JP3931171B2 - 焼成硬化体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、未燃炭素を含有する石炭灰を利用した焼成硬化体及びその製造方法に関する。
灰は、主として焼却灰と火山灰とに大別される。焼却灰には、例えば、火力発電所から排出される石炭灰や、廃プラスチック発電所から排出されるプラスチック焼却灰や、下水処理場で排出される下水汚泥焼却灰等がある。
近年、こうした灰を、成型後高温で焼成することにより建築用レンガやブロック、または高温でスラグ化させることにより道路の路盤用の骨材として再利用している(例えば、特許文献1〜14参照)。
特公昭63−17791号公報 特公平1−42908号公報 特開昭62−21775号公報 特開昭56−69262号公報 特開昭62−256747号公報 特公平1−49668号公報 特公平7−108827号公報 特開平7−101758号公報 特開昭59−116173号公報 特開平8−198648号公報 特開2001−270748号公報 特開2002−173358号公報 特開2002−167262号公報 特開平11−228196号公報
しかしながら、焼却灰や火山灰等から焼成硬化体を再生するに当たり、以下に述べる問題があった。
例えば、これまで、焼却灰である石炭灰を主成分とする焼成硬化体の製造は、当該石炭灰に添加物を添加した後に水を加えて成型し、これを養生または焼成して行っていた。
このとき、添加物として、セメント、石灰石、石膏、苛性ソーダ、粘土、バインダ、起泡剤等をいくつか併せて添加し混合する操作に加え、成型や養生、乾燥を行うための時間
やスペースを確保する必要があり、製造コストの増大を招いていた。
また、これまでの焼成硬化体は、石炭灰の含有量が少ないうえに、使用可能な石炭灰の
組成が特定される場合もあり、汎用な製造方法といえるものではなかった。
さらに、焼成時の焼成温度が1100〜1300℃程度であったため、高温処理に伴う
製造コストの増大が引き起こされていた。
また、下水汚泥焼却灰を主成分とする焼成硬化体の製造は、例えば、当該下水汚泥焼却
灰に、セメント系の水硬化物を加えて成型、或いは、アスベスト材、粘土、石材屑等を添
加した後に水を加えて成型し、これらを養生または焼成して行っていた。このような場合
も、石炭灰の場合と同様に、種々の添加物の添加や1000℃以上の焼成が必要であった
ため、製造コストの増大が引き起こされていた。
そこで、この発明の主たる目的は、灰の種類や組成にかかわらず、灰を主原料としかつ
簡便な方法によって製造可能な焼成硬化体及びその製造方法を提供することにある。
さらに、上述した目的に加え、灰として焼却灰を用いる場合には、当該焼却灰からの重
金属等の有害物質の溶出を抑制することにより焼却灰の安全利用を実現可能とする、焼成
硬化体及びその製造方法を提供することにある。
さらに、上述した目的に加え、焼成硬化体の色調が自在に調整された焼成硬化体及びそ
の製造方法を提供することにある。
この目的の達成を図るため、請求項1に記載の焼成硬化体の製造方法の発明によれば、
下記のような構成上の特徴を有する。
すなわち、この発明の焼成硬化体の製造方法は、未燃炭素を含む石炭灰に酸化ホウ素を添加して混合し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、粉状の混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、この成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲にある焼成硬化体を得る焼成工程とを含んでいる。
また、請求項2に記載の発明のように、好ましくは、焼成硬化体の製造方法は、未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素及び水を添加して混合する添加・混合工程と、この工程により得られた混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲である焼成硬化体を得る焼成工程とを含むのがよい。
また、請求項に記載の発明のように、好ましくは、上述した焼成硬化体の製造方法において、添加・混合工程では、石炭灰の重量に対して0.05〜5wt%の範囲内のホウ素を含む酸化ホウ素を添加するのがよい。
請求項に記載の発明のように、上述した焼成硬化体の製造方法において、添加・混合工程では、石炭灰の重量に対して0.5〜2.5wt%の範囲内のホウ素を含む酸化ホウ素を添加するのがよい。
また、請求項に記載の発明のように、上述した焼成硬化体の製造方法において、好ましくは、添加・混合工程では、水を、石炭灰の重量に対して40wt%未満の添加量で添加するのがよい。
また、請求項に記載の発明のように、上述した焼成硬化体の製造方法において、好ましくは、添加・混合工程では、さらに、酸を含む水溶液を添加して混合するのがよい。
また、請求項に記載の発明のように、上述した焼成硬化体の製造方法において、好ましくは、添加・混合工程では、さらに、有機溶媒を添加して混合するのがよい。
また、請求項に記載の焼成硬化体の製造方法の発明によれば、未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素及び加熱によってガスを発生するガス発生物質を添加し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、粉状の混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して焼成硬化体を得る焼成工程とを含む。
また、請求項に記載の発明のように、焼成硬化体の製造方法は、未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素を含有するコレマナイト及び加熱によってガスを発生するガス発生物質を添加し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、粉状の混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して焼成硬化体を得る焼成工程とを含む。
また、請求項10に記載の発明のように、好ましくは、上述した焼成硬化体の製造方法において、ガスは、焼成工程時に、混合物が焼成硬化体へと焼成されるまでの前駆焼成硬化体に、空孔を生成する空孔生成ガスとすればよい。
また、請求項11に記載の焼成硬化体の製造方法の発明によれば、空孔生成ガスは、COガス、CO2ガス、O2ガス及びN2ガスのうちの少なくとも一つとすればよい。
また、請求項12に記載の発明のように、空孔生成ガスを発生させるガス発生物質としては、金属酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、炭素化合物及びニトロ化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いればよい。
また、請求項13に記載の発明のように、好ましくは、空孔生成ガスは、H2ガス及びNH3ガスのうちの少なくとも一つとするのがよい。
また、請求項14に記載の発明のように、好ましくは、空孔生成ガスを発生させるガス発生物質として、ZnとH2SO4とを組み合わせたもの、NH4ClとCa(OH)2とを組み合わせたもの、NH4ClとNaOHとを組み合わせたもの、(NH42SO4とCa(OH)2とを組み合わせたもの及び(NH42SO4とNaOHとを組み合わせたものからなる群から選ばれる少なくとも一つのものを用いるのがよい。
また、請求項15に記載の発明のように、焼成硬化体の製造方法は、未燃炭素を含有する石炭灰に、加熱によって石炭灰が焼成硬化体へと焼成されるまでの前駆焼成硬化体に、空孔を生成する空孔生成ガスを発生するホウ素化合物であるB(OR)3〜5またはBR’3〜5(R、R’=アルキル基または芳香族基)、あるいはこれらの塩を添加する添加・混合工程と、混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して焼成硬化体を得る焼成工程とを含む。
また、請求項16に記載の発明のように、好ましくは、塩として、NaB(C654またはNaB(C653を用いるのがよい。
また、請求項17に記載の発明のように、好ましくは、添加・混合工程では、らに、Ti、Cu、Fe、Co、Cr、Zn、Sn、V、Mg、K、Mn、Be、Bi、Sb、Ce、W及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、或いは選ばれた金属を含む化合物を添加するのがよい。
また、請求項18に記載の焼成硬化体の製造方法の発明によれば、上述した焼成工程を、焼成温度を600〜1000℃の範囲内の温度として行うのがよい。
また、請求項19に記載の発明のように、この発明の焼成硬化体は、未燃炭素を含有する石炭灰に酸化ホウ素を添加して混合し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、粉状の混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲にある焼成硬化体を得る焼成工程とにより得ることができる。
また、請求項20に記載の発明のように、焼成硬化体は、未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素及び水を添加して混合する添加・混合工程と、この工程により得られた混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲である焼成硬化体を得る焼成工程とにより得ることができる。
未燃炭素含有灰を主原料とする簡便かつ低コストな製造方法によって、多孔質であり、軽量かつ透水性に優れた焼成硬化体が得られる。
(第1の実施の形態)
続いて、この発明の第1の実施の形態の焼成硬化体及びその製造方法について説明する
先ず、未燃炭素含有灰にホウ素化合物を添加して粉状で混合する添加・混合工程を行う
ここで、未燃炭素含有灰としては、石炭灰を用いる。これにより、火力発電所から排出される焼却灰を有効利用することができる。また、焼却灰からの重金属等の有害物質の溶出を、焼成硬化体とすることで抑制することができ、よって、焼却灰の安全な利用を図ることができる。
ここで、ホウ素化合物は、酸化ホウ素(B23)を用いる。
また、添加・混合工程では、ホウ素化合物の添加量は、特に限定されないが、未燃炭素
含有灰の重量に対して0.05〜5wt%の範囲内のホウ素を含む量とするのが良い。こ
れにより、焼成硬化体を得ることができる。また、特に、焼却灰として石炭灰を用いる場
合には、ホウ素化合物として該石炭灰の重量に対して0.5〜2.5wt%の範囲内のホ
ウ素を含むB23を添加するのが良い。これにより、十分な硬度を保持しつつ膨張や小孔
の発生が抑制された焼成硬化体を得ることができる。
また、添加・混合工程では、さらに、水を添加して混合しても良い。これにより、焼成
工程前の試料の成型が容易となる。そこで、焼却灰として石炭灰を用い、ホウ素化合物と
してB23を添加する場合には、水を石炭灰の重量に対して40wt%未満の添加量で添
加しても良い。これにより、成型の容易性に加え、ひび割れ等の発生が抑制された良好な
焼成硬化体を得ることができる。また、水を添加する場合には、水を添加した試料を成型
後乾燥させてから、後述する焼成工程を行っても良い。
また、添加・混合工程では、さらに、酸を含む水溶液を添加するのが良い。これにより
、未燃炭素含有灰が強アルカリ性となるのを抑制でき、ひび割れ等の発生が抑制された良
好な硬度を有する焼成硬化体を得ることができる。また、添加・混合工程では、さらに、
有機溶媒を添加して混合するのが良い。これにより、OHの解離を引き起こさない有機溶
媒によって未燃炭素含有灰が強アルカリ性となるのを抑制でき、ひび割れの発生が抑制さ
れた良好な焼成硬化体を得ることができる。
また、添加・混合工程では、さらに、Ti、Cu、Fe、Co、Cr、Zn、Sn、V
、Mg、K、Mn、Be、Bi、Sb、Ce、W及びSiからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属、或いは該選ばれた金属を含む化合物を添加するのが良い。これにより、
焼成工程後の焼成硬化体の色調を容易に変化させることができ、使用目的や要望に応じた
色調の焼成硬化体が得られる。また、これら発色材料は、特に限定されないが、例えば、
酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(Fe23)、酸化銅(Cu2O)、酸化クロム(Cr2
3)、酸化コバルト(CoO)、重クロム酸カリウム(K2CrO7)、酸化マンガン(
