JP2009156438A - 伸縮軸及び伸縮軸を備えたステアリング装置 - Google Patents

伸縮軸及び伸縮軸を備えたステアリング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】雄シャフトと雌シャフトとの間の半径方向と回転方向の両方のガタを抑制した伸縮軸及び伸縮軸を備えたステアリング装置を提供する。
【解決手段】板ばね60を固定した雄中間シャフト16Aを雌中間シャフト16Bに挿入すると、板ばね60の上板63Aの当接部64Aが右歯面42Aに当接し、上板63Aの左端を支点にして、上板63Aが下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板63Aの弾性変形によって、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に、予圧力FAが付与される。また、上板63Bの当接部64Bが左歯面41Bに当接し、上板63Bの右端を支点にして、上板63Bが下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板63Bの弾性変形によって、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に、予圧力FBが付与される。
【選択図】図4

Description

本発明はステアリング装置、特に、回転トルクを伝達可能で軸方向に相対移動可能な伸縮軸、例えば、中間シャフトやステアリングシャフト等の伸縮軸を有するステアリング装置に関する。
ステアリング装置には、回転トルクを伝達可能に、かつ、軸方向に相対移動可能に連結された伸縮軸が、中間シャフトやステアリングシャフト等として組み込まれている。すなわち、中間シャフトは、ステアリングギヤのラック軸に噛合うピニオンシャフトに、自在継手を締結する際に、一旦縮めてからピニオンシャフトに嵌合させて締結するために、伸縮機能が必要である。
また、ステアリングシャフトは、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイールの位置を軸方向に調整する必要があるため、伸縮機能が要求される。
このような伸縮軸で、ステアリングホイールの良好な操作性を実現するためには、相対的に摺動可能な雄シャフトと雌シャフトとの間の回転方向のガタが小さく、かつ、雄シャフトと雌シャフトとの間の軸方向の摺動抵抗が、長期間にわたって所定の摺動抵抗に維持される必要がある。このような伸縮軸が、特許文献1、特許文献2、及び、特許文献3に開示されている。
特許文献1から特許文献3の伸縮軸は、雄シャフトと雌シャフトとの間に板ばねを挿入し、この板ばねの付勢力によって、雄シャフトと雌シャフトとの間のガタを抑制している。しかし、特許文献1から特許文献3の伸縮軸では、板ばねの付勢力が、雄シャフトと雌シャフトとの間の半径方向にだけ作用するため、雄シャフトと雌シャフトとの間の回転方向のガタを抑制するのが困難であった。
また、伸縮軸では、ステアリングホイールの良好な操作性を得るためには、雄シャフトと雌シャフトとの間の軸方向の摺動抵抗が小さく、かつ、回転方向の剛性が大きいことが望ましいが、従来の板ばねでこのような相反する特性を備えた伸縮軸を得ることは困難であった。
実公平7−14102号公報 米国特許第4833936号明細書 独国特許出願公開第19715845号明細書
本発明は、雄シャフトと雌シャフトとの間の半径方向と回転方向の両方のガタを抑制するとともに、雄シャフトと雌シャフトとの間の軸方向の摺動抵抗が小さく、かつ、回転方向の剛性が大きい伸縮軸及び伸縮軸を備えたステアリング装置を提供することを課題とする。
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、雄シャフト、上記雄シャフトの外周に形成された雄スプライン、上記雄シャフトに軸方向に相対移動可能にかつ回転トルクを伝達可能に外嵌する雌シャフト、上記雌シャフトの内周に形成され、上記雄スプラインと係合して回転トルクを伝達可能な雌スプライン、上記雄シャフトの外周に形成された雄シャフト側軸方向溝、上記雄シャフト側軸方向溝に挿入された板ばね、上記板ばねに形成され、上記雄シャフト側軸方向溝の底壁に当接する底板、上記底板の両端から交互に折り曲げられて上記雌スプラインに向かって延びる一対の上板、上記一対の上板の一方に形成され、上記雌スプラインの一方の歯に当接する当接部、上記一対の上板の他方に形成され、上記雌スプラインの一方の歯に対向する他方の歯に当接する当接部を備えたことを特徴とする伸縮軸である。
