JP2009173532A - 金属マグネシウム含有セラミック焼結体、その製造方法、および水素含有水の生成方法 - Google Patents

金属マグネシウム含有セラミック焼結体、その製造方法、および水素含有水の生成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水中へ投入することによって水素含有水を生成でき、しかも、セラミック材料を利用して形成されているにもかかわらず、生産性が高く、機械的強度も高く、小型化も容易な金属マグネシウム含有セラミック焼結体と、その製造方法の提供。
【解決手段】金属マグネシウム含有セラミック焼結体1は、セラミック材料で形成されたセラミック基材3,5の内部に、粉末状の金属マグネシウム7が閉じ込められた状態で焼結されている。セラミック基材3,5は、多孔質構造になっており、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1を水中へ投入すると、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の内部へ浸透した水が金属マグネシウム7と反応して水素が発生するので、この水素によって水素含有水を生成することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、水中に投入することによって水素を発生させることができ、これにより、水素含有水を生成することができる金属マグネシウム含有セラミック焼結体と、その製造方法、および水素含有水の生成方法に関する。
近年、水素を多量に含む水が、様々な病気の原因とされる活性酸素の消去に有効であるという学説が、医学界において発表され、注目されている。
このような背景の下、水素を豊富に含む飲料水を生成する方法としては、水が滲入可能なセラミックケースに金属マグネシウム粒を収納した器具を、飲料水の入った容器の中に投入する方法が、既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、金属マグネシウムの作用により、飲料水を水素含有水にすることができ、また、セラミックの作用により、水を活性化させることができるとされている。
特開2005−161209号公報
しかし、上記従来技術において、セラミックケースとしては、筒状(弾丸状)のケースが開示されているものの、このようなセラミックケースを製造することは、実用上きわめて困難であった。
より具体的には、引用文献1に図示されている筒状ケースは、飲料水の容器(例えばPETボトル)の中に投入できるような外径のものであるが、このことから推察すると、図示されたケースの肉厚は、きわめて薄いものであると思われる。
しかし、そのような薄肉の中空構造物を、割れやすい多孔質セラミック材料で製造するには、相当高度な技術を要し、歩留まりも低くなるので、生産性が低く、市販品として販売できるような製造コストでの実用化は困難である。また、コスト面の問題を棚上げしても、過剰にケースを薄肉にすると、使用時にケースが割れてしまうなど、ケースの破損を招くおそれもあるので、ケースの破損を防ぐような強度を確保することが困難になる。
もちろん、ケースの破損のみを問題視するのであれば、ケースの肉厚を厚くすることで機械的強度を向上させることはできるが、肉厚を厚くしたことによって外径が過大になると、飲料水の容器に容易に投入できなくなるおそれがある。
したがって、上記のような筒状のセラミックケースでは、十分な強度を確保しつつ、飲料水の容器に容易に投入できる程度に小型化することは、きわめて困難なことであった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、水中へ投入することによって水素を発生させて水素含有水を生成することができ、しかも、セラミック材料を利用して形成されているにもかかわらず、生産性が高くて、機械的強度も容易に確保でき、小型化も容易な金属マグネシウム含有セラミック焼結体と、その製造方法、および、この金属マグネシウム含有セラミック焼結体を利用して水素含有水を生成する方法を提供することにある。
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の金属マグネシウム含有セラミック焼結体は、請求項1に記載の通り、セラミック材料で形成されたセラミック基材の内部に、金属マグネシウムが閉じ込められた状態で焼結されてなる焼結体であり、水中へ投入された際には、前記焼結体の内部へ浸透した水と前記金属マグネシウムが反応して水素を発生させ、当該水素を前記水中へと放出することを特徴とする。
このように構成された金属マグネシウム含有セラミック焼結体によれば、この焼結体を水中へ投入することによって水素を発生させ、水素含有水を生成することができる。
しかも、この金属マグネシウム含有セラミック焼結体は、セラミック基材の内部に金属マグネシウムが閉じ込められた状態で焼結されている。
したがって、例えば、薄肉中空構造のセラミックケースを焼成した後に金属マグネシウム粒を充填するものとは異なり、セラミック原料組成物で薄肉中空構造のセラミックケースを成形する必要がないので、焼成前の成形品を製造する工程でかかる手間が格段に軽減される。
