以下、本発明の第一実施形態に係るリード線接続具(以下、単に接続具という)について、添付図面を参照しつつ説明する。
まず、本実施形態に係る接続具を取り付ける前提となる端子台について概略説明すると、本実施形態に係る接続具の対象となる端子台は、JIS C2811(工業用端子台)で定義されたねじ締付端子台を一例として挙げることができる。より具体的に説明すると、端子台は、図1に示す如く、一方向を長手にして延びるように形成されたベース101の上面を横方向に二つに仕切る第一仕切部102と、該第一仕切部102によって仕切られた二つの領域のそれぞれを長手方向に複数の領域に仕切る複数の第二仕切部103…とを備え、該第一仕切部102…及び第二仕切部103…によって区切られた各領域に電線Cを接続する端子接続部104…,105…が形成されている。
各端子接続部104…,105…は、導電体106と、該導電体106に螺着される端子ねじ107とを備えている。前記導電体106は、第一仕切部102を介して隣り合う端子接続部104…,105…の導電体106と電気的に接続されている。すなわち、かかる端子台100は、第一仕切部102を介して隣り合う端子接続部104…,105…に跨るように複数の導電体106がベース101の長手方向に並列をなしてベース101に内装されている。これにより、該端子台100は、単一な導電体106が第一仕切部102によって区切られた二つの領域の端子接続部104…,105…に跨って配置され、導電体106の半分が一方の端子接続部104…の一構成となり、該導電体106の残りの半分が他方の端子接続部105…の一構成となっている。
そして、前記導電体106には、端子ねじ107を螺合させるねじ穴(図示しない)が穿設されている。端子ねじ107は、導電体106のねじ穴に螺入されるねじ部(図示しない)と、該ねじ部の一端に連設された頭部107aとを備えている。該頭部107aは、丸みをもった形状に形成されており、ねじ部と接続されている付け根(端部)側が径方向内側に入り込んだ態様をなしている。
そして、各端子接続部104…,105…は、導電体106と端子ねじ107の頭部107aとで電線Cの導体(線材)又は該導体に接続された圧着端子Taを挟み込んで該電線Cと導電体106とを電気的に接続できるようになっている。なお、端子ねじ107の頭部107aと導電体106とで圧着端子Ta等を直接的に挟み込む場合や、座金108やワッシャに端子ねじ107を挿通し、該端子ねじ107を導電体106に螺合させて締め付けることで導電体106と座金108等とで圧着端子Taを間接的に挟み込む場合とがあるが、図1には、一例として、端子ねじ107を挿通した座金(角板状の座金)108と導電体106とで圧着端子Taを挟み込むようにした端子台100を示している。
本実施形態に係る接続具1は、上記構成の端子台100の端子ねじ107にリード線Lを接続するためのもので、図2乃至図4に示す如く、導電性を有する筒本体10と、該筒本体10の外周を被覆した電気絶縁性を有する筒状の被覆体20とを備えている。
前記筒本体10は、導電性のある金属材料で構成されており、本実施形態においては、鋼材(例えば、SK綱)が採用されている。
該筒本体10は、図3及び図4に示す如く、一端から他端に向けて延びるスリット12,12が周方向に間隔をあけて少なくとも二つ(本実施形態においては二つ)形成されている。各スリット12,12は、筒本体10の内外を貫通して形成されている。これにより、該筒本体10は、スリット12,12によって周方向に分断された分断部13,13が少なくとも二つ(本実施形態においてはスリット12,12の数に対応して二つ)形成されている。本実施形態に係る二つのスリット12,12は、互いに対向するように配置されている。このため、二つの分断部13,13は、互いに対向するように形成されている。すなわち、二つの分断部13,13は、筒本体10の軸心及びスリット12,12を通る仮想面(図示しない)を基準にして対称に形成されている。
該筒本体10は、一端側の内径が端子ねじ107の頭部107aの外径と略同一又はやや大径に設定され、端子ねじ107の頭部107aに係止可能な係止爪14,14が一端内周縁部に周方向に間隔をあけて少なくとも二つ(本実施形態においては二つ)突設されている。本実施形態においては、上述の如く、二つのスリット12,12を設けることで筒本体10の一端側が周方向に二分されて二つの分断部13,13が形成されているため、前記係止爪14,14は、筒本体10の一端である各分断部13,13の先端に設けられている。従って、本実施形態に係る筒本体10は、互いに対向した二つの係止爪14,14を備えている。各係止爪14,14は、筒本体10の内周に沿うように内側(筒本体10の中心)に向けて突設されており、筒本体10の径方向の内側に向けて先細りに形成されている。すなわち、各係止爪14,14は、筒本体10(分断部13,13)の内周面から中心に向けて突設されており、筒本体10の一端面と連続する端面と、筒本体10の内部から筒本体10の一端の中央(軸心)に向けて傾斜した傾斜面とを形成している。
