JP2009172503A - 高分子乳化剤、及びこれを用いたポリオレフィン系樹脂エマルジョン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合性二重結合と親水性基とを、その両者間に4〜16個の原子を介在させて結合した構造を有する重合性単量体由来の構造単位を、共重合成分として、5〜20モル%含有し、かつ、ノニオン性界面活性基を有するノニオン性単量体由来の構造単位を、共重合成分として1〜20モル%含有し、かつ、その共重合体のフローテスターによる1/2法温度が40℃以上140℃以下である高分子乳化剤を用いる。
【選択図】なし
Description
そして、上記(B)成分のノニオン性界面活性基を有するノニオン性単量体として、下記式(1)で示されるノニオン性単量体を用いることができる。
R1−(CnH2nO)m−R2 …(1)
(式中、R1は、(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基から選ばれる基を示し、R2は、H又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示し、mは4〜25の整数を示す。)
この発明にかかる高分子乳化剤は、特定の重合性単量体由来の構造単位、かつ、ノニオン性界面活性基を有するノニオン性単量体を共重合性成分として有する共重合体を含有する乳化剤をいう。
上記の特定の重合性単量体(以下、「(A)成分」と称する。)とは、重合性二重結合と親水性基とを、その両者間に、最短で4〜16個の原子を介在させて結合した構造を有する重合性単量体をいう。
上記のノニオン性界面活性基を有するノニオン性単量体、すなわち(B)成分とは、下記に示すような、式(1)で示される化合物をいう。
R1−(CnH2nO)m−R2 …(1)
なお、式中、R1は、下記の2種類の基(a)及び(b)から選ばれる基を示し、R2は、H又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示し、mは4〜25の整数を示す。
(a)(メタ)アクリロイルオキシ基
(CH2=CH−COO− 又は CH2=C(CH3)−COO−)
(b)(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基
(CH2=CH−COO−CH2−CH2−O−
又は CH2=C(CH3)−COO−CH2−CH2−O−)
この発明にかかる高分子乳化剤を構成する共重合体は、上記(A)成分及び(B)成分由来の構造単位を有するが、この共重合体の原料となる共重合成分は、この(A)成分及び(B)成分以外に、カルボキシル基含有モノマー(以下、「(C)成分」と称する。)、アミノ基含有モノマー(以下、「(D)成分と称する。)、及び炭素数1〜22の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル(以下、「(E)成分」と称する。)を用いてもよい。
この発明にかかる高分子乳化剤を構成する共重合体における、上記(A)成分由来の構造単位の含有割合は、共重合性成分として5モル%以上が必要で、10モル%以上が好ましい。5モル%より少ないと、高分子乳化剤の乳化能力が低下する傾向がある。一方、含有割合の上限は、20モル%がよく、15モル%が好ましい。20モル%より多いと、高分子乳化剤の乳化能力が低下する傾向、及び得られる水性分散液の造膜温度が高くなり、得られる皮膜の低温接着性や透明性を悪化させることがある。
この発明にかかる高分子乳化剤を構成する共重合体は、下記の方法で製造することができる。
まず、上記の(A)成分〜(E)成分を所定の混合比率でそれぞれ秤量する。次に、重合器に各成分を別々に添加して重合するか、又は各単量体をあらかじめ混合した上で重合器に添加して重合する。これにより、共重合体を製造することができる。
このようにして得られた共重合体の溶融温度は、フローテスターによる溶融粘度測定において、1/2法温度が40℃以上であり、50℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましい。40℃より低いと、高分子乳化剤の乾燥皮膜がブロッキングしやすくなる傾向がある。一方、1/2法温度の上限は、140℃がよく、130℃が好ましい。140℃より高いと、低温造膜性が低下する傾向にある。
[不揮発分]
各製造例で得られた高分子乳化剤サンプル、又は実施例及び比較例で得られた各種エマルジョンサンプル約1gを精秤し熱風循環乾燥機105℃×3時間乾燥させた後、デシケーターの中で放冷しその重量測定した。そして、下記の式にしたがい、不揮発分を算出した。
不揮発分[%]=(乾燥後の試料の重量/乾燥前の試料の重量)×100