第2番目の発明は、第1番目の発明の伸縮軸において、上記一方の上板の当接部は上記雌スプラインの隣接する一方の歯の右歯面に当接し、上記他方の上板の当接部は上記隣接する他方の歯の左歯面に当接することを特徴とする伸縮軸である。
第3番目の発明は、第1番目の発明の伸縮軸において、上記上板の当接部と雌スプラインの歯との接触面に作用する板ばねの付勢力の方向の延長線が上記雄シャフト側軸方向溝内を通ることを特徴とする伸縮軸である。
第4番目の発明は、第1番目の発明の伸縮軸において、上記上板の当接部の軸方向の両端には上記雌スプラインの歯から徐々に離間する折り曲げ部が形成されていることを特徴とする伸縮軸である。
第5番目の発明は、第1番目の発明の伸縮軸において、上記上板は、底板側から上板の当接部側に向かって軸方向の長さが徐々に小さく形成されていることを特徴とする伸縮軸である。
第6番目の発明は、第1番目の発明の伸縮軸において、上記一方の上板の当接部は上記雌スプラインの一方の歯底と一方の歯面に同時に当接し、上記他方の上板の当接部は上記雌スプラインの他方の歯底と他方の歯面に同時に当接することを特徴とする伸縮軸である。
第7番目の発明は、第6番目の発明の伸縮軸において、上記上板の当接部と雌スプラインの歯との接触面に作用する板ばねの付勢力は、上記雄シャフトと雌シャフトとの間に回転トルクが伝達されない時には、上記上板を折り曲げる方向に作用し、上記雄シャフトと雌シャフトとの間に回転トルクが伝達された時には、上記上板を圧縮する方向に作用することを特徴とする伸縮軸である。
第8番目の発明は、第1番目から第7番目までのいずれかの発明の伸縮軸を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
第9番目の発明は、第1番目から第7番目までのいずれかの発明の伸縮軸において、上記雄シャフトが雄中間シャフトであり、上記雌シャフトが雌中間シャフトであることを特徴とする伸縮軸である。
第10番目の発明は、第9番目の発明の伸縮軸を備えたことを特徴とするステアリング装置である。
本発明の伸縮軸及びステアリング装置では、雄スプラインを有する雄シャフトに軸方向に相対移動可能にかつ回転トルクを伝達可能に雌スプラインを有する雌シャフトを外嵌し、雄シャフトの外周に雄シャフト側軸方向溝を形成し、雄シャフト側軸方向溝に挿入された板ばねに雄シャフト側軸方向溝の底壁に当接する底板を形成し、底板の両端から交互に折り曲げられて雌スプラインに向かって延びる一対の上板を形成し、一対の上板の一方に雌スプラインの一方の歯に当接する当接部を形成し、一対の上板の他方に雌スプラインの一方の歯に対向する他方の歯に当接する当接部を備えている。
従って、雄シャフトと雌シャフトとの間には、半径方向の分力と回転方向の分力の両方の分力を有する予圧力が作用するため、半径方向(軸直角方向)と回転方向の両方のガタを抑制することが可能となる。
また、本発明の伸縮軸及びステアリング装置では、上板の当接部と雌スプラインの歯との接触面に作用する板ばねの付勢力は、雄シャフトと雌シャフトとの間に回転トルクが伝達されない時には、上板を折り曲げる方向に作用し、雄シャフトと雌シャフトとの間に回転トルクが伝達された時には、上板を圧縮する方向に作用する。
従って、上板の長さを適切に選定することで、雄シャフトと雌シャフトとの間の軸方向の摺動抵抗を小さくし、上板の板厚や断面形状を適切に選定することで、回転トルクを付与した時の回転方向の剛性を大きくするという、相反する要求を両立することが可能となる。
以下、図面に基づいて本発明の実施例1から実施例2を説明する。
図1は、本発明のステアリング装置の全体を示し、一部を断面した側面図であって、操舵補助部を有する電動パワーステアリング装置に適用した実施例を示す。図2は本発明の実施例1の伸縮軸の雌シャフトを示す斜視図である。図3は本発明の実施例1の伸縮軸の雄シャフトを示す斜視図である。
図4(1)は本発明の実施例1の伸縮軸を示し、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク非伝達時の断面図である。図4(2)は図4(1)の拡大断面図であって、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク伝達時の拡大断面図である。図5(1)は、雄シャフトと雌シャフトとの間で予圧を付与する本発明の実施例1の板ばね単体を示す斜視図である。図5(2)は図5(1)の板ばね単体の正面図である。図6(1)は、本発明の実施例1の板ばねと雌シャフトとの接触状態を示す要部の側面図である。図6(2)は図6(1)のP矢視図である。