このように、各係止爪14,14が筒本体10の内周に沿って形成されることにより、各係止爪14,14の先端エッジは、筒本体10の内周の曲率半径よりも小さな曲率半径の円弧状をなしている。すなわち、対向する係止爪14,14の先端エッジ間の間隔が端子ねじ107の頭部107aの外径よりも小さく、且つねじ部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、本実施形態に係る筒本体10は、少なくとも一端部(特に係止爪14,14)に対して焼き入れ処理が施されている。すなわち、本実施形態に係る筒本体10は、係止爪14,14に焼き入れ処理を施すことで、端子ねじ107の頭部107aと接触乃至係止する係止爪14,14の強度を高めている。
この焼き入れ処理は、分断部13,13の基端部側(接続部11と接続されている側)の硬度ができるだけ高くならないように、係止爪14’,14’及びその近傍の硬度が端子ねじ107の頭部107aよりも高くなるように行われる。これにより、分断部13,13の弾性変形を許容しつつ、係止爪14,14の剛性が高められている。
該筒本体10は、他端側がリード線Lを直接的又は間接的に接続する接続部11とされている。本実施形態に係る接続部11は、図5(a)及び図5(b)に示す如く、リード線Lの先端に接続された汎用のプラグ端子(いわゆる、バナナ端子)Tb及び汎用のクリップ(いわゆる、ワニ口型クリップ)Tcを接続できるように構成されている。
具体的には、前記接続部(筒本体10の他端部)11は、汎用のプラグ端子TbのプラグTの外周面が内周面に接触又は圧接した状態で挿入できる内径に設定されている。なお、汎用のクリップTcは、図5(b)に示す如く、互いに接離可能に設けられた一対のアゴ部C1,C2が互いに接近するようにバネ(図示しない)によって付勢されており、該一対のアゴ部C1,C2で対象物を挟み込むように構成されているため、前記接続部11は、一方のアゴ部C1を挿入できる内径にも設定されている。
本実施形態に係る筒本体10は、分断部13が接続部11よりも薄肉に形成されている。これにより、筒本体10は、鋼材で構成してもスリット12,12間に形成される分断部13,13が弾性変形し易いようになっている。本実施形態において、筒本体10の内部の穴は、一端側を端子ねじ107の頭部107aに外嵌でき、他端側をプラグ端子TbのプラグTを挿入できる径に設定される関係上、図4に示す如く、分断部13に対応する部位が接続部11の対応する部位よりも大径に設定された段付き穴状に形成されている。そのため、本実施形態に係る筒本体10は、分断部13が接続部11に比して薄肉になるように、一端から他端にかけて外径が均一に設定されている。なお、分断部13を接続部11よりも薄肉にするには、筒本体10の内径を一端から他端にかけて均一に設定し、接続部11の外径を分断部13に対応する部位よりも大径にしてもよいし、上述の如く、筒本体10の穴を段付き穴状に形成し、接続部11に対応する部位の外径を分断部13に対応する部位よりも大径にしても勿論よい。
前記被覆体20は、軟質材料で構成されており、本実施形態においては変形可能なビニル樹脂等の樹脂材料で形成されている。該被覆体20は、内周面が筒本体10の外周面に密着するように該筒本体10に外嵌されている。
本実施形態に係る被覆体20は、軸心方向の長さが筒本体10の軸心方向の長さよりもやや長く設定されており、一端を筒本体10の一端と同一レベルにして筒本体10に外嵌されている。これにより、被覆体20の他端部が筒本体10の他端よりも外側に延出している。該被覆体20は、筒本体10の外周に軟化した樹脂をコーティングして固化させることで形成してもよいが、本実施形態においては、上述の如く、他端側が筒本体10の他端から外側に延出する長さに設定されるため、筒本体10と別個に作製して筒本体10に外嵌されている。
