JP2009173998A - 熱処理方法およびバリアフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】基板に樹脂フィルムを用いた場合、この樹脂フィルムに変質、変形などが生じることなく、無機膜を熱処理することができる熱処理方法およびバリアフィルムを提供する。
【解決手段】本発明の熱処理方法は、樹脂フィルム製の基板の表面に無機膜が形成されたシート材の無機膜に熱処理を行う工程を有し、無機膜に熱処理を行う際に、基板の表面に対して全反射を起す臨界角よりも大きな入射角で、赤外光を無機膜に照射する。
【選択図】図1

Description

本発明は、基板の表面に形成された無機膜を熱処理する熱処理方法およびバリアフィルムに関し、特に、基板に樹脂フィルムを用いた場合、この樹脂フィルムに変質、変形などが生じることなく、無機膜を熱処理することができる熱処理方法およびバリアフィルムに関する。
現在、半導体プロセスにおいて、PVD法またはCVD法により形成した膜に対して、数100〜1000℃前後の後熱処理を施すことにより、成膜時にできた膜の構造欠陥を減少させて膜質を改善する方法が一般的に用いられており、膜質の改善方法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1の赤外線アニール処理方法には、マトリックスアレイを形成すべき透明基板表面側のシリコン層に対するアニール工程として、RTA(赤外線アニール(Rapid Thermal Annealing))用ランプからの光エネルギーを吸収可能な光吸収層を透明基板の表面側の所定領域に設けた状態でRTA工程を行うことが開示されている。
特許文献1の赤外線アニール処理方法によれば、シリコン基板表層を高温・短時間で加熱することができるため、シリコン基板に注入した不純物原子の拡散(分布変化)を伴わずに、活性化処理を行うことが可能となる。
この特許文献1に開示されているように、赤外線アニール処理を用いた方法が広く利用されている。
特許文献2の半導体素子の製造方法には、PZT薄膜を350〜450℃程度の温度で形成することにより、300Å程度のグレインにより構成された膜とし、更に600℃〜700℃の温度でRTA(Rapid Thermal Annealing)を行うことによりグレインの大きさを大きくしない短時間の熱処理で強誘電体膜とするものが開示されている。
この特許文献2によれば、RTAを用いて短時間でPZT膜を強誘電体膜とするので、長時間の熱処理による2つ以上のグレインの周囲に主としてPbが析出して見かけ上グレインが大きくなる現象や、結果としてグレイン内のPbの組成が不足することに起因する格子欠陥の誘起を防ぐことができる。
さらには、特許文献3の不揮発性半導体メモリ装置の製造方法には、フローティングゲート電極と制御ゲート電極の間にONO積層構造の絶縁膜を形成する方法において、ポリシリコン膜によりなるフローティングゲート電極上にボトム酸化膜を、RTA(Rapid Thermal Anneal)プロセスで形成することが開示されている。
特開平5−53143号公報 特開平6−283668号公報 特開平9−205157号公報
現在、真空雰囲気のチャンバ内で、例えば、プラズマCVDによって、長尺な基板(ウェブ状の基板)に連続的に成膜を行う成膜装置として、例えば、接地(アース)したドラムと、このドラムに対面して配置された高周波電源に接続された電極とを用いる装置が知られている。
この成膜装置では、搬送ローラにより長尺な基板をドラムに搬送し、ドラムの所定領域に基板を巻き掛けてドラムを回転することにより、基板を所定の成膜位置に位置して長手方向に搬送しつつ、ドラムと電極との間に高周波電圧を印加して電界を形成し、かつ、ドラムと電極との間に、成膜のための原料ガス、さらにはアルゴンガスなどを導入して、基板の表面にプラズマCVDによる成膜を行い、成膜後の長尺な基板を別の搬送ローラにより搬送する。この成膜装置は、一般的にロールツーロール方式と呼ばれるものである。
この成膜装置において、基板に、樹脂フィルムを用いた場合、基板に無機膜を成膜した後、無機膜の膜質を改善するために、熱処理として、例えば、特許文献1〜3に開示されたアニールなどを行った場合、樹脂フィルムは、シリコン基板とは異なり、温度100℃前後にガラス転移温度(Tg)を有するため、基板である樹脂フィルムに品質影響を与えずに表面に形成された無機膜のみを高温加熱することは極めて困難である。
例えば、基板である樹脂フィルムに、特許文献1〜3に開示された温度範囲で、熱処理を行うと、樹脂フィルムは、変形または溶融してしまう。このようなことから、基板に樹脂フィルムを用いた場合、この樹脂フィルムの温度を上昇させることなく、表面に形成した無機膜のみを加熱して、基板に悪影響を与えることなく熱処理する方法が望まれている。
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、基板に樹脂フィルムを用いた場合、この樹脂フィルムに変質、変形などが生じることなく、無機膜を熱処理することができる熱処理方法およびバリアフィルムを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、樹脂フィルム製の基板の表面に無機膜が形成されたシート材の前記無機膜に熱処理を行う工程を有し、前記無機膜に熱処理を行う際に、前記基板の表面に対して全反射を起す臨界角よりも大きな入射角で、赤外光を前記無機膜に照射することを特徴とする熱処理方法を提供するものである。
