JP2009149563A - (メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キット - Google Patents

(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キット Download PDF

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Abstract

【課題】 適度な粘弾性を有していることから口腔内粘膜の動きに合わせて変形できるアクリル系歯科用粘膜調整材が写し採った最適な形状を変形させることなく、短期間に固定(保持)し、印象として採取することができる(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材用のコート材キットの提供。
【解決手段】 その(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットは、(A)末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)ハイドロシリレーション反応触媒を含んでなるシリコーン硬化性組成物であって、(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.1〜10Pasである(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材と、ハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体及び揮発性有機溶媒からなる接着剤とから構成される特徴とするものである。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、適度な粘弾性を有していることから口腔内粘膜の動きに合わせて変形できる(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材の流動性(変形性)を制御できるシリコーンコート材キットに関する。
より詳しくは、適度な粘弾性を有し口腔内粘膜の動きに合わせて変形できることから、歯科治療において口腔粘膜の変形や炎症などを有する義歯装着患者等のために使用する(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材の変形性能を制御できるシリコーンコート材キットに関する。
義歯使用者が義歯を長期にわたって使用していると顎堤を形成する歯槽骨の吸収等が原因となり口腔の形状が次第に変化することが知られている。この様な場合、義歯床と口腔粘膜との適合が悪くなり、義歯が不安定になる。適合不良な義歯をそのまま使用し続けると義歯床下粘膜に不均一な圧力が加わるため、該粘膜に潰瘍や炎症が発生したり、咬合圧による疼痛が引き起こされたりするようになる。
上記のような不適合が起こった場合には新しい義歯を作製するか、使用中の義歯を裏装するなどして義歯の粘膜に対する適合性を回復させる必要がある。
しかしながら、著しい潰瘍や炎症がある患者の口腔粘膜は極めて不安定な状態であるため、新しい義歯の作製や裏装の前に口腔粘膜が比較的健全な状態になるのを待ち、義歯床下粘膜との良好な適合性を確保する必要がある。
このような場合に使用される材料が歯科用粘膜調整材である。即ち、歯科用粘膜調整材は義歯床下粘膜の形態、色調が正常な状態に回復するまで使用中の義歯の粘膜面に裏装して用いられる治療用材料である。
現在、義歯床に関連する軟質材料としては、大きく分けて義歯床固定用糊材(いわゆる義歯安定材)、歯科用粘膜調整材、軟質裏装材の3種類があるが、これらはいずれも使用目的、方法、使用期間、所要性状などが異なっている。
例えば、義歯床固定用糊材は疼痛緩和のために患者本人が自ら施術して非常に短い期間使用するものである。一時的な使用に限定されるものであり治療を目的とする材料ではない。それには、粉状、クリーム状、シール状のものがあり、また水溶性のものと非水溶性のものがある。前者はだ液の粘性を高め、義歯床の粘膜面との粘着力の増大を期待する。後者の非水溶性のものは義歯床と粘膜面の隙間をなくして適合性をよくするとともに辺縁封鎖効果による吸着力などを期待している。その組成物はほとんど弾性を有しておらず、咬合するたびにその咬合圧に応じた大きな塑性変形が起こるため、該義歯床固定用糊材の使用期間は1日ないしは数日間に限定される。
これに対し、歯科用粘膜調整材及び軟質裏装材は、いずれも施術者が医師である点では共通しているが、その使用目的の違いによりそれぞれ要求される物性が大きく異なっている。具体的には歯科用粘膜調整材は、前述したように義歯修理の前段階で口腔粘膜の治療用として使用するものである。義歯床下粘膜のひずみ、圧痕を開放し、各部の被圧変位性に対応した機能的な形態を印記(印象ともいう)するために、義歯床下粘膜面に用いられる軟性高分子材である。
すなわち、材質に適度な粘弾性を有し口腔内粘膜の動きに合わせて変形できることから、機能印象に適した材料とされており、これによる印象は、粘膜調整材を裏装した義歯を患者に装着させ、咀嚼などの咬合運動を一定期間行わせることで粘膜調整材に対して動的な印象を採らせる処置で通常の印象を静的印象というに対し、動的印象といい、口腔内の一連の動きを経て得られる印象なので、より自然な印象が採れる技術であるとされている。
このようなことから、最近ではこれにより口腔内の印象を採ることが多用されている。
この粘膜調整材は、粉末と液の混和によって調製されるものであり、始めは流動性の高いペースト状を示すが、液が粉末に浸透して粘弾性が発現してくる。ペーストに流動性のあるうちに義歯床粘膜面に盛りつけ、口腔内に挿入して賦形する。使用期間として口腔粘膜が健全な状態に回復するまでの1週間〜数週間必要である。その目的からして咬合時に義歯と粘膜面の間より押し出されず粘膜面に保持されながらも、柔軟で且つ口腔粘膜の回復に追従する程度の微小変形が可能でなければならない。
より詳細には、粘膜調整材を適合不良となった義歯の粘膜面に裏装することで義歯と口腔粘膜の適合性を回復させて疼痛を緩和させつつ、口腔粘膜の潰瘍や炎症が次第に消失するのを待つ。口腔粘膜の潰瘍や炎症が次第に消失するに伴い口腔粘膜の形態も経時的に本来あるべき状態へと回復していくが、このとき、該粘膜調整材は口腔粘膜の形態変化に合わせて塑性変形する必要がある。なぜならば、粘膜調整材が上記のような変形を生じない場合には、口腔粘膜の形態の回復に従い適合性が失われていくことになり、逆に再度の疼痛を生じる要因となってしまうためである。
軟質裏装材のような義歯床裏装材は、上記のようにして最終的に口腔粘膜の潰瘍や炎症が消失し、口腔粘膜が健全な状態を得た後に用いる材料である(ただし、潰瘍や炎症がない場合には、通常は粘膜調整材を用いずに、すぐに裏装材を用いる)。粘膜調整材は潰瘍や炎症が存在する場合に用いるため、非常に柔らかい材料である必要があるが、このような目的に対して要求される柔らかさは、長期に渡る義歯の適切な保持、義歯の使用感という観点からすると柔らかすぎる。また、回復後の口腔粘膜はそれ以上大きな変形を起こさないため、粘膜調整材の有する高い可塑性も義歯の保持性や使用感に対して悪影響を与える場合がある。
従って、義歯床裏装材としては、軟質裏装材のような柔らかい材料であっても、粘膜調整材よりは若干硬く、また、大きな塑性変形を示さない必要がある。さらに、粘膜調整材の場合には、その使用期間が数日〜数週間であるのに対し、最終的な補修義歯を構成することになる義歯床裏装材は、最低でも6ヶ月はその機能を発現することが要求される。さらに、義歯床裏装材としては、その引張強度等の機械的物性も粘膜調整材に求められるものよりも遥かに高い。
このように、上記の3種の材料は形式的にはいずれも軟質材料で義歯を裏装して使用するものであるが、その使用目的及び要求性能から歯科用材料として明確にその分類を異にするものである。
特に、粘膜調整材については、前記のようにそれほど高い強度が求められない反面、高い柔軟性と可塑性が要求されており種々の組成が提案されているが、使用時の簡便性などの点から(メタ)アクリル系の重合体粉末からなる粉材と、各種可塑剤からなる液材とを主成分とするものが多い(例えば、非特許文献1、2、特許文献1、2参照)。