次に、上記構成の接続具1の使用態様について図4を参照して説明する。まず、リード線Lを接続する端子台100の端子接続部104…,105…に本実施形態に係る接続具1を取り付ける。このとき、筒本体10の一端(係止爪14,14)を端子接続部104…,105…の端子ねじ107に押し付ける。そうすると、本実施形態に係る接続具1は、二つの係止爪14,14の先端エッジの間隔が端子ねじ107の頭部107aの外径よりも狭いため、上述のように端子ねじ107の頭部107aに対する係止爪14,14の押し付け力の反力が二つの係止爪14,14及び係止爪14,14が連設される分断部13,13の間隔を押し広げるように作用する。これにより、二つの係止爪14,14の間隔が拡がりつつ該係止爪14,14における端子ねじ107の付け根側への移動が許容される。このとき、分断部13,13の弾性力が作用しているため、係止爪14,14は端子台100の頭部107aに圧接しつつ移動することになるが、上述の如く、係止爪14,14が焼き入れ処理されているため、端子ねじ107の頭部107aに圧接しても破損することなく移動することになる。
そして、係止爪14,14が端子ねじ107の頭部107aの付け根側に到達すると、径方向に押し広げられた二つ分断部13,13の弾性力(復元力)の作用で係止爪14,14が端子ねじ107の頭部107aの付け根(本実施形態においては、座金108が介装されているため、端子ねじ107の頭部107aと座金108との間)に食い込むことになる。本実施形態において、上述の如く係止爪14,14の先端エッジが円弧状をなしているため、上述の如く、端子ねじ107と座金108との間に食い込んだ状態で、係止爪14,14の先端エッジが端子ねじ107のねじ部周りを包囲するように端子ねじ107の頭部107aの付け根側の端面に係止されることになる。
これにより、本実施形態に係る接続具1は、端子台100の端子ねじ107に対して強固に取り付けられることになる。また、上述の如く、係止爪14,14が端子ねじ107と座金108との間に食い込むと、係止爪14,14と端子ねじ107の頭部107a及び座金108とが高い面圧を作用させつつ接触することになるため、電気的にも良好な接続状態となる。すなわち、導電性のある係止爪14,14と端子接続部104…,105…の導電性のある端子ねじ107の頭部107aとの接触圧が高くなるため、大容量の電流を通電させることのできる接続状態となる。
そして、本実施形態に係る接続具1は、接続部11がプラグ端子TbのプラグTを圧入でき、クリップTcのアゴ部C1,C2を挿入できるように内径が設定されているため、図5(a)に示す如く、リード線Lに電気的に接続されたプラグ端子TbのプラグTを接続部11の穴に圧入したり、図5(b)に示す如く、リード線Lに電気的に接続されたクリップTcの一方のアゴ部C1を接続部11の穴に挿入し、外側に位置する他方のアゴ部C2とともに筒本体10の他端部(接続部11)を挟み込んだりすることで、リード線Lが接続具1(筒本体10)を介して端子台100の端子ねじ107に電気的に接続することができる。
以上のように、本実施形態に係る接続具1によれば、筒本体10に一端から他端に向けて延びるスリット12,12を形成して周方向に分断した分断部13,13を形成し、その一端内周縁部に係止爪14,14を突設するようにしたので、筒本体10を端子ねじ107の頭部107aに押し付けることで、係止爪14,14が大きな接触力を作用させつつ端子ねじ107の頭部107aに係止された状態にすることができ、大容量の電流を通電させることができる状態にして端子台100(端子ねじ107)に強固に取り付けることができる。また、本実施形態に係る接続具1は、端子台100に取り付けられた通電状態の端子ねじ107に対して取り付けることができるため、端子台100を含む電気回路を停電させることなくリード線Lを接続することができる。
さらに、筒本体10の外周が電気絶縁性を有する被覆体20によって被覆されているため、上述の如く端子台100に取り付けられた状態で周辺との電気的な接続が断絶され、短絡や地絡が防止される。また、本実施形態に係る筒本体10は、他端部に形成された接続部11が汎用のプラグ端子TbやクリップTcを接続できるように構成されているため、リード線Lの接続も非常に容易である。
また、前記筒本体10は、分断部13,13が接続部11よりも薄肉に形成されているので、スリット12,12間(分断部13,13)が弾性変形し易くなり、係止爪14,14を端子ねじ107の頭部107aに容易に係止させることができる。
次に、本発明の第二実施形態に係る接続具について説明する。なお、本実施形態に係る接続具についても、第一実施形態で説明した端子台100を前提としているため、端子台100については、第一実施形態を参酌することとして説明を割愛する。
本実施形態に係る接続具は、図6乃至図8に示す如く、導電性を有する筒本体10’と、該筒本体10’の外周を被覆した電気絶縁性を有する筒状の被覆体20’と、筒本体10’に対して軸心方向に移動可能に内装された移動体30’と、該移動体30’を筒本体10’の一端側に付勢する付勢手段40’と、筒本体10’及び被覆体20’に穿設された軸心方向に延びる貫通した長穴15’,21’から視認可能に前記移動体30’上に設けられた目印手段50’とを備えている。さらに、本実施形態においては、上記構成に加え、前記被覆体20’の他端側に外嵌された外装筒60’を備えている。