また、薄肉中空構造のセラミックケースを焼成しなくてもよいので、薄肉中空構造のセラミックケースを焼成する場合に比べ、焼成工程において成形品が破損したり変形したりするのを抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
さらに、薄肉中空構造のセラミックケースを成形・焼成しなくてもよいので、薄肉中空構造のセラミックケースを成形・焼成する場合に比べ、成形品を小型化しても過度に薄肉の部分ができることはなく、成形品の小型化を図ることも容易である。
加えて、焼成後に金属マグネシウムを充填する工程は不要なので、セラミックケースを焼成してから金属マグネシウム粒を充填するものとは異なり、充填作業に手間がかかったり充填作業中にセラミックケースを破損させてしまったりすることがない。また、セラミックケースの開口を封止する構造を工夫したり、そのような封止作業に手間がかかったりすることもない。
よって、本発明によれば、水中へ投入することによって水素を発生させて水素含有水を生成することができ、しかも、セラミック材料を利用して形成されているにもかかわらず、生産性が高くて、機械的強度も容易に確保でき、小型化も容易な金属マグネシウム含有セラミック焼結体を提供することができる。
なお、以上説明した金属マグネシウム含有セラミック焼結体において、金属マグネシウムは、水素発生源として機能する部分である。それ故、通常は、純度の高い金属マグネシウムで構成されていればよい。ただし、水素発生源としての機能を喪失しない程度に金属マグネシウムの配合比が高ければ、主成分となる金属マグネシウム以外にいくらか別の金属(例えば、アルミニウム等)が含まれる合金を利用することもできる。
また、セラミック基材は、内部へ水を浸透させることができる構造で、且つ、内部へ浸透した水と金属マグネシウムとが反応して水素を発生させた際には、水素を水中へ放出することができる構造とされる。
このような構造とするには、例えば、請求項2に記載のように、前記セラミック基材の少なくとも一部は、無数の微細な細孔を有する多孔質構造になっていると好ましい。すなわち、セラミック基材の一部が多孔質構造になっているか、セラミック基材全体が多孔質構造になっていれば、この多孔質構造になっている部分を介して焼結体の内部に水が浸透するので、焼結体の内部において金属マグネシウムと水を接触させることができる。また、このような金属マグネシウムと水との接触に伴って水素が発生すれば、その水素は多孔質構造になっている部分を介して水中へと放出される。
なお、セラミック基材が多孔質構造になっていない場合、あるいは、多孔質構造になっていても十分に水が浸透しない場合は、レーザー加工、その他の後加工によって穴を穿設したり溝を刻設したりすることで、セラミック基材内部への水の浸透を促してもよい。
さらに、このような多孔質構造になっている部分は、必要最低限の機能としては、焼結体の外部から内部へ水を浸透させることができ、焼結体の内部から外部へ水素を放出することができればよいが、さらに望ましくは、多孔質構造になっている部分は、ゲル状の水酸化マグネシウムが焼結体の内部から外部へ透過するのを妨げるフィルターとして機能すると好ましい。
すなわち、請求項3に記載のように、前記多孔質構造になっている部分は、前記焼結体が水中に投入された際に、前記焼結体の外部から内部へ水を浸透させ、しかも、前記焼結体の内部へ浸透した水と前記金属マグネシウムとの反応により、水素およびゲル状の水酸化マグネシウムが生成した際に、前記多孔質構造になっている部分は、水素を前記焼結体の内部から外部へ透過させる一方、ゲル状の水酸化マグネシウムが前記焼結体の内部から外部へ透過するのを妨げるフィルターとして機能するとよい。
このような構成を採用すれば、ゲル状の水酸化マグネシウムが水中へ遊離するのを抑制できるので、水素含有水を飲料水として利用する際に、遊離した水酸化マグネシウムが原因で飲料水に濁りが生じるのを抑制することができる。
また、上記のような、金属マグネシウムをセラミック基材の内部に閉じ込めた構造の焼結体は、請求項4に記載のように、金属マグネシウムを含有する第1のセラミック原料組成物で内核部を形成してから、金属マグネシウムを含有しない第2のセラミック原料組成物で前記内核部を覆う外殻部を形成して、前記内核部および前記外殻部を還元焼成してなるものであるとよい。
このように構成された金属マグネシウム含有セラミック焼結体であれば、金属マグネシウムは、確実に外殻部の内部に閉じ込められるので、金属マグネシウムが焼結体の表面に露出してしまうのを防止できる。また、内核部および外殻部は還元焼成されるので、焼成時に金属マグネシウムが酸化してしまうのを防止または抑制することができ、最終的に焼結体を得た時点で有効に機能する金属マグネシウム含量を、十分に確保することができる。
また、請求項5に記載のように、前記内核部を形成する第1のセラミック原料組成物は、固形分に対して液状成分を添加してなる粘土状組成物であって、前記液状成分として、前記金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質が配合されたものであると好ましい。