サンプルを室温乾燥24時間後、常温減圧下(真空乾燥機LHV−122(タバイエスペック(株)製)を使用)で5時間以上乾燥し、クロロホルム及びメタノールを加え、次にエステル化剤(トリメチルシリルジアゾメタンヘキサン溶液)を室温にて攪拌し溶解するまで放置した(48〜72時間)。その後、室温乾燥させた。
乾燥したサンプルをテトラヒドロフラン(THF)にて0.2%に調整し、これを試料とした。
上記試料を島津製作所(株)製:GPC−6Aを使用し、下記条件にて測定した。
・流速:1ml/min
・カラム:PLゲル10μmミックスB(ポリマー・ラボラトリー社製)
・標準試料:単分散PS(ポリマー・ラボラトリー社製)
・リファレンス:Sumilizer BHT(住友化学(株)製)
・検出器:RI,UV
実施例及び比較例で得られた各種エマルジョンサンプルを500mlのビーカーに取り、VISCOMETER TV−10M(東機産業(株)製、ローターNo.1)を使用し、回転数30rpm、液温25℃の条件下で測定した。
各製造例で得られた高分子乳化剤サンプル、又は実施例及び比較例で得られた各種エマルジョンサンプルをガラス電極式水素イオン濃度計 HM−14P(東亜電波工業(株)製)を使用し、試料を液温25℃に調整後、測定した。
実施例及び比較例で得られた各種エマルジョンサンプルをレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100(島津製作所(株)製)にて下記条件にて測定した。
・屈折率1.50−0.20i
・体積分布(メディアン径)
各製造例で得られた高分子乳化剤サンプルを室温下で24時間放置した後、室温下で真空乾燥を5時間実施し、これを約1g秤量して試料とし、高架式フローテスター(島津製作所(株)製:CFT−500)を用いて、1/2法温度を測定した。
具体的には、図1に示す高架式フローテスターを用いた。これは、垂直に立てたシリンダ2、このシリンダ2内部を上下動自在のプランジャー(ピストン)1,上記シリンダ2の下端に配されたダイ4、及びこのダイ4を固定するダイ押さえ5からなり、シリンダ2内のプランジャー1の先端面の面積Aは、1cm2であり、また、ダイ4に設けられたノズル(排出孔)は、直径1mm、長さ1mmである。
まず、シリンダ2内に上記の秤量された試料3を入れ、プランジャー1をシリンダ2内に挿入する。次いで、プランジャー1の上部に荷重Pとして、10kgfの荷重をかけ、この装置を昇温速度6.0℃/minとなるように加温する。
そして、温度とプランジャー1の降下量とを測定し、両者の関係をグラフ化した。その結果は、図2のプランジャー降下量−温度曲線(フローテスター流出曲線)に示すとおりである。この図2において、試料3がダイ4のノズルより流出する時点の温度を流出開始点(流動開始温度)とし、この流出開始点と、得られたS字曲線の最高点との間の高さをhとしたとき、h/2のときの温度を1/2法温度とした。
実施例及び比較例で得られた各種エマルジョンサンプルをOPPフィルム(グンゼ(株)製:膜厚50μm)のコロナ処理面にバーコーターにて膜厚10μmになるように塗布し、熱風循環乾燥機にて乾燥した。
80℃×5分間、又は120℃×5分間乾燥させたときのフィルム透明性を、下記の基準で、目視で判断した。
◎:透明性あり,△やや透明性あり,×:透明性なし
実施例及び比較例で得られた各種エマルジョンサンプルを、ポリプロピレン板(肉厚5mm)上に、乾燥後の皮膜の厚さが10μmとなるように、バーコーターNo.16を用いて塗布した。これを80℃オーブンで5分間加熱乾燥して、皮膜を得た。
得られた皮膜を、JIS−K5400(碁盤目剥離テープ法試験)に準拠し、すきま間隔5mmの碁盤目状の切り傷を付けた後、塗膜上にセロハンテープ(商品名、ニチバン(株)製)を貼り付けた。次いで、このセロハンテープを貼り付けてから1〜2分後、テープの一方の端を持って、直角に引き剥がし、下記の基準で接着性を評価した。
○:切り傷の交点と正方形の一目一目に、剥がれがなかった。
△:剥がれの面積は、正方形面積の65%未満であった。
×:剥がれの面積は、正方形面積の65%以上であった。
実施例および比較例で得られた各種エマルジョンサンプル100gを250mlのポリ瓶に入れ、及びイソプロパノール30gを添加して、撹拌子サイズが2.5cmのマグネチックスターラーで10分間攪拌した。
その後、25℃の恒温槽に3時間放置して、サンプル温度を25℃に設定し、ホモジナイザー((株)日音医理科器械製作所製)のジェネレーターをサンプル液内に漬け、2000rpmの回転数で10分間処理を実施した。処理後のサンプルの外観観察、及びサンプルをガラス板上に1g程度のせて、ガラス棒で引き延ばし、凝集物の有無を確認した。その結果を、下記の基準で評価した。
◎…変化は見られなかった
