JP2009154348A - 射出圧縮成形用金型装置 - Google Patents

射出圧縮成形用金型装置 Download PDF

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Abstract

【課題】射出圧縮成形用金型装置では、可動側のキャビティ側面を画成する寄せ駒を平面駒に当て付ける押圧力が樹脂充填圧に抗する一方で常時は大きくないことと、型閉じ完了間際や型開き開始直後にその寄せ駒の当接動作が型開閉動作に対してタイミング的にずれること、が望まれる。
【解決手段】寄せ駒を、型開閉の際に平面駒の側面に離接させ、射出圧縮成形の際にその平面駒側面に沿って移動させてそのキャビティを圧縮する金型装置は、可動金型側に、背面に傾斜側面を有した寄せ駒と、その傾斜側面に摺接する傾斜側面と型開閉方向に直角の上端面を有するとともに型開閉の際にその型開閉方向に所定距離移動する楔部材と、その寄せ駒をそのキャビティから離間させる方向にばね力を付勢する離間用ばねとを備え、固定金型側に、型閉じの際にその楔部材の上端面を押圧する押し付け部材と、その押し付け部材に押圧力を付勢する押し付け用ばねとを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば導光板等の薄板状成形品を射出圧縮成形する射出圧縮成形用金型装置に関し、より具体的には、薄板状キャビティの側面を画成する寄せ駒のスライド機構に特徴を有する射出圧縮成形用金型装置に関する。
薄板状の成形品、特に導光板等の薄板成形品は、図3の金型装置に類似する射出圧縮成形用金型装置を使用して射出圧縮成形される。したがって、図3は、参考用の図面に過ぎないが、図中、図(a)はその金型の型開き状態を、図(b)は型閉じ後射出が開始された直後の状態を、図(c)は圧縮が行われた状態を、そして、図(d)は型開き後成形品が離型された直後の状態を示す。
その金型装置は、通常の金型と同様に固定金型2と可動金型3の間に薄板状のキャビティ4を形成する。そして、そのキャビティの可動側の平板面が平面駒30によって、また、その側面がゲート駒31と寄せ駒32とによって画成される。平面駒30や寄せ駒32の表面には、図示省略されているが、鏡面又は微細凹凸面のパターンが形成されている。そして、キャビティ4に面する固定金型2側平面にも、必要に応じて同様なパターンが形成されている。また、ゲート駒31にはファンゲート31aが形成されている。そのような金型装置は、図(a)のように、型締装置の固定側プラテン5と可動側プラテン6に固定されて、可動側プラテン6の型開閉動作によって型閉じされ型開きされる。
より詳細には、可動金型3には、平面駒30が固定型として配置され、その平面駒を囲んで枠部材33が流体シリンダ34によって型開閉方向にスライドされる。そして、その枠部材33の上に、ゲート駒31が固定され、寄せ駒32が適宜のスライド機構によってその平面駒30の側面に離接する。寄せ駒32は、3面分用意されて、残り1面のゲート駒31とともにキャビティ4の側面を構成する。部材35は、ファンゲート部分を押し出すエジェクタである。一方、固定金型2には、可塑化された成形樹脂材料が充満するホットランナ7とその先端の図示省略されたホットランナノズルとそのノズルに連通するスプル孔8とが設けられて、射出時に射出装置9が供給した樹脂材料を通過させてキャビティ4に充填する。
上記のような射出圧縮成形用金型を使用して、射出成形機はつぎのように射出圧縮成形を行う。すなわち、その成形機は、その型締装置の可動側プラテン6を閉じて金型の型閉じを完了する際に、型閉じ動作とともに寄せ駒32を枠部材33上でスライドさせて平面駒30の側面に当接させる(図aから図b)。そして、成形機は、型閉じした金型のキャビティ4の中に射出装置9によって樹脂材料を充填し(図b)、その直後から型締めするするとともに寄せ駒32を平面駒30の側面に沿って移動させてキャビティ4をその厚さ方向に圧縮する(図c)。このとき、図(b)から図(c)の変化が示すように、型締装置が型締めするとともに金型装置が枠部材33を図示の隙間C1とC2の差分の距離だけ移動させて、キャビティ4を圧縮する。この圧縮によって、樹脂材料は、寸法的に正確で、かつ物性的に均一な薄板状の成形品60に成形される。そして、その成形品の表面に平面駒30や寄せ駒32の表面パターンが転写される。このとき、寄せ駒32が平面駒30に樹脂材料の充填圧力以上の押圧力で当接して、両者の間でバリが発生することが防止される。その後、図(d)のように型開きが行われるとともに寄せ駒32が成形品60から離間して、成形品60がエジェクタ35によって突き出される。
この寄せ駒をスライドさせる従来のスライド機構は、楔作用を利用するものが一般的である。すなわち、固定金型側の楔斜面と可動金型側の楔斜面を互いに摺接させながら型開閉方向に相対移動させて寄せ駒を平面駒に離接させるものである。その構成では、寄せ駒のスライド動作が型開閉の金型間の距離に対応して決まるが、型開閉動作のタイミングと寄せ駒の離接タイミングを意図的にずらすことは厳密な意味ではできない。
この種の射出圧縮成形用金型は、例えば本願発明人が出願した特許出願特願2007−175210号公報に記載されている(特許文献1)。その出願の金型は、導光板等の薄板状成形品を成形する金型であって、圧縮成形後の型開きから成形品取り出しまでの動作における、成形品の取り出しの安定性や信頼性を改良したものである。その金型装置では、スライドする寄せ駒に相当する入光面形成部材(文献図では第1部材53と第2部材54とから成る。)を、平面駒に相当するコア(文献図では25)に当て付ける動作、すなわち当接する動作が行われる。
