JP2009157987A - ヘッド・スライダのリセス量を調整する方法及びディスク・ドライブ装置 - Google Patents

ヘッド・スライダのリセス量を調整する方法及びディスク・ドライブ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ヘッド・スライダのヘッド素子部のリセス量を適切な値に再設定する。
【解決手段】本発明の一実施形態において、HDD製造のテスト工程において、HDDは、ヘッド素子部122のリセス量についての判定を行い、ヘッド素子部122のリセス量が設定されている条件を満たさない場合に、リセス量を再設定して小さくする。HDDはアクチュエータを待避先のランプに移動し、ヘッド・スライダ12のヒータにパワーを供給する。ヒータ・パワーが大きい場合、ヘッド素子部122は塑性変形を起す。ヘッド素子部122の塑性変形により、ヘッド素子部122のリセス量が小さくなる。
【選択図】図6

Description

本発明はヘッド・スライダのリセス量を調整する方法及びディスク・ドライブ装置に関し、特に、ヘッド素子部の突出量を調整するヒータを有するヘッド・スライダのヘッド素子部のリセス量調整に関する。
ディスク・ドライブ装置として、光ディスク、光磁気ディスク、あるいはフレキシブル磁気ディスクなどの様々な態様のディスクを使用する装置が知られているが、その中で、ハードディスク・ドライブ(HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システムあるいは携帯電話など、HDDの用途はその優れた特性により益々拡大している。
HDDで使用される磁気ディスクは、同心円状に形成された複数のデータ・トラックとサーボ・トラックとを有している。各サーボ・トラックはアドレス情報を有する複数のサーボ・データから構成される。また、各データ・トラックには、ユーザ・データを含む複数のデータ・セクタが記録されている。円周方向に離間するサーボ・データの間に、データ・セクタが記録されている。揺動するアクチュエータに支持されたヘッド・スライダのヘッド素子部が、サーボ・データのアドレス情報に従って所望のデータ・セクタにアクセスすることによって、データ・セクタへのデータ書き込み及びデータ・セクタからのデータ読み出しを行うことができる。
磁気ディスクの記録密度を向上させるには、磁気ディスク上を浮上するヘッド素子部と磁気ディスクとの間のクリアランス及びその変化を小さくすることが重要である。このため、クリアランスを調整するいくつかの機構が提案されている。そのうちの一つは、ヘッド・スライダにヒータを備え、そのヒータでヘッド素子部を加熱することよってクリアランスを調整する(例えば、特許文献1を参照)。本明細書において、これをTFC(Thermal Fly height Control)と呼ぶ。TFCは、ヒータに電流を供給して発熱させ、熱膨張によってヘッド素子部を突出させる。これによって、磁気ディスクとヘッド素子部との間のクリアランスを小さくする。
TFCはヒータの発熱量を制御することで、ヘッド素子部の突出量を調整する。クリアランアスはヘッド素子部と磁気ディスクとの間の間隔であり、ヒータ・パワーとクリアランスとの間の関係は、ヒータ・オフにおけるヘッド素子部の形状に依存する。具体的には、ヘッド素子部の磁気ディスク側端面の初期位置により、突出量が同一であってもクリアランアスは変化する。正確なクリアランアス制御を行うためには、ヘッド素子部の初期形状(ヒータ・オフにおける形状)に応じたヒータ・パワーを供給することが要求される。
特開平2007−80409号公報
典型的に、ヘッド・スライダ上のヘッド素子部は、スライダの空気軸受面(Air Bearing Surface:ABS)よりも後退している。ABSとヘッド素子部の磁気ディスク側端面の初期位置との間の距離をリセス量と呼ぶ。リセス量は、ヘッド・スライダの製造における研磨及びエッチング工程により規定される。従って、ヘッド・スライダ毎のリセス量のばらつきを避けることはできない。また、ヘッド・スライダは、アクチュエータに工程されHDD内に実装される。HDDの組み立てにおける組み立て交差が存在するため、スライダの浮上高のばらつきが存在し、ヘッド・スライダ毎にスライダの浮上高は異なる。
TFCは、ヘッド・スライダ毎にクリアランス(ヘッド素子部の突出量)を調整することができるため、上記リセス量のばらつきやスライダ浮上高のばらつきを低減し、ヘッド・スライダ毎に適切なクリアランス制御を行うことができる。しかし、リセス量が大きすぎる場合、あるいはHDDに実装されたヘッド・スライダの初期クリアランス(スライダ浮上高とリセス量の合計)が大きすぎる場合、クリアランスを所望の値とするためのヒータ・パワーが大きくなり、正確なクリアランス制御の妨げとなる。
また、典型的なHDDにおいて、ヘッド素子部の損傷を防止するため、TFCにおけるヒータ・パワー最大値は規定されている。つまり、ヒータによるヘッド素子部の突出量は制限されている。このため、リセス量やヘッド・スライダの初期クリアランアスが大きい場合、十分に小さいクリアランアスを実現することができず、正確なリード/ライトを行うことができない可能性がある。従って、ヘッド・スライダのリセス量が大きすぎる場合、より小さいリセス量に再設定することができる技術が望まれる。
本発明の一態様は、スライダと、前記スライダのトレーリング側端面に形成されヒータを含むヘッド素子部と、を有するヘッド・スライダの前記ヒータにパワーを供給し、前記パワーを供給された前記ヒータの熱により前記ヘッド素子部を膨張させ、前記膨張により前記ヘッド素子部を塑性変形させて前記ヘッド・スライダのリセス量を小さくし再設定する。これにより、精度よくリセス量を再設定することができる。好ましくは、前記ヒータはアクセス時の前記ヘッド素子部の突出量を調整する。これにより、リセス量を再設定するための付加的なヒータを必要とせず、精度よくリセス量を再設定することができる。好ましくは、前記ヘッド素子部が設定条件を満たすかを判定し、前記リセス量が前記設定条件を満たさない場合に、前記塑性変形により前記リセス量を小さくすることで、必要な場合にリセス量の再設定を行う。
