JP2009172559A - 複層塗膜形成方法及び塗装物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属素材などの基材の表面に陶器調のひび割れ感を有する新規な意匠性に優れた塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】
(1)淡彩色のベースコート塗料を塗装して焼き付け、JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50以上である淡彩色のベースコート塗膜を形成する工程、(2)該ベースコート塗膜上に、(A)水酸基を含有するポリエステル樹脂又は水酸基を含有するアクリル樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して60〜95質量%、(B)メチル化メラミン樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、(C)沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜3質量部、及び(D)濃彩色の顔料及び/又は染料を塗料中の総固形分量に対して固形分換算で0.02〜1質量%を含有するちぢみ模様塗膜を形成するカラークリヤー塗料を塗装して焼き付け、カラークリヤー塗膜を形成する工程、及び(3)該カラークリヤー塗膜上にクリヤー塗料を塗装して焼き付け、クリヤー塗膜を形成する工程からなることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、表面にひび割れ感を有する意匠性に優れた陶器調塗膜を形成する塗装方法に関するものであり、特に、家電製品、OA機器、モバイル機器、自動車部品等の金属素材、特にマグネシウム合金、アルミニウム合金、又はステンレスの表面に陶器調の優れた意匠性を付与することができる塗装方法に関するものである。
意匠性、模様の安定性に優れたちぢみ塗料組成物として、有機樹脂粒子、有機樹脂繊維、無機質ガラス粒子、無機質繊維から選ばれた1種以上を塗料中に配合し、必要に応じて、光輝性顔料を含有させた塗料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ちぢみ塗料に、着色顔料または染料を含有させることで、カラークリヤー塗料として用いることができることも知られている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、これらの塗料の場合、単に無色透明、または着色されたちぢみ模様を有する塗膜が形成されるだけであって意匠性としては乏しいという欠点があった。
また、表面に凹凸を有する基板の凹凸面に必要に応じて、シーラー層とベースコート塗膜を形成した後、その上にカラークリヤー塗料を塗布し、このカラークリヤー塗料が未硬化のうちに塗装面を下向きにしてこの状態でカラークリヤー塗料を硬化させ、基板の凸部に塗料の濃着色部を、また同凹部に塗料の薄着色部を形成せしめることを特徴とする凹凸模様付き化粧板の製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、ほぼ平坦な平面と傾斜面とからなる凹凸模様を形成した建築用板において、凹凸模様に施されたちぢみ塗料塗膜の膜厚が傾斜の上側より下側のほうが厚くなっていることを特徴とする建築用板の製造方法において、顔料成分を1〜30重量%とすることで、ちぢみ塗料塗膜の膜厚に応じて色の濃淡と、ちぢみ柄による光沢差を生じさせる技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、これらの方法においては、素材の形状に制限があるという欠点があった。
特開平5−039443号公報 特公平6−011879号公報 特開2002−146280号公報 特開平7−116596号公報 特開2003−247319号公報
本発明は、金属素材などの基材の表面に陶器調のひび割れ感を有する新規な意匠性に優れた塗膜を形成することができる複層塗膜形成方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ある特定の複層塗膜を形成することによって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、(1)淡彩色のベースコート塗料を塗装して焼き付け、JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50以上である淡彩色のベースコート塗膜を形成する工程、(2)該ベースコート塗膜上に、(A)水酸基を含有するポリエステル樹脂又は水酸基を含有するアクリル樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して60〜95質量%、(B)メチル化メラミン樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、(C)沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜3質量部、及び(D)濃彩色の顔料及び/又は染料を塗料中の総固形分量に対して固形分換算で0.05〜1質量%を含有するちぢみ模様塗膜を形成するカラークリヤー塗料を塗装して焼き付け、カラークリヤー塗膜を形成する工程、及び(3)該カラークリヤー塗膜上にクリヤー塗料を塗装して焼き付け、クリヤー塗膜を形成する工程からなることを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
また、本発明は、(1)金属素材上に、プライマーを塗装し、硬化又は未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、(2)該プライマー塗膜の上に、淡彩色のベースコート塗料を塗装して焼き付け、JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50以上である淡彩色のベースコート塗膜を形成する工程、(3)該ベースコート塗膜上に、(A)水酸基を含有するポリエステル樹脂又は水酸基を含有するアクリル樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して60〜95質量%、(B)メチル化メラミン樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、(C)沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜3質量部、及び(D)濃彩色の顔料及び/又は染料を塗料中の総固形分量に対して固形分換算で0.05〜1質量%を含有するちぢみ模様塗膜を形成するカラークリヤー塗料を塗装して焼き付け、カラークリヤー塗膜を形成する工程、及び(4)該カラークリヤー塗膜上にクリヤー塗料を塗装して焼き付け、クリヤー塗膜を形成する工程からなることを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
また、本発明は、上記複層塗膜形成方法において、金属素材が、表面に化成処理が行われてなる金属素材である複層塗膜形成方法を提供するものである。
また、本発明は、上記複層塗膜形成方法において、濃彩色の顔料及び/又は染料が、濃度20質量%(固形分換算)におけるカラークリヤー塗膜の明度(L*値)が40以下を示す顔料及び/又は染料である複層塗膜形成方法を提供するものである。