この金型では、寄せ駒を平面駒に当接する動作が、従来の楔作用によらず、流体シリンダ(文献図では油圧シリンダ55)によって行われる。それは、寄せ駒を平面駒に離接させるタイミングを、型開閉動作開始のタイミングや完了のタイミングからずらすためである。そうすることによって、例えば寄せ駒を当接させたまま型開きを開始することを可能にして、成形品の品質を落とすことなく成形サイクル時間を短縮することができる。すなわち、型開きを可能な限り速めに行って薄板状成形品の冷却固化を促進する一方で成形品側面の離型を少しでも遅らせて、成形サイクルの短縮に努めるとともに成形品側面の入光面を確実に成形する。そうすることによって、型開き後成形品が平面駒から剥離して落下することも防止する。薄板状成形品にあっては、その外周から剥離しやすいからである。また、型閉じの瞬間に寄せ駒がスライドして固定金型とこすれあうことも防止する。以上は、それぞれが些細なことであるが、この種の成形品の生産数が膨大であることから、僅かであっても充分に効果がある。また、先に寄せ駒を当接させてから型閉じを完了する成形も可能にして、不完全な型閉じ状態から充填を開始してもバリが生じないようにすることもできる。これは、板状成形品の圧縮をより効果的にする成形方法である。
ところが、この特許文献1の金型は、つぎのような問題点を孕んでいた。それは、寄せ駒と平面駒の間に掛けられる押圧力が流体シリンダの推力によっているので、その押圧力が常時充填圧力以上になることである。その結果、それら部材がキャビティ圧縮の際に相対移動するときに双方の摺接面が摩耗しやすくなり、結果バリ発生の新たな原因となったのである。
そこで、本発明人は、寄せ駒のスライド動作を従来の楔作用を利用して行うことを再評価すべきと考えて、楔作用によって寄せ駒を移動させる射出圧縮成形用金型装置の先行技術を調査したが、射出圧縮成形に適するものは発見されなかった。ただし、発見されたものが本発明の構成と対比されるべき技術を含むもことから、それらを以下に引用する。
その一つの特許文献は、特開昭63−270115号公報(特許文献2)で開示された通常成形の金型である。その文献の金型は、成形品の側面に孔等を形成するためのものである。その金型は、パーティング面に沿って進退してコア型(文献図では図示省略されているが、コア型と仮定した。)の側面に当接する摺動部材(文献図では摺動型16)と、それに対して楔力を作用させる楔部材(同図では被動ブロック7と押さえブロック9)とをユニットとして可動金型に備える。そして、その金型は、押さえブロックをパーティング面から外方に押し出すようにばね力を付勢するばね(同図では拡張ばね10)と被動ブロックをコア型から離間させるようにばね力を付勢するばね(同図では拡張ばね8)とを含んでいる。また、その押さえブロックの外端面をパーティング面に一致した高さ位置に調節するための調整ねじ(同図では調整ねじ21)が、支承ブロック(同図では2)にねじ込み量を調整可能に取り付けられる。押さえブロックが外方に押し出される距離は、押さえブロックの鍔(同図では11)と支承ブロックの内縁部(同図では12)との当接によって所定距離に限定される。この金型では、型閉じの際の摺動部材の移動が楔作用によって行われるので、押さえブロックが固定金型に当接してパーティング面に同一面に押し込まれたときに、摺動部材がコア型に当接する位置にスライドする。
この文献では、特にその摺動部材とその被動ブロックがそれらを連結する部材(同図では取付台座6と締付金17)を介して一体化されるとともに、型閉じの際に被動ブロックと押さえブロックが楔斜面(同図では対応面7aと9a)を介して当接する。それで、その摺動部材の移動代は、上記の部材の長さと楔斜面の角度に従って押さえブロックの押し込み代に一対一に対応して調整の余地はない。また、摺動部材がコア型を押圧する押圧力が、押さえブロックが固定金型に固定的に当接したときの位置関係によって決まることから、力の釣り合いが静的であり動的な摩擦力が影響することはない。したがって、最初に金型を型締装置にセットしたときに、摺動部材とコア型とが正確に当接することを確認する作業は重要である。
この文献の金型は、その確認手段として、摺動部材とコア型の当接状態を、実際に型閉じしなくても可動金型側だけで確認できる手段を開示している。すなわち、本特許文献は、調整ねじの支承ブロックに対するねじ込み量を調整することによって、型閉じされたときの押さえブロックの位置を再現して、そのときの摺動型の位置をスライド完了位置として確認できる装置を提唱している。
また、特許3136939(特許文献3)号公報で別の金型が開示されている。その文献の金型は、軽金属材料成形の鋳造金型であるが、成形品の側面を画成する寄せ駒(スライドコア)に相当する寄型(同図では部材4、17、15)を上型(同図では部材13)に備え、それらの寄せ駒同士の間に隙間が生じることを防止するものである。
その特徴とするところは、楔としての下型側に固定された位置決めプレート(同図では部材12)とそれに対する上型側の楔(スライト゛キー15)との間で楔作用を奏させる際に、その上型側の楔をスプリング(16)のばね力で押し込んでその楔作用をできるだけ働かせることである。もちろん、この構成では、その寄型とその下型とはその寄せ方向では当接することはない。したがって、その寄型は、たとえ下型3に熱伸びがあってもそれに干渉せず、寄型同士がお互いに当接するまで寄せられてそれら間に隙間が発生することはない。この文献特許は、寄型同士をとにかく当接させることだけを目的としたものであるから本願発明の目的と異なるが、上型の楔をスプリングのばね力で型開閉方向に押し込む構成を開示していることから、従来技術としてここに引用される。