ディスク・ドライブ装置において、アンロード状態であるヘッド・スライダに前記パワーを供給して、前記ヘッド素子部の塑性変形を行うことが好ましい。これにより、安全かつ少ないヒータ・パワーでリセス量再設定を行うことができる。さらに、前記設定条件は、前記ディスク・ドライブ装置において、前記ヘッド素子部とディスクとの間の初期クリアランアスが閾値より小さいことである。これにより、クリアランスを適切な値に設定することができる。前記設定条件は、前記ディスク・ドライブ装置のテストにおいて、設定されているヒータ・パワーにおいて前記ヘッド・スライダと前記ディスクとの接触が検出されることである。これにより、ヒータ・パワーによる適切なクリアランス調整を行うことができる。
前記リセス量を再設定した後の前記ヘッド素子部と前記ディスクとの間の初期クリアランスが基準値以上となるように、前記塑性変形のためのパワーを供給する。これにより、ヘッド・スライダの信頼性の低下を防ぐことができる。好ましくは、前記基準値が、設定されたノミナル値又は設定された下限値である。
好ましい例において前記ヘッド・スライダのリセス量の再設定を、前記ヘッド・スライダを前記ディスク・ドライブ装置に実装する前に行う。これにより、ヘッド・スライダあるいはそれを有する部品の製造歩留まりを改善する、あるいは、ヘッド・スライダのあるいはそれを有する部品の製造においてリセス量を適切な値にすることができる。
好ましくは、設定されている複数個のヒータ・パワーの中から、所望とする塑性変形量付近の供給時間当たりの突出量の変化量が所定の範囲内であって、最もヒータ・パワーの大きいヒータ・パワーを選択し供給する。これにより、効率的にリセス量の再設定を行うことができる。
好ましい例において、前記塑性変形前の前記ヘッド素子部と前記ディスクとの間のクリアランスに応じて、塑性変形量を変化させ、前記塑性変形の変形量の増加に応じて前記パワーを増加させる。これにより、アクセス時のヒータによるより適切なクリアランス調整を行うことができる。
本発明の他の態様に係るディスク・ドライブ装置は、スライダと、前記スライダのトレーリング側端面に形成されアクセス時の前記ヘッド素子部の突出量を調整するヒータを含むヘッド素子部と、を有するヘッド・スライダと、前記ヘッド・スライダを支持し、ディスク上で前記ヘッド・スライダを移動する移動機構と、前記移動機構の待避先であるランプと、前記移動機構が前記ランプ上にあるとき、前記ヒータに対してヒータ・パワーを供給して、前記ヘッド素子部の塑性変形を行うように制御するコントローラを有する。これにより、これにより、安全かつ少ないヒータ・パワーで精度よくリセス量再設定を行うことができる。
本発明の他の態様に係るヘッド・スライダは、スライダと、前記スライダのトレーリング側端面に形成されアクセス時の前記ヘッド素子部の突出量を調整するヒータを含むヘッド素子部とを有し、前記スライダの前記ヘッド素子部と接する面の近傍の空気軸受面に突出部を有するものである。
本発明によれば、ヘッド・スライダのリセス量を適切な値に再設定することができる。
以下に、本発明を適用した実施の形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略されている。以下においては、ディスク・ドライブ装置の一例であるハードディスク・ドライブ(HDD)を例として、本発明の実施形態を説明する。
本形態のHDDは、TFC(Thermal Fly height Control)により、ヘッド素子部とディスクの一例である磁気ディスクとの間のクリアランスを調整する。本明細書において、クリアランスはヘッド素子部と磁気ディスクとの間の間隔である。TFCは、スライダ上のヒータからの熱によるヘッド素子部の熱膨張によってクリアランスを調整する。本形態は、TFCを行うHDDに実装されるヘッド・スライダのリセス量の再設定に特徴を有している。リセス量とは、上記のようにスライダの空気軸受面(Air Bearing Surface:ABS)とヘッド素子部の磁気ディスク側端面の初期位置との間の距離である。そして、初期位置とは、TFCによりヒータ・パワーを供給する前の位置である。
好ましい一態様において、HDD製造のテスト工程において、HDDは、ヘッド素子部のリセス量についての判定を行い、前記ヘッド素子部のリセス量が設定されている条件を満たさない場合に、リセス量を再設定して小さくする。具体的には、ヘッド素子部と磁気ディスクとの間のクリアランアスが閾値よりも大きい場合にリセス量を小さくする。HDDは、ヒータ・パワーを変化させてクリアランアスを変化させることで、ヒータ・オフにおけるクリアランスを測定することができる。HDDはアクチュエータを待避先のランプに移動し、ヘッド・スライダのヒータにパワーを供給する。ヒータ・パワーが大きい場合、ヘッド素子部は塑性変形を起こす。ヘッド素子部の塑性変形により、ヘッド素子部のリセス量が小さくなる。
本形態のリセス量の再設定について詳細に説明する前に、HDDの全体構成を説明する。図1は、HDD1の全体構成を模式的に示すブロック図である。HDD1は、エンクロージャ10内に、データを記憶するディスクである磁気ディスク11を有している。スピンドル・モータ(SPM)14は、磁気ディスク11を所定の角速度で回転する。磁気ディスク11の各記録面に対応して、磁気ディスク11にアクセス(リードあるいはライト)するヘッド・スライダ12が設けられている。アクセスは、リード及びライトの上位概念である。各ヘッド・スライダ12は、磁気ディスク上を浮上するスライダと、スライダに固定され磁気信号と電気信号との間の変換を行うヘッド素子部とを備えている。
