JP2009167846A - スクリュー圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】スクリュー圧縮機における吐出脈動及びトルク変動を抑制する。
【解決手段】スクリュー圧縮機(1)は、複数の螺旋溝(41,41,…)が形成されたスクリューロータ(40)と、螺旋溝(41,41,…)に噛合するゲート(51,51,…)を有する複数のゲートロータ(50A,50B)とを備えている。スクリュー圧縮機(1)は、螺旋溝(41,41,…)とゲート(51,51,…)とで形成される複数の圧縮室(23,23,…)でガスを圧縮して、ゲートロータ(50A,50B)ごとに設けられた複数の吐出ポート(73,73)から冷媒を吐出する。このとき複数の吐出ポート(73,73)から冷媒を吐出するタイミングが、互いにずれている。
【選択図】図1

Description

本発明は、スクリュー圧縮機に関するものである。
従来より、冷媒や空気等のガスを圧縮する圧縮機として、1つのスクリューロータと該スクリューロータを収容するケーシングと2つのゲートロータとを備えたシングルスクリュー圧縮機が知られている(特許文献1参照)。
このスクリュー圧縮機は、スクリューロータに6つの螺旋溝が形成されている。そして、スクリューロータの軸を挟んで対称な位置に配置された2つのゲートロータのゲートが螺旋溝に噛合することによって、該螺旋溝とゲートとで区画される閉空間により圧縮室を形成している。詳しくは、スクリューロータの回転に伴って、ゲートが螺旋溝に噛合して、さらには螺旋溝内を終端に向かって相対的に進んでいくことによって、ガスの吸入、圧縮及び吐出を順次行う。
このように構成されたスクリュー圧縮機は、スクリューロータの軸回りにおいて、螺旋溝の始端側が一方のゲートロータによって閉じきられる圧縮室と、他方のゲートロータによって閉じきられる圧縮室とが形成される。そして、これら2種類の圧縮室に対応して、2つの吐出ポートが設けられている。すなわち、螺旋溝の始端側が一方のゲートロータによって閉じきられる圧縮室と、他方のゲートロータによって閉じきられる圧縮室とは、それぞれ別々の吐出ポートからガスを吐出している。
ここで、ガスを圧縮して圧縮室内が高圧になると、その圧力によりスクリューロータには大きな力が作用することになる。そして、上述の如く、スクリューロータの軸回りにおいて、ゲートロータの個数に応じた複数の圧縮室が形成される構成においては、ガスを圧縮するタイミングを各圧縮室の間で一致させることによって、スクリューロータの軸に作用する力をバランスさせている。
特開2002−202080号公報
ところで、スクリューロータが回転すると、それに伴ってゲートロータも回転し、各ゲートが隣接する螺旋溝に順次噛合していく。そうして、各螺旋溝においてガスの吸入、圧縮及び吐出が所定周期で行われる。その結果、各ゲートロータに対応した吐出ポートからは、圧縮されたガスが周期的に吐出され、吐出ポート近傍では吐出圧力が脈動する。
そして、上述の如く、各ゲートロータに対応する圧縮室におけるガスの吸入、圧縮及び吐出を同じタイミングで行うように構成すると、各吐出ポートからの吐出脈動のピークが互いに重なり合い、全体として大きな吐出脈動が発生してしまう。その結果、吐出脈動に起因する振動や騒音が大きくなってしまう。
また、スクリュー圧縮機においては、ガスの吸入、圧縮及び吐出に亘って、スクリューロータの回転トルクが変動し、ガスを圧縮するときに該回転トルクが最も大きくなる。
そして、上述の如く、各ゲートロータに対応する圧縮室におけるガスの吸入、圧縮及び吐出を同じタイミングで行うように構成すると、各圧縮室でガスを圧縮するタイミングも同時になる。その結果、各圧縮室におけるガスの圧縮に起因する回転トルクの変動のピークが重なり合い、全体としてのトルク変動が大きくなってしまう。その結果、最大トルクが大きなモータが必要になる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スクリュー圧縮機における吐出脈動及びトルク変動を抑制することにある。
第1の発明は、複数の螺旋溝(41,41,…)が形成されたスクリューロータ(40)と、該螺旋溝(41,41,…)に噛合するゲート(51,51,…)を有する複数のゲートロータ(50A,50B)とを備え、該螺旋溝(41,41,…)と該ゲート(51,51,…)とで形成される複数の圧縮室(23,23,…)でガスを圧縮して、該ゲートロータ(50A,50B)ごとに設けられた複数の吐出ポート(73,73)から該ガスを吐出するスクリュー圧縮機が対象である。そして、複数の上記吐出ポート(73,73)からガスを吐出するタイミングが、互いにずれているものとする。
前記の構成の場合、複数の上記吐出ポート(73,73)からガスを吐出するタイミングを互いにずらすことによって、各吐出ポート(73,73)からの吐出脈動のピークが互いに重なることを防止し、スクリュー圧縮機全体としての吐出脈動を抑制することができる。
また、吐出タイミングをずらすことによって、各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23)ごとのガスの圧縮タイミングもずれるため、各圧縮室(23)におけるガスの圧縮に起因するスクリューロータのトルク変動のピークが互いに重なることを防止し、スクリュー圧縮機全体としてのトルク変動を抑制することができる。
第2の発明は、第1の発明において、複数の上記ゲートロータ(50A,50B)は、上記スクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置されていると共に、複数の上記吐出ポート(73,73)は、上記スクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置されており、上記螺旋溝(41,41,…)の個数は、上記ゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍以外であるものとする。
仮に、螺旋溝(41,41,…)の個数がゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍であったとすると、ゲートロータ(50A,50B)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置された構成においては、一のゲートロータ(50A,50B)において或るゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置してガスを吐出しているときには、他のゲートロータ(50A,50B)においても或るゲート(51)が同様に螺旋溝(41)の終端部に位置してガスを吐出している。すなわち、ガスの圧縮及び吐出のタイミングが各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)で同時になってしまう。
