JP2009176464A - 組電池装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】各単電池セルの冷却特性を均一とするとともに、埃の堆積や結露による漏電などの不具合を防止し、かつコンパクトで放熱性の高い組電池装置とする。
【解決手段】熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材からなるマトリックス20とマトリックス20中に含まれた繊維の長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の繊維部材21とからなる熱伝導部材2と、単電池セル1とを交互に積層した。
単電池セル1の熱は、熱伝導部材2の密着表面22からマトリックス20を介して繊維部材21に伝わり、繊維の長さ方向に効率よく伝熱されて放熱表面23に伝導され、放熱表面23から放熱空間へ放熱される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、直方体形状をなす単電池セルを複数個列設してなる組電池装置に関する。
電気自動車の駆動電源として用いられるニッケル・水素二次電池、リチウムイオン二次電池などは、高いエネルギー密度が必要とされ、かつ搭載スペースは極力小さくすることが求められている。そのため単電池セルを複数個集合させた組電池とするのが一般的である。例えば直方体形状をなす数V〜十数Vの単電池セルを数十個直列に接続し、これを1つのパッケージに納めて組電池とされている。この組電池は、たとえば後席下部、トランクルームなどに搭載されている。
ところで組電池の性能や寿命は温度環境に大きく依存し、高温になると劣化が著しい。そこで、単電池セルの表面に大気と連通する冷却通路を形成し、冷却通路に車室内空気を導入したり、エアコンの風を強制的に導入することが行われている。
一方、ニッケル・水素二次電池などにおいては、充電時などに直方体形状をなす単電池セルが膨張し、最も広い側面が円弧状に外側へ膨らむという現象が避けられない。このようになると、直方体形状をなす単電池セルを複数個集合させた組電池では、対向する壁面どうしが小さな接触面積で接触して接触部分に大きな応力が集中する可能性がある。
そこで、各単電池セルの内圧を均一にして各単電池セルの充放電特性を均一にする目的で、単電池セルに所定の荷重を負荷して加圧拘束した状態で配列することが行われている。例えば特開2001−313018号公報に紹介されている組電池装置では、複数の単電池セルを厚さ方向に配列し、厚さ方向の両端にそれぞれ一つずつの拘束板を重ねた上で、2つの拘束板を拘束ロッドにて互いに接近する方向に締め付けている。2つの拘束板を互いに接近する方向に締め付けることで、複数の単電池セルを互いに密着させ、各単電池セルに荷重を負荷することで膨張を規制することができる。
しかし上記組電池装置では、中央部の単電池セルは端部の単電池セルに比べて放熱しにくいという問題がある。このように各単電池セル間の冷却特性に差が生じると、各単電池セルの出力、寿命などにばらつきが生じ、結果的に組み電池装置の出力が不安定となるとともに寿命が短くなってしまう。
そこで特開2007−012486号公報には、複数の単電池セルの上部を密閉構造の電池室に収納し、各単電池セルの下部が冷却室に表出した組電池装置が提案されている。この組電池装置によれば、冷却室に冷却空気などを流通させることで各単電池セルを均一に冷却することができる。
また特開平07−045310号公報には、各単電池セルに近接してヒートパイプを配置し、ヒートパイプの端部を放熱板に係合することで、単電池セルの熱を外部に放熱するようにした組電池装置が提案されている。
しかしながら、これらの組電池装置では、構造が複雑となるために大型化し、スペース面あるいはコスト面で不具合がある。
