以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮するためのものである。
図1に示すように、このスクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(20)とそれを駆動する電動機(15)とが1つのケーシング(10)に収容されている。このスクリュー圧縮機(1)は、半密閉型に構成されている。
ケーシング(10)は、横長の円筒状に形成されている。ケーシング(10)の内部空間は、ケーシング(10)の一端側に位置する低圧空間(S1)と、ケーシング(10)の他端側に位置する高圧空間(S2)とに仕切られている。ケーシング(10)には、低圧空間(S1)に連通する吸入口(11)と、高圧空間(S2)に連通する吐出口(12)とが設けられている。冷媒回路の蒸発器から流れてきた低圧ガス冷媒(即ち、低圧流体)は、吸入口(11)を通って低圧空間(S1)へ流入する。また、圧縮機構(20)から高圧空間(S2)へ吐出された圧縮後の高圧ガス冷媒は、吐出口(12)を通って冷媒回路の凝縮器へ供給される。
ケーシング(10)内では、低圧空間(S1)に電動機(15)が配置され、低圧空間(S1)と高圧空間(S2)の間に圧縮機構(20)が配置されている。圧縮機構(20)の駆動軸(21)は、電動機(15)に連結されている。また、高圧空間(S2)には、油分離器(16)が配置されている。油分離器(16)は、圧縮機構(20)から吐出された冷媒から冷凍機油を分離する。
スクリュー圧縮機(1)には、インバータ(100)が接続されている。インバータ(100)は、その入力側が商用電源(101)に接続され、その出力側が電動機(15)に接続されている。インバータ(100)は、商用電源(101)から入力された交流の周波数を調節し、所定の周波数に変換された交流を電動機(15)へ供給する。なお、本実施形態はスクリュー圧縮機(1)にインバータを接続した例であるが、スクリュー圧縮機(1)にインバータを接続しない構成にしてもよい。
図2,図3に示すように、圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に形成された円筒壁(30)と、該円筒壁(30)の中に配置された1つのスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。スクリューロータ(40)及びゲートロータ(50)は、ケーシング(10)に回転可能に保持されている。
円筒壁(30)は、スクリューロータ(40)の外周面を覆うように設けられている。この円筒壁(30)は、仕切り壁部を構成している。円筒壁(仕切り壁部)(30)の詳細については、後述する。
スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。駆動軸(21)の先端部は、圧縮機構(20)の高圧側(図1,図2における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側)に位置する軸受ホルダ(60)に回転自在に支持されている。この軸受ホルダ(60)は、玉軸受(61)を介して駆動軸(21)を支持している。
図4,図5に示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)は、円筒壁(30)に回転可能に挿入されている。スクリューロータ(40)には、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。各螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の外周面に形成されており、流体室(23)を形成する。
スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、図5における左端が低圧空間(S1)に連通する始端となり、同図における右端が終端となっている。また、スクリューロータ(40)は、同図における左端部(吸入側の端部)がテーパー状に形成されている。図5に示すスクリューロータ(40)では、テーパー面状に形成されたその左端面に螺旋溝(41)の始端が開口する一方、その右端面に螺旋溝(41)の終端は開口していない。各螺旋溝(41)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前方に位置する側壁面が前方壁面(42)となり、スクリューロータ(40)の回転方向の後方に位置する側壁面が後方壁面(43)となっている。
スクリューロータ(40)の外周面では、隣り合う二つの螺旋溝(41)に挟まれた部分が周方向シール面(45)を構成している。周方向シール面(45)では、その周縁のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前方に位置する部分が前縁(46)となり、その周縁のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後方に位置する部分が後縁(47)となっている。また、スクリューロータ(40)の外周面では、螺旋溝(41)の終端に隣接する部分が軸方向シール面(48)を構成している。この軸方向シール面(48)は、スクリューロータ(40)の端面に沿った円周面となっている。