なお、上記可塑剤は柔軟性と可塑性を発現させるために必要な成分であり、現在は、フタレート系の可塑剤が主流である。
より詳細には、(メタ)アクリル系の歯科用粘膜調整材としては、ポリエチルメタクリレートもしくはその共重合体などの(メタ)アクリル系の重合体粉末からなる粉成分と、エタノールを4〜30質量%程度含有するフタレート系可塑剤からなる液成分との練成材料が広く使用されている。なお、液成分には、練和性や練和後の物性などを改良するために、エタノールが配合されることが多い。
川口 稔、外3名、「試作粘膜調整材からのフタル酸エステル類の溶出性に影響をおよぼす因子について」、歯科材料・器械、日本歯科理工学会、平成16年7月、第23巻、第4号、p.273−278 中村 正明、「フタル酸エステルフリーの粘膜調整材の開発を目指して」、[online]、2003年3月、日本歯科医師会、[平成17年1月12日検索]、インターネット<URL:http://eturan.bookpark.ne.jp/jdab/pdf/JDAB-200307-008.pdf> 特開平3−20204号公報 特開平2−297358号公報 特許第3105733号公報 特開2006−225281号公報
(メタ)アクリル系の歯科用粘膜調整材は、前記したとおり適合不良となった義歯の粘膜面に裏装することで義歯と口腔粘膜の適合性を回復させて疼痛を緩和させつつ、口腔粘膜の潰瘍や炎症が次第に消失するのを待ち、口腔粘膜の潰瘍や炎症が次第に消失するに伴い口腔粘膜の形態も経時的に本来あるべき状態へと回復し、それに伴って口腔粘膜の形態変化に合わせて塑性変形するものである。
そのため粘膜調整材は非常に柔らかい材料である。
その結果、長期に渡る義歯の適切な保持、義歯の使用感という観点からすると柔らかすぎ、回復後の口腔粘膜はそれ以上大きな変形を起こさないため、粘膜調整材を口腔粘膜の潰瘍や炎症が消失し、健全な状態に回復した後まで、更に使用し続けることは、最適に印象を採取することができず、口腔粘膜の印象採取には悪影響を与える場合がある。
また、粘膜調整材を口腔内から取り出した後に、印象を直ちに利用、すなわち石膏型等に転写しない場合には、粘膜調整材が非常に柔らかいため形状が変化し、本来採取すべき形状が印象として採取できないことになる。
本発明者は、この点に関し鋭意研究開発に努め、その結果開発に成功したのが本発明である。すなわち、本発明は、口腔粘膜が健全な状態に回復し、その形態が本来あるべき状態になった時点において、特定組成のシリコーン硬化性組成物を粘膜調整材表面に被覆することにより、非常に柔らかく変形し易い粘膜調整材が写し採った形状を変形させることなく印象として採取することができることを見出したものであり、それにより本発明の開発に成功したものである。
したがって、本発明は、適度な粘弾性を有していることから口腔内粘膜の動きに合わせて変形できる(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材が写し採った形状を最適な状態で採取することができる、(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材の流動性(変形性)を制御できるコート材キットを提供することを課題とするものである。
すなわち、粘膜調整材が写し採った最適な形状を変形させることなく、短期間に固定(保持)し、印象として採取することができる(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材用のコート材キットを提供することを課題とするものである。
本発明者は、前記課題を解決するところの(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットを提供するものであり、それは(A)末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)ハイドロシリレーション反応(「ヒドロシリル化反応」ともいう)触媒を含んでなるシリコーン硬化性組成物であって、(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.1〜10Pasであるアクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材と、ハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体及び揮発性有機溶媒からなる接着剤とから構成されることを特徴とするものである。
そして、本発明においては、以下の態様を採用することが好ましい。
(1)(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材の硬化体が5N/mm以上の引裂強度を有すること。
(2)(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材が更に(D)非反応性ポリシロキサンを含んでなること。
本発明においては、口腔内粘膜の形状を写し採った(メタ)アクリル系歯科用粘膜調整材表面に、予めハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体及び揮発性有機溶媒からなる接着剤を塗布、乾燥させた後に、(A)末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)ハイドロシリレーション反応触媒を含んでなるシリコーン硬化性組成物であって、(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.1〜10Pasであるアクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材を、該粘膜調整材表面に被覆するという簡単な処理により、該粘膜調整材が写し採った口腔粘膜の形状を採取の過程で変形させることなく最適な状態で採取することができる優れた作用効果を奏することができる。
すなわち、本発明は、最適な形状を写し採った前記粘膜調整材表面に、前記アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材を被覆することにより、粘膜調整材の非常に柔らかく変形し易い性質が短時間で変形し難い性質に変化し、それにより写し採った前記最適な形状を変形させることなく、短時間に固定(保持)し、印象として採取することができるものである。
したがって、本発明は、口腔内の一連の動きを経て得られる動的印象を最適な状態で採取することができる優れたものである。
それに対して、本発明の粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材を用いない、従前の場合には粘膜調整材が非常に柔らかく変形することが避けられなかったが、本発明は、これを初めて回避できる技術を提供することができた優れたものである。
本発明は、(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットを提供するものであり、それは(A)末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)ハイドロシリレーション反応触媒を含んでなるシリコーン硬化性組成物であって、(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.1〜10Pasであることを特徴とする(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材と、ハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体及び揮発性有機溶媒からなる接着剤とから構成されることを特徴とするものである。
その本発明の最大の特徴は、(メタ)アクリル系粘膜調整材の上に塗布することが可能な適度な粘度を有するシリコーン硬化組成物を塗布してこれを硬化して上記(メタ)アクリル系粘膜調整材の流動性(すなわち形状変形性)を抑制させることにある。シリコーンは柔らかい性状でありながら高い強度にする調整が容易であり、受けた力に対して塑性変形することなく元の性状を保つ性質に非常に富んでいるため、これを(メタ)アクリル系粘膜調整材の表面に塗布することによって少ない量で効果的に上記(メタ)アクリル系粘膜調整材の流動性を抑制させることができる。単純に流動性を抑制させるだけの効果であれば、より硬い材料を表面に塗布することでも一時的に効果は得られると考えられるが、(メタ)アクリル系粘膜調整材との硬度差がありすぎると塗布した層が割れやすくなるため実用的でない。シリコーンは上述のような柔らかさと性状保持性を併せ持っている点で極めて優れていると考えられる。
