JP2009149946A - 缶用鋼板用の熱延母板 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接性、非時効性に優れ、溶接後の缶胴加工における缶高減少量が小さい缶用鋼板用の熱延母板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.0016〜0.0050%、3.8≦Nb/C質量比≦17.0(0.5≦Nb/C原子比≦2.0)、B:0.0007%以上かつB/N質量比≦0.47(B/N原子比≦0.6)とする。そして、表面から板厚方向に1/2・tの深さ(t:板厚)において、{001}<110>方位の集積強度が5.5以上、{113}<110>方位の集積強度が10.0以上、かつ、{332}<113>方位の集積強度が7.0以下とする。このような方位の集積強度を得るため、例えば、熱間圧延では、最終仕上げスタンドの一つ手前のスタンドにおける圧下率は15%以上50%以下、最終仕上げスタンドにおける圧下率は15%以上50%以下、温度は850℃以上960℃以下で行い、巻取りは660℃以下で行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、3ピース缶用鋼板として用いられる熱延母板およびその製造方法に関し、特に鋼板を円筒状に成形したのち、シーム溶接を施し、さらに円周方向に伸び歪みを与えるエキスパンド加工を行う3ピース缶用鋼板用の熱延母板とその製造方法に関するものである。
缶容器はその部品構成から、缶胴と上蓋からなる2ピース缶、缶胴と上蓋と底蓋からなる3ピース缶に大別できる。
中でも、3ピース缶は、鋼板を円筒状に成形したのち、シーム溶接を施し、さらに円周方向に伸び歪みを与えるエキスパンド加工を行うために、ランクフォード値(以下、r値と称す)が大きいと缶高さの減少量が大きくなり、缶高の減少しない溶接部との間に段差が生じ、缶蓋を巻き締めるとき障害となる。そのためr値が低いことが重要となる。
例えば、特許文献1には、連続焼鈍法で製造される軟質の缶用鋼板に係り、バッチ焼鈍法で製造されたものとほぼ同等の非時効性、加工性、溶接性を有する調質度T2〜T3.5の軟質缶用鋼板に関する方法が提案されている。しかし、特許文献1では、平均r値は1.3〜1.8の範囲であり、缶高さ変化を抑制させるうえで、十分ではない。
特許文献2には、3ピース缶およびその製造方法に関し、特に鋼板を円筒状に成形したのち、さらに円周方向に伸び歪みを与えることにより、樽型状などの意匠性を有する形状に変形させて製品とする、3次元的に変形した3ピース缶の使途に用いて好適な、変形3ピース缶用鋼板とその製造方法が提案されている。しかし、集合組織を制御する上で必要となる熱間圧延時の圧下率は記載されておらず、0.8以下のr値の鋼板を作りこむことは不可能である。
特許文献3には、再結晶温度を上昇させるNbを添加した成分系の鋼板において、製品コイルの長手方向および幅方向の材質の均一性に優れた缶用鋼板の製造方法が提案されている。しかし、NbCの析出を促進させて再結晶終了温度の上昇を押さえるために最終スタンドのでの圧下率を10%以上、好ましくは20%以上で仕上げ圧延を行い、その圧延温度はAr3変態点以下、(Ar3点−100℃)以上で行われるため、r値が上昇する。
特許文献4には、熱延板の集合組織、冷延率、焼鈍時の加熱速度を変化させることによってr値を制御する鋼板とその製造方法が提案されている。しかし、特許文献4は、板層1/2における{332}<113>の集積を増加させ、{100}〈011〉の集積を減少させる技術であり、r値は上昇してしまう。
)特開平2005−307350 )登録特許第3695048号 )登録特許第3804220号 )特開平2006−193819
