JP2009147205A - 導波路型固体レーザ媒質および導波路型レーザ装置 - Google Patents

導波路型固体レーザ媒質および導波路型レーザ装置 Download PDF

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恒夫 濱口
Takayuki Yanagisawa
隆行 柳澤
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Abstract

【課題】 レーザ媒質とヒートシンクとの接合部分を適切に制御し、所望の熱レンズ効果により、安定したレーザ発振が可能なモード制御導波路型レーザ装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 一面側にレーザの光軸C方向に平行に延びる複数の第1突起4が所定の周期で配置されたレーザ媒質1と、第1突起4のそれぞれとはんだによって接合される複数の第2突起3が形成されたヒートシンク2と、を備え、複数の第2突起3のそれぞれは、側面部3sにはんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層32を有するとともに、第1突起4と対向する上面部3tにはんだに濡れやすい第2の層31を有し、はんだに濡れやすい第2の層31は、その端部3cが側面部3sに近づくほど第1突起4との間隔が広がるような曲線状に形成されるとともに、はんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層32の上端部まで延在するように構成した。
【選択図】 図4

Description

本発明は、プリンタやプロジェクションテレビの光源に好適な導波路型レーザ装置および該レーザ装置に用いられる導波路型固体レーザ媒質に関するものである。
プリンタやプロジェクションテレビでは、光源としてR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光源が要求される。これら光源として、900nm帯、1μm帯、1.3μm帯のレーザ光を基本波レーザ光として、非線形材料を用いて第2高調波を発生する波長変換レーザ装置が開発されている。波長変換レーザ装置において、基本波レーザから第2高調波レーザ光への高い変換効率を実現するためには、非線形材料上の基本波レーザ光のパワー密度を高くすること、および、波面収差の少ない高輝度なレーザ光が要求される。
このような波長変換レーザ装置を実現する方法として、半導体レーザと、光軸に垂直な方向に周期的なレンズ効果を発現する導波路型固体レーザ媒質と、非線形材料とを備えたモード制御導波路型レーザ装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のような導波路型固体レーザ媒質では、レーザ媒質に周期的な熱レンズ効果を発現させるために、レーザ媒質を所定間隔の線状部分から冷却できるようにヒートシンクに接合している。具体的には、前記ヒートシンクの表面には光軸方向に平行で等間隔に配置された線状の金属突起(以下第2突起と称する)が形成され、レーザ媒質表面にも前記各第2突起に対応して線状の金属突起(以下第1突起と称する)が形成され、前記各第2突起と対応する第1突起とをはんだで接合している。
そして、半導体レーザで励起された光がレーザ媒質にはいると熱が発生し、発生した熱は、はんだで接合された第1突起と第2突起と(両者を接合したものを金属突起部と称する)を通してヒートシンクに排熱される。このとき、金属突起部はレーザ媒質の平面上で等間隔に設けられており、金属突起部間の中心は温度が最も高く、ヒートシンクと直接接合されている金属突起部の温度が最も低くなる。このようにレーザ媒質内に温度差が発生することにより、光軸に垂直な方向のレーザ媒質内の屈折率が変化して熱レンズ効果が発揮される。このレーザ媒質内の温度差で発生する熱レンズ効果により、レーザ媒質の端面と非線形材料の端面の間で反射して発生するレーザ発振を安定させることができる。
熱レンズ効果によるレーザ発振を安定させるためには、レーザ媒質内に所望の温度差を発生させる必要がある。所望の温度差を実現するには、金属突起部を介した排熱量を適切に制御することが必要である。排熱量は伝熱の法則から、レーザ媒質とヒートシンク間を接続する金属突起部の熱伝導係数と、レーザ媒質とヒートシンク間の温度差と金属突起部の幅(長さが一定として断面積)と高さおよび材料で決まる。したがって、金属突起部を熱伝導のよい材料で構成することと、金属突起部の幅と高さを設計値とおりに制御することが重要である。
ここで、金属突起部は上述したようにヒートシンク上に形成された第2突起とレーザ媒質上に形成された第1突起とをはんだで接合したものであり、はんだ接合を安定させることが実質的に金属突起部の排熱量を制御することになる。そこで、従来から半導体素子において、はんだ接合を安定させるために考案された構成を適用することが考えられる。例えば、はんだの接合面をNi合金、Pd合金、Au膜等のはんだに濡れる材料で覆い、接合強度を安定させる構成(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかし、このような構成を導波路型レーザ装置に適用すると、はんだが金属突起部の側面に濡れ広がり、金属突起部の実質断面積が大きくなる、あるいは、接合部分に留まるはんだの量が不足して金属突起表面の凹凸を吸収できなくなることがある。そのため、金属突起部の熱伝達係数を制御することができず、所望の熱レンズ効果を得ることが困難となる問題がある。
そこで、例えば、突起部分をはんだに濡れる上面とはんだに濡れにくい側面で形成することにより、側面へのはんだの濡れ広がりを防止する構成(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
WO2006/103767号公報(段落0017、図1) 特開2004−55624号公報(段落0022、図1) 特開2007−73617号公報(段落0030、図1)