一方で、シリコーンは異種材料に対し極めて接着し難い性質を有しており、上記(メタ)アクリル系粘膜調整材に対してもシリコーンを接着させる技術はこれまで見出されていなかった。本発明で解決すべき(メタ)アクリル系粘膜調整材の流動性抑制は、シリコーンを(メタ)アクリル系粘膜調整材に強固に接着することで実現できるものであり、その実現には適切な接着剤の出現が必要であったが、本発明者らは本出願人企業に所属する研究者が開発した化合物(特許文献3)が、該特許での接着対象物と全く硬さや性状の異なる(メタ)アクリル系粘膜調整材に対しても同様に接着剤として作用することを見出し、本発明に至ったものである。
その本発明においては、
(1)(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材の硬化体が5N/mm以上の引裂強度を有すること。
(2)(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材が更に(D)非反応性ポリシロキサンを含んでなることが好ましい。
本発明の流動制御用シリコーンコート材は、(メタ)アクリル系粘膜調整材表面にコートするものであるが、その際の粘膜調整材は、(メタ)アクリル系の重合体粉末と、可塑剤等の液材とが分割して包装、保存されており、使用時には両材を混合してペーストとして調製されるものであり、混合後高い柔軟性と可塑性とを発現することができるものであれば、特に制限されることなく各種の(メタ)アクリル系の重合体粉末と、可塑剤等の液材とを使用することができる。
その(メタ)アクリル系の重合体粉末には、特に制限されることなく各種メタクリル系の重合体粉末あるいはアクリル系の重合体粉末が使用でき、それにはメチルアクリレート、メチルメタアクリレート(MMAと略記する)、エチルアクリレート、エチルメタクリレート(EMAと略記する)、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート等の単独重合体もしくはこれらの共重合体を挙げることができる。
これらの高分子重合体の中でも、義歯床のアクリル樹脂との親和性が良いことからメタクリル酸と炭素数1〜4のアルキルアルコールとのエステルの単独重合体もしくは共重合体を用いるのが好適であり、中でもメチルアクリレート、エチルアクリレートの共重合体、又はメチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)の単独重合体等が最も好ましい。
その際の液材は柔軟性と可塑性を発現させるものであり、典型的には可塑剤を用いる。その可塑剤についても、(メタ)アクリル系の重合体粉末に配合されるもので、配合後、(メタ)アクリル系の重合体に高い柔軟性と可塑性とを付与することができるものであれば、特に制限されることなく各種ものが使用でき、それにはジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ビス(エチルへキシル)フタレート、ブチルフタリルブチルクリコラートフタレート等のフタレート系可塑剤、あるいはジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ビス(エチルへキシル)セバケート等のセバケート系可塑剤等が例示できる。
また、練和性を制御する等の目的で、必要に応じて希釈するために通常溶剤を用いることになるが、その溶剤としては前記目的に整合するものであれば特に制限されることなく各種のものを用いることができ、それには口腔内での刺激性の面から勘案してアルコール類が適しており、エタノールやイソプロピルアルコール等が例示できるが、入手の容易さとより刺激性の少ないエタノールが好ましい。
この(メタ)アクリル系の重合体粉末と、可塑剤含有液材とから形成された粘膜調整材は、比較的短期間で粘弾性が失われ、硬くなるということから、特定のガラス転移点を有する(メタ)アクリル系の重合体と、特定の液状ポリマーを混合して使用する、アクリル系粘膜調整材が最近開発されており、本発明においても、その粘膜調整材を好ましく使用することができる(特許文献4)。
本発明の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットは、(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材と接着剤とから構成されるものであり、その(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材は、(A)末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)ハイドロシリレーション反応触媒を含むものである。
これら構成成分等について以下において順次詳述する。
本発明において使用する成分(A)である、末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(以下、不飽和結合含有シリコーンと略記する)は、成分(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン(以下、SiHシロキサンと略記する)により架橋してゴム弾性コーティング層となる主成分である。
その成分(A)の不飽和結合含有シリコーンは、末端不飽和結合をもつ有機基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンであれば他の有機基の構造は制限されず、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよく、更にこれらの混合物であってもよい。
この末端不飽和結合をもつ有機基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が例示されるが、合成のし易さ及びその反応性からケイ素原子に結合したビニル基が最も有利である。これらの末端不飽和結合をもつ有機基は、オルガノシロキサンの分子鎖の末端または中間のいずれに存在しても、あるいはその両方に存在しても良いが、優れた反応性及び硬化後のゴム弾性コーティング層の機械的強度等の化学的、物理的性質を有するためには、少なくとも1個は末端に存在していることが好ましい。
末端不飽和結合をもつ有機基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、フェニル基のようなアリール基、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の置換アルキル基等が例示されるが、これらのうち合成し易く、かつ硬化後のゴム弾性コーティング層が充分な機械的強度及び耐着色性等の良好な化学的、物理的性質を保っているという点から、メチル基が最も好ましい。
本発明に使用する成分(A)の不飽和結合含有シリコーンの代表的なものは下記式(1)に示す通りのものである。
Figure 2009149563
ただし、式(1)中、Phはフェニル基を示す。
なお、上記化合物及び後述する実施例(実施試験例及び比較試験例)に用いられる化合物中の各繰り返し構成単位の結合順序は全く任意であり、構造式中に示される繰り返し構成単位の数は単に各構成単位の総量の平均値を示すに過ぎない。
本発明において使用する成分(B)のSiHシロキサンは、上記不飽和結合含有シリコーンを架橋させてゴム弾性コーティング層とする働きを持つ成分である。不飽和結合含有シリコーンと反応して架橋構造となるためには、ケイ素原子に結合している水素原子が分子中に少なくとも3個必要である。3個より少ないと架橋構造とならずゴム弾性コーティング層が得られない。
