JP2009149639A - 電気輸送流量を増加させる、ポリペプチド系薬物の修飾 - Google Patents

電気輸送流量を増加させる、ポリペプチド系薬物の修飾 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリペプチド薬物の電気輸送流量を改善する。
【解決手段】ポリペプチド薬物の経皮的電気輸送流量を向上させるためにポリペプチド薬物を修飾する。ポリペプチドは1種以上のグルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)及び/又はアスパラギン(Asn)の残基をヒスチジン残基(His)で置換することにより修飾される。親ポリペプチドの生物活性を保持すると言う観点から、GlnのHisによる置換が特に好ましい修飾ポリペプチドの経皮的電気輸送送出に有用な組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、一般に、電気輸送ドラッグデリバリー、更に詳しくは経皮的電気輸送ドラッグデリバリーに関する。具体的に言うと、本発明は、ポリペプチド中の特定のアミノ酸を置換することによりそのポリペプチドの電気輸送流量を改善する方法に関する。
治療薬(例えば、薬物)の経皮的(即ち、皮膚を通しての)送出は、薬剤の1つの重要な投与ルートである。薬物の経皮的送出は、胃腸の損傷や肝臓の代謝を回避するためのものである。市販の大多数の経皮的・ドラッグデリバリーシステム(drug delivery system)(例えば、ニトログリセリン、スコポラミン、エストラジオール、テストステロンのスキンパッチ)は、薬物を受動性拡散(passive diffusion )により送り出される。その薬物は、パッチ中のレザバーから、存在する濃度勾配により、患者の皮膚の中へと拡散して行く。即ち、薬物はパッチレザバー中の高濃度から患者の体の低濃度へと拡散して行く。患者の皮膚を通る薬物の流量(flux)は、薬物の分配係数及び溶解特性を含めて多数の因子によって決まる。このタイプのデリバリーシステム(即ち、塗剤)では、薬物の患者の血流への送出は遅くなるが、それは制御されている。薬物の経皮的送出は薬物の特に魅力的な投与ルートであって、その治療指数は狭く、半減期が短く、そして活性が強力である。
残念ながら、多くの薬物が示す経皮的拡散流量は、治療上有効であるとするには小さ過ぎる。これはポリペプチドやタンパク質のような高分子量の薬物では特にそうである。薬物の経皮的流量を高めるのに、患者の体表面(例えば、皮膚)と接触している薬物レザバーを通して印加される電流を低レベルで適用する技法が用いられて来た。この技法は、イオン電気導入法、更に最近では電気輸送(electrotransport)と言う名称を含めて、幾つかの名称で呼ばれている。
電気輸送法は、治療剤又は治療薬物種の経皮的輸送を、駆動力として電流を用いることによって、即ち電流を薬剤含有レザバーを通して患者に適用することによって達成する方法である。電気輸送法は、印加電流の振幅、タイミング及び極性が標準的な電気製品を用いて容易に調整されるので、その方法だけでも、受動性の経皮的薬物送出法より更に制御し易い方法である。一般に、薬物の電気輸送流量は同薬物の受動性経皮的流量より50%から数桁大きい可能性がある。
現在知られている電気輸送ディバイスでは、少なくとも2つの電極が用いられている。これら電極は共に患者の体表面(例えば、皮膚)のある部分と電気的に密接した状態で配置されている。活性電極またはドナー電極(donor electrode )と呼ばれる一方の電極は、(例えば、イオン性の又はイオン化性の)治療薬、薬物前駆体又は薬物を体に電気輸送で送り込む電極である。カウンター(counter )または戻り(return)電極と呼ばれる他方の電極は、体を通って電気回路を閉じる役割を果たす。その電気回路は、それら電極が接触している体表面と協力して、電気的エネルギー源、例えば電池にそれら電極を接続することによって完成される。
経皮的に送り出される薬物種の電荷に依存して、陽極又は陰極のどちらかが“活性”電極、即ちドナー電極となることができる。例えば、体に送り込まれるべきイオン性物質が正に帯電している場合(即ち、カチオン)は、陽極が活性電極となり、陰極が回路を完成する役割を果たす。他方、送り出されるべきイオン性物質が相対的に負に帯電している場合(即ち、アニオン)は、陰極電極が活性電極となり、陽極電極がカウンター電極となる。
或いはまた、陽極と陰極が、共に、適切な電荷を持つ薬物を体に送り込むために用いることができる。このような場合、両電極が活性電極、即ちドナー電極であると見なされる。即ち、陽極電極は正に帯電した薬剤を体の中に送り込むことができ、一方陰極電極が負に帯電した薬剤を体の中に送り込むことができる。
現存する電気輸送デバイスでは、一般に、体に電気輸送で送り出されるべき治療薬のレザバー又は治療薬源が必要である;治療薬は、典型的には、イオン化若しくはイオン化性薬物種、又はそのような薬物種の前駆体の液体溶液の形を取っている。このようなレザバー又は薬物種源の例に、ヤコブセン(Jacobsen)の米国特許第4,250,878号明細書に記載されるパウチ、ウエブスター(Webster )の米国特許第4,382,529号明細書に開示される予備形成ゲル体、及びサンダーソン(Sanderson )等の米国特許第4,722,726号明細書の図面に開示される、薬物の液体溶液を保持するガラス製又はプラスチック製容器がある。このような薬物レザバーは、電気輸送ディバイスの陽極又は陰極に電気的に接続されて、1種又はそれ以上の薬物種又は薬剤の固定源又は入れ換え可能源を提供する。
本明細書で使用される“電気輸送”なる用語は、一般に、送り出されるべき治療薬が完全に帯電している(即ち、100%イオン化されている)か、完全に帯電していないか、又は部分的に帯電し、かつ部分的に帯電していないかに係わらず、治療薬の電気的に補助された送出を意味する。治療薬又は治療薬種は電気泳動、電気浸透、電気穿孔又はそれらの任意の組み合わせで送り出すことができる。電気浸透は、一般に、治療薬種が含まれている液体溶媒が、治療薬種のレザバーに対する電気起電力の印加の結果、浸透することの結果として起こるものである。電気穿孔は一時的に存在する細孔の形成を含むもので、その形成は皮膚に電流を適用すると起こる。
ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質の経皮的電気輸送送出が、経口的送出のようなより一般的な投与ルートで遭遇する諸問題の故に、特に関心のあるものである。ポリペプチドとタンパク質の分子は、胃腸管中のタンパク質分解酵素による分解を非常に受け易く、また経口的に摂取されるときは徹底的な肝代謝を受ける。ポリペプチドとタンパク質は、通常、患者の血液中に治療レベルを達成するために非経口で投与されることが必要である。最も普通の非経口投与法は皮下注射と静脈投与である。ポリペプチドとタンパク質は、しかし、それらの生物活性の作用期間が本来的に短く、必要とされる有効な治療レベルを維持するには、頻繁な注射、しばしば1日当たり数回の注射を行うことが必要である。タンパク質では、しばしば、この治療法が不都合で、痛みを伴い、かつ、例えば感染の危険を伴うことが見いだされている。
製剤としてのポリペプチド及びタンパク質の効果的な投与のための(非経口的注射以外の)他のルートを見いだすために、多大の努力が費やされて来た。副作用がより少なく、しかも患者の受け入れ易さがより良好な投与ルートが、特に大きな関心事となって来た。代案としてのこのようなルートに、一般に、ポリペプチド/タンパク質をカプセル又は他の容器から胃の低pH環境を通過した後に放出させる“遮蔽(shielded)”経口投与、粘膜組織、例えば肺の粘膜組織を通してのエンハラー(enhalaers )による、又は鼻の粘膜組織を通しての鼻スプレー及び移植可能なポンプによる送出があった。今までのところは、残念ながら、ポリペプチド/タンパク質送出のこれら代替ルートは、極く限られた成功しか収めていない。
ポリペプチド及びタンパク質の電気輸送送出はまた技術的困難にも遭遇した。例えば、水は、その優れた生体適合性に因り、電気輸送により送り出される薬物の溶液を形成するための好ましい液体溶媒である。多くのポリペプチド及びタンパク質は、残念ながら、水の存在下では不安定である(即ち、それらは加水分解されて行くか、酸化されて行くか、変性されて行くか、さもなければ分解されて行く)。皮膚も、また、ポリペプチド/タンパク質をそれが経皮的に送り出されるにつれて分解させ得るタンパク質分解酵素を含む。加えて、特定のポリペプチド/タンパク質、特に治療される動物が産生するものではないものは、皮膚反応、例えば感作反応又は刺激反応を引き起こし得る。
多数の研究者がポリペプチド及びタンパク質の電気輸送送出を明らかにした。J. Pharm. Sci.、第75巻(1986年)、738頁のR.バーネット(R. Burnette)等による初期の研究は、小さいトリペプチド分子である甲状腺刺激ホルモンのインビトロ皮膚透過を包含するものであった。その電気輸送流量は受動性拡散流量より大であることが見いだされた。チェン(Chien )等の J. Pharm. Sci. 、第78巻(1988年)、376頁の試験管内及び生体内での研究では、バソプレシン及びインシュリンの電気輸送による経皮的送出が可能であることが示された。モールディング(Maulding)等の、ミニピッグでのカルシトニンの電気輸送送出を開示する法定発明登録第H1160号明細書も参照されたい。
(電気輸送用電流の印加レベルを単純に上げる方法以外の)多数の方法が、ポリペプチド薬物及びタンパク質薬物の経皮的電気輸送流量を高めるために用いられて来た。1つの方法は、イオン性界面活性剤のような流量向上剤の使用を含むものである。例えば、サンダーソン等の米国特許第4,722,726号明細書を参照されたい。もう1つの方法は、電気輸送流量を高めるために単なる水以外の共溶媒を使用するものである。例えば、欧州特許出願第0278473号明細書を参照されたい。更にもう1つの方法は、皮膚の外層(即ち、角質層)を機械的に引き裂き、その後それを通して電気輸送送出を行うことを含むものである。リー(Lee )等の米国特許第5,250,023号明細書を参照されたい。
経皮的電気輸送薬物流量を高めることに関する更なる方法は、関心のある薬物のプロドラッグ、即ち類似体を合成し、そのプロドラッグ、即ち修飾類似体を電気輸送することを含むものである。例えば、WO92/12999号明細書には、インシュリンを自己会合傾向が低下したインシュリン類似体として送り出すことが開示される(常用の製剤組成物に存在するインシュリンの会合形態のものは、明らかに、そのインシュリンの経皮的送出を低下させる)。これらの類似体は、アスパラギン酸(Asp )又はグルタミン酸(Glu )で、インシュリンポリペプチド鎖に沿う選択された位置における他のアミノ酸残基を置換することにより合成される。WO93/25197号明細書には、ペプチド及び非ペプチドの両薬物を、化学修飾剤(例えば、帯電要素)が親製剤に共有結合されている製剤−修飾剤の錯体、即ちプロドラッグとして送り出すことが開示される。この共有結合はその薬剤が体に送り込まれた後に切断され、それによって親薬剤が放出される。
タンパク質及びポリペプチドの電気輸送送出に関連した諸問題は認識されており、そしてポリペプチド薬物及びタンパク質薬物の電気輸送流量を改善しようとする試みにも、これまでに進歩があったが、ポリペプチド及びタンパク質についてより大きな経皮的電気輸送流量を達成する方法を提供する必要は、依然として存在している。
本発明の1つの面は、薬物、更に具体的にはポリペプチド薬物及びタンパク質薬物の電気輸送流量を増加させる方法を提供することである。
本発明のもう1つの面は、ポリペプチド薬物及びタンパク質薬物の経皮的電気輸送流量を増加させる方法を提供することである。本発明の方法は、それだけで、従来は電気輸送で治療上有効な速度では経皮的に送り出すことができなかった多くのポリペプチド及びタンパク質の電気輸送送出を可能にする。