特願2007−175210号公報 特開昭63−270115号公報 特許3136939公報
しかしながら、特許文献2の金型装置は、一般的な金型であるために、つぎのような現象があってもそれを解決することはない。まず、その金型装置では、摺動部材の移動代が上記のような押さえブロックの押し込み代に一対一に対応して融通性がない。それで、その構成部材自体やその周りで熱膨張が生じると、摺動型がコア型に完全に当接しなかったり、逆にそれらの部材間で過大な押圧力が働いたりする。また、上記のように摺動型のスライド動作が型開閉動作に一対一に対応するので、摺動型のスライド動作と型開閉動作との間で微妙なタイミングのずれを与えることはできない。また、この金型では、射出圧縮成形用金型のように寄せ駒とそれが当接するコア型側面とを型閉じ後に相対移動させないために、摺動部材とコア型の間で働く押接力をできるだけ小さくする必要性がない。それで、押さえブロックを押し込む力は、上記のように固定金型面との当接位置関係と部材寸法によって単純に決まるだけで特に低減される必要性はない。そのことは、押さえブロック側の拡張ばねが、押さえブロックを外方に付勢して被動ブロックをコア型から離間させるだけのものであることからも明らかである。
また、特許文献3の金型も、射出圧縮成形用金型でないことから、つぎのような現象があってもそれを解決することはない。その現象とは、上型と下型のそれぞれ別金型の傾斜面間で楔作用が奏されるとともにその上型の楔がスプリングによって適宜に押し込まれるために、寄型の寄り量を上型と下型の相対距離に対して厳密にかつ正確に対応させることが困難であり、その結果、楔作用による動作と寄型が動く動作の対応にばらつきが発生することである。そのため、この構成では、その寄型とその下型とをその寄せ方向で当接させないようにする適宜の隙間を用意してそのばらつきを補っている。また、この金型では、楔作用が働くタイミングと寄型が動くタイミングの間に一定のタイムラグを安定に持たせることもできない。そのうえ、この構成では、型開きにより上下の楔が離れたときにばねを含む上型の楔が脱落することなく案内されるように、楔が図示のように軸受部材等によって保持されなければならない。
そこで、本発明は、上記の現象を総合的に精密かつ安定に解決するものであって、型閉じのときには、金型に熱伸びが生じてもそのキャビティの寄せ駒と平面駒とを無理なく当接させるように、また、その当接面に掛かる押圧力を常時過大にしなくても大きな充填圧力が掛かったときににみそれに対抗できるようにする一方、型閉じ完了間際や型開き開始直後には、その寄せ駒の平面駒に対するスライド動作に一定のタイムラグを持たせることができる金型装置を提案することを目的とする。また、本発明は、上記の作用効果を実現する構成部材をシンプルにまとめてユニット化した金型装置を提案する。
上記の課題を解決するための本発明の射出圧縮成形用金型装置は、固定金型と可動金型との間に形成される薄板状キャビティの、可動側の平板面と側面とを平面駒と寄せ駒とによって画成して、型開閉の際にその寄せ駒をその平面駒の側面に離接させ、圧縮成形の際にその寄せ駒をその平面駒の側面に沿って相対的に移動させてそのキャビティを圧縮する射出圧縮成形用金型装置において、前記可動金型に、前記寄せ駒と一体化されるとともに背面に傾斜側面を有したスライドコアと、そのスライドコアの傾斜側面に常に摺接する傾斜側面と型開閉方向に直角の上端面とを有するとともに型開閉の際にその型開閉方向に所定距離離だけ移動する楔部材と、そのスライドコアを前記キャビティから離間させる方向にばね力を付勢する離間用ばねとを備え、前記固定金型に、型開閉の際にその型開閉方向に所定距離離だけ移動し型閉じの際に前記楔部材の前記上端面をその端面に平行な押し付け端面で押圧する押し付け部材と、その押し付け部材に前記押圧のためのばね力を付勢する押し付け用ばねとを備えて、型開き直後では、前記押し付け部材が前記楔部材を押し込んだまま前記寄せ駒を前記平面駒側面に当接させた状態で型開きを行い、その後さらに型開きしたときに始めて前記離間用ばねがその楔部材を押し出してその寄せ駒をその平面駒側面から離間させる一方、型閉じ完了直前には、前記押し付け部材が前記楔部材を押し込んだまま前記寄せ駒を前記平面駒側面に当接させた状態で型閉じ完了する金型装置である。
また、本発明の射出圧縮成形用金型装置は、上記の金型装置の前記可動金型に、前記スライドコアと前記楔部材とを収容する収容空間を備えた楔案内部材を備え、その楔部材がその側面に肩部分を形成しその収容空間がその壁面にその肩部分に当接する段差部分を形成して、その肩部分とその段差部分の当接によってその楔部材の押し出される距離を前記所定距離に限定する一方、そのスライドコアとその楔部材とその楔案内部材とを、そのスライドコアに結合した連結ボルトと、その連結ボルトのボルト頭とその楔案内部材の間に係止された前記離間用ばねと、によって連接した寄せ駒ユニットを備え、上記の金型装置の前記固定金型に、前記押し付け部材と前記押し付け用ばねとをシリンダ状ブロックに収容した押し付けユニットを備えた金型装置である。