それに対して、前記の構成の場合、複数のゲートロータ(50A,50B)をスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置すると共に、螺旋溝(41,41,…)の個数をゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍以外とすることによって、一のゲートロータ(50A,50B)において或るゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置してガスを吐出しているときには、他のゲートロータ(50A,50B)においてはゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置しておらず、ガスの圧縮及び吐出のタイミングを各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)ごとにずらすことができる。
その結果、複数の吐出ポート(73,73)からの吐出脈動を互いにずらすことができると共に、各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)でのガスの圧縮に起因するスクリューロータのトルク変動を互いにずらすことができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上流端が上記各吐出ポート(73,73)に連通する一方、下流端が合流する複数の吐出通路(17,17)をさらに備え、上記吐出通路(17,17)は、その通路長が互いに同じであるものとする。
前記の構成の場合、吐出通路(17,17)の通路長を等しくすることによって、各吐出通路(17,17)の下流端において合流するガスは、各吐出ポート(73,73)から吐出されたタイミングのまま、即ち、ずれたタイミングのまま合流する。その結果、吐出ポート(73,73)から吐出されたガスがそれぞれ吐出通路(17,17)を通って合流する際に、一の吐出ポート(73,73)から吐出されたガスの圧力と他の吐出ポート(73,73)から吐出されたガスの圧力とが干渉し合うことを防止し、スクリュー圧縮機の吐出仕事を増大させることを防止することができる。
第4の発明は、第1〜第3の何れか1つの発明において、上記各吐出ポート(73,73)から吐出されるガスの吐出圧力は、上記スクリューロータ(40)の回転に伴って所定周期で変化しており、複数の上記吐出ポート(73,73)のそれぞれからガスを吐出するタイミングは、上記所定周期を上記ゲートロータ(50A,50B)の個数で割った時間だけ各吐出ポート(73,73)間でずれているものとする。
前記の構成の場合、各吐出ポート(73,73)からの吐出脈動のピークを等間隔にずらすことができ、スクリュー圧縮機全体としての吐出脈動を平滑化させて可及的に抑制することができる。
また、各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)におけるガスの圧縮に起因するスクリューロータのトルク変動のピークも等間隔にずらすことができ、スクリュー圧縮機全体としのトルク変動を平滑化させて可及的に抑制することができる。
第5の発明は、第2の発明において、上記螺旋溝(41,41,…)の個数は、奇数である一方、上記ゲートロータ(50A,50B)の個数は、偶数であるものとする。
前記の構成の場合、ゲートロータ(50A,50B)の個数を偶数にすることによって、どの吐出ポート(73)にもスクリューロータ(40)の軸を挟んで対向する別の吐出ポート(73)が存在するようになる。それに加えて、螺旋溝(41,41,…)の個数を奇数にすることによって、スクリューロータ(40)の軸を挟んで対向する一方の吐出ポート(73)からガスが吐出されるタイミングと、他方の吐出ポート(73)からガスが吐出されるタイミングとが1/2周期ずれることになる。つまり、スクリューロータ(40)を挟んで対向する吐出ポート(73,73)同士で吐出脈動を打ち消し合うようになり、スクリュー圧縮機全体としての吐出脈動を可及的に抑制することができる。尚、ここでいう、「打ち消す」は、互いに差し引きさえすればよく、完全に相殺しない状態も含む意である。
そして、どの吐出ポート(73)にも、吐出タイミングが1/2周期ずれる対となる吐出ポート(73,73)が存在するということは、どのゲートロータ(50A)に対応する圧縮室(23)にも、ガスの圧縮タイミングが1/2周期ずれる対となるゲートロータ(50B)に対応する圧縮室(23)が存在するということになる。したがって、一のゲートロータ(50A)に対応する圧縮室(23)と、別のゲートロータ(50B)に対応する圧縮室(23)とでトルク変動を打ち消し合うようになり、スクリュー圧縮機全体としてのトルク変動を可及的に抑制することができる。
本発明によれば、ガスが吐出されるタイミングを複数の吐出ポート(73,73)間で互いにずらすことによって、各吐出ポート(73,73)からの吐出脈動のピークが互いに重なり合うことを防止し、スクリュー圧縮機全体としての吐出脈動を抑制することができる。
また、ガスが吐出されるタイミングを複数の吐出ポート(73,73)間で互いにずらすことによって、圧縮室(23)においてガスを圧縮するタイミングを各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)間でずらすことになり、圧縮室(23)でのガスの圧縮に起因するスクリューロータのトルク変動のピークが、各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)ごとにずれることになる。その結果、トルク変動のピークが互いに重なり合うことを防止し、スクリュー圧縮機全体としてのトルク変動を抑制することができる。
第2の発明によれば、複数の上記ゲートロータ(50A,50B)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置されたスクリュー圧縮機において、螺旋溝(41,41,…)の個数をゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍以外に設定することによって、ガスの吐出タイミングを各吐出ポート(73,73)でずらすことができる。
第3の発明によれば、各吐出ポート(73,73)に連通する複数の吐出通路(17,17)の通路長を互いに同じ長さにすることによって、各吐出ポート(73,73)から吐出されたガスが他の吐出ポート(73,73)の吐出を阻害することを防止し、吐出仕事を低減させることができる。
第4の発明によれば、複数の吐出ポート(73,73)からガスが吐出されるタイミングを、各吐出ポート(73,73)から吐出されるガスの吐出圧力が変化する周期をゲートロータ(50A,50B)の個数で割った時間ずらすことによって、各吐出ポート(73,73)からの吐出脈動のピークを等間隔にずらすことができ、スクリュー圧縮機全体としての吐出脈動を平滑化させて抑制することができる。同様に、圧縮室(23)でのガスの圧縮に起因するスクリューロータのトルク変動のピークを各ゲートロータ(50A,50B)に対応する圧縮室(23,23)ごとに等間隔にずらすことができ、スクリュー圧縮機全体としてのトルク変動を平滑化させて抑制することができる。