そこで図10に示すように、単電池セル 100どうしの間にスペーサ 101を介在させ、隣接する単電池セル 100の最も広い側面どうしがスペーサ 101を介して互いに対向するように交互に複数個列設し、両端に拘束板 102を配置して拘束ロッドなどによって列設方向に拘束することが行われている(例えば特開2006−048996号公報参照)。この組電池装置においては、スペーサ 101にリブ 103を形成することで、単電池セル 100とスペーサ 101との間に高さ1〜2mmの空間 104が形成される。したがって、単電池セル 100が膨張した場合にも対向する壁面どうしの干渉を防止することができる。またこの空間 104に空気などの冷却媒体を流通させることによって、単電池セル 100を冷却することができる。これにより各単電池セル 100間の冷却特性を均一化でき、寿命を長くすることができる。
特開平07−045310号公報 特開2007−012486号公報 特開2006−048996号公報
ところが特許文献3に記載の組電池装置においては、空間 104に埃などが堆積する場合があり、そうなると均一な冷却が困難となり、各単電池セルの冷却特性に差が生じる。また冷却媒体としては一般にエアコンからの風が用いられるが、外気との温度差によって空間 104に結露が生じる場合があり、水滴が電極部にまで移動することで漏電する可能性が無いとは云えない。
そこで本願出願人は、特願2007−219812において、シリコーンゴムなど、熱伝導性の高い軟質材からなるシートを単電池セル間に挟持した組電池装置を提案している。この電池装置によれば、列設方向の両端から加圧拘束されたときに、軟質のシートが両側の単電池セルによって圧縮され、単電池セルの最も広い表面に密着する。これにより単電池セルの熱は、シートから放熱表面に伝導され、放熱空間へ放熱される。
すなわち単電池セルとシートとの間には隙間が無いので、従来の空間 104への埃の堆積の問題は生じない。したがって長期使用後においても各単電池セル毎の冷却条件はほとんど同一となるので、各単電池セル間の冷却特性を均一とすることができ、寿命が長くなる。
さらに単電池セルどうしの間に、特許文献3に記載のような冷却風が流通するための空間を形成する必要がない。したがって単電池セル間距離を縮小でき、全体がコンパクトな形状となり搭載スペースを縮小することができる。また放熱表面を電極から遠い位置に形成しておけば、結露による漏電も防止することができる。
ところが熱伝導性の高い軟質材からなるシートを介在させただけでは、シートの圧縮による変形量(薄肉化)を規制することが困難であり、シートの両側の単電池セルで膨張量が異なる場合が生じる可能性がある。そのため、シートの周縁部を電気絶縁性の硬質スペーサに保持するなどの工夫が必要であるが、硬質スペーサの厚さ分のスペースが必要となり、全体をコンパクト化することが困難となる。またシリコーンゴムなどの熱伝導率は約5W/mK程度であり、さらに高い熱伝導性が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、単電池セルを列設した組電池装置において、各単電池セルの冷却特性を均一とするとともに、埃の堆積や結露による漏電などの不具合を防止し、かつコンパクトで放熱性の高い組電池装置とすることを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明の組電池装置の特徴は、直方体形状をなす単電池セルと、板状の熱伝導部材と、が互いに密着して交互に複数個列設されてなり、列設方向の両端から加圧拘束されてなる組電池装置であって、
熱伝導部材は、熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材からなるマトリックスとマトリックス中に含まれた繊維の長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の繊維部材とからなり、単電池セルの最も広い表面に密着する密着表面と、放熱空間へ表出する放熱表面とを備え、放熱空間に表出する放熱表面を冷却することで間接的に単電池セルを冷却することにある。
繊維部材を構成する繊維は、単電池セルの最も広い表面と平行に配向していることが望ましい。
また繊維部材の表面と熱伝導部材の表面との間には、長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の短繊維が熱伝導部材の厚さ方向に配向して埋設されていることが望ましい。