以上のように、従来の技術では、溶接性、非時効性に優れ、r値が低い、すなわち、溶接後の缶胴加工における缶高減少量が小さい極低炭軟質缶用鋼板は得られていない。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、溶接性、非時効性に優れ、r値が低い、すなわち、溶接後の缶胴加工における缶高減少量が小さい缶用鋼板用の熱延母板を提供することを目的とする。
本発明は、軟質缶用鋼板のうち、調質度T2〜T3.5のものを中心に、鋼成分、結晶粒形態、製造方法等に関して鋭意研究を行い、解決方法を見出し、発明を完成するに至ったものである。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.0016〜0.0050%、Mn:0.1〜0.8%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0015〜0.0070%、3.8≦Nb/C質量比≦17.0(0.5≦Nb/C原子比≦2.0)、B:0.0007%以上かつB/N質量比≦0.47(B/N原子比≦0.6)を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面から板厚方向に1/2・tの深さ(t:板厚)において、{001}<110>方位の集積強度が5.5以上、{113}<110>方位の集積強度が10.0以上、かつ、{332}<113>方位の集積強度が7.0以下を満たすことを特徴とする調質度がT2〜T3.5の缶用鋼板用の熱延母板。
[2]前記[1]において、表面から1/4・t深さ(t:板厚)にかけての結晶粒径が12μm以上、1/4・t深さから板厚中心にかけての結晶粒径が11μm以下であることを特徴とする調質度がT2〜T3.5の缶用鋼板用の熱延母板。
なお、本発明において、調質度がT2〜T3.5とは、缶用鋼板として用いられるブリキやティンフリー鋼の硬さを示す指標であり、JISG3303およびJIS G3315では、ロックウェル硬度(HR30T)でT2が53±3、T2.5が55±3、T3が57±3、T4が61±3と規定されている。T3.5とは、JISでは特に規定されていないが、一般的には、T3とT4の中間レベルのロックウェル硬(HR30T)で59±3として通用することから、本願発明においても59±3として定義する。
また、本発明の課題とする缶高減少量(缶高の変化)、非時効性、溶接性の評価についての基本的な考え方は、以下の通りである。
(1)缶高の変化
シーム溶接後にエキスパンド加工が行われる場合、r値が大きいと缶高の減少量が増える。缶高の減少量が大きくなると、缶高が減少しない溶接部との間に段差が生じるため、r値は低いことが必要である。よって、本発明では、平均r値≦1.3とする。
(2)非時効性
製缶加工前には塗装焼付けが施されるため塗装焼付けでの加熱により時効が促進されると、塗装焼付け後の製缶加工時にフルーティングやストレッチャ・ストレイン等の不良を生じ、外観を著しく低下させる。よって、非時効性に優れることが必要である。本発明では、エキスパンド加工後のストレッチャ・ストレイン発生で評価し、肉眼による目視検査でストレッチャ・ストレインの発生が全く認められなかったものを良好とする。
(3)溶接性
缶には、シーム溶接、スポット溶接、プロジェクション溶接等が施される。3ピース缶の缶胴部に、シーム溶接が行なわれ、次いで、溶接後にエキスパンド加工が行われた場合には、溶接部に過大な荷重がかかる。よって、様々な溶接に対して溶接熱影響部の強度が十分に確保され、溶接後の加工の際、及び、客先で缶が使用される際に、溶接熱影響部に割れが生じないことが必要である。本発明では、フランジ加工を行った場合のHAZ割れ発生率が0.5%以下のものを良好とした。
本発明によれば、溶接性、非時効性に優れ、溶接後の缶胴加工における缶高減少量が小さい缶用鋼板用の熱延母板が得られる。その結果、3ピース缶、特に鋼板を円筒状に成形したのち、シーム溶接を施し、さらに円周方向に伸び歪みを与えるエキスパンド加工において、缶高さ減少が小さく、溶接部の凸部が小さい缶用鋼板を得ることができる。
