブラリー等を「鋳型核酸」として用いることができる。DNAライブラリーのように複数種類の核酸の集合を鋳型核酸とした場合は、エマルジョン1個あたり平均1分子の鋳型核酸が含まれるようにエマルジョン化するとよい。これによって、各エマルジョン内において理論上、鋳型核酸1分子からの核酸増幅反応が進行し、各エマルジョン内に含まれる増幅産物が実質的に同一分子の集合となる。即ち、各エマルジョン内において、実質的に同一分子の集合からなる増幅産物が生成する。従って、各エマルジョンを破壊し、その中の固相担体−核酸複合体をまとめて回収すれば、固相担体毎に特定の核酸が連結した複合体の集合(固相担体−核酸複合体ライブラリー)が得られることになる。上記条件に加えて、エマルジョン1個あたり平均1個の固相担体が含まれる条件でエマルジョンを作製した上で核酸増幅反応を実施すれば、鋳型核酸として用いたライブラリーのメンバー構成比を反映した固相担体−核酸複合体ライブラリーを調製することができる。
上記のように、エマルジョン1個あたりに平均1分子の鋳型核酸が含まれる条件下でエマルジョン化することが好ましいが、エマルジョン1個あたり平均して1分子よりも少ない数(例えば平均0.3〜0.9分子、好ましくは平均0.5〜0.9分子)の鋳型核酸が含まれる条件を採用することもできる。この場合、理論的にはエマルジョンの中のいくつかは鋳型核酸を内包しないことになる。しかし、1分子の鋳型核酸を内包する複数のエマルジョンが存在する限りこれらのエマルジョン内において上記同様の反応が進行し、固相担体毎に特定の核酸が連結した複合体の集合(固相担体−核酸複合体ライブラリー)を得ることが可能である。一方、このような条件設定とすれば、2分子以上の鋳型核酸を内包するエマルジョンが形成されてしまう確率を低下させることができるという利点がある。尚、固相担体の数についても同様の理由から、エマルジョン1個あたり平均して1個よりも少ない数(例えば平均0.3〜0.9個、好ましくは平均0.5〜0.9個)の固相担体が含まれる条件を採用することもできる。
ここで、各エマルジョンに含まれる鋳型核酸(又は固相担体)の数に関し、理論的には以下の関係が成り立つ。
(1)鋳型核酸(又は固相担体)の数=エマルジョン1個に含まれる鋳型核酸(又は固相担体)の数×エマルジョンの数
(2)エマルジョンの数=水性成分の体積/エマルジョン1個の体積
従って、エマルジョン1個あたり平均1分子の鋳型核酸(又は固相担体)が含まれるようにするには、
(3)鋳型核酸(又は固相担体)の数=水性成分の体積/エマルジョン1個の体積
となるように、使用する鋳型核酸(又は固相担体)の数を調整すればよい。
尚、エマルジョン1個の体積はエマルジョンの平均粒径を基に算出できる。図19にエマルジョンの粒径、エマルジョンの総数、及び鋳型核酸の数の関係について例示する。
鋳型核酸はペプチドタグをコードする配列を含む。「ペプチドタグ」とは、ペプチドからなる標識物質である。ペプチドタグとしてはアビジン又はストレプトアビジンに結合する配列が好適である。当該ペプチドタグとしてストレプトタグ(StrepTag)及びストレプトタグII(StrepTagII)を挙げることができる。これらをコードする配列を以下に示す。
ストレプトタグ:Ala-Trp-Arg-His-Pro-Gln-Phe-Gly-Gly(配列番号1)
ストレプトタグII:Trp-Ser-His-Pro-Gln-Phe-Glu-Lys(配列番号2)
核酸増幅反応の例として、PCR(Polymerase chain reaction)法若しくはその変法、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法(Tsugunori Notomi et al. Nucleic Acids Research, Vol.28, No.12, e63, 2000; Kentaro Nagamine, Keiko Watanabe et al. Clinical Chemistry, Vol.47, No.9, 1742-1743, 2001)、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法(特許第3433929号、特許第3883476号)、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、3SR(Self-sustained Sequence Replication)法、SDA(Standard Displacement Amplification)法、TMA(Transcription Mediated Amplification)法、RCA(Rolling Circle Amplification)を挙げることができる。中でもPCR法又はその変法による増幅反応を実施することが好ましい。
採用する核酸増幅反応に適当な核酸増幅反応用試薬を使用する。例えば、核酸増幅反応としてPCRを採用する場合には、PCRの各ステップに必要な試薬、即ちdNTP及びポリメラーゼ(Taqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼなど)が用いられる。これらの試薬は市販されており、容易に入手可能である。
本発明の一態様では、プライマーとして、鋳型核酸の特定領域をPCR反応で増幅可能な一対のプライマー(以下、便宜上「第1プライマーと第2プライマー」と称する)を用いる。この態様において片方のプライマー(第1プライマー)を予め固相担体に結合しておけば、当該プライマーを介して固相担体に連結された状態の増幅産物が得られる。このようにして、増幅産物である核酸が効率的且つ確実に固相担体に連結され、その結果、多数の核酸が連結した固相担体(固相担体−核酸複合体)が形成される。固相化するプライマー(第1プライマー)には、固相化を確実にするため、第2結合物質を2分子以上結合させておくことが好ましい。