第5の発明によれば、複数の上記ゲートロータ(50A,50B)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置されたスクリュー圧縮機において、ゲートロータ(50A,50B)の個数を偶数にし、螺旋溝(41,41,…)の個数を奇数にすることによって、どの吐出ポート(73)にも、逆位相でガスを吐出する対となる吐出ポート(73)が存在するようになり、吐出脈動を互いに打ち消し合わせることができる。同様に、どのゲートロータ(50A)に対応する圧縮室(23)にも、逆位相でガスの圧縮を行う対となる別のゲートロータ(50B)に対応する圧縮室(23)が存在するようになり、トルク変動を互いに打ち消し合わせることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るスクリュー圧縮機(1)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮するためのものである。スクリュー圧縮機(1)は、図2,3に示すように、密閉型に構成されている。このスクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(20)とそれを駆動する電動機(図示省略)とが1つのケーシング(10)に収容されている。圧縮機構(20)は、駆動軸(21)を介して電動機と連結されている。また、ケーシング(10)内には、冷媒回路の蒸発器から低圧のガス冷媒が導入されると共に該低圧ガスを圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する高圧空間(S2)とが区画形成されている。
圧縮機構(20)は、1つのスクリューロータ(40)と、ケーシング(10)の一部を構成し且つ該スクリューロータ(40)を収容するスクリューロータ収容室(12)を区画形成する円筒壁(11)と、該スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50A,50B)とを備えている。
スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。駆動軸(21)の先端部は、圧縮機構(20)の高圧空間(S2)側(図2の右側)に位置する軸受ホルダ(60)に回転自在に支持されている。この軸受ホルダ(60)は、玉軸受(61)を介して駆動軸(21)を支持している。
図1,4に示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)は、円筒壁(11)に回転可能に嵌合しており、その外周面が円筒壁(11)の内周面と摺接する。スクリューロータ(40)の外周部には、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41,41,…)が複数形成されている。複数の螺旋溝(41,41,…)は等間隔で配置されている。
スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、該スクリューロータ(40)の軸方向における一端側(図4における左側)が始端となり、他端側(図4における右側)が終端となっている。また、スクリューロータ(40)は、軸方向一端面の周縁部がテーパー面に形成されている。そして、螺旋溝(41)の始端はテーパー面に開口する一方、螺旋溝(41)の終端はスクリューロータ(40)の外周面に開口し軸方向他端面には開口していない。
このスクリューロータ(40)は、始端側が低圧空間(S1)側を、終端側が高圧空間(S2)側を向くように、円筒壁(11)内に嵌合されている(図2参照)。そして、螺旋溝(41)は、始端部が低圧空間(S1)に開放しており、この開放部分が圧縮機構(20)の吸入ポート(24)になっている。
螺旋溝(41)は、ゲートロータ(50A(50B))の後述するゲート(51)の進行方向の前側に位置する第1側壁面(42)と、ゲート(51)の進行方向の後側に位置する第2側壁面(43)と、底壁面(44)とで構成されている。
本実施形態に係るスクリューロータ(40)には、図5に示すように、5つの螺旋溝(41,41,…)が形成されている。すなわち、螺旋溝(41,41,…)の個数は、ゲートロータ(50A(50B))の個数の整数倍以外に設定されている。換言すれば、螺旋溝(41,41,…)の個数nは、ゲートロータ(50A(50B))の個数mに対して、以下の式を満たすように設定されている。
n=am+b ・・・(1)
ただし、aは自然数、bはm未満の自然数である。
各ゲートロータ(50A(50B))は、長方形板状に形成された複数のゲート(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。ゲートロータ(50A(50B))は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている(図1を参照)。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50A(50B))のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50A(50B))は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ゲート(51)の裏面(背面ともいう)に当接している。
2つのゲートロータ(50A,50B)は、図3に示すように、円筒壁(11)の外側にスクリューロータ(40)を挟んで対称に配置されたゲートロータ収容室(13)内に収容されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ収容室(13)内の軸受ハウジング(13a)に玉軸受(13b,13b)を介して回転自在に支持されている。図3においては、左側に配置された第1ゲートロータ(50A)は、ロータ支持部材(55)が下方を向く姿勢で設置される一方、右側に配置された第2ゲートロータ(50B)は、ロータ支持部材(55)が上方を向く姿勢で設置されている。ゲートロータ収容室(13)とスクリューロータ収容室(12)とは、円筒壁(11)に形成されたスリット(図示省略)を介して連通しており、各ゲートロータ(50A(50B))は、ゲート(51,51,…)が円筒壁(11)のスリットを貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41,41,…)に噛み合うように配置されている。
さらに詳しくは、2つのゲートロータ(50A,50B)は、スクリューロータ(40)の軸回りにおいて等間隔に配置されている。本実施形態では、ゲートロータ(50A,50B)が2つであるため、該2つのゲートロータ(50A,50B)は、スクリューロータ(40)の軸を挟んで対象な位置に配設されている。このとき、各ゲートロータ(50A(50B))は、その表面がスクリューロータ(40)の回転方向に対向するように、即ち、スクリューロータ(40)の接線方向を向くように配設されている。
圧縮機構(20)では、ゲートロータ(50A(50B))のゲート(51)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛合することによって、円筒壁(11)の内周面と螺旋溝(41)とゲート(51)とで囲まれた閉空間により圧縮室(23)が形成される。すなわち、圧縮室(23)は、螺旋溝(41)と円筒壁(11)とで囲まれた筒状の空間を、螺旋溝(41)の始端側及び/又は終端側からゲート(51)で閉じることによって形成される。