本発明の射出圧縮成形用金型装置(以下、単に金型装置とする。)によれば、押し付け部材が押し付け用ばねによって予圧されて後退可能であるとともに楔部材とスライドコアとがお互いに傾斜側面で常に摺接したままスライドすることから、樹脂材料の充填圧力によって寄せ駒が押圧されるときにスライドコアや楔部材が押し戻されようとして充填圧力に対する摩擦力が対抗して発生する。そのため、寄せ駒と平面駒の間に掛ける押圧力を、常時は樹脂充填圧力ほどに大きくしなくても、樹脂充填圧力が寄せ駒に掛かるときにその摩擦力を利用してその樹脂充填圧力に対抗させることができる。また、本発明の金型装置によれば、型閉じした際に押し付け部材が押し付け用ばねによって楔部材をできるだけ押し込むので、金型に熱伸びが生じても寄せ駒が平面駒に当接するまで前進してそれら部材の間に隙間を発生させることはない。したがって、樹脂充填の際に寄せ駒と平面駒の間に成形樹脂が入り込んでバリが発生することが確実に回避される一方、圧縮の際に寄せ駒と平面駒の当接面同士が摩耗することが抑えられる。
また、型閉じ完了直前あるいは型開き開始直後に、押し付け部材がその押し付けばねの予圧によって楔部材を先に押し込んでスライドコアを先に前進させるために、寄せ駒の平面駒に対する当て付け動作を型開閉動作に対して一定のタイムラグを持たせた状態で行うことができる。すなわち、型閉じ完了直前にその押し付け部材によってその楔部材を先に押し込んで、そのスライドコアの前進を先に完了させることができる。また、型開き直後にその押し付け部材によってその楔部材を押し込んだままにして、その寄せ駒の後退を遅らせることもできる。このとき、楔部材の上端面と押し付け部材の押し付け端面とがそれぞれ型開閉方向と直角な面に形成され、かつパーティング面からの出代が所定距離に正確に保たれるために、安定したタイミングで当接が開始されてそのタイムラグがばらつくことがない。
そのうえ、本発明の他の実施態様に係る金型装置によれば、その楔部材が、その楔案内部材とそのスライドコアとの間に連結ボルトと離間用ばねとを介して連接した状態でその楔案内部材に収容されて、それらの構成部材が簡単な部材のままでシンプルにユニット化される。そして、その楔部材のスライド代が所定距離に限定されることが、その寄せ駒ユニットの簡単な段部構成によって実現される。また、寄せ駒(スライドコア)が楔部材の傾斜側面によって常に当接した状態で楔案内部材との間で押さえ付けられることから、そのスライドコアは、特に軸受を介在させなくてもシンプルな摺接面を介して取り付けられて、型開きのときにその取り付け状態が不安定になることもない。このことは、特にスライドコアが小型の部材にならざるを得ない薄肉平板の成形金型に好都合である。また、その楔部材が寄せ駒ユニットの中でスライドコアに常に摺接した状態でばねによって外方に押し出される方向に付勢されるように構成されるので、型閉じ完了時に寄せ駒が平面駒に当接した状態は、楔部材の上端部をパーティング面に同一面になるように押さえる操作だけで再現でき、実際に型閉じしなくても可動金型の上だけで確認できる。
本発明の金型装置は、図3として既述された構成を基本にする。すなわち、金型装置は、固定金型2と可動金型3と、それらの間に形成される薄板状キャビティ4とを含み、そのキャビティの可動側を平面駒30と寄せ駒32及びゲート駒31とによって画成する。寄せ駒32は、型開閉方向に相対移動する枠部材33とともに平面駒30の側面に沿ってスライドする一方、つぎに説明されるスライド機構によってその平面駒30の側面に離接する。固定金型2のホットランナ7とホットランナノズル(図示省略)とスプル孔8、そしてファンゲート31aは、射出装置9から供給された樹脂材料をキャビティ4に導く。しかして、型締装置は、図(b)のように、型閉じの際に寄せ駒32を平面駒30の側面に当接させた状態で固定金型に当接させてキャビティ4を画成し、射出後にその寄せ駒とその平面駒とを型開閉方向に相対的に移動させるとともに型締めしてキャビティ4を図(c)のように圧縮する。その後、図(d)のように、成形品60がファンゲートとともにエジェクタ35によって突き出されて平面駒30やゲート駒31から離型する。
以上の金型装置において、寄せ駒を型開閉動作の際に平面駒に対してスライドさせるスライド機構は、図1の拡大図にて示される。図中、図(a)が型開き中の、図(b)が型閉じ後の、寄せ駒とそれに関連する部材の関係を示している。
まず、可動金型3において、寄せ駒32は、楔部材41と離間用ばね42とともに平面駒30を囲む枠部材33の上面に配置される。ここで、寄せ駒32は、本実施例でスライドコアと一体であることから、スライドコアとして注目されるべきときにはスライドコア32とも表記される。そして、スライドコア32は、その背面に傾斜側面32aを有するとともにその底面に枠部材33に摺接する平坦面を有する。楔部材41は、スライドコア32の傾斜側面32aに常に摺接する傾斜側面41aと型開閉方向に直角の上端面41bを有する楔形状に形成されて、型開閉方向に所定距離離だけ移動可能に設けられる。傾斜側面32a、41aが型開閉方向となす角度θは楔角度である。離間用ばね42は、スライドコア32をキャビティ4から離間、すなわち平面駒30から離間させる方向に付勢して楔部材41を押圧するものである。その離間用ばねは、そのような機能を奏する限りどのように組み込まれても良い。なお、寄せ駒32が平面駒30に向かって接近する動作/離間する動作は、以下において前進動作/後退動作とも称される。