金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質としては、例えば、請求項6に記載のように、グリセリン、流動パラフィン、トルエン、酢酸エチル、ブタノン、アセトン、エタノール、食用油、鉱物油などを挙げることができる。これらの液状成分は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。特に、ある程度粘性の高い液状成分を配合する場合には、粘性の低い液状成分を同時に用いて希釈するとよく、例えば、流動パラフィンを用いる場合には、トルエンや酢酸エチルで薄めて利用すると、固形分に対して、より均一に液状成分を混合できるので好ましい。なお、金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質であれば、これら以外の液状成分を利用してもよい。
このような構成を採用すれば、内核部を成形する際、あるいは、外殻部とともに内核部を焼成する際に、内核部に含まれる液状成分が、金属マグネシウムと反応してしまうのを抑制できるので、最終的に焼結体を得た時点で有効に機能する金属マグネシウム含量を、十分に確保することができる。
また、請求項7に記載のように、前記金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質は、疎水性の物質であると好ましい。
このような構成を採用すれば、外殻部とともに内核部を焼成する際に、内核部に含まれる疎水性液状成分の作用により、外殻部に含まれる水分が内核部へ移行するのを阻止することができる。したがって、外殻部に含まれる水分が内核部の金属マグネシウムと反応してしまうのを抑制できるので、最終的に焼結体を得た時点で有効に機能する金属マグネシウム含量を、十分に確保することができる。
なお、以上説明したような金属マグネシウム含有セラミック焼結体は、例えば、請求項8に記載の通り、金属マグネシウムを含有する第1のセラミック原料組成物で内核部を形成し、金属マグネシウムを含有しない第2のセラミック原料組成物で前記内核部を覆う外殻部を形成し、前記内核部および前記外殻部からなる成形品を還元焼成して焼結体とする、という手順で製造することができる。
また、請求項9に記載の通り、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体を、水の中に投入すれば、水素含有水を生成することができる。
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[金属マグネシウム含有セラミック焼結体の構造]
図1は、本発明の一実施形態として例示する金属マグネシウム含有セラミック焼結体の断面図である。
この金属マグネシウム含有セラミック焼結体1は、球状に形成されたもので、セラミック材料で形成されたセラミック基材3,5の内部に、粉末状の金属マグネシウム7が閉じ込められた状態で焼結されている。
また、この金属マグネシウム含有セラミック焼結体1は、外殻部および内核部を備えた二層構造になっており、外殻部がセラミック基材3によって形成され、内核部がセラミック基材5および金属マグネシウム7によって形成されている。このような積層構造とすることにより、金属マグネシウム7をセラミック基材3の内部に確実に閉じ込めて、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の表面に金属マグネシウム7が露出しないようにすることができる。
セラミック基材3,5は、いずれも無数の微細な細孔を有する多孔質構造になっており、これにより、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1を水中へ投入した際には、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の外部から内部へ水が浸透する。また、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の内部へ浸透した水が金属マグネシウム7と反応すると水素が発生し、その水素は多孔質構造になっているセラミック基材3,5を介して金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の外部へと放出される。すなわち、この金属マグネシウム含有セラミック焼結体1を水中へ投入することにより、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1から水素を放出させて、水素含有水を生成することができる。
また、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の内部へ浸透した水が金属マグネシウム7と反応すると、水素とともにゲル状の水酸化マグネシウムが生成されるが、比較的粗大な分子構造となるゲル状の水酸化マグネシウムは、セラミック基材3,5の細孔を容易には透過することができず、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の外部へは、ほとんど放出されない。すなわち、多孔質構造のセラミック基材3,5は、水素を透過させる一方、ゲル状の水酸化マグネシウムを透過させないフィルターとして機能する。したがって、ゲル状の水酸化マグネシウムが水中に遊離するのを防止ないし抑制でき、ゲル状の水酸化マグネシウムが原因で飲料水が濁るのを防止することができる。
[金属マグネシウム含有セラミック焼結体の製法]