MnO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バナジン(V23)、酸化ベリリウム(
BeO)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化アンチモン(Sb23)、酸化セシウム(C
eO2)、酸化タングステン(WO3)や釉薬(ケイ酸塩化合物を主成分とする。)等を用
いることができる。
続いて、添加・混合した、ホウ素化合物を含有する未燃炭素含有灰である試料を、例え
ば、るつぼ等に入れて成型する。
続いて、成型した粉状の試料を所定温度で焼成して焼成硬化体を得る。
ここで、焼成温度は、特に限定されないが、例えば、600〜1000℃の範囲内の温
度で行うのが良い。600℃未満では、焼成硬化体の強度が弱くなる傾向があり、100
0℃を超えると焼成時の製造コストが増大する傾向がある。
上述した工程を経ることによって、良好な焼成硬化体を得ることができる。
この焼成硬化体は、未燃炭素分の酸化反応によるCOやCO2等の気体放出によって粒
子間に形成された空孔を介して、融解したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡散)が
促進されて形成された、ホウ素化合物と灰成分との架橋構造に起因する硬化体であると推
測される。
また、ホウ素化合物を添加することによって未燃炭素含有灰の軟化温度が低下するため
、従来よりも低い焼成温度で焼成硬化体を得ることができる。
よって、未燃炭素含有灰を主原料とし、かつこれまでよりも製造簡便な方法によって焼
成硬化体を製造でき、従来よりも製造コストの低減を図ることができる。
さらに、得られた焼成硬化体は多孔質であることから軽量で透水性に優れ、かつ色調も
自在に設計可能となる。その結果、この焼成硬化体からなるレンガやタイルを、道路の路
盤材や建築用の壁材はもとより園芸用品等への幅広い用途が期待できる。
参考例1
続いて、参考例1の焼成硬化体及びその製造方法について説明する
先ず、火山灰にホウ素化合物を添加して粉状で混合する添加・混合工程を行う。
ここで、ホウ素化合物は、特に限定されないが、例えば、B23、Na247、H3BO3、(NH4247、K247、NaB(C654、NaB(C653、Na247・10H2O、2CaO・3B23・5H2O及びB(OH)3からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いるのが良い。また、この他に、第1の実施の形態で説明したホウ素化合物を用いることができる。
また、添加・混合工程では、さらに、水を添加して混合しても良い。これにより、焼成
工程前の試料の成型が容易となる。
また、添加・混合工程では、さらに、Ti、Cu、Fe、Co、Cr、Zn、Sn、V
、Mg、K、Mn、Be、Bi、Sb、Ce、W及びSiからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属、或いは該選ばれた金属を含む化合物を添加するのが良い。これにより、
焼成工程後の焼成硬化体の色調を容易に変化させることができ、使用目的や要望に応じた
色調の焼成硬化体が得られる。また、これら発色材料は、特に限定されないが、例えば、
第1の実施の形態で説明した発色材料を用いることができる。
続いて、添加・混合した、ホウ素化合物を含有する火山灰である試料を、例えば、るつ
ぼ等に入れて成型する。
続いて、成型した粉状の試料を所定温度で焼成して焼成硬化体を得る。
ここで、焼成温度は、特に限定されないが、例えば、600〜1000℃の範囲内の温
度で行うのが良い。600℃未満では、焼成硬化体の強度が弱くなる傾向があり、100
0℃を超えると焼成時の製造コストが増大する傾向がある。
上述した工程を経ることによって、良好な焼成硬化体が得られる。この焼成硬化体は、
例えば、火山灰が含有している酸化鉄の熱分解によって発生したO2によって粒子間に形
成された空孔を介して、融解したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡散)が促進され
て形成された、ホウ素化合物と灰成分との架橋構造に起因する硬化体であると推測される
また、ホウ素化合物の添加によって火山灰の軟化温度が低下するため、従来よりも低い
焼成温度で焼成硬化体を得ることができる。
よって、火山灰を主原料とし、かつこれまでよりも簡便な製造方法によって焼成硬化体
を製造でき、従来よりも製造コストの低減を図ることができる。
さらに、得られた焼成硬化体は多孔質であることから軽量で透水性に優れ、かつ色調も
自在に設計可能となる。その結果、この焼成硬化体からなるレンガやタイルを、道路の路
盤材や建築用の壁材はもとより園芸用品等への幅広い用途が期待できる。
(第の実施の形態)
続いて、この発明の第の実施の形態の焼成硬化体及びその製造方法について説明する
先ず、灰に、ホウ素化合物及び加熱によってガスを発生するガス発生物質を添加して粉
状で混合する添加・混合工程を行う。
ここで、ホウ素化合物は、B23コレマナイト(2CaO・3B23・5H2を用いる
ここで、ガス発生物質が発生するガスは、焼成工程時に、ホウ素化合物及びガス発生物
質が添加された灰が焼成硬化体へと焼成されるまでの前駆焼成硬化体(中間体)に、空孔
を生成する空孔生成ガスである。
この空孔生成ガスとしては、特に限定されないが、例えば、COガス、CO2ガス、O2ガス及びN2ガスの少なくとも一つとすることができる。また、このときのガス発生物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、炭素化合物及びニトロ化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いるのが良い。
具体的には、例えば、Fe23、Fe34、MnCO3、ZnCO3、FeCO3、Li2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3、Na2CO3、CaCO3、MgCO3、(CH2O)2CO、KClO3、NaClO3、LiClO3、NH4NO2、黒鉛末、及び木粉や紙片等の動植物起源の炭素を含む材料群から選ばれる少なくとも一つを含有するガス発生物質を用いることができる。
このほかに、空孔生成ガスとしては、特に限定されないが、例えば、H2ガス及びNH3ガスのうちの少なくとも一つとすることができる。また、このときのガス発生物質としては、特に限定されないが、例えば、ZnとH2SO4とを組み合わせたもの、NH4ClとCa(OH)2とを組み合わせたもの、NH4ClとNaOHとを組み合わせたもの、(NH42SO4とCa(OH)2とを組み合わせたもの及び(NH42SO4とNaOHとを組み合わせたものからなる群から選ばれる少なくとも一つのものを用いることができる。
また、添加・混合工程では、さらに、Ti、Cu、Fe、Co、Cr、Zn、Sn、V
、Mg、K、Mn、Be、Bi、Sb、Ce、W及びSiからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属、或いは該選ばれた金属を含む化合物を添加するのが良い。これにより、
焼成工程後の焼成硬化体の色調を容易に変化させることができ、使用目的や要望に応じた
色調の焼成硬化体が得られる。また、これら発色材料は、特に限定されないが、例えば、
第1の実施の形態で説明した発色材料を用いることができる。
続いて、添加・混合した、ホウ素化合物及びガス発生物質を含有する灰である試料を、
例えば、るつぼ等に入れて成型する。
続いて、成型した粉状の試料を所定温度で焼成して焼成硬化体を得る。
ここで、焼成温度は、特に限定されないが、例えば、600〜1000℃の範囲内の温
度で行うのが良い。600℃未満では、焼成硬化体の強度が弱くなる傾向があり、100
0℃を超えると焼成時の製造コストが増大する傾向がある。
上述した工程を経ることによって、良好な焼成硬化体が得られる。
この焼成硬化体は、灰からの気体放出によって粒子間に形成された空孔を介して、融解
したホウ素化合物の物質移動(拡散)が促進されて形成された、ホウ素化合物と灰成分と
の架橋構造に起因する硬化体であると推測される。
また、ホウ素化合物の添加によって灰の軟化温度が低下し、従来よりも低い焼成温度で
焼成硬化体を得ることができる。
よって、灰を主原料とし、かつこれまでよりも簡便な製造方法によって焼成硬化体を製
造でき、従来よりも製造コストの低減を図ることができる。
さらに、得られた焼成硬化体は多孔質であることから軽量で透水性に優れ、かつ色調も
自在に設計可能となる。その結果、この焼成硬化体からなるレンガやタイルを、道路の路
盤材や建築用の壁材はもとより園芸用品等への幅広い用途が期待できる。
(第の実施の形態)
続いて、この発明の第の実施の形態の焼成硬化体及びその製造方法について説明する
先ず、灰に、加熱によってガスを発生するホウ素化合物を添加して粉状で混合する添加
・混合工程を行う。
ここで、ホウ素化合物は、焼成工程時に、ホウ素化合物が添加された灰が焼成硬化体へ
と焼成されるまでの間の前駆焼成硬化体(中間体)に、空孔を生成する空孔生成ガスを発
生する。
この空孔生成ガスとしては、特に限定されないが、例えば、COガスまたはCO2ガスとすることができる。また、このときの空孔生成ガスを発生させるホウ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、B(OR)3〜5またはBR’3〜5(R、R’=アルキル基または芳香族基)で表されるホウ素化合物や、これらの塩であるホウ素化合物を用いることができる。また、これらの塩としては、例えば、金属塩を用いることができ、当該金属塩としては、特に限定されないが、例えば、NaB(C654やNaB(C653等を用いることができる
また、添加・混合工程では、さらに、Ti、Cu、Fe、Co、Cr、Zn、Sn、V
、Mg、K、Mn、Be、Bi、Sb、Ce、W及びSiからなる群から選ばれる少なく
とも1つの金属、或いは該選ばれた金属を含む化合物を添加するのが良い。これにより、
焼成工程後の焼成硬化体の色調を容易に変化させることができ、使用目的や要望に応じた
色調の焼成硬化体が得られる。また、これら発色材料は、特に限定されないが、例えば、
第1の実施の形態で説明した発色材料を用いることができる。
続いて、添加・混合した、ガス発生物質であるホウ素化合物を含有する灰である粉状の
試料を、例えば、るつぼ等に入れて成型する。
続いて、成型した試料を所定温度で焼成して焼成硬化体を得る。
ここで、焼成温度は、特に限定されないが、例えば、600〜1000℃の範囲内の温
度で行うのが良い。600℃未満では、焼成硬化体の強度が弱くなる傾向があり、100
0℃を超えると焼成時の製造コストが増大する傾向がある。
上述した工程を経ることによって、良好な焼成硬化体が得られる。
この焼成硬化体は、灰からの気体放出によって粒子間に形成された空孔を介して、融解
したホウ素化合物の物質移動(拡散)が促進されて形成された、ホウ素化合物と灰成分と
の架橋構造に起因する硬化体であると推測される。
さらに、気体放出源となるガス発生物質をホウ素化合物として兼用することができるの
で第の実施の形態に比べて製造工程が簡便となる。
また、ホウ素化合物の添加によって灰の軟化温度が低下するため、従来よりも低い焼成
温度で焼成硬化体を得ることができる。
よって、灰を主原料とし、かつこれまでよりも簡便な製造方法によって焼成硬化体を製
造でき、従来よりも製造コストの低減を図ることができる。
さらに、得られた焼成硬化体は多孔質であることから軽量で透水性に優れ、かつ色調も
自在に設計可能となる。その結果、この焼成硬化体からなるレンガやタイルを、道路の路
盤材や建築用の壁材はもとより園芸用品等への幅広い用途が期待できる。
以下に、この発明に関連する実施例につき説明する。尚、以下の実施例では、灰として、主に、焼却灰である石炭灰を例に挙げて説明する。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)を用いたホウ素化合物添加による硬化試験>
(1−a)石炭灰を用いたホウ素化合物添加による硬化試験
未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、ホウ素化合物を添加した硬化試
験を以下のようにして行った。
先ず、石炭灰として、一般的な石炭灰A及び石炭灰Bを用意する。石炭灰Aは、未燃炭
素を石炭灰に対して重量比で7.9wt%含有している石炭灰である。また、石炭灰Bは
、未燃炭素を石炭灰に対して重量比で2.3wt%含有している石炭灰である。
続いて、石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)(関東化学社製
、特級または1級)を、石炭灰に対する重量比で、(a)0wt%(0g)、(b)0.