図1に示すように、本発明のステアリング装置は、車体後方側(図1の右側)にステアリングホイール11を装着可能なステアリングシャフト12と、このステアリングシャフト12を挿通したステアリングコラム13と、このステアリングシャフト12に補助トルクを付与する為のアシスト装置(操舵補助部)20と、このステアリングシャフト12の車体前方側(図1の左側)に、図示しないラック/ピニオン機構を介して連結されたステアリングギヤ30とを備えている。
ステアリングシャフト12は、雌ステアリングシャフト12Aと雄ステアリングシャフト12Bとを、回転トルクを伝達可能に、かつ軸方向に関して相対移動可能にスプライン嵌合している。従って、上記雌ステアリングシャフト12Aと雄ステアリングシャフト12Bとは、衝突時に、このスプライン嵌合部が相対移動して、全長を縮めることができる。
また、上記ステアリングシャフト12を挿通した筒状のステアリングコラム13は、アウターコラム13Aとインナーコラム13Bとをテレスコピック移動可能に組み合わせており、衝突時に軸方向の衝撃が加わった場合に、この衝撃によるエネルギを吸収しつつ全長が縮まる、所謂コラプシブル構造としている。
そして、上記インナーコラム13Bの車体前方側端部を、ギヤハウジング21の車体後方側端部に圧入嵌合して固定している。また、上記雄ステアリングシャフト12Bの車体前方側端部を、このギヤハウジング21の内側に通し、アシスト装置20の図示しない入力軸の車体後方側端部に連結している。
ステアリングコラム13は、その中間部を支持ブラケット14により、ダッシュボードの下面等、車体18の一部に支承している。また、この支持ブラケット14と車体18との間に、図示しない係止部を設けて、この支持ブラケット14に車体前方側に向かう方向の衝撃が加わった場合に、この支持ブラケット14が上記係止部から外れ、車体前方側に移動するようにしている。
また、上記ギヤハウジング21の上端部も、上記車体18の一部に支承している。また、本実施例の場合には、チルト機構及びテレスコピック機構を設けることにより、上記ステアリングホイール11の高さ位置、及び、車体前後方向位置の調節を自在としている。このようなチルト機構及びテレスコピック機構は、従来から周知であり、本発明の特徴部分でもない為、詳しい説明は省略する。
上記ギヤハウジング21の車体前方側端面から突出した出力軸23は、自在継手15を介して、中間シャフト16の後端部に連結している。また、この中間シャフト16の前端部に、別の自在継手17を介して、ステアリングギヤ30の入力軸31を連結している。中間シャフト16は、雄中間シャフト(雄シャフト)16Aの車体前方側に、雌中間シャフト(雌シャフト)16Bの車体後方側が外嵌し、回転トルクを伝達可能に、かつ、軸方向に関して相対移動可能に嵌合している。
図示しないピニオンが、入力軸31に結合している。また、ステアリングギヤ30に往復摺動可能に内嵌された図示しないラックが、このピニオンに噛み合っており、ステアリングホイール11の回転が、タイロッド32を移動させて、図示しない車輪を操舵する。
アシスト装置20のギヤハウジング21には、電動モータ26のケース261が固定され、この電動モータ26の図示しない回転軸にウォームが結合されている。出力軸23には図示しないウォームホイールが取り付けられ、このウォームホイールに電動モータ26の回転軸のウォームが噛合っている。
また、出力軸23の軸方向長さの中間部の周囲には、図示しないトルクセンサが設けられている。上記ステアリングホイール11からステアリングシャフト12に加えられるトルクの方向と大きさを、トルクセンサで検出している。
このトルクセンサの検出値に応じて、電動モータ26を駆動し、ウォームとウォームホイールから成る減速機構を介して、出力軸23に、所定の方向に所定の大きさで補助トルクを発生させる。このアシスト装置20は電動式のアシスト装置に限られるものではなく、ステアリングギヤ30等に設けられる油圧式のアシスト装置でもよい。
図2から図6は、本発明の実施例1の伸縮軸の連結部を示し、図1の中間シャフト16の雄中間シャフト16Aと雌中間シャフト16Bとの連結部に適用した例を示す。図2に示すように、雌中間シャフト16Bは中空円筒状に形成されており、その内径孔には、歯数が18枚の雌スプライン40が、雌中間シャフト16Bの全長にわたって形成されている。なお、上記歯数に関し、18枚というのは例であってこれに限られるものではない。
また、図3に示すように、雄中間シャフト16Aは中実円柱状に形成されており、車体前方側から、直径寸法が大径の大径軸部50と、直径寸法が大径軸部50よりも小径の小径軸部51の順に形成されている。