本形態のヘッド・スライダ12は、熱によってヘッド素子部を膨張・突出させ、磁気ディスク11との間のクリアランスを調整するTFCのためのヒータを備えている。このTFCのためのヒータを、ヘッド素子部を塑性変形させるためのヒータとして用いることで、新たなヒータを設ける必要はなくなる。ヘッド・スライダ12の構造については、後に図2を参照して詳述する。各ヘッド・スライダ12はアクチュエータ16の先端部に固定されている。アクチュエータ16はボイス・コイル・モータ(VCM)15に連結され、回動軸を中心に回動することによって、ヘッド・スライダ12を回転する磁気ディスク11上においてその半径方向に移動する。アクチュエータ16とVCM15とは、ヘッド・スライダ12の移動機構である。
エンクロージャ10の外側に固定された回路基板20上には、回路素子が実装されている。モータ・ドライバ・ユニット22は、HDC/MPU23からの制御データに従って、SPM14及びVCM15を駆動する。RAM24は、リード・データ及びライト・データを一時的に格納するバッファとして機能する。エンクロージャ10内のアーム電子回路(AE:Arm Electronics)13は、複数のヘッド・スライダ12の中から磁気ディスク11へのアクセスを行うヘッド・スライダ12を選択し、その再生信号を増幅してリード・ライト・チャネル(RWチャネル)21に送る。また、RWチャネル21からの記録信号を選択したヘッド・スライダ12に送る。AE13は、さらに、選択したヘッド・スライダ12のヒータへ電力を供給し、その電力量を調節する調節回路として機能する。
RWチャネル21は、リード処理において、AE13から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データとを含む。デコード処理されたリード・ユーザ・データ及びサーボ・データは、HDC/MPU23に供給される。また、RWチャネル21は、ライト処理において、HDC/MPU23から供給されたライト・データをコード変調し、更にコード変調されたライト・データをライト信号に変換してAE13に供給する。
コントローラの一例であるHDC/MPU23は、リード/ライト処理制御、コマンド実行順序の管理、サーボ信号を使用したヘッド・スライダ12のポジショニング制御(サーボ制御)、ホスト51との間のインターフェース制御、ディフェクト管理、エラーが発生した場合のエラー対応処理など、データ処理に関する必要な処理及びHDD1の全体制御を実行する。この他、HDC/MPU23は、AE13を制御してTFCによりクリアランスを調整する。
図2は、ヘッド・スライダ12の空気流出端面(トレーリング側端面)121近傍の構成を示す断面図である。図2に示される、Y方向をトレーリング方向、X方向をリーディング方向と呼び。スライダ123の磁気ディスク対向面は、空気軸受面(Air Bearing Surface:ABS)35であり、ABS35と磁気ディスク11との間の空気による圧力とアクチュエータ16の押圧力とがバランスして、ヘッド・スライダ12は磁気ディスク11上を浮上している。スライダ123はヘッド素子部122を支持する。ヘッド素子部122は、リード素子32とライト素子31とを有している。図2において、ライト素子31は、ライト・コイル311を流れる電流で磁極312間に磁界を生成し、磁気データを磁気ディスク11に書き込む。リード素子32は磁気異方性を有する磁気抵抗素子32aを備え、磁気ディスク11からの磁界によって変化する抵抗値によって磁気データを読み出す。
ヘッド素子部122は、スライダ123を構成するアルチック(AlTiC)基板に薄膜形成プロセスにより形成される。磁気抵抗素子32aは磁気シールド33a、33bによって挟まれており、ライト・コイル311は絶縁膜313で囲まれている。ライト素子31とリード素子32の周囲にアルミナなどの保護膜34が形成されている。ライト素子31及びリード素子32の近傍にはヒータ124が存在する。パーマロイなどを使用した薄膜抵抗体を蛇行させ、間隙をアルミナで埋めてヒータ124を形成することができる。
AE13がヒータ124に電流を流すと、ヒータ124の熱によってヘッド素子部122の近傍が突出変形する。例えば、ヒータ・オフの状態(ヘッドにヒータ・パワーを供給していない状態)において、ヘッド素子部122の磁気ディスク側端面はS1で示される形状であり、ヘッド素子部122と磁気ディスクとの間の距離であるクリアランスはC1で示されている。C1を初期クリアランスと呼ぶ。ヒータ124加熱時における突出形状S2を、破線で示す。ヘッド素子部122が磁気ディスク11に近づき、このときのクリアランスC2はクリアランスC1よりも小さい。なお、図2は概念図であり、寸法関係は正確ではない。ヘッド素子部122の突出量やクリアランスは、ヒータ124に供給するヒータ・パワー値に従って変化する。
HDC/MPU23は、ユーザ・データのリード/ライト処理におけるヒータ・パワーの決定において、磁気ディスク11とヘッド・スライダ12とが接触するヒータ・パワー値を使用する。クリアランアスは、ヘッド素子部122が磁気ディスク11との間の間隔である。従って、現在のヒータ・パワーと接触を起こすヒータ・パワーとの間の差分が、クリアランアスを規定する。具体的には、HDC/MPU23がAE13を制御してヒータ124に与えるヒータ・パワーPは、以下の関係を満たす。
P=(TDP×eff[BASE]−Target
−dt×t_comp−dp×p_comp)/eff
effは現在状態におけるヒータ・パワー効率である。eff[BASE]は基準状態におけるヒータ・パワー効率である。TDPは基準状態においてヘッド・スライダ12と磁気ディスク11とが接触するヒータ・パワーであり、Targetはターゲット・クリアランスである。dtは基準状態からの温度変化量、t_compは温度に対するクリアランス変化率、dpは基準状態からの気圧変化、p_compは気圧に対するクリアランス変化率である。つまり、第3項は温度変化のための補正値、第4項は気圧変化のための補正値である。
HDD1は、その製造におけるテスト工程において、各ヘッド・スライダ12のTDPを測定により決定する。従って、上記基準状態はTDPの測定における状態であり、典型的には、基準温度は室温、基準気圧は1気圧である。気圧に応じたTFCは、クリアランアスが小さく、より精細なクリアランス調整が必要な場合に特に有用である。HDC/MPU23は、そのテスト工程において上記複数の値を測定により決定する。