13wt%(0.065g)、(c)0.25wt%(0.0125g)、(d)0.5
wt%(0.025g)、(e)1wt%(0.05g)、(f)2wt%(0.1g)
、(g)3wt%(0.15g)、(h)4wt%(0.2g)、(i)5wt%(0.
25g)、(j)7wt%(0.35g)、(k)10wt%(0.5g)、(l)12
wt%(0.6g)及び(m)15wt%(0.75g)で添加して各試料を調製した。
すなわち、この実施例では、ホウ素を、石炭灰の重量に対する重量比で、(a)0wt
%、(b)0.04wt%、(c)0.08wt%、(d)0.16wt%、(e)0.
31wt%、(f)0.62wt%、(g)0.92wt%、(h)1.2wt%、(i
)1.6wt%、(j)2.2wt%、(k)3.1wt%、(l)3.7wt%及び(
m)4.7wt%含む酸化ホウ素を添加した。調製後、各試料を乳鉢を用いて十分混合し
ておく。
ここでは、ホウ素化合物として酸化ホウ素を用いたがこれに限定されず、その他に、4
ホウ酸ナトリウム(Na247)、ホウ酸(H3BO3)、4ホウ酸アンモニウム((N
4)2B47)、4ホウ酸カリウム(K247)及びテトラフェニルホウ酸ナトリウム
(NaB(C654)等を使用することができる(実施例15参照のこと)。
その後、各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に軽く入れ、るつ
ぼを振動させながら詰めた後、一般的な電気炉(容積:約300L)で焼成温度1000
℃及び焼成時間1時間で焼成した。尚、ここでの焼成は、電気炉内温度を1時間かけて室
温から1000℃まで上昇させた後、1000℃で1時間維持する。その後、電源を切り
、自然に炉内温度を室温まで低下させて行った。
図1(A)に、各試料から得られた焼成物の硬度測定の結果を示す。各焼成物の硬度測
定にはスプリング式硬度計(高分子計器社製 C型)を用い、焼成物の表面硬度を測定し
た。図1(A)は、横軸に酸化ホウ素添加量(wt%)をとり、縦軸に硬度をとって示し
てある。
図1(A)に示すように、石炭灰Aに対して酸化ホウ素の添加量を(a)0wt%及び
(b)0.13wt%とした試料以外の焼成体で硬化が確認された。
具体的には、石炭灰Aでは、酸化ホウ素の添加量を0.25wt%、すなわちホウ素の
添加量を0.08wt%(上記(C))とした場合の焼成物の表面はやや脆い状態ではあ
るが硬化が確認された(硬度80程度)。また、石炭灰Bでは、酸化ホウ素の添加量を0
wt%及び0.13wt%、すなわちホウ素の添加量を、0wt%及び0.04wt%(
上記(a)及び(b))とした場合の焼成物の表面はやや脆い状態ではあるが硬化が確認
された(硬度80程度)。
また、石炭灰A及び石炭灰Bともに、酸化ホウ素の添加量2wt%以上、すなわちホウ
素の添加量を0.62wt%程度以上とすることにより、十分な硬化(硬度90以上)を
有する硬化体となることが確認された。尚、ここでは硬度が90以上の焼成物を、十分な
硬度を保持した焼成硬化体とする。
また、石炭灰Aに対する酸化ホウ素の添加量を1〜5wt%、すなわちホウ素の添加量
を0.31〜1.6wt%程度(上記(e)〜(i))とした場合には、同じ添加量とし
た石炭灰Bの場合に比べて焼成に伴う収縮が大きかった(尚、双方とも収縮率は10%未
満であった)。一方、特に、石炭灰Aに対する酸化ホウ素の添加量を10〜15wt%、
すなわちホウ素の添加量を3.1〜4.7wt%程度(上記(k)〜(m))とした場合
は、焼成硬化体の表面に気泡の抜けた小孔(或いは、気泡痕とも称する。)が多数観察さ
れ、また膨張も確認された。
尚、酸化ホウ素を添加せずに石炭灰のみの試料を焼成した場合は、紛状のままであり全
く硬化が確認されなかった。また、乳鉢を用いて試料を十分混合することにより、良好な
硬度を有する焼成硬化体が得られることが確認された。また、乳鉢を用いて焼成前の試料
を粉砕し粒径を細かくしておくことにより、焼成時に硬化し易くまた焼成物の表面も滑ら
かであった。
また、得られた各焼成物の色調は、石炭灰のみでは薄茶色であったが、B23の添加に
伴って茶色〜茶褐色を呈した。この茶褐色への色調の変化は含有している鉄分(Fe23
等)の多い石炭灰(すなわち、石炭灰B>石炭灰A)ほど顕著であった。また、石炭灰A
に対する酸化ホウ素の添加量を7〜15wt%、すなわちホウ素の添加量を2.2〜4.
7wt%程度(上記(j)〜(m))とした場合は、焼成後の焼成硬化体に炭素が残留し
ており全体的に黒色に近い茶褐色を呈していた。
また、図1(B)に、各試料から得られた焼成物のうち、各石炭灰に対する酸化ホウ素の添加量を1〜5wt%、すなわちホウ素の添加量を0.31〜1.6wt%程度(上記(e)〜(i))としたときの焼成前と焼成後の重量比(=焼成後/焼成前)である重量減少率の平均値を示す。図1(B)は、縦軸に重量減少率をとって示してある。
図1(B)に示すように、石炭灰Aでは約92%(すなわち、焼成による重量減少率は
約8%)であり、石炭灰Bでは約97%(すなわち、焼成による重量減少率は約3%)で
あった。この重量減少の主な要因は、焼成時に、未燃炭素分が酸化反応、すなわち燃焼に
よってCOやCO2として排出されたためと推測される。
上述の結果から、石炭灰の未燃炭素量に関わらず、当該石炭灰に対する酸化ホウ素の添
加量を0.25〜15wt%、すなわちホウ素の添加量を0.08〜4.7wt%程度(
上記(c)〜(m))とした場合には、焼成温度1000℃及び焼成時間1時間の焼成に
よって焼成硬化体が得られることが確認された。
このことから、石炭灰に対して0.05〜5wt%程度のホウ素を含有するホウ素化合
物を添加することにより、焼成硬化体が得られるものと推測される。
また、特に、石炭灰に対する酸化ホウ素の添加量を2〜7wt%程度、すなわちホウ素
の添加量を0.62wt%〜2.2wt%程度(上記(f)〜(j))とすることにより
、十分な硬度を保持しかつ膨張や小孔の発生が抑制された焼成硬化体を得ることができる
このことから、石炭灰に対して0.5〜2.5wt%程度のホウ素を含有するホウ素化
合物を添加することにより、十分な硬度を有しかつ設計値通りの焼成硬化体が得られるも
のと推測される。
このように、この発明における焼成硬化体の製造によれば、未燃炭素含有灰に少量のホ
ウ素化合物を添加し混合後、所定条件で焼成することによって得ることができる。
そのうえ、未燃炭素含有灰を主原料とする簡便な方法によって焼成硬化体を製造できる
ので、従来よりも製造コストの低減を実現することができる。
(1−b:参考実施例1)下水汚泥焼却灰を用いたホウ素化合物添加による硬化試験
下水汚泥焼却灰についても、酸化ホウ素(B23)を下水汚泥焼却灰5gに対する重量
比で3wt%(0.15g)〜10wt%(0.5g)、すなわちホウ素を0.92〜3
.1wt%程度添加した各試料を調製し、上述と同様に、焼成温度1000℃及び焼成時
間1時間で焼成した。
この場合にも、当該下水汚泥焼却灰に対する酸化ホウ素を3〜10wt%の添加量で添
加することにより、良好な硬度を有する焼成硬化体が得られた。尚、このときの焼成によ
る重量減少率は、2%程度であった。
また、下水汚泥焼却灰の一般組成は、石炭灰の一般組成と類似していることから(「石
炭灰ハンドブック」環境技術協会:日本フライアッシュ協会)、酸化ホウ素の添加量が0
.5〜15wt%の場合において良好な焼成硬化体が得られると推測される。
(1−c:参考実施例2)プラスチック焼却灰を用いたホウ素化合物添加による硬化試験
プラスチック焼却灰については、プラスチック焼却灰2.5gに石炭灰A2.5gを加
えて混合灰5gとし、酸化ホウ素(B23)を混合灰に対する重量比で5wt%(0.2
5g)、すなわちホウ素を1.6wt%程度添加した試料を調製した。その後、上述と同
様に、焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した。プラスチップ焼却灰の一般組
成には、塩素(Cl)やクロム(Cr)等の有害物質を多く含有している。そのため、こ
こでは敢えて石炭灰を混入し、これら有害物質を焼成体の内部に封じ込めることをさらな
る目的として焼成を行った。
この場合にも、良好な硬度を有する焼成硬化体が得られた。尚、このときの焼成による
重量減少率は、11%程度であった。また、プラスチック焼却灰のみを用いた場合でも、
酸化ホウ素の添加量が0.5〜15wt%の場合において良好な焼成硬化体が得られると
推測される。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)に対する焼成温度の影響>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、石炭灰に対する焼成温
度の影響を検討した。
上述の方法と同様に、石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素
量:2.3wt%)それぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)(関東化学社製、特級または
1級)を石炭灰に対する重量比で、0.5〜15wt%(実施例1参照)で添加して各試
料を調製した。調製後、各試料を乳鉢を用いて十分混合しておく。
その後、各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつ
ぼを振動させながら詰めた後、電気炉(容積約300L)内で焼成時間1時間とし、焼成
温度を、600℃、700℃、800℃、900℃及び1000℃の5種類で行った。
図2に、各試料から得られた焼成物の硬度測定の結果を示す。図2(A)に石炭灰Aを
用いて得られた焼成物の測定結果を示し、図2(B)に石炭灰Bを用いて得られた焼成物
の測定結果を示す。焼成物の硬度測定にはスプリング式硬度計を用い、焼成物の表面硬度
を測定した。図2(A)及び(B)は、横軸に酸化ホウ素の添加量(wt%)をとり、縦
軸に硬度をとって示してある。
図2(A)に示すように、石炭灰Aの場合、焼成温度を1000℃とした焼成では、酸
化ホウ素の添加量2wt%以上で硬度90以上であった。焼成温度を900℃とした焼成
では、酸化ホウ素の添加量3wt%以上で硬度90以上であった。焼成温度を800℃と
した焼成では、酸化ホウ素の添加量7wt%以上で硬度90以上であった。焼成温度を7
00℃とした焼成では、酸化ホウ素の添加量10wt%以上では硬度90以上であった。
また、焼成温度を600℃とした焼成では、1時間の焼成時間によって得られる焼成物の
硬度は最大でも硬度70程度であり、十分に硬化していないことが確認された。
一方、石炭灰Bの場合、焼成温度を1000℃とした焼成では、酸化ホウ素の添加量0
.5wt%以上で硬度90以上であった。焼成温度を900℃とした焼成では、酸化ホウ
素の添加量2wt%以上で硬度90以上であった。焼成温度を800℃とした焼成では、
酸化ホウ素の添加量10wt%以上で硬度90以上であった。焼成温度を700℃とした
焼成では、酸化ホウ素の添加量12wt%以上で硬度90以上であった。また、焼成温度
を600℃とした焼成では、1時間の焼成時間によって得られる焼成物の硬度は最大でも
硬度70程度であり十分に硬化した状態とは言えなかった。
上述の結果から、焼成温度を600℃とし焼成時間を1時間とした焼成では、得られた
焼成物が十分硬化していないことが確認された。
このことは、酸化ホウ素の融点が約580℃であるうえに、600℃程度の低温下では
上述した未燃炭素の酸化反応がゆっくり進行することから、1時間の焼成時間で十分な硬
化状態を得るのが困難であったためであると推測される。
また、図3に、各試料から得られた焼成物のうち、焼成前と焼成後の重量比(=焼成後
/焼成前)を示す。図3(A)に石炭灰Aを用いた焼成物の測定結果を示し、図3(B)
に石炭灰Bを用いた焼成物の測定結果を示す。図3(A)及び(B)は、横軸に酸化ホウ
素添加量(wt%)をとり、縦軸に重量減少率をとって示してある。
図3(A)に示すように、酸化ホウ素の添加量7wt%までは、燃焼温度が高い方が重
量減少率も大きく、また、各焼成温度における重量比は酸化ホウ素の添加量に関係なくほ
ぼ一定であった。
しかし、焼成温度を900℃または1000℃とした場合には、酸化ホウ素の添加量を
10wt%以上とすることにより、重量減少率が著しく抑制されることが確認された。こ
れは、硬化反応と酸化ホウ素(融点580℃)の融解による粘性の著しい増大との同時進
行により、未燃炭素がCOまたはCO2として排出されずに残留しているためであると推
測される。