さらに、本発明は、上記複層塗膜形成方法により得られた塗装物品を提供するものである。
本発明の複層塗膜形成方法により、金属素材等の基材の表面に意匠性に優れた、ひび割れ感を有する陶器調塗膜を得ることができる。
本発明の複層塗膜形成方法に用いるベースコート塗料は、水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂及び硬化剤を含有することが好ましい。
水酸基を含有するアクリル樹脂の好ましい水酸基価は30〜120mgKOH/gであり、より好ましくは40〜100mgKOH/gである。水酸基価が30mgKOH/g未満の場合には耐水性等が不十分であり、120mgKOH/gを超える場合には耐衝撃性が不十分である。また、水酸基を含有するアクリル樹脂の数平均分子量は、1,000〜30,000が好ましく、より好ましくは、3,000〜20,000である。数平均分子量が、1,000未満の場合には耐水性が不十分であり、30,000を超える場合には塗膜の平滑性が低下する。
水酸基を含有するアクリル樹脂は、ラジカル重合法などの公知の方法を用いて得られる。好適な水酸基を含有するアクリル樹脂は、水酸基を含有する共重合可能なラジカル重合性単量体、及びその他の共重合可能なラジカル重合性単量体をラジカル重合することにより、得ることができる。ラジカル重合には、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
水酸基を含有する共重合可能なラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、アリルアルコール、アクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加物、メタクリル酸とバーサチック酸グリシジルエステルの付加物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。水酸基を含有するラジカル重合性単量体は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
水酸基を含有する共重合可能なラジカル重合性単量体の重合割合は、得られる水酸基を含有するアクリル樹脂の水酸基価が前記範囲になるように調整すればよい。
その他の共重合可能なラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。これらの単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノ吉草酸、1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物;メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノンペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、t−ブチルヒドロペルオキンド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシネオデカネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテートなどの有機過酸化物などが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤の配合量には、特に制限はないが、ラジカル重合性単量体の全量に対して0.01〜20質量%にすることが好ましい。また、ラジカル重合温度は、ラジカル重合開始剤の種類によってよって異なるが、50〜200℃の条件で行うことが好ましく、80〜160℃の条件で行うことがさらに好ましい。
上記の水酸基を含有するアクリル樹脂の製造において用いられる有機溶剤は、例えば、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メトキシプロピルアセテート、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等の含窒素系溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独であっても、あるいは2種以上の複数種類の混合溶剤であっても差し支えない。この際、水酸基を含有するアクリル樹脂の固形分濃度は樹脂の分散安定性を損なわない範囲において任意に選ぶことができるが、通常固形分濃度で10〜70質量%である。
本発明の複層塗膜形成方法のベースコート塗料に用いる水酸基を含有するポリエステル樹脂の好ましい水酸基価は30〜120mgKOH/gであり、より好ましくは40〜100mgKOH/gである。水酸基価が30mgKOH/g未満の場合には耐水性等が不十分であり、120mgKOH/gを超える場合には耐衝撃性が不十分である。また、水酸基を含有するポリエステル樹脂の数平均分子量は、1,000〜30,000が好ましく、より好ましくは3,000〜20,000である。数平均分子量が、1,000未満の場合には耐水性が不十分であり、30,000を超える場合には塗膜の平滑性が低下する。
ベースコート塗料に用いる水酸基を含有するポリエステル樹脂は、直接エステル化法、エステル交換法、開環重合法などの公知の方法を用いて得られる。
水酸基を含有するポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合により直接エステル化法にて合成する場合、多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの二塩基酸類及びそれらの無水物類、トリメリット酸、ピロメリット酸などの三価以上の多価カルボン酸類及びそれらの無水物類などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの三価以上の多価アルコール類などが挙げられる。
水酸基を含有するポリエステル樹脂は、また、多価カルボン酸の低級アルキルエステルと多価アルコールとのエステル交換による縮重合によっても得ることができる。さらに、水酸基を含有するポリエステル樹脂は、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン類の開環重合によっても得ることができる。
また、水酸基を含有するポリエステル樹脂としては、一般的に塗料用として市販されている水酸基を含有するポリエステル樹脂も使用できる。
このような水酸基を含有するポリエステル樹脂としては、たとえば、三井化学(株)製アルマテックスP−645、アルマテックスP−646、アルマテックスHMP−15、アルマテックスHMP25(いずれも商標)等が挙げられる。
これらの水酸基を含有するポリエステル樹脂は1種単独または2種以上の混合使用が可能である。
ベースコート塗料に用いる硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などから選ばれた少なくとも1種が用いられる。硬化剤が、メラミン樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物の場合には、ベースコート塗料は1液型塗料として取り扱われ、硬化剤が、ポリイソシアネート化合物の場合には、2液型塗料として取り扱われる。
ベースコート塗料に用いる硬化剤としてのメラミン樹脂は、従来公知のものが使用でき、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルメチル混合エーテル化メラミン樹脂などが挙げられる。