本発明の組電池装置によれば、列設方向の両端から加圧拘束されたときに、軟質の熱伝導部材が両側の単電池セルによって圧縮され、熱伝導部材の密着表面が単電池セルの最も広い側面に密着する。そして熱伝導部材の密着表面から伝導された単電池セルの熱は、熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材からなるマトリックスから繊維部材に伝わり、繊維の長さ方向に伝熱されて放熱表面に伝導され、放熱表面から放熱空間へ放熱される。
すなわち単電池セルと熱伝導部材との間には隙間が無いので、従来の空間 104への埃の堆積の問題は生じない。したがって長期使用後においても各単電池セル毎の冷却条件はほとんど同一となるので、各単電池セル間の冷却特性を均一とすることができ、寿命が長くなる。
また繊維部材はマトリックスを構成する軟質材より剛性が高い。したがって繊維部材の介在によって軟質材の変形(薄肉化)を防止でき、単電池セルの膨張を確実に規制することができるので、各単電池セルの内圧を均一にして各単電池セルの充放電特性を均一にすることができる。また繊維部材によって硬質スペーサが不要となり、単電池セル間距離を縮小できる。そのため、全体がコンパクトな形状となり搭載スペースを縮小することができる。
さらに単電池セルどうしの間に、特許文献3に記載のような冷却風が流通するための空間を形成する必要がない。したがって単電池セル間距離を縮小でき、全体がコンパクトな形状となり搭載スペースを縮小することができる。また放熱表面を電極から遠い位置に形成しておけば、結露による漏電も防止することができる。
そして繊維部材を構成する繊維が単電池セルの最も広い表面と略平行に配向していれば、単電池セルの熱は熱伝導部材の密着表面から繊維部材を介して面方向に効率よく伝熱され、放熱表面から放熱されるので、放熱性がさらに向上する。
また繊維部材の表面と熱伝導部材の表面との間に、長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の短繊維が熱伝導部材の厚さ方向に配向して埋設されていれば、熱伝導部材の密着表面から繊維部材への伝熱が促進されるため、放熱性がさらに向上する。
本発明の組電池装置は、電気自動車やハイブリッド車などの電源装置として好適に用いられる。
本発明の組電池装置において、単電池セルとしては一般的な所謂角型電池セルを用いることができる。樹脂製の筐体をもつもの、あるいは表面に絶縁被膜がコーティングされたものを用いてもよいが、熱伝導性が高い鉄やアルミニウムなどの金属製の筐体が表出する単電池セルを用いることが好ましい。単電池セルの上部には、一対の電極が突出形成されているのが一般的である。通常は、電極をもつ側が全て同じ側となるように、複数の単電池セルが列設される。
熱伝導部材は、熱伝導性と電気絶縁性とを有する軟質材からなるマトリックスと、マトリックス中に含まれた繊維部材とから板状に形成されている。ここでマトリックスを構成する軟質材における軟質の程度は、アスカーC硬度で50以下のものが望ましい。アスカーC硬度で50以下の軟質度とすることで、単電池セルの最も広い側面との密着性を十分に確保することができ、単電池セルの熱を効率よく放熱することができる。なおアスカーC硬度とは、日本ゴム協会標準規格SRIS 0101 で規定されるゴム硬度であり、JIS K 6253で規定されるショア硬度Eに相当する。また軟質材からなるマトリックスは、熱伝導率が5W/mK以上の熱伝導性を備えることが望ましい。熱伝導率がこれより低いと、放熱性が低くなって好ましくない。
上記した特性を備えるマトリックスの材料としては、例えばシリコーンゴムなどの熱可塑性エラストマを用いることができる。シリコーンゴムは熱伝導性と高い電気絶縁性を兼ね備え、アスカーC硬度で2〜45程度と軟質である。また一般のゴムや熱可塑性エラストマは、そのままでは熱伝導性が低すぎて使用できないが、例えばアルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、シリカなどの高熱伝導材を混合することで用いることができる可能性がある。