本実施形態に係る接続具1’の筒本体10’及び被覆体20’は、基本的な構成が第一実施形態の筒本体10及び被覆体20と共通している。
具体的に説明すると、本実施形態に係る筒本体10’は、金属材料で構成されており、本実施形態においては、鋼材(例えば、SK綱)が採用されている。
該筒本体10’は、一端から他端に向けて延びるスリット12’,12’が周方向に間隔をあけて少なくとも二つ(本実施形態においても二つ)形成されている。各スリット12’,12’は、筒本体10’の内外を貫通して形成されている。これにより、該筒本体10’は、スリット12’、12’によって周方向に分断された分断部13’,13’が少なくとも二つ(本実施形態においても二つ)形成されている。本実施形態に係る二つのスリット12’,12’は、互いに対向するように配置されている。このため、二つの分断部13’,13’は、互いに対向するように形成されている。すなわち、二つの分断部13’,13’は、筒本体10’の軸心及びスリット12’,12’を通る仮想面を基準にして対称に形成されている。
そして、本実施形態に係る筒本体10’には、前記目印手段50’を外部に露呈させるための長穴(以下、第一長穴という)15’が軸心方向に延びるように形成されている。本実施形態において、第一長穴15’は、筒本体10’の中心を挟んで対向するように二つ形成されている。本実施形態おいて、各第一長穴15’は、筒本体10’の他端側にあるスリット12’,12’の基端部に連続するように形成されている。
該筒本体10’は、一端側の内径が端子ねじ107の頭部107aの外径と略同一又はやや大径に設定され、端子ねじ107の頭部107aに係止可能な係止爪14’,14’が一端内周縁部に周方向に間隔をあけて少なくとも二つ(本実施形態においては二つ)突設されている。本実施形態においては、上述の如く、二つのスリット12’,12’を設けることで筒本体10’の一端側が周方向に二分されて二つの分断部13’,13’が形成されているため、前記係止爪14’,14’は、筒本体10’の一端である各分断部13’,13’の先端に設けられている。従って、本実施形態に係る筒本体10’においても、互いに対向した二つの係止爪14’,14’を備えている。各係止爪14’,14’は、筒本体10’の内周に沿うように内側(筒本体10’の中心)に向けて突設されており、筒本体10の径方向の内側に向けて先細りに形成されている。
このように、各係止爪14’,14’が筒本体10’の内周に沿って形成されることにより、各係止爪14’,14’の先端エッジは、筒本体10’の内周の曲率半径よりも小さな曲率半径の円弧状をなしている。すなわち、対向する係止爪14’,14’の先端エッジ間の間隔が端子ねじ107の頭部107aの外径よりも小さく、且つねじ部の外径よりも大きくなるように形成されている。そして、本実施形態に係る筒本体10’においても、少なくとも一端部(特に係止爪14’,14’)に対して焼き入れ処理が施され、係止爪14’,14’の強度を高めている。
該筒本体10’は、他端側がリード線Lを直接的又は間接的に接続する接続部11’とされている。本実施形態に係る接続部11’は、第一実施形態の接続部11’と同様に構成されており、汎用のプラグ端子Tb及びクリップTcを接続できるように構成されている。
そして、本実施形態に係る筒本体10’についても、分断部13’,13’が接続部11’よりも薄肉に形成されており、分断部13’,13’が径方向に容易に弾性変形できるようになっている。
前記被覆体20’は、軟質材料で構成されており、本実施形態においては変形可能なビニル樹脂等の樹脂で構成されている。該被覆体20’は、内周面が筒本体10’の外周面に密着するように該筒本体10’に外嵌されている。
本実施形態に係る被覆体20’は、軸心方向の長さが筒本体10’の軸心方向の長さよりも長く設定されており、一端を筒本体10’の一端と同一レベルにして筒本体10’に外嵌されている。これにより、被覆体20’の他端部が筒本体10’の他端よりも外側に延出している。そして、該被覆体20’は、目印手段50’を外部に露呈させるべく、筒本体10’の第一長穴15’の配置に対応して軸心方向に延びる貫通した長穴(以下、第二長穴という)21’が穿設されている。