楔部材41を所定距離離だけ移動可能にする構成は、スライドコア32と楔部材41とを収容する収容空間を凹形状の側面として備えた楔案内部材43を枠部材33上に用意して、その収容空間と楔部材41側面とをつぎのように関係付けたものである。すなわち、その構成は、楔部材41の楔案内部材43に接する側面に肩部分41cを形成するとともに楔案内部材43にその肩部分に当接する段43aを形成して、型閉じ状態では図(b)のように肩部分41cと段43aとの間に隙間が空くように、また型開き状態では図(a)のようにそれらが当接するようにしたものである。そのような構成によって、楔部材41がパーティング面から外方に押し出される距離H(出代H)は、肩部分41cが段43aに当接するまでの所定距離離に限定される。もちろん、楔部材41と枠部材33の間には、楔部材41がパーティング面からさらに押し込まれ得る隙間が用意されている。それは、楔部材41が出代を有することと協働して、寄せ駒32を平面駒30に当接するまでスライドさせるためである。したがって、熱膨張によって寄せ駒32の平面駒30に当接するまでのスライド代が伸びた場合でも、寄せ駒32はその分さらにスライドすることができる。
また、離間用ばね42のばね力をスライドコア32に作用させる構成は、つぎのとおりである。まず、スライドコア32の傾斜側面32a側に雌ねじ穴を形成し、楔部材41に透孔を形成し、そして、楔案内部材43に段付き穴を形成しておく。つぎに、ボルト44をスライドコア32に段付き穴側からねじ込んで固定して、そのボルトの軸部をその段付き孔の小径部分に配置し、その頭部分44aをその段付き穴の大径部分に配置する。その際、圧縮コイルばねとしての離間用ばね42をそのボルト頭44aと段付き穴の段部との間に装着して、そのボルトのねじ込み代を調整して圧縮コイルばねを予圧しておく。このように構成することによって、楔部材41は、スライドコア32と楔案内部材43の間に挟まれた状態で離間用ばね42によって押圧されて、型開閉方向に押し出されようとする逆の楔作用を受ける。
この図で、楔案内部材43は、パーティング面に面する大部分の型板45とは別体に構成されて、枠部材33にボルト46によって固定される。この構成は、シンプルで無理がない。しかし、楔案内部材43を有しない構成も実施可能である。例えば、その図示が省略されるが、楔案内部材43に相当する部分の大部分を上記の型板45の一部として一体に形成し、楔案内部材43の小径段付き穴部分周りの部分をスリーブ状のスペーサ部材として個別に形成して、そのスペーサ部材をその型板に形成された段付き装着孔に挿入する構成であっても良い。この場合、その装着孔の大径穴にそのスリーブ状部材が挿入され、その小径穴にボルト頭と圧縮ばねが挿入される。圧縮コイルばね42はそのスペーサ部材とボルト頭44aとの間に組み込まれる。このように、圧縮コイルばね42を組み込む態様は、そのばねがスライドコア32をキャビティから離すようにばね力を付勢するものである限り、いろいろなものが考えられる。
一方、固定金型2には、型閉じの際に楔部材41を押し込む押し付け部材51とその押し付け部材に押圧力を付勢する押し付け用ばね52とが備えられる。押し付け部材51は、例えば、フランジ部分とロッド部分とから成る段付き丸棒として形成される。押し付け部材51のロッド先端は、楔部材41に対する押し付け端面51aとして型開閉方向に直角の端面に形成される。そして、その押し付け部材は、押し付け用ばね52の予圧によってそのフランジ部で可動側に向けて押圧されるときに所定距離Lだけパーティング面より突き出るように、また、型閉じ完了したときに楔部材41に押し返されてパーティング面と同一面になるように構成される。それで、押し付け部材51の押し付け端面51aは、充分に型開きしたときには楔部材41と離れてパーティング面より突き出る一方、型閉じ完了したときには楔部材41に押し返されてパーティング面と同一面になる。
このように、楔部材41の上端面41aと押し付け部材51の押し付け端面51aがそれぞれ型開閉方向に直角に形成されてお互いに平行であり、かつ、楔部材41と押し付け部材51の出代がそれぞれ所定距離HとLとに正確に限定されていることは、楔部材41と押し付け部材51が最初に当接してお互いに楔力を作用し始めるタイミングを金型間の距離に厳密に正確に対応させて、その型開閉動作とスライドコア32のスライド動作をより厳密かつ正確に対応させることを可能にする。そのうえ、楔部材41を押し込む押し付け部材51が押し付け用ばね52によって予圧されただけの構成であってさらに押し込み可能であることは、後に説明されるように、力の釣り合いに摩擦力を利用できるという作用効果を奏する。
上記の金型装置において、上記の離間用ばね42と押し付け用ばね52に掛けられる予圧はそれぞれつぎのように設定される。
まず、離間用ばね42の予圧について説明する。離間用ばね42は、型開きしたときにスライドコア32を後退させて逆の楔作用によって楔部材41を押し出そうとするが、この押し出し動作を妨げる力は、スライドコア32と楔部材41がスライドしようとする動作に伴う摩擦力だけである。このことは、楔部材41がスライド可能である構成によるもので、動的に生じる摩擦力が釣り合いに影響することを意味する。より詳細には、離間用ばね42の予圧が楔斜側面に作用してその楔角度θの傾斜側面32a、41aに垂直抗力が分力として発生し、その垂直抗力がスライドコア32と楔部材41にそれぞれ傾斜した力として作用して、それら部材の斜面同士の間、及びそれら部材とその摺接面との間に摩擦力を生じさせるのである。ここに、その垂直抗力は、離間用ばね42の予圧を楔角度θの余弦(cosθ)の逆比で拡大した力である。したがって、スライドコア32では、離間用ばね42の予圧とそのスライドコアの周りで発生する摩擦力とが釣り合い、楔部材41では、離間用ばね42の予圧を楔角度θの正接(tanθ)に略等しい比で縮小した型開閉方向に向かう力とその楔部材の周りで発生する摩擦力とが釣り合うことになる。しかして、離間用ばね42の予圧は、このような釣り合い式から決定されるが、この式において、摩擦力が予圧力に比例し、かつ楔部材41の押し出し動作に必要な力がその摩擦力だけであるから、結局、その予圧は、小さく設定することができる。