繊維部材は、繊維の長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上のものである。このような繊維部材の材料としては、繊維の長さ方向の熱伝導率が約60W/mKの超高分子量ポリエチレン繊維、同熱伝導率が約 540W/mKのカーボン繊維、同熱伝導率が約 240W/mKのアルミニウム繊維、同熱伝導率が約1015W/mKのアルミナ繊維、同熱伝導率が約 400W/mKの銅繊維、同熱伝導率が約 300〜 400W/mKの窒化アルミニウム繊維、同熱伝導率が約22W/mKのチタン繊維、同熱伝導率が約 250W/mKの窒化ホウ素などが例示される。中でも、同熱伝導率が約60W/mKの超高分子量ポリエチレン繊維は電気絶縁性も併せ持つので、特に好ましい材料である。
繊維部材は、単繊維の集合体である不織布としてマトリックス中に埋設することができる。しかしながら単繊維の熱伝導率は、繊維の長さ方向で10W/mK以上であったとしても、繊維の径方向では10W/mKに満たない場合がある。したがって繊維部材を構成する繊維は、単電池セルの最も広い表面と略平行に配向するように構成し、密着表面で受けた熱を繊維部材を介して熱伝導部材の面方向へ伝熱することが望ましい。すなわち、繊維部材は織布の形状とすることが望ましい。このようにすれば、繊維部材の繊維の長さ方向が密着表面と略平行に配向するので、繊維部材を介して密着表面と略直交する放熱表面へ効率よく伝熱することができ放熱性が向上する。また面剛性が高くなり、単電池セルの膨張をより抑制することが可能となる。さらに繊維どうしが分離することもなく取り扱いが容易であるので、熱伝導部材の成形が容易となる。
繊維部材は、熱伝導部材中に20〜80体積%の範囲で含まれていることが望ましい。繊維部材の含有量が20体積%より少ないと放熱性が不十分となり、80体積%より多く含有すると熱伝導部材の軟質度が低下して単電池セルとの密着性が低下するため放熱性が低下する。
熱伝導部材を形成するには、繊維部材を型内に配置した状態で溶融状態にあるシリコーンゴムなどの軟質材を注入してプレス成形することで、容易に形成することができる。この場合、繊維部材を形成する際に、長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の単繊維と単繊維の表面に被覆された軟質熱伝導樹脂層とからなる複合糸を用いることも好ましい。そして軟質熱伝導樹脂層としてマトリックスとの親和性に富むものを用いれば、マトッリクスと繊維部材との密着性が高まり放熱性が向上する。また単繊維と単繊維の表面に被覆された軟質熱伝導樹脂層とからなる複合糸のみを型内に配置してプレス成形すれば、軟質熱伝導樹脂層をマトリックスとすることも可能である。
しかし上記したように、シリコーンゴムなどの軟質材を注入するプレス成形にて熱伝導部材を形成した場合、シリコーンゴムの熱伝導性が繊維部材より低い場合には、シリコーンゴムの表面から繊維部材への伝熱量が不足する可能性がある。
そこで、繊維部材の表面と熱伝導部材の表面との間には、長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の短繊維の繊維長さ方向が熱伝導部材の厚さ方向に配向して埋設されていることが望ましい。このようにすれば、単電池セルから密着表面に伝えられた熱を、厚さ方向に配向した短繊維を介して効率よく繊維部材に伝熱することができ、放熱性がさらに向上する。
このように短繊維が配向した状態の熱伝導部材を形成するには、シリコーンゴムなどの軟質材に短繊維を混合した複合材を形成しておく。そして繊維部材を型内に配置し、溶融状態とした複合材を注入して成形する際に、熱伝導部材の厚さ方向に磁場を印加しながら成形を行う。これにより短繊維は繊維長さ方向が磁場方向と平行に配向し、熱伝導部材の厚さ方向に配向させることができる。
短繊維の材料は、繊維部材と同一であってもよいし、繊維部材とは異なり磁場方向に配向しやすい窒化ホウ素などの別材料を用いてもよい。また短繊維の形状は、繊維状ばかりでなく鱗片状のものを用いることもできる。厚さ方向に配向した短繊維の含有量は、熱伝導部材中に20〜60体積%の範囲とすることが望ましい。厚さ方向に配向した短繊維の含有量が20体積%より少ないと上記した効果の発現が困難となり、60体積%より多く含有しても効果が飽和するとともに熱伝導部材の剛性が高くなり過ぎて単電池セルとの密着性が低下して放熱性が低下する。