本発明は、連続焼鈍法により製造される軟質缶用鋼板について種々の検討を行った結果、完成に至ったものであり、その発明の詳細を以下に説明する。
なお、本発明で対象とする缶とは、3ピース缶であり、特に鋼板を円筒状に成形したのち、シーム溶接を施し、さらに円周方向に伸び歪みを与えるエキスパンド加工を行う3ピース缶用鋼板が最適である。
また、本発明の対象とする熱延母板は、調質度をT2〜T3.5とする。T3.5を超えると硬質となり、材質のバラツキが大きくなる。一方、T2未満ではCが0.0016%以上添加されているため、長時間の焼鈍を行なったとしても軟質化させることは出来ず、調質度T1の軟質材を製造することは困難である。
まず、r値の限定理由について述べる。
3ピース缶の缶胴においては、シーム溶接により円筒形状とした後に、エキスパンド加工、ビード加工等の缶胴加工を施すことが多い。その場合、缶胴は周方向に伸び歪みが与えられるが、ランクフォード値が大きいと板厚が減少せずに缶高が減少しやすい。
反対にランクフォード値が小さいと板厚が減少しやすいため缶高の減少量は小さくなる。缶高の減少量が大きいと、缶高があまり変化しない溶接部との間に段差が生じることがある。
上記事情を考慮し、本発明では、r値を1.3以下に限定する。3ピース缶の缶胴においては缶胴の周方向のr値が小さい必要があるが、鋼板においては圧延方向またはコイル幅方向が缶胴周方向になるように板取りされるため、圧延方向またはコイル幅方向のr値が小さいことが望ましい。
次に、熱延板の組織について述べる。
表面から板厚方向に1/2・tの深さ(t:板厚)において、{001}<110>方位の集積強度が5.5以上、{113}<110>方位の集積強度が10.0以上、かつ、{332}<113>方位の集積強度が7.0以下
熱延板の結晶粒径の制御は所望のr値を得るためには重要であり、本発明における重要な要件である。r値を小さくするためには、焼鈍板の結晶粒径を微細化することが有効である。そして、焼鈍板のr値を小さくするためには熱延板のr値を低下させることが必要である。また、r値を低下させるためには、結晶粒径を小さくすることの他に、集合組織の制御が必要である。
r値を低下させる集合組織を得るためには、熱延板で、{001}<110>の集積を増し、{111}<112>の集積を減少させることが必要である。何故ならば、{001}<110>方位は冷間圧延、焼鈍時に変化しにくい集合組織であり、かつ、r値を低下させる方位である。一方、{111}<112>の集積はr値が増大する集合組織であるため、この集合組織へ集積させることは望ましくない。
{001}<110>は冷間圧延時にも結晶回転が起こらず、再結晶後も安定的に存在する。よって、熱延板で{001}<110>を集積させることで、冷間圧延後も{001}<110>は安定的に存在し焼鈍後も{001}<110>集積が増加することになる。以上より、{001}<110>方位の集積強度は、5.5以上とする。5.5未満では{001}<110>方位の集積強度が十分ではなくr値は1.3以下とならない。
焼鈍後に{111}<112>への集積を減少させるためには、熱延板では{332}<113>の集積を低下させることが必要である。何故ならば、熱延板で{332}<113>に集積させると、冷間圧延後に{332}<113>→{554}<225>、焼鈍後に{554}<225>→{111}<112>にと集積の高い方位へと変化するためである。よって、熱延板での{332}<113>の集積を低下させることによって、所望のr値を得ることができる。以上より、{332}<113>方位の集積強度は7.0以下とする。7.0超えではr値が大きくなり、r値が1.3以上となる。