本発明において、前記赤外光は、レーザを有する光源により得られることが好ましい。
また、本発明において、前記赤外光は、赤外光源部、および光学素子を有する光源により得られることが好ましい。
さらに、本発明において、前記光学素子は、レンズおよび反射板の少なくとも一方を有することが好ましい。
さらにまた、本発明において、前記無機膜に熱処理を行う際に、前記シート材を搬送することが好ましい。
また、本発明において、前記基板は長尺状のものであり、前記基板を、回転可能なローラの表面の巻き掛けて搬送しつつ、前記熱処理がなされることが好ましい。
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の熱処理方法が施された無機膜と、前記無機膜が表面に形成された基板とを有し、前記基板は、樹脂フィルム製であることを特徴とするバリアフィルムを提供するものである。
本発明のバリアフィルムは、樹脂フィルム製の基板と、前記樹脂フィルム製の基板の表面に形成された無機膜とを有し、前記無機膜は、前記基板の表面に対して全反射を起す臨界角よりも大きな入射角で、赤外光を前記無機膜に照射して熱処理されている。
本発明において、前記赤外光は、レーザを有する光源により得られることが好ましい。
また、本発明において、前記赤外光は、赤外光源部、および光学素子を有する光源により得られることが好ましい。
さらに、本発明において、前記光学素子は、レンズおよび反射板の少なくとも一方を有することが好ましい。
さらにまた、本発明において、前記無機膜に熱処理を行う際に、前記シート材を搬送することが好ましい。
また、本発明において、前記基板は長尺状のものであり、前記基板を、回転可能なローラの表面の巻き掛けて搬送しつつ、前記熱処理がなされることが好ましい。
本発明の熱処理方法によれば、樹脂フィルム製の基板の表面に無機膜が形成されたシート材について、この無機膜に熱処理を行う際に、基板の表面に対して全反射を起す臨界角よりも大きな入射角で、赤外光を無機膜に照射することにより、基板に樹脂フィルムを用いた場合、この樹脂フィルムに変質、変形などが生じることなく、無機膜を熱処理することができる。
また、本発明のバリアフィルムは、無機膜について、本発明の熱処理方法により、すなわち、基板の表面に対して全反射を起す臨界角よりも大きな入射角で、赤外光を前記無機膜に照射して熱処理がなされているため、無機膜は緻密化、また無機膜に構造欠陥があれば、その修復がなされ、膜質が改善されている。このため、酸素、水蒸気、水などに対してバリア性を高くすることができる。
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の成膜装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る成膜装置を示す模式図であり、図2は、図1に示す成膜装置の熱処理室の要部拡大図であり、図1の冷却手段を上下反転して図示している。
図1に示す本発明の実施形態に係る成膜装置10は、例えば、酸素、水蒸気などの気体、または水に対して、バリア性を有するバリアフィルムの製造に利用されるものである。このバリアフィルムは、食品包装、フレキシブルディスプレイの部品などに利用されるものである。
成膜装置10においては、樹脂フィルム製の基板Zを用いる。この基板Zとしては、例えば、PETフィルム(ガラス転移温度:67℃)、PENフィルム(ガラス転移温度:113℃)等の樹脂フィルムが用いられる。また、基板Zとして、例えば、PMMAフィルム(ガラス転移温度:70℃)などのアクリル系の樹脂フィルムを用いることもできる。
成膜装置10は、長尺の基板Z(ウェブ状の基板Z)に連続で成膜を行う装置であって、基本的に、長尺な基板Zを供給する供給室12と、長尺な基板Zに無機膜fを形成する成膜室(チャンバ)14と、形成された無機膜fに対して熱処理を施す熱処理室16と、無機膜fが形成された長尺な基板Zを巻き取る巻取り室18と、真空排気手段40と、制御部44とを有する。この制御部44により、成膜装置10における各要素の動作が制御される。
また、成膜装置10においては、供給室12と成膜室14とを区画する壁15a、成膜室14と熱処理室16とを区画する壁15b、および熱処理室16と巻取り室18とを区画する壁15cには、それぞれ基板Zが通過するスリット状の開口15dが形成されている。
成膜装置10においては、供給室12、成膜室14、熱処理室16および巻取り室18には、真空排気手段40が配管42を介して接続されている。この真空排気手段40により、供給室12、成膜室14、熱処理室16および巻取り室18の内部が所定の真空度にされる。
真空排気手段40は、供給室12、成膜室14、熱処理室16および巻取り室18を排気して所定の真空度に保つものであり、ドライポンプおよびターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有するものである。また、供給室12、成膜室14、熱処理室16および巻取り室18には、それぞれ内部の圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設けられている。
