添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
本発明に係る「凸版印刷版の製造方法」について説明する前に、該製造方法によって得られる凸版印刷版について説明する。本発明に係る凸版印刷版の製造方法によって得られる凸版印刷版は、樹脂含有液を乾燥させることによって得られる。
本発明により製造される凸版印刷版は、レリーフの頂面に窪みが複数設けられたものであることが好ましい。この場合、凸版のレリーフ先端に設けられた窪みと窪みの間の壁及び窪み自身によって、印刷時に凸版印刷版を基板に押し付けた際のレリーフ外側へのインクの流れが阻止されるため、マージナルの発生を低減させることができる。これにより、パターン形成においてパターン同士が繋がることを防止できるとともに、膜内均一性、耐刷性及び印刷物の両端(エッジ)の直線性を向上させることができる。このため、線幅(ライン(L))が狭く、且つ、線間隔(スペース(S))が狭い場合の高精度の印刷を達成できる。例えば、線幅(L)が5μm以上400μm以下、線間隔(S)が3μm以上500μm以下でも印刷が可能となる。上記のような高精細な印刷物は、電子デバイス(配線の形成、電極の形成、絶縁材料や機能材料を用いた機能素子や回路の形成)用途に好適である。レリーフ端部においては、窪みがレリーフ端部に掛からずにレリーフが本来の形状に沿った縁辺の線部を有するように窪みが配置されることが好ましく、この場合パターンの再現性も向上する。また、窪みにより、転写されるインクの膜厚の調整が可能となり、従って印刷物の膜厚の調整も可能となる。
図3は、凸版印刷版に複数の窪みを設ける一形態を示す概略図であり、(a)はレリーフ断面の一形態を示し、(b)はレリーフ頂面の一形態を示す。本実施形態に係る凸版印刷版13は、凸版のレリーフ1(レリーフ厚みHを有する)の頂面8に窪み9が複数形成され、碁盤の目状に配置されている。図3(a)のレリーフ1の断面図が示すとおり、レリーフの頂面8から深さ方向に窪み9が設けられている。また、図3(b)のレリーフのインクが付着する面が示すとおり、窪み9が碁盤の目状に配置されている。ここで、ある窪みの周縁とこの窪みの隣に位置する窪みの周縁との最短距離で定義される窪み間の距離をAで表す。
図4、5及び6は、本発明における窪みの形成態様の例を示す概略図である。図4は、レリーフ上に窪みが複数個形成され、その形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたり、窪みがレリーフ端部に掛かって形成されていないことを示す図であり、レリーフ端部と窪みが重なる場合、窪みのレリーフ端部側がレリーフ端部形状に沿った線部を有することを説明している。図4中、(a)は窪みの開口形状が円形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形でその配列方向とレリーフ端部の方向とが一致している場合を示す平面図、(c)はレリーフ端部と窪みとが重なる場合に、窪みのレリーフ端部側においてレリーフ端部形状に沿った窪み形状を示す平面図である。図4(c)に示す態様では、レリーフ端部近傍の窪み形状がそれ以外の部分の窪み形状と異なることでレリーフ端部に窪みが掛からないようにされている。図5は、窪みが千鳥配列である形態を示しており、(a)は窪みの開口形状が円形の場合の千鳥配列を示す平面図、(b)は窪みの開口形状が四角形の場合の千鳥配列を示す平面図、(c)はレリーフの断面形状の他形態を示す断面図である。図6は、レリーフ周辺のインク密度を下げるために窪みの大きさ若しくは窪みの深さを調整した例を示しており、(a)は周辺部の窪みの大きさを小さくした場合を示す平面図、(b)は周辺部の窪みの深さを浅くした場合を示す断面図である。
窪みの形状は、図3(b)に示す形状、図3(b)と同様に四角柱状であるが(窪みの開口面積/頂面の面積)の比が異なる形状(図4(b)に示した四角柱状)の穴(非貫通で有底)のみならず、図4(a)に示すように円柱状の穴(非貫通で有底)の形状をしていてもよい。ここで、図4に示すようにレリーフ上に窪みが複数個形成された領域がレリーフ先端部分の全域にわたっていることが好ましく、さらに窪みがレリーフのエッジ(レリーフ端部)に掛かって形成されていないことが好ましい。
窪みの配列は、図3(b)又は図4(b)に示したような碁盤の目状の配列のみならず、図5(a)又は(b)に示すように、千鳥配列としてもよい。配列を工夫することで、インクの流れ出しをより効果的に抑制することを狙いとした配置である。
窪みの大きさは、図3(b)又は図4(b)に示したような同一の大きさの窪みを配列するのみならず、図6(a)に示すように窪みの大きさを異ならせしめて配列してもよい。図6は、マージナルをより減らすため、窪みの大きさに工夫を加えた例を示している。図6(a)は、レリーフの端部に近い部分ほど、インク量を減らすために窪みの大きさを小さくし、レリーフの外側へ流れ出すインクの量を減らすことを目的にした例である。図5(c)及び図6(b)は、図6(a)と同様な目的で、レリーフの端部に近い部分ほど、インク量を減らすために窪みの深さを浅くし、レリーフの外側へ流れ出すインクの量を減らすことを目的にした例である。