また熱伝導部材は、単電池セルを収納可能な袋形状に形成することも好ましい。このようにすれば、袋状の熱伝導部材に単電池セルを投入するだけで、単電池セルと熱伝導部材との積層体を容易に形成することができる。また袋状の熱伝導部材を製造するには、織布あるいは編布からなる繊維部材を袋状に縫製し、それを型内に配置してマトリックスとなる軟質材を注入して成形することで、容易に製造することができる。
熱伝導部材は、単電池セルに対向する密着表面が単電池セルに向かって凸の球面とすることも好ましい。このようにすれば、加圧拘束時には球面の中心部が先ず単電池セルに当接し、圧縮されるに従って中心から外側へ向かって単電池セルと接触する面積が増大していくので、単電池セルと密着表面との間に空気が残留するのが防止され放熱性が向上する。
本発明の組電池装置は、複数の熱伝導部材の放熱表面が表出する放熱空間を有している。例えば各熱伝導部材の放熱表面が大気に接触するようにすることができる。また熱伝導部材から延出するタブ部を形成し、そのタブ部を同一方向に配置して大気中に突出させてもよい。
上記の場合には、単電池セルと熱伝導部材とを交互に列設して加圧拘束したものをケーシング中に収納し、放熱表面又はタブ部が突出する側の表面とケーシングの内表面との間にトンネル状の空気流路を形成して、その空気流路を放熱空間とすることができる。この場合、空気流路にエアコンの風を流通させるなどすれば、各単電池セルの熱を放熱表面又はタブ部を介して均一に放熱することができる。
さらに、複数の放熱板が列設されてなるヒートシンクを放熱空間に配置し、ヒートシンクに熱伝導部材の放熱表面を当接させる。そしてヒートシンクにエアコンの風を接触させるようにすれば、ヒートシンク及び熱伝導部材を介して各単電池セルの熱を均一に放熱することができる。
なおヒートシンクを用いる場合には、単電池セルと熱伝導部材とを交互に列設して加圧拘束したものの下方にヒートシンクを配置することが望ましい。このようにすれば、万一ヒートシンクに結露が発生した場合でも、水滴が単電池セルと接触することを防止することができ、漏電を確実に防止できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
図1に本実施例に係る組電池装置の分解斜視図を、図2にその断面図を示す。この組電池装置では、直方体形状をなす単電池セル1と、板状に形成された熱伝導部材2とが、隣接する単電池セル1の最も広い表面10どうしが熱伝導部材2を介して互いに対向するように交互に数10個ずつ列設され、その列が二列平行に形成されている。そして両端には樹脂製の拘束プレート3が配置され、図示しない拘束ロッドによって単電池セル1と熱伝導部材2とが互いに密着するように加圧された状態で拘束されている。その状態で、全体が図示しない電気絶縁性樹脂製のケーシングに収納されている。
また単電池セル1の最も広い表面10に直交し、最も広い表面10の短辺を含む一対の表面11に対向して、一対のヒートシンク4が配置されている。このヒートシンク4は、複数の放熱板が列設されてなる金属製のものであり、熱伝導部材2の端面がそれぞれ密着している。
単電池セル1では、極板、セパレータ、電解液などの電池要素がアルミニウム製の筐体内に収納されている。筐体の上部には、正極及び負極の一対の電極12が突出している。また筐体は6個の表面をもち、最も広い表面10どうしが互いに対向するように列設されている。
図3に示す熱伝導部材2は、アスカーC硬度が45、熱伝導率が5W/mKのシリコーンゴムからなるマトリックス20と、マトリックス20に埋設された繊維部材21とから形成されている。図4に示す繊維部材21は、超高分子量ポリエチレン繊維(「ダイニーマ」東洋紡製)から形成された織布であり、マトリックス20の厚さ方向の略中央部に埋設されている。繊維部材21は、熱伝導部材2中に50体積%の量で埋設されている。
この熱伝導部材2は板状をなし、最も広い表面が密着表面22を構成し、密着表面22に直交し密着表面の短辺を含む表面が放熱表面23を構成している。繊維部材21は、横糸21a と縦糸21b とからなり、横糸21a の端面が放熱表面23に表出している。