水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前述の成分(A)中における末端不飽和結合をもつ有機基及び末端不飽和結合をもたない有機基と同様のものが例示されるが、合成が容易で、かつ硬化後に充分な機械的強度及び耐着色性等の良好な化学的、物理的性質を保っているという点から、メチル基が最も好ましい。かかるSiHシロキサンは、直鎖状、分枝状または環状のいずれであっても良くこれらの混合物であっても良い。
本発明に使用するSiHシロキサンの代表的なものは下記式(2)に示すとおりのものである。
Figure 2009149563
ただし、式(2)中、Phはフェニル基を示す。
なお、上記及び後述する実施例(実施試験例及び比較試験例)に用いられるSiHシロキサンにおいても、不飽和結合含有シリコーンと同様に分子内の各繰り返し構成単位の結合順序は全く任意であり、構造式中に示される繰り返し構成単位の数は単に各構成単位の総量の平均値を示すに過ぎない。
本発明において使用する、不飽和結合含有シリコーンとSiHシロキサンとの各配合量はそれらの分子量により大きく変化するが、通常、不飽和結合含有シリコーン中の不飽和結合1個に対してSiHシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5個以上、好ましくは1〜10個の割合となるように配合すればよい。この割合が少なすぎると硬化性が不充分となり、また多すぎると得られるゴム弾性コーティング層が脆くなったり過剰のケイ素原子に結合した水素原子が残存するためにゴム弾性コーティング層の経時安定性が低下する傾向にある。
また、分子中にケイ素原子に結合している水素原子を少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンによるケイ素原子に結合した水素原子が、不飽和結合含有シリコーン中の不飽和結合1個に対して0.5個以上あれば、更に分子中にケイ素原子に結合している水素原子を2個あるいは1個しか含まないオルガノハイドロジェンポリシロキサンを添加してもよい。
本発明に使用される成分(C)である、ハイドロシリレーション反応触媒は、ハイドロシリレーション反応により成分(A)と成分(B)とを結合させ、上記不飽和結合含有シリコーンを架橋させてゴム弾性コーティング層とする機能を有するものであり、通常のハイドロシリレーション反応に用いられるものであればいずれも使用することができ、典型的には白金の化合物が使用される。
それには、例えば塩化白金酸、そのアルコール変性物、白金のビニルシロキサン錯体等を挙げることができる。なお、保存性を高めるためには、白金のビニルシロキサン錯体のようなクロル分の少ないものが好適である。
このハイドロシリレーション反応触媒の配合量については、典型的な触媒である白金化合物の場合には、白金分として不飽和結合含有シリコーン及びSiHシロキサンの合計重量に対して0.1〜1000ppmの範囲とすれば良い。配合量が0.1ppm未満の場合は、不飽和結合含有シリコーンとSiHシロキサンの架橋反応が充分に進行せず、1000ppmより多い場合は、白金黒の析出によりゴム弾性コーティング層が黄色く、あるいはひどいときには黒く着色したり、架橋反応の制御が困難になる等の問題点が生じる。
本発明においては、シリコーン硬化性組成物は(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.1〜10Pasであることが必要であり、前記粘度が0.1未満の場合には液の流動性が高すぎて術者の所望の場所への的確な塗布が困難となり、また10Pasを越えた場合には粘稠液体となり筆での適切な塗布性が得られ難いものとなる。より簡単に塗布するために0.2〜7Pasであることが好ましい。さらに、本発明においては、(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材が更に(D)非反応性ポリシロキサンを含んでなることが好ましく、これを含有することにより粘度を制御することが容易になると共に筆を用いた塗布性が向上し好ましいものとなる。
また、本発明においては、(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材の硬化体の引裂強度は5N/mm以上であることが好ましく、それ以下ではコート材によって形成される被膜が破れることがあり、適切な流動性制御が発現し難いものとなる。
さらに、この強度は、適当な充填材を用いることにより調節することができ、必要により、この充填材の添加量を制限することにより、適宜の強度を発現することができる。
本発明の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材は(A)及び(B)成分が混合されている状態で(C)成分が混合されることによってハイドロシリレーション反応が進行して硬化体が形成される。そのため、通常はそれらが混合されないように分封するのが好ましく、使用直前に術者が計量、混合して使用するのがよい。その分封方法については特に制限はないが、直前の計量、混合の容易さから勘案してペースト状の二包装にするのが好ましい。
その際の成分の組み合わせとして例示すると、(A)成分と(B)成分から構成される第一包装と、(A)成分と(C)成分から構成される第二包装とに分ける方法があげられる。なお、この場合(D)成分などその他の添加成分については一方の包装に加えても、両包装に分封してもよい。またその包装容器についても特に制限はないが、チューブや分封可能なカートリッジタイプの容器がその取り扱いの容易さから好ましい。
ついで、本発明の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットのもう一つの構成成分である接着剤について以下において詳述する。
この接着剤は本発明の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットにおいて、上述のシリコーンコート材と(メタ)アクリル系粘膜調整材とを接着させる役割を担う。すなわち、以下に示す接着剤を予め(メタ)アクリル系粘膜調整材表面に塗布することで両者の接着が可能となる重要な構成成分である。
その接着剤は、ハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体及び揮発性有機溶媒からなるものであり、そのアクリル系重合体は、側鎖にSiH反応点を有するポリオルガノシロキサンを有するシリコーン修飾アクリル系ランダム共重合体を用いるのが好ましい。
そのシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体(以下、単にランダム共重合体ということもある)は、下記一般式(1)及び(2)、又は(1)、(2)及び(3)で表される構造単位を有するものである。
すなわち、ランダム共重合体は、下記一般式(1)及び(2)で表される構造単位を有することは必須であるが、下記一般式(3)で表される構造単位を含有することは任意である。なお、後に具体的に述べるように構造式(1)ないし(5)ランダム共重合体は下記一般式(3)で表される構造単位を含まない。
Figure 2009149563
但し、式中、R1、R2、R13はそれぞれ水素原子、メチル基又はエチル基を、R3は炭素数1〜13のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R4〜R10はそれぞれ炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R11、R12はそれぞれ水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基を、R14は主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の不飽和炭化水素基を、Aは主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基を、c、dはそれぞれ平均繰り返し単位数を示し、cは1〜100、dは0〜100の整数であり、且つ10≦c+d≦100、0≦d/c≦10である。
また、構造単位(1)、構造単位(2)、及び構造単位(3)の構成割合については、モル%で、(1)=10〜99.9、(2)=90〜0.1、(3)=0〜89.9であり、重量平均分子量は5000〜1000000である。
