JP2009173551A - 多価アルコールの水素化分解物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多価アルコールからその水素化分解物を選択性よく、高収率で製造する方法、及びそれに用いる水素化分解触媒を提供する。
【解決手段】(1)銅成分及びケイ素成分を含む触媒の存在下に、多価アルコールと水素とを反応させる、多価アルコールの水素化分解物の製造方法、並びに(2)銅成分及びケイ素成分を含む多価アルコールの水素化分解触媒である。
【選択図】なし

Description

本発明は、多価アルコールからその水素化分解物を選択性よく、高収率で製造する方法、及びそれに用いる水素化分解触媒に関する。
自然界から得られる多価アルコールを、触媒を利用して水素化分解を行い、他の化合物に変換することは、物質の有効利用の観点から重要である。
一方、多価アルコールとして、食品や医療などに使用されているグリセリンは、年々生産量を増やしてきている。その理由として、化石化燃料の供給不安や、地球温暖化問題を背景にして延びてきた、バイオディーゼル燃料の普及が挙げられる。植物原料から製造されるバイオディーゼル燃料はその製造過程でグリセリンを生成する。しかしながら、現状ではグリセリンの用途は限られていることから、供給過剰になりつつあり、その有効利用が求められている。その一つとして触媒反応を用いたC3アルコール類への変換が世界的に注目されている。
C3アルコール類は、様々な工業原料等として有用である。C3アルコール類の中でジオール類としては、1,3−プロパンジオール及び1,2−プロパンジオールがあり、特に1,2−プロパンジオールは、例えばポリエステル樹脂、塗料、アルキッド樹脂、各種可塑剤、不凍液、ブレーキオイル等に用いられ、さらには食品保潤剤、果汁粘度増強剤、食品用セロハン柔軟剤、化粧品、医薬品等に有用である。
従来、グリセリンから1,2−プロパンジオール(以下、「1,2−PD」ということがある)を製造する方法として様々な触媒による水素化分解法が提案されている。
例えば、触媒として、(1)Ni−Re/Cを用いる方法(例えば、特許文献1参照)、(2)Ru/Cを用いる方法(例えば、特許文献2参照)、(3)Cu−Zn/Al23を用いる方法(例えば、特許文献3参照)、(4)Cu−ZnOを用いる方法(例えば、特許文献4参照)、(5)Cu−Crを用いる方法(例えば、非特許文献1参照)等が知られている。
しかしながら、これらの方法においては、グリセリンの転化率が低かったり、1,2−PDの選択率が低かったりなどして、充分に満足し得るものではなかった。
また、多価アルコールの水素化分解触媒として、銅成分とケイ素成分とを含む触媒を用いた例は、これまで見当たらない。
国際公開第03/035582号パンフレット 欧州特許出願公開第523014号明細書 欧州特許出願公開第523015号明細書 独国特許出願公開第4302464号明細書 Applied Catalysis A: General, 281, 225, (2005)
本発明は、多価アルコールからその水素化分解物を選択性よく、高収率で製造する方法、及びそれに用いる水素化分解触媒を提供することを課題とする。
本発明者らは、多価アルコールの水素化分解触媒として、銅成分とケイ素成分とを含む触媒を用いることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)銅成分及びケイ素成分を含む触媒の存在下に、多価アルコールと水素とを反応させる、多価アルコールの水素化分解物の製造方法、及び
(2)銅成分及びケイ素成分を含む、多価アルコールの水素化分解触媒、
を提供する。
本発明によれば、銅成分及びケイ素成分を含む触媒を用い、多価アルコールからその水素化分解物、特にグリセリンから1,2−PDを選択性よく、高収率で製造する方法、及びそれに用いる水素化分解触媒を提供することができる。
本発明の多価アルコールの水素化分解物の製造方法においては、水素化分解触媒の存在下に、多価アルコールと水素とを加熱して、該多価アルコールを水素化分解する。
多価アルコールとしては、水酸基数が2〜6の化合物が好ましく、好ましくは水酸基数が2〜6であって、かつ炭素数2〜60の脂肪族又は脂環式多価アルコールを挙げることができる。具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、各種プロパンジオール、各種ジプロパンジオール、各種トリプロパンジオール、各種ブタンジオール、各種ジブタンジオール、各種ペンタンジオール各種、ペンタントリオール、各種ヘキサンジオール、各種ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、各種シクロヘキサンジオール、各種シクロヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、さらにはソルビトールやマンニトール等の糖アルコール等を例示することができる。これらの中では、工業的観点から、グリセリン並びにソルビトール及びマンニトール等の糖アルコールが好ましく、特にグリセリンが好ましい。