また、{113}<110>方位の集積強度は10.0以上とする。{113}<110>方位の集積は、冷間圧延後に{113}<110>→{001}<110>と集積の高い方位が変化する。{113}<110>の集積強度が高いと{001}<110>の集積強度が高くなる。集積強度が10.0未満では、r値が小さくなるためr値1.3以上とすることができない。
なお、上記各方位の集積強度は、熱延条件(圧下率および温度)によって制御でき、これについては後述する。
表面から1/4・t深さ(t:板厚)にかけての結晶粒径が12μm以上、1/4・t深さから板厚中心にかけての結晶粒径が11μm以下
r値は結晶粒径の影響を受ける。結晶粒径が大きいときはr値が大きくなり、結晶粒径が小さいときはr値が小さくなる。目標とするr値1.3以下とするためには、表面から1/4・t深さ(t:板厚)にかけての結晶粒径が12μm以上、1/4・t深さから板厚中心にかけての結晶粒径が11μm以下とすればよいことが判明した。
なお、上記各結晶粒径は、熱延の巻取り温度と熱延の最終スタンドの圧下率を変化させることによって、制御することができる。
次に、鋼成分の限定理由について述べる。
C:0.0016〜0.0050%
Cは鋼板材質に対して大きな影響を与える。第一に、非時効性への影響である。鋼中に固溶Cが存在すると、塗装焼付け時に時効が促進され、その後の製缶加工でストレッチャーストレインやフルーティング等の欠陥を生じる。本発明においては、Nbを添加してNbCを形成させるため、固溶Cの存在量は低く抑えられているが、C量が0.0050%を超えると、必要なNb量も増加する。Nbは高価な元素であるため生産コストの面で不利であり、NbCによる析出強化作用により鋼板が過度に硬化する。以上より、C量は0.0050%以下に制限する。
第二には、缶高減少量への影響である。焼鈍工程で固溶Cが全く存在しない状態で再結晶が進展すると、r値が向上することが知られている。このために、C量は0.0016%必要である。
以上より、C量は0.0016%以上0.0050%以下とする。
Mn:0.1〜0.8%
Mn量が0.1%未満では、MnSを十分に形成することができずにSによる熱間脆性を生じることがある。一方、0.8%を超えると鋼板が過剰に硬質化して製缶加工性を損ねる。したがってMn量は0.1%以上0.8%以下とする。
Al:0.01〜0.10%
Al量が0.01%未満では脱酸効果が十分に得られない。また、NとAlNを形成することにより、鋼中の固溶Nを減少させる効果も十分に得られなくなる。一方、0.10%を超えるとこれらの効果が飽和するのに対して、アルミナ等の介在物を生じやすくなる。したがって、Al量は0.01%以上0.10%以下とする。
N:0.0015〜0.0070%
Nを0.0015%未満とすると、鋼板の製造コストが上昇し、安定的な製造も困難になる。また、N量が少ないと、BとNの比を一定範囲に保つためのB量の制御が難しくなる。一方、Nが0.0070%を超えると、溶接性を確保するために必要なB量が増加する。すなわち、結晶粒内のBN析出量が増加し、鋼板が過度に硬化する恐れがある。よって、N量は0.0015%以上0.0070%以下とする。
Nb: 3.8≦Nb/C質量比≦17.0(0.5≦Nb/C原子比≦2.0)
Nbは非時効性を確保するために重要な元素である。NbはNbCを形成することで鋼中の固溶Cを減少させる働きがある。その効果を十分に発揮させるために、Nb/C質量比で3.8以上が必要である。一方、Nb添加量が多すぎると、固溶Cを減少させる働きは飽和するのに対して、再結晶温度を上昇させる欠点が生じる。また、Nbは高価であることから生産コストも上昇する。したがって、Nb/C質量比で17.0以下にする必要がある。よって、3.8≦Nb/C質量比≦17.0(0.5≦Nb/C原子比≦2.0)とする。
B: 0.0007%以上かつB/N質量比≦0.47(B/N原子比≦0.6)
Bは溶接性を確保するために重要な元素である。そして、以下に示すように、鋼板材質に対して大きな影響を与える。