前記いずれの形態に於いても、レリーフ端部の窪みの形状は、レリーフ端部形状を途切れさせないように配列するか、配列の都合上レリーフ端部に窪みが重なる場合は、窪みの端部と重なる部分が端部形状に一致する側壁で閉じられていることが好ましい。
レリーフの厚みは、窪みを設ける必要性と押し込み量の観点から正確な印刷が出来る点、及び印刷物の汚れの防止の観点から10μm以上が好ましく、解像性、耐刷性及び耐久性の観点から500μm以下が好ましい。レリーフの厚みは、さらに好ましくは400μm以下である。さらに線幅が400μm以下の場合にはレリーフ厚みは200μm以下が好ましい。レリーフ厚みが500μmを超えると解像性が悪くなる傾向があり、精細なパターンの場合は均一性やラインの直線性が悪くなる傾向がある。なおここでレリーフの厚みとは、例えば図3(a)中のレリーフ厚みHとして示すような、頂面が印刷面となる凸部の高さのことである。
レリーフ上に形成した窪みの深さは、インクの出入りのしやすさから1μm以上30μm以下が好ましい。さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。窪みの深さが30μmより深くなると、インクの出入りが困難になり、パターンの再現性が悪くなる傾向がある。また窪みの深さが1μm未満であると、マージナルが起きやすい傾向がある。
また、本発明に係る凸版印刷版では、図3(b)の部分拡大図で示すように、窪みの周縁とその窪みの隣に位置する窪みの周縁との最短距離で定義される窪み間の距離(A)が1μm以上、30μm以下であることが好ましい。窪み間の距離(A)をこのような範囲とすることによって、インクのレベリング性が促進され、より均一性が増す。窪み間の距離(A)は、さらに好ましくは3μm以上20μm以下である。
特にレリーフの線幅が5μm以上400μm以下の場合には、レリーフの頂面に設けた窪みの深さと窪み間の距離(A)を上記範囲とすることが好ましい。窪みの深さが1μm以上30μm以下の時に5μm以上400μm以下の線幅のパターンに関する再現性が向上する。さらに窪み間距離(A)が特に1μm以上30μm以下の時に、5μm以上400μm以下の線幅のパターンにおいて良好なインクの膜厚均一性とマージナル抑制効果をもつ。
次に窪みの形状等について述べる。窪みの開口形状(平面形状)、すなわちレリーフの頂面を正面視した形状としては、例えば円形若しくは直線で構成される三角形、四角形、六角形、それ以上の多角形並びに直線及び曲線で構成された形状を用いることができるが、インクを溜める窪みの容積や、インク転写用のアニロックスロール等との組み合わせによるモワレや斑、インクのアニロックスロールからの転写性、印刷後のレベリングの状況、インクの基板への転写効率を勘案して決めればよい。これらの構成や窪みの配置間隔、深さを変えることでインクの量を調整することもできる。もちろん1つのパターン内でこれらの構成を変えてもよい。前述のとおり配列に関しては、碁盤の目状の配列を示した図3(b)や図4(a)(b)の形態、又は、千鳥配列を示した図5(a)(b)の形態を採ることも可能である。例えば千鳥配列を示した図5(a)(b)では、窪み間距離がより均等化することでレベリング性が向上し、隣り合う窪みが碁盤の目状配列と比較するとずれるため、その方向へのインクの流れの抑制に効果があると考えられる。
窪みの大きさは、形成するパターンサイズに応じて適宜設計できるが、一例を挙げると、線状のレリーフの幅方向に並ぶ個数は、エッジやパターン内部の均一性を考慮すると2個以上が好ましく、より好ましくは3個以上である。例えば60μm幅のラインであれば、窪みを幅方向に3個並べる場合ピッチを20μmとし、窪みの大きさと窪みの間隔とをそれぞれ等しくすれば、窪みの大きさ(径)は10μmとなる。同様に30μm幅のラインの場合で窪みを幅方向に3個並べる場合、ピッチは10μmで窪みの大きさ(径)は5μmとなる。なお窪みのレリーフ長手方向の大きさは幅方向と同等を基本とするが、必ずしも同等にする必要は無い。窪みの大きさや窪みの間隔は、要求されるパターンの幅や厚み、インク粘度、インクのレベリング性及び濃度、版上に乗せるインク量、マージナルの状況等の条件を勘案して調整すればよく、上記範囲に限られるものではない。なお製版方法は必要とされるパターンサイズや窪みの大きさにより選択すればよい。