一般式(1)、(2)及び(3)中のR1、R2、R13は、それぞれ水素原子、メチル基及びエチル基の中から選ばれるものであり、原料入手のしやすさ、ランダム共重合体の合成のしやすさ特に原料単量体(アクリレート化合物)の共重合反応性の点から水素原子、メチル基又はこれらを併用した混合系が好ましい。
さらに、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、トリデシル基等の炭素数1〜13のアルキル基及びフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基の中から選ばれるものであり、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の低級アルキル基が最適であり、これらの内から選ばれる一種又は二種以上の基を併用した混合系が好ましい。
4〜R10は、それぞれメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基及びフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等の炭素数6〜14のアリール基の中から選ばれるものであり、合成原料であるSiH反応点を有するポリオルガノシロキサンの合成、入手のしやすさからメチル基、フェニル基又はこれらを併用した混合系が好ましい。
また、R11、R12は、それぞれ水素原子、R4〜R10と同種のものが例示される炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数6〜14のアリール基であり、合成原料であるSiH反応点を有するオルガノポリシロキサンの合成、入手のしやすさ、得られるランダム共重合体の反応性の高さから、水素原子、メチル基、フェニル基又はこれらを併用した混合系が好ましい。
さらに R14はビニル基、アリル基、1−ブテニル基、9−デセニル基、2−(2−(2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)エトキシ)エチル基、2−(3−ブテノイルオキシ)エチル基、オレイル基等の主鎖中にエーテル結合、エステル結合を有してもよい炭素数2〜20の不飽和炭化水素基である。
Aは主鎖中にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数2〜20の2価の炭化水素基であり、合成のしやすさからエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数3〜10の2価の炭化水素基が好ましい。具体的には下記の炭化水素基が例示される。
Figure 2009149563
一般式(2)中のc、dは、シロキサンユニットの平均繰り返し単位数を示し、1≦c≦100、0≦d≦100を満たす整数であり、且つ10≦c+d≦100、0≦d/c≦10の範囲から選択される。接着剤としての反応性の点から、ポリオルガノシロキサン基1単位中にSiH基を3個以上持つようにcを選ぶことがより好ましい。
構造単位(1)、構造単位(2)、及び構造単位(3)の共重合比は、それぞれの構造単位のモル%が(1)=10〜99.9モル%、(2)=90〜0.1モル%、構造単位(3)=0〜89.9モル%となるように選択される。好ましくは、(1)=50〜99.9モル%、(2)=50〜0.1モル%、(3)=0〜49.9モル%となるように選択される。尚、各構造単位は、前記一般式で表される範ちゅうの構造単位を用いる限り各々一種の単位のみならず複数の単位から構成されていてもよい。
全体に占める構造単位(1)の割合が10モル%未満の場合、残りの構造単位(2)、(3)中の(2)の割合が大きい場合にはポリオルガノシロキサン基の分子量を小さくしても全ランダム共重合体中に占めるポリオルガノシロキサン部分の割合がアクリル樹脂部分に比べて大きくなり、粘膜調整材の(メタ)アクリル系樹脂との馴染みが悪くなるため接着力が低下することがある。
構造単位(2)の割合が0.1モル%未満の場合、全ランダム共重合体中に占めるポリオルガノシロキサン部分の割合が小さくなり、シリコーン硬化性組成物との馴染みが悪くなるため、シリコーンゴムとの接着力が充分でなくなる。ここでポリオルガノシロキサン部分とは、有機基を持ったSiO骨格部分のことをさし、R4〜R12、c、dによって決定される部分をさす。また、アクリル樹脂部分とは、ポリアクリレート骨格部分のことをさし、本発明で使用するランダム共重合体のポリオルガノシロキサン部分以外の部分であり、R1〜R3、R13、R14、構造単位(1)、構造単位(2)、及び構造単位(3)の数によって決定される部分をさす。
この接着剤中のランダム共重合体の重量平均分子量は5000〜1000000であり、この範囲になるようにc、d、構造単位(1)、構造単位(2)、構造単位(3)の共重合比、それらの総重合数が決定される。
更には、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーンゴム部分との相溶性、反応性、又合成のしやすさより、前出のポリオルガノシロキサン部分の分子量とアクリル樹脂部分の分子量との比が1:0.1〜2となるような組合せを選ぶのが好ましい。
本発明で用いる接着剤中の有効成分であるシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体において、前記一般式(1)、(2)、および(3)で表される構造単位のうち、R1、R2、R13としては水素原子又はメチル基から選ばれた基が、R3としてはメチル基、エチル基等のアルキル基が、R4〜R12としてはメチル基が、R14としてはAの反応残基が、Aとしてはプロピレン基、ブチレン基、デシレン基等の2価のアルキレン基が、c、dは、10≦c+d≦100、0≦d/c≦10を満たす整数であり、1≦c≦100、0≦d≦100の範囲から選択される。
また、構造単位(1)、構造単位(2)、及び構造単位(3)の構成比は(1)=50〜99.9モル%、(2)=50〜0.1モル%、(3)=0〜49.9モル%で選択される。また重量平均分子量が5000〜500000のものが、合成原料の入手の容易さ、合成の容易さ、得られるランダム共重合体の優れた反応性に基づく強固な接着性等の理由により好ましい。
前記のとおりであるから、ランダム共重合体中における一般式(3)で表される構造単位の含有は任意であり、含まれていなくてもよい。
本発明で用いる接着剤中の有効成分であるシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体の代表的なものを構造単位の構造とその平均繰り返し単位数で具体的に示すと、下記構造式(1)ないし(9)等が挙げられる。
それらの構造式のうち構造式(1)ないし(8)には、2種のランダム共重合体の構造が示されており、構造式(9)のみが1種のランダム共重合体である。すなわち、記号「;」の前に示される構造単位を持つ(A)で示されるランダム共重合体と、記号「;」の後に示される構造単位を持つ(B)で示されるランダム共重合体とは別のものであり、それが1つの構造式で示されている。
それらの各構造式においては、前記した一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)で表される各構造単位がその順で表記されている。例えば、構造式(1)においては、上段の(A)の式において前側の構造単位が一般式(1)で表される構造単位を示し、後側の構造単位が一般式(2)で表される構造単位を表す。
前記のとおりであるから、構造式(1)ないし(5)のランダム共重合体には、一般式(3)で表される構造単位は含まれておらず、一般式(3)で表される構造単位が含まれているランダム共重合体は構造式(6)ないし(9)のランダム共重合体である。
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
但し、前記構造式(1)ないし(9)中、Phはフェニル基を示す。なお、上記ランダム共重合体及び後述する実施例、比較例に用いられる本発明で使用する接着剤中におけるランダム共重合体中の構造単位並びにポリオルガノシロキサン部分の各シロキサンユニットの結合順序は全く任意であり、構造式中に示される繰り返し単位数は単に各構造単位並びに各シロキサンユニットの平均の総量を示すに過ぎない。