TDPはヘッド・スライダ12毎に異なる値であり、そのヘッド素子部122のリセス量及びスライダ123の浮上高によって変化する。図3(a)〜(c)は、それぞれ異なるヘッド・スライダ12を模式的に示している。例えば、図3(a)に例示したヘッド・スライダ12は、スライダ123の浮上高FH、リセス量Raを有している。ヒータ・パワーTDPaにおいて、ヘッド・スライダ12と磁気ディスク11とが接触する。リセス量は、スライダ123のABS35とヘッド素子部122の磁気ディスク側端面との間の距離である。
図3(b)に例示したヘッド・スライダ12は、図3(a)の例と同様のスライダ浮上高FHを有しているが、そのリセス量Rbはリセス量Raよりも小さい。つまり、図3(b)における初期クリアランス(ヒータ・オフにおけるクリアランス)は、図3(a)における初期クリアランアスよりも小さい。従って、ヘッド・スライダ12と磁気ディスク11とが接触するヒータ・パワーTDPbは、TDPaよりも小さい。
一方、図3(c)に例示したヘッド・スライダ12は、図3(a)の例と同様のスライダ浮上高FHを有しているが、そのリセス量Rcはリセス量Raよりも大きい。つまり、図3(c)における初期クリアランスは、図3(a)における初期クリアランアスよりも大きい。従って、ヘッド・スライダ12と磁気ディスク11とが接触するヒータ・パワーTDPcは、TDPaよりも大きい。
このように、ヘッド・スライダ12(ヘッド素子部122)と磁気ディスク11とが接触するヒータ・パワーは、ヘッド・スライダ12毎に異なる。HDC/MPU23は、ヒータ・パワーを調整することによって、各ヘッド・スライダ12の接触ヒータ・パワーを測定により決定する。ヘッド・ディスク接触の検出のためのいくつかの方法が知られている。例えば、HDC/MPU23は、リード信号の振幅、VCM電流値、あるいはSPM電流値などを測定することで、ヘッド・ディスク接触を検出することができる。
ヒータ124の加熱によるヘッド素子部112の損傷を避けるため、HDC/MPU23がヒータ124に与えることが許容されるヒータ・パワーは規定されている。ヘッド・スライダ12の初期クリアランスが大きい場合、上記ヘッド・スライダ12の接触測定において、最大のヒータ・パワーPmaxにおいてもヘッド・スライダ12と磁気ディスク11との接触が起きないことがある。つまり、初期クリアランスが、Pmaxで表されるクリアランアスよりも大きい場合、ヘッド・スライダ12と磁気ディスク11との接触が起きない。
例えば、図4(a)に示すように、スライダ浮上高FHa、リセス量Raのヘッド・スライダ12に対して、ヒータ・パワーTDPaを与えるとヘッド・スライダ12と磁気ディスク11の接触が起きるとする。図4(b)のヘッド・スライダ12のように、リセス量Rxが大きい場合、スライダ浮上高がFHaであっても、最大ヒータ・パワーPmaxにおいてヘッド素子部122と磁気ディスク11との接触は起きず、それらの間に空隙Gが存在する。
あるいは、図4(c)のヘッド・スライダ12のように、スライダ浮上高FHyが大きい場合、リセスがRaであっても、最大ヒータ・パワーPmaxにおいてヘッド素子部122と磁気ディスク11との接触は起きず、それらの間に空隙Gが存在する。図には示していないが、スライダ浮上高とリセス量のそれぞれは非常に大きいということがなくとも、それらの合計が大きければ、最大ヒータ・パワーPmaxにおいてヘッド素子部122と磁気ディスク11との接触は起きない。
本形態のHDC/MPU23は、TDPの測定において接触を検出しない場合、つまり、初期クリアランスが閾値であるPmaxよりも大きい場合、ヘッド素子部122のリセス量をより小さい値に再設定する。ヘッド素子部122と磁気ディスク11とが接触するようにリセス量を減少させることで、TDPを測定することができるようにし、その測定したTDPに基づいた正確なTFCを実現する。
上述のように、初期クリアランアスは主にリセス量とスライダ浮上高により規定される。従って、リセス量が平均的な値であっても、スライダ浮上高が大きいためにヘッド素子部122と磁気ディスク11との接触が起きないことも考えられる。そして、最大ヒータ・パワーにおいてヘッド素子部122と磁気ディスク11の接触が起きないことは、そのヘッド・スライダ12の浮上高が高すぎる、あるいは、その浮上高さに対してリセス量が大きすぎることを意味する。
ヘッド素子部122のリセス量を再設定するため、HDC/MPU23は、アクチュエータ16を待避先のランプに移動(アンロード)し、ランプ上の待機位置で停止させる。ヘッド・スライダがランプ上の待機位置で停止している状態をアンロード状態という。図5は、ランプ17上の待機位置で停止しているアクチュエータ16を示している。アクチュエータ16は、揺動軸161を中心に揺動し、磁気ディスク11の半径方向においてヘッド・スライダ12を移動する。
ランプ17は、磁気ディスク11の外周端近傍にある。アイドル時や非動作時、アクチュエータ16はランプ17上の停止位置にある。アクチュエータ16が待機位置にあるとき、ヘッド・スライダ12は磁気ディスク11上にはなく、磁気ディスク11から外れた位置にある。アクチュエータ16が待機位置にあるとき、ヘッド・スライダ12は磁気ディスク11の外側にあり、ヘッド・スライダ12は、SPM14の回転軸方向において、磁気ディスク11と重なっていない。
HDC/MPU23は、待機位置にあるヘッド・スライダ12に対して、AE13を制御してヒータ・パワーを供給する。ヘッド・スライダ12が待機位置にあるとき、ヘッド素子部122の突出量のヒータ・パワー感度は、磁気ディスク11の上を浮上しているときよりも大きい。つまり、同一のヒータ・パワーを加えた場合、待機位置にあるときの方が、磁気ディスク11の上を浮上しているときよりもヘッド素子部122の突出量は大きい。