そのため、図3(B)に示すように、未燃炭素量の少ない石炭灰Bを用いた場合には、
焼成温度を900℃または1000℃とし酸化ホウ素の添加量を10wt%以上とした場
合であっても重量減少率はほぼ一定であった。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)に対する焼成時間の影響>
続いて、実施例2において焼成時間の不足が懸念された、焼成温度、800℃、700
℃について、焼成時間を3時間に延長して焼成を行った。焼成時間以外については、実施
例2と同様のためここでの説明は省略する。
図4に、各試料から得られた焼成物の硬度測定の結果を示す。図4(A)に石炭灰Aを
用いた焼成物の測定結果を示し、図4(B)に石炭灰Bを用いた焼成物の測定結果を示す
。図4(A)及び(B)は、横軸に酸化ホウ素の添加量(wt%)をとり、縦軸に硬度を
とって示してある。
図4(A)及び(B)に示すように、両石炭灰とも、焼成時間800℃及び700℃で
は、焼成時間を3時間としたことによる大きな変化は無かったが、焼成時間600℃では
焼成時間を3時間としたことにより硬化が大幅に促進された。その結果、酸化ホウ素の添
加量15wt%以上において硬度90以上となり、十分な硬化が確認された。
上述の結果から、低い焼成温度を設定した場合においても、焼成時間を十分にかけるこ
とにより硬度の増大を図ることができるものと推測される。
このことから、従来は1000℃以上の焼成温度が必須条件であったために製造コスト
が嵩んでいたが、この発明によれば、ホウ素化合物の添加量に応じて焼成温度及び焼成時
間を任意好適に設定することにより、1000℃以下の焼成温度、例えば、600〜10
00℃の焼成温度であっても焼成硬化体を得ることが可能である。
また、図5に、各試料から得られた焼成物のうち、焼成前と焼成後の重量比(=焼成後
/焼成前)である重量減少率を示す。図5(A)に石炭灰Aを用いた焼成物の測定結果を
示し、図5(B)に石炭灰Bを用いた焼成物の測定結果を示す。図5(A)及び(B)は
、横軸に酸化ホウ素添加量(wt%)をとり、縦軸に重量減少率をとって示してある。
図5(A)及び(B)から明らかなように、酸化ホウ素の添加量を7wt%以上とし、
焼成温度600℃及び焼成時間1時間としたときの重量減少率の抑制(図3参照)が解消
された。これは、600℃程度の低温下においてゆっくりと進行する未燃炭素の酸化反応
を、焼成時間をさらにかけることによって十分進行させることができたためと推測される
<焼成に伴う未燃炭素含有灰(焼却灰)中の炭素量の変化>
続いて、実施例2及び実施例3で行った焼成による未燃炭素量の変化を測定した。
先ず、石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt
%)をそれぞれ5gずつ用意した。そして、それぞれをるつぼ(直径:約4cm、深さ:
約3.5cm)に軽くるつぼを振動させながら詰め、焼成温度を1000℃とし焼成時間
を1時間として焼成した。
焼成後、各石炭灰中に残留している未燃炭素量を、元素分析計(elementar社
製 varioEL III)を用いて測定した。表1に、焼成前及び焼成後の未燃炭素量の
比較結果を示す。
Figure 0003931171
表1に示すように、焼成後の未燃炭素量は、焼成前の石炭灰が含有する未燃炭素量に関
わらず1%未満であった。
詳細には、焼成前の石炭灰Aが含有している未燃炭素量は、サンプル1で7.98wt
%及びサンプル2で7.84wt%であり、平均7.91wt%であった。そして、焼成
後の石炭灰Aが含有している未燃炭素量は、サンプル1で0.54wt%及びサンプル2
で0.69wt%であり、平均0.62wt%であった。また、焼成前の石炭灰Bが含有
している未燃炭素量は、サンプル1で2.07wt%及びサンプル2で2.51wt%で
あり、平均2.29wt%であった。そして、焼成後の石炭灰Bが含有している未燃炭素
量は、サンプル1で0.92wt%及びサンプル2で0.66wt%であり、平均0.7
9wt%であった。尚、焼成温度を650〜800℃の範囲内とし焼成時間を1時間とし
た場合も、焼成後の未燃炭素量は同様に1%未満であった(不図示)。
このことから、ホウ素化合物が添加された焼成物が硬化する際の重量減少の大部分は、
やはり、未燃炭素が酸化反応、すなわち燃焼によってCOやCO2として排出されるため
であると考えられる。よって、この酸化反応とホウ素化合物とが何らかの機構によって関
わることにより、石炭灰の硬化が引き起こされるものと推測される。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)の硬化に及ぼすホウ素化合物の影響>
実施例4での結果から、未燃炭素が焼成物の硬化に関与していることが大凡推測された
が、ここでは、ホウ素化合物が焼成物の硬化にどのように関わっているを検討した。
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)を
それぞれ5gずつ用意した。そして、それぞれをるつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.
5cm)に入れ、軽くるつぼを振動させながら詰めた後、焼成温度を1000℃及び焼成
時間を1時間として焼成した。このときの焼成体は薄茶色を呈しており、表面が少し硬化
していたが非常に脆いものであった。
焼成後、各粉状の焼成物5gに、酸化ホウ素(B23)を重量比で3wt%(0.15
g)及び5wt%(0.25g)添加した各試料を調製した。その後、再度、焼成温度1
000℃及び焼成時間1時間で焼成したが、すべての試料で硬化は確認されなかった。
上述の結果から、焼成済みの石炭灰に酸化ホウ素を添加して再度焼成しても石炭灰の硬
化が起こらないことから、硬化は、酸化ホウ素の融解・固化によるバインダ的な作用によ
るものはないことが確認された。
また、一般的に、ホウ素やケイ素は架橋構造を形成可能であることが知られていること
から、ここでは硬化の発生の機構を以下のように推測した。
すなわち、固体粒子間の空孔が加熱によって排除されることにより空孔体積は減少する
が、未燃炭素の酸化反応によってCOやCO2が排出されて粒子間に新たに空孔が多数形
成される。そして、この空孔を介して、融解したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡
散)が促進されることにより、灰成分(例えば、ケイ素(Si)やアルミ(Al)等)と
ホウ素とが網目状の架橋構造を形成し硬化が進行するものと推測される。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)の焼成硬化体の吸水・凍結による変化>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、焼成硬化体の吸水・凍
結による変化について検討した。
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で3wt%(0.15g
)添加して各試料を調製した。調製後、各試料を乳鉢を用いて十分混合しておく。
その後、各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつ
ぼを振動させながら詰めた後、一般的な電気炉(容積:約300L)内で焼成温度100
0℃及び焼成時間1時間で焼成して、焼成硬化体を得た(実施例1参照のこと)。
こうして得られた石炭灰からなる焼成硬化体を、水中に入れて室温で2日間放置したが
、放置後の焼成硬化体について、強度の低下や溶出成分等は確認されなかった。
さらに吸水した状態の焼成硬化体を、−20℃で凍結後に融解したが、融解後の焼成硬
化体についても物性上の破損等は確認されなかった。
これに対し、酸化ホウ素のみをるつぼに詰めで同様の条件で焼成した場合には、るつぼ
内で透明化して固化していた。しかし、固化した酸化ホウ素に対して少量の水を添加する
ことにより粉末化し、さらに水を添加することによって溶解した。
上述の結果から、酸化ホウ素が融解・固化する過程でバインダとして作用することによ
り石炭灰が硬化したとするのであれば、水分の添加によって焼成硬化体の強度低下や溶出
成分等が生じるはずである。
しかし、こうした現象が確認されなかったことから、ホウ素化合物添加による石炭灰の
硬化反応は、ホウ素化合物と灰成分との化学的反応によるものと推測される。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)の軟化温度に対するホウ素化合物添加の影響>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、ホウ素化合物添加によ
る軟化温度の影響を検討した。
石炭灰は、一般的にケイ酸塩鉱物であることから、一定の融点を示さず軟化現象を起こ
すと考えられる。そこで、ここではホウ素化合物の添加の有無による軟化温度の影響の検
討を行った。
石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)に、酸化ホウ素(B23)を重量比で1wt%
、3wt%及び5wt%添加した各試料を調製した。各試料は、乳鉢を用いて十分混合し
ておく。混合後、これら各試料にごく少量の水(精製水)を添加して成型し易い状態とし
た後、三角コーン(ゼーゲルコーン 底面:15mm×15mm×21mm、高さ:60
mm及び上面:5mm×5mm×7mm)に詰めて成型した後、三角コーンから取り出し
て50℃の乾燥器内で一晩乾燥させた。
こうして得られた乾燥後の各試料を、電気炉で室温から1000℃まで上昇させた。こ
こでは、炉内温度を、室温から500℃まで1時間掛けて上昇させて30分間保持した後
、さらに15分ずつを掛けて600℃、700℃、800℃、900℃及び1000℃の
各温度まで上昇させた。この間、各温度で30分間保持させることにより、このときの軟
化状態を観察した。
酸化ホウ素を添加せずに石炭灰のみの試料を焼成した場合は、炉内温度を1000℃ま
で上昇させても試料形状に変化は見られなかった。
一方、酸化ホウ素を1wt%及び3wt%添加した試料では、ともに900℃付近でコ
ーンの先端が曲がり軟化状態を示した。また、酸化ホウ素を5wt%添加した試料では、
800℃付近で軟化状態を示した。尚、酸化ホウ素の添加量がさらに多い試料の場合には
、焼成時間を適宜調節することによって軟化温度のさらなる低下が予想される。
上述の結果から、酸化ホウ素の添加によって石炭灰の軟化温度が低下することが確認さ
れた。
このことから、石炭灰の軟化現象によって灰成分とホウ素とが架橋構造を形成すること
により、硬化反応が引き起こされるものと推測される。
<酸化性雰囲気下・還元性雰囲気下での硬化試験>
続いて、硬化試験を、酸化性雰囲気下(或いは、好気性雰囲気下とも称する。)及び還
元性雰囲気下(或いは、嫌気性雰囲気下とも称する。)で行い、各雰囲気下における硬化
反応について検討した。
(8−a)酸化性雰囲気下での硬化試験
上述の方法と同様に、石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素
量:2.3wt%)それぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で
5wt%(0.25g)添加して各試料を調製した。調製後、各試料は乳鉢を用いて十分
混合しておく。
その後、各試料をるつぼ(横:約4.5cm、縦:4.5cm、深さ:約0.8cm)
に入れ、ガラス管状の小型電気炉(容積:約2L)内で、酸素ガス(O2)流通下で、焼
成温度920℃及び焼成時間1時間で焼成した。尚、ここでの焼成は、電気炉内温度を1
時間かけて室温から920℃まで上昇させた後、920℃で1時間維持する。その後、電
源を切り、自然に炉内温度を室温まで低下させて行う。図6に、ここで用いるガラス管状
の小型電気炉10の主要部の概略図を示す。図6に示すように、ガラス管12の一端側が
摺り合わせガラスの蓋部14となっており、この蓋14を取り外して試料の出し入れを行
う。ガラス管12内には、レンガからなる試料台15が設けてある。また、ガラス管12
の側面は筒状ヒータ16で覆われており、内部の試料を加熱可能とする。ガスは、ガラス
管の一端側から他端側に向かって流通可能である。
焼成によって得られた各焼成物は、一般的な電気炉で行った焼成(実施例1参照)と同
様に、石炭灰A及び石炭灰Bの場合ともに十分硬化し、茶色〜茶褐色を呈していた。また
、焼成後のそれぞれの重量減少率も、石炭灰Aでは約8%であり、石炭灰Bで約2%であ
った。