上述したように、スクリューロータ(40)は、円筒壁(30)に挿入されている。そして、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)及び軸方向シール面(48)は、円筒壁(30)の内側面(35)と摺接する。
なお、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)及び軸方向シール面(48)と円筒壁(30)の内側面(35)とは、物理的に接触している訳ではなく、両者の間にはスクリューロータ(40)をスムーズに回転させるために必要な最小限のクリアランスが設けられている。そして、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)及び軸方向シール面(48)と円筒壁(30)の内側面(35)との間には冷凍機油からなる油膜が形成され、この油膜によって流体室(23)の気密性が確保される。
各ゲートロータ(50)は、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。各ゲートロータ(50)は、円筒壁(30)の外側に、スクリューロータ(40)の回転軸に対して軸対称となるように配置されている。つまり、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、二つのゲートロータ(50)が、スクリューロータ(40)の回転中心軸周りに等角度間隔(本実施形態では180°間隔)で配置されている。各ゲートロータ(50)の軸心は、スクリューロータ(40)の軸心と直交する平面上に配置されている。各ゲートロータ(50)は、ゲート(51)が円筒壁(30)の一部を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。なお、ゲートロータ(50)は2つではなく1つだけ設けられる場合もある。
スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合ったゲート(51)は、その両側部が螺旋溝(41)の前方壁面(42)又は後方壁面(43)と摺接し、その先端部が螺旋溝(41)の底壁面(44)と摺接する。なお、螺旋溝(41)に噛み合ったゲート(51)とスクリューロータ(40)との間には、スクリューロータ(40)をスムーズに回転させるために必要な最小限のクリアランスが設けられている。螺旋溝(41)に噛み合ったゲート(51)とスクリューロータ(40)との間には冷凍機油からなる油膜が形成され、この油膜によって流体室(23)の気密性が確保される。
ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている(図3,4を参照)。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ゲート(51)の裏面に当接している。
ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、円筒壁(30)に隣接してケーシング(10)内に区画形成されたゲートロータ室(90)に収容されている(図3を参照)。図3におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。一方、同図におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(90)内の軸受ハウジング(91)に玉軸受(92,93)を介して回転自在に支持されている。なお、各ゲートロータ室(90)は、低圧空間(S1)に連通している。
スクリュー圧縮機(1)には、容量制御機構としてスライドバルブ(70)が設けられている。このスライドバルブ(70)は、円筒壁(30)がその周方向の2カ所において径方向外側に膨出したスライドバルブ収納部(31)内に設けられている。スライドバルブ(70)は、内面が円筒壁(30)の内周面の一部を構成すると共に、円筒壁(30)の軸方向にスライド可能に構成されている。
スライドバルブ(70)が高圧空間(S2)寄り(図2における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側寄り)へスライドすると、スライドバルブ収納部(31)の端面(P1)とスライドバルブ(70)の端面(P2)との間に軸方向隙間が形成される。この軸方向隙間は、流体室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すためのバイパス通路(33)となっている。スライドバルブ(70)を移動させてバイパス通路(33)の開度を変更すると、圧縮機構(20)の容量が変化する。また、スライドバルブ(70)には、流体室(23)と高圧空間(S2)とを連通させるための吐出ポート(25)が形成されている。
上記スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(70)をスライド駆動するためのスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている。このスライドバルブ駆動機構(80)は、軸受ホルダ(60)に固定されたシリンダ(81)と、該シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、該ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、該アーム(84)とスライドバルブ(70)とを連結する連結ロッド(85)と、アーム(84)を図2の右方向(アーム(84)をケーシング(10)から引き離す方向)に付勢するスプリング(86)とを備えている。