前記移動体30’は、外径が筒本体10’の内径(小径な穴の内径)よりも小さく設定された円柱形状に形成され、筒本体10’の小径な穴内に内装されている。該移動体30’は、一端面が筒本体10’の一端面と同レベル又は該一端面よりもやや内側に位置する第一の規定位置Aと、該第一の規定位置Aよりも軸心方向において筒本体10’の他端側にある第二の規定位置Bとの間で移動自在に設けられている。前記第一の規定位置Aは、筒本体10’の一端側を端子ねじ107の頭部107aに押し付けた状態(例えば、対向する係止爪14’,14’同士が僅かに離間した状態)で、端子ねじ107の頭部107aに移動体30’の一端面が当接する位置に設定され、第二の規定位置Bは、端子ねじ107の頭部107aに筒本体10’が外嵌され、係止爪14’,14’が完全に係止された状態で端子ねじ107の頭部107aに移動体30’の一端面が当接する位置に設定されている。
そして、該移動体30’には、前記目印手段50’を取り付けるための穴31’が、該移動体30’の軸心と直交するように貫通して形成されている。該穴(貫通穴)31’は、移動体30’が第一の規定位置Aに位置するときに、筒本体10’及び被覆体20’の長穴15’,21’(第一長穴15’及び第二長穴21’)の長手方向の一端部(筒本体10’の一端側にある端部)と重なるように形成されている。なお、前記第一長穴15’及び第二長穴21’は、移動体30’が第一の規定位置Aと第二の規定位置Bとの間で移動可能となることを前提に、移動体30’が第二の規定位置Bに位置するときに貫通穴31’が長手方向の他端部(筒本体10’の他端側にある端部)に重なるように長さ設定されている。
付勢手段40’は、移動体30’を端子ねじ107の頭部107aに当接させることを目的とするものではなく、常態において移動体30’を第一の規定位置Aに位置させるためのものである。従って、該付勢手段40’は、移動体30’を第一の規定位置Aの押しやる最小限の付勢力を発揮させるように設定されている。このことから、本実施形態に係る付勢手段40’には、バネ定数の小さなコイルバネが採用されており、移動体30’と筒本体10’の内部の段差(大径の穴と小径の穴との間に形成される段差)との間に介装されている。これにより、常態において、移動体30’は、付勢手段40’による付勢によって筒本体10’の一端側に付勢され、第一の規定位置Aに位置している。
本実施形態に係る目印手段50’は、移動体30’の軸心に対して交差方向(直交方向)に該移動体30’の外周面から延出し、筒本体10’の第一長穴15’内に内挿されている。より具体的には、本実施形態に係る目印手段50’は、移動体30’の外径よりも長い棒体で構成されており、移動体30’に穿設された貫通穴31’に挿入されることで移動体30’と交差するように設けられている。そして、目印手段50’は、筒本体10’に形成された互いに対向する第一長穴15’に両端部が挿入されている。これにより、目印手段50’は、移動体30’が第一の規定位置Aにあるときに、第一長穴15’の一端部に位置し、移動体30’が第二の規定位置Bにあるときに、第一長穴15’の他端部に位置するようになっている。
そして、本実施形態に係る目印手段50’は、被覆体20’の第二長穴21’及び外装筒60’の後述する第三長穴61’にまで挿入されており、外部にその存在を露呈させている。これにより、目印手段50’の配置が視認できるようになっている。
このように、目印手段50’は、移動体30’に対して交差するように設けられるとともに、その両端部が第一長穴15’に挿入されているため、付勢手段40’によって付勢された移動体30’が筒本体10’から脱落するのを防止しつつ第一の規定位置Aに位置決めする位置決手段としても機能している。
前記外装筒60’は、硬質な樹脂成形品であり、被覆体20’の他端側(他端側を含んだ部分)に外嵌されている。本実施形態において、外装筒60’は、被覆体20’の径方向の拡縮、すなわち、前記分断部13’,13’の離間(筒本体10’の一端側の拡径)を許容すべく、筒本体10’の一端側(スリット12’,12’の形成された部分)を躱すようにして筒本体10’に外嵌されている。そして、本実施形態に係る外装筒60’は、被覆体20’に対して第二長穴21’に重なるように外嵌されているため、目印手段50’を外部に露呈させるべく、軸心方向に延びる長穴(前記第三長穴)61’が第一長穴15’及び第二長穴21’に対応するように形成されている。
そして、該外装筒60’には、移動体30’が第一の規定位置Aにあることを表す第一目印Xと、移動体30’が第二の規定位置Bにあることを表す第二目印Yが外周面に設けられている。該第一目印X及び第二目印Yは、印刷等で設けられるものでは、図6においては三角印とされている。なお、第一目印Xは、長穴15’,21’,61’の一端部に対応した印で、第二目印Yは長穴15’,21’,61’の他端部に対応した印である。