第1プライマーを2種類以上用いることにしてもよい。この場合、第1プライマーを予め種類毎に特定の固相担体に結合しておく。そして、エマルジョン1個あたり平均1個の固相担体が含まれるようにエマルジョン化した上で核酸増幅反応を実施する。このようにすれば、各エマルジョン内において理論上、1個の固相担体に結合した第1プライマーを利用して核酸増幅反応が進行し、各エマルジョン内に含まれる増幅産物が実質的に同一分子の集合となる。即ち、各エマルジョン内において、実質的に同一分子の集合からなる増幅産物を固相担体に連結した状態で得ることができる。ここで、種類の異なる複数の第1プライマーを使用していることから、複数のエマルジョン内においてそれぞれ、他のエマルジョン内に含まれる第1プライマーとは種類の異なる第1プライマーを利用して増幅が生じ、その結果、内包する増幅産物の種類が異なる複数のエマルジョンが得られる。これらのエマルジョンを破壊し、その中の固相担体−核酸複合体をまとめて回収すれば、固相担体毎に特定の核酸が連結した複合体の集合(固相担体−核酸複合体ライブラリー)が得られる。尚、エマルジョン1個あたりに平均1個の固相担体が含まれる条件下でエマルジョン化することが好ましいが、上で説明した態様と同様、エマルジョン1個あたり平均して1個よりも少ない数(例えば平均0.3〜0.9個、好ましくは平均0.5〜0.9個)の固相担体が含まれる条件を採用することもできる。
尚、PCRを採用した態様の場合、典型的には、ステップ(1)として以下のステップ(1−1)〜(1−5)が順に行われる。
(1−1)第1結合物質が表面に結合した固相担体を用意するステップ;
(1−2)第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合した、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)を用意するステップ;
(1−3)固相担体に第1プライマーを結合させるステップ;
(1−4)固相担体、第2プライマー、ペプチドタグをコードする配列を含む核酸からなる鋳型、及び核酸増幅反応用試薬を水相に含有するエマルジョンを調製するステップ;
(1−5)エマルジョン内で核酸酸増幅反応を実施するステップ。
ステップ(1−4)における水相が、更なる要素として遊離の第1プライマーを含有することが好ましい。遊離状態の第1プライマーによって、PCRの最初の数サイクルで鋳型核酸を効率的に増幅することができるからである。
一方、ステップ(1−1)と(1−2)の間に、固相担体を第2結合物質でブロッキングするステップを実施することが好ましい。固相担体への非特異的な吸着を防止するためである。
2.ステップ(2)・・固相担体−核酸複合体の回収
ステップ(2)では、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸複合体を回収する。即ち、核酸増幅反応(ステップ(1))の後、エマルジョンを破壊し、各エマルジョン内の固相担体−核酸複合体をまとめて回収する。これによって固相担体−核酸複合体の集合が得られる。尚、ステップ(1)の核酸増幅反応の結果、核酸には第2結合物質が付加されている。
固相担体の材質や形状などに応じて適当な回収方法(例えば遠心処理)が採用される。磁性ビーズからなる固相担体であれば、磁石を利用して容易に回収することができる。
3.ステップ(3)・・固相担体−核酸複合体への第3結合物質の付加
ステップ(3)では、回収した固相担体−核酸複合体に、第2結合物質とペプチドタグの両者に結合性を有する第3結合物質を接触させる。これによって、固相担体に連結した核酸に、第2結合物質を介して第3結合物質が結合し、第3結合物質が付加された固相担体−核酸複合体が得られる。第2結合物質をビオチンとした場合、第3結合物質としてはストレプトアビジン又はアビジンが好適である。
4.ステップ(4)・・無細胞蛋白質合成
ステップ(4)では、ステップ(3)後の固相担体−核酸複合体(即ち、第3結合物質が付加された固相担体−核酸複合体)を水相に含有するエマルジョンを調製し、無細胞蛋白質合成系を利用して蛋白質を合成する。即ち、エマルジョン内に無細胞蛋白質合成系を構築し、複合体中の核酸からの転写/翻訳反応を進行させる。合成された蛋白質には、第3結合物質と結合するペプチドタグが付加される。そして、このペプチドタグと、上記複合体中の第3結合物質が結合することによって、合成された蛋白質が上記複合体に連結し、固相担体−核酸−蛋白質複合体が形成される。即ち、蛋白質とそれをコードする核酸が連結した状態(即ち関連付けられた状態)で固相担体上に提示されることになる。
エマルジョンの種類は特に限定されないが、調製が容易であること及び以降の操作が簡便になること等の理由からW/O型エマルジョンを採用することが好ましい。エマルジョンは常法で調製すればよい。尚、特に言及しない事項については、ステップ(1)におけるエマルジョンの説明が援用される。
エマルジョン1個あたり平均1分子の固相担体−核酸複合体が含まれるようにエマルジョン化するとよい。これによって、各エマルジョン内において理論上、複合体1分子に連結した複数の核酸から蛋白質合成が進行し、1種類の蛋白質が合成される。合成された蛋白質はそれに付加されたペプチドタグと第3結合物質との結合によって、固相担体に連結した核酸に連結される。これによって、各エマルジョン内には、蛋白質とそれをコードする核酸が連結した状態で固相担体に連結した複合体(固相担体−核酸−蛋白質複合体)が生ずる。各エマルジョンを破壊し、その中の固相担体−核酸−蛋白質複合体をまとめて回収すれば、固相担体毎に特定の蛋白質及びそれをコードする核酸が連結してなる複合体の集合(固相担体−核酸−蛋白質複合体ライブラリー)が得られる。
上記のように、エマルジョン1個あたりに平均1分子の固相担体−核酸複合体が含まれる条件下でエマルジョン化することが好ましいが、エマルジョン1個あたり平均して1分子よりも少ない数(例えば平均0.3〜0.9分子、好ましくは平均0.5〜0.9分子)の固相担体−核酸複合体が含まれる条件を採用することもできる。この場合、理論的にはエマルジョンの中のいくつかは固相担体−核酸複合体を内包しないことになる。しかし、1分子の固相担体−核酸複合体を内包する複数のエマルジョンが存在する限りこれらのエマルジョン内において上記同様の反応が進行し、固相担体毎に特定の蛋白質及びそれをコードする核酸が連結してなる複合体の集合(固相担体−核酸−蛋白質複合体ライブラリー)を得ることが可能である。一方、このような条件設定とすれば、2分子以上の固相担体−核酸複合体を内包するエマルジョンが形成されてしまう確率を低下させることができるという利点がある。