つぎに、押し付け用ばね52の予圧について説明すると、押し付け用ばね52の予圧による押し付け部材51の楔部材41に対する押し付け力は、楔作用によって拡大されてスライドコア32を前進させる力となる。この力は、当然、キャビティ4に樹脂材料を充填するときの充填圧力を上回らなければならないが、寄せ駒32が常時その圧力で平面駒30を押圧することは既述したような摩耗を引き起こす。そのため、本発明では、つぎのような工夫がなされている。
まず着目されるべきことは、押し付け用ばね52の予圧が楔部材41に掛ける押圧力は、摩擦を考慮しないとすると、楔斜側面の楔角度θに対応する正接(tanθ)の逆数に略等しい比で拡大された楔力としてスライドコア32に作用することである。それで、押し付け用ばね52の予圧をスライドコアに掛かる離間用ばね42の予圧より大きくすることには、拡大された押し付け用ばね52の予圧が充分に大きいので設定には全く問題ない。
その上で、寄せ駒32の平面駒30に対する押圧力を、樹脂材料充填の充填圧力に抗して後退しないように設定することになるが、つぎに説明されるような本発明特有の構成によって、その設定に無理はない。それは、楔部材41を押さえる押し付け部材51が押し付けばね52の予圧によって後退可能に支えられるために、スライドコア32が後退して楔部材41が押し出されるときには押し付け部51材も押し込まれ得るという構成である。そのような構成によって、充填圧力によってスライドコア32が後退しようとすると楔部材41もスライドしようとして、スライドコア32や楔部材41の周り及び傾斜側面32a、41aで摩擦力が生じる。そして、それらの摩擦力が全て上記部材のスライド動作を阻止するように作用する結果、その摩擦力が寄せ駒32の平面駒30を押圧する押圧力を補うように働く。ここで、摩擦力は、既述した傾斜側面32a、41aで生じる垂直抗力によるものである。このことは、充填圧力に対する力の釣り合いを検討するときには、単に静的なバランスではなく、摩擦を考慮した動的なバランスの中で検討されなければならないことを意味する。
こうして、本発明では、充填圧力に対抗させるために必要な寄せ駒32の押圧力を、押し付け用ばね52の予圧が押し付け部材51を介してスライドコア32を常時押圧する静的な押圧力より、動的な摩擦力が追加される分大きくすることができ、結局、常時掛ける押圧力をその分減らすことができる。したがって、樹脂材料を充填したときに発生しやすいバリが防止される一方で、充填直後にキャビティ4を圧縮するときに寄せ駒32と平面駒30の側面の相対運動に無理を掛けないで、それらの当接面双方の摩耗を抑えるという作用効果を奏する。
つぎに、押し付け用ばね52による予圧と離間用ばね42に掛けられる予圧との関係について補足説明する。押し付け用ばね52による予圧が傾斜側面で既述されたように拡大されるので、スライドコア32において拡大されて作用する押し付け用ばね52の予圧は、離間用ばね42に掛けられる予圧に対して充分に大きい。それで、押し付け部材51が楔部材41に当接した後では、押し付け部材51がその押し付け端面51aを距離L突き出したまま楔部材41を先に押し込む。それで、寄せ駒32と平面駒30が当接または離間するタイミングは、後に説明されるように型開開始、あるいは型閉じ完了のタイミングからずれることになる。
ところで、上記構成部材は、寄せ駒ユニット70として、つぎのようにユニット化しても良い。すなわち、そのユニットは、スライドコア32と楔部材41と楔案内部材43とを、そのスライドコアにねじ込まれたボルト44と離間用ばね42とによって連接した状態で楔案内部材43の収容空間に収容したものである。このとき、離間用ばね42は、そのボルト頭44aと楔案内部材43の段部穴との間に装着される。そして、離間用ばね42を所定の予圧状態にするために、ボルト44が予め決められた所定量だけねじ込まれる。そのように構成された寄せ駒ユニット70は、楔案内部材43をボルト46によって枠板33に固定することによって取り付けられる。一方、固定金型2側では、押し付け部材51と押し付け用ばね52とを収容するシリンダ状ブロック53を用意して、それら部材を押し付けユニット80としてユニット化する。そのように構成された押し付けユニット80は、シリンダ状ブロック53をボルトによって固定金型2に固定することによって取り付けられる。
以上のようなユニット構成によって、本発明のような導光板等の薄板状成形品を射出圧縮成形する小型で精密な金型に相応しい、つぎに説明されるような作用効果が奏される。第一に、構成部材がシンプルな部材のままでユニット化されることである。特に、楔部材41とスライドコア32が、離間用ばね力42によって押圧さてそれら部材が傾斜側面32a、41aを介して常に当接するとともに型開きの際にその楔部材が押し出される位置が所定距離に限定されることによって、楔部材41がスライドコア32と楔案内部材43に常に挟まれるように保持されることから、型開きによってパーティング面が開放されても、楔部材41やスライドコア32は、楔案内部材43の中で安定に収容される。また、第二に、楔部材41の上端面41bが型開閉方向に直角に形成され、かつ楔部材41の出代Hがそのユニット内で所定距離に限定されるように構成されるので、その楔部材の上端面41bを楔案内部材43の上端面に一致させることによって型閉じ状態における寄せ駒32の前進状態を再現することができる。それで、寄せ駒32の移動代を確認することは容易である。そのうえ、押し付けユニット80は、楔作用によってその押し付け用ばね52の予圧が拡大されるのでその予圧をそれほど大きくする必要性がない。それで、押し付けユニット80を汎用ユニットと標準化することは容易である。同様に、寄せ駒ユニット70も簡単な連結ボルトとばねを含む最小限の部材で構成されるので、同様な標準化が可能になる。ただし、寄せ駒32のキャビティ4に面する面の表面形状は、必要に応じて別途加工されたり、スタンパとして貼り付けられる必要がある。