ヘッド・スライダ12が磁気ディスク11の上を浮上しているとき、ヒータ124の熱が磁気ディスク11へと流れ、ヘッド素子部122の温度上昇も制限される。しかし、ヘッド・スライダ12が待機位置にあるときは、熱が磁気ディスク11へ逃げないため、磁気ディスク11上にあるときよりもヘッド素子部122の温度及び突出量が増加する。そして、安全かつ少ないヒータ・パワーにより、効率的にリセス量の再設定をすることができる。
HDC/MPU23は、待機位置にあるヘッド・スライダ12に所定のヒータ・パワーを与え、ヘッド素子部122を塑性変形(不可逆変形)させる。これにより、ヘッド素子部122のリセス量が小さくなる。図6(a)〜(c)は、ヒータ124の熱によるヘッド素子部122の塑性変形の様子を模式的に示している。図6(a)に示すように、ヘッド素子部122は、初期リセス量Rxを有している。図6(b)に示すように、HDC/MPU23はヒータ124にヒータ・パワーPpを与え、ヘッド素子部122を突出させる。
ヘッド素子部122の突出量が大きく閾値を越える場合、ヘッド素子部122は塑性変形する。そのため、ヒータ・パワーPpを与えている状態からヒータ124をオフとするとヘッド素子部122は収縮するが、その収縮量はヒータ・パワーPpにおける突出量よりも小さい。従って、図6(c)に示すように、塑性変形後のヘッド素子部122のリセス量Rzは、初期リセス量Rxよりも小さくなる。このように、ランプ17上でヒータ124によりヘッド素子部122を加熱することで、ヘッド素子部122を大きく変形させることができ、その塑性変形によるリセス量の再設定を行うことができる。
図7のフローチャートを参照して、TDP測定におけるヘッド素子部122のリセス量再設定処理の一例を説明する。HDC/MPU23は、TDPを測定するため、ヘッド・スライダ12のヒータ・パワーを段階的に増加させる。ヘッド・スライダ12と磁気ディスク11との接触が検出されない場合、HDC/MPU23は、設定されている最大ヒータ・パワーPmaxを与える(S11)。最大ヒータ・パワーPmaxにおいて接触が検出された場合(S12におけるY)、HDC/MPU23は、そのヒータ・パワーPmaxをTDPと決定する。
最大ヒータ・パワーPmaxにおいて接触が検出されない場合(S12におけるN)、HDC/MPU23は、クリアランスが閾値を越えていると判定し、リセス量の再設定を行う。したがって、初期クリアランスが閾値より大きいかどうかは、本実施形態の制御を行うかどうかを決定する設定条件の1つである。具体的には、HDC/MPU23は、モータ・ドライバ・ユニット23を介してVCM15を制御し、アクチュエータ16をアンロードしてランプ17上の待機位置に移動しアンロード状態にする(S13)。HDC/MPU23は、AE13のレジスタにヒータ・パワーを表すデータをセットし、AE13はそのデータに従って、ヒータ・パワーをヘッド・スライダ12に供給する(S14)。このときのヒータ・パワーは、ヘッド素子部122の塑性変形を起こすに足りる大きさのパワーである。これにより、ヘッド素子部122のリセス量が小さくなる。
HDC/MPU23はヒータ・パワーの供給を停止し、アクチュエータ16(ヘッド・スライダ12)をランプ17から磁気ディスク11にロードし(S15)、TDPの再測定を行う(S16)。TDP再測定においてヘッド素子部122と磁気ディスク11との接触を検出した場合(S17におけるY)、HDC/MPU23は、そのヒータ・パワーをTDPと決定する。
TDP再測定において最大ヒータ・パワーPmaxを与えても接触を検出しない場合(S17におけるN)、HDC/MPU23は、これまでの塑性変形回数が規定のN回に達しているかを確認する(S18)。塑性変形回数がN回未満である場合(S18におけるN)、HDC/MPU23は、リセス量の再設定とTDP測定とを繰り返す(S14〜S17)。塑性変形回数がN回に達している場合(S18におけるY)、HDC/MPU23はTDPの測定を中止する。規定回数のリセス量再設定によってもヘッド・スライダ12が磁気ディスク11に接触しない場合、ヘッド・スライダ12の構造に回復不能な欠陥が存在する可能性が高いからである。
次に、ヘッド素子部122を塑性変形させるためのヒータ・パワーの好ましい供給方法について説明する。図8は、ヒータ・パワーと塑性変形による静的突出量変化(リセス量変化)との関係を示す測定結果である。静的突出量は、ヒータ・オフにおける突出量であり、塑性変形前の初期状態からの突出量である。測定に使用したヘッド・スライダの最大ヒータ・パワー値Pmaxは、150mWであった。Y軸はヘッド素子部の初期状態からの突出量を示しており、その増加分はリセス量の減少分に相当する。X軸はヒータ・パワーであり、各ヒータ・パワーの供給時間は30秒であった。
100mWを越えるヒータ・パワーを供給すると、ヘッド素子部122は塑性変形し、静的突出量(リセス量)が減少する。120mWを越えるヒータ・パワーを供給すると、静的突出量(リセス量)は急激に増加(減少)する。図8の静的突出量変化と供給ヒータ・パワーとの間の関係は、指数関数で近似することができる。なお、図8のグラフにおいて、一部のヒータ・パワーにおいて静的突出量が減少しているが、これは測定誤差によるものである。
図9は、ヒータ・パワー供給時間と塑性変形による静的突出量変化(リセス量変化)との関係を示す測定結果である。この測定は、ヘッド・スライダ12に150mWのパワーを供給し、その供給時間に対する静的突出量(リセス量)変化を測定した。●で示されているデータは、それぞれ、150mWのヒータ・パワーを30秒間与え、その後に静的突出量変化(リセス量変化)の測定することを繰り返し、30秒、60秒、90秒、120秒そして150秒の時の静的突出量(リセス量)変化を示している。
これに対して、■で示されているデータは、ヒータ124のON/OFFを繰り返し、ヒータ・パワーのトータルの供給時間に対する静的突出量変化(リセス量変化)の測定結果を示している。具体的には、150mWのヒータ・パワーを10秒間供給した後に静的突出量変化(リセス量変化)の測定を行い、同様のヒータ・パワー供給と測定を繰り返した。各測定前のヒータ・パワー供給時間は10秒であり、例えば、3回目の測定におけるトータルのヒータ・パワー供給時間は30秒である。