次に、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の製造方法について説明する。
上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1は、金属マグネシウム7を含有する第1のセラミック原料組成物で内核部を形成してから、金属マグネシウムを含有しない第2のセラミック原料組成物で内核部を覆う外殻部を形成して、これら内核部および外殻部からなる成形品を還元焼成することによって製造される。
金属マグネシウム7を含有する第1のセラミック原料組成物は、焼成後の機械的強度や特性を考慮して適宜選定されていれば、どのような成分のものを利用してもよいが、本実施形態においては、構造材となるミズライト、ベントナイト、およびセピオライトに対して、金属マグネシウムを配合し、さらに焼結助剤として炭酸リチウムを配合し、これらに液状成分としてゴマ油を添加して、混練、成形して内核部となる成形品を形成した。
また、上記第1のセラミック原料組成物には、さらに、木節粘土・超微粉シリカ(例えば、商品名:ニップシール)等を配合しても好ましい。
この他、構造材としては、ゼオライト、黒鉛などを配合してもよい。また、焼結材料(固化材)として、第1リン酸アルミニウム、目地セメント、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどを配合してもよい。
また、水を浄化するための浄水機能成分として活性炭を配合してもよく、焼結材料としては、炭酸リチウムを配合しても好ましい。また、成形品の硬化を促すための成分としては、上記目地セメントの他、水硬性アルミナやアルミナセメントが配合されていても好ましい。
液状成分としてゴマ油を添加するのは、水を添加すると金属マグネシウムとの反応により、最終的に得られる焼結体中に含まれる有効な金属マグネシウムの量が減少してしまうので、これを防止するためである。また、詳しくは後述するが、疎水性の液状成分を配合することで、外殻部を形成する際に内核部へ水が浸透するのを阻止することもできる。
したがって、液状成分としては、金属マグネシウムと化学反応しないもので、好ましくは、疎水性の液状物を利用するとよく、具体的には、上記ゴマ油の他、各種食用油、グリセリン、流動パラフィン、ブタノン、アセトン、または各種鉱物油などを利用することができる。また、金属マグネシウムと化学反応しないという点では、エタノールなどの利用も可能である。
ちなみに、上記各成分の配合比は任意であるが、実用的な配合比を具体的に例示すれば、金属マグネシウムについては5〜70重量%、構造材については、ミズライト5〜50重量%、ベントナイト5〜90重量%、およびセピオライト5〜80重量%とし、これらの数値範囲内で、各成分の配合比を適宜調整するとよい。炭酸リチウムは適宜入れればよいが、目安としては1〜20重量%程度が適量である。また、ゴマ油は、上記各成分が湿る程度の量を適宜添加すればよい。
また、金属マグネシウムを含有しない第2のセラミック原料組成物も、焼成後の機械的強度や特性を考慮して適宜選定されていれば、どのような成分のものを利用してもよい。ただし、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1を水中へ投入した際に、外殻部が割れたり粉落ちしたりしないように、内核部よりも機械的強度の高い焼結体ができる組成であると望ましい。
このような観点から、本実施形態においては、構造材となるミズライト、木節粘土(または蛙目粘土)、ベントナイト、およびセピオライトに対して、焼結材料として炭酸リチウム、および第1リン酸アルミニウムを配合し、吸着剤として活性炭を配合した。
この他、焼結材料(固化材)としては、目地セメント、マグホワイト(登録商標)、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどを配合してもよい。
これらの成分が配合された第2のセラミック原料組成物は、内核部となる成形品の周囲にコーティングされる。本実施形態において、コーティングの際には、水道水をスプレーして造粒を行った。ここで、仮にスプレーした水道水と金属マグネシウムが反応した場合、最終的に得られる焼結体中に含まれる有効な金属マグネシウムの量が減少してしまうおそれがある。
しかし、本実施形態においては、内核部を形成する際に、疎水性を示すゴマ油を配合してあり、ゴマ油が水をはじくことで、内核部へ水が浸透するのを阻止する。そのため、水道水をスプレーしたにもかかわらず、その水が金属マグネシウムと反応するのを阻止することができた。なお、このように水をはじくための成分(撥水成分)としては、液状の窯業用撥水剤などを添加することもできる。
ちなみに、上記各成分の配合比も任意であるが、実用的な配合比を具体的に例示すれば、構造材については、ミズライト5〜70重量%、木節粘土(または蛙目粘土)5〜70重量%、ベントナイト5〜30重量%、およびセピオライト5〜70重量%とし、これらの数値範囲内で、各成分の配合比を適宜調整するとよい。炭酸リチウムおよび第1リン酸アルミニウムは適宜入れればよいが、目安としてはそれぞれ1〜20重量%程度が適量である。また、活性炭は5〜30%程度が適量である。