Bの一部は鋼中で固溶状態で存在するが、この固溶Bが結晶粒界に偏析することにより、溶接を行なった場合にHAZ部での異常な粒成長とそれによる軟化を抑制する。BはBNを形成しやすいため、Bの一部を固溶状態で存在させるためには、N量に応じたB量を添加する必要がある。詳細な調査を実施したところ、B量が質量比で0.0007%未満ではHAZ部が軟化し、溶接後に加工を行なった場合にHAZ部に割れを生じることがあった。
B添加によりr値が下がり、その効果を十分に発揮させる観点からも0.0007%以上とする必要がある。
また、B/N質量比≦0.47(B/N原子比≦0.6)を超えると、再結晶温度が上昇するという弊害が生じる。よって、B量は質量比でB:0.0007%以上かつB/N質量比≦0.47(B/N原子比≦0.6)とする。
S:Sは特に本発明の鋼板特性に影響を及ぼすことがないが、S量が0.008%より大きくなると、N量が0.0044%を超えて添加される場合、多量に発生したMnSを析出核にして窒化物および炭窒化物であるBN.Nb(C,N),AlNが析出するために熱間延性を低下させる。したがって、S量は0.008%以下とすることが望ましい。
残部はFeおよび不可避的不純物である。なお、上記成分の他、鋼にはSi、P等が含まれるが、これらの成分は特に本発明の鋼板特性に影響を及ぼすことがないため、その他の特性に影響がない範囲で不可避不純物として適宜含むことができる。また、特性に悪影響を及ぼさない範囲で、上記以外の元素の添加を行なうこともできる。
次に、本発明の缶用鋼板用の熱延母板の製造方法について述べる。
製鋼条件は、本発明に規定する鋼成分が得られる方法であれば如何なる方法でもよく、特に規定しない。但し、鋳片の製造は、鋳片の均一性から、連続鋳造で行なうことが望ましい。鋳片の再加熱条件も特に規定するものではないが、高温すぎると表面欠陥やエネルギーコストの面で不利であり、低温すぎると熱延仕上温度の確保が難しくなることから、1050〜1300℃であることが望ましい。
熱延条件は本発明における集合組織を制御するためには、特に重要な項目である。仕上げ圧延前の粗圧延は、1050℃以上で開始されることが望ましい。これは、温度が低下することによる熱間圧延時の熱延板の脆化を防止するためである。仕上げ圧延時の温度は850℃以上960℃以下とする。850℃未満の場合、Ar3変態点以下の圧延であるために結晶粒径が粗大化する。一方、仕上げ圧延温度が960℃超えの場合、Ar3変態点以上の場合も最終仕上げ圧延での動的再結晶が高温で行われるために結晶粒径は粗大化する。
また、最終仕上げスタンドの一つ手前のスタンドにおける圧下率を15%以上50%以下、最終仕上げスタンドにおける圧下率を15%以上50%以下で行う。最終仕上げスタンドの一つ手前のスタンドにおける圧下率を15%未満とすると{001}<110>および{001}<113>方位の集積が十分ではなくr値が1.3以下とならない。
巻取り温度は660℃以下とする。巻取り温度が660℃超えで行われた場合、焼鈍時のフェライト粒の成長を抑制する固溶Nbと固溶BがNb(C,N)とBNとして析出してしまうためにフェライト粒径が成長してしまう。
その後に、酸洗工程でスケールを除去する。酸洗工程では、スケール除去が適切に行われればよい。スケール除去が不十分な場合、スケールが後工程で噛みこむことによる表面欠陥が発生する。
一次冷間圧延は特に規定はしないが、適正なr値を得るためには、大きいほどがよく70〜96%の範囲にあることが望ましい。さらに望ましい範囲は91.5〜96%である。冷間圧延率が96%以上の場合、冷間圧延時の負荷が大きくなりコストが上昇する。
次いで、連続焼鈍を行う。
連続焼鈍はr値の上昇を押さえるために結晶粒径の粗大化を抑制する必要がある。このために、連続焼鈍時の均熱時間は30秒以下が望ましい。均熱温度が高い場合は、結晶粒径の粗大化を招くために650〜770℃であることが望ましい。650℃以下の場合は焼鈍温度が低すぎて、長時間焼鈍を行っても再結晶が完了しない。