これらの及び他の面は、電気輸送送出分野の当業者には、次の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。本発明は、ポリペプチド薬物及びタンパク質薬物を、その電気輸送流量を改善又は向上させるように誘導体化する方法に関する。本発明の方法は、関心のあるポリペプチド又はタンパク質を、電気輸送が起こるpHにおける増加した正電荷、増加した電気泳動移動度及び/又は増加した親水性のような、改善された電気輸送流量特性を有する合成類似体として提供することを特徴とするものである。
上記の類似体は、親ポリペプチド又は同タンパク質の生物活性と少なくとも略同等の生物活性を有するのが好ましく、そして親より大きい生物活性を有するのが更に好ましい。この類似体は、極性はあるが帯電はしていない側鎖を有する1つ又はそれ以上のアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されていることによって、親とは異なっている。そのヒスチジン残基は、陽極電気輸送送出中に一般に遭遇するpH範囲で正電荷を持つ。好ましい置換可能なアミノ酸残基に、グルタミン、アスパラギン及びトレオニンがある。これらの内で、グルタミンを置換するのが最も好ましい。
本発明は、もう1つの面では、親ポリペプチド又は同タンパク質の薬物に比較して、向上した電気輸送流量を有する合成類似体である。親タンパク質又は同ポリペプチドの薬物は少なくとも1つの、極性はあるが帯電はしていない側鎖アミノ酸残基を有し、またその類似体はヒスチジン残基で置換された少なくとも1つのこれら残基を有する。この類似体は親タンパク質又は同ポリペプチドの薬物の生物活性と少なくとも略同等の生物活性を示すのが好ましく、そして生理学的pHで親と同じ総電荷分布を有しているのが好ましい。
本発明の他の利点、並びに特定の適用例、組成変更態様及び物理的特質についての更に完全な理解は、次の図面と詳細な説明から明らかになるであろう。
本発明は、広い面から見ると、治療薬の電気輸送流量、特にポリペプチド及びタンパク質の経皮的電気輸送流量を増加させる方法に関する。本発明は、また、本明細書に記載される諸方法を実施するための治療薬処方物と電気輸送デリバリーシステムに関する。
本発明は、電気輸送で送り出すためのポリペプチド及びタンパク質の各薬物の電気輸送流量を、総電荷分布を略生理学的pHにおいて保持し、また、好ましくは少なくとも略同じポリペプチド又はタンパク質薬物の生物活性を保持しつつ、電気輸送のpHにおいて親水性と電気泳動移動度との両者を増大させることにより、改善する能力に特徴を有するものである。
本発明は、1つの面から見ると、生物活性ポリペプチド薬物に比較して向上した電気輸送特性を有する、上記生物活性ポリペプチド薬物の合成類似体を提供するものである。本明細書で用いられる“ポリペプチド”なる用語は、ペプチド結合で結合された任意のアミノ酸残基、即ちペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を包含するものと広く解されるべきことを意味するものである。本明細書で用いられる“類似体”なる用語は、ムテイン、親ポリペプチド薬物の構造誘導体、又は親ポリペプチド薬物中の少なくとも1種のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基で置換されている修飾されたポリペプチドを指すと広く解されるべきことを意味するものである。親薬物は天然源から誘導されたものであってもよいし、或いは化学的手段又は生化学的手段で完全合成されたものであってもよい。理解されるように、親薬物は天然産ポリペプチド配列のものであってもよいし、或いはそれ自体天然産ポリペプチドとは異なる構造を有するものであってもよい。“ポリペプチド薬物”、“ポリペプチド剤”又は“製剤ポリペプチド”なる用語は、全て、生理活性、即ち生物活性を有する任意のポリペプチドを指すべく意味するものであって、そのポリペプチドなる用語は本明細書で用いられているとおりである。
本発明のこの面によれば、極性はあるが帯電はしていない側鎖を有する少なくとも1種のアミノ酸残基を含むものがポリペプチド薬物として好ましい。本発明による類似体はこれら残基の少なくとも1つをヒスチジン(His)残基で置換することにより合成される。具体的には、グルタミン(Gln)、トレオニン(Thr)又はアスパラギン(Asn)残基を少なくとも1種含むものがポリペプチド薬物として好ましい。本発明の類似体においては、これら残基の1つ又はそれ以上がヒスチジン(His)残基で置換されている。ポリペプチド薬物のグルタミン残基(1個又はそれ以上)のヒスチジン残基による置換が最も好ましい。
本発明による類似体は、関心のある未修飾ポリペプチド薬物の生物活性と少なくとも略同等の生物活性を示すのが好ましく、そしてその未修飾ポリペプチド薬物より大きい生物活性を有するが、その親薬物に比較して増加した親水性と電気泳動移動度を有するのが更に好ましい。本発明による類似体は、それだけで、親薬物、即ち未修飾ポリペプチドに比較して向上した経皮的電気輸送流量を示す。
本発明は電気輸送デリバリーディバイスの陽極レザバーから送り出されるポリペプチドの正味の正電荷を増加させるのに有用である。一般的に言えば、この類似体ポリペプチドを含有する陽極ドナーレザバー処方物のpH範囲は、約3.5乃至約8、好ましくは約5乃至6のpH範囲である。これらのpH範囲において、Gln、Asn又はThrのHisによる置換の結果として、親薬物、即ち未修飾ポリペプチドに比較して、その類似体の親水性はそのイミダゾール環の正電荷に因り増大せしめられ、また電気泳動移動度はより高い正味正電荷に因り増大せしめられる。この結果は、この類似体が親薬物に比較して増加した経皮的電気輸送流量を示すと言うことである。同時に、この類似体は、生理学的pH、即ちpH=7.4において、親ポリペプチド薬物の電荷、水素結合及び疎水性の各特性を保持している。中性のpHでは、Hisのイミダゾール側鎖は帯電しておらず、従ってGln、Asn又はThrのHisによる置換はその類似体の生物活性をあまり低下させない、即ちその置換は同類似体のその意図された受容体に対する親和性を変えない。
