本発明は、導電性無電解めっき粉体の製造方法に関し、より詳しくは、異方導電性材料や導電性材料等に用いられる導電性無電解めっき粉体の製造方法に関する。
導電性無電解めっき粉体は、バインダー樹脂や接着剤等と混合、混練することにより、例えば、異方導電性ペースト、異方導電性インク、異方導電性接着剤、異方導電性フィルム、異方導電性シート等の異方導電性材料として広く用いられている。これらの異方導電性材料は液晶ディスプレイ(LCD)パネルのITO電極と駆動用LSIとの接続、LSIチップと回路基板との接続、微細パターン電極間の接続など電子機器類の微小部位間の電気的接続のために用いられている。
近年、電子機器の急激な進歩や発展に伴って、導電性無電解めっき粉体と回路基板等との間の接続抵抗の更なる低減が求められてきているが、従来の導電性無電解めっき粉体を使用すると、導電性無電解めっき粉体表面のめっき層と回路基板等との間にバインダー樹脂等がはさまり、導電性無電解めっき粉体と回路基板等との間の接続抵抗が高くなることがあった。
そこで、接続抵抗を低減する目的で、表面に突起を有する導電性無電解めっき粉体が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。これらの特許文献に開示されている導電性無電解めっき粉体は、導電性無電解めっき粉体表面のめっき層と回路基板等との間に存在するバインダー樹脂等を突起が突き破り(樹脂排除性)、突起と回路基板等とを確実に接続させることで、導電性無電解めっき粉体と回路基板等との間の接続抵抗の低減を図ることを狙いとしている。
特許第3696429号公報
特開2006−302716号公報
特開2004−296322号公報
特開2005−200728号公報
特開2007−184115号公報
しかしながら、特許文献1に示された導電性無電解めっき粉体の製造方法の場合、突起の制御因子は無電解めっき工程を2工程に分割した際の1工程の無電解めっき条件を調整することにあるが、実際には突起の大きさや数を制御することが困難で、接続抵抗の充分な低減が図られているとは言えなかった。
特許文献2に示された導電性粒子の製造方法の場合、突起の制御因子はアルカリ溶液の濃度の調整による芯材粉体の粗化、芯材粉体の表面に担持されためっき触媒の付着量を調整すること、めっき安定剤の量を調整することとなっているが、これらを制御しても、実際には突起の大きさや数を制御することが困難で、接続抵抗の充分な低減が図られているとは言えなかった。
特許文献3に示された導電性微粒子の製造方法の場合、突起の制御因子はめっき触媒を基材微粒子に担持させる際の攪拌条件を調整することとなっており、めっき触媒を芯材粉体の表面に不均一に担持させることで突起を形成するとなっているが、基材微粒子の表面にめっき触媒が不均一に担持されている状態と均一に担持されている状態の区別が曖昧であり、これらの状態を攪拌で制御しても実際には突起の大きさや数を制御することが困難で、接続抵抗の充分な低減が図られているとは言えなかった。
特許文献4に示された二層コート粒子粉末の製造方法の場合、無電解めっき工程の前工程であるところのめっき触媒を芯材粒子の粉粒表面に担持させる工程が無いことを特徴としており、無電解めっき工程において、めっき触媒を全く担持させていない芯材粉体と無電解めっき液とを混合したスラリーにめっき触媒を添加してめっきする製造方法、並びに、あらかじめ無電解めっき液を分割しておき、めっき触媒を全く担持させていない芯材粉体と無電解めっき液とを混合したスラリーにめっき触媒を添加してめっきした後、さらに無電解めっき液を追加添加してめっきする製造方法が開示されている。しかし、これらの製造方法に従って実際にめっき触媒を添加してめっきした場合、突起の大きさや数を制御することが困難で、めっきされていない粉体が多数発生しやすい傾向にあることから、接続抵抗の充分な低減が図られているとは言えなかった。
特許文献5に示された導電性微粒子の製造方法の場合、突起の制御因子はめっき液の温度の設定と還元剤の濃度の設定であるが、実際にはこれらを細かく設定しても突起の大きさや数を制御することが困難で、接続抵抗の充分な低減が図られているとは言えなかった。
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、導電性無電解めっき粉体の無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御し、さらに無電解めっきされない粉体を充分に低減することで、接続抵抗の充分な低減を図り、異方導電性材料または導電性材料に用いた場合に優れた接続信頼性が得られる導電性無電解めっき粉体の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、めっき触媒を芯材粉体の表面に担持させてめっき触媒担持粉体を得るめっき触媒担持工程と、無電解めっき液を用いて上記めっき触媒担持粉体を無電解めっきし、無電解めっき粉体を得る無電解めっき工程と、を少なくとも含み、上記無電解めっき工程において、上記芯材粉体に担持されていないめっき触媒の存在下で無電解めっきを行うことで、該めっき触媒により上記無電解めっき液を自己分解させ、めっき表面に突起を形成させる、導電性無電解めっき粉体の製造方法を提供する。
かかる導電性無電解めっき粉体の製造方法によれば、上述しためっき触媒担持工程と無電解めっき工程とを含むことにより、得られる導電性無電解めっき粉体の突起の大きさや数及び突起の有無を制御することができ、無電解めっきされていない粉体を充分に低減することができる。そのため、本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法により得られた導電性無電解めっき粉体は、接続抵抗を充分に低減することができ、異方導電性材料や導電性材料に用いた場合に、優れた接続信頼性を得ることができる。また、本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、導電性無電解めっき粉体の製造安定性にも優れている。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、上記めっき触媒担持工程の後、且つ、上記無電解めっき工程の前に、上記めっき触媒担持粉体の上記めっき触媒を活性化するめっき触媒活性化工程をさらに含むことが好ましい。かかるめっき触媒活性化工程を含むことにより、無電解めっき工程における無電解めっき反応をより促進させることができ、無電解めっきされない粉体をより充分に低減することができるとともに、突起の形成を促進させることができる。
ここで、上記めっき触媒活性化工程を行う場合、上記めっき触媒活性化工程の前に、上記めっき触媒活性化工程で使用する活性化処理液又は上記めっき触媒担持粉体を含む液に、あらかじめ、上記めっき触媒を0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下だけ添加しておくことが好ましい。また、上記めっき触媒活性化工程中に、上記めっき触媒活性化工程で使用する活性化処理液又は上記めっき触媒担持粉体を含む液に、上記めっき触媒を0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下だけ添加することも好ましい。めっき触媒活性化工程前またはめっき触媒活性化工程中に、上記めっき触媒を上記濃度範囲で添加することで、この添加しためっき触媒を芯材粉体に担持されていないめっき触媒として存在させ、導電性無電解めっき粉体における突起の大きさや数及び突起の有無をより充分に制御することができる。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、上記めっき触媒担持工程の後、且つ、上記めっき触媒活性化工程の直前に、上記めっき触媒担持粉体を脱塩水に投入して懸濁液を得る懸濁液調製工程をさらに含むことが好ましい。ここで、上記懸濁液は、めっき触媒担持前の芯材粉体の濃度換算で20g/Lとなるように調製し、上記めっき触媒担持粉体を上記脱塩水に投入した直後から10秒間以上5分間以下の範囲で放置した後、上記めっき触媒担持粉体をろ別して得られたろ液のめっき触媒濃度を測定した場合、めっき触媒濃度が、0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下となるものであることが好ましい。かかる懸濁液調製工程を含むことにより、懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整できるので、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無をより充分に制御することができる。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、上記めっき触媒担持工程の後、且つ、上記無電解めっき工程の直前に、上記めっき触媒担持粉体を脱塩水に投入して懸濁液を得る懸濁液調製工程をさらに含むことが好ましい。ここで、上記懸濁液は、めっき触媒担持前の芯材粉体の濃度換算で20g/Lとなるように調製し、上記めっき触媒担持粉体を上記脱塩水に投入した直後から10秒間以上5分間以下の範囲で放置した後、上記めっき触媒担持粉体をろ別して得られたろ液のめっき触媒濃度を測定した場合、めっき触媒濃度が、0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下となるものであることが好ましい。かかる懸濁液調製工程を含むことにより、懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整できるので、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無をより充分に制御することができる。