ブチルエーテル化メラミン樹脂の市販品の具体例としては、ユーバン21R(商品名、三井化学(株)製)、スーパーベッカミンG−821−60(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられ、メチルエーテル化メラミン樹脂及びブチルメチルエーテル化メラミン樹脂の市販品の具体例としては、サイメル327(商品名、日本サイテックインダストリーズ(株)製)、ニカラックMS−11(商品名、(株)三和ケミカル製)などを挙げることができる。
ベースコート塗料に用いる硬化剤としてのブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば無黄変型のポリイソシアネート化合物のブロック体が挙げられ、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物及びこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体を通常のイソシアネートブロック化剤、例えばフェノール、m−クレゾール、キシレノール、オフェノールなどのフェノール類、メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチルなどの活性水素含有化合物によりブロック化したものなどを挙げることができる。
ベースコート塗料に用いる硬化剤としてのポリイソシアネート化合物としては、例えば無黄変型のポリイソシアネート化合物などが挙げられ、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物及びこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体などを挙げることができる。
ベースコート塗料における水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂と、メラミン樹脂との混合割合は、樹脂固形分質量比で50/50〜90/10が好ましく、より好ましくは60/40〜80/20である。
水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂とメラミン樹脂との全樹脂固形分中のメラミン樹脂量が50質量%を超えると上塗り塗膜との付着性が低下し、10質量%未満では、耐水性等の塗膜性能が低下する。
本発明の複層塗膜形成方法のベースコート塗料における水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂と、ポリイソシアネート化合物またはブロック化ポリイソシアネート化合物との混合割合は、NCO/OHのモル比で0.5/1から2/1が好ましく、より好ましくは0.75/1〜1.5/1である。
イソシアネート基(NCO)の水酸基(OH)に対するモル比の割合が、0.5未満であると、耐水性等の塗膜性能が低下し、2倍を超えると上塗り塗膜との付着性が低下する。
ベースコート塗料では、さらに塗料を製造するにあたって、着色顔料、体質顔料などの顔料類を配合し、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤、硬化触媒、沈降防止剤などの塗料用添加剤を適宜組合せて配合することができる。
着色顔料としては、酸化チタン等の白色顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料、黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料、パーマネントオレンジ等の橙色顔料、赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料、コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料、フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などが挙げられる。
体質顔料としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシム、石膏、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などが挙げられる。
さらに、本発明の複層塗膜形成方法のベースコート塗料には、光輝性顔料を配合させることもできる。光輝性顔料としては、金属粉顔料及び/又はパール顔料があり、金属粉顔料は、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、鉛粉、亜鉛末、リン化鉄、パール状金属コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄などが挙げられる。
いずれの場合も本発明の複層塗膜形成方法のベースコート塗料は、JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50以上である淡彩色のベースコート塗膜を得ることができるベースコート塗料に限られる。この塗膜の明度(L*値)は、色差計を用いて測定する。この明度(L*値)の好ましい範囲は、50〜90である。
JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50未満であると、濃彩色のちぢみ模様を形成するカラークリヤー塗膜の色相とコントラストが得られずに同化し、本発明の目的である意匠性に優れた、ひび割れ感を有する陶器調塗膜を得ることが出来にくくなる。
本発明の複層塗膜形成方法に用いるカラークリヤー塗料は、塗膜のちぢみ模様を形成する塗料であり、(A)水酸基を含有するポリエステル樹脂又は水酸基を含有するアクリル樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して60〜95質量%、(B)メチル化メラミン樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、(C)沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜3質量部、及び(D)濃彩色の顔料及び/又は染料を塗料中の総固形分量に対して固形分換算で0.05〜1質量%を含有する。
カラークリヤー塗料に用いる水酸基を含有するポリエステル樹脂の好ましい水酸基価は、40〜200mgKOH/gでより好ましくは、60〜180mgKOH/gである。水酸基価が40mgKOH/g未満の場合には十分な硬化塗膜とはならないためちぢみ模様が形成しにくく、200mgKOH/gを超える場合には耐水性が不十分である。
また、水酸基を含有するポリエステル樹脂の好ましい数平均分子量は、1,000〜30,000が好ましく、より好ましくは、3,000〜20,000である。数平均分子量が、1,000未満の場合には耐水性が不十分であり、30,000を超える場合には塗膜の平滑性が低下する。
また、水酸基を含有するポリエステル樹脂の含有量は、固形分として、(A)成分の水酸基を含有するポリエステル樹脂及び(B)成分のメチル化メラミン樹脂の合計量(樹脂成分)に対して60〜95質量%であり、より好ましくは65〜85質量%である。水酸基を含有するポリエステル樹脂の固形分が60質量%未満の場合には、水酸基を含有するポリエステル樹脂とメチル化メラミン樹脂との反応が不十分となり、焼付け条件のフレにより塗膜のちぢみ模様が形成され難くなる。また、水酸基を含有するポリエステル樹脂の固形分が95質量%を超える場合には、メチル化メラミン樹脂量が少なく過ぎるため十分架橋反応が生ぜず、塗膜のちぢみ模様を得ることが出来ない。