なお、真空排気手段40による供給室12、成膜室14、熱処理室16および巻取り室18の到達真空度には、特に限定はなく、実施する成膜方法等に応じて、十分な真空度を保てればよい。この真空排気手段40は、制御部44により制御される。
供給室12は、長尺な基板Zを供給する部位であり、基板ロール20、およびガイドローラ21が設けられている。
基板ロール20は、長尺な基板Zを連続的に送り出すものであり、例えば、反時計回りに基板Zが巻回されている。
基板ロール20は、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータによって基板ロール20が基板Zを巻き戻す方向rに回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、基板Zが連続的に送り出される。
ガイドローラ21は、基板Zを所定の搬送経路で成膜室14に案内するものである。このガイドローラ21は、公知のガイドローラにより構成される。
本実施形態の成膜装置10においては、ガイドローラ21は、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ21は、基板Zの搬送時における張力を調整するテンションローラとして作用するローラであってもよい。
巻取り室18は、後述するように、成膜室14で、表面Zfに膜が形成された基板Zが更に熱処理室16で無機膜fが熱処理されたものを巻き取る部位であり、巻取りロール38、およびガイドローラ36が設けられている。
巻取りロール38は、成膜された基板Zをロール状に、例えば、時計回りに巻き取るものである。
この巻取りロール38は、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取りロール38が回転されて、成膜済の基板Zが巻き取られる。
巻取りロール38においては、モータによって基板Zを巻き取る方向Rに回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、成膜済の基板Zを連続的に、例えば、時計回りに巻き取る。
ガイドローラ36は、先のガイドローラ21と同様、成膜室14から搬送された基板Zを、所定の搬送経路で巻取りロール38に案内するものである。このガイドローラ36は、公知のガイドローラにより構成される。なお、供給室12のガイドローラ21と同様に、ガイドローラ36も、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ36は、テンションローラとして作用するローラであってもよい。
成膜室14は、真空チャンバとして機能するものであり、基板Zを搬送しつつ連続的に、基板Zの表面Zfに、気相成膜法のうち、例えば、プラズマCVDによって、膜を形成する部位である。
成膜室14は、例えば、ステンレスまたはアルミニウムなど、各種の真空チャンバで利用されている材料を用いて構成されている。
成膜室14には、2つのガイドローラ24、28と、ドラム26と、成膜部50とが設けられている。
ガイドローラ24、およびガイドローラ28は、基板Zの搬送方向Dに対して、その長手方向を直交させて配置されており、さらにガイドローラ24と、ガイドローラ28とが、所定の間隔を設けて対向して平行に配置されている。
ガイドローラ24は、供給室12に設けられたガイドローラ21から搬送された基板Zをドラム26に搬送するものである。このガイドローラ24は、例えば、基板Zの搬送方向Dと直交する方向(以下、軸方向という)に回転軸を有し回転可能であり、かつガイドローラ24は、軸方向の長さが基板Zの長さ(以下、基板Zの幅という)よりも長い。
ガイドローラ28は、ドラム26に巻き掛けられた基板Zを巻取り室18に設けられたガイドローラ36に搬送するものである。このガイドローラ28は、例えば、軸方向に回転軸を有し回転可能であり、かつガイドローラ28は、軸方向の長さが基板Zの幅よりも長い。
また、ガイドローラ24、ガイドローラ28は、上記構成以外は、供給室12に設けられたガイドローラ21と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
ドラム26は、ガイドローラ24と、ガイドローラ28との間の空間Hの下方に設けられている。ドラム26は、その長手方向を、ガイドローラ24およびガイドローラ28の長手方向に対して平行にして配置されている。さらには、ドラム26は接地されている。
このドラム26は、例えば、円筒状を呈し、軸方向に回転軸を有し、回転可能なものである。かつ図2に示すように、ドラム26は、軸方向における長さが基板Zの幅よりも長い。ドラム26においては、基板Zの幅方向における中心と、ドラム26の軸方向の中心とを合わせて、基板Zを、その表面(周面)に巻き掛けた場合、その両側の端部26aは、基板Zが掛からない領域となる。
ドラム26は、その表面(周面)に基板Zが巻き掛けられて、回転することにより、基板Zを所定の成膜位置に保持しつつ、搬送方向Dに基板Zを搬送するものである。