雄中間シャフト16Aの大径軸部50の外周上には、雌スプライン40と同一ピッチ円直径で、雌スプライン40と同一モジュールの雄スプライン52が、大径軸部50の軸方向全長にわたって形成されている。また、大径軸部50の外周上の対向した位置には、軸直角断面が略台形の2個の軸方向溝(雄シャフト側軸方向溝)53、53が、大径軸部50の軸方向全長にわたって形成されている。
軸方向溝53、53は、大径軸部50の円周上の長さとして、雄スプライン52の歯3枚分の長さを占めている。従って、雄スプライン52は、歯数が12枚形成され、雌中間シャフト16Bの雌スプライン40に、雄中間シャフト16Aの雄スプライン52がスプライン係合している。
図4(1)、(2)は、片側の軸方向溝53だけを示している。すなわち、図4(1)、(2)に示すように、軸方向溝53は、雄スプライン52の歯2枚分の長さの底壁531と、この底壁531の両端からV字形に上方に延びる側壁532A、532Bで構成されている。なお、上記雄スプライン52の歯2枚分の長さというのは、例であってこれに限られるものではない。
この軸方向溝53と雌スプライン40とで形成される空間に、板ばね(付勢部材)60が挿入され、雄中間シャフト16Aと雌中間シャフト16Bとの間で予圧を付与する予圧付与部材として作用している。板ばね60は、軸方向溝53の軸方向の全長と略同一長さを有し、軸方向溝53と雌スプライン40の隣接する歯41、42との間に、弾性変形して挿入されている。
板ばね60は、軸方向溝53の底壁531に当接する底板61と、この底板61の両端からV字形に開いて上方に延び、軸方向溝53の左側の側壁532Aに当接する側板62A、及び、軸方向溝53の右側の側壁532Bに当接する側板62Bで構成されている。
板ばね60は、その底板61を、軸方向溝53の底壁531に例えばカシメ加工を行って固定している。また、側板62A、62Bの上端は、側板62A、62Bの軸方向の全長の四分の一ずつが、交互に内側に折り曲げられて斜め上方に延び、左側の上板63Aと、右側の上板63Bが、各々交互に2個ずつ形成されている。
左側の上板63Aの右端は、雌スプライン40の右側の歯42の右歯面42Aの近傍まで延びた後、右歯面42Aに沿って上方に延び、右歯面42Aに当接する当接部64Aが形成されている。当接部64Aの形状は、右歯面42Aの歯形形状と略同一形状に形成されている。
同様に、右側の上板63Bの左端は、雌スプライン40の左側の歯41の左歯面41Bの近傍まで延びた後、左歯面41Bに沿って上方に延び、左歯面41Bに当接する当接部64Bが形成されている。当接部64Bの形状は、左歯面41Bの歯形形状と略同一形状に形成されている。
板ばね60を固定した雄中間シャフト16Aを雌中間シャフト16Bに挿入すると、板ばね60の上板63Aの当接部64Aが右歯面42Aに当接し、上板63Aの左端を支点にして、上板63Aが下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板63Aの弾性変形によって、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に、予圧力FAが付与される。
また、上板63Bの当接部64Bが左歯面41Bに当接し、上板63Bの右端を支点にして、上板63Bが下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板63Bの弾性変形によって、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に、予圧力FBが付与される。
予圧力FA、FBは、図4(1)に示すように、当接部64Aと右歯面42Aとの接触面、及び、当接部64Bと左歯面41Bとの接触面に直交する方向に作用すると共に、予圧力FA、FBの方向が、半径方向に対して各々角度θだけ傾いている。従って予圧力FAは、回転方向の分力FAtと半径方向の分力FArを有し、また、予圧力FBも、回転方向の分力FBtと半径方向の分力FBrを有している。
従って、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間には、半径方向(軸直角方向)の予圧力と、回転方向の予圧力の両方が作用し、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間の、半径方向(軸直角方向)と回転方向の両方のガタを抑制することができる。また、回転方向の分力FAtとFBtは、反対方向を向いているため、回転方向の予圧力は、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間の、正転方向と逆転方向の両方向に作用する。