ここで、スクリューロータ(40)の軸回りについてだけ考えると、ゲートロータ(50A,50B)を複数設けることによって、スクリューロータ(40)は軸回りにゲートロータ(50A,50B)の個数に応じて複数の領域に分割され、各領域においてそれぞれ圧縮室(23)が形成される。例えば、本実施形態では、2つのゲートロータ(50A,50B)が設けられているため、スクリューロータ(40)は、図3において、スクリューロータ(40)の回転方向において右側の第2ゲートロータ(50B)から左側の第1ゲートロータ(50A)までの領域、即ち、スクリューロータ(40)の軸よりも上方の領域と、スクリューロータ(40)の回転方向において左側の第1ゲートロータ(50A)から右側の第2ゲートロータ(50B)までの領域、即ち、スクリューロータ(40)の軸よりも下方の領域とにおいて圧縮室(23)が形成される。
尚、ゲートロータ(50A,50B)によって分割された各領域においては、各ゲートロータ(50A(50B))の複数のゲート(51,51,…)が隣接する複数の螺旋溝(41,41,…)に噛合するため、スクリューロータ(40)の軸方向に複数の圧縮室(23,23,…)が形成されている。
スクリュー圧縮機(1)には、容量制御機構としてスライドバルブ(7)が設けられている。このスライドバルブ(7)は、吐出ポート(73)及びバイパスポート(19a)を構成する。
スライドバルブ(7)は、ゲートロータ(50A(50B))の個数と同数だけ設けられている。すなわち、スライドバルブ(7)は、スクリューロータ(40)をゲートロータ(50A,50B)により軸回りに分割した複数の領域ごとに1つずつ設けられている。
スライドバルブ(7)は、図6に示すように、円柱を基本形状とし、該円柱の一部を切削した形状をしていて、軸方向一側に設けられたバルブ本体(71)と、軸方向他側に設けられたガイド部(77)と、バルブ本体(71)とガイド部(77)との間に設けられたポート部(72)とを有する。
上記バルブ本体(71)は、円柱の外周面の一部を軸方向に切り欠いて形成された凹曲面(71a)と、ポート部(72)との境界面であって軸方向に対して傾斜した傾斜面(71b)と、該傾斜面(71b)と軸方向反対側の面であって軸方向に対して直交する平面に形成された先端面(71c)とを有している。
上記ガイド部(77)は、バルブ本体(71)と同様に、円柱の外周面の一部を軸方向に切り欠いて形成された凹曲面(77a)を有している。
また、ガイド部(77)には、軸を挟んで凹曲面(77a)と反対側(以下、背面側ともいう)に、2つの第1及び第2切欠部(78a,78b)が形成されている。第1及び第2切欠部(78a,78b)のそれぞれは、軸方向に延びていて、断面略L字状に切り欠いて形成されている。さらに、ガイド部(77)には、これら2つの第1及び第2切欠部(78a,78b)に挟まれて背面側に突出する背面隔壁(78c)が形成されている。これら第1切欠部(78a)、第2切欠部(78b)及び背面隔壁(78c)は、ポート部(72)にも連続して形成されており、バルブ本体(71)側の端部は傾斜面(71b)まで延びている。
上記ポート部(72)は、吐出ポート(73)が形成されている。詳しくは、ポート部(72)は、該凹曲面(71a)及び凹曲面(77a)よりも径方向内側に陥没している。そして、背面側に向かって、第1切欠部(78a)に連通する第1ポート(74b)と、第2切欠部(78b)に連通する第2ポート(75b)とが形成されている。
上記凹曲面(71a)及び凹曲面(77a)の先端面は、径方向内側に凹陥していると共に、円筒壁(11)の内周面と略同じ曲率、即ち、スクリューロータ(40)の外周面の曲率と略同じ曲率を有する。すなわち、凹曲面(71a)及び凹曲面(77a)の先端面は、円筒壁(11)の内周面と共に、同一の円筒の内周面を形成する。
また、スライドバルブ(7)は、バルブ本体(71)から軸方向に延びるガイドロッド(79)と、ガイド部(77)から軸方向に延びる連結ロッド(85)とを有している。
このように構成された2つのスライドバルブ(7,7)は、ケーシング(10)の円筒壁(11)に形成された2つのスライドバルブ収容室(14,14)にそれぞれ軸方向にスライド可能に収容されている。2つのスライドバルブ収容室(14,14)は、図2,3に示すように、スクリューロータ(40)の軸回りにおいて、等間隔な位置(本実施形態では、軸心を挟んで対称な位置)であって、ゲートロータ(50A(50B))の表面に近接する位置に位置している。また、スライドバルブ収容室(14,14)は、スクリューロータ(40)の軸方向において、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の終端部に対応する位置に位置している。
各スライドバルブ収容室(14)は、スクリューロータ(40)の軸方向に延びる空間であって、図7に示すように、円筒壁(11)の外側に形成された扇形周壁(15)と該円筒壁(11)によって区画形成されている。尚、図7では、ケーシング(10)のうち円筒壁(11)及び扇形周壁(15)以外の部分は図示を省略している。この扇形周壁(15)は、円筒壁(11)から略径方向外側に延びる2つの側壁(15a,15b)と、これら2つの側壁(15a,15b)の先端を円弧状に繋ぐ円弧壁(15c)を有し、断面略扇形に形成されている。また、円弧壁(15c)には、周方向中央部において径方向内側に突出する軸方向隔壁(15d)が軸方向に延びて形成されている。さらに、円弧壁(15c)には、スライドバルブ(7)がスライドバルブ収容室(14)内へ収容されたときのバルブ本体(71)に対応する位置において径方向内側に突出する周方向隔壁(15f)が周方向に延びて形成されている。この周方向隔壁(15f)は、周方向において一方の側壁(15a)から他方の側壁(15b)まで延びている。また、軸方向隔壁(15d)は、この周方向隔壁(15f)まで延びている。
また、円筒壁(11)には、高圧空間(S2)側端面から低圧空間(S1)側へスリット状の開口部(16)が軸方向に延びて形成されている。この開口部(16)は、円筒壁(11)を該円筒壁(11)の径方向に貫通していて、スライドバルブ収容室(14)とスクリューロータ収容室(12)とを連通させている。この開口部(16)を形成する円筒壁(11)の開口端面のうち周方向に対向する2つの開口端面(16a,16b)は、軸方向隔壁(15d)の突出端面(15e)と共に、スライドバルブ収容室(14)内を軸方向に延びる仮想の円筒の内周面を形成している。この仮想の円筒は、スライドバルブ(7)に対応する(即ち、嵌合する)円筒である。
また、円筒壁(11)の開口端面のうち軸方向低圧空間(S1)側の開口端面(16c)は、軸方向に直交する平面に形成されていると共に、スライドバルブ(7)のガイドロッド(79)が嵌合するガイド孔(16d)が軸方向に穿孔されている。