カラークリヤー塗料に用いる(A)成分の水酸基を含有するポリエステル樹脂は、(B)成分のメチル化メラミン樹脂のメトキシ基と反応する官能基としての水酸基を含有するポリエステル樹脂であり、一般に塗料用として使用されるポリエステル樹脂が使用できる。このようなポリエステル樹脂としては、たとえば油変性ポリエステル樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、シリコン変性ポリエステル樹脂などが挙げられ、上述のベースコート塗料に用いるポリエステル樹脂と同じ樹脂を使用することができる。
カラークリヤー塗料に用いる(A)成分の水酸基を含有するアクリル樹脂の好ましい水酸基価は40〜200mgKOH/gであり、より好ましくは60〜180mgKOH/gである。水酸基価が40mgKOH/g未満の場合には十分な硬化塗膜とはならないためちぢみ模様が形成しにくく、200mgKOH/gを超える場合には耐水性が不十分である。
また、水酸基を含有するアクリル樹脂の好ましい数平均分子量は、1,000〜30,000が好ましく、より好ましくは、3,000〜20,000である。数平均分子量が、1,000未満の場合には耐水性が不十分であり、30,000を超える場合には塗膜の平滑性が低下する。
また、水酸基を含有するアクリル樹脂の含有量は、固形分として、(A)成分の水酸基を含有するアクリル樹脂及び(B)成分のメチル化メラミン樹脂の合計量(樹脂成分)に対して60〜95質量%であり、より好ましくは65〜85質量%である。また、水酸基を含有するアクリル樹脂の固形分が60質量%未満の場合には、水酸基を含有するアクリル樹脂とメチル化メラミン樹脂との反応が不十分となり、焼付け条件のフレにより塗膜のちぢみ模様が形成され難くなる。水酸基を含有するアクリル樹脂の固形分が95質量%を超える場合には、メチル化メラミン樹脂量が少なく過ぎるため十分架橋反応が生ぜず、塗膜のちぢみ模様を得ることが出来ない。
カラークリヤー塗料に用いる(A)成分の水酸基を含有するアクリル樹脂は、前記のベースコート塗料に用いる水酸基を含有するアクリル樹脂と同様な方法で得ることができる。
カラークリヤー塗料に用いる(B)成分のメチル化メラミン樹脂は、メチル化によるメトキシ基を有するメラミン樹脂であり、メトキシ基を3個以上含むもの、特にヘキサメトキシメチロールメラミンが好ましい。(B)成分のメチル化メラミン樹脂としては、一般に市販されているメチル化メラミン樹脂が使用できる。通常市販されているブチル化メラミン樹脂では、水酸基を含有するポリエステル樹脂との反応が遅く、塗膜のちぢみ模様を与えない。
このようなメチル化メラミン樹脂としては、たとえば、日本サイテックインダストリーズ(株)製のサイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル1130−266J、三和ケミカル(株)製のニカラックMW−30M、ニカラックMW−30、ニカラックMX−40、ニカラックMX−485、ニカラックMW−22、住友化学(株)製のスミマールM−100C、スミマールM−55、スミマールM−40S(いずれも商標)等が挙げられる。
これらのメチル化メラミン樹脂は1種単独または2種以上の混合使用が可能である。メチル化メラミン樹脂の含有量は、樹脂分(固形分)として、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、好ましくは15〜35質量%である。
カラークリヤー塗料中のメチル化メラミン樹脂の含有量が、5質%未満の場合は十分な硬化塗膜が得られず、ちぢみ模様が発生しにくい。また40質量%を超える場合には、焼付け条件のフレにより塗膜のちぢみ模様が得られ難い。
カラークリヤー塗料に用いる(C)成分の沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸は、スルホン酸を上記3級アミンの塩とすることにより、スルホン酸の触媒としての作用を一時的にブロックしたものである。すなわちスルホン酸は、(A)成分と(B)成分との反応触媒であって、反応時間を短縮し、塗膜の表面硬化と内部硬化との差が大きくして、塗膜のちぢみ模様を良好にするものであるが、3級アミンの塩とすることにより、この触媒作用は一時的にブロックされる。スルホン酸としては、たとえば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などが挙げられ、これらは1種単独または2種以上の混合使用が可能である。
沸点80〜150℃の3級アミンとしては、たとえば、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N´,N´−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチルピペリジン、ピリジン等が挙げられ、これらは1種単独または2種以上の混合使用が可能である。
3級アミンでブロックしたスルホン酸は次のようにして製造される。すなわち、過剰の3級アミンとスルホン酸を計量後容器に仕込み、20〜30℃で10〜20分間かきまぜて未反応のスルホン酸基を完全に塩の形にする。塩の形にした3級アミンでブロックしたスルホン酸を(A)成分、(B)成分と混合して、ちぢみ塗料を製造する。(C)成分の3級アミンでブロックしたスルホン酸は、塗膜のちぢみ模様の形成に必要であり、(A)成分及び(B)成分の合計量(樹脂成分)100質量部に対して0.2〜3質量部、好ましくは0.3〜2.8質量部用いる。3級アミンでブロックしたスルホン酸の含有量が樹脂成分100質量部に対して0.2質量部未満では良好な塗膜のちぢみ模様が得られず、3質量部を越える場合は十分な耐食性を得ることができない。
カラークリヤー塗料に用いる(D)成分の濃彩色の顔料及び/または染料は、本発明における塗膜の陶器調のひび割れ模様を鮮明にするために必要となる成分である。すなわち、カラークリヤー塗料は焼き付けることにより塗膜にちぢみ模様が生じる。このちぢみ模様の一例の平面図を図1に示す。この図1の点線の方向に切断した断面を拡大したものが図2の下図であり、図2の下図に示したようにカラークリヤー塗膜に膜厚差が生じている。その膜厚差のあるカラークリヤー塗膜の表面にクリヤー塗膜が覆われ、膜厚差を小さくしている。図2の下図の点線で囲んだ部分を拡大したものを、図2の上図に示すが、クリヤー塗膜は省略している。図2の上図中のA部は、ちぢみ模様となったカラークリヤー塗膜の突起部分である。図2の上図中のA部のようにカラークリヤー塗膜の膜厚が厚い部分に濃彩色の顔料又は染料(図2中では、黒丸として表示している。)の濃度が高くなることにより、鮮明な陶器調のひび割れ模様が発現するものである。
カラークリヤー塗料に用いる濃彩色の着色顔料及び/又は染料の種類を選択する基準は、着色顔料及び/又は染料の濃度が塗料中の総固形分量に対して20質量%(固形分換算)の塗膜における明度(L*値)が40以下であり、好ましくは15〜35である。明度(L*値)が40を超える場合は、ベースコート塗料との十分なコントラストが得られず、ひび割れ感のある意匠が得られない。濃彩色の着色顔料及び/又は染料の明度を測定するときに用いる樹脂についての規定は特にないが、上記のカラークリヤー塗料の(A)〜(C)成分では、ちぢみ模様が生じて、測定が難しいので、(B)成分をブチル化メラミン樹脂に置き換えて、(C)成分の酸触媒を加えない塗料を用いてもよく、あるいは、ベースコート塗料で用いた樹脂を用いてもよい。また、濃彩色の着色顔料及び/又は染料の濃度が20質量%未満では、塗膜の隠ぺい力が不足してしまうために好ましくない。塗膜を得る場合の素材は、アート紙のような白い紙が好ましく、乾燥塗膜厚が50μmとなるようにアプリケーターで塗布したのち、乾燥させた後に、塗膜の明度(L*値)をベースコート塗料の場合と同じく、色差計を用いて測定する。