成膜部50は、基板Zを、例えば、25℃程度の常温で、基板Zの表面Zfに無機膜fを形成するものである。この無機膜fは、例えば、可視光領域(約450nm〜750nm)で透明な金属化合物または半導体化合物により構成されるものである。この可視光領域で透明な金属化合物または半導体化合物とは、Si、Al、Mg、Ti、V、Zr、Nb、Hf、Ga、Zn、およびCのうちの少なくとも1元素と、O、N、およびHのうちの少なくとも1元素とにより構成される可視光領域で透明な金属化合物または半導体化合物のことである。このような金属化合物または半導体化合物により構成される無機膜fは、例えば、Al膜(アルミニウム酸化膜)、SiO膜(シリコン酸化膜)、SiN膜(シリコン窒化膜)、SiON膜(シリコンの酸窒化膜)である。
図1に示すように、成膜部50は、ドラム26の下方に設けられており、基板Zがドラム26に巻き掛けられた状態で、ドラム26が回転して、基板Zが搬送方向Dに搬送されつつ、基板Zの表面Zfに無機膜fを形成するものである。この樹脂フィルム製の基板Zの表面Zfに無機膜fが形成されたものがシート材Pである。
成膜部50は、気相成膜法のうち、例えば、プラズマCVDを用いて無機膜fを形成するものであり、成膜電極52、高周波電源54、原料ガス供給部56および仕切部58を有する。制御部44により、成膜部50の高周波電源54、および原料ガス供給部56が制御される。
成膜部50においては、成膜室14の下方に、ドラム26の表面に対向して、所定の隙間Sを設けて成膜電極52が設けられている。成膜電極52は、例えば、平面視長方形の平板状に形成されており、広い面に複数の穴(図示せず)が等間隔で形成されている。成膜電極52は、この広い面をドラム26に向けて配置されている。この成膜電極52は、一般的にシャワー電極と呼ばれるものである。
また、成膜電極52は、高周波電源54が接続されており、この高周波電源54により、成膜電極52に高周波電圧が印加される。
原料ガス供給部56は、例えば、配管57を介して、成膜電極52の複数の穴を通して隙間Sに、膜を形成する原料ガスを供給するものである。ドラム26と成膜電極52との隙間Sがプラズマの発生空間になる。
本実施形態においては、原料ガスは、例えば、SiO膜を形成する場合、TEOSガス、および活性種ガスとして酸素ガスが用いられる。
原料ガス供給部56は、プラズマCVD装置で用いられている各種のガス導入手段が利用可能である。
また、原料ガス供給部56においては、原料ガスのみならず、アルゴンガスまたは窒素ガスなどの不活性ガス、および酸素ガス等の活性種ガス等、プラズマCVDで用いられている各種のガスを、原料ガスと共に、隙間Sに供給してもよい。このように、複数種のガスを導入する場合には、各ガスを同じ配管で混合して、成膜電極52の複数の穴を通して隙間Sに供給しても、各ガスを異なる配管から成膜電極52の複数の穴を通して隙間Sに供給してもよい。
さらに、原料ガスまたはその他、不活性ガスおよび活性種ガスの種類または導入量も、形成する膜の種類、または目的とする成膜レート等に応じて、適宜、選択/設定すればよい。
仕切部58は、成膜電極52を成膜室14内において区画するものである。
この仕切部58は、例えば、一対の仕切板58aにより構成されており、一対の仕切板58aで、成膜電極52を挟むようにして配置されている。
各仕切板58aは、それぞれドラム26の長さ方向に伸びた板状部材であり、ドラム26側の端部が、成膜電極52とは反対側に折曲している。この仕切部58により、隙間S、すなわち、プラズマ発生空間が、成膜室14内において区画されている。
成膜電極52は、平板状に限定されるものではなく、例えば、ドラム26の軸方向に分割した複数の電極を配列した構成等、プラズマCVDによる成膜が可能なものであれば、各種の電極の構成が利用可能である。なお、基板Zに対する電界およびプラズマなどの均一性等の点で、成膜電極52は、本実施形態のような平面視長方形の平板状のシャワー電極であることが好ましい。
また、成膜電極52と高周波電源54とは、必要に応じて、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを介して接続してもよい。
熱処理室16は、シート材Pについて、基板Zの表面Zfに成膜された無機膜fを緻密化すること、または無機膜fに欠陥があればその修復することなど、無機膜fの膜質を改善するために、赤外光Bを用いて熱処理を行うところである。
熱処理室16には、搬送ローラ32と、熱処理部60とが設けられている。
この熱処理部60は、冷却ローラ(ローラ)30と、赤外線ランプユニット(光源)62と、冷却ユニット70とを有する。冷却ローラ30と、冷却ユニット70とにより冷却手段が構成される。
搬送ローラ32は、熱処理部60により無機膜fに熱処理がされた基板Zを、熱処理部60の冷却ローラ30から巻取り室18のガイドローラ36に搬送するものである。この搬送ローラ32は、基板Zの搬送方向Dに対して、その長手方向を直交させて配置されており、軸方向に回転軸を有し回転可能であり、かつ搬送ローラ32は、軸方向の長さが基板Zの幅よりも長い。
また、搬送ローラ32は、上記構成以外は、供給室12に設けられたガイドローラ21と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
熱処理部60の冷却ローラ30は、熱処理室16の成膜室14側に設けられている。冷却ローラ30は、その長手方向を、搬送ローラ32の長手方向に対して平行にして配置されている。この冷却ローラ30の表面30aに、基板Zの裏面Zfが巻き掛けられる。