また、本発明における多価アルコールの水素化分解物とは、多価アルコールに水素を作用させて、水酸基を分解させて得られたものであり、少なくとも1つ以上の水酸基を残す程度に分解させて得られる化合物を示す。例えばグリセリン(分子内の水酸基数:3つ)の水素化分解物は、C3ジオール(分子内の水酸基:2つ)、C3モノオール(分子内の水酸基数:1つ)である。
前記水素化分解触媒としては、銅成分及びケイ素成分を含む触媒が用いられる。ケイ素成分としては、シリカ(二酸化ケイ素)や、Y型、A型、X型、L型等のゼオライト、及びモルデナイト、ZSM−5等のケイ酸塩の縮合酸の構造をとるものを例示することができる。
銅成分及びケイ素成分を含む触媒としては、銅/シリカ、銅/Y型ゼオライト、銅/A型ゼオライト、銅/X型ゼオライト、銅/L型ゼオライト、銅/モルデナイト、銅/H−ZSM−5、銅/シリカ−アルミナなどが用いられ、特に銅/シリカ、銅/Y型ゼオライト、銅/A型ゼオライト、銅/X型ゼオライト、銅/L型ゼオライトが好ましい。
特に本発明の触媒は、シリカやゼオライトなどのケイ素を含む化合物を担体として、これに銅を担持させたものが好ましく、銅以外の遷移金属元素を含まなくとも十分な効果を得ることができるが、他の遷移金属を用いる場合は、本効果を阻害しない程度に、例えば、チタン、亜鉛、モリブデン、マンガン、タングステン、ルテニウム、ニッケル、コバルト、イリジウム、ジルコニウム、イットリウム、白金、セシウム、パラジウムなどを挙げることができる。
担体の比表面積は、好ましくは30〜1000m2/g、より好ましくは100〜900m2/g、最も好ましくは150〜800m2/gのものを用いる。
触媒中の銅原子の含有量は、好ましく0.1〜70質量%、より好ましくは、1〜60質量%、最も好ましくは5〜60質量%である。
触媒中のケイ素原子の含有量は、好ましくは45〜10質量%、より好ましくは、40〜15質量%、最も好ましくは30〜20質量%である。
銅成分とケイ素成分の比率は、Cu原子/Si原子の比が概ね1/0.1〜1/100、好ましくは1/0.3〜1/20、さらに好ましくは1/0.4〜1/5である。
また、ゼオライト中のケイ素成分とアルミニウム成分の比率は、Si原子/Al原子の比が概ね1〜150、好ましくは15〜100、さらに好ましくは30〜50である。
また、ゼオライトの中では、Y型ゼオライトが特に好ましい。
触媒の調製方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えば沈殿法、アルコキシド法等を採用することができる。
これらの触媒の使用量は、原料である多価アルコール100質量部に対して0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.3〜15質量部である。
触媒を沈殿法もしくはアルコキシド法で調製する場合、例えば以下に示す方法を用いることができる。
沈殿法では、シリカを分散させたアルカリ性水溶液に、硝酸銅水溶液を滴下し、銅水酸化物の沈殿を生成させ、固液分離した後、分離された沈殿を充分に水洗後、乾燥処理し、さらに100〜1200℃程度、好ましくは300〜900℃の温度で焼成処理する。得られた粉末状の触媒は、必要に応じ、従来公知の方法により、粒状化し、メジアン径が0.1〜500μm程度、好ましくは0.4〜200μmの粒状物としてもよい。
また、アルコキシド法では、硝酸銅とエチレングリコールからなるスラリーにテトラエトキシシランを滴下攪拌し、その後、水により加水分解し沈殿させ、固液を分離した後、乾燥処理し、さらに100〜1200℃程度、好ましくは300〜900℃の温度で焼成処理する。得られた粉末状の触媒は、必要に応じ、従来公知の方法により、粒状化し、メジアン径が0.1〜500μm程度、好ましくは0.4〜200μmの粒状物としてもよい。
また好適な触媒の酸化銅の平均一次粒子径は、好ましくは0.1nm〜100nm、より好ましくは0.5nm〜80nm、最も好ましくは1nm〜50nmである。
本発明の多価アルコールの水素化分解物の製造方法においては、製造工程を簡略化する観点から、反応溶媒を用いないことが好ましいが、反応溶媒を用いて、多価アルコールの水素化分解を行うこともできる。