ステアリングホイール11を運転者が回転し、ステアリングシャフト12から雄中間シャフト16Aに回転トルクが伝達されると、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間には回転方向に若干のバックラッシュがあるため、図4(2)に示すように、雌中間シャフト16Bが雄中間シャフト16Aに対して相対的に時計方向に回転する。
その結果、右側の歯42の右歯面42Aが板ばね60の当接部64Aを強く押圧し、上板63Aの左端を支点にして、上板63Aがさらに下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板63Aの弾性変形によって、当接部64Aと右歯面42Aとの接触面に作用する予圧力FAが大きくなり、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に作用する回転方向の衝撃力を緩和する。
また、ステアリングホイール11を運転者が逆方向に回転すると、図示はしないが、雌中間シャフト16Bが雄中間シャフト16Aに対して相対的に反時計方向に回転する。その結果、左側の歯41の左歯面41Bが板ばね60の当接部64Bを強く押圧し、上板63Bの左端を支点にして、上板63Bがさらに下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板63Bの弾性変形によって、当接部64Bと左歯面41Bとの接触面に作用する予圧力FBが大きくなり、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に作用する回転方向の衝撃力を緩和する。
図4(1)に示すように、予圧力FAによって、板ばね60の側板62Bと側壁532Bの間には反力Faが作用する。また、予圧力FBによって、板ばね60の側板62Aと側壁532Aとの間には反力Fbが作用する。
実施例1では、予圧力FAと反力Faが同一直線上にあり、また、予圧力FBと反力Fbも同一直線上にある。さらに、予圧力FAの延長線が側壁532Bを通り、また、予圧力FBの延長線が側壁532Aを通る。すなわち、予圧力FA、FBの延長線が、軸方向溝53内を通る。従って、板ばね60に作用する予圧力FA、FBによって、板ばね60には、軸方向溝53に押し付ける力が作用するため、大きな予圧力を板ばね60が支持することができる。
上記したように、実施例1の板ばね60には、底板61の両端からV字形に開いて上方に延びる側板62A、62Bが、板ばね60の軸方向の全長にわたって形成されているため、板ばね60の軸方向の周りのねじり剛性が大きい。
また、実施例1の板ばね60は、左側の上板63Aと右側の上板63Bが、板ばね60の軸方向の全長の四分の一ずつが、交互に内側に折り曲げられている。従って、雌スプライン40の歯41、42と当接部64B、64Aとの当接によって、上板63B、上板63Aが容易に弾性変形するため、雌中間シャフト16Bに雄中間シャフト16Aを組み込むときの作業が容易になる。
図5(2)に示すように、板ばね60の上板63A、63Bの軸方向の長さは、上板63A、63Bの下端の側板62A、62Bとの接続部の長さL1が、上板63A、63Bの上端の当接部64A、64Bの長さL2よりも長く形成されている。すなわち、上板63A、63Bの下端から上端に向かって、上板63A、63Bの軸方向の長さが徐々に小さくなるように形成されている。従って、上板63A、63Bが弾性変形した時に、上板63A、63Bの下端に生じる応力集中が緩和され、板ばね60の耐久性が向上する。
図6(2)に、板ばね60の当接部64Bと歯41の左歯面41Bとの接触面近傍を拡大して示す。図6(2)に示すように、当接部64Bの軸方向の両端(図6(2)の上側と下側)には、左歯面41Bから離間する方向に円弧状の折り曲げ部65、65が形成されている。従って、雌中間シャフト16Bに雄中間シャフト16Aを組み込むときに、歯41の左歯面41Bに当接部64Bが引っ掛からないため、組み込みが容易である。
また、雌中間シャフト16Bに対して雄中間シャフト16Aが摺動する時に、歯41の左歯面41Bに当接部64Bが引っ掛からないため、摺動動作が円滑に行われる。図示はしないが、当接部64Aの軸方向の両端にも、当接部64Bと同様な形状の円弧状の折り曲げ部65、65が形成されている。
次に本発明の実施例2について説明する。図7は本発明の実施例2の伸縮軸の雌シャフトを示す斜視図である。図8は本発明の実施例2の伸縮軸の雄シャフトを示す斜視図である。図9(1)は本発明の実施例2の伸縮軸を示し、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク非伝達時の断面図である。図9(2)は図9(1)の伸縮軸で、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク伝達時の断面図である。