以上説明した金型装置を使用して射出圧縮成形する過程は、概略的には既述された図3の説明と同じように行われるが、特に寄せ駒32と楔部材41と押し付け部材51に関係する動作状態は、図2に示される。図中、図(a)は型開き中の状態を、図(b)は型閉じ完了間際であって、楔部材と押し付け部材とが当接した瞬間の状態を、図(c)はその後に寄せ駒が平面駒に当接した瞬間の状態を、図(d)は型閉じし樹脂充填した後に圧縮が完了した瞬間の状態を、図(e)は成形後の型開き中に寄せ駒が成形品からまさに離型しようとしている瞬間の状態を、そして、図(f)はその後に寄せ駒が成形品から離型した瞬間の状態を示している。
まず、図2(a)の型開き状態では、スライドコア32が離間用ばね42によって楔部材41を押圧している。それで、スライドコア32と楔案内部材43が楔部材41に対して逆の楔作用を働かせて、楔部材41がパーティング面から外方に押し出される。このとき、押し付け部材51と楔部材41がお互いに離れているので、楔部材41が押し出された移動距離、すなわち楔部材41の出代は、楔部材41の肩部分41cと楔案内部材43の段43aが当接するまでとなって距離Hである。その結果、スライドコア32も楔案内部材43側へその限度まで後退して、寄せ駒32と平面駒30の隙間が所定の隙間Dとなる。
このとき、押し付け用ばね52によって押し出される押し付け部材51も、そのフランジ部分がシリンダ状ブロック53のシリンダ穴底面に突き当たるまで前進して、その押し付け端面をパーティング面から所定距離L突き出す。また、枠部材33が平面駒30に対して移動して、平面駒30のキャビティ側表面と寄せ駒32のパーティング面とが距離T離れてキャビティ4の圧縮代が確保される。
つぎに、型閉じによって金型同士が接近して、図(b)の型閉じ完了間際の瞬間に達する。このときは、金型間の距離Xが上記の距離Lと距離Hの和にちょうど等しくなったときであり、押し付け部材51と楔部材41がちょうど当接した瞬間である。このとき、当然ながら楔部材41の出代が距離Hであるから寄せ駒32は前進しておらず、したがって寄せ駒32と平面駒30の隙間が所定距離Dだけ空いている。また、距離T、Lにも変化はない。
その後の型閉じによって距離Xがさらに小さくなるときに、まず、押し付け部材51が押し付け端面51aを距離L突き出したままで楔部材41を先に押し込む。それで、楔部材41は、その楔作用によって寄せ駒32を平面駒30へ向けて先に前進させる。押し付け用ばね52の予圧による上記の傾斜側面の比で拡大された押圧力が、寄せ駒32に掛かる離間用ばね力の予圧より充分に大きいからである。
その後、さらに型閉じされて押し付け部材51が楔部材41をさらに押し込むと、やがて寄せ駒32が平面駒30に当接して停止する。その瞬間は、図(c)のように金型間の距離Xが距離Lとなり、楔部材41の出代(距離H)が0になった瞬間である。このように、図(b)から図(c)までの型閉じ完了直前の少しの間に、押し付け部材51が楔部材41を先に押し込んで寄せ駒32の当て付け動作をが先に完了する。
本発明では、以上のように、寄せ駒の当て付け完了動作を型閉じ完了動作より速めてそれら動作のタイミングをずらすことができる。それで、この金型は、既述したような、不完全な型閉じ状態から充填を開始して板状成形品の圧縮をより効果的にする成形方法を採用することができる。
その後、型閉じ動作が完了するまでの間は、寄せ駒32の当て付け動作が完了しているので楔部材41を押し込むことはできない。それで、押し付け部材51が逆に後退してその出代Lが略0になる。そして、樹脂の充填が行われ、その終了間際からあるいは終了直後にキャビティ4の圧縮が行われて図(d)の状態になる。ここで、60は圧縮された後の成形品であり、キャビティ4の厚さ寸法がTに圧縮されている。
このとき、寄せ駒32を平面駒30に対して当て付ける押圧力が、常時は過大にならないようにする一方、充填時にその充填圧力に充分に対抗できるように設定することは既述したとおりである。それで、つぎにキャビティ4を圧縮するときに、寄せ駒32が平面駒30の側面に沿ってスライドする相対運動が無理のない動作となって、それらの当接面同士の摩耗が抑えられるという作用効果が奏される。もちろん、金型に熱膨張等が生じた場合に寄せ駒32を平面駒30側に当接するまでスライドさせることは、既述したように余裕を持ってできる。
その後、成形品60の冷却が完了するとつぎに型開きが行われ、金型間の距離Xが上記所定距離Lまで開いた図(e)の状態になる。このときまで、楔部材41が押し込まれたままでその出代(距離H)が0の状態にあり、寄せ駒32も成形品60に当接した状態にある。この図(e)の状態は、キャビティ4に成形品60が存在しかつ距離TがTであることを除いて、上記の型閉じ完了間際の図(c)の状態と同じである。