そして拘束状態において、密着表面22が単電池セル1の最も広い表面12に密着し、放熱表面23はヒートシンク4に密着している。
本実施例の組電池装置によれば、マトリックス20の熱伝導率は5W/mKであり、繊維部材21の繊維の長手方向の熱伝導率は60W/mKであり、繊維部材21の繊維の短手方向の熱伝導率は3W/mKである。したがって単電池セル1の熱は、先ず密着表面22からマトリックス20に伝熱され、マトリックス内部を伝わって繊維部材21に伝熱される。そして繊維の長手方向の熱伝導率がきわめて高いため、熱は繊維部材21の横糸21a からヒートシンク4に伝熱され、ヒートシンク4から効率よく放熱される。
すなわち本実施例の組電池装置によれば、それぞれの熱伝導部材2からほとんど同じ条件で放熱が行われるので、それぞれの単電池セル1はほとんど同じ条件で冷却され、各単電池セル1の放熱性を均一とすることができる。
また単電池セル1と熱伝導部材2との間には隙間が無いので、従来の空間 104への埃の堆積の問題は生じない。したがって長期使用後においても各単電池セル1毎の放熱性はほとんど同一となるので、各単電池セル間の冷却特性を均一とすることができ、寿命が長くなる。
さらに単電池セル1どうしの間に、特許文献3に記載のような冷却風が流通するための空間を形成する必要がなく、硬質スペーサを介在させる必要もなく、熱伝導部材2の厚さも薄くてよい。したがって単電池セル1間距離を縮小でき、全体がコンパクトな形状となるので搭載スペースを縮小することができる。
なお本実施例では放熱表面23に密着するヒートシンク4を用いているが、ヒートシンク4に代えて、放熱表面23が表出しエアコンの冷風が供給される放熱空間とすることができることはもちろんである。
また、熱伝導部材2中に繊維部材21を厚さ方向で複数層積層することも好ましい。このようにすれば、放熱表面21に表出する横糸21a の端面の合計面積をより大きくすることができる。また密着表面22から繊維部材21までの距離が短くなる。したがって放熱性がさらに向上する。
(実施例2)
本実施例の組電池装置は、図5に示すように、ヒートシンク4の位置を、単電池セル1の下方としている。このようにすれば、万一ヒートシンク4に結露が発生した場合でも、水滴が単電池セル1と接触することを防止することができ、漏電を確実に防止できる。
なお、本実施例の場合、密着表面22に伝えられた熱は、縦糸21b を介して熱伝導部材2の下表面からヒートシンク4に伝熱される。すなわち放熱表面は、熱伝導部材2の下表面となる。また図5に示すように、単電池セル1の下表面とヒートシンク4との間にも熱伝導部材2が介在する構造とすることで、さらに放熱性が向上する。
(実施例3)
本実施例の組電池装置は、図6に示すように、横糸21a のみからなる繊維部材をマトリックス20中に埋設した熱伝導部材2を用いたこと以外は実施例1と同様である。以下、その製造方法を説明する。
先ず実施例1と同様の超高分子量ポリエチレン繊維(「ダイニーマ」東洋紡製)からなる横糸21a の表面に、熱伝導率が5W/mKのシリコーンゴムからなる被覆層50を形成してなる複合糸5を用意した。
次に、図7に示すように、この複合糸5を複数束ねて金型内に配置し、熱プレスすることで熱伝導部材2を形成した。
本実施例の組電池装置によれば、横糸21a とマトリックス20との密着性が高まるため、放熱性をさらに向上させることができる。
(実施例4)
本実施例の組電池装置は、図8に示すように、繊維部材21に加えて、マトリックス20にさらに、実施例1と同様の超高分子量ポリエチレン繊維(「ダイニーマ」東洋紡製)からなる短繊維21c が埋設保持された熱伝導部材2を用いたこと以外は実施例1と同様である。短繊維21c は、その繊維長さ方向が熱伝導部材2の厚さ方向に平行に配向している。なお短繊維21c は、熱伝導部材2中に30〜40体積%含有されている。