本発明における接着剤中で用いるシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体の製造方法は特段限定されるものではなく、その代表的な方法を以下において具体的に説明する。
すなわち、以下の一般式(4)ないし(7)で示す原料を用いて下記に示すとおり該ランダム共重合体を製造する。
Figure 2009149563
一般式(4)で表されるアクリレート化合物(但し、式中R1、R3は一般式(1)と同一定義を有す。)
Figure 2009149563
一般式(5)で表される末端不飽和結合含有アクリレート化合物(但し、式中R2 は一般式(2)と同一定義を有し、A’は単結合、即ちA’の左の酸素原子と右の炭素原子が直接結合している、あるいは主鎖にエーテル結合もしくはエステル結合を有してもよい炭素数1〜18の2価の炭化水素基を表す。)
Figure 2009149563
一般式(6)で表される不飽和結合含有アクリレート化合物(但し、式中R13、R14は一般式(3)と同一定義を有す。)
Figure 2009149563
一般式(7)で表されるハイドロジェンシリコーン化合物(但し、式中R4 〜R12、c、dは一般式(2)と同一定義を有す。)
それら一般式(4)ないし(7)の製造原料を用いた合成方法を具体的に示すと、以下のとおりである。
すなわち、一般式(4)で示す(メタ)アクリレート化合物と、一般式(5)で表される末端不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて一般式(6)で表される不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物の共重合体に、一般式(7)で表されるハイドロジェンシリコーン化合物を白金触媒を用いてハイドロシリレーション反応により付加させることにより合成される。
上述の合成方法を用いた場合、前記構造式(3)で示される構造単位(3)中のR14は、一般式(6)の不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物を用いない場合には、その合成原料である一般式(5)の末端不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物中の未反応残基、即ち−A'−CH=CH2となり、一般式(6)の不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物を用いる場合には、一般式(6)の不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物中のR14、又は一般式(6)の不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物中のR14と一般式(5)の末端不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物中の未反応残基の混合物となる。
これらの合成、即ち(メタ)アクリレート化合物、末端不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物及び必要に応じて不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物の共重合反応、この共重合体とハイドロジェンシリコーン化合物とのハイドロシリレーション反応はいずれも公知の方法により行うことができる。
例えば、共重合体の合成については、(メタ)アクリレート化合物、末端不飽和結合含有アクリレート化合物、必要に応じて不飽和結合含有(メタ)アクリレート化合物及び例えばベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤をトルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の溶媒中で加熱、重合させる溶液重合、あるいは界面活性剤を用いて水中で重合させる懸濁重合等が好適に用いられる。
また、ハイドロシリレーション反応については、上述の側鎖末端に二重結合を持つ(メタ)アクリル系ポリマー、この側鎖末端に二重結合を持つ(メタ)アクリル系ポリマーの末端二重結合量に対して大過剰モル量となるような量のハイドロジェンシリコーン化合物、ハイドロジェンシリコーン化合物と上述の側鎖末端に二重結合を持つ(メタ)アクリル系ポリマーを同時に溶解する不活性な、例えばトルエン、塩化メチレン等の溶媒及び白金触媒を反応容器に仕込み、水分の影響を除くために窒素等をバブリングしながら加熱、撹拌することにより本発明のシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体が得られる。
さらに、この他にも、側鎖に(メタ)アクリロキシアルキル基を持つハイドロジェンシリコーン化合物と前記一般式(4)及び必要に応じて一般式(6)の各(メタ)アクリレート化合物とを共重合させることによっても本発明のランダム共重合体は得られる。
以上の合成方法から明らかなように、本発明のシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体の全分子量、ポリ(メタ)アクリレート部分の分子量、構造単位(1)、構造単位(2)、及び構造単位(3)の共重合比、ポリオルガノシロキサン部分の分子量、各シロキサンユニットの構成単位比(c/d)、有機基R1〜R14、Aの種類、これらの組合せ等の樹脂構成要素の全てが任意に選択可能である。
即ち、ポリ(メタ)アクリレート部分の分子量は共重合反応時の重合開始触媒の量、連鎖移動剤の添加等公知の方法により制御可能であり、構造単位(1)、構造単位(2)、構造単位(3)の共重合比は相当モノマーの仕込み比及びハイドロジェンシリコーン化合物の付加反応の反応率の制御、即ち反応条件により、また有機基R1〜R3、R13、R14、Aの種類、組合せは所要の有機基をもつモノマーを所要の混合比で用いること及びハイドロジェンシリコーン化合物の付加反応の反応率の制御、即ち反応条件により、それぞれ制御可能である。又ポリオルガノシロキサン部分についても、その分子量、各シロキサンユニットの構成単位比(c/d)、有機基R4〜R12の種類、組合せは任意に制御可能である。
このようにして得られたシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体は一般に白色粉末状固体である。
このシリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体は、本出願人企業に所属する研究者が開発した化合物であり(特許文献3)、その接着剤としての性能はまさに驚くべきものである。
上記シリコーン修飾(メタ)アクリル系ランダム共重合体を接着剤とするためには、該共重合体を可溶性の有機溶媒、例えばトルエン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン等に適度な濃度、好適には0.1〜20重量%程度に溶解して接着剤とする。
本発明における(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットの使用方法に制限はないが、以下に代表的な使用方法を詳述する。
患者の口腔内で使用された(メタ)アクリル系粘膜調整材を流水等で洗浄し水分を払拭した後、本発明の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材を塗布する部分に本キットを構成する接着剤を筆などで塗布する。この際、接着剤の塗布量に明確な制限はないが、接着させたい面が接着剤で濡れているのがわかる程度に均一に塗るのが好ましい。
接着剤を塗布した後は、数十秒放置もしくはエアーなどにより表面に残った有機溶媒を乾燥させ、その上に予め計量しておいた(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材を練和して塗布する。その塗布量に明確な制限はないが、効果的に(メタ)アクリル系粘膜調整材表面の流動性を抑え、且つ得られた印象精度を損なわないためには0.1〜1.0mm程度の厚さに保つのが好ましい。塗布した(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材が硬化した後、石膏等にそのまま埋没して印象を採ることができる。