よって、このときの硬化反応は、上述したように、通常の大気雰囲気下での場合と同様
に、未燃炭素の酸化反応及びホウ素化合物の架橋反応によるものと推測される。
(8−b)還元性雰囲気下での硬化試験
一方、酸素ガスに代えて、窒素ガス(N2)流通下で同様の焼成を行った場合には、石
炭灰Aを用いた焼成物では硬化しなかったが、石炭灰Bを用いた焼成物では十分硬化した
。このとき石炭灰Bから得られた焼成硬化体の硬度は、上記酸化性雰囲気下で得られた各
焼成硬化体の硬度と同程度であった。また、両焼成物の色調は、表面部分はどちらも石炭
灰よりもやや黒みがかっていたが、大部分は石炭灰の黒灰色のままであった。また、焼成
後のそれぞれの重量減少率は、石炭灰Aでは約2.3%であり、石炭灰Bでは約3.5%
であった。
このことから、未燃炭素量が2wt%程度と少ない石炭灰の場合には、還元性雰囲気下
でも酸化性雰囲気下と同様に硬化物を得ることができると推測される。
上述した(8−a)及び(8−b)の結果から、石炭灰の硬化には、未燃炭素の酸化反
応が関与しており、単なるホウ素化合物の融解によるバインダ的な固化によるものではな
いものと推測される。
さらに、石炭灰Bの重量減少率は、酸化性雰囲気下では約2%であったのに対し還元性
雰囲気下では約3.5%であったことから、未燃炭素量の少ない焼却灰の還元性雰囲気下
での硬化は、石炭灰中の酸化鉄等からの酸素の引き抜き、すなわち酸化鉄等による炭素の
酸化放出(例えば、式(1)及び(2))が関与しているものと推測される。
Fe23+C→2FeO+CO・・・・(1)
Fe34+C→3FeO+CO・・・・(2)
<X線解析による未燃炭素含有灰(焼却灰)の焼成時の質量及び熱量の変化>
続いて、実施例8で得られた各焼成物のX線解析パターンの比較検討を行った。
ここでは、石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)を用いて得られた焼成物のX線解析
データを図7に示して説明する。図7では、縦軸を強度信号とし、横軸を照射角度2θ[
°]としてある。
図7(A)は、石炭灰Bに、酸化ホウ素を、石炭灰Bに対する重量比で5wt%添加し
た試料を、酸化性雰囲気下で焼成した焼成物の測定結果である。図7(B)は、石炭灰B
のみの試料を、酸化性雰囲気下で焼成した焼成物の測定結果である。
一方、図7(C)は、石炭灰Bに、酸化ホウ素を、石炭灰Bに対する重量比で5wt%
添加した試料を、還元性雰囲気下で焼成した焼成物の測定結果である。図7(D)は、石
炭灰Bのみの試料を、還元性雰囲気下で焼成した焼成物の測定結果である。
これら結果から、図7(C)の場合に、消失(或いは、減弱する場合も含む。)したピ
ーク(2θ:33.23、d:2.70(図中矢印で指し示す領域))が確認された。ま
た、当該ピークの消失は、石炭灰Aに、酸化ホウ素を石炭灰Aに対する重量比で5wt%
添加した試料を還元性雰囲気下で焼成した場合でも同様に確認された(不図示)。
また、解析の結果、この消失したピークは、酸化第2鉄(Fe23)に起因するもので
あった。
上述した結果から、還元性雰囲気下では、石炭灰が含有している酸化第2鉄(Fe23
)が硬化反応に関与しているものと推測される。
具体的には、未燃炭素量が2wt%程度と未燃炭素分の少ない石炭灰Bの場合には、還
元性雰囲気下であっても、未燃炭素の酸化反応に必要な酸素量は石炭灰中の酸化鉄等から
の引き抜きで十分である。その結果、酸化鉄等による炭素の酸化放出によって、上述した
硬化が引き起こされたものと推測される。
一方、未燃炭素量が7.9wt%程度と未燃炭素分の多い石炭灰Aの場合には、還元性雰囲気下では硬化が起こりにくい。このことは、還元性雰囲気下では、酸化鉄等からの酸素の引き抜きだけでは未燃炭素の酸化に必要な酸素を十分確保できないためであり、その結果、石炭灰の硬化が妨げられたものと推測される。
<還元性雰囲気下での硬化条件の検討>
そこで、還元性雰囲気下での硬化試験に着目し、以下の硬化条件で硬化試験を行った。
先ず、石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt
%)それぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で、3wt%(0
.15g)添加して各試料を調製した。調製後、各試料は乳鉢を用いて十分混合しておく
その後、各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつ
ぼを振動させながら詰めた後、るつぼに蓋をして、一般的な電気炉(容積:約300L)
内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した。
石炭灰Aを用いた焼成物では硬化しなかったが、石炭灰Bを用いた焼成物では十分硬化
した。このとき石炭灰Aを用いた焼成物は薄茶色を呈しており、黒粉が点在していた。一
方、石炭灰Bを用いた焼成物は茶褐色を呈していた。
そこで、石炭灰A5gを焼成するに当たり、酸化ホウ素3wt%に加え、さらに酸化第
2鉄(Fe23)(関東化学社製、特級)を石炭灰に対する重量比で3wt%(0.15
g)添加した試料を調整した。そして、上記と同様に焼成温度1000℃及び焼成時間1
時間で焼成しところ、硬化が確認された。このときの焼成物は黒色を呈していた。
上述の結果から、るつぼに蓋をした還元性雰囲気下でも、未燃炭素量が2wt%程度と
少ない石炭灰Bの場合には硬化することが確認された。
一方、未燃炭素量が7.9wt%と多い石炭灰Aの場合でも、酸化第2鉄(Fe23
を過剰に添加することによって硬化が確認されたことから、硬化には添加したFe2O3に
よる上述の炭素の酸化放出(Fe23+C→2FeO+CO)の促進や、過剰添加分の酸
化第2鉄の熱分解(式(3))が関与しているものと推測される。
Fe23→2FeO+1/2O2・・・・(3)
すなわち、石炭灰中の酸化物(例えば、Fe23)の還元による未燃炭素の酸化や酸化
物の熱分解によって生成された酸素と未燃炭素とが酸化反応することによって、試料から
COやCO2が排出されて粒子間に多数の空孔が発生する。そして、この空孔を介して融
解したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡散)が促進されることにより、灰成分とホ
ウ素とが架橋構造を形成して硬化したものと推測される。
よって、未燃炭素量が7.9wt%程度と多い石炭灰Aの場合でも、熱分解によって酸
素を生成する酸化物等をさらに添加することによって、還元性雰囲気下でも酸化性雰囲気
下と同様の硬化物を得られるものと推測される。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)の焼成時の質量及び熱量の変化>
続いて、空気による酸化性雰囲気下及び還元性雰囲気下における昇温過程での、熱量及
び質量の変化を熱分析装置によって測定した。
(11−a)空気による酸化性雰囲気下での質量及び熱量の変化
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で、5wt%(0.25
g)または10wt%(0.5g)添加して各試料を調製した。調製後、各試料は乳鉢を
用いて十分混合しておく。また、各石炭灰A及びBのみの試料もそれぞれ用意した。
その後、各試料30mgごとに、プラチナ製の容器(5mmφ×2.5mm、容量50
μL)に充填し、この容器を熱分析装置(TG/DTA装置(Rigaku社製 TAS
−200)の炉内にセットした。
そして、各試料毎に、空気による酸化性雰囲気下において、炉内温度を昇温速度8℃/
minで1000℃まで昇温させる間の重量及び熱量の変化を測定した。
表2に、各試料の昇温過程における重量及び熱量の変化を示す。そこで、表2の説明に
先立ち、図8を参照して、石炭灰Aのみの試料の場合を例に挙げて、重量減少の開始温度
A、重量減少の終了温度B、発熱反応の開始温度C、発熱反応のピーク温度D及び発熱反
応の終了温度Eについて説明する。
図8に示すように、石炭灰Aのみの試料の場合には、約500℃付近から重量減少が始
まり、約780℃で重量減少が終了した。そこで、約500℃を重量減少の開始温度Aと
し、約780℃を重量減少の終了温度Bとした。また、この間の重量減少率は、これまで
と同様約8%(実施例1参照)であった。また、熱量変化では、約450℃から発熱反応
が始まり、約615℃でピークに達した後は、次第に発熱量が減少し約800℃で発熱が
終了した。そこで、約450℃を発熱反応の開始温度Cとし、約615℃を発熱反応のピ
ーク温度Dとし、及び約800℃を発熱反応の終了温度Eとした。
続いて、各試料の測定結果について表2を参照して説明する。
Figure 0003931171
表2に示すように、石炭灰Aに、酸化ホウ素を5wt%(0.25g)及び10wt%
(0.5g)を添加した各試料の場合には、重量減少の開始温度Aはそれぞれ約500℃
及び約520℃であり、重量減少の終了温度Bはともに約800℃であった。また、この
間の重量減少率は、約8%であった。また、これら各試料の発熱反応の開始温度Cは、そ
れぞれ450℃及び500℃であり、ともに約635℃でピーク温度Dに達した後は82
5℃で発熱反応が終了した。
また、石炭灰Bのみの試料の場合には、重量減少の開始温度Aは約520℃であり、重
量減少の終了温度Bは約760℃であった。また、この間の重量減少率は、これまでと同
様(実施例1参照)約3%であった。
上述の結果から、いずれの試料も重量減少の開始温度A及び終了温度Bは、発熱反応の
開始温度C及び終了温度Eにそれぞれ対応していることが確認された。また、重量減少率
及び発熱量はともに未燃炭素量の多い石炭灰Aの方が大きく、特に、各試料の重量減少率
は、石炭灰中の未燃炭素量とほぼ一致する傾向にあった。
これらから、焼成に伴う重量減少及び発熱反応の大部分は、やはり、石炭灰中の未燃炭
素の酸化反応によるCOやCO2の排出によるものと推測される。その結果、ここでの酸
化反応は、石炭灰Aの場合には約450〜約825℃の範囲内の温度で、石炭灰Bの場合
には約500〜約810℃の範囲内の温度で進行したものと推測される。
さらに、石炭灰Aでは、発熱反応のピーク温度Dが酸化ホウ素の添加によって約20℃
高温側にシフトした。これは、酸化ホウ素の融解(約580℃)によって炭素の酸化反応
によるCOやCO2の発生が抑制されるため、より高温が必要であったためと推測される
(11−b)還元性雰囲気下での質量及び熱量の変化
一方、空気を導入する代わりに、窒素ガス流通下で同様の測定を行った。
石炭灰Aのみの試料の場合には、重量減少の開始温度Aは約600℃であり、重量減少
は1000℃到達後も終了せずに継続していた。また、この間の重量減少率は、約7.5
%であった。また、空気による酸化性雰囲気下での測定で見られたような発熱反応は殆ど
確認されなかった。
同様に、石炭灰Aに、酸化ホウ素を5wt%(0.25g)添加した試料の場合も、重
量減少の開始温度Aは約600℃であり、重量減少は1000℃到達後も終了せずに継続
していた。また、この間の重量減少率は、約8%であった。また、空気による酸化性雰囲
気下での測定で見られたような発熱反応は殆ど確認されなかった。また、焼成物の硬化は
見られなかった。
また、昇温後の焼成物は、酸化ホウ素の添加の有無に関わらず、ともに表面がやや薄茶
色に黒い粒子が多数散在しており、内部や底面側は黒色を呈していた。
上述の結果から、還元性雰囲気下においても重量減少が確認されたが、これは、石炭灰
中の酸化鉄等からの酸素の引き抜き、すなわち酸化鉄等による炭素の酸化放出が関与して
いるものと推測される。
<水分添加による未燃炭素含有灰(焼却灰)の硬化試験>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、試料に水分を添加した
場合の焼成物の硬化への影響を検討した。
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で5wt%(0.25g
)添加して各試料を調製した。調製後、各試料は乳鉢を用いて十分混合しておく。
その後、石炭灰Aを用いた試料には、さらに、水(精製水)を石炭灰Aに対する重量比
で、5wt%、10wt%、20wt%、40wt%、60wt%及び80wt%ずつ加
えて混合し6種類の試料を調整した。このとき、水を60wt%添加した試料は、水より
粘度の高いどろっとした状態であった。また、水を80wt%添加した試料は、水のよう
に粘度の低い状態であった。尚、一般的な石炭灰自体は水分を殆ど含有していない。