従って、目印手段50’が第一目印Xに対応した配置であるときには、移動体30’が第一の規定位置Aに位置することを表し、目印手段50’が第二の目印に対応した配置であるときには、移動体30’が第二の規定位置Bに位置する、すなわち、係止爪14’,14’が端子ねじ107の頭部107aに完全に係止された状態であることを表すようになっている。
次に、上記構成の接続具1’の使用態様について図8(a)及び図8(b)を参照して説明する。まず、リード線Lを接続する端子台100の端子接続部104…,105…に本実施形態に係る接続具1’を取り付ける。このとき、外装筒60’を把持しつつ筒本体10’の一端(係止爪14’,14’)を端子接続部104…,105…の端子ねじ107に押し付ける。そうすると、本実施形態に係る接続具1’は、二つの係止爪14’,14’の先端エッジの間隔が端子ねじ107の頭部107aの外径よりも狭いため、上述のように端子ねじ107の頭部107aに対する係止爪14’,14’の押し付け力の反力が二つの係止爪14’,14’及び係止爪14’,14’が連設される分断部13’,13’の間隔を押し広げるように作用する。
これにより、二つの係止爪14’,14’の間隔が拡がりつつ該係止爪14’,14’における端子ねじ107の付け根側への移動が許容される。このとき、分断部13’,13’の弾性力が作用しているため、係止爪14’,14’は端子台100の頭部107aに圧接しつつ移動することになるが、上述の如く、係止爪14’,14’が焼き入れ処理されているため、端子ねじ107の頭部107aに圧接しても破損することなく移動することになる。また、移動体30’に端子ねじ107の頭部107aが当接し、第一の規定位置Aにあった移動体30’が第二の規定位置Bに向けて押されることになり、これに伴って目印手段50’についても第一目印Xの対応位置から第二目印Y側に移動することになる。
そして、係止爪14’,14’が端子ねじ107の頭部107aの付け根側に到達すると、径方向に押し広げられた二つ分断部13’,13’の弾性力(復元力)の作用で係止爪14’,14’が端子ねじ107の頭部107aの付け根(本実施形態においては、座金108が介装されているため、端子ねじ107の頭部107aと座金108との間)に食い込むことになる。本実施形態において、上述の如く係止爪14’,14’の先端エッジが円弧状をなしているため、上述の如く、端子ねじ107と座金108との間に食い込んだ状態で、係止爪14’,14’の先端部が端子ねじ107のねじ部周りを包囲するように端子ねじ107の頭部107aの付け根側の端面に係止されることになる。
これにより、本実施形態に係る接続具1’は、端子台100の端子ねじ107に対して強固に取り付けられることになる。また、上述の如く、係止爪14’,14’が端子ねじ107と座金108との間に食い込むと、係止爪14’,14’と端子ねじ107の頭部107a及び座金108とが高い面圧を作用させつつ接触することになるため、電気的にも良好な接続状態となる。すなわち、導電性のある係止爪14’,14’と端子接続部104…,105…の導電体である端子ねじ107の頭部107aとの接触圧が高くなるため、大容量の電流を通電させることのできる接続状態となる。この状態で、目印手段50’は、第二目印Yに対応した配置となるため、作業者は目印手段50’の配置により、係止爪14’,14’が端子ねじ107の頭部107aに完全に係止され、電気的にも良好に接続された状態であることを認識することができる。
そして、本実施形態に係る接続具1’は、接続部11’がプラグ端子TbのプラグTを圧入でき、クリップTcのアゴ部C1,C2を挿入できる内径に設定されているため、図9(a)に示す如く、リード線Lに電気的に接続されたプラグ端子TbのプラグTを接続部11’の穴に圧入したり、図9(b)に示す如く、リード線Lに電気的に接続されたクリップTcの一方のアゴ部C1を接続部11’の穴に挿入し、外側に位置する他方のアゴ部C2とともに筒本体10’の他端部(接続部11’)を挟み込んだりすることで、リード線Lが接続具1’(筒本体10’)を介して端子台100の端子ねじ107に電気的に接続することができる。
以上のように、本実施形態に係る接続具1’によれば、筒本体10’に一端から他端に向けて延びるスリット12’,12’を形成して周方向に分断した分断部13’,13’を形成し、その一端内周縁部に係止爪14’,14’を突設するようにしたので、筒本体10’を端子ねじ107の頭部107aに押し付けることで、係止爪14’,14’が大きな接触力を作用させつつ端子ねじ107の頭部107aに係止された状態にすることができ、大容量の電流を通電させることができる状態にして端子台100(端子ねじ107)に強固に取り付けることができる。また、本実施形態に係る接続具1’は、端子台100に取り付けられた通電状態の端子ねじ107に対して取り付けることができるため、端子台100を含む電気回路を停電させることなくリード線Lを接続することができる。