本発明を更に具体的に説明するために、以下において実施例(実施試験例及び比較試験例)を示すが、本発明は特許請求の範囲の記載によって特定されるものであり、この実施例によって何等限定されるものではない。
各実施試験例、比較試験例において使用する材料は以下の通りである。
前記各試験例においては、(A)から(F)の成分を使用するが、それらは下記のとおりである。
成分(A)〔不飽和を持つオルガノポリシロキサン〕
この成分(A)については数種のものを使用しており、それらを表1にまとめて示す。
Figure 2009149563
成分(B)〔オルガノハイドロジェンポリシロキサン〕
この成分(B)についても数種のものを使用しており、それらを表2にまとめて示す。
Figure 2009149563
成分(C)及び成分(D)は以下の通りである。
成分(C)〔ハイドロシリレーション反応(「ヒドロシリル化反応」ともいう)触媒物質〕:白金−ジビニルジシロキサン錯体
成分(D)〔非反応性シロキサン〕:ポリジメチルシロキサン「TSE451-10」(東芝シリコーン製)
それらに加えて、更に充填材を用いたが、それは以下の通りのものである。
ヒュームドシリカ「レオロシールZD-30ST」(トクヤマ製)
また、接着剤調製のために用いた原料は以下のとおりである。
(a)有機溶媒
酢酸エチル(和光純薬、特級)
アセトン(和光純薬、特級)
ジエチルエーテル(和光純薬、特級:エーテルと略記する)
(b)反応性シロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体
前記(b)の反応性シロキサン修飾(メタ)アクリル系重合体については、実施例ではいずれも共重合体を用いたが、それらを示すと下記の化学式(1)ないし(5)のとおりのものである。
また、これら共重合体(以下、これら共重合体を順に共重合体(1)ないし(5)と略称する)の合成方法を下記において順に示す。
Figure 2009149563
Figure 2009149563
共重合体(1)の合成法
フラスコにメチルメタクリレートを25g、アリルメタクリレートを0.63g、アゾビスイソブチロニトリルを0.26g、トルエンを30mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量120000)を得た。
フラスコに、表1に示すハイドロジェンシロキサン化合物(DMS-M20H20)27.7g、トルエン300ml、白金1000ppmに調節した白金/ジビニルシロキサン錯体溶液0.33gを入れ、窒素をバブリングしながら80℃に加熱、攪拌する。
ついで、前記方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートとの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量120000)5gをトルエン100mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下する。その後、滴下終了後更に6時間加熱、攪拌し、トルエンを減圧除去後、メタノール/エタノール混合溶媒で過剰のDMS−M20H20を洗浄した後、濾別、乾燥し、共重合体(1)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量はポリスチレン標準で、180000であった。
共重合体(2)の合成法
フラスコにメチルメタクリレート25g、アリルメタクリレート0.63g、アゾビスイソブチロニトリル0.40g、トルエン30mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量80000)を得た。
表1に示すハイドロジェンシロキサン化合物DMS―M10H10P10と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートとの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量80000)を用いて共重合体(1)の合成と同様の方法で合成を行い、共重合体(2)を得た。
共重合体(3)の合成法
フラスコにメチルメタクリレート25g、メタクリル酸トリエチレングリコールモノアリルエーテルエステル1.30g、アゾビスイソブチロニトリル0.31g、トルエン30mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとメタクリル酸トリエチレングリコールモノアリルエーテルエステルとの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量110000)を得た。
表1に示すハイドロジェンシロキサン化合物DMS―M20H20と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとメタクリル酸トリエチレングリコールモノアリルエーテルエステルとの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量110000)を用いて共重合体(1)の合成と同様の方法で合成を行い、共重合体(3)を得た。
共重合体(4)の合成法
フラスコにメチルメタクリレート25g、アリルメタクリレート1.1g、アゾビスイソブチロニトリル0.57g、トルエン30mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの57対2(モル比)共重合比の共重合体(重量平均分子量60000)を得た。
ハイドロジェンシロキサン化合物DMS―M20H20と、上述の方法で合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートとの共重合比57対2(モル比)の共重合体(重量平均分子量80000)とを用いて、共重合体(1)の合成と同様の方法で合成を行い、共重合体(4)を得た。
共重合体(5)の合成法
フラスコにメチルメタクリレート25g、アリルメタクリレート0.63g、アゾビスイソブチロニトリル0.31g、トルエン30mlを入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加熱攪拌してメチルメタクリレートとアリルメタクリレートとの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量100000)を得た。
表1に示すハイドロジェンシロキサン化合物DHS−M20H20と上述の方法で合成した合成したメチルメタクリレートとアリルメタクリレートの共重合比50対1(モル比)の共重合体(重量平均分子量100000)を用いて共重合体(1)の合成と同様の方法で合成を行い、共重合体(5)を得た。
これら共重合体(1)ないし(5)の合成法に用いたハイドロジェンシロキサン化合物をまとめて表3に示す。
Figure 2009149563
これらの共重合体を用いて以下の表4に示す接着材を調製した。なお、その調製の際には上記共重合体を表4に記載した記載の有機溶媒と同表に示した配合比で配合し、均一になるまで攪拌・混合して所望の接着材を得た。
Figure 2009149563
そして、本発明の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キットの処理対象となる(メタ)アクリル系粘膜調整材は以下の通りのものを用いた。
「ティッシュケア」(トクヤマデンタル社製)
また、実施例(すなわち実施試験例及び比較試験例)においては、(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材は下記の評価手法により評価した。
すなわち、(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材は、粘度、塗布性、皮膜厚さ、接着性、耐圧性、引裂強度により評価した。それらの評価方法は、下記のとおりである。
(1)粘度
(C)成分を除いた他の成分を乳鉢で十分に練和した後、減圧下で脱泡処理を行った組成物の粘度を、E型粘度計を用いて測定した。
(2)塗布性