カラークリヤー塗料に用いる濃彩色の着色顔料及び/又は染料としては黒色、青色、紫色、緑色、赤色、赤褐色、黄褐色を呈するものが望ましい。
着色顔料の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料、コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、フタロシアニングリーンなどの緑色顔料、赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色または赤褐色顔料、パーマネントオレンジ等の黄褐色顔料などが挙げられる。
カラークリヤー塗料に用いる染料としては、着色顔料と同様、黒色、青色、紫色、緑色、赤色、赤褐色、黄褐色を呈する濃彩色のものが好ましい。染料の種類としては、カラーにとして通常用いられるものであれば、特に制限はなく、例えば、特開平6−287488号公報、特開平8−134385号公報などに開示された有機溶剤に溶解する有色染料であればよい。ただし、耐候性を必要とする用途であれば、染料よりも着色顔料を用いることが好ましい。
カラークリヤー塗料に用いる顔料及び/または染料の添加量はカラークリヤー塗料中の総固形分量に対して固形分換算で、0.02〜1質量%が好ましく、0.03〜0.8質量%が特に好ましい。
顔料及び/または染料の添加量が0.02質量%未満の場合には、意匠性に優れたひび割れ模様が発現しない。また、1質量%を超える場合はカラークリヤー塗膜の色が濃くなりすぎることにより、ベースコート塗膜の色調を活かすことが出来なくなる。
カラークリヤー塗膜上に塗装するクリヤー塗料は、ちぢみ模様の塗膜を保護する効果以外に、カラークリヤー塗料を焼き付けたことによって生じるちぢみ模様のうち、比較的小さなちぢみ模様を目立たなくする効果があり、その結果、大きなちぢみ模様が浮き立ち、ひび割れ感を得ることができる。
本発明の複層塗膜形成方法に用いるクリヤー塗料は、水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂及び硬化剤を含有することが好ましい。
クリヤー塗料に用いる水酸基を含有するアクリル樹脂は、上述のベースコート塗料に用いる水酸基を含有するアクリル樹脂と同様な方法で得ることができる。
また、クリヤー塗料に用いる水酸基を含有するポリエステル樹脂は、上述のベースコート塗料に用いる水酸基を含有するポリエステル樹脂と同様な方法で得ることができる。
クリヤー塗料に用いる硬化剤としては、メラミン樹脂、ポリイソシネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などから選ばれた少なくとも1種が用いられる。硬化剤が、メラミン樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物の場合には、クリヤー塗料は1液型塗料として取り扱われ、硬化剤が、ポリイソシアネート樹脂の場合には、2液型塗料として取り扱われる。
クリヤー塗料に用いるメラミン樹脂、ポリイソシネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上述のベースコート塗料に用いるメラミン樹脂及びポリイソシネート樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物と同様な方法で得ることができる。
クリヤー塗料における水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂と、メラミン樹脂との混合割合は、樹脂固形分質量比で50/50〜90/10が好ましく、より好ましくは60/40〜80/20である。
水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂とメラミン樹脂との全樹脂固形分中のメラミン樹脂量が50質量%を超えると下塗り塗膜との付着性が低下し、10質量%未満では、耐水性等の塗膜性能が低下する。
クリヤー塗料における水酸基を含有するアクリル樹脂または水酸基を含有するポリエステル樹脂及びイソシアネート樹脂またはブロック化ポリイソシアネート樹脂との混合割合は、NCO/OHのモル比で0.5/1から2/1が好ましく、より好ましくは0.75/1〜1.5/1である。
イソシアネート基(NCO)の水酸基(OH)に対するモル比の割合が、0.5未満であると、耐水性等の塗膜性能が低下し、2倍を超えると下塗り塗膜との付着性が低下する。
クリヤー塗料には、透明性を阻害しない程度に着色顔料、アルミ、パール顔料などを配合することができ、また、艶消し剤としてシリカ、樹脂ビーズなどを配合することができ、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、硬化触媒などの塗料用添加剤を適宜組み合わせて配合することができる。
本発明の複層塗膜形成方法に用いるプライマーは、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有することが好ましい。
プライマーに用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものが好ましく、液状エポキシ、固体状エポキシ樹脂など従来より公知のものを特に制限なしに使用することができ、変性剤を用いて変性されたものも含まれる。変性剤としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖上または分岐したところの不飽和炭化水素鎖又は飽和炭化水素鎖を有するモノカルボン酸、コハク酸及びその無水物、マレイン酸及びその無水物、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びダイマー酸等のジカルボン酸、無水トリメリット酸、及び無水ピロメリット酸等の多価カルボン酸、カルボキシル基含有のビニル系共重合体等のカルボキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、並びにカプロラクトン等の環状エステル化合物等を挙げることができる。また、固体状エポキシ樹脂を使用する場合には、該樹脂を溶解もしくは分散可能な有機溶剤に溶解もしくは分散して使用する。
市販されているエポキシ樹脂としては、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1004、JER1007(いずれも商品名、ジャパンエポキシレジン(株)社製)、エポトートYD−134、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−7011R、エポトートYD−907(いずれも商品名、東都化成(株)社製)、D.E.R662E、D.E.R663UE、D.E.R664U、D.E.R667E(いずれも商品名、ダウケミカル社製)等のビスフェノール/エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂などが挙げられる。変性されたエポキシ樹脂としては、エピクロンP−439、エピクロンH−305−45(いずれも商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、アラキード9201N、アラキード9203N、アラキード9208(いずれも商品名、荒川化学工業(株)製)などが挙げられる。