上記懸濁液調製工程を含む場合、上記めっき触媒担持工程で使用するめっき触媒のめっき触媒濃度を調製することで、上記懸濁液の上記ろ液のめっき触媒濃度を調整することが好ましい。
また、上記懸濁液調製工程を含む場合、各工程間の少なくとも1つに、上記めっき触媒担持粉体を水洗する水洗工程を導入することで、上記懸濁液の上記ろ液のめっき触媒濃度を調整することが好ましい。
これらの方法で上記懸濁液の上記ろ液のめっき触媒濃度を調整することで、懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整でき、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無をより充分に制御することができる。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法においては、上記無電解めっき工程の前に、上記無電解めっき工程で使用する上記無電解めっき液又は上記めっき触媒担持粉体を含む液に、あらかじめ、上記めっき触媒を0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下だけ添加しておくことが好ましい。また、上記無電解めっき工程中に、上記無電解めっき工程で使用する上記無電解めっき液又は上記めっき触媒担持粉体を含む液に、上記めっき触媒を0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下だけ添加することも好ましい。無電解めっき工程前または無電解めっき工程中に、上記めっき触媒を上記濃度範囲で添加することで、この添加しためっき触媒を芯材粉体に担持されていないめっき触媒として存在させ、導電性無電解めっき粉体における突起の大きさや数及び突起の有無をより充分に制御することができる。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法において、上記無電解めっき工程は無電解ニッケルめっき工程であることが好ましい。これにより、得られる導電性無電解めっき粉体の抵抗値をより低減することができる。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法において、上記めっき触媒にパラジウムが含まれていることが好ましい。これにより、得られる導電性無電解めっき粉体に含まれるめっきされていない粉体をより低減することができる。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法において、上記無電解めっき工程の後に、金めっき工程をさらに含むことが好ましい。これにより、得られる導電性無電解めっき粉体の抵抗値をより低減することができる。
本発明によれば、導電性無電解めっき粉体の無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御し、さらに無電解めっきされない粉体を充分に低減することで、接続抵抗の充分な低減を図り、異方導電性材料または導電性材料に用いた場合に優れた接続信頼性が得られる導電性無電解めっき粉体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、めっき触媒を芯材粉体の表面に担持させてめっき触媒担持粉体を得るめっき触媒担持工程と、無電解めっき液を用いて上記めっき触媒担持粉体を無電解めっきし、無電解めっき粉体を得る無電解めっき工程と、を少なくとも含み、上記無電解めっき工程において、上記芯材粉体に担持されていないめっき触媒の存在下で無電解めっきを行うことで、該めっき触媒により上記無電解めっき液を自己分解させ、上記めっき表面に突起を形成させることを特徴とする。
かかる本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、無電解めっき工程において、芯材粉体に担持されているめっき触媒とは別の、芯材粉体に担持されていないめっき触媒で無電解めっき液を自己分解させ、めっき表面に突起を形成させることを特徴とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、芯材粉体に担持されているめっき触媒のみを使用してめっきした場合、芯材粉体表面に突起部分を除いた連続めっき皮膜形成と、めっき液の自己分解による突起の形成を同時に行うことは可能ではあるが、突起の大きさや数を制御することが困難であることを見出した。
このため、芯材粉体に担持されているめっき触媒は主に突起部分を除いた連続めっき皮膜を芯材粉体表面に形成することを目的として使用し、芯材粉体に担持されているめっき触媒とは別に、芯材粉体に担持されていないめっき触媒を主に突起の形成を目的として、めっき液を自己分解させるために使用することで、芯材粉体表面の連続めっき皮膜と突起の形成とを同時に行うことが容易となり、無電解めっきされない粉体を充分に低減して、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御できることを見出したのである。
ここで、芯材粉体に担持されているめっき触媒と芯材粉体に担持されていないめっき触媒の違いについて説明する。芯材粉体に担持されているめっき触媒とは、めっき触媒担持済み芯材粉体(めっき触媒担持粉体)を脱塩水に投入して、攪拌なしで放置しても、芯材粉体に担持されたまま脱塩水中に分散しないめっき触媒を指す。一方、芯材粉体に担持されていないめっき触媒とは、めっき触媒担持済み芯材粉体を脱塩水に投入して、攪拌なしで放置すると、芯材粉体から離れて脱塩水中に分散するめっき触媒を指す。
この芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度が0.001ppm未満の場合、突起の無い平滑な連続めっき皮膜が得られる。また、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度が0.001ppm以上である場合、突起のある連続めっき皮膜を得ることができ、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度が高くなると、外観上突起が目立つようになり、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度がめっき触媒の飽和濃度に達するまで、外観上突起が存在することとなる。したがって、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を測定することによって、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定することができる。さらに、導電性無電解めっき粉体の製造工程で芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を制御することによって、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御することができる。
以下、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を測定することによって、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定する場合(A)と、導電性無電解めっき粉体の製造工程で芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を制御することによって、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御する場合(B)の2つに分けて説明する。
まず、(A)の場合について説明する。芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度は、めっき触媒担持済み芯材粉体を脱塩水に投入して、攪拌なしで放置した後、めっき触媒担持済み芯材粉体をろ別したろ液を測定して求めることができる。また、めっき触媒担持済み芯材粉体を脱塩水に投入して、攪拌なしで放置した後、ろ別せずにめっき触媒担持済み芯材粉体の無い上澄み液を取って、その上澄み液のめっき触媒濃度を測定して求めても良い。めっき触媒濃度の測定方法に限定はなく、吸光光度法、原子吸光法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、各種クロマトグラフ法、イオン電極法等の公知の測定方法で測定できる。
また、単に突起の有無を判定することを目的とする場合は、めっき触媒担持済み芯材粉体を脱塩水に投入して、攪拌なしで放置した後、ろ別せずにめっき触媒担持済み芯材粉体の無い上澄み部分を目視で観察するだけで良い。めっき触媒は通常色が着いて見えるので、上澄み部分が透明であれば、芯材粉体に担持されていないめっき触媒が無いので、突起の無い平滑な連続めっき皮膜が得られると判定でき、上澄み部分が僅かでもめっき触媒の色で着色されていたり、上澄み部分の一部がめっき触媒の色で着色されていれば、芯材粉体に担持されていないめっき触媒が存在するので、突起のある連続めっき皮膜が得られると判定できる。