次に凸版印刷版の製造方法について述べる。本発明に係る凸版印刷版の製造方法は、凸版のレリーフの頂面に供給されたインクを被印刷体へ転写する凸版印刷に用いる凸版印刷版の製造方法において、レリーフに対応する凹凸のパターンが組み込まれた型Aに樹脂含有液を流し込む第1工程と、第1工程で流し込んだ樹脂含有液を乾燥させて、樹脂印刷版を作製する第2工程と、第2工程で作製された樹脂印刷版を型Aから剥がして樹脂印刷版を凸版印刷版として得る第3工程と、を有する。ここで、型Aの作製は、(1)版の元となる原版を作製する工程、及び(2)原版から型Aを作製する工程によって行なうことができる。上記第1工程から第3工程は、上記(1)及び(2)の工程の後に行なう、(3)型Aから最終目的物(すなわち凸版印刷版)である複製樹脂印刷版を作製する工程である。本発明の製造方法により、上記(1)の工程で作製した原版から安価に多数の複製樹脂印刷版を容易に製造することができる。図10は、型Aから凸版印刷版を作製する工程を説明するためのイメージ図であり、上記(3)の工程を説明するためのイメージ図を示している。図10中、(a)は水性樹脂分散体16を型A17に流し込む工程、(b)は水性樹脂分散体を乾燥させ、樹脂印刷版18を形成する工程、(c)は型Aから樹脂印刷版18を取り出して凸版印刷版を得る工程、を示している。
(1)版の元となる原版の作製方法
原版は、例えば通常の感光性樹脂を用いた方法で作製できる。典型的には、レリーフの形状に合わせ、微小窪みに相当する部分において光を透過しそれ以外の部分では透過しないネガフィルムを準備する。露光前が液状の感光性樹脂を用いる場合、このネガフィルムをガラス板の表面に積層した後、その上に液状の感光性樹脂を塗布し、その表面に透明なベースフィルムを積層し、更にその表面にガラス板を積層する。なお感光性樹脂層の厚みは所定の寸法になるよう設定する。次いでランプを用い、上側のガラス板とベースフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射すると共に、下側のガラス板とネガフィルムを介して感光性樹脂に紫外線を照射する。画像露光用の照射光源は公知のものを使用可能である。上記の液状感光性樹脂からなる層の上面全体から入った光と、ネガフィルムの光を透過する部分を透過した光とが所定量届いた部分が硬化される。硬化後上下のガラス板、ネガフィルムを取り除き、未硬化部分を洗浄除去し、レリーフ形成側に紫外線を照射し硬化を促進し、印刷用原版とする。
別の方法として、レリーフ形成のために、感光性樹脂を硬化可能な波長のレーザー光源を用い、硬化に必要な光量を走査露光しても良い。常温で液状タイプでなく常温で固溶体状の感光性樹脂を用いる場合、感光性樹脂を加熱して所定の厚みに成形したのち、同様に画像露光以降の操作を行なえばよい。
さらに、上記ではネガタイプの感光性樹脂を使用した際の原版の製造方法を説明したが、ポジタイプの感光性樹脂をポジフィルムと共に用いることも可能である。
また、フォトマスク上に予め型を作製しておき、窪みの深さをより正確に制御する方法も採用できる。例えば、上記ネガフィルム上に微小窪みの深さに相当する膜厚でポジタイプの感光性樹脂を被着し、ネガフィルム側から紫外線を照射し、露光部分を現像処理したものである。これにより、ネガフィルムの遮光部上に微小窪みに対応した微小突起が形成される。このネガフィルム上に形成した型上に、さらにネガタイプの感光性樹脂を所望のレリーフ厚みに応じて塗布し、その表面にベースフィルムを積層する。次いでネガフィルム及び型を通して下側(ネガフィルム側)から紫外線を照射し、ネガフィルム及びモールドを取り除き、未硬化部分を洗浄除去することで、ベースフィルム上に微小窪みを有するレリーフを精度良く形成することができる。この際、拡散反射率の比較的高いベースフィルムを使用する場合、入射紫外線がベースフィルム表面で拡散反射し、レリーフ部全体の硬化を促進させることができる。尚、ネガフィルムに型を確実に被着させるために、ネガフィルム表面に紫外線透過性を有する市販の接着剤(ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シラン系等)によるコーティング処理を施すこと、ハードコート(アクリル系等)等の各種コーティング材を接着層上に設けること、及びカップリング剤等による表面処理を行なうことができる。
(2)原版から型Aを作製する方法
上記(1)の工程で作製した原版を用い、例えば以下の方法で型取りを行なって型Aを作製できる。具体的には原版に樹脂を塗布し、該樹脂からなる型Aを作製して原版から剥離する。その結果、原版とは逆のパターンが形成された型Aを作製できる。
なお、型Aには、本発明で製造される凸版印刷版のレリーフの頂面に対応する箇所に複数の微細突起を設けることが好ましい。これによって、最終目的物である樹脂印刷版(すなわち凸版印刷版)のレリーフの頂面に、該微細突起によって、窪みを複数個形成することができる。
(3)型Aから凸版印刷版を作製する方法(第1工程〜第3工程)
本発明においては、凸版印刷版のレリーフに対応する凹凸のパターンが組み込まれた型Aに樹脂含有液を流し込み(若しくは塗布し)(第1工程)、該樹脂含有液を乾燥させ樹脂印刷版を作製する(第2工程)。その後、樹脂印刷版を型Aから剥離する(第3工程)。また、型Aに離型剤を塗布した後、樹脂含有液を流し込み(若しくは塗布し)(第1工程)、該樹脂含有液を乾燥させて樹脂印刷版を作製し(第2工程)、その後、樹脂印刷版を剥離(第3工程)してもよい。その結果、上記(1)の工程で作製した原版とまったく同様のパターンが形成された凸版印刷版を作製できる。