また、再結晶の進展の程度は、鋼成分Nb、B、N量によっても変化する。種々の成分の鋼を試作して実験を行なった結果、再結晶の進展の程度は、Nb量(質量%)に関してはLoge(Nb)の値とよい相関が認められ、B量、N量(質量%)に関しては、B/Nの値とよい相関が認められた。
尚、均熱時間20秒未満では、目標の組織を得られないことがあり、一方、90秒を超えると生産性に劣ることから、均熱時間は20〜90秒の範囲が好ましい。また、均熱温度700℃未満の場合も、目標の組織を得られないことがあり、一方、780℃を超えると缶用鋼板のような極薄材では炉内破断や形状不良が発生する懸念が生じるため、700〜780℃の範囲が好ましい。
また、固溶Cを低減するために、上記均熱温度に保持した後に過時効処理を行なってもよい。ここで、過時効処理の方法については特に規定しないが、固溶Cを十分に低減するためには、350〜450℃で30〜90秒間保持することが望ましい。
調質圧延については、圧延率が低すぎると鋼板形状の矯正、表面粗度の調整ができなくなるため、その効果を発揮させるために0.5%以上が好ましい。一方、圧延率が5%を超えると、加工硬化により製缶加工性を損ねるため、5%以下が好ましい。
表面処理については、耐食性が必要な場合には、錫めっき、ティンフリースチールめっき等を行なうものとする。また必要に応じてポリエステル樹脂皮膜等を形成してもよい。
表1に示す各種成分の鋼種A〜Qを溶製し、垂直曲げ型連続鋳造機(垂直部3.5m、曲げ半径10m、鋳片サイズ幅1000mmで厚み230mm)、または、ラボ鋳型(140mm×140mm×370mm、容量50kg)にて鋳造した後にラボ分塊圧延を施してスラブを作製し、スラブ再加熱温度1250℃、仕上温度890℃、巻取温度620℃の条件でそれぞれ熱間圧延を行った。ここで、一部サンプルを採取し、集合組織を測定した。測定方法は後述する通りである。
次いで、これらの熱延板を塩酸酸洗した後、冷間圧延、連続焼鈍、調質圧延を行った。
表2に、熱間圧延時の仕上げ温度、最終仕上げスタンドの一つ手前のスタンドにおける圧下率、最終仕上げスタンドにおける圧下率、及び巻取り温度を示す。また、引き続き行った冷間圧延における冷延率、連続焼鈍での均熱温度T(℃)、均熱時間t(秒)、および調質圧延率を示す。
Figure 2009149946
次いで、上記により得られた鋼板に対し、その後、電解クロメート処理を施すことによりティンフリースチール鋼とした。
さらに、製缶業者で塗装焼付け後に製缶加工されることを考慮して、210℃×10分の時効熱処理を施した。
以上により得られた鋼板について、ロックウェル硬度を測定して調質度を求め、JIS5号引張試験片を採取して圧延方向の降伏強度、圧延方向、幅方向、45度方向のランクフォード値r0、r90、r45を測定した。三方向のランクフォード値から、平均値raveをrave=(r0+r90+2×r45)/4 から求めた。得られた結果を表2に示す。なお、上記性能測定方法は以下に記載する通りである。
(集合組織の評価)
減厚加工および歪除去を目的とした化学研磨(シュウ酸エッチング)を行い、板厚1/2・t深さの位置にて測定した。測定にはX線回折装置を使用し、Schulzの反射法により(110),(200),(211),(222)極点図を作成した。これらの極点図から結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)を算出し、Euler空間(Bunge方式)のΨ2=45°断面を作図した。この時、ゴーストの影響を除くために奇数項の計算も行った。