なお、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を測定する場合または上澄み部分を目視で観察する場合に使用するめっき触媒担持済み芯材粉体は、原則として、無電解めっき工程直前の状態のものであれば良い。ただし、めっき触媒活性化工程があり、めっき触媒活性化工程から無電解めっき工程までの間に水洗工程が無い場合は、めっき触媒活性化工程直前の状態のものでも良い。すなわち、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を測定する際のめっき触媒担持済み芯材粉体は、導電性無電解めっき粉体の製造工程において、水洗工程がある場合にその水洗工程前の状態のものでなければ良い。製造工程に水洗工程がある場合、その水洗工程前のめっき触媒担持済み芯材粉体を使用して、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を測定しても、その後の水洗工程によって、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度が変化してしまい、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定することができないからである。なお、製造工程における水洗工程とは、ろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入して懸濁液を作製した後、その懸濁液に含まれた水をろ別するまでの工程を指し、詳細は(B)の場合を説明する際に述べる。
無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定する場合、以下で説明するように攪拌、放置時間、脱塩水の温度を調整することが好ましい。これらを調整せずに無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定して、無電解めっきを行うと、芯材粉体表面に連続めっき皮膜が形成されず、無電解めっきされていない粉体や一部しか無電解めっきされていない粉体が多発し、導電性無電解めっき粉体として使用できない場合があるからである。
まず、攪拌なしで放置する理由は、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度が、攪拌の条件に大きく左右されるためである。すなわち、攪拌を強くするほど、芯材粉体に担持されているめっき触媒の量が減少し、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量が増加する傾向にある。攪拌が強すぎる場合には、本来芯材粉体表面の連続めっき皮膜形成に必要な、芯材粉体に担持されているべきめっき触媒までが芯材粉体から離れてしまうため、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を正確に測定できなくなる。このため、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定するには、攪拌なしで放置するのが好ましいのである。
次に、攪拌なしで放置する場合でも、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度が、放置する時間に大きく左右されることにも注意を要する。すなわち、めっき触媒担持済み芯材粉体を脱塩水に投入してから、めっき触媒担持済み芯材粉体をろ別するまでの放置時間は、1日(24時間)以下にすることが好ましく、中でも導電性無電解めっき粉体の製造工程を連続的に作業する場合における工程間に要する作業時間以下にすることがより好ましく、特に10秒間以上5分間以下の範囲にすることが好ましい。導電性無電解めっき粉体の製造工程を連続的に作業する場合における工程間に要する作業時間よりも極端に長い時間、例えば1日(24時間)よりも長く放置してしまった場合は、本来芯材粉体表面の連続めっき皮膜形成に必要な、芯材粉体に担持されているべきめっき触媒までが芯材粉体から離れてしまうため、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を正確に測定できなくなる。このため、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定するには、放置時間を1日(24時間)以下にすることが好ましく、中でも導電性無電解めっき粉体の製造工程を連続的に作業する場合における工程間に要する作業時間以下にすることがより好ましく、特に10秒間以上5分間以下の範囲にすることが好ましい。
さらに、脱塩水の温度にも注意を要する。脱塩水の温度は、導電性無電解めっき粉体の製造工程で使用する処理液の中で最も高い温度以下であることが好ましく、例えばめっき温度が80℃で、この温度が導電性無電解めっき粉体の製造工程で使用する処理液の中で最も高い温度である場合は、脱塩水の温度は80℃以下にすれば良い。中でも、脱塩水の温度は0℃以上40℃以下であることが好ましく、室温であることが特に好ましい。なお、室温とは、通常10℃以上30℃以下である。脱塩水の温度を極端に高い温度、例えば100℃にして放置した場合、本来芯材粉体表面の連続めっき皮膜形成に必要な、芯材粉体に担持されているべきめっき触媒までが芯材粉体から離れてしまうため、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を正確に測定できなくなる。このため、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定するには、脱塩水の温度を、導電性無電解めっき粉体の製造工程で使用する処理液の中で最も高い温度以下にする必要があり、中でも、0℃以上40℃以下にすることが好ましく、特に室温にすることが好ましいのである。
なお、めっき触媒担持済み芯材粉体を脱塩水に投入する場合の芯材粉体の濃度は特に限定されないが、めっき触媒担持前の芯材粉体の濃度換算で20g/Lでよい。しかし、この濃度以外でも不都合になることはない。例えば、10g/L〜30g/Lでもよい。
以上述べた点に注意すれば、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の濃度を測定することによって、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定することができる。
次に、(B)の場合について説明する。導電性無電解めっき粉体の製造方法は、めっき触媒を芯材粉体の表面に担持させてめっき触媒担持粉体を得るめっき触媒担持工程と、無電解めっき液を用いて上記めっき触媒担持粉体を無電解めっきし、無電解めっき粉体を得る無電解めっき工程と、を少なくとも含み、必要に応じてめっき触媒担持粉体のめっき触媒を活性化するめっき触媒活性化工程をさらに含んでいる。注意点として、めっき触媒を芯材粉体の粉粒表面に担持させるめっき触媒担持工程と、無電解めっき工程とは別工程にする必要がある。これらを同一工程として、例えば無電解めっき工程中にめっき触媒を芯材粉体の粉粒表面に担持させてしまうと、芯材粉体全体にめっき触媒を担持させるのが困難であり、めっきされていない粉体が多数発生しやすい傾向にあり、また、連続めっき皮膜を形成するのに充分なめっき触媒の量を担持させるのも困難であり、一部しか無電解めっきされていない粉体が多発する傾向にあるからである。工程の順番として、めっき触媒担持工程、無電解めっき工程の順に行うことが好ましく、さらにめっき触媒担持工程、めっき触媒活性化工程、無電解めっき工程の順で行うことが好ましい。また、2種類以上の異種金属による多層構造を有する金属皮膜を形成させるには、無電解めっき工程を所定の回数だけ実施すれば良い。
ここで、無電解めっきとは、めっき触媒を必要とせず、金属の標準酸化還元電位(イオン化傾向)の差を利用する置換めっきと、めっき触媒を必要とし、還元剤を利用する還元めっきの両者を指すものとする。したがって、本発明ではめっき触媒を使用して突起を形成するので、通常、少なくとも還元めっきは実施することとなる。なお、2種類以上の異種金属による多層構造を有する金属皮膜を形成させる際には、少なくとも1層目に還元めっきを実施する限り、適宜置換めっきを実施しても一向に差し支えない。その際、2層目以降の無電解めっき工程では、以下に記載する無電解めっきの対象物である「芯材粉体」を適宜「無電解めっき粉体」に置き換えれば良い。次に各工程について説明する。
めっき触媒を芯材粉体の粉粒表面に担持させるめっき触媒担持工程では、連続めっき皮膜を形成するのに充分なめっき触媒の量を芯材粉体の粉粒表面に担持させる。したがって、連続めっき皮膜を形成するのに充分なめっき触媒の量を芯材粉体の粉粒表面に担持させることができるように、芯材粉体の量に対するめっき触媒の濃度を一定以上の濃度に調整することが好ましい。芯材粉体の量に対するめっき触媒の濃度が極端に薄い場合は、連続めっき皮膜を形成するのに充分なめっき触媒の量を芯材粉体の粉粒表面に担持させることが難しく、得られる導電性無電解めっき粉体において、無電解めっきされていない粉体または一部しか無電解めっきされていない粉体が発生しやすい傾向がある。ここで、一定以上の濃度とは、芯材粉体の状態、めっき触媒の状態で変動するので、具体的な濃度を示すことはできないが、実験で適宜めっき触媒の濃度を変化させて決定することができる。
本発明では、上記めっき触媒担持工程において、めっき触媒の濃度を上記の一定以上の濃度よりもさらに濃くすることで、連続めっき皮膜を形成するのに充分なめっき触媒の量を芯材粉体の粉粒表面に担持させ、同時に突起を形成するのに必要なめっき触媒の量を芯材粉体の粉粒表面に見かけ上担持させることが好ましい。この場合、突起を形成するのに必要なめっき触媒は芯材粉体の粉粒表面に見かけ上担持しているに過ぎず、実際には、芯材粉体に担持されていないので、この後、めっき触媒をろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入して懸濁液を作製すると、突起を形成するのに必要なめっき触媒は芯材粉体から離れて水中に分散する。以上から、めっき触媒の濃度を調整することで、上記で得られた懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整できるので、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御できる。なお、めっき触媒担持済み芯材粉体を分散させる水としては、脱塩水または純水を使用するのが品質管理上好ましい。この後、例えば、直ちに無電解めっき工程を行う場合は、上記で得られた懸濁液を攪拌せずに放置することで、(A)の場合で説明したように、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を判定することができる。