この熱伝導部材2を製造するには、実施例1と同様のシリコーンゴムに予め短繊維21c を混合した複合材を形成しておく。そして繊維部材21を型内に配置し、溶融状態とした複合材を注入してプレス成形する際に、熱伝導部材2の厚さ方向に磁場を印加しながら成形を行う。これにより短繊維21c は磁場方向に配向し、熱伝導部材2の厚さ方向に配向させることができる。
本実施例の組電池装置によれば、密着表面22からマトリックス20に伝熱された熱は、短繊維21c によって効率よく繊維部材21に伝熱され、横糸21a から放熱表面23を介して放熱される。したがって実施例1に比べて放熱性がさらに向上する。
(実施例5)
本実施例の組電池装置は、図9に示すように、実施例1と同様のマトリックス20と繊維部材21とからなり、複数の袋状部24をもつ熱伝導部材2を形成し、それぞれの袋状部24に単電池セル1を収納した後に加圧拘束したこと以外は実施例1と同様である。
この熱伝導部材2は、格子状の複数の横壁部25と、各横壁部25の両端を連結する三つの縦壁部26とを有し、横壁部25には実施例1の熱伝導部材2と同様の繊維部材21が埋設されている。また左右両端の縦壁部26の表面には、繊維部材21の横糸21a の端面が表出している。
本実施例の組電池装置によれば、袋状部24に単電池セル1を入れるだけでよいので、組付けがきわめて容易となる。また左右両端の縦壁部26の表面が放熱表面23を構成しているので、熱伝導部材2とヒートシンク4との接触面積が増大し放熱性が向上する。さらに単電池セル1と熱伝導部材2との間の空間がほとんど無く、熱伝導部材2とヒートシンクとの間の隙間も無いため、埃が堆積するのが防止され結露による不具合も回避することができる。
本発明の一実施例に係る組電池装置の分解斜視図である。 本発明の一実施例に係る組電池装置の断面図である。 本発明の一実施例に係る組電池装置に用いた熱伝導部材の要部斜視図である。 本発明の一実施例に係る組電池装置に用いた繊維部材の要部斜視図である。 本発明の第2の実施例に係る組電池装置に用いた熱伝導部材の要部斜視図である。 本発明の第3の実施例に係る組電池装置に用いた熱伝導部材の断面図である。 本発明の第3の実施例に係る組電池装置に用いた熱伝導部材の製造方法を示す説明図である。 本発明の第4の実施例に係る組電池装置に用いた熱伝導部材の断面図である。 本発明の第5の実施例に係る組電池装置の要部分解斜視図である。 従来の組電池装置の分解斜視図である。
符号の説明
1:単電池セル 2:熱伝導部材 20:マトリックス
21:繊維部材 22:密着表面 23:放熱表面

Claims (6)

  1. 直方体形状をなす単電池セルと、板状の熱伝導部材と、が互いに密着して交互に複数個列設されてなり、該列設方向の両端から加圧拘束されてなる組電池装置であって、
    該熱伝導部材は、熱伝導性と電気絶縁性を有する軟質材からなるマトリックスと該マトリックス中に含まれ繊維の長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の繊維部材とからなり、該単電池セルの最も広い表面に密着する密着表面と、放熱空間へ表出する放熱表面とを備え、該放熱空間に表出する該放熱表面を冷却することで間接的に該単電池セルを冷却することを特徴とする組電池装置。
  2. 前記繊維部材を構成する繊維は、前記単電池セルの最も広い表面と略平行に配向している請求項1に記載の組電池装置。
  3. 前記繊維部材は織布である請求項1に記載の組電池装置。
  4. 前記繊維部材は長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の単繊維と該単繊維の表面に被覆された樹脂層とからなる複合糸を熱プレスすることで形成されている請求項1に記載の組電池装置。
  5. 前記繊維部材の表面と前記熱伝導部材の表面との間には、長さ方向の熱伝導率が10W/mK以上の短繊維が前記熱伝導部材の厚さ方向に配向して埋設されている請求項1〜4のいずれかに記載の組電池装置。
  6. 前記熱伝導部材は、前記単電池セルを収納可能な袋状に形成された前記繊維部材と、少なくとも該繊維部材の互いに対向する一対の壁面を覆う前記マトリックスと、からなる請求項1に記載の組電池装置。
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