冷却ローラ30は、基板Zの裏面Zfがその表面30aに接した状態で、基板Zを冷却するものであり、さらには赤外光Bによる加熱前には無機膜fをガラス転移温度以下に冷却するものである。この冷却ローラ30には、内部に冷媒を循環させるための配管(図示せず)が設けられている。この冷媒を循環させるためのポンプ(図示せず)などを備えた冷却ユニット70が接続されている。この冷却ユニット70により、冷媒が冷却ローラ30に設けられた配管内を循環し、冷却ローラ30の表面30aの温度を、例えば、0℃〜25℃(常温)にすることができる。
図2に示す赤外線ランプユニット62は、基板Zの表面Zfに形成された無機膜fを熱処理するためのものであり、RTA(Rapid Thermal Anneal)に用いられるものが利用可能である。この赤外線ランプユニット62は、冷却ローラ30の下方に設けられている。
本実施形態において、赤外線ランプユニット62は、例えば、軸方向に延び、冷却ローラ30側に開口部が形成されたケース64と、このケース64の内部に収納され、冷却ローラ30の表面30aに集光するように凹面状に形成されたリフレクタ(反射板)66と、このリフレクタ66の内部に設けられ、軸方向に延びた赤外線ランプ68とを有する。
赤外線ランプユニット62は、冷却ローラ30に巻き掛けられる基板Zの表面Zfに対して所定の角度で配置されている。
赤外線ランプユニット62においては、赤外線ランプ68から出射した赤外線がリフレクタ66により集光されて赤外光Bが出射される。この赤外線ランプユニット62により、例えば、赤外光Bが基板Zの表面Zfに集光される。赤外線ランプユニット62の赤外線ランプ68は軸方向に延びたものであるため、基板Zの表面Zfに対して、赤外光Bがライン状に照射される。なお、この赤外線ランプ68は、制御部44により、点灯、消灯が制御されるものである。
本実施形態の赤外線ランプユニット62は、無機膜fを熱処理する場合、全反射を起す臨界角θcよりも大きな入射角θで、集光された赤外光Bを基板Zの表面Zfに対して、基板Zの表面Zfの接点mを通る軸方向に伸びた線(以下、基板Zの表面Zfの照射位置線という)上に沿ってライン状に照射する。
ここで、基板Zの表面Zfにおける接線のうち、冷却ローラ30の中心Oを通る水平線(図示せず)に平行なものを接線Tとし、この接線Tが基板Zの表面Zfと接する点を接点mとし、この接点mおよび冷却ローラ30の中心Oを通る直線Cとする。この場合、入射角θとは、赤外線ランプ68の側断面における中心および基板Zの表面Zfの接点mを通る直線αと、直線Cとのなす角度のことである。
全反射を起す臨界角θcは、無機膜fの屈折率(n)と基板Zの屈折率(n)とにより得られるものであり、無機膜fと基板Zとの構成などにより異なる。
臨界角θcは、θc=sin−1(n/n)により得られる。
例えば、基板ZがPETフィルム(屈折率:n=1.57)で、無機膜fがAl膜(屈折率:n=1.64)のとき、臨界角θcは73.2°である。
また、基板ZがPETフィルム(屈折率:n=1.57)で、無機膜fがSi膜(屈折率:n=2.0)のとき、臨界角θcは51.7°である。
また、基板ZがPENフィルム(屈折率:n=1.64)で、無機膜fがAl膜(屈折率:n=1.64)のとき、臨界角θcは90°である。
また、基板ZがPENフィルム(屈折率:n=1.64)で、無機膜fがSi膜(屈折率:n=2.0)のとき、臨界角θcは54.1°である。
上述のように、全反射を起す臨界角θcは、無機膜fの屈折率と基板Zの屈折率とにより異なる。このため、無機膜fの屈折率と基板Zの屈折率とに応じて、すなわち、その臨界角θcに応じて、赤外線ランプユニット62の赤外光Bの入射角θも適宜変更可能であることが好ましい。この場合、例えば、赤外線ランプユニット62を、冷却ローラ30に巻き掛けられる基板Zの表面Zfに対する角度を変えられる構成とし、この赤外線ランプユニット62を移動させる移動手段(図示せず)を設ける。そして、制御部44により、赤外線ランプユニット62を移動させて赤外光Bの入射角θを変更する。
制御部44では、成膜装置10で製造するバリアフィルムの基板Zの屈折率を組成毎に記憶し、さらに無機膜fについてもその屈折率を組成毎に記憶しておく。そして、製造するバリアフィルムに応じて、制御部44で臨界角θcを求め、赤外線ランプユニット62の位置を移動手段により調整し、赤外光Bの入射角θを調整する構成にすることもできる。
また、赤外線ランプユニット62は、赤外線を照射する赤外線ランプ68と、リフレクタ66とを用いる構成としたが、本実施形態は、基板Zの表面Zfの照射位置線に沿って赤外光Bを照射することができれば、これに限定されるものではない。例えば、赤外線ランプユニット62のケース64の開口部に、照射位置線に赤外線を集光させるレンズを設けて赤外光Bの光源とし、赤外光Bを照射するようにしてもよい。このように、赤外線ランプ68と、レンズ、リフレクタなどの光学素子とを組み合せて赤外線ランプユニット(光源)62を構成することができる。
さらには、赤外線ランプユニット62の赤外線ランプ68に代えて、赤外線を出射することができるレーザを赤外光Bの光源として用いてもよい。この場合、例えば、赤外線を出射するレーザを照射位置線に沿って複数アレイ状に配置して赤外光Bの光源とし、赤外光Bを照射する。