また、石炭灰Bを用いた各試料には、さらに、水(精製水)を、石炭灰Bに対する重量
比で、5wt%、10wt%、20wt%、40wt%及び50wt%ずつ加えて混合し
5種類の試料を調整した。このとき、水を40wt%添加した試料は、水より粘度の高い
どろっとした状態であった。また、水を50wt%添加した試料は、水のように粘度の低
い状態であった。
これら各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつぼ
を振動させながら詰めた。このとき、湿っている試料(石炭灰Aでは、水を5〜40wt
%添加した試料であり、石炭灰Bでは、水を5〜20wt%添加した試料)の場合には、
るつぼに詰めた後、プラスチック板で表面を押して平らにした。
その後、電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した。
焼成によって得られた焼成物は、両石炭灰ともに水分添加を20wt%以上として得ら
れた焼成物の表面には僅かにひび割れが生じていたが、いずれも良好な硬度を有していた
上述の結果から、成型のし易さ等の点から石炭灰に水分を添加する場合には、その添加
量を、石炭灰に対する重量比で40wt%未満とするのが好適であると推測される。
<水以外の溶液添加による未燃炭素含有灰(焼却灰)の硬化試験>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、試料に水以外の溶液を
添加した場合の焼成物の硬化への影響を検討した。
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で3wt%(0.15g
)添加して各試料を調製した。調製後、各試料は乳鉢を用いて十分混合しておく。
その後、石炭灰Aを用いた試料には、さらに、1N(規定)の塩酸(HCl)またはメ
タノール(CH3OH)を、石炭灰Aに対する重量比で60wt%(3ml)それぞれ加
えて混合した各試料を調整した。
また、石炭灰Bを用いた試料には、さらに、1N(規定)の塩酸(HCl)またはメタ
ノールを、石炭灰Bに対する重量比で40wt%(2ml)でそれぞれ加えて混合した各
試料を調整した。尚、比較用の試料として、3wt%の酸化ホウ素を添加した石炭灰A5
gに水(精製水)を3mlを添加した試料、及び酸化ホウ素を添加した石炭灰B5gに水
を2mlを添加した試料を用意した。
これら各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつぼ
を振動させながら詰めた後、電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成し
た。
焼成後のすべての焼成物で良好な硬化が確認されたが、特に、1N塩酸またはメタノー
ルを添加して得られた焼成硬化体は、水を添加した焼成物よりも焼成硬化体の表面のひび
割れが少なかった。
これに対して、各試料を焼成する前に50℃の乾燥器内で12時間乾燥させ、乾燥後の
各試料を電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した。
この場合にも、すべての焼成物で良好な硬化が確認された。このとき、水を添加して乾
燥させた場合の焼成硬化体の表面に大きなひび割れが生じていたが、1N塩酸またはメタ
ノールを添加して乾燥させた場合の焼成硬化体の表面は滑らかであった。
そこで、3wt%の酸化ホウ素を添加した石炭灰A及びBそれぞれ5gに、石炭灰に対
する重量比でそれぞれ5〜10wt%の範囲内の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及
び水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)の粉末を加えた各試料を、電気炉内で焼成温度
1000℃及び焼成時間1時間で焼成した。
この場合には、すべての焼成物の表面にひび割れが無く滑らかで良好な硬化が確認され
た。
一般的に、石炭灰は水を添加することにより、強いアルカリ性(pH=12前後)を示
すことが知られている。これは、石炭灰中の酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウ
ム(MgO)等が水と反応してCa(OH)2やMg(OH)2等を生成するためである。
よって、上述の結果から、このように強いアルカリ性の試料が焼成すると強い収縮を起
こし、焼成物にひび割れが発生するものと推測される。
一方、塩酸のような酸性溶液や、メタノールのようにOHの解離を引き起こさない有
機溶媒等を添加してpHの上昇を抑制すると、ひび割れの発生が抑制された良好な焼成硬
化体を得られることが確認された。
<焼成した未燃炭素含有灰(焼却灰)を用いた硬化試験>
実施例5の結果から、一度焼成した石炭灰(以下において、既焼成石炭灰、或いは単に
灰とも称する。)に酸化ホウ素を添加して再度焼成を行った場合には、硬化は確認されな
かった。さらに、酸化ホウ素の代わりに、酸化第2鉄(Fe23及びFe34)、炭酸水
素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)または炭酸ナトリウム(
Na2CO3)をそれぞれ石炭灰に対する重量比で1.5〜15wt%の範囲内で添加した
場合も、同様に硬化は確認されなかった。
そこで、以下のような種々の試料を調製して硬化試験を行った。
先ず、石炭灰A及びBを、焼成温度を1000℃及び焼成時間を1時間として焼成して
各既焼成石炭灰を作製した。
その後、これら石炭灰A及びBの既焼成石炭灰各5gに、下記の(a)〜(f)をそれ
ぞれ添加して、12種類の試料を調製した。
(a)酸化ホウ素(既焼成石炭灰に対する重量比で3wt%(以下、単にwt%とのみ表
記)+酸化第2鉄(1〜3wt%)
(b)酸化ホウ素(3wt%)+炭酸水素ナトリウム(3〜15wt%)
(c)酸化ホウ素(3wt%)+炭酸水素カリウム(3〜10wt%)
(d)酸化ホウ素(3wt%)+炭酸ナトリウム(3〜10wt%)
(e)酸化ホウ素(3wt%)+黒鉛末(3〜5wt%)
(f)テトラフェニルホウ酸ナトリウム(NaB(C654)(30〜50wt%)
そして、これら各試料を、乳鉢を用いて十分混合した後るつぼに入れ、軽くるつぼを振
動させながら詰めた後、電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成したと
ころ、すべての試料において硬化が確認された。
ところが、石炭灰A及びBに、酸化第2鉄(Fe23)の鉄量と同量の還元鉄(Fe)
を添加して、電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した場合には、硬
化は確認されなかった。
また、あらかじめ1000℃で1時間焼成した酸化第2鉄を、石炭灰A及びBの既焼成
石炭灰に添加して、再度、電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した
場合にも硬化は確認されなかった。
一般的に、(a)〜(d)のうち酸化ホウ素と併せて添加される物質、及び(f)は、
熱分解や燃焼等によってガス(CO、CO2或いはO2)を発生するガス発生物質であるこ
とが知られている(式(4)〜式(9)参照)。
Fe23→2FeO+1/2O2 2Fe34→6FeO+O2 ・・・・(4)
2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2 ・・・・(5)
2KHCO3→K2CO3+H2O+CO2 ・・・・(6)
Na2CO3→Na2O+CO2 ・・・・(7)
C+O→CO C+O2→CO2 ・・・・(8)
2NaB(C654+60O2→48CO2+20H2O+B23+Na2O・・(9)
その結果、焼成中の試料粒子間に多数の空孔が形成される。そして、この空孔を介して
、融解したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡散)が促進されることにより、灰成分
とホウ素との架橋構造に起因する焼成硬化体が得られたものと推測される。
一方、石炭灰Aのみをるつぼに詰めた後、蓋をして焼成温度1000℃及び焼成時間1
時間で焼成して、既焼成石炭灰を作製した。このときの既焼成石炭灰には、黒い粉である
炭素が残留しているのが観察された。
この石炭灰Aの既焼成石炭灰各5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量
比で3wt%(0.15g)添加して各試料を調製した。各試料を乳鉢を用いて十分混合
した後るつぼに詰め、電気炉内で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成したとこ
ろ、硬化が確認された。
ここでは、既焼成石炭灰中に残留する未燃炭素が、再度の焼成によってCOやCO2
して排出され、試料粒子間に多数の空孔が形成される。そして、この空孔を介して、融解
したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡散)が促進されることにより、灰成分とホウ
素とが架橋構造を形成して硬化したものと推測される。
また、石炭灰A及びBをそれぞれ、焼成温度を650℃及び焼成温度を3時間、及び焼
成温度を800℃及び焼成時間を1.5時間で焼成して、既焼成石炭灰を作製した。その
後、これら石炭灰A及びBの既焼成石炭灰各5gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に
対する重量比で3wt%(0.15g)添加して各試料を調製した。各試料を乳鉢を用い
て十分混合した後るつぼに入れ、軽くるつぼを振動させながら詰めた後、電気炉内で焼成
温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成したところ、硬化が確認された。
ここでは、既焼成石炭灰を用いて再度行った焼成後の炭素量の減少が、焼成温度100
0℃及び焼成時間1時間で焼成を行った場合と同程度であったことから、未燃炭素は殆ど
残存していないものと考えられる。よって、この場合には、石炭灰中の酸化鉄等の熱分解
による酸素等の放出が関与していると推測される。そして、この酸素等の放出によって試
料粒子間に多数の空孔が形成され、この空孔を介して融解したホウ素化合物の物質移動(
すなわち、拡散)が促進されることにより、灰成分とホウ素とが架橋構造を形成して硬化
したものと推測される。
上述の結果から、ホウ素化合物添加による石炭灰の硬化は、ホウ素が石炭灰中の灰成分
(例えば、ケイ素(Si)やアルミ(Al)等)と網目状の架橋構造を形成することによ
って起こると考えられる。また、このホウ素化合物と石炭灰との固相焼結による網目形成
には、O2、CO或いはCO2等の気体放出による空孔の生成が必須であり、この空孔生成
によってホウ素化合物の物質移動、すなわち拡散が促進されて硬化が起こると考えられる
<酸化ホウ素以外のホウ素化合物添加による未燃炭素含有灰(焼却灰)の硬化試験>
酸化ホウ素の代わりに他のホウ素化合物を添加して、同様の硬化試験を行った。
(15−a)4ホウ酸ナトリウム(Na247
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、4ホウ酸ナトリウム(Na247)(関東化学社製 特級)を、石炭灰
に対する重量比で0.5〜15wt%、すなわち、ホウ素を0.11〜3.2wt%程度
添加して各試料を調製した。各試料は、乳鉢を用いて十分混合しておく。
その後、各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に軽く入れ、るつ
ぼを振動させながら詰めた後、一般的な電気炉(容積:約300L)で焼成温度1000
℃及び焼成時間1時間で焼成した。
焼成後、すべての焼成物で良好な硬化が確認され、各焼成物は、薄茶色〜茶色を呈して
いた。
また、石炭灰Aを用いた場合には、4ホウ酸ナトリウムの添加量10wt%以上で焼成
硬化体の表面に気泡痕が確認され、特に、4ホウ酸ナトリウムの添加量15wt%では膨
張が顕著であった。一方、石炭灰Bを用いた場合には、4ホウ酸ナトリウムの添加量5〜
10wt%程度で膨張や気泡痕の発生が抑制された好適な硬化が確認され、4ホウ酸ナト
リウムの添加量12〜15wt%で膨張が確認された。尚、焼成後の重量減少率は、酸化
ホウ素の場合と同程度であった。
(15−b)ホウ酸(H3BO3
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、ホウ酸(H3BO3)(関東化学社製 特級)を