本発明において無細胞合成系(無細胞転写系、無細胞転写/翻訳系)とは、生細胞を用いるのではく、生細胞由来の(或いは遺伝子工学的手法で得られた)リボソームや転写・翻訳因子などを用いて、鋳型である核酸(DNAやmRNA)からそれがコードするmRNAや蛋白質をin vitroで合成することをいう。無細胞合成系では一般に、細胞破砕液を必要に応じて精製して得られる細胞抽出液が使用される。細胞抽出液には一般に、蛋白質合成に必要なリボソーム、開始因子などの各種因子、tRNAなどの各種酵素が含まれる。蛋白質の合成を行う際には、この細胞抽出液に各種アミノ酸、ATP、GTPなどのエネルギー源、クレアチンリン酸など、蛋白質の合成に必要なその他の物質を添加する。勿論、蛋白質合成の際に、別途用意したリボソームや各種因子、及び/又は各種酵素などを必要に応じて補充してもよい。
蛋白質合成に必要な各分子(因子)を再構成した転写/翻訳系の開発も報告されている(Shimizu, Y. et al.: Nature Biotech., 19, 751-755, 2001)。この合成系では、バクテリアの蛋白質合成系を構成する3種類の開始因子、3種類の伸長因子、終結に関与する4種類の因子、各アミノ酸をtRNAに結合させる20種類のアミノアシルtRNA合成酵素、及びメチオニルtRNAホルミル転移酵素からなる31種類の因子の遺伝子を大腸菌ゲノムから増幅し、これらを用いて蛋白質合成系をin vitroで再構成している。本発明ではこのような再構成した合成系を利用してもよい。
用語「無細胞蛋白質合成系」は、無細胞転写/翻訳系、in vitro翻訳系又はin vitro転写/翻訳系と交換可能に使用される。in vitro翻訳系ではRNAが鋳型として用いられて蛋白質が合成される。鋳型RNAとしては全RNA、mRNA、in vitro転写産物などが使用される。他方のin vitro転写/翻訳系ではDNAが鋳型として用いられる。鋳型DNAはリボソーム結合領域を含むべきであって、また適切なターミネータ配列を含むことが好ましい。尚、in vitro転写/翻訳系では、転写反応及び翻訳反応が連続して進行するように各反応に必要な因子が添加された条件が設定される。
無細胞蛋白質合成系には以下の利点がある。まず第1に、生細胞を維持する必要がないため操作性が良好で系の自由度も高い。したがって、目的の蛋白質の性質に応じて様々な修正や修飾を施した合成系を設計することが可能となる。次に、細胞系の合成では使用する細胞に毒性のある蛋白質の合成は基本的にできないが、無細胞系ではそのような毒性の蛋白質であっても生産することができる。さらに、多種類の蛋白質を同時にかつ迅速に合成できることからハイスループット化が容易である。生産される蛋白質の分離・精製が容易であるという利点も備え、これはハイスループット化に有利に働く。加えて、非天然型のアミノ酸を取り込ませるなどして非天然型蛋白質を合成することも可能であるという利点も併せ持つ。
現在広く利用されている無細胞蛋白質合成系には以下のものがある。即ち、大腸菌S30抽出液の系(原核細胞の系)、コムギ胚芽抽出液の系(真核細胞の系)、及びウサギ網状赤血球可溶化物の系(真核細胞の系)である。これらの系はキットとしても市販されており、容易に利用することが可能である。
歴史的には大腸菌S30抽出液の系の開発が最も古く、この系を利用して様々な蛋白質の合成が試みられてきた。大腸菌30S画分は、大腸菌の集菌、菌体破砕、精製の工程を経て調製される。大腸菌30S画分の調製及び、無細胞転写・翻訳共役反応はPrattらの方法(Pratt, J. M.: Chapter 7, in “Transcription and Translation: A practical approach”, ed. by B. D. Hames & S. J. Higgins, pp. 179-209, IRL Press, New York (1984))やEllmanらの方法(Ellman, J. et al.: Methods Enzymol., 202, 301-336(1991))を参考にして行うことができる。
コムギ胚芽抽出液の系は、高品質の真核生物蛋白質を効率的に合成できるという利点を有し、大腸菌S30抽出液の系では合成が困難な真核生物の蛋白質を合成する際によく利用される。最近になって、種子胚乳成分を洗浄除去した胚芽から抽出液を調製することによって高効率かつ安定な合成系が構築されることが報告され注目を集めている(Madin, K. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97: 559-564, 2000)。その後、高翻訳促進能を有するmRNA非翻訳配列、PCRを利用した多品目機能解析用の蛋白質合成法、専用高発現ベクターの構築などの技術開発が行われ(Sawasaki, T. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99: 14652-14657, 2002)、様々な分野への応用が期待されている。
コムギ胚芽抽出液は、コムギ胚芽をすり潰して遠心分離した後、上澄み液をゲルろ過で分離することによって得ることができる。翻訳反応については、Andersonらの方法(Anderson, C. W. et al.: Methods Enzymol., 101, 638-644(1983))を参考にできる。改良法についても報告されており、例えば河原崎らの方法(Kawarasaki, Y. et al.: Biotechnol. Prog., 16, 517-521(2000))やMadinらの方法(Madin, K. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97: 559-564, 2000)等を参考にできる。
ウサギ網状赤血球可溶化物の系はグロブリン生産に適する。ウサギ網状赤血球可溶化物は、ウサギにフェニルヒドラジンを数日間静脈注射して貧血状態とし、所定期間後(例えば第8日目)に採血し、その後溶血させた液から超遠心分離処理などを経て得られる。ウサギ網状赤血球可溶化物の調製法は、JacksonとHuntの方法(Jackson, R. J. and Hunt, T.: Methods Enzymol., 96, 50-74(1983))を参考にして行うことができる。
尚、本発明の実施に際して利用できる無細胞合成系は上記のもの限られるものではなく、例えば大腸菌以外のバクテリアやコムギ以外の植物の抽出液、昆虫由来の抽出液、動物細胞由来の抽出液、又はゲノム情報を基に構築した系などを利用してもよい。