○…粘度がやや増大した
△…少量の凝集物または粘度が上昇した
×…凝集物発生またはクリーム状になった
[(A)成分]
・2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸…共栄社化学(株)製:ライトエステルHO−MS、以下「HOMS」と略する。
・ω−カルボキシ−ポリカプロラクタムモノアクリレート(nはほぼ2)…第一工業製薬(株)製:アロニックスM−5300、以下、「M−5300」と略する。
・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸…東亜合成化学工業(株)製:ATBS、以下、「ATBS」と略する。
・メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド鎖9個)…共栄社化学(株)製:ライトエステル130MA、以下「130MA」と略する。
・メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド鎖4個)…日本油脂(株)製:ブレンマーPME−200、以下「PME200」と略する。
・メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイド鎖13個)…日本油脂(株)製:ブレンマーPME−550、以下「PME550」と略する。
・アクリル酸…三菱化学(株)製、以下「AA」と略する。
・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート…三洋化成工業(株)製:メタクリレートDMA、以下「DMA」と略する。
・メチルメタクリレート…三菱レイヨン(株)製、以下「MMA」と略する。
・ラウリルメタクリレート…三菱レイヨン(株)製、以下「SLMA」と略する。
・ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドブロック共重合体…第一工業製薬(株)、U108、以下「U108」と略する。
・エチレン・酢酸ビニル共重合体…三井・デュポンポリケミカル(株)製、酢酸ビニル含有量:28重量%、融点:74℃、190℃におけるMI(メルトインデックス、荷重:2.16kg):150g/10分、以下「EVA」と略する。
・マレイン化ポリエチレン…エチレン・エチルアクリレート・無水マレイン酸共重合体、住友化学工業(株)製:ボンダインHX8210、無水マレイン酸含量:4重量%、MI:200g/10分、以下「MAH−PE」と略する。
・ポリプロピレン系樹脂…三井化学(株)製、タフマーXM−7070、以下「XM7070」と略する。
・イソプロパノール…(株)トクヤマ製、以下、「IPA」と略する。
(製造例1)
[モノマー調整]
50LのステンレスバケツにIPAを添加(添加量は、単量体合計量に対して、5重量%)、攪拌しつつ、氷浴にて冷却を開始した。続いて表1記載の量のMMA、SLMAを添加した。更に、表1記載の量のAA、130MA、HOMSの混合液を添加した。さらに表1記載量のDMAを温度が25℃を超えないように徐々に滴下して、モノマー混合液を作成した。
冷却管、窒素導入管、攪拌機及び滴下ロート及び加熱用ジャケットを装置した100L反応器に、IPA30Kgとイオン交換水20Kgを仕込み、攪拌しながら内温を80℃に調整した。反応容器を窒素置換後、上記モノマー混合溶液4Kgを一括投入した。さらに、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(大塚化学(株)製、以下「AIBN」と略する。)を0.4Kg添加し、重合を開始した。更に残りのモノマー混合液16Kgを4時間かけて滴下して重合を行った。4時間モノマー混合液の滴下を継続する途中で1時間おきに上記重合開始剤を4回、0.12Kgずつ添加した。モノマー混合液滴下終了後、2時間熟成した。
内温80から83℃まで上昇し、IPAを留去しながら水を添加して置換し、25%のアンモニア水(AA、130MA、HOMSの合計量の表1記載の中和度に相当にするように)中和した後、最終的に粘ちょうなアクリル共重合体の中和物の水溶液を得た。(収率97%)。
以下得られた高分子乳化剤を「高分子乳化剤1」と称する。
表1に記載の量の各単量体を用いた以外は、製造例1と同様の方法を用いて、高分子乳化剤2〜11を得た。なお、U108を用いる場合は、モノマー混合溶液を投入した後に、表1に記載の量のU108を投入した。
[ニーダーによるエマルジョンの製造]
EVA110gを異方向回転非噛合型2軸ニーダー((株)入江商会製:PBV-03型)に100℃溶融させ上記高分子乳化剤1を23g投入5分間混合に、さらにイオン交換水110gを投入し10分間混合し、得られた乳白色のエマルジョンを用いて評価を行った。その結果を表2に示す。