また、本実施形態においては、赤外線ランプ68またはレーザを用いて、赤外光Bを基板Zの無機膜fに照射して加熱するが、赤外光Bは、赤外線のうち、近赤外領域(0.8〜2.5μm)の波長を有することが好ましい。
これは、赤外線のうち、近赤外領域のものは、他の波長領域のものに比べて表層で吸収されやすく、表層を選択的に加熱することができるためである。近赤外領域のものを用いることにより、無機膜fを選択的に加熱することができる。
また、本実施形態における赤外線Bは、無機膜fよりも基板Zの方が吸収されにくい波長の赤外線であることが好ましい。この無機膜fよりも基板Zの方が吸収されにくい波長の赤外線Bとは、無機膜fにおける光の吸収率よりも基板Zにおける光の吸収率の方が小さい波長の赤外線のことであり、具体的には、所定の波長を有する光を用いて、熱処理に必要な温度に無機膜fを加熱した場合、基板Zの温度が、ガラス転移温度未満となる波長の赤外線のことである。理想的には、無機膜fよりも基板Zの方が吸収されにくい波長の赤外線Bとは、無機膜fだけに吸収され、基板Zには全く吸収されない波長の赤外線のことである。
本実施形態において、無機膜fよりも基板Zの方が吸収されにくい波長の赤外線Bとは、例えば、波長が0.8〜800μmの赤外線である。
また、本実施形態において、無機膜fよりも基板Zの方が吸収されにくい波長の赤外線Bとは、基板Zの吸収率よりも無機膜fの吸収率の方が3倍以上大きい波長であってもよい。
なお、本実施形態において、例えば、基板ZがPENフィルム、無機膜fがSiN膜(シリコン窒化膜)の構成のバリアフィルムを製造する場合、無機膜fよりも基板Zの方が吸収されにくい波長の赤外線としては、例えば、10.6μmの波長の赤外線が用いられ、この10.6μmの波長の赤外線は、例えば、COレーザにより得られる。
本実施形態においては、赤外線ランプユニット62から照射され集光された赤外光Bを、臨界角θcよりも大きな入射角θで基板Zの表面Zfの照射位置線上に沿って、基板Zの表面Zfにライン状に照射する。これにより、無機膜fが、例えば、100℃〜1000℃の温度に加熱される。
この場合、基板Zの表面Zfに対して、臨界角θcよりも大きな入射角θで、赤外光Bを基板Zの表面Zfに照射しているため、赤外光Bは基板Zの表面Zfで全反射し、赤外光Bの反射光Brが生じる。このため、赤外光Bが透過する無機膜fが加熱されるものの、赤外光Bが基板Zに侵入することが抑制されて、赤外光Bによる基板Zの加熱が抑制される。これにより、基板Zの温度上昇が抑制され、熱処理部60において、熱処理し、シート材Pの無機膜fの緻密化または無機膜fの構造欠陥の修復をする場合、基板Zに加熱による変形、変質などの悪影響を抑制することができる。
なお、基板Zの無機膜fは、赤外線ランプユニット62からの赤外光Bが照射されている領域が熱処理される。赤外光Bによる熱処理時間は、例えば、冷却ローラ30の回転速度により決定される。
なお、本実施形態においては、後述するように、シート材P(基板Zの表面Zfに無機膜fが形成されたもの)を熱処理する場合、基板Zが樹脂フィルム製であることから、熱処理時の基板Zの温度は、変質、変形を抑制するためにガラス転移温度未満である必要がある。このため、本実施形態においては、冷却ローラ30により基板Zを冷却し、基板Zの温度を、基板Zを構成する樹脂フィルムのガラス転移温度未満にする。
しかしながら、本実施形態においては、熱処理時における基板Zの温度が、ガラス転移温度未満であれば、冷却ローラ30による基板Zの冷却は必ずしも必要ではない。
また、冷却ローラ30により基板Zを冷却する場合、その冷却時間は、例えば、赤外線ランプユニット62のよる赤外光Bでの無機膜fの加熱直前に0.5秒以上であり、かつ赤外線での加熱直後から5秒以上である。この程度の時間、基板Zを冷却ローラ30によって冷却することにより、基板Zに加熱による悪影響を抑制することができる。
このため、上記接触時間となるように、冷却ローラ30に対する基板Zの巻き掛け角度が冷却ローラ30の直径などに応じて適宜調整される。基板Zの巻き掛け角度以外にも、上記接触時間となるように、冷却ローラ30の回転速度などを調整してもよい。
次に、本実施形態の成膜装置10の動作について成膜方法、熱処理方法などを中心に詳細に説明する。
成膜装置10は、供給室12から成膜室14、熱処理室16を経て巻取り室18に至る所定の経路で、供給室12から巻取り室18まで長尺な基板Zを通して搬送しつつ、成膜室14において、基板Zに無機膜fを形成し、熱処理室18で無機膜fに熱処理を施して、最終的にバリアフィルムを作製するものである。
成膜装置10においては、長尺な基板Zが、例えば、反時計回り巻回された基板ロール20からガイドローラ21を経て、成膜室14に搬送される。成膜室14においては、ガイドローラ24、ドラム26、ガイドローラ28を経て、熱処理室16に搬送される。熱処理室16においては、冷却ローラ30および搬送ローラ32を経て、巻取り室18に搬送される。巻取り室18においては、ガイドローラ36を経て、巻取りロール38に、長尺な基板Zが巻き取られる。