本発明の製造方法を用いることで、型Aを繰り返し使用でき、1つの版から大量の樹脂凸版印刷版を簡単に作製することができる。凸版印刷版の材料である樹脂含有液の種類は限定されず、各種有機高分子を溶かした溶液若しくはこれらの分散液を使用できる。また、上述した原版の材料と同じ材料も使用できる。さらに、樹脂含有液として水性樹脂分散体を用いる場合、取り扱いが容易で、型Aを溶かすおそれがなく版を作製できるため、型Aを複数回使用することができる。よって、1つの型Aから大量の凸版印刷版を作製することができる。よって本発明によれば、従来樹脂凸版の製造に用いられていた、露光・現像を使用する方法やレーザー加工等を使用するのと比べ、極めて簡単に大量の微細加工の凸版印刷版を作製することができる。また、1つの原版から複製する方法では、複製版である凸版印刷版に用いる材料が感光性材料である必要がないため、樹脂の適用範囲が広い(すなわち設計自由度が高い)という利点が得られる。
本発明において、型Aを作製するための原版材料としては、上記のように室温で固体、高温で流動性を有する熱可塑性樹脂、室温で粘凋、もしくは固溶体状の感光性樹脂及び熱硬化性樹脂を用いることができる。樹脂の種類について特に制約は無い。本発明の製造方法を用いる場合は、原版に印刷適正を求める必要はないので、形のみ成形できれば良い。また、架橋されたゴム系材料も本発明における原版を形成する材料であることができる。
ネガタイプの感光性樹脂としては、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系又は光二量化反応系等が適用可能である。以下、汎用的なラジカル重合系を例に説明する。
ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用され得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤及び熱重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。
プレポリマーとしては、重合性二重結合を分子中少なくとも1個以上有し、例えば、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和メタクリレート樹脂又はこれらの各種変性物等を少なくとも1種類用いたものを挙げることができる。
モノマーは、典型的には重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体であり、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等、及びフォトポリマー懇話会著、「フォトポリマーハンドブック」、(株)工業調査会刊、1989年6月26日、p.31−36記載の材料を用いることができる。
開始剤としては、エチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行なうときに反応効率を高めるために用いる公知の光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジビニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。一方、熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。
本発明に用いる熱重合禁止剤として、ハイドロキノン、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ−p−フルオロフェニルアミン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール等を挙げることができる。
感光性樹脂組成物としては特開昭52−90804号公報、特公昭48−19125号公報、特開昭49−109104号公報、特公昭48−41708号公報等に記載の物が挙げられる。さらに、東レリサーチセンター調査研究事業部編、「フォトポリマー技術の新展開」東レリサーチセンター刊、1993年3月10日、p.35〜37、山岡亜夫監修、「フォトポリマーの基礎と応用」シーエムシー出版、2003年3月27日、第4章製版材料とフォトレジスト、や松井真二他監修、「ナノインプリントの開発と応用」、シーエムシー出版刊、2005年8月31日、p.50及びp.151に記載の材料を用いることができる。同p.158及びp.159に記載のフッ素変性したフルオロアルキル基を有するアクリレート、メタクリレートや含フッ素のエポキシ系の感光性樹脂を用いることもできる。
また少なくとも未加硫ゴム、重合性二重結合を有する単量体及び重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特開昭51−106501号公報及び特開昭47−37521号公報を参照)、並びに、発インク性とのバランスが必要であるもののジアルキルシリコン系樹脂の使用が可能である。