高分子乳化剤1の代わりに、高分子乳化剤2〜11を用いた以外は、実施例1と同様の操作を実施して、それぞれの乳白色のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンを用いて、評価を行った。その結果を表2に示す。
[スクリュー押出機(TEX−30)によるエマルジョンの製造]
EVA83g/minを同方向回転噛合型二軸スクリュー押出機((株)日本製鋼所製:TEX−30、2条ネジ深溝型、L/D=32)のホッパーより連続的に供給した。
また、同押出機のベント部に設けた供給口より、18g/minの高分子乳化剤3で連続的に供給し、同じ場所に101g/minの温水をプランジャーポンプで連続的に供給しながら、加熱温度(シリンダー温度、以下同じ)110〜130℃で連続的に押出し(スクリューの回転数300rpm)、乳白色のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンを用いて、評価を行った。その結果を表3に示す。
高分子乳化剤3の代わりに、高分子乳化剤5,6,9を用い、樹脂をMAH−PE、XM7070に変更した以外は、実施例10と同等の操作を実施して、それぞれの乳白色のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンを用いて、評価を行った。その結果を表3に示す。
2 シリンダ
3 試料
4 ダイ
5 ダイ押さえ
Claims (12)
- 重合性二重結合と親水性基とを、その両者間に4〜16個の原子を介在させて結合した構造を有する重合性単量体((A)成分)由来の構造単位を、共重合成分として、5〜20モル%含有し、かつ、ノニオン性界面活性基を有するノニオン性単量体((B)成分)由来の構造単位を、共重合成分として1〜20モル%含有し、かつ、その共重合体のフローテスターによる1/2法温度が40℃以上140℃以下である高分子乳化剤。
- 上記の重合性二重結合が、(メタ)アクリロイル基の二重結合である請求項1に記載の高分子乳化剤。
- 上記の親水性基が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、及び酸性リン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の高分子乳化剤。
- 上記(B)成分のノニオン性界面活性基を有するノニオン性単量体が、下記式(1)で示されるノニオン性単量体である請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子乳化剤。
R1−(CnH2nO)m−R2 …(1)
(式中、R1は、(メタ)アクリロイルオキシ基及び(メタ)アクリロイルオキシエトキシ基から選ばれる基を示し、R2は、H又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示し、mは4〜25の整数を示す。) - 上記(A)成分及び(B)成分以外の共重合成分として、カルボキシル基含有モノマーからなる(C)成分、アミノ基含有モノマーからなる(D)成分、炭素数1〜22の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルからなる(E)成分を用いる請求項1乃至4の何れかに記載の高分子乳化剤。
- 上記の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の各成分の構成比率が、モル比で、(A)/(B)/(C)/(D)/(E)=5〜20/1〜20/10〜40/5〜40/10〜50(但し、全ての合計量を100とする。)である請求項5に記載の高分子乳化剤。
- 上記の(A)成分と(C)成分との合計量、及び(D)成分の比率が、モル比で、((A)+(C))/(D)=1.0〜2.0である請求項5又は6に記載の高分子乳化剤。
- 上記の(A)成分及び(C)成分に含まれる酸性の親水性基の少なくとも一部が、塩基性物質によって中和されてなる請求項5乃至7のいずれかに記載の高分子乳化剤。
- ノニオン性高分子乳化剤の存在下で、重合して得られる、請求項1乃至8のいずれかに記載の高分子乳化剤。
- 上記ノニオン性高分子乳化剤が、ポリオキシアルキルエーテル系高分子乳化剤である請求項9に記載の高分子乳化剤。
- 請求項1乃至10のいずれかに記載の高分子乳化剤を用いポリオレフィン系樹脂を乳化してなるポリオレフィン系樹脂エマルジョン。
- 塗料用バインダー又は接着剤に使用される、請求項11に記載のポリオレフィン系樹脂エマルジョン。
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