反応溶媒としては、プロトン性溶媒が好ましく、例えば水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール等の群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
反応溶媒の使用量は、多価アルコールの含有量が1質量%以上の溶液になるように選択することが好ましく、10質量%以上の溶液となるように選択することがより好ましい。
本発明の方法において、原料となる水素ガスは、そのまま又は窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで希釈して用いることができる。
また、反応溶媒以外の添加剤、例えば、酸や塩基などを用いて反応することも可能であるが、製造工程の簡略化の観点から、特に本反応系では添加剤を用いないことが好ましい。
反応条件については特に制限はなく、使用する多価アルコールや触媒の種類等に応じて適宣選定される。水素圧は、通常、常温で30MPa以下が好ましく、0.1〜25MPaがより好ましく、5〜18MPaがさらに好ましい。
反応温度は、通常80℃以上で水素化分解を実施することができるが、多価アルコールの水素化分解による転化率及び分解生成物の選択性等の観点から、130〜350℃の範囲が好ましく、180〜300℃の範囲がより好ましく、特に200〜250℃の範囲が好ましい。
水素化分解反応は、回分式及び連続式のいずれも採用することができる。また、反応装置としては特に制限はなく、オートクレーブ等の加圧可能な装置や、固定床流通式の装置等を用いることができる。
本発明の多価アルコールの水素化分解物の製造方法においては、多価アルコールとしてグリセリンを用いることが好ましい。このグリセリンを用いることにより、水素化分解物として、1,2-PDを選択性よく製造することができる。
本発明はまた、銅成分及びケイ素成分を含む多価アルコールの水素化分解触媒をも提供する。
以下の実施例及び比較例において、特記しない限り「%」は「質量%」を意味する。
実施例1
(銅/シリカ触媒の調製)
下記の操作を行い、Cu/Si原子比が1/0.8である銅/シリカ(Cu/シリカ)触媒を製造した。
還流冷却器を有する反応器に、水(350g)、炭酸ナトリウム(35g)、シリカ(SiO2)(日本シリカ工業社製、ニップジェルCX−600、比表面積754m2/g、11g)を入れ、攪拌しながら硝酸銅三水和物(57g)を水(320g)に溶解させた硝酸銅水溶液を1時間かけて滴下した。
その後、撹拌しながら温度を90℃に上昇させ、温度を90℃±2℃に保ちながら1時間保持した。熟成終了後、固液分離した。沈澱を毎回1Lの水で、洗浄液の電導度が1mS/mになるまで繰り返し洗浄した後、120℃にて乾燥した。その後、400℃で3時間、空気中で焼成し、銅/シリカ触媒(銅含有量50%)を得た。得られた触媒のメジアン径は3.7μmであり、酸化銅の平均一次粒子径は11.2nmであった。
なお、メジアン径の測定は、粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、型式:LA−920)を用い、水溶媒中、超音波分散時間1分、相対屈折率1.3の条件で行った。
なお、一次粒子径の測定は、X線回折装置(理学電機(株)、型式:ULTRA X 18VB2−3、X線源CuK α線、電圧40kV、電流120mA)で測定を行い、解析ソフト(MDJ JADE VERSION 5)を用い、平均一次粒子径を算出した。
(水素化分解物の製造)
攪拌機付きの500mLの鉄製オートクレーブに、前記調製方法で得られた銅/シリカ触媒(7.5g)、グリセリン(150g)を加え、水素置換した。その後、水素を10MPaまで導入したのち、加熱し、230℃、10〜15MPaにて3時間反応させた。
反応終了溶液は濾過後、下記条件の1H−NMRにて分析し、生成物を定量した。またガス分はガスバッグに捕集した後、下記条件のガスクロマトグラフィーにて分析し、生成物を定量した。その結果、グリセリンの転化率99モル%、1,2−PDの選択率96モル%であり、グリセリンからの収率は95モル%であった。
1H−NMR(溶液)〕
バリアン社製、NMR装置「Mercury400」使用、内標:トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム
〔ガスクロマトグラフィ−(低級炭化水素ガス)〕
カラム:PorapakQ、2.1m×3.2mmφ、80−100メッシュ、検出器:FID、インジェクション温度:200℃、ディテクター温度:200℃、He流量:60mL/min.