上記スライドバルブ(7)は、高圧空間(S2)側からスライドバルブ収容室(14)内へ、バルブ本体(71)を先頭にして、円筒壁(11)の開口端面(16a,16b)及び円弧壁(15c)の軸方向隔壁(15d)の突出端面(15e)で形成される仮想の円筒内に挿入される。このとき、バルブ本体(71)は、円柱外周面が円筒壁(11)の開口端面(16a,16b)、軸方向隔壁(15d)の突出端面(15e)及び周方向隔壁(15f)の突出端面に摺接している。また、ガイド部(77)は、図8に示すように、凹曲面(77a)と第1切欠部(78a)との間の円柱外周面部分が開口端面(16a)に摺接し、凹曲面(77a)と第2切欠部(78b)との間の円柱外周面部分が開口端面(16b)に摺接し、背面隔壁(78c)の突出端面が軸方向隔壁(15d)の突出端面(15e)に摺接している。
こうして、スライドバルブ(7)がスライドバルブ収容室(14)内へ収容された状態において、スライドバルブ(7)の背面側には、円弧壁(15c)、側壁(15a,15b)及び周方向隔壁(15f)とスライドバルブ(7)とで吐出通路(17)が区画形成されている。そして、この吐出通路(17)は、扇形周壁(15)の軸方向隔壁(15d)とスライドバルブ(7)の背面隔壁(78c)とが摺接することによって、スライドバルブ(7)の第1切欠部(78a)が位置する第1吐出通路(17a)と、スライドバルブ(7)の第2切欠部(78b)が位置する第2吐出通路(17b)とに分割されている。これら第1及び第2吐出通路(17a,17b)は、高圧空間(S2)に開口している。
一方、スクリューロータ収容室(12)側においては、図9に示すように、スライドバルブ(7)の凹曲面(71a)が開口部(16)からスクリューロータ収容室(12)内へ露出し、円筒壁(11)の内周面と共に1つの円筒の内周面を形成している。このとき、スライドバルブ(7)の第1及び第2ポート(74b,75b)がスクリューロータ収容室(12)に開口している。その結果、スクリューロータ収容室(12)は、第1及び第2ポート(74b,75b)を介して第1及び第2吐出通路(17a,17b)と連通する。
また、円筒壁(11)の開口部(16)には、固定ポート(18)が形成されている。詳しくは、円筒壁(11)の開口端面(16b)のスクリューロータ収容室(12)側の端縁において、スライドバルブ(7)のポート部(72)に対応する部分には、図7に示すように、固定ポート(18)が形成されている。この固定ポート(18)は、スライドバルブ(7)の位置にかかわらず、スクリューロータ収容室(12)と第2吐出通路(17b)とを常時連通させている。
ガイド部(77)の凹曲面(77a)は、スライドバルブ(7)がスライドバルブ収容室(14)が収容されているときには、軸受ホルダ(60)の外周面に摺接している。こうして、ガイド部(77)の凹曲面(77a)が軸受ホルダ(60)の外周面に摺接することによって、スライドバルブ(7)は、軸回りに回転することが制限されながら、即ち、軸回りの姿勢が維持されながら、軸方向にスライドすることができる。その結果、バルブ本体(71)やポート部(72)がガス圧等で軸回りに回転して、スクリューロータ(40)の歯先面に干渉することを防止することができる。
ここで、円筒壁(11)の開口端面のうち軸方向低圧空間(S1)側の開口端面(16c)は、スライドバルブ(7)がスライドバルブ収容室(14)内へ収容されたときにバルブ本体(71)の先端面(71c)と密着するように構成されている。スライドバルブ(7)の先端面(71c)を円筒壁(11)の開口端面(16c)と密着させることによって、円筒壁(11)の開口部(16)がスライドバルブ(7)により閉じ切られた状態となる。
このとき、スライドバルブ(7)のガイドロッド(79)が開口端面(16c)のガイド孔(16d)にスライド自在に挿通されている。スライドバルブ(7)は、これらガイド孔(16d)及びガイドロッド(79)によって案内されながら、スライドバルブ収容室(14)内を軸方向に摺動する。
また、円筒壁(11)の外側には、開口部(16)と連通するバイパス通路(19)が形成されている(図2参照)。バイパス通路(19)は、開口部(16)の低圧空間(S1)側端部に開口している。このバイパス通路(19)は、スライドバルブ(7)の円柱外周面と摺接する周方向隔壁(15f)によって、第1及び第2吐出通路(17a,17b)と隔離されている。すなわち、図10に示すように、スライドバルブ(7)を軸方向にスライドさせて、該スライドバルブ(7)の先端面(71c)と円筒壁(11)の開口端面(16c)との隙間を空けることによって、開口部(16)の低圧空間(S1)側端部にバイパス通路(19)に連通するバイパスポート(19a)が形成される。バイパス通路(19)は低圧空間(S1)に連通していて、圧縮室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すため通路となっている。スライドバルブ(7)を軸方向に移動させてバイパスポート(19a)の開度を変更することによって、冷媒の一部が低圧空間(S1)へバイパスし、圧縮機構(20)の容量が変化する。
このように、円筒壁(11)に形成されたスライドバルブ収容室(14,14)それぞれにスライドバルブ(7,7)を収容することによって、スクリューロータ(40)の軸回りに等間隔な位置(本実施形態ではスクリューロータ(40)の軸を挟んで対称な位置)に2つの吐出ポート(73,73)が形成される。
これら吐出ポート(73,73)は、上述の如く、複数のゲートロータ(50A,50B)によりスクリューロータ(40)の軸回りに分割された複数の領域ごとに設けられている。換言すれば、吐出ポート(73,73)は、ゲートロータ(50A,50B)ごとに設けられている。
また、スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(7)をスライド駆動させるためのスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている。このスライドバルブ駆動機構(80)は、軸受ホルダ(60)に固定されたシリンダ(81)と、該シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、該ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、該アーム(84)とスライドバルブ(7)とを連結する連結ロッド(85,85)と、アーム(84)を圧縮機構(20)から離れる方向(図2の右方向)に付勢するスプリング(86)とを備えている。
スライドバルブ駆動機構(80)において、ピストン(82)の、圧縮機構(20)側(図2の左側)空間には低圧圧力が作用し、ピストン(82)の反圧縮機構(20)側(図2の右側)空間には高圧圧力が作用する。スライドバルブ駆動機構(80)は、ピストン(82)の両端面に作用するガス圧を調節することによって該ピストン(82)の動きを制御し、スライドバルブ(7)の位置を調整するように構成されている。
−運転動作−
前記シングルスクリュー圧縮機(1)の運転動作について説明する。