なお、めっき触媒担持工程で使用するめっき触媒としては、一般に貴金属イオンが使用され、この貴金属イオンを芯材粉体の粉粒表面に担持させる。貴金属イオンとしては、例えば、パラジウムイオン、銀イオン、白金イオン、銅イオンなどが挙げられるが、パラジウムイオンが特に好ましい。なお、これらのめっき触媒は試薬で建浴しても良く、市販のめっき触媒を使用しても良い。また、処理温度、処理時間は特に限定されないが、芯材粉体にめっき触媒を担持することができるように適宜調整することが好ましい。
貴金属イオンを芯材粉体の粉粒表面に担持させる方法としては、例えば、芯材粉体を塩化パラジウムや硝酸銀のような貴金属塩の希薄な酸性水溶液に分散させる方法が挙げられる。
なお、貴金属イオンを芯材粉体の粉粒表面に担持させる前に、錫イオンを芯材粉体の粉粒表面に担持させる感受性化処理工程を施しても良い。錫イオンを芯材粉体の粉粒表面に担持させる方法としては、例えば、芯材粉体を塩化第一錫の水溶液に分散させる方法が挙げられる。感受性化処理工程の後、感受性化処理液をろ別して得られた感受性化処理済み芯材粉体を塩化パラジウムや硝酸銀のような貴金属塩の希薄な酸性水溶液に分散させることで、貴金属イオンを芯材粉体の表面に効率的に担持させることができる。
また、芯材粉体を貴金属イオンと錫イオンを含む混合1液型の溶液に分散させて、貴金属イオンと錫イオンを芯材粉体の粉粒表面に1工程で担持させても良い。
また、めっき触媒として貴金属錯体を使用しても良い。例えば、芯材粉体をパラジウムイオンとアミノ系錯化剤とからなるパラジウム錯体を含んだアルカリ系触媒に分散させ、パラジウム錯体を芯材粉体の粉粒表面に担持させても良い。
以上に示した方法でめっき触媒を芯材粉体の粉粒表面に担持させた後、めっき触媒をろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体に対して、次工程以降の処理を実施する。
次に、めっき触媒活性化工程について説明する。めっき触媒活性化工程は、必要に応じて施せば良い工程であるが、無電解めっき反応をより促進させる効果があるので、めっき触媒活性化工程を行うことが好ましい。例えば、めっき触媒担持工程で貴金属イオンと錫イオンを使用する場合は、めっき触媒活性化工程は錫イオンを除去する工程に相当する。また、めっき触媒担持工程で貴金属イオン単体を使用する場合は、貴金属イオンを還元する工程に相当する。さらに、貴金属錯体を使用する場合は、めっき触媒活性化工程は貴金属錯体を還元する工程に相当する。錫イオンを除去する工程では酸またはアルカリを使用する。酸としては希塩酸、希硫酸、希硝酸等を使用でき、アルカリとしては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液等を使用できる。また、貴金属イオンまたは貴金属錯体を還元する工程では還元剤を使用する。還元剤としては次亜リン酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素カリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルマリン等を使用できる。なお、市販のめっき触媒を使用する場合は、その市販のめっき触媒用に市販されているめっき触媒活性化処理液を使用すれば良い。これらのめっき触媒活性化処理液の濃度は特に限定されないが、めっき触媒を全て活性化するのに充分な濃度に調整することが好ましい。同様に処理温度、処理時間も特に限定されないが、めっき触媒を全て活性化できるように適宜調整することが好ましい。
作業方法は特に限定されることはなく、例えば、上記で得られためっき触媒担持済み芯材粉体またはめっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入して作製した懸濁液に、酸、アルカリ、還元剤、または市販のめっき触媒活性化処理液を投入する方法が挙げられる。他にも例えば、酸、アルカリ、または還元剤の水溶液、あるいは市販のめっき触媒活性化処理液にめっき触媒担持済み芯材粉体またはその懸濁液を投入する方法も挙げられる。
以上に示した方法でめっき触媒活性化工程を施した後の、めっき触媒活性化処理液のろ別は必須ではない。すなわち、ろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体に対して、次工程以降の処理を実施しても良いし、ろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体に水を加えて、めっき触媒担持済み芯材粉体を分散させた懸濁液に対して、次工程以降の処理を実施しても良いし、ろ別せずにめっき触媒担持済み芯材粉体が分散しためっき触媒活性化処理液を懸濁液として、この懸濁液に対して次工程以降の処理を実施しても良い。
次に、無電解めっき工程について説明する。無電解めっき方法は公知の方法で良く、特に限定は無い。無電解めっき方法としては、例えば、懸濁液をろ別して、得られためっき触媒担持済み芯材粉体を無電解めっき液に投入して無電解めっきする方法、懸濁液をろ別せずに、懸濁液を無電解めっき液に投入して無電解めっきする方法、懸濁液をろ別せずに、懸濁液に無電解めっき液を投入して無電解めっきする方法等が挙げられ、いずれの方法でも特に問題なく突起を形成することができる。なお、ここで示す懸濁液とは、めっき触媒担持済み芯材粉体が分散した水、またはめっき触媒担持済み芯材粉体が分散しためっき触媒活性化処理液などに対する総称である。
本発明では、懸濁液をろ別せずに無電解めっきする方法が、懸濁液中に含まれている芯材粉体に担持されていないめっき触媒を有効に活用できるという点で好ましい。さらに、懸濁液をろ別せずに、懸濁液に無電解めっき液を投入して無電解めっきする方法は、突起と突起部分を除いた連続めっき皮膜を形成できるので特に好ましい。その際、無電解めっき液の投入方法も公知の方法で行えば良く、一気に投入しても良く、または徐々に投入しても良い。
無電解めっき工程では、懸濁液中に含まれている芯材粉体に担持されていないめっき触媒と無電解めっき液によって、無電解めっき液の自己分解反応が起こる。この自己分解反応によって、突起の核が形成され、それが芯材粉体表面上に捕捉されて突起が形成される。また、芯材粉体に担持されているめっき触媒と無電解めっき液によって、芯材粉体表面で無電解めっき反応が進行するので、芯材粉体表面上に突起部分を除いた連続めっき皮膜が形成される。したがって、芯材粉体に担持されていないめっき触媒と、芯材粉体に担持されているめっき触媒と、無電解めっき液によって、芯材粉体表面上に突起のある連続めっき皮膜が形成される。
なお、めっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入している場合と違って、無電解めっき工程中の攪拌の有無、攪拌の強弱等は特に限定されない。芯材粉体に担持されているめっき触媒が無電解めっき液と反応して、芯材粉体表面上に連続めっき皮膜が形成されているので、攪拌しても芯材粉体から離れにくくなるからである。攪拌手段としては、例えば、回転式攪拌羽、往復式攪拌羽、マグネチックスターラー、超音波振動、噴流等の公知の手段を使用することができる。同様の理由で、無電解めっき液の温度も限定されない。ただし、所定の芯材粉体の量に対して、所定のめっき膜厚を得るために、めっき時間または無電解めっき液の投入量の内、少なくとも一方を限定することが好ましい。また、無電解めっき工程後の水洗工程は、下記で説明する水洗工程と同様に実施すれば良い。
次に、水洗工程について説明する。水洗工程は、導電性無電解めっき粉体の製造工程における各工程間の少なくとも1つに導入することができる。水洗工程は、必要に応じて施せば良い工程であるが、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御できるので、水洗工程を行うことが好ましい。水洗工程として一例を挙げると、ろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入して懸濁液を作製した後、その懸濁液に含まれた水をろ別するまでの工程を指す。したがって、例えば、ろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入して懸濁液を作製した後、その懸濁液に含まれた水をろ別せずに、懸濁液をそのまま使用して次工程に進む場合は、水洗工程とは言わない。すなわち、水洗工程では、懸濁液をろ別して、懸濁液に含まれた水を除去する操作が必ず含まれる。この、除去される懸濁液中の水には、芯材粉体に担持されていないめっき触媒が含まれており、この水を除去することで、芯材粉体に担持されていないめっき触媒も除去できる。
なお、水洗工程で使用する水としては特に限定されないが、脱塩水または純水を使用することが品質管理上好ましい。また、水洗工程中の攪拌の有無、攪拌の強弱等は特に限定されない。また、水洗温度、水洗時間、芯材粉体の濃度も特に限定されない。また、水洗回数は芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量が無くなるまで何回でも実施することができる。すなわち、ろ別して得られためっき触媒担持済み芯材粉体を水に投入して懸濁液を作製した後、(A)の場合で説明したように、この時点で、芯材粉体に担持されていないめっき触媒がないと認められる場合は、その後の水洗工程は不要である。これ以上水洗工程を施してしまうと、本来芯材粉体表面の連続めっき皮膜形成に必要な、芯材粉体に担持すべきめっき触媒までが芯材粉体から離れてしまうため、芯材粉体表面に連続めっき皮膜が形成されず、無電解めっきされない粉体や一部しか無電解めっきされていない粉体が発生しやすくなる傾向があり、導電性無電解めっき粉体として使用できない場合があるからである。