熱可塑性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン樹脂(COP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルペンテン(TPX)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PSt)、塩化ビニル(PVC)、塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル/スチレン(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、フッ素系樹脂としてフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ノルボルネン共重合体等のフッ素化ポリオレフィン、含フッ素アクリル樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ビニルエーテル樹脂等が挙げられ、これら以外でも熱により加工できるものであれば使用でき、例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.113−397、各論 1.重合型樹脂 2.縮合型樹脂 に記載の熱可塑性樹脂を使用しても良い。
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート、不飽和メタクリレートの樹脂又はこれらの各種変性物を少なくとも1種、重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体、及び熱重合開始剤を含むラジカル重合性樹脂組成物や、エポキシに硬化剤を添加した樹脂組成物、シリコン系のポリジメチルシロキサン系樹脂等を使用してもよい。フッ素系樹脂としては、架橋材や、熱によりラジカルの発生する重合開始剤を含むフッ素モノマーや含フッ素オリゴマーを用いた熱硬化性樹脂を使用しても良い。これ以外にも例えば三羽忠広著、「基礎合成樹脂の科学」、技報堂出版(株)、1987年6月15日、p.240−397、各論 2.縮合型樹脂 に記載の熱硬化性樹脂を使用しても良い。
ゴム系材料としては、天然ゴム、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ブチル、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、ポリイソブチレン、スチレンブタジエン、ニトリル、アクリル、エピクロルヒドリン、ウレタン、シリコン、フッ素系ゴムを使用しても良い。
以上に記した材料を用いることにより、本発明の凸版印刷版の原版を製版することができる。
次に型Aの材料について述べる。型Aの材料としても上記の原版材料と同じ材料を用いることができる。型Aの材料の条件としては、版(原版)を溶かさないことが挙げられる。剥離の容易さから、好ましくはシリコーン系の樹脂が適している。本発明でのシリコーン系の樹脂とはシロキサン結合を有する化合物のことである。具体的にはポリジメチルシロキサン(PDMS)系樹脂が好ましい。
次に凸版印刷版である樹脂印刷版(複製版)の材料について説明する。複製版の材料としては、例えば上記の原版材料と同じ材料を用いることができるが、凸版印刷版の所望の特性に応じて選択できる。本発明は、従来の例えば感光性樹脂からなる凸版印刷版(この場合用いる樹脂はフォトポリマーに限定される)と比べて樹脂の設計自由度が高いという利点を有する。原版材料を水や有機溶媒に溶解若しくは分散させたものを凸版印刷版の材料として用いても良い。中でも、取り扱いの容易さと、下地を傷めない点から水性樹脂分散体が好ましい。水性樹脂分散体としては、アクリル系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス、スチレンブタジエン系ラテックス等を用いることができる。
前記水性樹脂分散体(ラテックス)の材料としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、第3級ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトシキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、パーチサック酸ビニル等のビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、ブタジエン等があり、さらに種々の官能性単量体、例えば(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸グリシジル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジビニルベンゼン、メチルビニルケトン等の共重合体が含まれる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