図10は雄シャフトと雌シャフトとの間で予圧を付与する本発明の実施例2の板ばね単体を示す斜視図である。以下の説明では、上記実施例1と異なる構造部分と作用についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、上記実施例1と同一部品には同一番号を付して説明する。
実施例2は、実施例1の変形例であり、板ばねの形状を変えて、雄シャフトと雌シャフトとの間の軸方向の摺動抵抗が小さく、かつ、回転方向の剛性を大きくした例である。
図7に示すように、実施例2の雌中間シャフト16Bは、実施例1と同一形状に形成されており、中空円筒状の内径孔には、歯数が18枚の雌スプライン40が、雌中間シャフト16Bの全長にわたって形成されている。
また、図8に示すように、実施例2の雄中間シャフト16Aは中実円柱状に形成されており、車体前方側に直径寸法が大径の大径軸部50が形成されている。また、直径寸法が大径軸部50よりも小径の小径軸部51が、大径軸部50の車体後方側に形成されている。
雄中間シャフト16Aの大径軸部50の外周上には、雌スプライン40と同一ピッチ円直径で、雌スプライン40と同一モジュールの雄スプライン52が、大径軸部50の軸方向全長にわたって形成されている。また、実施例1では、外周上の対向した位置の二箇所に軸方向溝53が形成されているが、実施例2では、大径軸部50の外周上の一箇所に、軸直角断面が略台形の軸方向溝53が、大径軸部50の軸方向全長にわたって形成されている。
軸方向溝53は、大径軸部50の円周上の長さとして、雄スプライン52の歯3枚分の長さを占めている。従って、雄スプライン52は、歯数が15枚形成され、雌中間シャフト16Bの雌スプライン40に、雄中間シャフト16Aの雄スプライン52がスプライン係合している。
図9に示すように、軸方向溝53は、雄スプライン52の歯2枚分の長さの底壁531と、この底壁531の両端からV字形に上方に延びる側壁532A、532Bで構成されている。この軸方向溝53と雌スプライン40とで形成される空間に、実施例2の板ばね(付勢部材)70が挿入され、雄中間シャフト16Aと雌中間シャフト16Bとの間で予圧を付与する予圧付与部材として作用している。
板ばね70は、軸方向溝53の軸方向の全長よりも若干短く形成され、軸方向溝53と、雌スプライン40の歯41の左側の歯43と、歯42の右側の歯44との間に、弾性変形して挿入されている。
板ばね70は、軸方向溝53の底壁531に当接する底板71と、この底板71の両端から内側に円弧状に折り曲げられた側板72A、72Bで構成されている。板ばね70は、その底板71を、軸方向溝53の底壁531にカシメ加工を行って固定している。また、側板72A、72Bの上端は、側板72A、72Bの軸方向の全長の四分の一ずつが、交互に内側に折り曲げられて斜め上方に延び、左側の上板73Aと、右側の上板73Bが、各々交互に2個ずつ形成されている。
左側の上板73Aの右端は、雌スプライン40の歯44の左側の歯底44Cの近傍まで延びた後、半円弧状に折り曲げられ、歯44の左側の歯底44Cと左歯面44Bに同時に当接する当接部74Aが形成されている。
同様に、右側の上板73Bの左端は、雌スプライン40の歯43の右側の歯底43Cの近傍まで延びた後、半円弧状に折り曲げられ、歯43の右側の歯底43Cと右歯面43Aに同時に当接する当接部74Bが形成されている。
板ばね70を固定した雄中間シャフト16Aを雌中間シャフト16Bに挿入すると、板ばね70の上板73Aの当接部74Aが歯底44Cと左歯面44Bに当接し、上板73Aの左端を支点にして、上板73Aが下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板73Aの弾性変形によって、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に、予圧力FAが付与される。
また、上板73Bの当接部74Bが歯底43Cと右歯面43Aに当接し、上板73Bの右端を支点にして、上板73Bが下方に折り曲げられて弾性変形する。この上板73Bの弾性変形によって、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間に、予圧力FBが付与される。予圧力FA、FBは、予圧力FA、FBの方向が、半径方向に対して略平行であるため半径方向の分力が大部分を占め、回転方向の分力は非常に小さい。