したがって、導電性無電解めっき粉体の製造工程における各工程間の少なくとも1つに水洗工程を導入して、攪拌、水洗温度、水洗時間、水洗回数等の水洗条件を調整すれば、芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整できるので、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無をより正確に制御できる。
以上で、めっき触媒担持工程、めっき触媒活性化工程、無電解めっき工程、水洗工程について説明したが、本発明の導電性無電解めっき粉体の製造方法は、必要に応じて上記以外の工程を含んでいてもよい。例えば、めっき触媒担持工程の前に、めっき触媒を芯材粉体に担持させやすくすることを目的に、芯材粉体の粉粒表面に表面処理工程を施すことが好ましい。表面処理工程は、例えば、芯材粉体の粉粒表面にアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、水酸基、ニトリル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基を1種または2種以上付与させる処理工程である。
これらの官能基を付与させるために、芯材粉体の粉粒表面を加水分解させることも好ましく、その場合、例えば酸、アルカリ等を使用して表面処理を施すことができる。酸としては塩酸、硫酸、硝酸等を使用でき、アルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液等を使用できる。酸またはアルカリの選択、処理条件は、芯材粉体の特性によって適宜選択される。また、クロム酸、クロム酸−硫酸や過マンガン酸などの酸化剤を使用して表面処理を施しても良く、プラズマ、コロナ放電、紫外線照射などを用いた乾式法で表面処理を施しても良い。また、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、水酸基、ニトリル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基で置換されたシランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤等のポリシラン化合物を含む溶液、アミン系硬化剤により硬化するエポキシ系樹脂等を用いて表面処理を施しても良い。また、界面活性剤を使用して表面処理を施しても良く、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれのものも使用することができる。例えば、アルカリ溶液中においてカチオン界面活性剤で表面処理することにより、芯材粉体の粉粒表面に水酸基を付与することができる。カチオン界面活性剤としては、アルキル酢酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等を使用することができる。また、表面処理後の水洗工程は、これまでに説明した水洗工程と同様に実施すれば良い。
これまでの説明では、無電解めっき工程で形成する突起の大きさや数及び突起の有無を制御する方法は、めっき触媒担持工程においてめっき触媒の濃度を調整することで、懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整する方法と、水洗工程を導入して、攪拌、水洗温度、水洗時間、水洗回数等の水洗条件を調整することで、懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整する方法によるものだけであったが、実際はこれらの方法だけに限定されない。
すなわち、無電解めっき工程において、めっき触媒担持済み芯材粉体の懸濁液中に芯材粉体に担持されていないめっき触媒が適量含まれていれば良いのであるから、無電解めっき工程の前に、無電解めっき工程で使用する無電解めっき液またはめっき触媒担持済み芯材粉体の懸濁液にめっき触媒を適量だけ添加しておくか、または無電解めっき工程中にめっき触媒を適量だけ添加することで、この添加しためっき触媒を芯材粉体に担持されていないめっき触媒として、突起の大きさや数及び突起の有無を制御するために使用することができる。このとき添加するめっき触媒は、濃度が0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下となるように添加することができ、所定の突起の大きさや数になるようにめっき触媒の量を適宜調整すれば良い。
また、めっき触媒活性化工程において、めっき触媒担持済み芯材粉体の懸濁液中に芯材粉体に担持されていないめっき触媒が適量含まれていても良く、めっき触媒活性化工程の前に、めっき触媒活性化工程で使用する活性化処理液またはめっき触媒担持済み芯材粉体の懸濁液にめっき触媒を適量だけ添加しておくか、またはめっき触媒活性化工程中にめっき触媒を適量だけ添加することで、この添加しためっき触媒を芯材粉体に担持されていないめっき触媒として、突起の大きさや数及び突起の有無を制御するために使用することができる。このとき添加するめっき触媒は、濃度が0.001ppm以上、めっき触媒の飽和濃度以下となるように添加することができ、所定の突起の大きさや数になるようにめっき触媒の量を適宜調整すれば良い。
なお、突起の大きさや数及び突起の有無を制御するためのめっき触媒の添加は、上記の工程前または工程中に限定されない。すなわち、表面処理工程、めっき触媒担持工程、水洗工程においても同様の操作をすることができる。すなわち、表面処理工程の前に、表面処理工程で使用する表面処理液または芯材粉体の懸濁液にめっき触媒を適量だけ添加しておくか、または表面処理工程中にめっき触媒を適量だけ添加することができる。また、めっき触媒担持工程の前に、めっき触媒担持工程で使用するめっき触媒液または芯材粉体の懸濁液にめっき触媒を適量だけ添加しておくか、またはめっき触媒担持工程中にめっき触媒を適量だけ添加することができる。ただし、このめっき触媒担持工程で突起の大きさや数及び突起の有無を制御するためのめっき触媒の添加をすることは、前に説明しためっき触媒担持工程において、めっき触媒の濃度を調整することで、懸濁液に含まれる芯材粉体に担持されていないめっき触媒の量を調整することと実質的に同じである。さらに、水洗工程の前に、水洗工程で使用する水または芯材粉体の懸濁液またはめっき触媒担持済み芯材粉体の懸濁液にめっき触媒を適量だけ添加しておくか、または水洗工程中にめっき触媒を適量だけ添加することができる。
次に芯材粉体について説明する。芯材粉体の形状に特に限定はなく、球状、繊維状、中空状、板状、針状のいずれでも良く、不定形でも良い。特に、芯材粉体の形状は異方導電性材料で一般的に使われるものであることが好ましく、球状のものが好ましい。球状とは、完全な球形の他、楕円のような球形に近い形状を含むことを意味し、完全な球形に近いものが好ましい。また、敢えて突起を有する芯材粉体を使用しなくても良い。本発明による方法で、突起を有するめっき粉体を製造し得るからである。
芯材粉体が球状の場合、平均粒子径が、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1.5〜40μm、さらに好ましくは2.5〜10μmの範囲にあり、より好ましくはCV値が10%以下であるものが選択して使用される。なおCV値とは、CV値%={(標準偏差)/(平均値)}×100で表される変動係数を意味する。球状以外の場合は、短手方向の径が上記範囲であると好ましい。
芯材粉体の材質は、水に不溶な粉体であれば特に限定はなく、無電解めっき可能な無機質粉体または有機質粉体から選択される。無機質粉体としては金属(合金も含む)、ガラス、セラミックス、シリカ、カーボン、金属または非金属の酸化物(含水物も含む)、アルミノ珪酸塩を含む金属珪酸塩、金属炭化物、金属窒化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属硫化物、金属酸塩、金属ハロゲン化物及び炭素などの粉体が挙げられる。
有機質粉体としては、天然繊維、天然樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルピリジン、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等のポリオレフィン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー(ABS)、エチレン−メタクリル酸コポリマー(イオノマー)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンエラストマー、ブチルゴム、熱可塑性オレフィンエラストマー等のオレフィンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド等のアクリル酸誘導体、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカルバゾール等のポリビニル化合物、軟質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ポリウレタンエラストマー等のポリウレタン、ウレタン樹脂、ポリアセタール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)等のエーテルポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリジヒドロキシメチルシクロヘキシルテレフタレート、セルロースエステル、不飽和ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリカーボネート(PC)等のポリエステル、脂肪族ポリアミド等のポリアミド、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(PF)、尿素−ホルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(MF)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ベンゾグアナミン、尿素、チオ尿素、メラミン、アセトグアナミン、ジシアンアミド、アニリン等のアミノ化合物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザールのようなアルデヒド類とからなるアミノ系樹脂、含弗素樹脂、ニトリル系樹脂などの粉体が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。これらの中では有機質の樹脂粉体が好適に用いられる。