図9のグラフから理解できるように、連続したT秒間のヒータ・パワーを供給した場合の静的突出量変化(リセス量変化)と、複数回のヒータ・パワー供給を行い、その合計時間がT秒間である場合の静的突出量変化(リセス量変化)とは、略同一である。この結果は、HDC/MPU23がリセス量を再設定するときのヒータ・パワー制御をより容易なものとする。HDC/MPU23は、徐々にリセス量を減少させるために、供給時間を変化させながら順次ヒータ・パワーを供給する場合も、トータル供給時間を測定することでリセス量変化を容易に予想することができる。また、図7のフローチャートを参照して説明した例のように、塑性変形を複数回繰り返す処理において、リセス量変化を容易に予想することができる。
図7を参照して説明した処理におけるリセス量再設定において、ヒータ・パワー供給方法の好ましい例は、再設定後の初期クリアランスが、基準値以上となるように、塑性変形のためのヒータ・パワー供給を行う。HDC/MPU23は、再設定したリセス量を増加させることはできない。ヒータにより、塑性変形させたヘッドの形状をもとに戻すことはできないからである。そして、小さすぎるリセス量(初期クリアランス)は、ヘッド素子部122と磁気ディスク11との間の接触の可能性を大きくする。従って、上記方法により、塑性変形によってリセス量を小さくしすぎることを防ぐことができる。
上記基準となる好ましい値の一つは、ヘッド・スライダ12のノミナルの初期クリアランスである。ノミナル値は、例えば、HDD1の設計において決定される。ここで、初期クリアランスとTDPは略比例関係にあるため、初期クリアランスをTDPのヒータ・パワー量で表す。例えば、ノミナルのTDPが80mWであり、設定されているヒータ・パワー最大値Pmaxが150mWであるとする。HDC/MPU23は、リセス量再設定後の初期クリアランスがノミナル値以上であるように、塑性変形のためのヒータ・パワーを供給する。
150mWのヒータ・パワーにおいて接触を検出しない場合、ノミナルの初期クリアランスと対象としているヘッド・スライダ12の初期クリアランスとの差は、ヒータ・パワー最大値Pmaxの150mWとノミナルTDPの80mWの差分である70mWを越える量である。従って、HDC/MPU23は、70mWのリセス量変化に相当するヒータ・パワーをランプ上のヘッド・スライダ12に供給する。初期クリアランスをノミナル以上とすることで、衝撃などによりヘッド・スライダの浮上高が急激に変化するような場合にも、ヘッド・スライダの磁気ディスクへの接触を避けることができる。また、一度のリセス量の調整により、基準値以上であり接触検知が可能なように設定できた場合には、工程時間を短縮することができる。
HDC/MPU23は、70mWのリセス量に相当するヒータ・パワーの値をテスト・コンピュータから予め取得しておく。上記ノミナル値は、HDD1のテスト工程において随時更新してもよい。テスト・コンピュータは、HDD1のテストが終了するごとにTDPを取得し、その平均値を算出する。この平均値が上記ノミナル値となる。テスト・コンピュータは、更新したノミナル値からリセス量再設定のためのヒータ・パワー値を算出し、HDD1のテスト前にその値をHDD1に転送する。
リセス量再設定におけるヒータ・パワーを決定するための、他の好ましい基準値は、初期クリアランスの下限値である。下限値は、HDD1の設計において決定することができる。例えば、上記例に従って、ノミナルのTDPが80mWであり、TDPの下限値が40mWであるとする。40mW未満のTDPのヘッド・スライダ12は、エラーと判定される。
HDC/MPU23は、リセス量再設定後の初期クリアランスが下限値以上であるように塑性変形のためのヒータ・パワーを供給する。150mWのヒータ・パワーにおいて接触を検出しない場合、リセス量の下限値である40mWと対象としているヘッド・スライダ12のリセス量との差は、150mWと40mWの差分である110mWを越える量である。従って、HDC/MPU23は、110mWのリセス量に相当するヒータ・パワーをランプ上のヘッド・スライダ12に供給する。初期クリアランスを下限値以上とすることで、ヒータ・パワー最大値Pmaxと下限値との間に初期クリアランスを設定することができる可能性が高まる。そして、リセス量の再設定を一度の調整で終えることができるため、工程時間を短くできる。
上記例において、HDC/MPU23は、TDPを測定するためにリセス量の再設定を行う。しかし、HDC/MPU23は、より精細なリセス量の再設定を行うことができる。ヘッド・スライダ12の初期クリアランスには、適値が存在する。測定したヘッド・スライダの初期クリアランスが上記適値よりも大きい場合、リセス量を再設定することにより、初期クリアランスを適値に近づけることができる。この場合においても、HDC/MPU23は、上記適値と現在のリセス量の差分が閾値をこえる場合にリセス量の再設定を行い、現在のリセス量と上記適値との差分が閾値の範囲内である、もしくは実質的に同一な場合はリセス量の再設定を行わない。
HDC/MPU23は、塑性変形により調整するリセス量の変化量と、供給するヒータ・パワーの値及び時間との関係を示すデータを、テスト・コンピュータからダウンロードしておく。HDC/MPU23は、TDPの測定から、最適なTDPとTDP測定値の差分を算出する。リセス量の塑性変形による変化量は、ヒータ・パワーで表されるこの差分に相当する。HDC/MPU23は、算出した差分と上記データとから、リセス量再設定のためにヘッド・スライダ12に供給するヒータ・パワー値及び供給時間を決定し、そのヒータ・パワーをヒータ124に供給する。供給するヒータ・パワーは一定であってもよく、あるいは時間により変化させてもよい。
図10は各ヒータ・パワー値の供給時間と突出量との関係を示す。図10の測定データが示すように、リセス量は、ヒータ・パワーの供給を開始してすぐに急激に変化し、その後、ゆっくりと変化する。また、ヒータ・パワー値が小さいほど急激な変化を示す領域が少なく、滑らかな変化をするが、突出量の最大値(飽和値)が小さくなる。