図2に示すスライドバルブ駆動機構(80)では、ピストン(82)の左側空間(ピストン(82)のスクリューロータ(40)側の空間)の内圧が、ピストン(82)の右側空間(ピストン(82)のアーム(84)側の空間)の内圧よりも高くなっている。そして、スライドバルブ駆動機構(80)は、ピストン(82)の右側空間の内圧(即ち、右側空間内のガス圧)を調節することによって、スライドバルブ(70)の位置を調整するように構成されている。
スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)では、その軸方向の端面の一方に圧縮機構(20)の吸入圧が、他方に圧縮機構(20)の吐出圧がそれぞれ作用する。このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)には、常にスライドバルブ(70)を低圧空間(S1)側へ押す方向の力が作用する。従って、スライドバルブ駆動機構(80)におけるピストン(82)の左側空間及び右側空間の内圧を変更すると、スライドバルブ(70)を高圧空間(S2)側へ引き戻す方向の力の大きさが変化し、その結果、スライドバルブ(70)の位置が変化する。
次に、円筒壁(仕切り壁部)(30)の詳細について、図5〜図9を参照しながら説明する。
図5に示すように、円筒壁(30)には、スクリューロータ(40)の外周面の一部を低圧空間(S1)に露出させるための吸入用開口(36)が形成されている。この吸入用開口(36)は、円筒壁(30)の周方向における幅が図5におけるスクリューロータ(40)の左端から右端へ向かって次第に狭まる形状の開口である。なお、図5では、円筒壁(30)のうちスクリューロータ(40)の上側を覆う部分に形成された吸入用開口(36)が図示されているが、円筒壁(30)のうちスクリューロータ(40)の下側を覆う部分にも吸入用開口(36)が形成されている(図3を参照)。円筒壁(30)のうちスクリューロータ(40)の下側を覆う部分に形成された吸入用開口(36)の形状は、スクリューロータ(40)の回転軸に対して、円筒壁(30)のうちスクリューロータ(40)の上側を覆う部分に形成された吸入用開口(36)と軸対称な形状となっている。
円筒壁(30)の内側面(35)では、吸入用開口(36)に臨む縁部が開口側縁部(37)となっている。図6に示すように、円筒壁(30)の内側面(35)の開口側縁部(37)は、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行な曲線を描く形状となっている。この開口側縁部(37)は、その全長に亘って周方向シール面(45)の前縁(46)と平行になっている。つまり、この開口側縁部(37)は、スクリューロータ(40)の回転に伴って移動する周方向シール面(45)の前縁(46)と、その全長に亘って重なり合うことが可能な形状となっている(図7を参照)。また、この開口側縁部(37)の位置は、開口側縁部(37)が周方向シール面(45a)の前縁(46a)と重なり合った時点において、この前縁(46a)に隣接する螺旋溝(41a)に進入してきたゲート(51a)が未だ螺旋溝(41a)の後方壁面(43a)と接触しない状態となるように設定されている(図7を参照)。
図9に示すように、円筒壁(30)では、吸入用開口(36)に臨む壁面(即ち、その内側面(35)の開口側縁部(37)から円筒壁(30)の外周側へ延びる壁面)が、開口側壁面(38)となっている。この開口側壁面(38)は、スクリューロータ(40)側を向いた斜面となっている。つまり、この開口側壁面(38)は、同図の左側から右側へ進むにつれてスクリューロータ(40)に近付くような斜面となっている。
本実施形態では、上記円筒壁(仕切り壁部)(30)は、図8に示すように、流体室(23a)が円筒壁(30)とゲート(51)の両方によって低圧空間(S1)から仕切られた閉空間となり、吸入行程が終了する位置(吸入閉じ切り位置)において、上記螺旋溝(41)とゲート(51)により形成される流体室(23)を上記低圧空間(S1)から仕切るように上記スクリューロータ(40)の外周面を覆っている。また、上記仕切り壁部(30)は、上記スクリューロータ(40)の回転中に上記流体室(23)がゲートロータ(50)で閉じ切られる吸入閉じ切り位置になる前に該流体室(23)をその外周側の上記低圧空間(S1)から遮蔽するように、上記スクリューロータ(40)における螺旋溝(23)の回転方向後方側の縁部からさらに回転方向後方へ張り出すエンベロープ部(32)を備えている。このエンベロープ部(32)は、図8における円筒壁(30)の開口側縁部(37)と周方向シール面(45a)の前縁(46a)との間に形成されている。
図3,図5に示すように、上記エンベロープ部(32)には、上記仕切り壁部(30)の内面(30a)から外面(30b)へ貫通するバイパス開口(34)が形成されている。このバイパス開口(34)は、上記吸入閉じ切り位置におけるスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の縁部に沿う曲線に接して形成されている。つまり、吸入閉じ切り位置になるまでは、バイパス開口(34)により、流体室(23)とその外周側の低圧空間(S1)とが連通する。