本発明の水性樹脂分散体の製造方法としては通常の多段乳化重合法が採用できる。その代表例としては、水中にて乳化剤及び重合開始剤等の存在下で、不飽和単量体を、通常40℃〜90℃の加温下で乳化重合させ、この工程を複数段回繰り返し行なう方法が挙げられる。
前記乳化剤としては、特に限定はなく、例えばアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等を使用することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又は前述の骨格と重合性の不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等が挙げられる。
前記乳化剤の使用量は、特に限定はされないが、例えば、全重合性単量体成分の合計使用量に対して、好ましくは1.0〜5.0質量%が好ましい。全重合性単量体成分の合計使用量に対する乳化剤の使用量を多くする(例えば1.0質量%以上とする)と重合安定性が向上し、少なくする(例えば5.0質量%以下とする)と耐水性を向上させることができる。
本発明において用いる水性樹脂分散体を乳化重合させる際の重合方法としては、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水と乳化剤とを予め混合乳化しておき、これらを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組み合わせる方法等が挙げられる。この時に重合開始剤の使用方法は特に限定されるものではない。また、Si含有化合物の使用方法としては、加水分解性シランの縮合反応と不飽和単量体のラジカル重合を同時に、及び/若しくは、加水分解性シランの縮合反応を先行させた後に不飽和単量体のラジカル重合を進行させる乳化重合方法、又は不飽和単量体のラジカル重合を進行させた後に加水分解性シランの縮合反応を進行させる方法等が用いられる。
本発明において用いる水性樹脂分散体を乳化重合する際に使用する重合開始剤としては、一般に用いられるラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、熱又は還元性物質等によってラジカルを生成して重合性単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物が挙げられる。具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、好ましくは水溶性のものである。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることができる。
乳化重合に際して、必要に応じて分子量調整剤を使用することができる。具体的にはドデシルメルカプタン、ブチルメルカプタン等が挙げられる。使用方法は特に限定されるものではないが、好ましくはシェル部に使用し、その量は単量体量全体の2質量%以下が好ましい。
その他、本発明において用いる水性樹脂分散体には、成膜助剤を任意に配合することができる。成膜助剤として具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、等が挙げられる。これら成膜助剤は、単独又は併用等で任意に配合することができる。
次に、本発明の製造方法で得た凸版印刷版を用いた印刷に使用できる印刷機について説明する。図7は、本発明に係る凸版印刷版を用いた印刷に使用できる印刷機の例を示す図である。印刷機としては、例えば市販されている図7に示す方式のものを用いることができる。これは一例であり、この方式に限定されるものではない。印刷は以下のようにして行なう。図7に示した方式の印刷機を使用し、凹凸を設けたアニロックスロール11とドクターブレード12が合わさっている上にインク2を置き、アニロックスロール11が回転することによってインクが計量される。次にアニロックスロール11と版胴14に巻かれた版13とが接触すると、レリーフの先端である頂面にインクが付着する。この状態で版13を基板4に押し付けインクを転写する。その後、インクのレベリングが進み、均一化する。図8は、本発明に係る凸版印刷版を用いた印刷方法について説明する断面図であり、印刷時における版の部分を拡大断面図として示す。図8中、(a)はインクが展開されたアニロックスプレート上に版が押し付けられた状態、(b)はレリーフ先端にパターン形成用インクが供給された状態、(c)は版を基板へ押し付けた状態、(d)は版を基板から離すことにより転写を終えた状態、(e)はインクがレベリングした状態を示す。印刷機のアニロックスロール11上に展開されたインク2が、図8(a)のように版13のレリーフ1の先端面である頂面とアニロックスロール11とに接触し、次に図8(b)のように版13のレリーフ1の頂面にインク2が移され、その後、図8(c)、(d)及び(e)に示すようにして基板4にパターン15が転写される。