本発明では、好ましくは大腸菌S30抽出液の系によって蛋白質合成を行う。ビオチンに特異的結合性を有する物質(代表例はストレプトアビジン)を第3結合物質とした場合には、合成された蛋白質と第3結合物質との結合に支障が生じないよう、大腸菌S30抽出液中のビオチン化蛋白質の量を減らすことが有効である。そこで、ビオチン代謝経路に関与する遺伝子を欠損させた大腸菌株から調製した大腸菌S30抽出液を用いることが好ましい。当該遺伝子の例は、ビオチンシンターゼ(EC 2.8.1.6)遺伝子、8−アミノ−7−オキソノナノエイト シンターゼ(EC 2.3.1.47)遺伝子、7,8?ジアミノナノエイト トランスマイナーゼ(EC 2.6.1.62)遺伝子、ジチオビオチンシンターゼ(EC 6.3.3.3)である。ビオチン代謝経路に関与する遺伝子を欠損させた大腸菌株の例はJW0757(ΔbioA)株、JW0758(ΔbioB)株、JW0759(ΔbioF)株、JW0761(ΔbioD)株である(これらはいずれも国立遺伝学研究所から容易に入手可能である)。この中でもビオチンシンターゼ遺伝子を欠損させた大腸菌株であるJW0758(ΔbioB)株を採用することが好ましい。ビオチン化蛋白質の合成量が少ないからである。
一方、大腸菌株の培養の際、ビオチン及びビオチン化蛋白質の少ない培地を使用することが好ましい。培地中のビオチン及びビオチン化蛋白質の量を少なくするためには例えば、酵母抽出物(yeast extract)やトリプトンなどの使用量を減らせばよい(例えば酵母抽出物を0.1g/L〜0.5g/L程度とした培地を用いるとよい)。
本発明の第2の局面は、上記分子ディスプレイ法を利用したスクリーニング法に関する。本発明のスクリーニング法では、以下のステップ(i)〜(iii)を実施する。本発明のスクリーニング法によれば、標的蛋白質を提示する固相担体−核酸−蛋白質複合体を迅速に特定(選択)できる。
(i)本発明の分子ディスプレイ法を実施した後、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体を回収するステップ;
(ii)回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体に、標的蛋白質に特異的結合性を有する標識物質を接触させるステップ;
(iii)標識された固相担体−核酸−蛋白質複合体を検出するステップ。
以下、各ステップを説明するが、言及しない用語ないし事項については、上記第1の局面の対応する説明が援用される。
ステップ(i)ではまず本発明の分子ディスプレイ法を実施する。これによって固相担体−核酸−蛋白質複合体を含む複数のエマルジョンを得る。続いて、各エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体をまとめて回収する。この結果、固相担体−核酸−蛋白質複合体の集合が得られる。
ステップ(ii)では、回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体に、標的蛋白質に特異的結合性を有する標識物質を接触させる。例えば、固相担体−核酸−蛋白質複合体を含む溶液中に標識物質を添加し、撹拌する。標識物質は特に限定されない。例えば、目的の蛋白質に特異的結合性を有する標識化抗体を標識物質として用いることができる。抗体の標識化には、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、オレゴングリーン等の蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、32P、131I、125I等の放射性同位体などを用いることができる。
ステップ(iii)では、標識された固相担体−核酸−蛋白質複合体、即ち標的蛋白質を提示する複合体を検出する。標識物質に応じて適切な検出法を採用すればよい。検出法の例としてフローサイトメトリー(FCM)、オートラジオグラフィー、吸光度測定などを挙げることができる。
標的蛋白質が酵素の場合、以下のステップ(i)〜(iii)を含むスクリーニング方法を実施するとよい。
(i)本発明の分子ディスプレイ法を実施した後、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体を回収するステップ;
(ii)平均1個以下の回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体と、酵素である標的蛋白質の基質と、を含有する内水相の水中油中水(W/O/W)型エマルジョンを調製するステップ;
(iii)酵素反応を認めるエマルジョンを検出するステップ。
この態様のスクリーニング法では、酵素反応が生ずる環境をエマルジョン内に構築し、酵素反応の有無を指標として、標的蛋白質を提示する固相担体−核酸−蛋白質複合体を特定(選択)する。まず、上記態様と同様にステップ(i)を実施し、固相担体−核酸−蛋白質複合体の集合を得る。続くステップ(ii)では回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体と、酵素である標的蛋白質の基質とを含有する内水相のW/O/W型エマルジョンを調製する。このとき、エマルジョン1個あたりの固相担体−核酸−蛋白質複合体の数を平均1個以下とする。W/O/Wエマルジョンの調製は常法(例えば「新しい分散・乳化の科学と応用技術の新展開」(株式会社情報機構)が参考になる)で行えばよい。本発明のスクリーニング法は汎用性が高く、任意の酵素を標的蛋白質にできる。酵素の例は、脱水素酵素、酸化酵素等の酸化還元酵素、アミノ基転移酵素、アセチル基転移酵素、キナーゼ等の転移酵素、蛋白質分解酵素、リパーゼ、ホスファターゼ、セルラーゼ等の加水分解酵素、脱カルボキシル酵素、カルボキシル化酵素等の脱離酵素、ラヤミ化酵素、エピ化酵素等の異性化酵素、アセチルCOA合成酵素、ピルビル酸カボキシル化酵素、アミノアシルtRNA合成酵素等の合成酵素である。
ステップ(iii)では、酵素反応を認めるエマルジョンを検出する。酵素反応により蛍光が生ずる反応系とすれば例えばフローサイトメトリーを利用して迅速な検出が可能である。勿論、検出と同時に分取することにしてもよい。ステップ(ii)でW/O/W型エマルジョンを調製することにしたため、ステップ(ii)の後、直接、フローサイトメトリーを実施することが可能になる。尚、酵素反応が生じたエマルジョンを検出できる限り、検出法はフローサイトメトリーに限定されない。
本発明の第3の局面は本発明の方法(分子ディスプレイ法又はスクリーニング法)に利用可能なキットを提供する。本発明のキットは、以下に列挙する要素(1)〜(14)の中の二つ以上を含有する。