焼成時には、内核部および外殻部の双方が収縮するので、外殻部の割れなどを防止するには、内核部および外殻部の収縮率が同程度となるように各成分の配合比を調節することが好ましい。構造材の収縮率について一例を示せば、ミズライト,ベントナイト≧セピオライト>木節粘土(または蛙目粘土)>ゼオライトといった順序になるので、これらの配合比によって内核部および外殻部それぞれの収縮率を最適化すればよい。
さらに、具体的な成形方法についても任意に選定することができ、例えば、転動造粒、プレス成形、押し出し成形など、都合のよい成形方法を利用すればよい。焼成条件については、金属マグネシウムの酸化を防止するため、例えば窒素ガス雰囲気下で焼成する等、還元焼成とする。
焼成温度も任意であるが、金属マグネシウムの酸化を防止する観点からは過剰に高温にしない方が望ましく、実験的には575℃以下、望ましくは500℃以下で焼成すると、機械的強度が高くて金属マグネシウム含量も十分な焼結体を得ることができた。ただし、最適な焼成温度は、焼結材料の配合比等によっても変わり得るし、焼成しなくても成形品を硬化させることができる成分(例えば、目地セメント、マグホワイト(登録商標))を配合しても、最適な焼成温度を調節することができる。
[効果]
以上説明した金属マグネシウム含有セラミック焼結体1によれば、この焼結体を水中へ投入することによって水素を発生させ、水素含有水を生成することができる。しかも、この金属マグネシウム含有セラミック焼結体1は、セラミック基材3,5の内部に金属マグネシウム7が閉じ込められた状態で焼結されている。
したがって、例えば、薄肉中空構造のセラミックケースを焼成した後に金属マグネシウム粒を充填する従来品とは異なり、セラミック原料組成物で薄肉中空構造のセラミックケースを成形する必要がないので、焼成前の成形品を製造する工程でかかる手間が格段に軽減される。
また、従来品のような薄肉中空構造のセラミックケースを焼成しなくてもよいので、薄肉中空構造のセラミックケースを焼成する場合に比べ、焼成工程において成形品が破損したり変形したりするのを抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
さらに、従来品のような薄肉中空構造のセラミックケースを成形・焼成しなくてもよいので、薄肉中空構造のセラミックケースを成形・焼成する場合に比べ、成形品を小型化しても過度に薄肉の部分ができることはなく、成形品の小型化を図ることも容易である。
加えて、焼成後に金属マグネシウムを充填する工程は不要なので、セラミックケースを焼成してから金属マグネシウム粒を充填する従来品とは異なり、充填作業に手間がかかったり充填作業中にセラミックケースを破損させてしまったりすることがない。また、セラミックケースの開口を封止する構造を工夫したり、そのような封止作業に手間がかかったりすることもない。
よって、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1によれば、水中へ投入することによって水素を発生させて水素含有水を生成することができ、しかも、セラミック材料を利用して形成されているにもかかわらず、生産性が高くて、機械的強度も容易に確保でき、小型化も容易なものとなる。
また、多孔質構造のセラミック基材3,5は、ゲル状の水酸化マグネシウムが水中へ遊離するのを抑制するので、水素含有水を飲料水として利用する際に、遊離した水酸化マグネシウムが原因で飲料水に濁りが生じるのを抑制することができる。
さらに、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1は、金属マグネシウム7を含有する成形品を還元焼成したものなので、焼成時に金属マグネシウム7が酸化してしまうのを防止または抑制することができ、最終的に焼結体を得た時点で有効に機能する金属マグネシウム含量を、十分に確保することができる。
加えて、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の内核部を成形する際には、金属マグネシウムとの反応性が低いゴマ油を液状成分として利用しているので、内核部に含まれる液状成分が、金属マグネシウムと反応してしまうのを抑制できる。しかも、ゴマ油は疎水性なので、外殻部を形成する際に水を利用しているにもかかわらず、その水分が内核部へ移行するのを阻止することができる。したがって、内核部にゴマ油を配合したことも、金属マグネシウム含量を十分に確保する上できわめて効果的である。
また、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の外殻部には、第1リン酸アルミニウムが配合されており、外殻部の機械的強度が第1リン酸アルミニウムによって向上するので、第1リン酸アルミニウムを配合しない場合に比べ、焼結体の破損を防止する効果を高めることができる。
さらに、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の外殻部には、活性炭が配合されているので、水中に存在する臭いの原因物質を、活性炭で吸着することができる。
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、上記金属マグネシウム含有セラミック焼結体1の外殻部に活性炭を配合することで、金属マグネシウム含有セラミック焼結体1に吸着機能を付与していたが、この他の機能性材料を加えることもできる。