従って、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間には、半径方向の予圧力が主として作用し、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間の半径方向のガタを、主として抑制している。もちろん、実施例1と同様に回転方向のガタも抑制する。
ステアリングホイール11を運転者が回転し、ステアリングシャフト12から雄中間シャフト16Aに回転トルクが伝達されると、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間には回転方向に若干のバックラッシュがあるため、図9(2)に示すように、雌中間シャフト16Bが雄中間シャフト16Aに対して相対的に時計方向に回転する。
その結果、歯43の右歯面43Aが、板ばね70の当接部74Bを強く押圧する。右歯面43Aが当接部74Bを押圧する力FCは、図9(2)に示すように、当接部74Bと右歯面43Aとの接触面に直交する方向に作用するため、上板73Bに略平行な力として作用し、上板73Bを圧縮する。上板73Bを圧縮するには大きな力が必要となるため、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間の回転方向の剛性が大きくなる。
また、ステアリングホイール11を運転者が逆方向に回転すると、図示はしないが、雌中間シャフト16Bが雄中間シャフト16Aに対して相対的に反時計方向に回転する。その結果、歯44の左歯面44Bが、板ばね70の当接部74Aを強く押圧する。左歯面44Bが当接部74Aを押圧する力は、当接部74Aと左歯面44Bとの接触面に直交する方向に作用するため、上板73Aに略平行な力として作用し、上板73Aを圧縮する。上板73Aを圧縮するには大きな力が必要となるため、雌中間シャフト16Bと雄中間シャフト16Aとの間の回転方向の剛性が大きくなる。
実施例2では、ステアリングホイール11に回転トルクを付与する前の初期の予圧力FA、FBの大きさは、上板73A、73Bの端部を支点にして、上板73A、73Bを折り曲げる時の弾性変形の付勢力によって決まる。従って、上板73A、73Bの端部からの長さを適切に選定することで、最適な値に設定することができる。
また、ステアリングホイール11に回転トルクを付与した時の回転方向の剛性FCは、上板73A、73Bを圧縮する時の弾性変形の付勢力によって決まる。従って、上板73A、73Bの板厚や断面形状を適切に選定することで、初期の予圧力FA、FBとは別個に、最適な値に設定することができる。
従って、初期の予圧力FA、FBを小さくすることで、雄中間シャフト16Aと雌中間シャフト16Bとの間の軸方向の摺動抵抗を小さくし、かつ、回転トルクを付与した時の回転方向の剛性FCを大きくするという、相反する要求を両立することが可能となる。
上記実施例では、雌シャフトの内径孔に雌スプラインが形成され、雄シャフトの外周に雄スプラインが形成された例について説明したが、雌シャフトの内径孔に雌セレーションを形成し、雄シャフトの外周に雄セレーションを形成してもよく、任意の形状の軸方向凸条を雌シャフトと雄シャフトに各々形成すればよい。
上記実施例は、中間シャフト16に本発明を適用した例について説明したが、ステアリングシャフト12等、ステアリング装置を構成する任意の伸縮軸に適用することができる。また上記実施例では、雌中間シャフト16Bの車体後方側が、雄中間シャフト16Aの車体前方側に外嵌して連結されているが、雌中間シャフト16Bの車体前方側に、雄中間シャフト16Aの車体後方側を内嵌して連結してもよい。
本発明のステアリング装置の全体を示し、一部を断面した側面図であって、操舵補助部を有する電動パワーステアリング装置に適用した実施例を示す。 本発明の実施例1の伸縮軸の雌シャフトを示す斜視図である。 本発明の実施例1の伸縮軸の雄シャフトを示す斜視図である。 (1)は本発明の実施例1の伸縮軸を示し、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク非伝達時の断面図である。(2)は(1)の拡大断面図であって、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク伝達時の拡大断面図である。 (1)は、雄シャフトと雌シャフトとの間で予圧を付与する本発明の実施例1の板ばね単体を示す斜視図である。(2)は(1)の板ばね単体の正面図である。 (1)は、本発明の実施例1の板ばねと雌シャフトとの接触状態を示す要部の側面図である。(2)は(1)のP矢視図である。 本発明の実施例2の伸縮軸の雌シャフトを示す斜視図である。 本発明の実施例2の伸縮軸の雄シャフトを示す斜視図である。 (1)は本発明の実施例2の伸縮軸を示し、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク非伝達時の断面図である。(2)は本発明の実施例2の伸縮軸で、雄シャフトと雌シャフトとの間で回転トルク伝達時の断面図である。 雄シャフトと雌シャフトとの間で予圧を付与する本発明の実施例2の板ばね単体を示す斜視図である。