さらに、製缶時の特性を見るために、これらの鋼板に対して、3ピース缶の缶胴成形、及び、2ピース缶成形を行なった。3ピース缶の缶胴成形に関しては、400×850mmの長方形ブランクに対して、巻き幅(ロールフォーミング後の両端のラップ量)が0〜3mmになるような条件でロールフォーミング加工を施し、チリの発生しない上限の溶接電流でシーム溶接を行なうことにより両端を接合し、直径が約270mmの円筒状の缶胴を得た。次に直径増加率が最大で約6%のエキスパンド加工を施し、さらにビード高が6〜8mmのビードを加工を行ない、最後にフランジ幅6mmとなるようにフランジ加工を行ない、3ピース缶の缶胴を得た。このようにして得た3ピース缶の缶胴について下記の評価基準を用いて評価した。
(3ピース缶の非時効性の評価)
非時効性をシーム溶接後にエキスパンド加工を行い、加工後のストレッチャー・ストレイン発生の有無で評価した。エキスパンド加工は、外径50.4mmΦから、外径52.6mmΦまで円周方向にそって拡張加工を行った。ストレッチャー・ストレインの発生は、外観の著しい劣化を引き起こす。非時効性は、ストレッチャー・ストレインの発生の程度で下記の評価基準により判定した。肉眼による目視検査でストレッチャー・ストレインの発生が全く認められなかったものを二重丸(◎)ストレッチャー・ストレインの発生が僅かに認められるが実用上問題のないものを一重丸(○)、ストレッチャー・ストレインが発生したものをバツ(×)でそれぞれ表示した。
(3ピース缶の溶接性の評価)
溶接性の評価としてシーム溶接後にフランジ加工を行なった場合のHAZ割れ発生率を調べた。下記の評価基準により判定した。溶接部から採取した試料の研磨面を顕微鏡観察して、HAZ割れ発生率が0.5%以下のものを二重丸(◎)、HAZ割れ発生率が0.5%超1%以下のものを一重丸(○)、HAZ割れ発生率が1%超えたものをバツ(×)でそれぞれ表示した。
(3ピース缶の缶高変化の評価)
缶高変化の評価としてエキスパンド加工、ビード加工後の缶高減少量を求めた。下記の評価基準により判定した。缶高減少量が1mm以下のものを二重丸(◎)、缶高減少量が1mm超1.5mm以下のものを一重丸(○)、缶高減少量が1.5mmを超えたものをバツ(×)でそれぞれ表示した。
(リジングの評価)
焼鈍板をフレキサーで加工した後に、圧延方向と平行に畝状の起伏が発生する。これは、熱延時に形成された帯状の同一結晶方位コロニーに起因する。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2009149946
実施例においては、調質度がT2〜T3.5であり、いずれの評価項目に関しても合格判定(◎)であった。
一方、比較例は、不合格判定(×)の評価項目が1つ以上存在するか、調質度が本発明範囲を外れ上昇していた。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.0016〜0.0050%、Mn:0.1〜0.8%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0015〜0.0070%、3.8≦Nb/C質量比≦17.0(0.5≦Nb/C原子比≦2.0)、B:0.0007%以上かつB/N質量比≦0.47(B/N原子比≦0.6)を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、表面から板厚方向に1/2・tの深さ(t:板厚)において、{001}<110>方位の集積強度が5.5以上、{113}<110>方位の集積強度が10.0以上、かつ、{332}<113>方位の集積強度が7.0以下を満たすことを特徴とする調質度がT2〜T3.5の缶用鋼板用の熱延母板。
  2. 表面から1/4・t深さ(t:板厚)にかけての結晶粒径が12μm以上、1/4・t深さから板厚中心にかけての結晶粒径が11μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の調質度がT2〜T3.5の缶用鋼板用の熱延母板。
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