導電性無電解めっき粉体における金属皮膜は、通常は単一金属の単層構造であるが、所望により2種類以上の異種金属による多層構造であってもよい。また、金属皮膜は、その種類やめっき条件によって結晶質または非晶質のいずれであっても良い。更に、金属皮膜は、磁性または非磁性を示すものでもあり得る。使用可能な金属としては、Ni、Fe、Cu、Co、Pd、Ag、Au、Pt、Snなどが挙げられる。ただし、ここでいう金属には、金属単体のほか、合金を含むものとする。例えば、ニッケル、ニッケルめっき、ニッケル皮膜のような表記がしてある場合であっても、ニッケル−リン合金やニッケル−ホウ素合金等の合金も含めるものとする。これらの使用可能な金属を無電解めっきで形成するための無電解めっき液は特に限定されず、試薬で無電解めっき液を建浴しても良く、市販の無電解めっき液を使用しても良い。また、これらの使用可能な金属の皮膜を形成するための無電解めっき方法は、既に説明済みである。なお、これらの使用可能な金属の中でも、ニッケル、金を使用するのが好ましい。特に金属皮膜は、ニッケルの単層構造、またはニッケル層の上に金層を形成した2層構造であることが好ましい。ニッケル層の上に金層を形成することで、より抵抗値の低減を図ることができる。
無電解めっきの膜厚は、例えば走査型電子顕微鏡による観察から実測できるほか、金属イオンの添加量や化学分析から算出することもできる。ただし、化学分析により算出される膜厚は、突起部分を除いた連続めっき皮膜と突起とを含んだ平均膜厚を意味する。化学分析方法に限定はなく、例えば吸光光度法、原子吸光法、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、各種クロマトグラフ法、イオン電極法等の公知の化学分析方法を使用できる。無電解めっきの膜厚を金属皮膜を構成する各金属層の厚さとした場合、各金属層の厚さはその密着性や耐熱性に少なからず影響し、金属層が厚すぎると金属皮膜が硬くなり芯材粉体の変形に追従できず破壊が進みやすくなったり、芯材粉体の変形を妨げるため接続電極を破壊したり、接触面積が大きくならなかったりして、抵抗値が高くなったり接続不良が発生することがある。逆に、金属層が薄すぎると芯材粉体からの落剥が起こって導電性が低下し、所望の導電性が得られなくなることがある。これらの観点から、各金属層の厚さは、0.001〜10μmであることが好ましく、0.005〜2μmであることがより好ましい。
このようにして得られた導電性無電解めっき粉体を、熱硬化性、熱可塑性などの絶縁性樹脂を主成分とするバインダーに混練してペースト状またはシート状にすることにより、導電性無電解めっき粉体を導電性フィラーとする異方導電性材料または導電性材料を得ることができる。異方導電性材料または導電性材料としては、例えば、対向する接続回路を導通接着するための異方導電性膜、異方導電性接着剤、異方導電性ペースト、異方導電性インク、異方導電性粘着剤層、異方導電性フィルム、異方導電性シート等の異方導電性材料、並びに、導電性膜、導電性接着剤、導電性ペースト、導電性インク、導電性粘着剤層、導電性フィルム、導電性シート等の導電性材料が挙げられる。バインダーとして使用される絶縁性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂などから選ばれた1種以上が挙げられる。また、異方導電性材料または導電性材料には、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、酸化防止剤、劣化防止剤、各種カップリング剤、増量剤、軟化材、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等の各種添加剤を添加してもよい。
本発明の導電性無電解めっき粉体を用いた異方導電性材料または導電性材料は、上記各成分を混合することにより製造することができる。かかる異方導電性材料または導電性材料の形状としては、ペースト状、シート状など様々な形態で使用することができ、ペースト状にするには、絶縁性樹脂中に適当な溶剤を含有することによって製造することができる。また、シート状にするには、例えば、導電性無電解めっき粉体及びバインダーを含む塗布液を、離型処理を施したポリエステル系フィルム上にバーコータ等により塗布、乾燥することによって製造することができる。かかる異方導電性材料または導電性材料は、ペースト状の場合には、スクリーン印刷機などにより回路基板の電極上に塗布し、絶縁性樹脂中の溶剤を乾燥させて5〜100μmの塗膜を形成し、相対峙する回路基板の電極を位置合わせして、加圧、加熱により導通接続する接続材料として使用される。シート状の場合には、回路基板の電極上に貼り付け、仮圧着し、接続対象となる回路基板の電極を位置合わせして加圧加熱により導通接続する接続材料として使用される。上記で得られた異方導電性材料または導電性材料は、液晶ディスプレイの電極と駆動用LSIとの接続、LSIチップの回路基板への接続などに使用され、特に接続対象となる電極表面に酸化膜を有する導体回路間の接続に好適に使用される。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(表面処理工程)
芯材粉体として、球状で平均粒径4μmのアクリル系樹脂粉体を使用した。この樹脂粉体5gを、市販のカチオン系界面活性剤にて表面処理した後、水洗工程を経て、表面処理済み樹脂粉体を得た。
(めっき触媒担持工程)
上記で得られた表面処理済み樹脂粉体を、市販のパラジウム/錫系めっき触媒であるHS−202B(日立化成工業株式会社製)に投入した後、攪拌して分散させた。HS−202Bは30mL/Lの濃度となるように、純水を使用して500mLに建浴してあり、処理条件は室温で10分間である。この後、HS−202Bをろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(水洗工程)
上記めっき触媒担持工程後の水洗工程は実施しなかった。
(めっき触媒活性化工程)
上記で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、市販のめっき触媒活性化処理液であるADP−601(日立化成工業株式会社製)に投入した後、攪拌して分散させた。ADP−601は100mL/Lの濃度となるように、純水を使用して500mLに建浴してあり、処理条件は室温で10分間である。この後、ADP−601をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(水洗工程)
上記めっき触媒活性化工程後のめっき触媒担持済み樹脂粉体を、100mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で1分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
上記水洗工程後のめっき触媒担持済み樹脂粉体に、純水を250mL加えて、めっき触媒担持前の樹脂粉体の濃度換算で20g/Lとなるように、懸濁液を作製した。室温の下、攪拌せずに1分間放置した後、ろ別せずに懸濁液の上澄み部分を採取した。その採取液をろ過して樹脂粉体を除去した後、その採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定した。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、公知の無電解ニッケルめっき方法で、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、市販の無電解ニッケルめっき液であるNIPS−100(日立化成工業株式会社製)を、定量ポンプを通して徐々に投入した。めっき時間は30分間であった。その後、水洗工程を経て乾燥させ、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[実施例2]
(表面処理工程)
芯材粉体として、球状で平均粒径4μmのポリスチレン系樹脂粉体を使用した。それ以外は実施例1(表面処理工程)と同様である。
(めっき触媒担持工程)
実施例1(めっき触媒を芯材粉体の粉粒表面に担持させる工程)と同様である。
(水洗工程)
上記めっき触媒担持工程で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、500mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で5分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(めっき触媒活性化工程)