(1)第1結合物質(例えばストレプトアビジン)
(2)第1結合物質が結合した固相担体(例えば、ストレプトアビジンが表面に結合した磁性粒子)
(3)固相担体(例えば磁性粒子)
(4)第2結合物質(例えばビオチン)
(5)第2結合物質が結合した核酸増幅反応用プライマー(例えば、ビオチンが5'末端に結合したPCR用プライマー)
(6)核酸増幅反応用プライマー(例えばPCR用プライマー)
(7)第3結合物質(例えばストレプトアビジン)
(8)タグ配列を含む核酸コンストラクト(例えばストレプトタグをコードする配列を含むプラスミド)
(9)エマルジョン調製用の油(例えばミネラルオイル)
(10)エマルジョン調製用の界面活性剤(例えば非イオン性界面活性剤)
(11)核酸増幅反応用試薬(例えばPCR用DNAポリメラーゼ)
(12)無細胞蛋白質合用試薬(例えば大腸菌S30抽出液調製用試薬)
(13)標的蛋白質を標識可能な標識物質(例えば蛍光標識化抗体)
(14)標的蛋白質である酵素の基質
尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
尚、特に記載のない限り、本明細書における遺伝子工学的操作は例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)或いはCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参考にして行うことができる。
<方法>
1. プラスミドの構築
GST-His-strept発現用プラスミドpRGSTH-strept構築の概要を図1に示した。リン酸化したStrept-GSTFプライマー(配列番号3)とStrept-GSTRプライマー(配列番号4)を用いて、以前構築されたpRGSTHとpRGSTFを鋳型にインバースPCRを行った。セルフライゲーションを行いpRGSTH-streptとpRGSTF-streptを構築した。得られたプラスミドについて、DNA塩基配列を確認した。
2. 菌体中のビオチンの検出
サンプルをSDS-PAGE(12.5%アクリルアミド)で流した後、ブロッティングバッファー(0.31%Tris, 1.44%Glycine, 20%(v/v) Methanol)でゲルを洗浄し、メタノールで親水処理を行ったPVDF膜にブロッティングした(15V, 43分間)。TS(PBS (pH7.4),0.05%Tween20)で洗浄し、ブロックエースTMを用いてブロッキングを行った(over night)。TSで3回洗浄後、10mlのブロックエース溶液にベクタステインABC-POキット(VECTOR社)付属のアビジンDHとビオチン化ペルオキシダーゼを等量混合し、40分間反応させた。検出にはSuper Signal(登録商標)West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用い、酵素反応によって生じた発光を発光検出装置Light Capture(ATTO)を用いて検出した。
3. 大腸菌培養培地の調製
大腸菌JW0758株の大腸菌S30抽出液調整のために、LB培地、およびRich mediumを調製した。培地組成は図16に示す。Rich mediumは当研究室で山根が考案した培地で、現在当研究室で大腸菌S30抽出液を調製する際に用いられる。従来の方法ではyeast extractの量は2.0g/Lであったが、今回のディスプレイ法のために最適化を行い0.2g/Lで調製を行った。
4. 大腸菌抽出液(E.coli S30 extract)の調製
本実験の転写・翻訳反応に使用した大腸菌抽出液は、図17に示した方法で調製した。まず、E.coli A19株をOD450が6.0-8.0になるまで培養した。菌体を回収し、β-メルカプトエタノールを添加したS30 bufferで洗浄した後、湿潤菌体重量1 gあたり1 gのガラスビーズ(0.17-0.18mm)を加え、MULTI BEADS SHOCKER(安井機械株式会社)を用いて菌体を破砕した。2度の超遠心分離 (30,000×g, 39min, 4℃)で残渣を取り除き、上清1mLあたり0.3mLのpreincubation mixtureを加えpreincubation(80min, 37℃)を行った。さらに反応液を約50倍量のS30 bufferで6回透析(30min, 4℃)を行った後、再び遠心分離 (5,200×g, 10min, 4℃) で残渣を取り除いた。調整した大腸菌抽出液は、液体窒素中に保存した。
5. マイクロビーズへの5'-2重ビオチン(dual biotin)化プライマーの固定(図2を参照)
任意の個数のDynabeads(登録商標)M280 Streptavidin(DYNAL)を1×B&Wバッファー(10mM Tris-HCl (pH7.5), 1mM EDTA, 2mM NaCl)100μlで2回洗浄後、2×B&Wバッファー50μlに懸濁した。ここに5'-2重ビオチン修飾が施されたプライマーRv1-T8-db(配列番号5)100μM 5μlとSW 45μlを加えた。その後、ビーズを分散させておくために回転盤(マイクロチューブローテーターMTR-103(アズワン株式会社))を用いて室温で30分間撹拌(1分間に3-5回転程度。以後回転盤を用いる操作は同様の回転条件で行った)しながらプライマーとマイクロビーズの結合反応を行った。反応終了後はTEを用いて洗浄操作を3回行い、TEに懸濁して4℃で保存した。
6. エマルジョンPCR
(1)W/Oエマルジョンの作製
作製したW/Oエマルジョンの水相(PCR反応液)組成、油相の組成は図3に示した。1.5mlチューブにミネラルオイル380μlと界面活性剤サンソフトNo. 818SK(太陽化学株式会社)16μlとSpan80(Fluka) 4μlを加えた。この油相を20分以上撹拌した後、55℃の恒温槽で5分温め混合し、氷中で冷やした。油相が冷却されたのを確認し、水相を徐々に添加した。完全に水相を添加した後、ボルテックスで10秒程度激しく撹拌をしてエマルジョンの作製を行った。3分間氷上に放置し形成されたエマルジョン懸濁液は50μlずつPCRチューブに分注し、エマルジョンPCRを行った。反応条件は図6に示すとおりである。
(2)W/Oエマルジョン破壊とビーズの回収