リセス量を正確に調整するためには、急激な変化を示す領域を避けることが好ましい。一方、リセス量再設定のための時間は短いことが好ましい。従って、リセス量の塑性変形による調整量に応じて、ヒータ・パワーの値を変化させることが好ましい。具体的には、設定されたヒータ・パワーの中から、調整量付近の供給時間当たりの突出量の変化量が所定の範囲内であって、最も大きいヒータ・パワーを選択し供給すると良い。また、調整量が小さい場合には小さい値のヒータ・パワーを供給し、大きい場合には大きい値のヒータ・パワーを供給するとしてもよい。このように、塑性変形による調整量に応じて、ヒータ・パワーの量を変化させることにより、リセス量が急激に変化するヒータ・パワーの領域を使用せずに調整できるため、正確なリセス量の調整を行うことができる。
図11(a)、(b)は、リセス量の調整量に応じた好ましいヒータ・パワー供給方法の一例を示している。図11(a)、(b)は、実際の測定により得られたデータに基づいている。HDC/MPU23は、テストを行う前に、図11(a)、(b)に対応するデータをテスト・コンピュータからダウンロードする。ダウンロードされるデータは、図11(a)、(b)の関係を示す関数あるいはテーブルである。
図11(a)において、Y軸は調整するリセス変化量(塑性変形による突出変化量)であり、X軸は各リセス変化量に対応したヒータ・パワー供給時間を示している。例えば、2.5nmのリセス量調整を行う場合、HDC/MPU23は、ヒータ・パワーを70秒間供給する。リセス調整量とヒータ・パワー供給時間が線形の関係にある。
ヒータ・パワーは、図11(b)のグラフから決定される。図11(b)において、Y軸はヒータ・パワー供給時間であり、X軸は各ヒータ・パワー供給時間に対応したヒータ・パワー値である。例えば、ヒータ・パワー供給時間が70秒である場合、HDC/MPU23は、142mWのヒータ・パワーを供給する。リセス調整量が増加するに応じてヒータ・パワー値が増加するので、より正確なリセス量の調整を行うことができる。なお、リセス調整量の増加に応じてヒータ・パワーを増加させる場合、ヒータ・パワーを連続的に増加させるのではなく、段階的に増加させてもよい。
次に、本実施形態を実施した後の、ヘッド・スライダの状態を説明する。上記のように、ヘッド素子部は塑性変形しているため、突出量が変化する。そして、通常のTFCのヒータにより大きな熱をヘッド素子部に供給し塑性変形させるため、スライダのヘッド素子と接している近傍のABS面に、ヘッド素子部の塑性変形量に比べて小さいものの、突出部が形成される。
上記の例は、HDD1のテスト工程において、HDD1自身がリセス量の再設定を行う。これとは異なり、ヘッド・スライダ12の製造工程において、リセス量の再設定を行うことができる。ヘッド・スライダの製造工程においてリセス量の再設定を行うころにより、HDDに組み込む前に良品と不良品を選別することができ、適切なヘッド・スライダのみHDDの組み込む工程に送ることができる。また、HDDにヘッド・スライダを組み込む前と後におこなっても良い。ヘッド・スライダ12の製造において、ヘッド・スライダ12のヒータ124にパワーを供給し、塑性変形によるリセス量調整を行う。ここで、ヒータは磁気ディスク11との間のクリアランスを調整するTFCに用いられるヒータに限られるものではない。リセス量の再設定を常に行ってもよいが、典型的にはリセス量が所定条件を満たさない場合に塑性変形によるリセス量の再設定を行う。
例えば、1列の複数ヘッド・スライダからなるロウ・バーが完成したタイミングで、光学的測定により各ヘッド・スライダ12のリセス量を測定する。リセス量が設定されている閾値よりも大きい場合に、各ヘッド・スライダ12のヒータ124にパワーを供給し、ヘッド素子部の塑性変形によるリセス量の再設定を行う。典型的には、ロウ・バー内における各ヘッド・スライダ12のリセス量は略同様である。従って、ロウ・バーから選択した一つのヘッド・スライダ12のリセス量を測定し、その値に応じて全てのヘッド・スライダ12に同一のヒータ・パワーを供給してもよい。
あるいは、ヘッド・スライダ12の製造における動的電気テストにおいて、リセス量の再設定を行ってもよい。動的電気テストは、ヘッド・スライダ12をテスト用の磁気ディスク11上で実際に浮上させ、簡単なリード/ライトのテストを行う。この動的電気テストにおいて、リセス量が閾値以上であると判定した場合にリセス量の再設定を行う。好ましくは、ヘッド・スライダ12をHDD1に実装する前にこのようなリセス量の再設定を行うと共に、HDD1のテスト工程においても、リセス量の再設定を行う。これにより、より正確なクリアランス制御を実現することができる。
以上、本発明を好ましい実施形態を例として説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。本発明は、リード素子のみを備えるヘッド・スライダを実装するHDDに、あるいは、HDD以外のディスク・ドライブ装置に適用してもよい。リセス量の再設定は、出荷後のHDD1が起動時あるいはアイドル時に行ってもよい。
本実施形態において、HDDの全体構成を模式的に示すブロック図である。 本実施形態において、TFCのためのヒータを備えたヘッド・スライダの構成を模式的示す断面図である。 本実施形態において、それぞれ異なるヘッド・スライダを模式的に示している。 本実施形態において、最大ヒータ・パワーにおいてヘッド素子部と磁気ディスクとの接触は起きない例を模式的に示している。 本実施形態において、ランプ17の待機位置で停止しているアクチュエータを示している。 本実施形態において、ヒータの熱によるヘッド素子部の塑性変形の様子を模式的に示している。 本実施形態において、TDP測定におけるヘッド素子部のリセス量再設定処理の一例を説明するフローチャートである。 本実施形態において、ヒータ・パワーと塑性変形による静的突出量変化(リセス量変化)との関係を示す測定結果を示している。 本実施形態において、ヒータ・パワー供給時間と塑性変形による静的突出量変化(リセス量変化)との関係を示す測定結果を示している。 本実施形態において、各ヒータ・パワー値の供給時間と突出量との関係の測定結果を示す図である。 本実施形態において、リセス量の調整量に応じた好ましいヒータ・パワー供給方法の一例を示している。