プライマーに用いる硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリアミド樹脂、及びアミン系化合物などから選ばれた少なくとも1種が用いられる。硬化剤が、メラミン樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物の場合には、プライマーは1液型塗料として取り扱われ、硬化剤が、ポリアミド樹脂、アミン系化合物の場合には、2液型塗料として取り扱われる。
プライマーに用いる硬化剤としてのメラミン樹脂は、従来公知のものが使用でき、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルメチル混合エーテル化メラミン樹脂などが挙げられる。
ブチルエーテル化メラミン樹脂の市販されている例としては、ユーバン21R(商品名、三井化学(株)製)、スーパーベッカミンG−821−60(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。メチルエール化メラミン樹脂及びブチルメチルエーテル化メラミン樹脂の市販されている例としては、サイメル327(商品名、日本サイテックインダストリーズ(株)製)、ニカラックMS−11(商品名、(株)三和ケミカル製)などを挙げることができる
プライマーに用いる硬化剤としてのブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば無黄変型のポリイソシアネート化合物のブロック体であり、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物及びこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体を通常のイソシアネートブロック化剤、例えばフェノール、m−クレゾール、キシレノール、オフェノールなどのフェノール類、メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチルなどの活性水素含有化合物によりブロック化したものなどを挙げることができる。
プライマーに用いる硬化剤としてのポリアミド樹脂としては、通常、脂肪酸2量体(ダイマー酸)とジアミンを反応させた両末端にアミノ基を有する樹脂で、ダイマー酸とアミンとのモル比で分子量が調整される。
プライマーに用いる硬化剤としてのアミン系化合物としては、脂肪族ポリアミン、アミドポリアミンなどが用いられる。
プライマーに用いるエポキシ樹脂と硬化剤との含有比率は固形分質量比で60/40〜90/10が好ましく、75/25〜85/15であることが特に好ましい。
硬化剤の割合が、固形分比で10質量%未満の場合には、素材への付着性が不十分であり、40質量%を超える場合には、ベースコート塗膜の付着性が不十分である。
プライマーには、塗膜の耐食性を向上させる目的で、防錆顔料を用いることができる。防錆顔料としては、通常、下塗塗料に用いるものが使用できる。
具体的な防錆顔料としては、例えば、ジンククロメート、ストロンチウムクロメートなどのクロム系顔料、及びクロムを含まない無公害型の防錆顔料のいずれも使用できるが、環境保全の点から無公害型防錆顔料の使用が好ましい。
無公害型防錆顔料としては、例えばリン酸亜鉛系防錆顔料、リン酸マグネシウム系防錆顔料、燐酸アルミニウム系防錆顔料、リン酸カルシウム系防錆顔料、亜燐酸亜鉛系防錆顔料、亜燐酸マグネシウム系防錆顔料、亜燐酸カルシウム系防錆顔料、亜燐酸アルミニウム系防錆顔料等の縮合燐酸塩系防錆顔料、縮合燐酸塩の表面を金属化合物で処理した顔料;モリブデン酸亜鉛系防錆顔料、シアナミド亜鉛系防錆顔料、シアナミド亜鉛カルシウム系防錆顔料等の亜鉛系防錆顔料;シリカ等が挙げられる。これらは単独,あるいは2種類以上を混合し、使用できる。
プライマーには、防錆顔料以外の無機顔料、有機顔料、加工顔料等、従来から塗料用として使用される顔料が必要に応じて使用できる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、べんがら、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
本発明における、被塗物としての金属素材等の基材の形状は、板状であっても、成型されたものであってもよく、用途としては、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、AV機器、電子部品、車両の内外装パーツ、化粧品容器等が挙げられ、金属素材の種類としては、マグネシウム合金、アルミニウム合金、ステンレスが好ましく挙げられ、特にマグネシウム合金が好適である。ここでいうマグネシウム合金とは、JIS規格のAZ91Dなどが挙げられ、アルミニウム合金とは、JIS規格のADC12などが挙げられ、ステンレスとはJIS規格のSUS304などが挙げられる。
これらの金属素材には、プライマー塗料の塗装に先立ち、マグネシウム合金に対しては、溶剤、アルカリ、エマルション等による脱脂処理、さらに、酸洗い処理を経て、クロム酸系、リン酸マンガン系、有機吸着型等の化成処理を行い、アルミニウム、アルミニウム合金に対しては、脱脂処理、水洗処理、表面調整工程を経て、アルカリ-クロム酸塩系、クロム酸塩系、リン酸クロム酸塩系、リン酸亜鉛系の化成処理を行うことが好ましい。
また、ステンレスに対しては、脱脂処理、水洗処理後、クロメート処理、研磨、ショットブラスト、酸洗等を行う。さらに各化成処理済金属素材に必要に応じ粉体プライマー塗装などを行ってもよい。
本発明の複層塗膜形成方法では、上記のプライマーを塗装し焼付けた後、プライマー塗膜の上にベースコート塗料を塗装し焼付ける。更にカラークリヤー塗料を塗装し焼付けた後、クリヤー塗料を塗装し焼付ける。
プライマー、ベースコート塗料、カラークリヤー塗料、クリヤー塗料の塗装方法には、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装などを用いることができるが、スプレー塗装が好ましい。スプレー塗装をする場合に用いる塗料の希釈溶剤としては、芳香族系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤などの従来公知の溶剤を用いることができる。
プライマーを塗装する場合の塗料粘度は、イワタカップNK2(20℃)で、10〜30秒に調製することが好まし。プライマー塗膜の乾燥塗膜厚は、10〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。プライマ−塗膜の焼付け温度及び焼付け時間は、通常120〜200℃で、1〜60分間であればよい。
ベースコート塗料を塗装する場合の塗料粘度は、イワタカップNK2(20℃)で、7〜20秒に調製することが好ましい。ベースコート塗膜の乾燥塗膜厚は、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。ベースコート塗膜の焼付け温度及び焼付け時間は、通常120〜200℃で、1〜60分間であればよい。