シングルスクリュー圧縮機(1)において電動機を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50A,50B)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を繰り返す。ここでは、スクリューロータ(40)の回転方向において第2ゲートロータ(50B)から第1ゲートロータ(50A)までの領域に形成される圧縮室(23)、即ち、螺旋溝(41)の始端側が第1ゲートロータ(50A)によって閉じ切られる圧縮室(23)について説明する。
図11(A)において、網掛けを付した螺旋溝(41)、即ち、圧縮室(23)は、始端部の吸入ポート(24)が低圧空間(S1)に開口している。また、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の下側に位置する第2ゲートロータ(50B)のゲート(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って圧縮室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が吸入ポート(24)を通じて圧縮室(23)へ吸い込まれる。
スクリューロータ(40)が更に回転すると、図11(B)の状態となる。同図において、網掛けを付した圧縮室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この圧縮室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の上側に位置する第1ゲートロータ(50A)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、圧縮室(23)内のガス冷媒が圧縮される。
なお、螺旋溝(41)内の圧縮室(23)が閉じきり状態となる位置にゲート(51)が到達した後において、ゲート(51)と螺旋溝(41)の側壁面(42,43)及び底壁面(44)とは物理的に擦れ合っている必要はなく、両者の間に微小な隙間があっても差し支えない。つまり、ゲート(51)と螺旋溝(41)の第1及び第2側壁面(42,43)及び底壁面(44)と間に微小な隙間があっても、この隙間が潤滑油からなる油膜でシールできる程度のものであれば、圧縮室(23)の気密性は保たれ、圧縮室(23)から漏れ出すガス冷媒の量は僅かな量に抑えられる。
スクリューロータ(40)が更に回転すると、図11(C)の状態となる。同図において、網掛けを付した圧縮室(23)は、吐出ポート(73)に開口し、吐出ポート(73)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となる。その結果、圧縮されたガス冷媒が吐出ポート(73)から吐出通路(17)へ流出し、吐出通路(17)を流れて、高圧空間(S2)へ流出していく。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると共に、螺旋溝(41)の吐出ポート(73)への開口面積が大きくなり、圧縮されたガス冷媒が螺旋溝(41)から押し出されてゆく。
尚、第1ポート(74b)から第1吐出通路(17a)へ流出したガス冷媒と、第2ポート(75b)から第2吐出通路(17b)へ流出したガス冷媒とは、高圧空間(S2)にて合流する。
こうして、圧縮室(23)では、スクリューロータ(40)の回転に応じて、吸入行程、圧縮行程及び吐出行程が行われる。
ここで、スクリューロータ(40)には複数の螺旋溝(41,41,…)が隣接して形成されており、スクリューロータ(40)及びゲートロータ(50A,50B)の回転に伴って、ゲートロータ(50A,50B)のゲート(51,51,…)が隣接する螺旋溝(41,41,…)に順次噛合していく。そのため、上述の吸入行程、圧縮行程及び吐出行程が該隣接する螺旋溝(41,41,…)において順次行われていく。その結果、スクリューロータ(40)の回転に応じた所定周期で、螺旋溝(41,41,…)が吐出ポート(73)に開口し、吐出ポート(73)から吐出されるガス冷媒の吐出圧力が該周期で変化する。
尚、吐出ポート(73)の形状や螺旋溝(41,41,…)の間隔及び幅によっては、吐出ポート(73)に開口直後の螺旋溝(41)と吐出ポート(73)から外れる直前の螺旋溝(41)とが吐出ポート(73)に同時に開口する場合もあり、この場合には、吐出ポート(73)からガス冷媒が継続的に吐出され続けることになる。その一方で、隣接する2つの螺旋溝(41,41)が吐出ポート(73)に同時に開口することがなく、必ず1つの螺旋溝(41)だけが吐出ポート(73)に開口する場合もあり、この場合には、吐出ポート(73)からガス冷媒が間欠的に吐出されることになる。いずれの場合であっても、吐出ポート(73)から吐出されるガス冷媒の吐出圧力は、螺旋溝(41,41,…)が吐出ポート(73)に開口する周期で変化する。
以上では、スクリューロータ(40)の回転方向において第2ゲートロータ(50B)から第1ゲートロータ(50A)までの領域に形成される圧縮室(23)について説明したが、スクリューロータ(40)の回転方向において第1ゲートロータ(50A)から第2ゲートロータ(50B)までの領域に形成される圧縮室(23)においても同様に、吸入行程、圧縮行程及び吐出行程が順次行われ、吐出ポート(73)からはスクリューロータ(40)の回転に応じた所定周期でガス冷媒が周期的に吐出される。
上述の如く、スクリュー圧縮機(1)では各吐出ポート(73)から周期的にガス冷媒が吐出されており、該吐出ポート(73)近傍ではガス冷媒の吐出に合わせて吐出圧力が周期的に脈動している。この吐出脈動は、スクリュー圧縮機(1)の振動及び騒音の原因ともなる。
また、スクリューロータ(40)の回転トルクは、ガス冷媒の吸入行程、圧縮行程及び吐出行程という1サイクル(以下、圧縮サイクルともいう)中に変動する。すなわち、吐出行程完了時から圧縮行程にかけてトルクが上昇し、圧縮行程の終盤でトルクが最大となる。そして、隣接する螺旋溝(41,41,…)のそれぞれでガス冷媒の圧縮サイクルが順次行われるスクリュー圧縮機(1)においては、スクリューロータ(40)の回転トルクも周期的に変動することになる。このトルク変動が大きくなると、スクリューロータ(40)を安定して回転させること、即ち、スクリュー圧縮機(1)の安定した動作が困難となる。
仮に、複数の吐出ポート(73,73)からのガス冷媒の吐出タイミングが一致していると、図12に示すように、複数の吐出ポート(73,73)から吐出されるガス冷媒の吐出脈動が互いに同位相で重なり合い、スクリュー圧縮機(1)全体として吐出脈動が大きくなってしまう。
また、複数の吐出ポート(73,73)からのガス冷媒の吐出タイミングが一致しているということは、ゲートロータ(50A,50B)によりスクリューロータ(40)の軸回りに分割された複数の領域(本実施形態では、スクリューロータ(40)の軸を挟んだ上下の領域)においてガス冷媒の圧縮サイクルのタイミングが一致することになる。こうして、ゲートロータ(50A,50B)により分割された複数の領域において、同じタイミングでガス冷媒の圧縮サイクルが行われると、各領域でのガス冷媒の圧縮サイクルに起因するスクリューロータ(40)のトルク変動が互いに同位相で重なり合い、スクリュー圧縮機(1)全体としてスクリューロータ(40)のトルク変動が大きくなってしまう。