直前に混ぜ合わせた組成物を、歯科用毛筆(「毛筆No.5」 トクヤマデンタル製)を用いてアクリル系粘膜調整材表面に対して塗布したときの塗布性を以下の3段階で評価した。
A; 特に抵抗を感じずに塗布することが可能で且つ、塗布した後速やかに均一に広がって筆の後が塗布面にまったく残らない。
B; 塗布の際にやや筆に抵抗を感じるものの均一な塗布は可能であり、且つ塗布後速やかに均一に広がって筆の後が塗布面にまったく残らない。
C; 塗布の際に筆に抵抗を感じる、もしくは抵抗は感じないが、塗布面に筆の跡が残って消えない。
D; 特に抵抗を感じずに塗布することが可能だが、塗布する際に広がりすぎて均一な塗布面が得られない。
(3)皮膜厚さ
直前に混ぜ合わせた組成物を、歯科用毛筆(「毛筆No.5」 トクヤマデンタル製)を用いて20×20×2mmの(メタ)アクリル系粘膜調整材表面に対して塗布した後、37℃で5分間静置させた。硬化体の厚みを測定し、塗布した分の皮膜厚さを求めた。
なお、皮膜厚さは印象を損なわないために100μm以下になることが望ましい。
(4)接着性
直前に混ぜ合わせた組成物を、歯科用毛筆(「毛筆No.5」 トクヤマデンタル製)を用いて20×20×2mmの(メタ)アクリル系粘膜調整材表面に対して塗布した後、37℃で5分間静置させた。金属製スパチュラで表面や界面をこすり、皮膜層が(メタ)アクリル系粘膜調整材に対して接着しているかどうかを以下の3段階で評価した。
A;スパチュラでこすっても容易に剥がれず、無理に剥がそうとすると下
面のアクリル系粘膜調整材層が破壊される。
B;スパチュラでこすっても容易には剥がれないが、無理にはがそうとすると一部が剥がれる
C;スパチュラでこすると容易に剥がれる。
(5)耐圧性
直前に混ぜ合わせた組成物を、歯科用毛筆(「毛筆No.5」 トクヤマデンタル製)を用いて20×20×2mmの(メタ)アクリル系粘膜調整材表面に対してすべての面に塗布した後、37℃で5分間静置させた。
静置後のサンプルに対して繰り返し荷重試験機(「サーボパルサー」島津製)を用いて以下の条件で繰り返し荷重を負荷し、試験前後の厚みの変化を厚みの復元率で評価した。
復元率(%)= 試験後の厚さ(mm)/試験前の厚さ(mm)×100
繰り返し荷重試験条件
・荷重: 10kg
・積算回数: 1500回
・周波数: 1.0Hz
・試験環境: 37℃水中
なお、耐圧性は得られた印象を損なわずに石膏等へ印記するために80%以上であることが望ましい。
(6)引裂強度
JIS K6252に準拠して引裂強度を測定した。なお、用いた試験片は90℃切れ込みなしの型より作成した。
[実施試験例1]
37℃に24時間浸漬しておいた(メタ)アクリル系粘膜調整材に対して表5に示した接着剤を塗布し十分に揮発させておいた。表5に示した組成で調製したシリコーンコート材組成物用ペーストA及びBを練和紙上で30秒程度十分に練和した後、上記処理を行った(メタ)アクリル系粘膜調整材の表面に塗布し各種評価を行った。また別途シリコーンコート材硬化体の引裂強度を評価した。それらの結果を表7に示した。
表7に示したように、ハイドロシリレーション反応触媒(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.4Pasであり、(メタ)アクリル系粘膜調整材表面への塗布性は良好であった。そのときの皮膜厚さは50μmで得られる印象を阻害しない程度の厚みであることがわかった。また(メタ)アクリル系粘膜調整材との接着性も良好であり、耐圧性は復元率95%の結果で、シリコーンコート材硬化体の引裂強度は7.5N/mmとなりいずれも良好な結果を示した。
[実施試験例2〜21]
表5及び表6に示した組成で調製したシリコーンコート材組成物用ペーストA及びBを調製し、実施試験例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。それらの結果を実施試験例1と合わせて表7に示した。
表7に示したように、ハイドロシリレーション反応触媒(C)を除く組成物の25℃での粘度が10Pasよりも低く、(メタ)アクリル系粘膜調整材表面への塗布性は良好であった。そのときの皮膜厚さはいずれも得られる印象を阻害しない程度の厚みであることがわかった。また(メタ)アクリル系粘膜調整材との接着性も良好であり、耐圧性、シリコーンコート材硬化体の引裂強度いずれも良好な結果を示した。
Figure 2009149563
Figure 2009149563
Figure 2009149563
[比較試験例1]
表6に示した組成で調製したシリコーンコート材組成物用ペーストA及びBを調製し、実施試験例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。それらの結果を表7に示した。
表7に示したように、ハイドロシリレーション反応触媒(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.07Pasで極めて低いために(メタ)アクリル系粘膜調整材表面への均一な塗布ができず、正確な皮膜厚さを測定することもできなかった。部分的に(メタ)アクリル系粘膜調整材のはみ出しが確認され、耐圧性も45%という結果であった。
[比較試験例2]
表6に示した組成で調製したシリコーンコート材組成物用ペーストA及びBを調製し、実施試験例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。それらの結果を表7に示した。
表7に示したように、ハイドロシリレーション反応触媒(C)を除く組成物の25℃での粘度が140Pasで極めて高いために(メタ)アクリル系粘膜調整材表面への均一な塗布ができなかった。また正確な皮膜厚さを測定することもできなかったが平均で284μmであり極めて厚い皮膜となった。
[比較試験例3]
表6に示した組成で調製したシリコーンコート材組成物用ペーストA及びBを調製し接着材を用いずに試料を作成した以外は実施試験例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。それらの結果を表7に示した。
表7に示したように、調製したシリコーンコート材が(メタ)アクリル系粘膜調整材に対してまったく接着しておらず、耐圧性も5%という結果であった。
[比較試験例4]
シリコーンコート材組成物及び接着材を用いず、実施試験例1と同様にしてそれぞれ評価を行った。それらの結果を表7に示した。
表7に示したように、シリコーンコート材がない状態では(メタ)アクリル系粘膜調整材の変形が大きく、耐圧性が5%という結果であった。

Claims (3)

  1. (A)末端不飽和結合をもつ有機基を分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、(B)分子内のSiH基を少なくとも3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び(C)ハイドロシリレーション反応触媒を含んでなるシリコーン硬化性組成物であって、(C)を除く組成物の25℃での粘度が0.1〜10Pasである(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材と、ハイドロシリレーション反応の反応性官能基を有するシロキサンで修飾された(メタ)アクリル系重合体及び揮発性有機溶媒からなる接着剤とから構成されることを特徴とする(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キット。
  2. (メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材の硬化体が5N/mm以上の引裂強度を有することを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キット。
  3. (メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材が更に(D)非反応性ポリシロキサンを含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載の(メタ)アクリル系粘膜調整材流動制御用シリコーンコート材キット。
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