さらに、該接続具1’は、筒本体10’の外周が電気絶縁性を有する被覆体20’によって被覆されているため、上述の如く端子台100に取り付けられた状態で周辺との電気的な接続が防止され、短絡や地絡が防止される。また、本実施形態に係る筒本体10’は、他端部に形成された接続部11’を汎用品であるプラグ端子TbやクリップTcを接続できるように構成されているため、リード線Lの接続も非常に容易である。
また、前記筒本体10’は、分断部13’,13’が接続部11’よりも薄肉に形成されているので、スリット12’,12’間(分断部13’,13’)が弾性変形し易く、係止爪14’,14’を端子ねじ107の頭部107aに容易に係止させることができる。
また、本実施形態においては、移動体30’及び目印手段50’を設け、長穴15’,21’,61’から目印手段50’の配置を認識できるようにしたので、端子ねじ107の頭部107aに対して係止爪14’,14’が適正に係止されているかどうかも確実に把握することができる。これにより、接続具1’が脱落する虞のあるような態様で取り付けが完了することを確実に防止することができる。
さらに、電気絶縁性のある硬質な外装筒60’を被覆体20’に外装したので、当該接続具1’の電気絶縁性をさらに高めることができる上に、取り付け時に確実に把持することができる。
尚、本発明のリード線接続具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記各実施形態において、筒本体10,10’に二つのスリット12,12,12’,12’を設け、これによって二つの分断部13,13,13’,13’を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、スリット12,12,12’,12’を三つ以上形成し、筒本体10,10’の一端側にスリット12,12,12’,12’の数に対応した数の分断部13,13,13’,13’を形成するとともに、筒本体10,10’の周方向に間隔をあけて該筒本体10、10’の一端内周縁部に係止爪14,14’を設けるようにしてもよい。このようにしても、各分断部13,13,13’,13’を弾性変形させて端子ねじ107の頭部107aに係止爪14,14,14’,14’を係止させることができる。また、スリット12,12,12’,12’が筒本体10,10’の周方向で均等に配置されたものに限定されるものではなく、スリット12,12,12’,12’を筒本体10,10’の周方向で不均等に配置されたものであってもよい。
上記各実施形態において、二つの係止爪14,14,14’,14’を設けたが、これに限定されるものではなく、係止爪14,14,14’,14’を二つ以上設けてもよい。また、各係止爪14,14,14’,14’は互いに対向することのない周方向にずれた位置に設けるようにしてもよい。さらに、係止爪14,14,14’,14’は、分断部13,13,13’,13’のそれぞれの一端に係止爪14,14,14’,14’を設けたものに限定されるものではなく、例えば、何れかの分断部13,13,13’,13’に対して少なくとも二つの係止爪14,14,14’,14’を周方向に間隔をあけて設けてもよい。但し、接続具1の脱落を確実に防止するには、各分断部13,13,13’,13’の一端に係止爪14,14,14’,14’を設け、係止爪14,14,14’,14’を筒本体10,10’の周方向で均等に配置することが好ましいことは言うまでもない。
上記各実施形態において、筒本体10,10’(分断部13,13,13’,13’)の内周面に沿って係止爪14,14,14’,14’を形成したが、これに限定されるものではなく、係止爪14,14,14’,14’は、分断部13,13,13’,13’の一端の少なくとも一部から径方向内側に突出するように形成されればよい。但し、係止爪14,14,14’,14’は、端子ねじ107の頭部107aの付け根近傍に食い込む必要があるため、径方向内側に向けて先細りに形成されることは勿論のことである。
上記各実施形態において、被覆体20,20’の他端部が筒本体10,10’の他端よりも外側に延出するように構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、被覆体20,20’及び筒本体10,10’の他端を一致させるようにしても勿論よい。但し、被覆体20,20’の他端を筒本体10,10’の他端に一致させると、導電性のある筒本体10,10’の他端面が完全に露呈し、接続の対象としない電線Cが筒本体10,10’に接触してしまう可能性を考慮すれば、上記実施形態のように筒本体10,10’の端面を被覆体20,20’の内側に位置させることが好ましい。