その後金型がさらに開いて金型間距離Xが距離Lを超えるとき、押し付け部材51が楔部材41から離れるに連れて楔部材41が押し出され、それとともにスライドコア32が後退し始める。そして、図(f)のように、金型間距離Xが(距離L+距離H)に達した瞬間に、押し付け部材51と楔部材41が単に接しただけの状態になって寄せ駒32が成形品60から距離D完全に離間する。
したがって、型開き直後には、押し付け部材51が楔部材41を押し込んで寄せ駒32を平面駒30の側面に当接させたまま型開きを行い、その後さらに型開きしたときに始めて離間用ばね42がスライドコア32を平面駒側面から離間させるとともに楔部材41を押し出して、寄せ駒32を成形品60から離型することができる。すなわち、この構成では、寄せ駒32の離型動作開始のタイミングと型開き動作開始のタイミングをずらすことができる。このようなことが可能であるために、既述したように、可能な限り速めに型開きを行って薄板状成形品の冷却固化を促進する一方で成形品側面の離型を少しでも遅らせて、成形サイクルの短縮に努めるとともに成形品側面の成形面を確実に成形することができる。また、成形品60側面の離型が遅れて、型開きの瞬間に成形品が平面駒から剥離して落下することが防止される。
その後、寄せ駒32の後退によって側面が開放された成形品60は、既述した図3の図(d)のように、ファンゲートとともにエジェクタ35によって突き出されて平面駒30やゲート駒31から離型する。
本発明の射出圧縮成形用金型装置の要部である、寄せ駒を型開閉動作の際に平面駒に対してスライドさせるスライド機構を示し、図(a)が型開き中の、図(b)が型閉じ後の、寄せ駒とそれに関連する部材の状態を示す。 本発明の射出圧縮成形用金型装置の射出圧縮成形するときの、寄せ駒と楔部材と押し付け部材とに関係する動作状態を示し、図(a)は型開き中の状態を、図(b)は型閉じ完了間際であって楔部材と押し付け部材とが当接した瞬間の状態を、図(c)はその後に寄せ駒が平面駒に当接した瞬間の状態を、図(d)は型閉じされ樹脂充填された後に圧縮が完了した瞬間の状態を、図(e)は成形後の型開き中に寄せ駒が成形品からまさに離型する瞬間の状態を、そして、図(f)はその後に寄せ駒が成形品から離型した瞬間の状態を示す。 本発明の射出圧縮成形用金型装置の基本的な構成を示し、図(a)はその金型の型開き状態を、図(b)は型閉じ後射出が開始された直後の状態を、図(c)は圧縮が行われた状態を、そして、図(d)は型開き後成形品が離型された直後の状態を示す。
符号の説明
4 キャビティ
5 固定金型
6 可動金型
30 平面駒
32 寄せ駒(スライドコア)
32a スライドコアの傾斜側面
41 楔部材
41a 楔部材の傾斜側面
41b 上端面
41c 肩部分
42 離間用ばね
43 楔案内部材
43a 段差部分
44 連結ボルト
44a ボルト頭
51 押し付け部材
51a 押し付け端面
52 押し付け用ばね
53 シリンダ状ブロック
60 成形品
70 寄せ駒ユニット
80 押し付けユニット
D 平面駒と寄せ駒の隙間
H 楔部材の出代
L 押し付け部材の出代
圧縮前のキャビティ厚み寸法
圧縮後のキャビティ厚み寸法
X 固定金型パーティング面と可動金型パーティング面の間の距離

Claims (2)

  1. 固定金型と可動金型との間に形成される薄板状キャビティの、可動側の平板面と側面とを平面駒と寄せ駒とによって画成して、型開閉の際にその寄せ駒をその平面駒の側面に離接させ、圧縮成形の際にその寄せ駒をその平面駒の側面に沿って相対的に移動させてそのキャビティを圧縮する射出圧縮成形用金型装置において、
    前記可動金型に、前記寄せ駒と一体化されるとともに背面に傾斜側面を有したスライドコアと、そのスライドコアの傾斜側面に常に摺接する傾斜側面と型開閉方向に直角の上端面とを有するとともに型開閉の際にその型開閉方向に所定距離離だけ移動する楔部材と、そのスライドコアを前記キャビティから離間させる方向にばね力を付勢する離間用ばねとを備え、
    前記固定金型に、型開閉の際にその型開閉方向に所定距離離だけ移動し型閉じの際に前記楔部材の前記上端面をその端面に平行な押し付け端面で押圧する押し付け部材と、その押し付け部材に前記押圧のためのばね力を付勢する押し付け用ばねとを備えて、
    型開き直後では、前記押し付け部材が前記楔部材を押し込んだまま前記寄せ駒を前記平面駒側面に当接させた状態で型開きを行い、その後さらに型開きしたときに始めて前記離間用ばねがその楔部材を押し出してその寄せ駒をその平面駒側面から離間させる一方、
    型閉じ完了直前には、前記押し付け部材が前記楔部材を押し込んだまま前記寄せ駒を前記平面駒側面に当接させた状態で型閉じ完了することを特徴とする射出圧縮成形用金型装置。
  2. 前記可動金型に、前記スライドコアと前記楔部材とを収容する収容空間を備えた楔案内部材を備え、その楔部材がその側面に肩部分を形成しその収容空間がその壁面にその肩部分に当接する段差部分を形成して、その肩部分とその段差部分の当接によってその楔部材の押し出される距離を前記所定距離に限定する一方、そのスライドコアとその楔部材とその楔案内部材とを、そのスライドコアに結合した連結ボルトと、その連結ボルトのボルト頭とその楔案内部材の間に係止された前記離間用ばねと、によって連接した寄せ駒ユニットを備え、
    前記固定金型に、前記押し付け部材と前記押し付け用ばねとをシリンダ状ブロックに収容した押し付けユニットを備えたことを特徴とする請求項1記載の射出圧縮成形用金型装置。
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