更に、Gln、Asn又はThrに対するHis置換数は、電気輸送システムで用いられるpHにおいて所望される正味の電荷によってのみ限定されると考えられる。しかし、置換の数は、その類似体が患者の免疫系により異物タンパク質と認識されるほど多い数であるべきではない。ポリペプチド又はタンパク質が“異物”であると見なされる前に置換数を決定する絶対的な規則はないが、類似体の構造/アミノ酸配列がその親に近ければ近いほど(即ち、置換数が少なければ少ないほど)、ポリペプチド/タンパク質は体の免疫系によって異物であると見なされる可能性は益々少なくなる。
典型的には、本発明の範囲内のポリペプチドとタンパク質は、それらの類似体も含めてであるが、約数百ダルトン(例えば、トリペプチドの分子量)乃至約30,000ダルトンの範囲の分子量を有する。この範囲にあるポリペプチド薬物、タンパク質薬物及び高分子薬物の具体例を限定することなく挙げると、CSF類、GHRH、インシュリン、カルシトニン、エンドルフィン類(endorphins)、エリトロポエチン、副甲状腺ホルモンと同作動薬、GHRF、インシュリノトロピン(insulinotropin)、オクトレオチド(octreotide)、下垂体ホルモン類(例えば、HGH、HMG、デスモプレシン(desmopressin)酢酸塩等)、小胞ルテオイド類(follicle luteoids )、αANF、成長ホルモン放出因子(GFRF)のような成長因子、ソマトスタチン、心房ナトリウム排泄増加性ペプチド、ソマトトロピン、血小板誘導成長因子、アスパラギナーゼ、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛膜性腺刺激ホルモン、コルチコトロピン(ACTH)、表皮成長因子、エリトロポエチン、グルカゴン、ヒルログ(hirulog )、ヒアルロニダーゼ、インターフェロン類、インシュリン様成長因子(例えば、IGF−1)、インターロイキン類、メノトロピン類[ウロフォリトロピン(urofollitropin(FSH)及びLH]、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化剤、ウロキナーゼ、バソプレシン、デスモプレシン、ACTH類似体、ANP、ANPクリアランス阻害因子、アンギオテンシンII拮抗薬、抗利尿ホルモン作動薬、抗利尿ホルモン拮抗薬、CD4、セレダーゼ(ceredase)、FABフラグメント、IgEペプチドサプレッサー、神経ペプチドY、神経栄養因子、アヘン剤ペプチド、副甲状腺ホルモン拮抗薬、タンパク質C、タンパク質S、レニン抑制剤、α−1−チモシン、血栓崩壊剤、TNF、ワクチン、バソプレシン拮抗薬類似体、α−1−抗トリプシン(組換体)及びβ−TGFがある。
本発明による修飾によく適合するポリペプチド薬物の実例は、顆粒球、特に好中球の産生を刺激する因子である顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF);カルシウム及びリン酸塩の代謝を恒常的に制御する際の調節因子で、オステオポローシスの治療に用いられる副甲状腺ホルモン(PTH);経皮流量が多くなった、黄体化用ホルモン放出ホルモン(LHRH)とその類似体及び成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)とその類似体である。
本発明によるGln、Asn又はThrのHisによる置換は、ポリペプチド又はタンパク質の“保存性”修飾または誘導体化と見なされる。この保存性修飾または誘導体化とは、親ポリペプチド又は同タンパク質の疎水性、生理学的pHにおける正味の電荷、容積及び水素結合容量が、その類似体の中に保存されることを意味する。GlnのHisによる好ましい置換が、そのようにして合成される類似体の水素結合容量、pH7における電荷及び側鎖容積が親化合物と事実上同一であるから、3種の可能な置換の内で最も保存性の高いものである。
GlnとHis残基の側鎖の構造を以下に示す:
Figure 2009149639
Gln残基とHis残基のこれら側鎖は、水素結合容量の幾何形状がかなり類似していることを明らかにしている、即ち、GlnのHisによる置換は側鎖の水素結合容量をあまり変えないのである。平面のアミド基、βCH及びαCHの間の結合角に依存して、Gln側鎖が関係する水素結合はHis側鎖によっても作られ得る。
更に、His残基(未帯電状態)とGln残基の疎水性は非常によく似ている。タンフォード(Tanford )等の J. Biol. Chem. 、第246巻(1971年)、2211−2217頁を参照されたい。この文献では、アミノ酸側鎖の水中及び各種アルコール中における疎水性が測定され、そしてHisとGlnの移動の自由エネルギーは中濃度のジオキサン中で非常によく似ていることが見いだされた。
本発明による類似体はこの技術分野で公知、常用の多数の方法で合成することができ、従ってここでは詳細には説明されない。このような方法に、ポリペプチドを初めから固相で合成する方法、湿式の化学的方法及びバイオテクノロジー的方法がある。
タンパク質の固相合成法は、所望とされる配列を持つ第一アミノ酸のそのカルボキシル基による不溶性樹脂への結合を利用するものである。所望とされる生成物が得られたら、そのペプチド配列を樹脂から切り離す。例えば、R.B.メリフィールド(R. B. Merrifield)等の著書・バイオケミストリー(Biochemistry)、第21巻(1981年)、5020頁;アカド.−バーラグ社(Akad.-Verlag)刊(1984年)、M.ボダンスツキー(M. Bodanszky)著“ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis )”;フリーマン社(Freeman )刊(1969年)、J.M.スチュワート(J. M. Stewart )等の著書“固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis )”を参照されたい。これら文献の開示をここに引用し、参照することにより、それらがここに含まれるものとする。他の合成法も知られている。例えば、本明細書に記載される類似体は同時多段ペプチド合成法で製造することができる。例えば、ホーフテン(Houghten)の Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、第82巻(1985年)、5131−5135頁;ホーフテン等の著書・ペプチド化学(Peptide Chemistry )、(1987年)295−298頁;米国特許第4,631,211号明細書を参照されたい。これら文献の開示をここに引用し、参照することにより、それらがここに含まれるものとする。