カラークリヤー塗料を塗装する場合の塗料粘度は、イワタカップNK2(20℃)で、10〜30秒に調製することが好ましい。カラークリヤー塗膜の乾燥塗膜厚は、10〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。カラークリヤー塗膜の焼付け温度及び焼付け時間は、通常120〜200℃で、1〜60分間であればよい。
クリヤー塗料を塗装する場合の塗料粘度は、イワタカップNK2(20℃)で、10〜30秒に調製することが好ましい。クリヤー塗膜の乾燥塗膜厚は、10〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。クリヤー塗膜の焼付け温度及び焼付け時間は、通常120〜200℃で、1〜60分間であればよい。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
<塗膜の評価方法>
(1)ベースコート塗膜の明度(L*値):
色差計(コニカミノルタ社製、CR−300)を用いて、塗膜の色差を測定し、得られたL*値をいう。
(2)カラークリヤー塗膜の明度(L*値):
ベースコート塗料に用いた樹脂に、カラークリヤー塗料で用いた顔料又は染料をその濃度が塗料中の総固形分量に対して固形分換算で20質量%になるように分散し、得られた塗料をアプリケーターで乾燥塗膜厚が約50μmとなるように、白いアート紙に塗布し、乾燥させる。得られた塗膜を、色差計(コニカミノルタ社製、CR−300)を用いて、塗膜の色差を測定し、得られたL*値をいう。
(3)ちぢみ模様:
ベースコート塗膜、カラークリヤー塗膜、クリヤー塗膜からなる複層塗膜の外観を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全面にちぢみ模様を生じた。
×:ちぢみ模様が不均一、または、全く生じなかった。
(4)ひび割れ感:
ベースコート塗膜、カラークリヤー塗膜、クリヤー塗膜からなる複層塗膜の外観を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全面に美しいひび割れ模様を有する。
×:ひび割れ模様が不均一、または、全く生じなかった。
カラークリヤー塗料用アクリル樹脂A−1の製造
温度計、撹拌器、還流冷却器、滴下ロートを取り付けた四つ口フラスコに、キシレン45部、n−酢酸ブチルエステル22部を仕込み135℃に昇温した。次に、アクリル酸1.9部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル23.2部、スチレン30部、メタクリル酸n−ブチル36.3部、アクリル酸n−ブチル8.6部の重合性単量体の混合物に、ラジカル重合開始剤としてパーブチルZ(日油(株)製、登録商標)1部を混合して得られる混合物を滴下ロートより2時間かけて等速滴下した。滴下終了後、1時間還流温度を保ち、内容物を105℃まで冷却した。105℃まで冷却後、ラジカル重合開始剤(前出)0.2部とキシレン1部を滴下した。その後105℃の温度を3時間保ったところで重合反応を終了し、固形分60質量%、水酸基価100mgKOH/g、数平均分子量6000のカラークリヤー塗料用アクリル樹脂A−1を得た。
カラークリヤー塗料CC−1の製造
カラークリヤー塗料用アクリル樹脂A−1の55部に、シアニンブルーMG7(東洋インキ(株)製、商品名)0.1部を加え、酢酸エチルグリコールモノブチルエーテル/キシレン=50/50(質量比)の混合溶剤で粘調した後、アトライターを用いて粒度10μm以下に分散した。この分散ベースにカラークリヤー塗料用アクリル樹脂A−1の61.7部、サイメル303(日本サイテックインダストリーズ(株)製、メチル化メラミン樹脂、固形分100質量%、商品名)を30部を加え、更にN−メチルモルホリンでブロックしたパラトルエンスルホン酸0.5部を加え混合し、カラークリヤー塗料CC−1を得た。
カラークリヤー塗料CC−2〜CC−11の製造
表1及び表2に示した原料に変えた以外は、CC−1と同様に製造し、カラークリヤー塗料CC−2〜CC−11を得た。
Figure 2009172559
Figure 2009172559
<表1及び表2中の記号の説明>
ポリエステル樹脂:PE−2400(BASFコーティングスジャパン(株)製)、固形分60質量%、水酸基価101mgKOH/g、数平均分子量3,100
サイメル303:メチル化メラミン樹脂 日本サイテックインダストリーズ(株)製、固形分100質量%
ユーバン120:ブチル化メラミン樹脂(三井化学(株)製)、固形分95質量%
カーボンブラックFW−200:デグサ社製、黒色顔料、商品名
シアニンブルーMG7:東洋インキ(株)製、青色顔料、商品名
ホスターパームバイオレット:ヘキスト社製、紫色顔料、商品名
クロモファインレッド6601:大日精化(株)製、赤色顔料、商品名
ファストゲングリーン2YK:大日本インキ化学工業(株)製、緑色顔料、商品名
TITANIX JR−600E:テイカ(株)製、白色顔料(酸化チタン)、商品名
FANCHON FAST YELLOW Y−5688:バイエル社製、黄色顔料、商品名
ブロック化スルホン酸:N−メチルモルホリンでブロックしたパラトルエンスルホン酸
ベースコート塗料用アクリル樹脂A−2の製造
温度計、撹拌器、還流冷却器、滴下ロートを取り付けた四つ口フラスコに、キシレン45部、n−酢酸ブチルエステル22部を仕込み135℃に昇温した。次に、アクリル酸1.3部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル11.6部、スチレン30部、メタクリル酸メチル6.1部、メタクリル酸n−ブチル51.0部の重合性単量体の混合物に、ラジカル重合開始剤としてパーブチルZ(日油(株)製、登録商標)1部を混合して得られる混合物を滴下ロートより2時間かけて等速滴下した。滴下終了後、1時間還流温度を保ち、内容物を105℃まで冷却した。105℃まで冷却後、ラジカル重合開始剤(前出)0.2部とキシレン1部を滴下した。その後105℃の温度を3時間保ったところで重合反応を終了し、固形分60質量%、水酸基価50mgKOH/g、数平均分子量6000のベースコート塗料用アクリル樹脂A−2を得た。
白色ベースコート塗料BC−1の製造
分散容器に、ベースコート塗料用アクリル樹脂A−2の45部、酸化チタン25部、キシレン10部を加え、粒度が10μm以下になるまで分散した。目的の分散度になったら、分散を止め、表面調整剤モダフロー(モンサント(株)製、アクリル共重合体、加熱残分100質量%)0.2部、キシレン10部及び酢酸ブチル10部にて取り出しを行い、ディスパーで充分撹拌して均一にし、次に硬化剤として、ユーバン21R(ブチル化メラミン樹脂;三井化学(株)製、商品名、固形分50質量%)18部を加えて均一になるように撹拌し、白色ベースコート塗料BC−1を得た。
ライトブルー色ベースコート塗料BC−2の製造
白色ベースコート塗料BC−1において、分散する顔料を酸化チタン24部、シアニンブルー1部に置き換えた以外は、ベースコート塗料BC−1の製造方法と同様にして、ライトブルー色ベースコート塗料BC−2を得た。
ライトグリーン色ベースコート塗料BC−3の製造
ライトブルー色ベースコート塗料BC−2において、シアニンブルーをシアニングリーンに代えた以外は、ベースコート塗料BC−2の製造方法と同様にして、ライトグリーン色ベースコート塗料BC−3を得た。
ブルー色ベースコート塗料BC−4の製造
白色ベースコート塗料BC−1において、分散する顔料をシアニンブルー4部に置き換えた以外は、ベースコート塗料BC−1の製造方法と同様にして、ブルー色ベースコート塗料BC−4を得た。
黒色ベースコート塗料BC−5の製造