それに対し、本実施形態では、複数(本実施形態では2つ)のゲートロータ(50A,50B)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置され且つ、ゲートロータ(50A,50B)と同数の吐出ポート(73,73)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置された構成において、螺旋溝(41,41,…)の個数をゲートロータ(50A(50B))の個数の整数倍以外に設定することによって、ガス冷媒が吐出されるタイミングを複数の吐出ポート(73,73)間でずらすようにしている。
仮に、複数のゲートロータ(50A,50B)及び吐出ポート(73,73)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置された構成において、螺旋溝(41,41,…)の個数がゲートロータ(50A(50B))の個数の整数倍である場合には、或る一のゲートロータ(50A(50B))のゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置しているときには、別のゲートロータ(50B(50A))のゲート(51)も別の螺旋溝(41)の終端部に位置している。つまり、複数の吐出ポート(73,73)間でガス冷媒を吐出するタイミングが一致することになる。これは同時に、複数のゲートロータ(50A,50B)によりスクリューロータ(40)の軸回りに分割された複数の領域において同じタイミングでガス冷媒が圧縮されていることを意味する。
つまり、螺旋溝(41,41,…)の個数をゲートロータ(50A(50B))の個数の整数倍以外に設定することによって、或る一のゲートロータ(50A(50B))のゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置しているときには、別のゲートロータ(50B(50A))のゲート(51)が別の螺旋溝(41)の終端部に位置しないようになる。その結果、複数の吐出ポート(73,73)間でガス冷媒の吐出タイミングがずれることになる。
こうして、複数の吐出ポート(73,73)間でガス冷媒の吐出タイミングをずらすことによって、複数の吐出ポート(73,73)から吐出されるガス冷媒の吐出脈動のピークが互いに重なり合うことを防止し、スクリュー圧縮機(1)全体としての吐出脈動を抑制している。
また、ガス冷媒の吐出タイミングをずらすことによって、ゲートロータ(50A,50B)によりスクリューロータ(40)の軸回りに分割された複数の領域におけるガス冷媒の圧縮タイミングを該領域間で互いにずらすことになる。その結果、スクリューロータ(40)のトルク変動のピークが互いに重なり合うことを防止し、スクリュー圧縮機(1)全体としてのトルク変動を抑制している。
さらに、螺旋溝(41,41,…)の個数をゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍以外に設定する構成において、ゲートロータ(50A,50B)及び吐出ポート(73,73)をスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置することによって、複数の吐出ポート(73,73)からガス冷媒が吐出されるタイミングを等間隔にずらしている。つまり、複数の吐出ポート(73,73)からの吐出脈動のピークが等間隔にずれ、スクリュー圧縮機(1)全体としての吐出脈動が平滑化される。同様に、スクリューロータ(40)のトルク変動のピークもゲートロータ(50A(50B))で分割された領域ごとに等間隔にずれることになり、スクリュー圧縮機(1)全体としてのトルク変動が平滑化される。
さらにまた、ゲートロータ(50A,50B)及び吐出ポート(73,73)の個数を偶数に設定することによって、各吐出ポート(73)は何れかの吐出ポート(73)とスクリューロータ(40)の軸を挟んで対向する位置に位置することなる。それに加えて、螺旋溝(41,41,…)の個数を奇数に設定することによって、スクリューロータ(40)の軸を挟んで対向する吐出ポート(73,73)間のガス冷媒の吐出タイミングが、各吐出ポート(73)からガス冷媒が吐出される周期、即ち、各吐出ポート(73)におけるガス冷媒の吐出圧力が変化する周期の1/2だけずれることになる。その結果、図13に示すように、スクリューロータ(40)の軸を挟んで対向する、第1ゲートロータ(50A)に対応する吐出ポート(73)と第2ゲートロータ(50B)に対応する吐出ポート(73)とから吐出されるガス冷媒の吐出脈動は、互いに逆位相で重なり合って打ち消し合い、スクリュー圧縮機(1)全体としては、僅かな吐出脈動が残ることになる。
また、複数の吐出ポート(73,73)には、それぞれ吐出通路(17,17)が接続されており、これら吐出通路(17,17)の高圧空間(S2)までの通路長は同じであるため、吐出ポート(73,73)から吐出されて吐出通路(17,17)へ流出したガス冷媒は、吐出ポート(73,73)から吐出されたタイミングと同じタイミングで高圧空間(S2)へ流出する。すなわち、複数の吐出通路(17,17)間でガス冷媒が高圧空間(S2)へ流出するタイミングがずれることになる。
したがって、本実施形態によれば、複数の吐出ポート(73,73)から冷媒が吐出されるタイミングを互いにずらすことによって、吐出ポート(73,73)からの吐出脈動のピークが互いに重なることを防止することができる。その結果、スクリュー圧縮機(1)全体としての吐出脈動を抑え、振動及び騒音を抑制することができる。
また、複数の吐出ポート(73,73)からの冷媒吐出タイミングをずらすことによって、各吐出ポート(73)に対応する圧縮室(23)ごとの冷媒の圧縮タイミングもずれる。つまり、複数のゲートロータ(50A,50B)によりスクリューロータ(40)の軸回りに分割された複数の領域ごとに冷媒を圧縮するタイミングがずれることになる。そのため、各領域におけるガス冷媒の圧縮サイクルに起因するスクリューロータ(40)のトルク変動のピークが互いに重なることを防止し、スクリュー圧縮機(1)全体としてのトルク変動を抑制することができる。
ここで、ゲートロータ(50A,50B)及び吐出ポート(73,73)がスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配設されたスクリュー圧縮機(1)において、螺旋溝(41,41,…)の個数をゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍以外の個数に設定することによって、或る一のゲートロータ(50A(50B))のゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置するとき(即ち、ガス冷媒を吐出しているとき)に、他のゲートロータ(50B(50A))のゲート(51)が螺旋溝(41)の終端部に位置しないようにすることができる。つまり、ガス冷媒の吐出タイミングを複数の吐出ポート(73,73)間でずらすことができる。