本発明の類似体は、また、市販のペプチド合成装置を、関心のあるポリペプチド又はタンパク質薬物のアミノ酸配列中のグルタミン残基の一部又は全部がヒスチジン残基で置換されるようにプログラムすることによっても合成することができる。
本発明の類似体は、また、組換体表現系のような公知の遺伝子工学技術でも合成することができる。試験管内変異誘発法が、親ポリペプチド遺伝子中の適切な部位にある適切な塩基を、所望とされるアミノ酸残基置換をエンコード(encode)する他の塩基で置換することにより、その親ポリペプチド遺伝子を変えるために利用することができる。例えば、Glnのコドンの一部又は全部の、Hisのコドンによる置換では、Glnコドンの最後の位置におけるA又はGのU又はCによる単一塩基置換だけが必要とされる。次いで、所望とされる類似体をエンコードする遺伝子が、適当な宿主生体、例えば大腸菌、バチルス菌又は酵母菌に移されたときに、その所望とされる類似体を生成させる適当な表現ベクターに挿入される。表現された類似体は、次いで、それが菌細胞から分泌されるか否かに依存して、その細胞又は培養ブイヨンから単離される。この表現類似体においては、グルタミン残基の一部乃至全部はポリペプチド配列の中に生ぜず、その配列中のそれらの場所でヒスチジン残基で置換されている。関心のある類似体ペプチド及び同タンパク質をエンコードする遺伝子を同定し、単離するか、又はそのような遺伝子を構築し、それらを宿主系において表現する方法は十分に理解され、開発されている。これらの方法は特許明細書及び他の文献に記載されている。例えば、米国特許第4,431,739号及び同第5,013,653号明細書;並びにコールドスプリングハーバー社(Cold Spring Harber)刊(1989年)、サンブルック(Sambrook)等の著書“分子クローニング(Molecular Cloning ):実験室用マニュアル(A Laboratory Manual )、第2版;米国化学会(American Chemical Society)(1991年)、R.R.ハッチ(R. R. Hatch )等の“ACSシンポジウムシリーズ(ACS Symposium Series)477:rDNA産生物の表現系とプロセス(Exprerssion Systems and Processes of rDNA Products)”;マーセルデッカー社(Marcel Dekker )刊(1991年)、R.シーザラム(R. Seetharam)等の“バイオプロセス技術(Bioprocess Technology)”第12巻中の“組換タンパク質の精製と分析(Purification and Analysis of Recombinant Proteins )”を参照されたい。これら文献の開示をここに引用し、参照することにより、それらがここに含まれるものとする。
変えられた遺伝子構造も、自動化された合成技術、例えばオリゴヌクレオチドを固相合成するホスホルアミド法で組み立てることができる。例えば、S.L.ビーウケージ(S. L. Beaucage)等の Tetrahedron Lett.、第22巻(1981年)、1859−1862頁;M.D.マッテネンチ(M. D. Matteneci )等の J. Am. Chem. Soc. 、第103巻(1981年)、3185−3191頁を参照されたい。これら文献の開示をここに引用し、参照することにより、それらがここに含まれるものとする。
本発明で考えられている類似体の実例を、G−CSF、副甲状腺ホルモン及びヒト成長ホルモン放出ホルモンについて以下に与えるが、次の教示は置換可能な残基を含む他の任意の生物活性タンパク質又は同ポリペプチドにも応用されるものである。
G−CSF(アミノ酸残基数174個のポリペプチド)は、そのAらせん中の位置11、20、25及び32;Cらせん中の位置107、119及び120;Dらせん中の位置145、158及び173;並びにループ領域中の位置131及び134に12個のGln残基を有することが知られている。G−CSFのGlnの全部を含めて、その1個又は2個以上、その全部までのHis残基による置換で、未修飾G−CSF、即ち親G−CSFの活性に近い特定の活性を示す類似体が生成する。本発明によるG−CSF類似体の例に、His(11)G−CSF;His(11)、His(20)G−CSFがある;配列識別(SEQ ID)番号1及び2を参照されたい。
分子量約9,500ダルトンのタンパク質である副甲状腺ホルモン(PTH)は、十分な生物活性を示す、N−末端からのアミノ酸残基数約34個のポリペプチド配列を有する。この34個のアミノ酸配列は、そのポリペプチド鎖の位置5と29に2個のグルタミン残基を有すると報告されている。G−CSFの場合のように、His残基で置換されるGln残基の1個又は2個をもたらすその副甲状腺ホルモン遺伝子のコドン5及び29に変異を作り出すのに、本発明を用いることが可能である。本発明によるそのような類似体に、His(5)PTH;His(5)、His(29)PTHがある;配列識別番号3及び4を参照されたい。
ヒト成長ホルモン放出ホルモン(h−GHRF)は、位置16、24、30、31及び36にグルタミン残基を含むアミノ酸44個のポリペプチドである。G−CSFの場合のように、修飾されたh−GHRF遺伝子は、そのh−GHRF遺伝子中、コドンを特定する位置16、24、30、31及び36又は生物活性を保存若しくは増加させる2つ又はそれ以上の位置の任意の組み合わせ位置の所で、部位特異性の変異誘発(site-specific mutagenesis )を引き起こすことにより作ることができる。好ましくは、h−GHRF活性を有するが、His31と同36に変化したGln31及び同36を有する類似体、即ちHis(31)、His(31)h−GHRF(配列識別番号5を参照されたい)をエンコードする類似体h−GHRF遺伝子を作るために、オリゴヌクレオチド指向変異誘発(oligonucleotide-directed mutagenesis)を用いることができる。