長尺な基板Zを、この搬送経路で通した後、供給室12、成膜室14、熱処理室16および巻取り室18の内部を真空排気手段40により、所定の真空度に保ち、成膜部50において、成膜電極52に、高周波電源54から高周波電圧を印加するとともに、原料ガス供給部56から配管57を介して隙間Sに、可視光領域で透明な金属化合物または半導体化合物からなる無機膜fを形成するための原料ガスを供給する。
成膜電極52の周囲に電磁波を放射させると、隙間Sで、成膜電極52の近傍に局在化したプラズマが生成され、原料ガスが励起・解離される。これにより、基板Zの表面Zfに、可視光領域で透明な無機膜fが形成されて、シート材Pが得られる。
順次、長尺な基板Zが反時計回り巻回された基板ロール20をモータにより時計回りに回転させて、長尺な基板Zを連続的に送り出し、ドラム26で基板Zをプラズマが生成される位置に保持しつつ、ドラム26を所定の速度で回転させて、成膜部50により長尺な基板Zの表面Zfに連続的に可視光領域で透明な無機膜fを形成し、シート材Pが得られる。
そして、ガイドローラ28から熱処理室18に搬送されたシート材P、すなわち、無機膜fが形成された基板Zは、冷却ローラ30に搬送される。このとき、冷却ユニット70により冷却ローラ30の表面30aは冷却されている。そして、シート材Pの基板Zの裏面Zbは、冷却ローラ30の表面30aに接しており、基板Zは冷却される。
冷却ローラ30が回転しつつ、赤外線ランプユニット62により、全反射を起す臨界角θcよりも大きな入射角θで、基板Zの表面Zfの照射位置線上に沿うようにして、冷却ローラ30上の基板Zの無機膜fに照射して、無機膜fを、例えば、100℃〜1000℃の温度に加熱し、その温度に所定時間維持して熱処理する。その後、無機膜fをガラス転移温度以下に冷却する。これにより、無機膜fは、緻密化され、さらには、無機膜fに構造欠陥があれば、その構造欠陥が修復される。
このとき、無機膜fが加熱されても、赤外光Bは、基板Zの表面Zfの照射位置線に対して、全反射を起す臨界角θcよりも大きな入射角θで照射するため、赤外光Bが基板Zの表面Zfで全反射する。このため、赤外光Bの基板Zへの侵入が抑制され、赤外光Bによる基板Zの加熱が抑制されるため、基板Zについての変質、変形が抑制される。さらには、基板Zは冷却ローラ30により冷却されており、基板Zの温度は基板Zを構成する物質のガラス転移温度未満に保持される。
本実施形態においては、長尺な基板Zの表面Zfに無機膜fを形成するとともに、無機膜f形成後に、冷却ローラ30の表面30aにシート材Pを巻き掛け、冷却ローラ30を回転させてシート材Pを搬送しつつ、冷却ローラ30上で基板Zの無機膜fに赤外光Bが、基板Zの表面Zfに対して、全反射を起す臨界角θcよりも大きな入射角θで、赤外光Bを無機膜fに集光しつつ照射して、無機膜fを加熱する。このとき、基板Zの表面Zfで赤外光Bが全反射するため、赤外光Bが透過する無機膜fは加熱されるものの、赤外光Bによる基板Zの加熱が抑制される。これにより、基板Zを樹脂フィルムとしても、熱処理時の加熱による樹脂フィルムの変形、溶融などの品質に影響を抑制しつつ、無機膜fは緻密化、または無機膜fに構造欠陥があれば、その修復がなされ、無機膜fの膜質を改善することができる。このため、無機膜fを膜質が優れたものにでき、酸素、水蒸気、水などに対してバリア性が高いバリアフィルムを製造することができる。
このように製造されたバリアフィルムは、上述のように基板Zの表面Zfに対して、全反射を起す臨界角θcよりも大きな入射角θで、集光しつつ照射して赤外光Bにより無機膜fを熱処理するため、無機膜fが緻密化され、また無機膜fに構造欠陥があれば、その修復がなされ、膜質が改善されており、酸素、水蒸気、水などに対してバリア性が高い。
また、基板Zに樹脂フィルムを用いた場合、成膜部50では、成膜時の温度を、ガラス転移温度以上に高くすることができない。このため、形成される無機膜fが緻密ではないか、または構造欠陥が生じる可能性も高くなる。しかし、本実施形態においては、熱処理することにより、無機膜fは緻密化されるとともに、構造欠陥がある場合には、その構造欠陥も修復されて、膜質が改善される。これにより、膜質が優れた無機膜fが得られ、製造されたバリアフィルムは、酸素、水蒸気、水などに対してバリア性が高いものとなる。
なお、本実施形態の成膜装置10は、ロールツーロールタイプであるが、これに限定されるものではなく、基板Zに、樹脂フィルムを用いるものであれば、成膜装置10の態様は、特に限定されるものではない。
成膜装置10において、熱処理部60は基板Zを熱処理することができれば、冷却ローラ30を用いる本実施形態に限定されるものではない。
例えば、図3に示す変形例の熱処理部61のように、支持部材として、テーブル72を用い、このテーブル72の表面72aに、シート材P、すなわち、無機膜fが表面Zfに形成された基板Zが載置される。
テーブル72の上方には、本実施形態と同じ赤外線ランプユニット62が、基板Zの表面Zfに対して、全反射を起す臨界角θcよりも大きな入射角θで、赤外光Bを無機膜fに集光しつつ照射するように配置されている。
図3に示すように、入射角θとは、基板Zの表面Zfに対して垂直な線Cと、垂直な線Cと基板Zの表面Zfとの接点mおよび赤外線ランプ68の側断面における中心を通る直線αとのなす角度のことである。
赤外線ランプユニット62aにより赤外光Bがテーブル72の表面72aに対して、ライン状に照射される。