上記各実施形態において、筒本体10,10’の接続部11,11’を筒状に形成し、その穴径をプラグ端子TbのプラグTの外径を基準に設定するようにしたが、例えば、接続部11,11’の他端部(接続部11,11’)の穴の内周面にねじ溝を設け、ねじ部材を螺入できるようにしてもよい。このようにすれば、リード線Lに接続された圧着端子Ta(例えば、丸型端子やY型端子を筒本体10,10’の端面とねじ部材とで挟み込んで接続できる接続部11,11’とすることができる。
上記各実施形態において、筒本体10,10’に一端から他端に向けて略同幅で真っ直ぐに延びるスリット12,12,12’,12’を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、一端から他端に向けて幅が拡大するスリット12,12,12’,12’を形成してもよい。このようにすれば、分断部13,13,13’,13’の基端部の周方向の幅が一端側よりも狭くなるので、端子ねじ107の頭部107aに係止爪14,14,14’,14’を形成させるときに分断部13,13,13’,13’が弾性変形し易い状態になる。このようにしても、筒本体10は金属材料で構成されることから分断部13,13,13’,13’には十分な復元力があり、係止爪14,14,14’,14’を確実に端子ねじ107の頭部107aに係止させることができる。
上記第一実施形態において、筒本体10の内部を段付き穴状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、一端から他端にかけて内径を同一に設定してもよい。但し、分断部13,13の弾性変形を許容するために全体が薄肉とされるため、取り付け時に把持する部分の強度が低下することを考慮すれば上記実施形態と同様にすることが好ましい。
上記第二実施形態において、外装筒60’を設け、取り付け時にこれを把持するようにしたが、外装筒60’は必要に応じて設ければよい。但し、端子ねじ107に取り付ける際に把持する部分の電気絶縁性や剛性を高めるには上記実施形態と同様にすることが好ましい。また、上記第二実施形態において、外装筒60’に第三長穴61’を設けたが、例えば、被覆体20’の第二長穴21’よりも他端側に外嵌するようにしてもよい。このようにしても、第一長穴15’及び第二長穴21’から目印手段50’を認識できる上に、端子ねじ107に取り付ける際に把持する部分の電気絶縁性や剛性を高めることができる。また、外装筒60’は、第一実施形態に係る接続具1に対して設けても勿論よい。
上記第二実施形態において、移動体30’に直交するように棒体からなる目印手段50’を挿通し、その目印手段50’の両端部を重なりあう第一長穴15’、第二長穴21’、及び第三長穴61’に挿入することで、移動体30’に対する位置決め機能を持たせるようにしたが、これに限定されるものではなく、目印手段50’は長穴15’,21’から視認できる構成であればよい。すなわち、目印手段50’は棒材で構成されたものに限定されるものではなく、例えば、移動体30’上に印刷や刻印等で設けたマーク等であってもよい。従って、目印手段50’をマークとする場合には、第一長穴15’、第二長穴21’、及び第三長穴61’は、それぞれ対向するように二つずつ設ける必要はなく、これらが重なり合うように一つずつ設けるようにしてもよい。但し、目印手段50’を長穴15’,21’,61’の配置に対応させるべく、移動体30’を第一の規定位置Aで位置決めする位置決手段を設け、目印手段50’を移動体30’に対して部分的に設ける場合には、目印手段50’が長穴15’,21’に対応した配置で維持するように移動体30’が軸心周りで回転するのを阻止する回り止めを設けることは言うまでもない。
1,1’…接続具、10,10’…筒本体、11,11’…接続部、12,12’…スリット、13,13’…分断部、14,14’…係止爪、15’…第一長穴(長穴)、20,20’…被覆体、21’…第二長穴(長穴)、30’…移動体、31’…貫通穴(穴)、40’…付勢手段、50’…目印手段、60’…外装筒、61’…第三長穴(長穴)、100…端子台、101…ベース、102…第一仕切部、103…第二仕切部、104,105…端子接続部、106…導電体、107端子ねじ、107a…頭部、108…座金、A…第一の規定位置、B…第二の規定位置、C…電線、C1,C2…アゴ部、L…リード線、T…プラグ、Ta…圧着端子、Tb…プラグ端子、Tc…クリップ、X…第一目印、Y…第二目印