PCR終了後、1チューブにつきヘキサン50μlを加えてピペッティングで懸濁し、エマルジョン懸濁液を1本の1.5mlチューブに回収した。遠心(15000rpm,4℃,1分間)により水相と油相を分離し、油相を除去した。500μlのB&Wバッファーをこれに加え、ボルテックスで激しく混和してエマルジョンを破壊した。遠心(15000rpm,4℃,1分間)でビーズを一旦沈降させた後、ヘキサン1mlを加えて懸濁し、遠心(15000rpm,4℃,1分間)してヘキサン層を除去した。同様のヘキサンによる洗浄を3回程度繰り返した後、ビーズを磁石で回収して上清を完全に除去した。200μlのTEで洗浄した後、TE 10μlに懸濁して4℃で保存した。
7. 分子ディスプレイ法によるビーズ上への蛋白質のディスプレイ(一連の操作手順については図18を参照)
(1)ビーズ-DNA-抗体複合体の形成
3-5.に従って調製したDNAディスプレイビーズ(5×105個程度)をPBS(pH7.3)100μlで洗浄した。PBSで希釈した20μl/mlストレプトアビジン50μlでビーズを懸濁し、回転盤を用いて遮光して室温にて30分間撹拌してビオチンとストレプトアビジンの結合反応を行った。反応後、ビーズをSW 100μlで洗浄し以下の操作に用いた。
(2)W/Oエマルジョン内無細胞蛋白質合成反応
作製したW/Oエマルジョンの水相(無細胞転写翻訳反応液)組成および油相の組成は図4に示した。2mlアシストチューブ(SARSTEDT)にミネラルオイル380μlと、界面活性剤としてSpan80 18μlおよびTritonX-100 2μlを加えた。この油相を、翼付きマイクロ撹拌子(5.5×9.5mm)を用いて氷上にて1000rpmで撹拌した。一方、上記の操作を行ったビーズに、直前に調製した無細胞転写翻訳反応液18μlを加え、軽くピペッティングで懸濁した後、氷上で撹拌中の油相に添加した。水相を全て添加してから氷上で5分間撹拌を続け、すぐにエマルジョン懸濁液をアシストチューブから1.5mlチューブに移し、37℃の恒温槽で10分間反応させその後、エマルジョンを分散させておくために回転盤で撹拌しながら37℃にて80分間、無細胞蛋白質合成反応を行った。
(3)エマルジョンの破壊とビーズの回収
無細胞蛋白質合成反応終了後、遠心(6000rpm (3300g),4℃,10分間)により水相と油相を分離し、油相を除去した。200μlのPBS/T(0.05% Tween20 in PBS)をこれに加え、ピペッティングでチューブの底の白い沈殿物を剥がし取った後、ボルテックスを用いて激しく混和し、エマルジョンを破壊した。遠心(10800rpm (10600g),4℃,1分間)でビーズを一旦沈降させた後、ヘキサン1mlを加えて懸濁し、遠心(10800rpm (10600g),4℃,1分間)してヘキサン層を除去した。同様のヘキサンによる洗浄をビーズに付着した白い汚れが無くなるまで3回程繰り返した後、ビーズを磁石で回収して上清を完全に除去した。100μlのPBSで1回洗浄して次の操作を行った。
8. フローサイトメトリーによる解析およびスクリーニング
7.に従い調製したビーズ-DNA-蛋白質複合体に対し、PBSで10ng/μlに希釈した蛍光標識抗(His)6抗体 Anti-His (C-term)-FITC(Invitrogen)を20μl加え、回転盤を用いて15分間遮光状態で撹拌を行った。15分後PBS 500μlを加え、EPICS(登録商標)ELITE ESP(Beckman Coulter)を用いてFITC蛍光の解析およびビーズの分取を行った。分取したビーズはTEに懸濁して4℃で保存した。
9. 1ビーズPCR
8.に従いセルソーターを用いて分取したビーズを、1チューブあたりビーズ1個が存在するように希釈して分注し、ビーズ上に固定されたDNAを鋳型としてPCRを行った。1ビーズPCRの反応液組成および温度プログラムは図5に示した。
10. ビーズ上に固定されたDNAの配列判定法
1ビーズPCRにより目的サイズのDNA断片の増幅が見られたサンプルについて、図6のように異なるプライマーを用いたPCRによりDNA断片の配列がGST-Hisであるか、GST-FLAGであるかを判定した。フォワードプライマーは共通のFw1(配列番号6)を用い、リバースプライマーはGST-Hisに特異的にアニールするHis-rプライマー(配列番号7)、あるいはGST-FLAGに特異的にアニールするFLAG-rプライマー(配列番号8)を用いた。鋳型は1ビーズPCR産物を滅菌水で200倍に希釈したものを用いた。PCRの条件は図7に示したとおりである。
<結果>
1. GST-His-strept, GST-FLAG-streptをビーズ上にディスプレイする系のデザイン
分子ディスプレイ法では、まずエマルジョンPCRでビーズ-DNA複合体を形成し、次にDNAと目的蛋白質を連結させる抗体などの分子をDNAに結合させた上で、エマルジョン内で無細胞蛋白質合成を行うことで、ビーズ-DNA-蛋白質複合体を形成する。今回はGST融合蛋白質をビーズ上にディスプレイするため、図2のような系を考案した。
プライマー固定化ビーズは、ストレプトアビジンビーズと5’末端が2重ビオチン化されたプライマーを用いて作製する(ステップ1)。このプライマー固定化ビーズを用いてエマルジョンPCRを行うと、ビーズ-DNA複合体が得られる。エマルジョンPCRの際に5’末端がビオチン修飾されたフォワードプライマーを用いると、増幅されたDNAはビオチン化される(ステップ2)。次に、エマルジョン破壊後、ストレプトアビジンを加える(ステップ3)。エマルジョン内無細胞蛋白質合成系でGST-ストレプトタグ融合蛋白質が合成されるとDNA上のストレプトアビジンに結合し、ビーズ-DNA-蛋白質複合体が形成される(ステップ4)。最後にFITC標識された抗(His)6抗体を用いて(His)6をディスプレイしたビーズのみを選択する。抗(His)6抗体が結合したビーズは蛍光を発するため、フローサイトメトリーを用いてスクリーニングすることができると考えた。
2. 細胞抽出液中のビオチン量の検討
従来、本研究室で行われてきたディスプレイ法では、ビオチン標識抗GST抗体を使いストレプトアビジン-ビオチン化DNAとGST融合蛋白質をディスプレイしてきた(図19を参照)。今回新規の手法として、抗体を使わずストレプトタグ融合蛋白質を用いることでより簡便かつ安価な手法の開発を目指した。