符号の説明
1 ハードディスク・ドライブ、10 エンクロージャ、11 磁気ディスク
12 ヘッド・スライダ、14 スピンドル・モータ、15 ボイス・コイル・モータ
16 アクチュエータ、20 回路基板、21 リード・ライト・チャネル
22 モータ・ドライバ・ユニット、23 ハードディスク・コントローラ/MPU
24 RAM、31 ライト素子、32 リード素子、32a 磁気抵抗素子
33a、b シールド、34 保護膜、51 ホスト、121 トレーリング側端面
122 ヘッド素子部、123 スライダ、124 ヒータ、311 ライト・コイル
312 磁極、313 絶縁膜

Claims (20)

  1. スライダと、前記スライダのトレーリング側端面に形成されヒータを含むヘッド素子部と、を有するヘッド・スライダの前記ヒータにパワーを供給し、
    前記パワーを供給された前記ヒータの熱により前記ヘッド素子部を膨張させ、
    前記膨張により前記ヘッド素子部を塑性変形させて前記ヘッド・スライダのリセス量を小さくし再設定する、
    方法。
  2. 前記ヒータはアクセス時の前記ヘッド素子部の突出量を調整する、
    請求項1に記載の方法。
  3. さらに、前記ヘッド素子部が設定条件を満たすかを判定し、
    前記リセス量が前記設定条件を満たさない場合に、前記塑性変形により前記リセス量を小さくする、
    請求項2に記載の方法。
  4. ディスク・ドライブ装置において、アンロード状態であるヘッド・スライダに前記パワーを供給して、前記ヘッド素子部の塑性変形を行う、
    請求項3に記載の方法。
  5. 前記設定条件は、前記ディスク・ドライブ装置において、前記ヘッド素子部とディスクとの間の初期クリアランアスが閾値より小さいことである、
    請求項4に記載の方法。
  6. 前記設定条件は、前記ディスク・ドライブ装置のテストにおいて、設定されているヒータ・パワーにおいて前記ヘッド・スライダと前記ディスクとの接触が検出されることである、
    請求項4に記載の方法。
  7. 前記リセス量を再設定した後の前記ヘッド素子部と前記ディスクとの間の初期クリアランスが基準値以上となるように、前記塑性変形のためのパワーを供給する、
    請求項3に記載の方法。
  8. 前記基準値が、設定されたノミナル値又は設定された下限値である、
    請求項7に記載の方法。
  9. 前記ヘッド・スライダのリセス量の再設定を、前記ヘッド・スライダを前記ディスク・ドライブ装置に実装する前に行う、
    請求項1に記載の方法。
  10. 設定されている複数個のヒータ・パワーの中から、所望とする塑性変形量付近の供給時間当たりの突出量の変化量が所定の範囲内であって、最もヒータ・パワーの大きいヒータ・パワーを選択し供給する、
    請求項2に記載の方法。
  11. 前記塑性変形前の前記ヘッド素子部と前記ディスクとの間のクリアランスに応じて、塑性変形量を変化させ、
    前記塑性変形の変形量の増加に応じて前記パワーを増加させる、
    請求項2に記載の方法。
  12. スライダと、前記スライダのトレーリング側端面に形成されアクセス時の前記ヘッド素子部の突出量を調整するヒータを含むヘッド素子部と、を有するヘッド・スライダと、
    前記ヘッド・スライダを支持し、ディスク上で前記ヘッド・スライダを移動する移動機構と、
    前記移動機構の待避先であるランプと、
    前記移動機構が前記ランプ上にあるとき、前記ヒータに対してヒータ・パワーを供給して、前記ヘッド素子部の塑性変形を行うように制御するコントローラと、
    を有するディスク・ドライブ装置。
  13. 前記コントローラは、前記ヘッド素子部が設定条件を満たすかを判定し、
    前記リセス量が前記設定条件を満たさない場合に、前記ヘッド素子部の塑性変形を行う、
    請求項12に記載のディスク・ドライブ装置。
  14. 前記設定条件は、前記ディスク・ドライブ装置において、前記ヘッド素子部とディスクとの間の初期クリアランアスが閾値より小さいことである、
    請求項13に記載のディスク・ドライブ装置。
  15. 前記設定条件は、前記ディスク・ドライブ装置のテストにおいて、設定されているヒータ・パワーにおいて前記ヘッド・スライダと前記ディスクとの接触が検出されることである、
    請求項13に記載のディスク・ドライブ装置。
  16. 前記コントローラは、前記リセス量を再設定した後の前記ヘッド素子部と前記ディスクとの間の初期クリアランスが基準値以上となるように、前記塑性変形のためのパワーを制御する、
    請求項12に記載のディスク・ドライブ装置。
  17. 前記基準値が、設定されたノミナル値又は設定された下限値である、
    請求項12に記載のディスク・ドライブ装置。
  18. 前記コントローラは、設定されている複数個のヒータ・パワーの中から、所望とする塑性変形量付近の供給時間当たりの突出量の変化量が所定の範囲内であって、最もヒータ・パワーの大きいヒータ・パワーを選択するよう制御する、
    請求項12に記載のディスク・ドライブ装置。
  19. 前記塑性変形前の前記ヘッド素子部と前記ディスクとの間のクリアランスに応じて、塑性変形量を変化させ、前記塑性変形の変形量の増加に応じて前記パワーを増加させるよう制御する、
    請求項12に記載のディスク・ドライブ装置。
  20. スライダと、
    前記スライダのトレーリング側端面に形成されアクセス時の前記ヘッド素子部の突出量を調整するヒータを含むヘッド素子部と、を有し、
    前記スライダの前記ヘッド素子部と接する面の近傍の空気軸受面に突出部を有する、
    ヘッド・スライダ。
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