具体例を挙げれば、外殻部を形成するセラミック原料組成物に、機能性材料として酸化チタンを配合すれば、酸化チタンの光触媒作用により、水中に存在する有機物を分解することができるので、消臭効果や殺菌効果などを期待できる。また、機能性材料として銀系化合物、銅系化合物を配合することにより、抗菌性能を付与することもできる。
また、上記実施形態では、内核部および外殻部を備えた二層構造の金属マグネシウム含有セラミック焼結体1を例示したが、二層構造とするか否かは任意である。
具体例を挙げれば、図2(a)に例示する金属マグネシウム含有セラミック焼結体11のように、セラミック基材13全体が均質な材料で形成されているものであってもよい。逆に、図2(b)に例示する金属マグネシウム含有セラミック焼結体21のように、内核部に相当するセラミック基材5の内部にさらに芯材となるセラミック基材23を備えているものなど、三層以上の積層構造になっているものでもよい。
さらに、上記実施形態では、セラミック基材3,5が多孔質構造のものである旨を説明したが、後加工で穴や溝を形成して内部に水を浸透させることができれば、多孔質構造になっていないセラミック基材の内部に金属マグネシウムを閉じ込めてもよい。この場合でも、中空構造のセラミックケースに金属マグネシウム粒を充填するものよりは、生産性を向上させることができる。
本発明の実施形態として例示した金属マグネシウム含有セラミック焼結体の断面図。 変形例として例示した金属マグネシウム含有セラミック焼結体の断面図。
符号の説明
1,11,21・・・金属マグネシウム含有セラミック焼結体、3,5,13,23・・・セラミック基材、7・・・金属マグネシウム。

Claims (9)

  1. セラミック材料で形成されたセラミック基材の内部に、金属マグネシウムが閉じ込められた状態で焼結されてなる焼結体であり、
    水中へ投入された際には、前記焼結体の内部へ浸透した水と前記金属マグネシウムが反応して水素を発生させ、当該水素を前記水中へと放出する
    ことを特徴とする金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  2. 前記セラミック基材の少なくとも一部は、無数の微細な細孔を有する多孔質構造になっている
    ことを特徴とする請求項1に記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  3. 前記多孔質構造になっている部分は、前記焼結体が水中に投入された際に、前記焼結体の外部から内部へ水を浸透させ、しかも、前記焼結体の内部へ浸透した水と前記金属マグネシウムとの反応により、水素およびゲル状の水酸化マグネシウムが生成した際に、前記多孔質構造になっている部分は、水素を前記焼結体の内部から外部へ透過させる一方、ゲル状の水酸化マグネシウムが前記焼結体の内部から外部へ透過するのを妨げるフィルターとして機能する
    ことを特徴とする請求項2に記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  4. 金属マグネシウムを含有する第1のセラミック原料組成物で内核部を形成してから、金属マグネシウムを含有しない第2のセラミック原料組成物で前記内核部を覆う外殻部を形成して、前記内核部および前記外殻部を還元焼成してなる
    ことを特徴とする請求項3に記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  5. 前記内核部を形成する第1のセラミック原料組成物は、固形分に対して液状成分を添加してなる粘土状組成物であって、前記液状成分として、前記金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質が配合されたものである
    ことを特徴とする請求項4に記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  6. 前記金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質は、グリセリン、流動パラフィン、トルエン、酢酸エチル、ブタノン、アセトン、エタノール、食用油、または鉱物油のいずれかである
    ことを特徴とする請求項5に記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  7. 前記金属マグネシウムとの反応性が水よりも低い物質は、疎水性の物質である
    ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体。
  8. 金属マグネシウムを含有する第1のセラミック原料組成物で内核部を形成し、
    金属マグネシウムを含有しない第2のセラミック原料組成物で前記内核部を覆う外殻部を形成し、
    前記内核部および前記外殻部からなる成形品を還元焼成して焼結体とする
    ことを特徴とする金属マグネシウム含有セラミック焼結体の製造方法。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の金属マグネシウム含有セラミック焼結体を、水の中に投入して水素含有水を生成する
    ことを特徴とする水素含有水の生成方法。
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