本発明に係る凸版印刷版では、マージナルをより抑制するため、版構成を多層構成としてもよい。図9は、本発明に係る凸版印刷版のレリーフ断面形状を示す断面図であり、単層構成及び多層構成の態様を示す。図9中、(a)は単層版を示す。(b)は硬度差を設けた2層構成(低硬度層1a,及び高硬度層1b)の多層版を示す。(c)は(b)と同じく硬度差を設けた2層構成(低硬度層1a,及び高硬度層1b)であるが、レリーフの頂面と低硬度層1aの側面とがなす角度を、レリーフの頂面と高硬度層1bの側面とがなす角度よりも鋭角にした(すなわちショルダー差を設けた)2層構造の多層版を示している。なお(c)は、レリーフ先端の角度(レリーフの頂面とレリーフ側面とがなす角度)が(b)の形態よりも鋭角に構成された版を示している。(d)はショルダー角10(ベース部7(すなわち基部層)とレリーフ側面とがなす角度)が設定された単層版を示す。(e)はレリーフ層1(低硬度層1a及び高硬度層1b)とベース層との3層構造の多層版を示す。即ち、版構成を多層構成とする態様としては、凸版のレリーフを多層化する形態(例えば図9(b)及び(c))と、レリーフ層1とベース層(ベース部7)とで多層化する形態(図9(e))があり、さらにこれらを併用しても良い。版から転写されたインク皮膜の均一性を高めるには、図9(b)及び(c)に示すように、インクが着肉するレリーフ上部を低硬度(低圧縮モジュラス)層とすることが好ましい。
但し、低硬度にすると、印刷時のドットゲインが大きくなる傾向があるため、低硬度層の厚みは印刷実験により最適化することが好ましい。逆に、インク着肉性は十分であるがドットゲインが大きい場合、マージナルをより抑制するため、レリーフ上部層の硬度を下部層より高めに設定し、印圧による応力をレリーフ下部層でより多く吸収することで対応できる場合がある。あまり硬度を低くしすぎると印圧吸収効果が過剰に作用してインクの転移が低下する場合があるため、硬度差を最適化することが好ましい。
マージナルをさらに抑制する方法としては、図9(c)に示すようにレリーフ上部層のショルダー(レリーフ先端の角度)をより鋭角とする技術が適用出来る。このような形状のレリーフを形成する方法としては、型に未硬化樹脂を流し込んで版を作製するプロセスにおいて、元の型のレリーフ形状を多段に加工する方法が挙げられる。マージナル抑制手段としては、例えば支持体の下に柔軟な層を設ける手段もあるが、印圧吸収効果は上記方法に比べ低い傾向にある。レリーフの断面形状は、傾倒を防ぐことができる点で、図9(d)に示すように、ベース層(ベース部7)に近いレリーフ形状が富士山のように拡がった、即ちショルダー角10の小さい単層版か、又は、図9(c)に示すように、下層部のショルダー角が小さい多層レリーフ構成が好ましいと考えられる。
更に、上記では印刷方式として樹脂版によるフレキソ方式を例に挙げて説明したが、本発明は、典型的なフレキソ印刷のみならず他の凸版印刷方式、例えば凸版オフセット印刷方式の凸版についても同様に実施可能である。
以上に記した方法でマージナルが抑制されることによって、より近接したパターンを独立して形成できるようになる。前述したように、図2の概略図には、従来技術のパターン(a)と本発明のパターン(b)とのパターン再現性を比較して示している。従来はマージナルによってパターン同士を近づけるとパターンとパターンが繋がってしまう場合があったが(図2(a))、本発明ではマージナルの低減によりパターン同士の繋がりを抑制でき(図2(b))るため、従来と比較してパターン間隔をより狭めることができる。すなわち、上述した本発明の態様から明らかなように、本発明によれば、レリーフ周囲へのインクのはみ出しが抑制され、マージナルが抑えられる。従って、パターンとパターンの間隔をより狭くすることが可能となる。
また、インク粘度が5Pa・S以下の場合、従来の凸版印刷では、均一な厚膜の形成が困難であったが、本発明に係る凸版印刷版を用いることにより、インクがレリーフの窪みに入ることで、インクの転写量が確保できる。よって、従来の凸版よりも均一な厚膜が可能となる。凸版印刷版の表面自由エネルギーの調整方法としては、樹脂含有液を重合する際の乳化剤により調整する方法等を用いることができる。
次に、本発明に係る凸版印刷版を使用して形成される印刷物について述べる。印刷物としては、例えば、有機EL素子、有機薄膜太陽電池、トランジスタ、電極、配線等が挙げられる。
本発明に係る凸版印刷版の製造方法から得られた凸版印刷版を用いて上記印刷物を印刷する方法を具体的に説明する。凸版印刷版を被印刷物に押し当てて印刷を行なう工程を含む凸版印刷方法では、凸版印刷版を円筒形の版胴の外周面に配置し、該版胴を転動させることによって、被印刷物に対して転写を行なう転写工程において、転写時のレリーフと被印刷物との押し込み量が100μm以下となる印圧で印刷することが好ましい。該押し込み量が100μmよりも高くなる印圧の場合、レリーフがつぶれてしまい、窪みの効果がなくなり、マージナルやパターン均一性に問題が生じる場合がある。