本発明の類似体は、動物(例えば、ヒト、又はウシ、ウマ、ブタ等々のような他の哺乳動物)の体表面又は膜(例えば、皮膚)を通しての電気輸送送出に特によく適合する。しかして、本発明は、患者の体表面と類似体−移送関係で配置されるようにされたドナーレザバー中に合成類似体の形をしたポリペプチドを与え、そしてそのレザバーに電場を印加してその類似体を電気輸送により体表面を通して輸送する工程を含んで成る、その類似体を患者に電気輸送で投与する方法を提供する。その類似体の(例えば、経皮的)電気輸送流量は、同様の条件下(即ち、印加電気輸送電流、pH、薬物濃度等々)で親薬物の(例えば、経皮的)電気輸送流量より大きい。
本発明の方法は、ドナーレザバー、本発明の類似体を含有し、形状と寸法が皮膚と類似体−移送関係で配置されるように調節されたレザバー、及び電気動力源を有する電気を動力とする経皮的電気輸送デリバリーディバイスを用いて遂行することができる。電力源は、薬剤レザバーからその類似体を体表面を通して電気輸送で送り出される電流をそのレザバーに印加する。類似体は、そのGln残基の全部を含めて、その1個又は2個以上、その全部までがHis残基により置換されており(即ち、親ポリペプチド又は同タンパク質の構造に比較して)、そして、好ましくは、親ポリペプチドの生物活性と少なくとも略同等の生物活性を示す。
本発明は、更に他の面において、電気輸送で送り出されるとき治療上有効であるとされる親ポリペプチド薬物の合成類似体を十分な量で有するドナーレザバー処方物を含んで成る治療用組成物を提供する。この合成類似体は、親ポリペプチド薬物の1個又はそれ以上のGln残基の少なくとも1つがHis残基により置換されているものである。この類似体は、親タンパク質又は同ポリペプチドの生物活性と少なくとも略同等の、好ましくはそれより大きい生物活性を示すのが好ましい。
本発明の方法と処方物は、1つの任意、特定の構造を持つ電気輸送ディバイスに限定されるものではない。本発明で使用するための、ある類似体を体表面22(典型的には、無傷の皮膚、又は粘膜)を通して送り出す電気輸送デリバリーディバイス10の1例が図1に示される。
電気輸送デリバリーディバイス10はドナー電極集成体8とカウンター電極集成体9を含む。電極集成体8及び9は、典型的には1個又はそれ以上の低電圧電池である電力源27及び、場合によって追加される、以下において更に詳細に説明される制御回路19に電気的に接続されている。ディバイス10が、例えば患者の皮膚又は粘膜に配置されると、電極間の回路は閉じられ、電力源がそのディバイスを通し、そして患者の皮膚又は粘膜を通して電流を送り始める。ドナー電極とカウンター電極の集成体8及び9は、普通、それら集成体8及び9を体表面22に適用する前に取り除かれる剥離可能なレリースライナー(図1に示されず)を含む。
ドナー電極集成体8はドナー電極11と薬剤レザバー15を含む。薬剤レザバー15は、ディバイス10から電気輸送で送り出されるべき本発明の類似体を含有する。ドナー電極集成体8は、体表面22にイオン伝導性接着剤層17で接着されるのが適当である。
ディバイス10はカウンター電極集成体9を含み、その集成体9は電極集成体8から離れた位置の体表面22に配置される。カウンター電極集成体9はカウンター電極12と電解質レザバー16を含む。カウンター電極集成体9は、体表面22にイオン伝導性接着剤層18で接着されるのが適当である。
電極11と12は導電性であって、金属、例えば金属箔、又は適当な裏打ち材上に付着又は塗装された金属から形成することができる。適した金属の例に、銀、亜鉛、銀/塩化銀、アルミニウム、白金、ステンレス鋼、金及びチタンがある。或いはまた、電極11及び12は、金属粉末、粉末状グラファイト、炭素繊維又は他の公知の導電性充填材料(1種又は複数種)のような導電性充填材を含有する重合体マトリックスから形成することもできる。
電極11及び12は、周知の手段、例えば柔軟な印刷回路、金属箔、金属線を用いて、又は直接接触で電力源27に電気的に接続される。
電解質レザバー16は適当な製剤上許容できる塩を含有している。適した塩に、塩化ナトリウム、アルカリ金属塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩のようなアルカリ土類金属塩及びアスコルビン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩のような有機酸塩並びにそれらの混合物がある。レザバー16は所望によって緩衝剤を含有していてもよい。
レザバー15及び16は、本発明の類似体をそれらレザバーを通して電気輸送で通過させるために、十分な量の液体(即ち、その類似体の液体溶液)を吸収、保持するようにされた任意の材料から成っているのが好ましい。好ましくは、それらレザバーは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はポリエチレングリコール類のような1種又はそれ以上の親水性の重合体と、場合によって加えられるポリイソブチレン、ポリエチレン又はポリプロピレンのような1種又はそれ以上の疎水性の重合体を含有している。何らかの特定の形状又は容積に限定されるものではないけれども、レザバー15及び16は、各々、典型的には、0.6cm(1/4インチ)以下の厚さと約1乃至50cmの範囲の断面積(例えば、皮膚との接触面積)を有する。上記類似体は、高分子レザバー15のマトリックスに、液状での混合のような常用の手段で加えることができ、後にその類似体含有レザバーマトリックスを成形又は押し出す。
前記ディバイスにより印加される電気輸送電流は、典型的には、約50乃至400μA/cmの範囲である。
本発明による類似体の経皮的電気輸送流量は、親ポリペプチドのそれより少なくとも約20%、更に好ましくは少なくとも約50−100%高いと期待される。
本発明を次の実施例により更に説明するが、これらの実施例を本発明の範囲を限定するものと解すべきではない。
実施例1:G−CSF類似体