本実施形態において、上記バイパス開口(34)は、上記仕切り壁部(30)に形成された切り欠き(34a)である。また、上記バイパス開口(34)は、上記エンベロープ部(32)における上記スクリューロータ(40)の回転方向前方の部分に形成されている。
本実施形態では、2つのゲートロータ(50)が設けられており、流体室(23)も2つ形成されている。したがって、上記エンベロープ部(32)も2つ形成されている。そして、各エンベロープ部(32)に上記バイパス開口(34)がそれぞれ1つ形成されている。なお、バイパス開口(34)は1つのエンベロープ部(32)に少なくとも1つ形成すればよく、1つのエンベロープ部(32)に複数のバイパス開口(34)があってもよい。
−運転動作−
スクリュー圧縮機(1)の運転動作について説明する。
スクリュー圧縮機(1)において電動機(15)を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程および吐出行程を繰り返す。ここでは、図10〜図12においてドットを付した流体室(23)に着目して説明する。
図10において、ドットを付した流体室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。また、この流体室(23)を形成する螺旋溝(41)は、同図の下側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って流体室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が流体室(23)へ吸い込まれる。
スクリューロータ(40)が更に回転すると、図11の状態となる。同図において、ドットを付した流体室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この流体室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の上側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動すると、流体室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、流体室(23)内のガス冷媒が圧縮される。
スクリューロータ(40)が更に回転すると、図12の状態となる。同図において、ドットを付した流体室(23)は、吐出ポート(25)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となっている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動すると、圧縮された冷媒ガスが流体室(23)から高圧空間(S2)へ押し出されてゆく。
流体室(23)へ低圧ガス冷媒が流入する吸入行程について、図6〜図8を参照しながら詳細に説明する。ここでは、吸入行程中の流体室(23a)を形成する一つの螺旋溝(41a)に着目して説明する。
図6において、螺旋溝(41a)は、その一部分が円筒壁(30)に覆われて残りの部分が吸入用開口(36)に臨む状態となっている。また、螺旋溝(41a)には、その始端側からゲート(51a)が進入してきている。このゲート(51a)は、螺旋溝(41a)の前方壁面(42a)及び底壁面(44a)だけと摺接し、螺旋溝(41a)の後方壁面(43a)とは摺接していない。
図6に示す状態において、螺旋溝(41a)によって形成された吸入行程中の流体室(23a)は、スクリューロータ(40)の外周面側と端面側の両方において低圧空間(S1)と連通している。そして、この状態において、流体室(23a)へは、スクリューロータ(40)の外周面側と端面側の両方から低圧ガス冷媒が流入する。
図6に示す状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図7に示す状態となる。※図6に示す状態から図7に示す状態へ移行するとき、円筒壁(30)の開口側縁部(37)と周方向シール面(45a)の前縁(46a)の間隔が徐々に小さくなるが、エンベロープ部(32)に形成されているバイパス開口(34)からガスが外周側の低圧空間(S1)へ抜けるため、ガスは圧縮されず、動力は消費されない。図7に示す状態では、螺旋溝(41a)に隣接する周方向シール面(45a)の前縁(46a)が、円筒壁(30)の内側面(35)の開口側縁部(37)と重なり合う。そして、図7に示す状態になった時点では、吸入行程中の流体室(23a)を形成する螺旋溝(41a)は、バイパス開口(34)を除いた部分が円筒壁(30)によって覆われる。つまり、この時点においても、流体室(23a)は、円筒壁(30)によって閉塞されず、低圧空間(S1)と連通している。
この図7に示す状態において、螺旋溝(41a)へ進入しつつあるゲート(51a)は、図6に示す状態と同様に、螺旋溝(41a)の後方壁面(43a)とは摺接していない。このため、吸入行程中の流体室(23a)は、スクリューロータ(40)の端面側で依然として低圧空間(S1)に連通した状態となっている。