印刷物の例としてトランジスタについて説明する。まず基板の上にゲート電極及び配線に相当する導電性のパターンを、凸版印刷版を用いて印刷して作製する。導電性パターン形成用のインクとしては金属微粒子を分散させたものや導電性のポリマー等を用いることができる。次に、形成したパターン上の所定の位置に合わせ、トランジスタのゲート絶縁膜に相当するパターンを印刷する。凸版印刷版は絶縁膜のパターンに相当するものに交換しておく。以後パターンを変更するたびに版を変更する。ゲート絶縁膜形成用のインクとしては有機系の材料を溶剤に溶解したものや無機系の塗布材料、例えばポリシラザン系の材料等が使用可能である。次に所定の位置にソース電極とドレイン電極及びこれらに接続される配線を形成する。次にソース電極とドレイン電極とを跨るように半導体のパターンを形成する。半導体パターン形成用のインクとしては溶剤に可溶なポリチオフェン系誘導体やポリアセン系等の有機半導体が使用可能である。次いで素子を保護するため、これらのパターンを覆うように保護膜パターンを形成する。保護膜の材料としては高分子の樹脂材料等を溶剤に溶解させたものが使用可能である。
また、印刷物の別の例として有機EL素子について説明する。有機EL素子はディスプレイや照明用途にて用いられる。有機EL素子は有機物を陽極と陰極とで挟み込んだ構造をとっている。その中で本発明に係る凸版印刷版を用いる工程としては、電極形成時並びに電極に挟み込まれた有機物、具体的にはホール注入材料や発光材料を塗布する工程が適している。電極形成方法としては、ガラス基板若しくはプラスチック基板に酸化インジウム・スズ(ITO)等の透明電極を所望のパターンにて印刷する。この透明電極を作製する際に本発明に係る凸版印刷版を用いた印刷方法を用いてパターンを作製することができる。また、ITO電極の上のホール注入材料及び/又はホール輸送材料、さらにその上の発光材料を形成する場合においても本発明に係る凸版印刷版を用いた印刷方法を使用することができる。
ホール注入材料又はホール輸送材料又はこれら両材料の機能を有するホール注入輸送材料の例としては、芳香族アミン系材料、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)等のフタロシアニン系錯体、アニリン系共重合体、ポリフィリン系化合物、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、さらにアントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン系化合物等が挙げられる。また、これらのアセン系化合物の誘導体、すなわち、上記アセン系化合物にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミノ基、ヒドロキシ基、ベンジル基、ベンゾイル基、フェニル基、ナフチル基等の置換基を導入した誘導体や、上記アセン系化合物のキノン誘導体等も挙げられる。
また、ポリアニリン、ポリビニルアントラセン、ポリカルバゾール、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリフルオレン、ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン/ポリ(スチレンスルフォン酸)(PEDOT/PSS)、チオフェン−フルオレン共重合体、フェニレンエチニレン−チオフェン共重合体、ポリアルキルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、その他、チオフェン系化合物等の高分子系正孔注入材料又は高分子系正孔輸送材料等も挙げられる。
発光材料としては、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)、ポリ(チオフェン)、ポリ(フルオレン)又はこれらの誘導体等の高分子系発光材料を挙げることができる。また、トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq2)、フェナントロリン系ユウロピウム錯体(Eu(TTA)3(phn))、ペリレン、クマリン誘導体、キナクリドン、イリジウム錯体(Ir(ppy)3、Firpic、Ir(ppy)2(acac))といった蛍光材料や燐光材料等を挙げることができる。
これらは、ホール若しくは電子輸送性又はその両方を有するホスト材料に少量ドープして用いても良い。そのようなホスト材料としては4,4’−ビス(9−カルバゾール)ビフェニル(CBP)、2,7−ジ−9−カルバゾリル−9,9’−スピロビフルレン(spiro−CBP)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)等が挙げられる。
本発明の印刷方法を用いる場合は、上記の各種材料(例えば、ホール注入材料、ホール輸送材料、発光材料、有機半導体材料等)を各種溶媒に分散若しくは溶解させて使用する。その時の溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、テトラリン等の炭化水素類等が挙げられる。