G−CSFは、化学療法により回復する患者を治療するために使用される製剤用タンパク質である。それは細菌感染を治療するための補助療法剤としても使用される。G−CSFの1つの類似体は、位置107、119、120、131、134、145、158及び173のグルタミン残基をヒスチジン残基で置換する前記の公知の常法により製造される。この類似体はpH6で+4に近い正味の電荷を有する。
そのG−CSF類似体の水溶液をヒドロキシエチルセルロース(HEC)ヒドロゲルマトリックス中に含んで成る陽極ドナーレザバーを調製する。この処方物は、グリセロールを1%含有するHEC3%のヒドロゲル中、5mM、pH6のヒスチジン緩衝液中にG−CSF類似体を5mg/mL含む。
このG−CSF類似体含有ドナーレザバーを電気輸送デリバリーディバイスで使用する。このデリバリーディバイスは、そのドナーレザバーの1つの表面に配置された銀箔製陽極電極、及び食塩緩衝溶液を含有するHECヒドロゲルマトリックスの表面に配置され、カウンター電極/レザバー集成体として用いられる塩化銀カウンター電極を含む。両電極は、導電性の接着剤ストリップで2.0mAの電流を供給する電気輸送電流発生、制御回路の出力に接続される。ドナーレザバーとカウンターHECレザバーは各々20cmの皮膚接触面積を有する。このデリバリーディバイスは患者の皮膚に配置され、そして100μA/cmの電気輸送電流密度を印加する。このデリバリーディバイスは24時間までの期間にわたり装着されるようになっており、その期間中にこのディバイスは2.0mAの電気輸送電流を連続的に印加し、従ってそのG−CSF類似体を24時間にわたり連続的に送り出す。
電気輸送を開始した後、血液試料を周期的に採集し、ヘパリン化し、遠心分離し、そしてその血漿を−80℃で貯蔵する。上記G−CSF類似体の血漿濃度を酵素結合免疫検定法で測定する。その結果は、未修飾G−CSFの電気輸送対照に比較して血漿レベルが増加していることを示す。
実施例2:PTH類似体
副甲状腺ホルモン(PTH)は、オステオポローシスを治療するために使用される製剤用ポリペプチドである。PTH類似体の1例は、正味電荷をpH5で約+1だけ増加させるために位置29のグルタミン残基がヒスチジンで置換されているものである。位置29のグルタミン残基を置換しても、親化合物のおおよその生物活性は保持される。
そのPTH類似体の水溶液をHECヒドロゲルマトリックス中に含んで成る陽極ドナーレザバーを調製する。その処方物は、グリセロールを1%含有するHEC3%のヒドロゲル中、5mM、pH5の酢酸塩緩衝液中にPTH類似体を10mg/mL含む。
このPTH類似体含有ドナーレザバーを、電気輸送電流発生、制御回路が2つのモードの内の1つで作動する点を除いて、上記実施例1に記載したものと同様のディバイスで使用する。第一のモードは実施例1に記載した連続送出モードであり、また第二のモードは間欠的送出モードであって、PTH類似体の放出は1日中所定の間隔で周期的に行われる。
実施例1に記載したようにして血液試料を採集し、分析すると、結果は未修飾PTHに比較して電気輸送血漿レベルが改善されていることを示す。
実施例3:h−GHRH類似体
ヒトGHRH(h−GHRH)は、成長不十分な(即ち、短躯の)子供の患者及び虚弱体質の中年過ぎの成人患者を治療するために使用される。h−GHRHの位置16、24、30及び31のグルタミニル残基がヒスチジル残基で置換されているh−GHRH類似体を製造する。この類似体はpH5で約+4だけ増加した正味電荷を有すると思われる。
そのh−GHRH類似体の水溶液をHECヒドロゲルマトリックス中に含んで成る陽極ドナーレザバーを調製する。その処方物は、グリセロールを1%含有するHEC3%のヒドロゲル中、5mM、pH5の酢酸塩緩衝液中にh−GHRH類似体を4mg/mL含む。
このh−GHRH類似体含有ドナーレザバーを実施例1に記載したディバイスで使用する。このディバイスを患者の皮膚に配置し、h−GHRH類似体を24時間の装着期間にわたり連続的に送り出す。
実施例1に記載したようにして血液試料を採集し、分析すると、結果は未修飾h−GHRHに比較して電気輸送血漿レベルが改善されていることを示す。
要約すると、ポリペプチド薬物中のグルタミン、アスパラギン又はトレオニン残基のヒスチジン残基による置換は改善された電気輸送性を与える。それは、その2種のアミノ酸が非常によく似た疎水性、及びアルファーらせんを形成しない同様の傾向を有するからである。それら2種のアミノ酸は生理学的pHにおいて同じ電荷を有し、かつほとんど正確に同じ水素結合の幾何形状と水素結合能を有する。
以上、本発明をある程度の具体性を以て説明し、例証したが、当業者であれば、変更、追加及び省略を含めて、記載されたものになし得る色々な修正を理解できるであろう。従って、これらの修正も本発明により包含され、そして本発明の範囲は添付請求の範囲を法的上正当に調和させ得る最も広い解釈によってのみ限定されることが意図されるものである。
配列表
(1)書誌的事項
(i)出願人氏名:ホラデイ,レスリー A(Holladay, Leslie A. )
(ii)発明の名称:電気輸送流量を増加させる、ポリペプチド薬物の修飾
(iii)配列の数:10
(iv)通信の住所:
(A)受信人:ストロード(Stroud)、ストロード(Stroud)、ウイルリンク
(Willink )、トンプソン(Thompson)及びホワード(Howard)
(B)通り:ウエスト メイン ストリート(West Main Street)25
(C)市:マジソン市(Madison )
(D)州:WI州
(E)国:米国(USA)
(F)郵便番号:53701−2236
(V)コンピュータの読み取り可能フォーム:
(A)媒体のタイプ:フレキシブルディスク
(B)コンピュータ:IBM PCコンパチブル
(C)作動システム:PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウエア:パテントイン リリース(PatentIn Release)#
1.0、バーション#1.25
(vi)現在の出願データー:
(A)出願番号:
(B)出願日:
(C)分類:
(viii)弁護士/代理人情報:
(A)氏名:フレンチック,グラディーJ(Frenchick, Grady J.)