しかしながら、1.で作製したようなpRGSTH-strept、pRGSTF-streptでディスプレイを行ったところビーズ-DNA-蛋白質複合体の形成を確認することができなかった。この理由として、S30細胞抽出液中に含まれるビオチン化蛋白質がDNAと目的蛋白質の結合を阻害しているのではないかと考えた。そのため、ビオチン代謝系の酵素を欠損させた株JW0757(ΔbioA),JW0758(ΔbioB),JW0759(ΔbioF),JW0761(ΔbioD)と従来の細胞抽出液作製に使う大腸菌A19(ΔRNaseI)を使い菌体中のビオチン化蛋白質の量を調べた(図8)。合成培地であるM9培地では菌体内のビオチン化蛋白質が検出されなくなったが、天然培地であるLB培地では培地成分中に含まれるビオチン化蛋白質の影響もありそれほど減らすことはできなかった。その中でもJW0758(ΔbioB)が最もビオチン化蛋白質の合成量が少ないと思われるため以後の実験はJW0758(ΔbioB)を用いた。
本研究室で行っているS30細胞抽出液調製法は培養組成において、yeast extract中にビオチン化蛋白質が多く含まれていると考えた。培地中にyeast extractが全く含まれないと培養が行われないことが確かめられたので、段階的にyeast extractの量を減らして増殖曲線を調べた(図9)。従来の1/10の量のyeast extractを用いる場合までは、同様の増殖曲線を示したがそれ以上少なくなった場合、増殖が行われなくなった。このため、yeast extractの量は1/10にしてS30細胞抽出液の調製を行った。このときの菌体中のビオチン化蛋白質の量と実際のS30細胞抽出液のビオチン化蛋白質の量を示した(図10、11)。
3. (His)6とFLAGを使ったモデルライブラリーからの濃縮
今回、エマルジョン内を反応場として実験を行ったが、反応の前後でエマルジョンが壊れず、PCRでは直径約30μm、無細胞蛋白質合成系では直径約10μmの均一なエマルジョンができていることが確認できた(図12)。本手法の有用性を調べるため、(His)6タグあるいはFLAGタグを組み込んだ遺伝子を使いFITC標識抗(His)6タグ抗体で(His)6タグのスクリーニングを行った。まず、(His)6タグあるいはFLAGタグのFACSでの観察を行った(図13)。その結果、顕著な蛍光の差が見られ本手法でビーズ-DNA-蛋白質複合体が形成され、FITC標識抗(His)6タグ抗体での検出が可能であることが確かめられた。
次に(His)6:FLAG=1:100または1:1000からの選択的濃縮を行った(図14、15)。エマルジョンPCRでビーズ-DNA複合体を作製する際、GST-His-strept:GST-FLAG-strept=1:100あるいは1:1000となるようにDNAを混合しエマルジョンPCRを行った。また、エマルジョン内に2分子以上の鋳型が存在する可能性を少なくするため、0.33分子/エマルジョンとなるように鋳型を加えた。ソーティング後、ビーズ上のDNAを回収するため分取したビーズを用いて1ビーズPCRを行った。DNAが回収できたサンプルについて配列の判定を行った。図6に原理を示したとおり(His)6をコードする部位に特異的なプライマーを用いるとGST-His-strept配列のみPCR増幅が可能である。FLAG配列用プライマーではGST-FLAG-strept配列のみが増幅される。
結果、1:100のライブラリーでは1ビーズPCRで増幅した8サンプル中、5サンプルが(His)6配列のみが増幅し、残りの3サンプルは(His)6とFLAG両方の配列が増幅した。また、1:1000のライブラリーからのソーティングの場合、14サンプル中11サンプルが(His)6配列のみが増幅し、残りの3サンプルは(His)6とFLAG両方の配列が増幅した。これより1ラウンドのスクリーニングで高い割合で標的分子を得ることが可能であることが証明された。
尚、(His)6とFLAG両方の配列が増幅した理由として、(a)エマルジョンPCRの時、(His)6とFLAGの両方の鋳型が同じエマルジョン中に存在してしまい、両方のDNAが結合したビーズができてしまったこと、及び(b)1ビーズPCRの時、複数のビーズが入ってしまい両方の配列が増幅したこと、が考えられる。
本発明の分子ディスプレイ法によれば簡便な操作によって、安定した固相担体−核酸−蛋白質複合体を形成することができる。従って、ハイスループットな検出に好適である。また、本発明の分子ディスプレイ法は汎用性も高く、様々な応用が可能である。例えば、標的分子のスクリーニングないし濃縮に本発明を利用できる。また、種々の蛋白質の新規創製や高速分子進化のためのツールとして本発明を利用することも大いに期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
プラスミドpRGSTH-strepの構築。 新規分子ディスプレイ法を用いた実験の概要。 PCR用エマルジョンの作製法とエマルジョンPCRの条件。 無細胞蛋白質合成用のエマルジョンの作製手順と試薬組成。 1ビーズPCRの反応液組成と温度条件。 回収したDNAの配列をPCRで判定する方法。 配列決定PCRの反応液組成と温度条件。 各菌体中のビオチン化蛋白質の量。 Yeast extractの量と増殖曲線の関係。 Yeast extractとビオチン化蛋白質の関係。 S30抽出液の調製に使用した菌体とビオチン化蛋白質の関係。 PCRと無細胞蛋白質合成系のために作製したエマルジョンの顕微鏡像。 FACSを用いた(His)6タグ、FLAGタグの観察結果。 H:F=1:100からの濃縮。 H:F=1:1000からの濃縮。 LB培地、Rich mediumの培地組成。 大腸菌S30抽出液の調製法。 ビーズ−DNA−蛋白質複合体形成の手順。 エマルジョンの粒径、エマルジョンの総数、及び鋳型核酸の数の関係。 従来の分子ディスプレイ法の概要。

Claims (20)

  1. 以下のステップ(1)〜(4)を含む分子ディスプレイ法:
    (1)エマルジョンの水相内において、第1結合物質が表面に結合した固相担体の存在下、第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合したプライマーを用い、ペプチドタグをコードする配列(タグ配列)を含む核酸を鋳型として核酸増幅反応を実施し、第2結合物質が付加された核酸が固相担体に複数連結してなる固相担体−核酸複合体を得るステップ;
    (2)エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸複合体を回収するステップ;
    (3)回収した固相担体−核酸複合体に、第2結合物質とペプチドタグの両者に結合性を有する第3結合物質を接触させるステップ;