さらに、ゲートロータ(50A,50B)及び吐出ポート(73,73)をスクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置することによって、複数の吐出ポート(73,73)間でのガス冷媒の吐出タイミングを、各吐出ポート(73)における吐出圧力が変化する周期、即ち、各吐出ポート(73)からガス冷媒が周期的に吐出される周期をゲートロータ(50A,50B)の個数で割った時間ずつ等間隔にずらすことができる。こうして、複数の吐出ポート(73,73)からの冷媒吐出タイミングを等間隔にずらすことによって、吐出脈動のピークを吐出ポート(73,73)ごとに等間隔にずらすことができ、スクリュー圧縮機(1)全体としての合成された吐出脈動を平滑化することができる。
同様に、ゲートロータ(50A,50B)により分割される複数の領域間でのガス冷媒の圧縮タイミングを各吐出ポート(73)における吐出圧力の変化周期をゲートロータ(50A,50B)の個数で割った時間ずつ等間隔にずらすことができる。その結果、ガス冷媒圧縮時のスクリューロータ(40)のトルク変動のピークを、ゲートロータ(50A,50B)により分割される複数の領域ごとに等間隔にずらすことができ、スクリュー圧縮機(1)全体としての合成されたトルク変動を平滑化することができる。
さらにまた、ゲートロータ(50A,50B)の個数(即ち、吐出ポート(73)の個数)を偶数に設定すると共に、螺旋溝(41,41,…)の個数を奇数に設定することによって、どの吐出ポート(73)にも、逆位相でガス冷媒を吐出する、対となる吐出ポート(73)が存在するようになり、吐出脈動を互いに打ち消し合わせることができる。同様に、ゲートロータ(50A,50B)により分割されるスクリューロータ(40)の軸回りの各領域には、逆位相でガス冷媒の圧縮を行う、対となる領域が存在するようになり、トルク変動を互いに打ち消し合わせることができる。
また、複数の吐出ポート(73,73)にそれぞれ連通する吐出通路(17,17)の通路長を互いに同じ長さにすることによって、ガス冷媒が吐出通路(17)から高圧空間(S2)へ流出するタイミングを、複数の吐出ポート(73,73)からのガス冷媒の吐出タイミングと同様に、複数の吐出通路(17)間でずれたままにすることができる。つまり、複数の吐出通路(17,17)からずれたタイミングでガス冷媒が高圧空間(S2)へ合流するため、各吐出ポート(73)から吐出されたガス冷媒が他の吐出ポート(73)の吐出を阻害することを防止し、吐出仕事を低減することができる。
尚、上記実施形態では、ゲートロータ(50A,50B)の個数を2個とし、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41,41,…)の個数を5つとしたが、これに限られるものではない。螺旋溝(41,41,…)の個数nを上記式(1)を満たすように設定することによって、冷媒の吐出タイミングを複数の吐出ポート間でずらすことができ、その結果、複数のゲートロータに対応した圧縮室からの吐出脈動のピークを互いにずらすことができると共に、トルク変動のピークを互いにずらすことができる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、複数のゲートロータ及びそれに応じた複数の吐出ポートが設けられたスクリュー圧縮機について有用である。
本発明の実施形態に係るスクリュー圧縮機のスクリューロータとゲートロータとを示す斜視図である。 シングルスクリュー圧縮機の要部の構成を示す縦断面図である。 図2のIII−III線における横断面図である。 スクリューロータとゲートロータとを別の角度から見た斜視図である。 ゲートロータの断面図である。 スライドバルブの斜視図である。 ケーシングの円筒壁の斜視図である。 図2にVIII−VIII線における断面図である。 スライドバルブ収容室に収容されたスライドバルブをスクリューロータ収容室側から見た斜視図である。 バイパスポートが開口している状態のシングルスクリュー圧縮機の図2に対応する縦断面図である。 実施形態に係る圧縮機構の動作を示す平面図であり、(A)は吸込行程を示し、(B)は圧縮行程を示し、(C)は吐出行程示す。 吐出タイミングが2つの吐出ポートで一致するときの各吐出ポートからの吐出脈動と圧縮機全体の吐出脈動とを示す説明図である。 吐出タイミングが2つの吐出ポートで1/2周期ずれているときの各吐出ポートからの吐出脈動と圧縮機全体の吐出脈動とを示す説明図である。
符号の説明
1 シングルスクリュー圧縮機(スクリュー圧縮機)
17 吐出通路
23 圧縮室
40 スクリューロータ
41 螺旋溝
50A ゲートロータ
50B ゲートロータ
51 ゲート
73 吐出ポート

Claims (5)

  1. 複数の螺旋溝(41,41,…)が形成されたスクリューロータ(40)と、該螺旋溝(41,41,…)に噛合するゲート(51,51,…)を有する複数のゲートロータ(50A,50B)とを備え、該螺旋溝(41,41,…)と該ゲート(51,51,…)とで形成される複数の圧縮室(23,23,…)でガスを圧縮して、該ゲートロータ(50A,50B)ごとに設けられた複数の吐出ポート(73,73)から該ガスを吐出するスクリュー圧縮機であって、
    複数の上記吐出ポート(73,73)からガスを吐出するタイミングが、互いにずれていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  2. 請求項1において、
    複数の上記ゲートロータ(50A,50B)は、上記スクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置されていると共に、
    複数の上記吐出ポート(73,73)は、上記スクリューロータ(40)の軸回りに等間隔に配置されており、
    上記螺旋溝(41,41,…)の個数は、上記ゲートロータ(50A,50B)の個数の整数倍以外であることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  3. 請求項1又は2において、
    上流端が上記各吐出ポート(73,73)に連通する一方、下流端が合流する複数の吐出通路(17,17)をさらに備え、
    上記吐出通路(17,17)は、その通路長が互いに同じであることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  4. 請求項1乃至3の何れか1つにおいて、
    上記各吐出ポート(73,73)から吐出されるガスの吐出圧力は、上記スクリューロータ(40)の回転に伴って所定周期で変化しており、
    複数の上記吐出ポート(73,73)のそれぞれからガスを吐出するタイミングは、上記所定周期を上記ゲートロータ(50A,50B)の個数で割った時間だけ各吐出ポート(73,73)間でずれていることを特徴とするスクリュー圧縮機。
  5. 請求項2において、
    上記螺旋溝(41,41,…)の個数は、奇数である一方、
    上記ゲートロータ(50A,50B)の個数は、偶数であることを特徴とするスクリュー圧縮機。
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