(B)登録番号:29,018
(C)参照/整理番号:8734.28
(ix)電信電話情報:
(A)電話:608−257−2281
(B)テレファックス:608−257−7643
(2)配列識別番号の情報:1:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸174
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴(feature ):
(A)名称/キー(KEY ):ペプチド
(B)位置:1..174
(C)他の情報:/注=“顆粒球−コロニー刺激因子”
(xi)配列の説明:配列識別番号:1:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:2:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸174
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..174
(C)他の情報:/注=“修飾顆粒球−コロニー刺激因子”
(xi)配列の説明:配列識別番号:2:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:3:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸174
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..174
(C)他の情報:/注=“修飾顆粒球−コロニー刺激因子”
(xi)配列の説明:配列識別番号:3:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:4:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸174
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..174
(C)他の情報:/注=“顆粒球−コロニー刺激因子”
(xi)配列の説明:配列識別番号:4:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:5:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸34
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..34
(C)他の情報:/注=“副甲状腺ホルモン”
(xi)配列の説明:配列識別番号:5:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:6:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸34
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..34
(C)他の情報:/注=“修飾副甲状腺ホルモン”
(xi)配列の説明:配列識別番号:6:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:7:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸34
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..34
(C)他の情報:/注=“修飾副甲状腺ホルモン”
(xi)配列の説明:配列識別番号:7:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:8:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸44
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..44
(C)他の情報:/注=“ヒト成長ホルモン放出ホルモン”
(ix)特徴:
(A)名称/キー:結合部位
(B)位置:44
(C)他の情報:/注=“カルボキシ末端アミド”
(xi)配列の説明:配列識別番号:8:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:9:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸44
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..44
(C)他の情報:/注=“修飾ヒト成長ホルモン放出ホルモン”
(ix)特徴:
(A)名称/キー:結合部位
(B)位置:44
(C)他の情報:/注=“カルボキシ末端アミド”
(xi)配列の説明:配列識別番号:9:
Figure 2009149639
(2)配列識別番号の情報:10:
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:アミノ酸44
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ix)特徴:
(A)名称/キー:ペプチド
(B)位置:1..44
(C)他の情報:/注=“修飾ヒト成長ホルモン放出ホルモン”
(ix)特徴:
(A)名称/キー:結合部位
(B)位置:44
(C)他の情報:/注=“カルボキシ末端アミド”
(xi)配列の説明:配列識別番号:10:
Figure 2009149639
本発明によれば、ポリペプチド及びタンパク質についてより大きな経皮的電気輸送流量を達成する方法が提供される。
本発明による電気輸送ドラッグデリバリーディバイスの模式図である。
符号の説明
8 ドナー電極集成体
9 カウンター電極集成体
10 電気輸送デリバリーディバイス
11 ドナー電極
12 カウンター電極

Claims (8)

  1. 製剤用親ポリペプチド剤の1つ以上のグルタミン、トレオニン、アスパラギン残基をヒスチジン残基で置換して、pH約3.5−8において前記親ポリペプチド剤の電荷より大きい総電荷を有する前記親ポリペプチド剤の合成類似体を形成する工程を含む、製剤用親ポリペプチド剤を修飾して体表面を通る薬剤の電気輸送を向上させる方法。
  2. 製剤用親ポリペプチド剤の少なくとも1つの非ヒスチジンアミノ酸残基をヒスチジン残基で置換することを含む、製剤用親ポリペプチド剤を修飾して体表面を通る薬剤の電気輸送を向上させる方法。
  3. 前記親ポリペプチド剤の残基がグルタミン、トレオニン及びアスパラギンより成る群から選ばれる、特許請求の範囲第2項に記載の方法。
  4. 前記類似体が前記親ポリペプチド剤と少なくとも略同等の生物活性を示す、特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の方法。
  5. 次の:
    (a)製剤用親ポリペプチド剤の少なくとも1つのアミノ酸残基がヒスチジン残基で置換されている、前記製剤用親ポリペプチド剤の合成類似体を用意し;そして
    (b)前記類似体を電気輸送で体表面を通して送り出す;
    工程を含んで成る、製剤用ポリペプチド剤を体表面を通して送り出す方法。
  6. 前記製剤用親ポリペプチド剤の残基がグルタミン、トレオニン及びアスパラギンより成る群から選ばれる、特許請求の範囲第5項に記載の方法。
  7. 前記類似体が製剤用親ポリペプチド剤と少なくとも略同等の生物活性を示す、特許請求の範囲第5項に記載の方法。
  8. 前記類似体が、前記類似体を電気輸送で体表面を通して送り出すための、pHが約3.5乃至約7.4の範囲にあるアニオン性のドナーレザバー処方物の形で提供される、特許請求の範囲第5項に記載の方法。
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