ブルー色ベースコート塗料BC−4において、シアニンブルーをカーボンブラックに代えた以外は、ベースコート塗料BC−4の製造方法と同様にして、黒色ベースコート塗料BC−5を得た。
クリヤー塗料C−1の製造
前記のアクリル樹脂A−1の45部に、ユーバン21R(ブチル化メラミン樹脂;三井化学(株)製、商品名、固形分50質量%)18部、表面調整剤モダフロー(モンサント(株)製、アクリル共重合体、加熱残分100質量%)0.2部、キシレン10部を加えて均一になるように撹拌し、クリヤー塗料C−1を得た。
<実施例1>
リン酸マンガン系化成処理(商品名「マグボンドP10」、日本パーカライジング(株)製)を施された市販のマグネシウム合金(Mg−Al−Zn系合金、JIS AZ91D相当)に、ベルファインプライマーNo.5000(商品名、BASFコーティングスジャパン(株)製、エポキシ樹脂/メラミン架橋型プライマー)を乾燥塗膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、160℃で20分間焼付けた。次に、ベースコート塗料BC−1を、希釈溶剤(キシレン/酢酸ブチル=50/50(質量比)の混合溶液)にて、イワタカップNK2で14秒(20℃)となるように粘度調整し、エアスプレーにより、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、140℃で20分間焼付けた。次に、カラークリヤー塗料CC−1を、希釈溶剤(キシレン/酢酸ブチル=50/50(質量比)の混合溶液)にて、イワタカップNK2で20秒(20℃)となるように粘度調整し、エアスプレーにより、乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼付けた。さらにクリヤー塗料C−1を、希釈溶剤(キシレン/酢酸ブチル=50/50(質量比)の混合溶液)にて、イワタカップNK2で16秒(20℃)となるように粘度調整した塗料をエアスプレーにより乾燥膜厚が30μmになるように塗装し160℃で20分間焼付けて、試験板を得た。塗膜評価結果を表3に示した。
<実施例2〜8>
表3に示したベースコート塗料及びカラークリヤー塗料に変えた以外は、実施例1と同様にして試験板を作成した。評価結果を表3に示した。
<比較例1〜8>
表4に示したベースコート塗料及びカラークリヤー塗料に変えた以外は、実施例1と同様にして試験板を作成した。評価結果を表4に示した。
Figure 2009172559
Figure 2009172559
表3に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜8では、金属素材の表面に意匠性に優れた、美しいひび割れ感を有する陶器調塗膜を得ることができる。
比較例1はメラミン種をブチル化メラミンに変えた例であり、良好なちぢみ模様が得られない。
比較例2、3ではカラークリヤー塗料に用いる着色顔料及び/又は染料の20質量%(固形分換算)の塗膜における明度(L*値)が40を超える(濃彩色ではなく、淡彩色)ことから、ベースコート塗料との十分なコントラストが得られず、ひび割れ感のある意匠が得られない。
比較例4、5では用いたベースコート塗膜の明度(L*値)が50未満であるため、濃彩色のちぢみ模様を形成するカラークリヤー塗膜の色相とコントラストが得られずに同化し、意匠性に優れたひび割れ感を有する陶器調塗膜を得ることが出来ない。
比較例6ではカラークリヤー塗料中の総固形分量に対して顔料濃度が0.05質量%以下であるため、ちぢみ模様の透明性が高いために美しい意匠を発現しない。
比較例7ではカラークリヤー塗料中の総固形分量に対して顔料濃度が3質量%であり、1質量%を超えているため、ベースコート塗膜の色調を活かすことが出来ず、美しい意匠が発現しない。
比較例8ではクリヤー塗料塗装をしていないため、塗膜表面の凹凸感がきつく陶器調の意匠とはならない。
図1は、本発明の陶器調のひび割れ模様の一例の平面図である。 図2は、図1の鎖線部の断面図である。図2の上図は、図2の下図の破線部を拡大した図である。黒丸部分は、濃彩色顔料又は染料である。図中のA部は、ちぢみ模様となったカラークリヤー塗膜の突起部分である。
符号の説明
1 素材
2 プライマー塗膜
3 ベースコート塗膜
4 カラークリヤー塗膜
5 クリヤー塗膜
6 濃彩色顔料又は染料
A カラークリヤー塗膜の突起部分

Claims (5)

  1. (1)淡彩色のベースコート塗料を塗装して焼き付け、JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50以上である淡彩色のベースコート塗膜を形成する工程、(2)該ベースコート塗膜上に、(A)水酸基を含有するポリエステル樹脂又は水酸基を含有するアクリル樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して60〜95質量%、(B)メチル化メラミン樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、(C)沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜3質量部、及び(D)濃彩色の顔料及び/又は染料を塗料中の総固形分量に対して固形分換算で0.02〜1質量%を含有するちぢみ模様塗膜を形成するカラークリヤー塗料を塗装して焼き付け、カラークリヤー塗膜を形成する工程、及び(3)該カラークリヤー塗膜上にクリヤー塗料を塗装して焼き付け、クリヤー塗膜を形成する工程からなることを特徴とする複層塗膜形成方法。
  2. (1)金属素材上に、プライマーを塗装し、硬化又は未硬化のプライマー塗膜を形成する工程、(2)該プライマー塗膜の上に、淡彩色のベースコート塗料を塗装して焼き付け、JIS Z 8729に規定されるL*、a*、b*表色系に基づく明度(L*値)が50以上である淡彩色のベースコート塗膜を形成する工程、(3)該ベースコート塗膜上に、(A)水酸基を含有するポリエステル樹脂又は水酸基を含有するアクリル樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して60〜95質量%、(B)メチル化メラミン樹脂を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量に対して5〜40質量%、(C)沸点80〜150℃の3級アミンでブロックしたスルホン酸を固形分換算で(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜3質量部、及び(D)濃彩色の顔料及び/又は染料を塗料中の総固形分量に対して固形分換算で0.02〜1質量%を含有するちぢみ模様塗膜を形成するカラークリヤー塗料を塗装して焼き付け、カラークリヤー塗膜を形成する工程、及び(4)該カラークリヤー塗膜上にクリヤー塗料を塗装して焼き付け、クリヤー塗膜を形成する工程からなることを特徴とする複層塗膜形成方法。

  3. 金属素材が、表面に化成処理が行われてなる金属素材である請求項2記載の複層塗膜形成方法。
  4. 濃彩色の顔料及び/又は染料が、濃度20質量%(固形分換算)におけるカラークリヤー塗膜の明度(L*値)が40以下を示す顔料及び/又は染料である請求項1〜3のいずれかに記載の複層塗膜形成方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の複層塗膜形成方法により得られた塗装物品。
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