、石炭灰に対する重量比で0.5〜15wt%、すなわちホウ素を0.087〜2.7w
t%程度添加して各試料を調製した。その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度
1000℃及び焼成時間1時間で焼成した。
焼成後、すべての焼成物で良好な硬化が確認されたが、特に、両石炭灰ともにホウ酸の
添加量を7〜10wt%以上とした場合には十分な硬化が確認された。また、各焼成物は
、薄茶色〜褐色を呈していた。
また、石炭灰Aを用いた場合にはホウ酸の添加量10wt%、また石炭灰Bを用いた場
合にはホウ酸の添加量15wt%以上で、硬化物の底面側に多数の気泡痕が観察された。
また、このときの焼成物には未燃分の炭素が黒く残留していた。
(15−c)4ホウ酸アンモニウム4水和物((NH4247・4H2O)
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、4ホウ酸アンモニウム4水和物((NH42
47・4H2O)(関東化学社製 鹿特級)を、石炭灰に対する重量比で、0.5〜15
wt%(水分量を除去した値)、すなわち、ホウ素を0.082〜2.5wt%程度添加
して各試料を調製した。その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及
び焼成時間1時間で焼成した。
焼成物は、石炭灰Aを用いた場合には、4ホウ酸アンモニウム4水和物の添加量5wt
%以上で、また石炭灰Bを用いた場合には、4ホウ酸アンモニウム4水和物の添加量3w
t%以上で、十分な硬化が確認された。このとき、石炭灰Aを用いた焼成物は薄茶色を呈
しており、石炭灰Bを用いた焼成物は茶褐色〜褐色を呈していた。尚、4ホウ酸アンモニ
ウム4水和物の添加量10wt%以上では各焼成硬化体の表面にひび割れが生じており、
さらに石炭灰Aでは大きな収縮、石炭灰Bでは膨張が確認された。
(15−d)4ホウ酸カリウム4水和物(K247・4H2O)
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、4ホウ酸カリウム4水和物(K247・4H2
O)(関東化学社製 鹿特級)を、石炭灰に対する重量比で、0.5〜15wt%(水分
量を除去した値)、すなわちホウ素を0.069〜2.1wt%程度添加して各試料を調
製した。その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時
間で焼成した。
焼成物は、石炭灰Aを用いた場合には、4ホウ酸カリウム4水和物の添加量5wt%以
上で、また石炭灰Bを用いた場合には、4ホウ酸カリウム4水和物の添加量3wt%以上
で、十分な硬化が確認された。このとき、石炭灰Aを用いた焼成物はやや黒みがかった肌
色を呈しており、石炭灰Bを用いた焼成物は茶色〜黒褐色を呈していた。
(15−e)テトラフェニルホウ酸ナトリウム(NaB(C654
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(NaB(C
654)(関東化学社製 特級)を、石炭灰に対する重量比で10wt%(酸化ホウ素
のホウ素量で重量比約1wt%に相当)及び30wt%(酸化ホウ素のホウ素量で重量比
約3wt%に相当)、すなわち、ホウ素を0.25wt%及び0.75wt%程度添加し
て各試料を調製した。その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び
焼成時間1時間で焼成した。
焼成物は、石炭灰Aを用いた場合には、テトラフェニルホウ酸ナトリウムの添加量10
wt%でやや脆いながらも硬化が確認され、一方、添加量30wt%では十分な硬化が確
認された。また、石炭灰Bを用いた場合には、テトラフェニルホウ酸ナトリウムの添加量
10wt%で硬化が確認され、添加量30wt%で十分な硬化が確認された。このとき、
石炭灰Aを用いた焼成物は薄茶色を呈しており、石炭灰Bを用いた焼成物は黒褐色を呈し
ていた。
上述した(15−a)〜(15−e)の結果から、ホウ素化合物として、酸化ホウ素の
ほかに、上述した種々のホウ素化合物を選択することができる。
<ホウ素化合物以外の物質添加による未燃炭素含有灰(焼却灰)の硬化試験>
ホウ素化合物の代わりに以下の物質を添加して、同様の硬化試験を行った。
(16−a)ガラス粉末
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、ガラス粉末(ここでは、乳鉢で粉砕したソーダ石灰ガラスを使用。)を石
炭灰に対する重量比で、5wt%及び10wt%でそれぞれ添加して各試料を調製した。
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成したが、すべての試料で硬化は確認されなかった。
一方、ガラス粉末のみを焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼成した場合には、
ガラス粉末の融解・固化が確認された。
上述の結果から、ホウ素化合物添加による硬化反応は、単なるホウ素化合物自体の融解
・固化によるバインダ的な作用によるものではないことを示している。
(16−b)水酸化ナトリウム(NaOH)
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、水酸化ナトリウム(NaOH)(関東化学社製
特級)を石炭灰に対する重量比で、5wt%、10wt%及び15wt%でそれぞれ添
加して各試料を調製した。
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成した。
焼成物は、石炭灰Aを用いた場合には、水酸化ナトリウムの添加量5wt%及び10w
t%では硬化は見られなかったが、添加量15wt%で焼成物の内部及び底面のみの硬化
が確認された(すなわち、焼成物の表面は硬化していなかった。)。一方、石炭灰Bを用
いた場合には、添加量5wt%では硬化は見られなかったが、添加量10wt%及び15
wt%で硬化した。焼成硬化体は、茶色〜灰色がかった薄茶色を呈しており、表面が粉状
でザラザラした状態であった。
一般的に、水酸化ナトリウムは、330℃程度で融解し、さらに1000℃程度の高温
下では酸化分解によって酸化ナトリウム(Na2O)を生成することが知られている。
よって、ここでの硬化は、融解した酸化ナトリウムと石炭灰が含有する酸化ケイ素(S
iO2)とが反応し、ケイ酸アルカリガラスのような構造を形成して固化したためと推測
される。
一方、ホウ素化合物を添加する場合には、水酸化ナトリウムよりも少量の添加量(例え
ば、0.5wt%)で硬化が進行することから、ここでの硬化は、ホウ素化合物を用いた
硬化とは異なる機構によるものと考えられる。
(16−c)炭酸ナトリウム(Na2CO3
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、炭酸ナトリウム(Na2CO3)(関東化学社製
特級)を石炭灰に対する重量比で、2〜15wt%の範囲内で添加して各試料を調製し
た。各試料は、乳鉢を用いて十分混合しておく。
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成した。
焼成物は、石炭灰Aを用いた場合には、炭酸ナトリウムの添加量2〜10wt%では硬
化が見られなかったが、炭酸ナトリウムの添加量15wt%で硬化が確認された。また、
焼成物は肌色を呈していた。一方、石炭灰Bを用いた場合には、すべての試料で硬化が確
認され、焼成物は茶色(レンガ色)を呈していた。
よって、石炭灰に炭酸ナトリウムを好適量添加した試料を好適条件下で焼成することに
より、焼成硬化体を得られることが確認された。
一般的に、炭酸ナトリウム(融点851℃)も、水酸化ナトリウム(16−b)と同様
に、1000℃程度の高温下では酸化分解によって酸化ナトリウム(Na2O)を生成す
ることが知られている。よって、ここでの硬化も、融解した酸化ナトリウムと石炭灰が含
有する酸化ケイ素(SiO2)とが反応し、ケイ酸アルカリガラスのような構造を形成し
て固化したためと推測される。
尚、このような反応は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)や炭酸水素ナトリウムN
aHCO3等でも同様に起こるものと推測される。
(16−d)5酸化2リン(P25
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、5酸化2リン(P25)(関東化学社製 特級
)を石炭灰に対する重量比で、5〜15wt%の範囲内で添加して各試料を調製した。
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成したが、すべての試料で硬化は確認されなかった。
(16−e)酸化ビスマス(Bi23
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、酸化ビスマス(Bi23)(関東化学社製 特
級)を石炭灰に対する重量比で、5〜10wt%の範囲内で添加して各試料を調製した。
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成したが、すべての試料で硬化は確認されなかった。
(16−f)酸化アンチモン(Sb23
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、酸化アンチモン(Sb23)(関東化学社製
特級)を石炭灰に対する重量比で、5〜10wt%の範囲内で添加して各試料を調製した
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成したが、すべての試料で硬化は確認されなかった。
(16−g)酸化バナジウム(V25
石炭灰A及び石炭灰Bそれぞれ5gに、酸化バナジウム(V25)(関東化学社製 特
級)を石炭灰に対する重量比で、5〜10wt%の範囲内で添加して各試料を調製した。
その後、(15−a)と同様に、電気炉で焼成温度1000℃及び焼成時間1時間で焼
成したが、すべての試料で硬化は確認されなかった。
上述した(16−d)〜(16−g)の結果から、一般的に、ガラス構造物中で網目状
構造を形成することが知られているリン、ビスマス、アンチモン及びバナジウム(融点:
約650〜800℃)の酸化物を添加しても石炭灰の硬化が確認されなかった。このこと
から、1000℃以下の焼成温度で得られるこの発明の焼成硬化体は、ホウ素化合物に特
異的なものと推測される。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)を焼成して得られた焼成硬化体の物性測定>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、焼成硬化体の物性を測
定した。
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ60gに、酸化ホウ素(B23)を、石炭灰に対する重量比で、3wt%(1.8
g)、5wt%(3.0g)及び7wt%(4.2g)添加して各試料を調製した。
その後、各試料を、るつぼ(横:約5cm、縦:5cm、深さ:約3.5cm)に軽く
るつぼを振動させながら詰めた後、一般的な電気炉(容積:約300L)内で焼成温度1
000℃及び焼成時間1時間で焼成して、各焼成硬化体(横:5cm、縦:5cm、深さ
:2cm)を得た。尚、ここでは、酸化ホウ素の添加量を、十分硬化した焼成硬化体が得
られる添加量で行った(実施例1参照)。
得られた各焼成硬化体の物性を測定した。表3に、各焼成硬化体の測定結果を示す。尚
、各焼成硬化体の圧縮強度は、小型加圧試験機を用いて測定した。また、各焼成硬化体の
吸水率は、焼成硬化体を水中に入れて室温で1時間放置した後の重量と、当該焼成硬化体
を乾燥機内(105℃)で12時間乾燥した後の重量とをそれぞれ測定して算出した。
Figure 0003931171
表3に示すように、焼成硬化体の色調は、薄茶色〜茶褐色を呈していた。また、焼成硬
化体のかさ比重は約1〜1.3であり、市販のレンガの比重(通常、2前後とされる。)
に比べて非常に軽量であった。また、焼成硬化体の圧縮強度は約30〜50kg/cm2
であり、十分な強度を有していることが確認された。また、焼成硬化体の吸水率は、石炭
灰Aを用いた焼成硬化体では約28〜48%であり、石炭灰Bを用いた焼成硬化体では約
11〜29%であった。