符号の説明
11 ステアリングホイール
12 ステアリングシャフト
12A 雌ステアリングシャフト
12B 雄ステアリングシャフト
13 ステアリングコラム
13A アウターコラム
13B インナーコラム
14 支持ブラケット
15 自在継手
16 中間シャフト
16A 雄中間シャフト
16B 雌中間シャフト
17 自在継手
18 車体
20 アシスト装置
21 ギヤハウジング
23 出力軸
26 電動モータ
261 ケース
30 ステアリングギヤ
31 入力軸
32 タイロッド
40 雌スプライン
41 歯
41B 左歯面
42 歯
42A 右歯面
43 歯
43A 右歯面
43C 歯底
44 歯
44B 左歯面
44C 歯底
50 大径軸部
51 小径軸部
52 雄スプライン
53 軸方向溝(雄シャフト側軸方向溝)
531 底壁
532A、532B 側壁
60 板ばね
61 底板
62A、62B 側板
63A、63B 上板
64A、64B 当接部
65 折り曲げ部
70 板ばね
71 底板
72A、72B 側板
73A、73B 上板
74A、74B 当接部

Claims (10)

  1. 雄シャフト、
    上記雄シャフトの外周に形成された雄スプライン、
    上記雄シャフトに軸方向に相対移動可能にかつ回転トルクを伝達可能に外嵌する雌シャフト、
    上記雌シャフトの内周に形成され、上記雄スプラインと係合して回転トルクを伝達可能な雌スプライン、
    上記雄シャフトの外周に形成された雄シャフト側軸方向溝、
    上記雄シャフト側軸方向溝に挿入された板ばね、
    上記板ばねに形成され、上記雄シャフト側軸方向溝の底壁に当接する底板、
    上記底板の両端から交互に折り曲げられて上記雌スプラインに向かって延びる一対の上板、
    上記一対の上板の一方に形成され、上記雌スプラインの一方の歯に当接する当接部、
    上記一対の上板の他方に形成され、上記雌スプラインの一方の歯に対向する他方の歯に当接する当接部を備えたこと
    を特徴とする伸縮軸。
  2. 請求項1に記載された伸縮軸において、
    上記一方の上板の当接部は上記雌スプラインの隣接する一方の歯の右歯面に当接し、
    上記他方の上板の当接部は上記隣接する他方の歯の左歯面に当接すること
    を特徴とする伸縮軸。
  3. 請求項1に記載された伸縮軸において、
    上記上板の当接部と雌スプラインの歯との接触面に作用する板ばねの付勢力の方向の延長線が上記雄シャフト側軸方向溝内を通ること
    を特徴とする伸縮軸。
  4. 請求項1に記載された伸縮軸において、
    上記上板の当接部の軸方向の両端には上記雌スプラインの歯から徐々に離間する折り曲げ部が形成されていること
    を特徴とする伸縮軸。
  5. 請求項1に記載された伸縮軸において、
    上記上板は、底板側から上板の当接部側に向かって軸方向の長さが徐々に小さく形成されていること
    を特徴とする伸縮軸。
  6. 請求項1に記載された伸縮軸において、
    上記一方の上板の当接部は上記雌スプラインの一方の歯底と一方の歯面に同時に当接し、
    上記他方の上板の当接部は上記雌スプラインの他方の歯底と他方の歯面に同時に当接すること
    を特徴とする伸縮軸。
  7. 請求項6に記載された伸縮軸において、
    上記上板の当接部と雌スプラインの歯との接触面に作用する板ばねの付勢力は、
    上記雄シャフトと雌シャフトとの間に回転トルクが伝達されない時には、上記上板を折り曲げる方向に作用し、
    上記雄シャフトと雌シャフトとの間に回転トルクが伝達された時には、上記上板を圧縮する方向に作用すること
    を特徴とする伸縮軸。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載された伸縮軸を備えたこと
    を特徴とするステアリング装置。
  9. 請求項1から請求項7までのいずれかに記載された伸縮軸において、
    上記雄シャフトが雄中間シャフトであり、
    上記雌シャフトが雌中間シャフトであること
    を特徴とする伸縮軸。
  10. 請求項9に記載された伸縮軸を備えたこと
    を特徴とするステアリング装置。
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