このテーブル72の裏面72bには、その温度を下げるための冷却ユニット70aが設けられている。この冷却ユニット70aにより、テーブル72が冷却されて載置された基板Zが冷却される。冷却ユニット70aは、例えば、ペルチェ素子を備える公知の冷却器である。
熱処理部61においては、テーブル72の表面に、シート材P、すなわち、無機膜fが表面Zfに形成された基板Zを載置する。その後、赤外線ランプユニット62により赤外光Bを、無機膜fにライン状に照射して、所定の温度に加熱し、所定の時間経過後に赤外光Bの照射を停止する。このようにして、無機膜fの膜質の改善を行ってもよい。
また、この場合においても、基板Zの裏面Zbに傷などがつかない状態で搬送できれば、シート材Pを搬送しながら、熱処理することができる。
なお、本変形例においても、熱処理時における基板Zの温度をガラス転移温度未満にすることできれば、冷却ユニット70aは、必ずしも設ける必要はない。
本実施形態の成膜装置10においては、樹脂フィルム製の基板Zと、この基板Zの表面Zfに形成された無機膜fとを有し、無機膜fについて熱処理を施した構成のバリアフィルムを製造している。しかしながら、バリアフィルムの構成については、特に限定されるものではない。
バリアフィルムの構成としては、基板Z上に、有機膜および無機膜のうち、少なくとも1種の膜が、少なくとも1層形成されているものであってもよい。
このような構成のバリアフィルムを製造するに際し、熱処理する場合、基板Z上に形成された単層膜または複数層の膜(以下、膜群という)のうち、加熱する単層膜または膜群と、この加熱する単層膜の下、または膜群の下に位置する加熱したくない単層膜または膜群(本実施形態の基板Zに相当するもの)との界面が、上述の基板Zの表面Zfに相当する。
熱処理する対象に、膜群が含まれる場合には、この膜群を構成する複数の膜の全ての屈折率を平均して得られた平均屈折率を用いて、赤外光Bの入射角θ、すなわち、赤外光Bが全反射を起す臨界角θcを求める。そして、この臨界角θcに応じて、赤外線ランプユニット62の赤外光Bの入射角θを適宜変更し、熱処理を行う。
また、本実施形態の成膜装置10においては、プラズマCVDを例にして、説明したが、プラズマCVDに限定されるものではない。本発明の成膜部は、気相成膜法を用いるものであれば、各種の物理的気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)、化学的気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング法またはイオンプレーティング法などを用いることもできる。この場合においても、基板Zに樹脂フィルムを用いているため、基板Zの温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度以下で行う。
以上、本発明の熱処理方法、およびバリアフィルムについて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
本発明の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。 図1に示す成膜装置の成膜室の模式的側面図である。 本発明の実施形態に係る成膜装置の熱処理部の変形例を示す模式図である。
符号の説明
10 成膜装置
12 供給室
14 成膜室
16 熱処理室
18 巻取り室
20 基板ロール
21,24,28,36 ガイドローラ
30 冷却ローラ
32 搬送ローラ
38 巻取りロール
40 真空排気手段
44 制御部
50 成膜部
52 成膜電極
54 高周波電源
56 原料ガス供給部
60 熱処理部
62 赤外線ランプユニット
70 冷却ユニット
D 搬送方向
f 無機膜
P シート材
Z 基板

Claims (6)

  1. 樹脂フィルム製の基板の表面に無機膜が形成されたシート材の前記無機膜に熱処理を行う工程を有し、
    前記無機膜に熱処理を行う際に、前記基板の表面に対して全反射を起す臨界角よりも大きな入射角で、赤外光を前記無機膜に照射することを特徴とする熱処理方法。
  2. 前記赤外光は、レーザを有する光源により得られる請求項1に記載の熱処理方法。
  3. 前記赤外光は、赤外光源部、および光学素子を有する光源により得られる請求項1に記載の熱処理方法。
  4. 前記無機膜に熱処理を行う際に、前記シート材を搬送する請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理方法。
  5. 前記基板は長尺状のものであり、前記基板を、回転可能なローラの表面の巻き掛けて搬送しつつ、前記熱処理がなされる請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理方法。
  6. 前記請求項1〜5のいずれか1項の熱処理方法が施された無機膜と、
    前記無機膜が表面に形成された基板とを有し、
    前記基板は、樹脂フィルム製であることを特徴とするバリアフィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016204727A (ja) * 2015-04-28 2016-12-08 東レ株式会社 成膜装置

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