こうして、上記条件で作製した焼成硬化体は、通常のレンガ等に比べて非常に軽量であ
り、かつ実用可能な十分な強度及び高い吸水性を示すことが確認された。
<未燃炭素含有灰(焼却灰)を焼成して得られた焼成硬化体の色調変化>
続いて、未燃炭素含有灰である焼却灰として石炭灰を例に挙げ、焼成硬化体の色調の変
化を観察した。
石炭灰A(未燃炭素量:7.9wt%)及び石炭灰B(未燃炭素量:2.3wt%)そ
れぞれ5gに、酸化ホウ素(B23)を石炭灰に対する重量比で3wt%(0.15g)
添加した後、さらに、石炭灰に対する重量比で3wt%程度の酸化チタン(TiO2)、
酸化鉄(Fe23)、酸化銅(Cu2O)、酸化クロム(Cr23)または酸化コバルト
(CoO)を添加して各試料を調製した。
その後、各試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつ
ぼを振動させながら詰めた後、一般的な電気炉(容積:約300L)内で焼成温度100
0℃及び焼成時間1時間で焼成した。
石炭灰を用いた焼成硬化体の色調は、酸化ホウ素のみの添加(3wt%)では薄茶色ま
たは茶褐色であったが、酸化チタンの添加により黄土色や黄色、酸化鉄の添加により緑色
、酸化銅の添加により灰色、酸化クロムの添加により赤茶色、及び酸化コバルトの添加に
より濃灰色に変化することが確認された。
このように、金属自体或いは金属酸化物等を添加して焼成することにより、種々の色調
の焼成硬化体を容易に製造することができる。よって、使用目的や要望に応じた色調の焼
成硬化体を得ることができる。
<火山灰を用いたホウ素化合物添加による硬化試験>
火山灰5gに、酸化ホウ素(B23)を火山灰に対する重量比で5wt%、すなわちホ
ウ素を火山灰に対する重量比で1.6wt%程度添加した試料を調製した。試料は、乳鉢
を用いて十分混合しておく。
その後、試料を、るつぼ(直径:約4cm、深さ:約3.5cm)に入れ、軽くるつぼ
を振動させながら詰めた後、一般的な電気炉(容積:約300L)で焼成温度1000℃
及び焼成時間1時間で焼成したところ、良好な焼成硬化体が得られた。
このことは、火山灰の一般組成が石炭灰と類似していると考えられるため、石炭灰の場
合と同様に、ホウ素化合物の添加によって良好な焼成硬化体が得られたものと推測される
尚、火山灰は焼却灰のように未燃炭素分を含有していないため、火山灰の硬化には、例
えば、火山灰が含有している酸化鉄の熱分解(Fe23→2FeO+1/2O2)等が関
与しているものと推測される。
すなわち、酸化鉄等の熱分解によって、焼成中の試料粒子間に多数の空孔が形成される
。そして、この空孔を介して融解したホウ素化合物の物質移動(すなわち、拡散)が促進
されることにより、灰成分とホウ素とが架橋構造を形成して硬化したものと推測される。
(A)は、この発明の実施例1における焼成物の硬度の測定結果を示す図であり、(B)は、この発明の実施例1における焼成物の重量減少の測定結果を示す図である。 (A)及び(B)は、この発明の実施例2における焼成物の硬度の測定結果 を示す図である。 (A)及び(B)は、この発明の実施例2における焼成物の重量減少の測定結果を示す図である。 (A)及び(B)は、この発明の実施例3における焼成物の硬度の測定結果を示す図である。 (A)及び(B)は、この発明の実施例3における焼成物の重量減少の測定結果を示す図である。 この発明の実施例8の説明に供する図である。 この発明の実施例9のX線解析の測定結果を示す図である。 この発明の施例11の熱量/重量変化の測定結果を示す図である。
符号の説明
10:小型電気炉(主要部)
12:ガラス管
14:蓋部
15:試料台
16:筒状ヒータ

Claims (20)

  1. 未燃炭素を含有する石炭灰に酸化ホウ素を添加して混合し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、
    粉状の前記混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲である焼成硬化体を得る焼成工程と
    を含むことを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  2. 未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素及び水を添加して混合する添加・混合工程と、
    前記添加・混合工程で得られた混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲である焼成硬化体を得る焼成工程と
    を含むことを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記添加・混合工程では、前記石炭灰の重量に対して0.05〜5wt%の範囲内のホウ素を含む前記酸化ホウ素を添加することを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記添加・混合工程では、前記石炭灰の重量に対して0.5〜2.5wt%の範囲内のホウ素を含む前記酸化ホウ素を添加することを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  5. 請求項2に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記添加・混合工程では、前記水を、前記石炭灰の重量に対して40wt%未満の添加量で添加することを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  6. 請求項1に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記添加・混合工程では、さらに、酸を含む水溶液を添加して混合することを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  7. 請求項1に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記添加・混合工程では、さらに、有機溶媒を添加して混合することを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  8. 未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素及び加熱によってガスを発生するガス発生物質を添加し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、
    粉状の前記混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して焼成硬化体を得る焼成工程と
    を含むことを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  9. 未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素を含有するコレマナイト及び加熱によってガスを発生するガス発生物質を添加し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、
    粉状の前記混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して焼成硬化体を得る焼成工程と
    を含むことを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  10. 請求項又はに記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記ガスは、前記焼成工程時に、前記混合物が前記焼成硬化体へと焼成されるまでの前駆焼成硬化体に、空孔を生成する空孔生成ガスであることを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  11. 請求項10に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記空孔生成ガスは、COガス、CO2ガス、O2ガス及びN2ガスのうちの少なくとも一つであることを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  12. 請求項11に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記空孔生成ガスを発生させる前記ガス発生物質として、金属酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、塩素酸塩、炭素化合物及びニトロ化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  13. 請求項10に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記空孔生成ガスは、H2ガス及びNH3ガスのうちの少なくとも一つであることを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  14. 請求項13に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記空孔生成ガスを発生させる前記ガス発生物質として、ZnとH2SO4とを組み合わせたもの、NH4ClとCa(OH)2とを組み合わせたもの、NH4ClとNaOHとを組み合わせたもの、(NH42SO4とCa(OH)2とを組み合わせたもの及び(NH42SO4とNaOHとを組み合わせたものからなる群から選ばれる少なくとも一つのものを用いることを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  15. 未燃炭素を含有する石炭灰に、加熱によって前記石炭灰が焼成硬化体へと焼成されるまでの前駆焼成硬化体に、空孔を生成する空孔生成ガスを発生するホウ素化合物であるB(OR)3〜5またはBR’3〜5(R、R’=アルキル基または芳香族基)、あるいはこれらの塩を添加し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、
    粉状の前記混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して焼成硬化体を得る焼成工程と
    を含むことを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  16. 請求項15に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記塩として、NaB(C654またはNaB(C653を用いることを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  17. 請求項1ないし16のいずれか一項に記載の焼成硬化体の製造方法において、
    前記添加・混合工程では、さらに、Ti、Cu、Fe、Co、Cr、Zn、Sn、V、Mg、K、Mn、Be、Bi、Sb、Ce、W及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属、或いは該選ばれた金属を含む化合物を添加することを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  18. 請求項1ないし17のいずれか一項に記載の焼成硬化体の製造方法において、前記焼成工程を、焼成温度を600〜1000℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする焼成硬化体の製造方法。
  19. 未燃炭素を含有する石炭灰に酸化ホウ素を添加して混合し、粉状の混合物を得る添加・混合工程と、
    粉状の前記混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲にある焼成硬化体を得る焼成工程と
    により得ることができる焼成硬化体。
  20. 未燃炭素を含有する石炭灰に、酸化ホウ素及び水を添加して混合する添加・混合工程と、
    前記添加・混合工程で得られた混合物を成型して、成型体を得る成型工程と、
    前記成型体を焼成して、吸水率が11%から48%の範囲である焼成硬化体を得る焼成工程と
    により得ることができる焼成硬化体。
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