図7に示す状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図8に示す状態となる。このように図7に示す状態から図8に示す状態へ移行する間もガスはバイパス開口(34)から低圧空間(S1)へ少しずつ抜けていく。図8に示す状態において、周方向シール面(45a)の前縁(46a)は、円筒壁(30)の内側面(35)の開口側縁部(37)を通過する。そして、円筒壁(30)の内側面(35)の開口側縁部(37)は、周方向シール面(45a)の前縁(46a)と後縁(47a)の間に位置する。
螺旋溝(41a)へ進入してきたゲート(51a)は、図8に示す状態になった時点において、螺旋溝(41a)の後方壁面(43a)と摺接し始める。つまり、図8に示す状態になった時点では、ゲート(51a)が螺旋溝(41a)の前方壁面(42a)と後方壁面(43a)と底壁面(44a)の全てと摺接し、このときバイパス開口(34)も流体室(23a)と連通しなくなり、該流体室(23a)がゲート(51a)によって低圧空間(S1)から仕切られる。その結果、図8に示す状態になった時点では、流体室(23a)が円筒壁(30)とゲート(51a)の両方によって低圧空間(S1)から仕切られた閉空間となり、吸入行程が終了する(これを吸入閉じ切り位置という)。
このように、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)において、吸入行程中の流体室(23a)は、それを形成する螺旋溝(41a)が吸入用開口(36)及びバイパス開口(34)に臨む位置から円筒壁(30)で覆われる位置へ移動して低圧空間(S1)から仕切られると同時に、ゲート(51a)が螺旋溝(41a)を低圧空間(S1)から仕切ることになる。そして、このスクリュー圧縮機(1)では、吸入閉じ切り位置になる前には、流体室(23a)のガスが低圧空間(S1)へ抜けていくように、エンベロープ部(32)とバイパス開口(34)の形状が設定されている。したがって、吸入閉じ切り位置になる前には、ガスを圧縮するための動力消費はほとんど生じない。
なお、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、スクリューロータ(40)を駆動する電動機(15)に対し、商用電源(101)からの交流が、インバータ(100)を介して供給される。インバータ(100)の出力周波数を変更すると、電動機(15)の回転速度が変化し、電動機(15)によって駆動されるスクリューロータ(40)の回転速度も変化する。そして、スクリューロータ(40)の回転速度が変化すると、スクリュー圧縮機(1)へ吸入されて圧縮後に吐出される冷媒の質量流量が変化する。即ち、スクリューロータ(40)の回転速度が変化すると、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が変化する。インバータ(100)を用いない場合は、スクリューロータ(40)の回転速度は一定であり、回転速度によって運転容量は変化しない。
−実施形態の効果−
本実施形態のスクリュー圧縮機(1)において、吸入行程中の流体室(23a)は、先ず円筒壁(30)によってバイパス開口(34)を除く部分が覆われ、その後に螺旋溝(41a)へ進入してきたゲート(51a)によって低圧空間(S1)から仕切られると同時にバイパス開口(34)が流体室と連通しなくなる。つまり、このスクリュー圧縮機(1)において、吸入行程中の流体室(23a)は、エンベロープ部(32)にバイパス開口(34)を設けたことによって、吸入閉じ切り位置になる前にはガスが圧縮されなくなる。したがって、本実施形態によれば、吸入閉じ切り位置になる前に動力が消費されないので、圧縮機の効率が低下するのを防止できる。また、バイパス開口(34)がエンベロープ部(32)の全体には形成されていないので、容易に加工することが可能である。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記バイパス開口(34)は、図13に示すように、上記エンベロープ部(32)における上記スクリューロータ(40)の回転方向前方の部分ではなく、上記エンベロープ部(32)における上記スクリューロータ(40)の回転方向後方の部分に形成してもよい。
また、上記バイパス開口(34)は、図13に仮想線で示すように、上記エンベロープ部(32)における上記スクリューロータ(40)の回転方向前方の部分と回転方向後方の部分の両方に形成してもよい。
以上のように構成しても、圧縮機構(20)が吸入閉じ切り位置になる前に流体が圧縮されるのを防止できるから、無駄な動力消費による運転効率の低下を抑えられる。
また、上記実施形態では、上記バイパス開口(34)として上記仕切り壁部(30)のエンベロープ部(32)に切り欠き(34a)を形成しているが、図14に示すように切り欠き(34a)ではなく複数の貫通孔(34b)を仕切り壁部(30)のエンベロープ部(32)に形成し、この貫通孔(34b)を上記バイパス開口(34)としてもよい。
このように構成しても、吸入閉じ切り位置になる前に流体が圧縮されるのを防止できるから、無駄な動力消費による運転効率の低下を抑えられる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。