実施例1(めっき触媒活性化工程)と同様である。
(水洗工程)
上記めっき触媒活性化工程後のめっき触媒担持済み樹脂粉体を、500mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で5分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
実施例1と同様の操作で得られた採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定して求めた。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液はHS−202Bを5mL投入し、攪拌した後、純水を加えて1000mLにした。HS−202Bは30mL/Lの濃度となるように、純水で建浴したものを使用した。その後、公知の無電解ニッケルめっき方法で、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、NIPS−100を定量ポンプを通して徐々に投入した。めっき時間は30分間であった。その後、水洗工程を経て乾燥させ、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[実施例3]
実施例1の(めっき触媒担持工程)で、HS−202Bの濃度を60mL/Lにした以外は実施例1と同様の工程で、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。また、実施例1と同様の操作で得られた採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定して求めた。その結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例2の(無電解めっき工程以降)を以下の通り変更した。
(無電解めっき工程以降)
実施例1と同様の操作で得られた採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定して求めた。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、200mLのNIPS−100にHS−202Bを5mL投入、攪拌させためっき液を、定量ポンプを通して徐々に投入した。HS−202Bは30mL/Lの濃度となるように、純水で建浴したものを使用した。それ以外は実施例2と同様の工程で、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[実施例5]
(表面処理工程)
芯材粉体として、球状で平均粒径4μmのアクリル系樹脂粉体を使用した。それ以外は実施例1(表面処理工程)と同様である。
(めっき触媒担持工程)
上記表面処理工程で得られた表面処理済み樹脂粉体を、市販のアルカリ系めっき触媒であるアクチベータネオガント834(アトテックジャパン株式会社製)に投入した後、攪拌して分散させた。アクチベータネオガント834は40mL/Lの濃度となるように、純水を使用して500mLに建浴してあり、処理条件は35℃で10分間である。この後、アクチベータネオガント834をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(水洗工程)
上記めっき触媒担持工程後の水洗工程は実施しなかった。
(めっき触媒活性化工程)
上記で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に、純水を250mL加えて、めっき触媒担持前の樹脂粉体の濃度換算で20g/Lとなるように、懸濁液を作製した。室温の下、攪拌せずに1分間放置した後、ろ別せずに懸濁液の上澄み部分を採取した。その採取液をろ過して樹脂粉体を除去した後、その採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定した。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、ジメチルアミンボランを0.1g/Lになるように投入、攪拌して、めっき触媒活性化工程を実施した。処理条件は室温で10分間である。この後、上記で得られた懸濁液をろ別せずに、めっき触媒担持済み芯材粉体が分散しためっき触媒活性化処理液を懸濁液として、この懸濁液に対して次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
上記で得られた懸濁液に、公知の無電解ニッケルめっき方法で、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、市販の無電解ニッケルめっき液であるNIPS−100(日立化成工業株式会社製)を、定量ポンプを通して徐々に投入した。めっき時間は30分間であった。その後、水洗工程を経て乾燥させ、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[実施例6]
(表面処理工程)
芯材粉体として、球状で平均粒径4μmのポリスチレン系樹脂粉体を使用した。それ以外は実施例1(表面処理工程)と同様である。
(めっき触媒担持工程)
実施例5(めっき触媒担持工程)と同様である。
(水洗工程)
上記めっき触媒担持工程で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、500mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で3分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、さらに同様に水洗工程をあと2回繰り返し、得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(めっき触媒活性化工程)
実施例5と同様の操作で得られた採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定して求めた。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、ジメチルアミンボランを0.1g/Lになるように投入、攪拌して、めっき触媒活性化工程を実施した。処理条件は室温で10分間である。この後、アクチベータネオガント834を3mL投入、攪拌した。アクチベータネオガント834は40mL/Lの濃度となるように、純水で建浴したものを使用した。その後、上記で得られた懸濁液をろ別せずに、めっき触媒担持済み芯材粉体が分散しためっき触媒活性化処理液を懸濁液として、この懸濁液に対して次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
実施例5(無電解めっき工程以降)と同様の工程で、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[実施例7]
実施例5の(めっき触媒担持工程)でアクチベータネオガント834の濃度を80mL/Lにした以外は実施例5と同様の工程で、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。また、実施例5と同様の操作で得られた採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定して求めた。その結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例6の(めっき触媒活性化工程)と(無電解めっき工程以降)を以下の通り変更した。
(めっき触媒活性化工程)
実施例5と同様の操作で得られた採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定して求めた。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、ジメチルアミンボランを0.1g/Lになるように投入、攪拌して、めっき触媒活性化工程を実施した。処理条件は室温で10分間である。その後、上記で得られた懸濁液をろ別せずに、めっき触媒担持済み芯材粉体が分散しためっき触媒活性化処理液を懸濁液として、この懸濁液に対して次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
上記で得られた懸濁液に、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、200mLのNIPS−100にアクチベータネオガント834を3mL投入、攪拌させためっき液を、定量ポンプを通して徐々に投入した。アクチベータネオガント834は40mL/Lの濃度となるように、純水で建浴したものを使用した。それ以外は実施例6と同様の工程で、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[比較例1]
(表面処理工程)
芯材粉体として、球状で平均粒径4μmのアクリル系樹脂粉体を使用した。この樹脂粉体5gを、市販のカチオン系界面活性剤にて表面処理した後、水洗工程を経て、表面処理済み樹脂粉体を得た。
(めっき触媒担持工程)
上記で得られた表面処理済み樹脂粉体を、市販のパラジウム/錫系めっき触媒であるHS−202B(日立化成工業株式会社製)に投入した後、攪拌して分散させた。HS−202Bは30mL/Lの濃度となるように、純水を使用して500mLに建浴してあり、処理条件は室温で10分間である。この後、HS−202Bをろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(水洗工程)