    (4)ステップ(3)後の固相担体−核酸複合体を水相に含有するエマルジョンを調製し、無細胞蛋白質合成系を利用して蛋白質を合成するステップ。
  2. ステップ(1)のエマルジョンとステップ(4)のエマルジョンがいずれも油中水(W/O)型エマルジョンである、請求項1に記載の分子ディスプレイ法。
  3. 以下の(a)〜(d)からなる群より選択される1以上の条件を満たす、請求項1又は2に記載の分子ディスプレイ法:
    (a)第1結合物質がストレプトアビジン又はアビジンである;
    (b)第2結合物質がビオチンである;
    (c)ペプチドタグが、アビジン又はストレプトアビジンに結合する配列である;
    (d)第3結合物質がストレプトアビジン又はアビジンである。
  4. 固相担体が磁性粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
  5. ステップ(1)の核酸増幅反応がPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
  6. ステップ(1)における鋳型として2種類以上の核酸を使用し、
    ステップ(1)の核酸増幅反応を、エマルジョン1個あたり平均1分子以下の鋳型が含まれる条件下で実施する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
  7. プライマーが、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)からなり、
    第1プライマーを予め固相担体に結合した状態で使用する、請求項5に記載の分子ディスプレイ法。
  8. プライマーが、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)からなり、
    第1プライマーを2種類以上用意して種類毎に特定の固相担体に結合した状態で使用し、
    ステップ(1)の核酸増幅反応を、エマルジョン1個あたり平均1個以下の固相担体が含まれる条件下で実施する、請求項7に記載の分子ディスプレイ法。
  9. ステップ(1)が以下のステップ(1−1)〜(1−5)を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法:
    (1−1)第1結合物質が表面に結合した固相担体を用意するステップ;
    (1−2)第1結合物質に結合性を有する第2結合物質が結合した、PCR用の一対のプライマー(第1プライマー及び第2プライマー)を用意するステップ;
    (1−3)固相担体に第1プライマーを結合させるステップ;
    (1−4)固相担体、第2プライマー、ペプチドタグをコードする配列を含む核酸からなる鋳型、及び核酸増幅反応用試薬を水相に含有するエマルジョンを調製するステップ;
    (1−5)エマルジョン内で核酸酸増幅反応を実施するステップ。
  10. ステップ(1−4)における水相が、更なる要素として遊離の第1プライマーを含有する、請求項9に記載の分子ディスプレイ法。
  11. ステップ(1−1)と(1−2)の間に、固相担体を第2結合物質でブロッキングするステップを実施する、請求項9又は10に記載の分子ディスプレイ法。
  12. 第1プライマーに第2結合物質が2分子以上結合している、請求項7〜11のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
  13. ステップ(4)を、エマルジョン1個あたり平均1個以下の固相担体−核酸複合体が含まれる条件下で実施する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
  14. ステップ(4)の無細胞蛋白質合成系が、大腸菌S30抽出液の系である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法。
  15. 大腸菌S30抽出液の系が、ビオチン代謝経路に関与する遺伝子を欠損させた大腸菌のS30抽出液を用いた系である、請求項14に記載の分子ディスプレイ法。
  16. 大腸菌の培養の際、ビオチン及びビオチン化蛋白質の少ない培地を使用する、請求項15に記載の分子ディスプレイ法。
  17. 遺伝子がビオチンシンターゼ(EC 2.8.1.6)をコードする、請求項15又は16に記載の分子ディスプレイ法。
  18. 以下のステップ(i)〜(iii)を含むスクリーニング法:
    (i)請求項1〜17のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法を実施した後、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体を回収するステップ;
    (ii)回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体に、標的蛋白質に特異的結合性を有する標識物質を接触させるステップ;
    (iii)標識された固相担体−核酸−蛋白質複合体を検出するステップ。
  19. 標識物質が標識化抗体である、請求項18に記載のスクリーニング法。
  20. 以下のステップ(i)〜(iii)を含むスクリーニング法:
    (i)請求項1〜17のいずれか一項に記載の分子ディスプレイ法を実施した後、エマルジョンを破壊し、固相担体−核酸−蛋白質複合体を回収するステップ;
    (ii)平均1個以下の回収した固相担体−核酸−蛋白質複合体と、酵素である標的蛋白質の基質と、を含有する内水相の水中油中水(W/O/W)型エマルジョンを調製するステップ;
    (iii)酵素反応を認めるエマルジョンを検出するステップ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106148569A (zh) * 2016-07-14 2016-11-23 江苏大学 两步乳液pcr的检测方法
WO2017177153A1 (en) * 2016-04-07 2017-10-12 Novozymes A/S Methods for selecting enzymes having protease activity

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