〔ガスクロマトグラフィー(CO、CO2ガス)〕
カラム:モレキュラーシーブ5A、検出器:FID(カラムと検出器間にメタナイザ−を装着)、インジェクション温度:80℃、ディテクター温度:80℃、He流量:60mL/min.
実施例2
(銅/ゼオライト触媒の調製)
実施例1のシリカ(SiO2)をY型ゼオライト(ゼオリストインターナショナル社製、ZEOLYST―CBV780、比表面積780m2/g、Si原子/Al原子=40)に変えた他は実施例1と同様にして、銅/ゼオライト(Cu/ゼオライト)触媒を調製した(銅含有量50%)。得られた触媒のメジアン径は2.6μmであり、酸化銅の平均一次粒子径は11.2nmであった。
(水素化分解物の製造)
前記調製方法で得られた銅/ゼオライト触媒を用い、他は実施例1と同様に反応させた。その結果、グリセリンの転化率91モル%、1,2−PDの選択率96モル%であり、グリセリンからの収率は87モル%であった。
比較例1
(水素化分解物の製造)
Cu/Cr原子比が1/0.83である市販(日揮化学社製)の銅−クロム(Cu−Cr)触媒を用いて、実施例1と同様に反応させた。その結果、グリセリンの転化率87モル%、1,2−PDの選択率99モル%であり、グリセリンからの収率は86モル%であった。
比較例2
〔銅−亜鉛/酸化チタン(Cu−Zn/TiO2)触媒の調製〕
反応器に硝酸銅(100g)と硝酸亜鉛(30g)を仕込み、水(2000g)に溶解した後、攪拌しながら昇温した。50℃で酸化チタン(33g)を仕込み、90℃で10%Na2CO3水溶液(546g)(金属塩と等モルのNa2CO3)を1時間で滴下し、1時間熟成した後、沈殿物を濾過・水洗し、110℃で10時間乾燥後、600℃で1時間焼成した。得られた銅−亜鉛/酸化チタン触媒はCu/Zn原子比が4/1で、担体としての酸化チタンに対する担持量は、50%であった。
(水素化分解物の製造)
前記調製方法で得られた銅−亜鉛/酸化チタン触媒を、グリセリン150gに対して7.5g用いて、実施例1と同様に反応させた。その結果、グリセリンの転化率63モル%、1,2−PDの選択率97モル%であり、グリセリンからの収率は61モル%であった。
以上の結果をまとめて表1に示す。
Figure 2009173551
本発明の多価アルコールの水素化分解生成物の製造方法は、多価アルコールからその水素化分解物、特にグリセリンから1,2−PDを選択性よく、高収率で製造することができる。また、本発明の銅成分及びケイ素成分を含む、多価アルコールの水素化分解触媒は、本発明の多価アルコールの水素化分解生成物の製造方法に有効に利用できる。

Claims (5)

  1. 銅成分及びケイ素成分を含む触媒の存在下に、多価アルコールと水素とを反応させる、多価アルコールの水素化分解物の製造方法。
  2. 多価アルコールが水酸基数2〜6の化合物である、請求項1に記載の多価アルコールの水素化分解物の製造方法。
  3. 多価アルコールがグリセリンである、請求項1又は2に記載の多価アルコールの水素化分解物の製造方法。
  4. 水素化分解物が1,2−プロパンジオールである、請求項1〜3のいずれかに記載の多価アルコールの水素化分解物の製造方法。
  5. 銅成分及びケイ素成分を含む、多価アルコールの水素化分解触媒。
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