上記で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、500mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で5分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、さらに同様に水洗工程をあと2回繰り返し、得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(めっき触媒活性化工程)
上記で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、市販のめっき触媒活性化処理液であるADP−601(日立化成工業株式会社製)に投入した後、攪拌して分散させた。ADP−601は100mL/Lの濃度となるように、純水を使用して500mL建浴してあり、処理条件は室温で10分間である。この後、ADP−601をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(水洗工程)
上記で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、500mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で5分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、さらに同様に水洗工程をあと2回繰り返し、得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
上記水洗工程後のめっき触媒担持済み樹脂粉体に、純水を250mL加えて、めっき触媒担持前の樹脂粉体の濃度換算で20g/Lとなるように、懸濁液を作製した。室温の下、攪拌せずに1分間放置した後、ろ別せずに懸濁液の上澄み部分を採取した。その採取液をろ過して樹脂粉体を除去した後、その採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定した。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、公知の無電解ニッケルめっき方法で、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、市販の無電解ニッケルめっき液であるNIPS−100(日立化成工業株式会社製)を、定量ポンプを通して徐々に投入した。めっき時間は30分間であった。その後、水洗工程を経て乾燥させ、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[比較例2]
(表面処理工程)
芯材粉体として、球状で平均粒径4μmのポリスチレン系樹脂粉体を使用した。それ以外は比較例1(表面処理工程)と同様である。
(めっき触媒担持工程)
上記表面処理工程で得られた表面処理済み樹脂粉体を、市販のアルカリ系めっき触媒であるアクチベータネオガント834(アトテックジャパン株式会社製)に投入した後、攪拌して分散させた。アクチベータネオガント834は40mL/Lの濃度となるように、純水を使用して500mLに建浴してあり、処理条件は35℃で10分間である。この後、アクチベータネオガント834をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(水洗工程)
上記で得られためっき触媒担持済み樹脂粉体を、500mLの純水に投入して懸濁液を作製し、室温で3分間攪拌して分散させた。この後、懸濁液中の洗浄水をろ別して得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、さらに同様に水洗工程をあと4回繰り返し、得られためっき触媒担持済み樹脂粉体に対して、次工程以降の処理を実施した。
(めっき触媒活性化工程)
上記水洗工程後のめっき触媒担持済み樹脂粉体に、純水を250mL加えて、めっき触媒担持前の樹脂粉体の濃度換算で20g/Lとなるように、懸濁液を作製した。室温の下、攪拌せずに1分間放置した後、ろ別せずに懸濁液の上澄み部分を採取した。その採取液をろ過して樹脂粉体を除去した後、その採取液のパラジウム濃度を原子吸光法で測定した。その結果を表1に示す。
一方、残りの懸濁液は純水を加えて1000mLにした後、ジメチルアミンボランを0.1g/Lになるように投入、攪拌して、めっき触媒活性化工程を実施した。処理条件は室温で10分間である。この後、上記で得られた懸濁液をろ別せずに、めっき触媒担持済み芯材粉体が分散しためっき触媒活性化処理液を懸濁液として、この懸濁液に対して次工程以降の処理を実施した。
(無電解めっき工程以降)
上記で得られた懸濁液に、公知の無電解ニッケルめっき方法で、無電解ニッケルめっき工程を実施した。すなわち、上記懸濁液を80℃まで加熱し、攪拌しながら、NIPS−100を定量ポンプを通して徐々に投入した。めっき時間は30分間であった。その後、水洗工程を経て乾燥させ、無電解ニッケルめっき樹脂粉体を得た。
[外観観察]
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体の外観を電子顕微鏡で観察して、無電解めっきされていない樹脂粉体(以下、「めっき無し樹脂粉体」という)の数、樹脂粉体粒子1個に対して1/2程度の表面積しか無電解めっきされていない樹脂粉体(以下、「1/2めっき樹脂粉体」という)の数、突起の有無、及び、突起付粒子に対しては突起の大きさと数を調べた。結果を表1に併せて示す。なお、表1には工程途中のめっき触媒の添加の有無も併せて示している。また、表1において、比較例1と比較例2についてはめっき粒子1000個中の突起付めっき粒子の数が1個未満で、ほとんどが突起の無い平滑なめっき粒子であったため、突起の大きさと数についてはハイフン(−)で記した。
表1に示した結果から明らかなように、各実施例で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体は突起があり、しかも、めっき無し樹脂粉体の数、及び、1/2めっき樹脂粉体の数が充分に少なかった。これに対して、各比較例で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体は、めっき無し樹脂粉体の数、及び、1/2めっき樹脂粉体の数は少なかったものの、突起が無く、平滑なめっき表面であった。
[実施例9]
実施例1で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、市販の置換金めっき液であるHGS−500(日立化成工業株式会社製)を用いて100mL/L、80℃、10分間の条件で置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例10]
実施例2で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例11]
実施例3で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例12]
実施例4で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例13]
実施例5で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例14]
実施例6で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例15]
実施例7で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[実施例16]
実施例8で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[比較例3]
比較例1で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[比較例4]
比較例2で得られた無電解ニッケルめっき樹脂粉体に対して、実施例9と同様にHGS−500を用いて置換金めっきを実施することで、無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体を得た。
[導電性の評価]
実施例9〜16及び比較例3〜4で得られた無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体の導電性を以下の方法で評価した。すなわち、エポキシ樹脂100質量部、硬化剤150質量部、及び、トルエン70質量部を混合して絶縁性接着剤を調製し、次いで各無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体15質量部を配合して、異方導電性接着剤を得た。この異方導電性接着剤を、バーコーターでシリコーン処理ポリエステルフィルム上に塗布し、乾燥させて異方導電性フィルム状接着剤を得た。この異方導電性フィルム状接着剤を用いて、全面をアルミで蒸着したガラスと100μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板間の接続を180℃、3MPaで10秒間加熱加圧して行い、電極間の接続抵抗値を測定した。その結果を表2に示す。
表2に示した結果から明らかなように、各実施例で得られた無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体の導電性は良好であったのに対し、各比較例で得られた無電解ニッケル/金めっき樹脂粉体の導電性は各実施例よりも劣るものであった。以上から、本発明によって得られる導電性無電解めっき粉体は、接続抵抗の充分な低減が図れるため、異方導電性材料または導電性材料の導電性能を向上させることができる。