しかしながら、上記のような構成を適用した場合、第2突起上に付着させたはんだのうち、余剰なはんだが接合時に金属突起部周辺にはみ出す。その場合、第2突起の側面がはんだに濡れにくい金属で形成されているため、はみ出たはんだは第2突起の端面ではんだボールになる。はんだボールがレーザ媒質上のクラッド層に接触すると、はんだボールがヒートシンクとして作用し、金属突起部間中央での温度上昇を妨げる。そのため、所望の熱レンズが得られなくなる問題があった。あるいは、はんだボールが金属突起部から剥離して、金属突起部間の空間内を移動し、レーザ媒質の端面に付着して、レーザ媒体と半導体レーザまたは非線形材料との光軸合せを阻害する要因になるという問題があった。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、レーザ媒質とヒートシンクとの接合部分を適切に制御し、所望の熱レンズ効果により、安定したレーザ発振が可能な導波路型固体レーザ媒質およびそれを用いた導波路型レーザ装置を得ることを目的とする。
本発明にかかる導波路型固体レーザ媒質は、一面側にレーザの光軸と平行に延びる複数の第1突起が前記光軸に垂直な方向に所定の周期で配置されたレーザ媒質と、前記第1突起のそれぞれとはんだによって接合される複数の第2突起が、前記レーザ媒質の面と対向する面側に形成されたヒートシンクと、を備え、前記複数の第2突起のそれぞれは、前記レーザの光軸と平行に延び、前記光軸に垂直な断面形状において、少なくとも側面部にはんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層を有するとともに、前記第1突起と対向する上面部にはんだに濡れやすい第2の層を有し、前記はんだに濡れやすい第2の層は、前記光軸に垂直な断面形状において、その端部が前記側面部に近づくほど前記第1突起との間隔が広がるような曲線状に形成されるとともに、前記はんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層の上端部まで延在するものである。
また、本発明にかかる導波路型レーザ装置は、基本波レーザ光を発振する半導体レーザと、前記半導体レーザからの基本波レーザ光が前記光軸方向における一方の端面から入射し、入射した基本波レーザ光に対して利得を発生させて他方の端面から発振する上記導波路型固体レーザ媒質と、前記導波路型固体レーザ媒質から発振された基本波レーザ光が前記光軸方向における一方の端面から入射し、第2高調波レーザ光に変換して他方の端面から出力する非線形材料と、を備えたものである。
本発明によれば、ヒートシンクの表面には、光軸方向に延び、光軸に垂直な断面において側面部にはんだに濡れにくい表面を露出しており、レーザ媒質と対向する上面部は端部が側面部に近づくほどレーザ媒質との間隔が広がるような曲線状で形成され、はんだに濡れにくい表面部分の上端部まで覆うはんだに濡れる第2の層と、を有する突起を備えたことにより、レーザ媒質とヒートシンクとの接合部分との断面積を適切に制御でき、所望の熱レンズ効果により、安定したレーザ発振が可能な導波路型固体レーザ媒質、および導波路型レーザ装置を得ることができる。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1にかかるモード制御導波路型レーザ装置の導波路型固体レーザ媒質を示す斜視図である。また、図2は導波路型固体レーザ媒質の図1におけるII−II線における断面図である。図において、レーザ媒質1は平板状をなし、一方の面(図中上)には支持板6が接着され、他方の面(図中下側)にはクラッド層7が形成されている。そして、クラッド層7の表面にはレーザ(図示せず)の発振方向(光軸C方向)と平行に延びる線状の第1突起4である金属突起が光軸C方向に対して垂直な方向に一定間隔で複数並ぶように形成されている。また、レーザ媒質1と後述する方法で接合されて一体となるヒートシンク2の表面(図中下側であって、レーザ媒質1に対向する面)には、金属膜21が形成され、さらに金属膜21上にはレーザ媒質1に接合されたクラッド7上に形成された複数の第1突起4のそれぞれに対応するように第2突起3である金属突起が形成されている。そして各第2突起3と第1突起4間はあらかじめ各第2突起3の表面に形成させたはんだ5を用いて接合している。なお、本実施の形態の説明では簡略化のため、図では第1突起4および第2突起3をそれぞれ4つずつ有する場合について記載しているが、この記載に限定されないことは言うまでも無い。
本発明にかかる実施の形態1における導波路型固体レーザ媒質は、第2突起3の第1突起4との接合部分の構造に特徴があるが、その部分の説明の前に、レーザ媒質1とヒートシンク2との接合について説明する。
図2に示すように、レーザ媒質1とヒートシンク2は光軸Cに対して垂直な方向において一定間隔で配置された各第2突起3と第1突起4とをはんだ5で接合することにより、隣接した金属突起部(第2突起3と第1突起とをはんだで接合したものをいう)間に空間が形成される。レーザ媒質1で発生した熱は金属突起部を経由して、ヒートシンク2に排熱される。このとき、上述したようにレーザ媒質1内において、金属突起部間の中心で温度が最も高く、ヒートシンク2と直接接合されている金属突起部の温度が最も低くなるように温度差が発生する。これにより、光軸に垂直な方向のレーザ媒質1内の屈折率が変化して周期的な熱レンズ効果が発揮される。したがって、金属突起部を通じての排熱量を所望の値に設定することは、効率のよい熱レンズを形成する上で重要である。
所望の排熱量をうるためには、第2突起3と第1突起4とが接合して形成される金属突起部内の排熱方向に垂直な断面積を設計とおりに制御することが不可欠である。そのためには、第2突起3と第1突起4との接合の際に、溶融するはんだ5によって金属突起部の断面積を変化させないことが重要であり、とくにはんだのはみ出しによって断面積を大きくさせないようにする必要がある。
第1突起4と第2突起3をはんだにより簡便に低コストで接合する方法としては、予め第2突起3上にはんだ5を形成しておき、熱圧着することにより第2突起3/第1突起4間を直接はんだ5で接合する方法がある。図3はその接合方法によるレーザ媒質1(厳密にはレーザ媒質の一面に接合されたクラッド7)とヒートシンク2の接合方法を示す。レーザ媒質1の表面に形成されたタンタル酸化物からなるクラッド層7の全面にはCr層(図示せず)が形成され、第2突起3と接合する位置に第1突起4が形成されている。なお、第1突起4ははんだ5により接合できる金属材料であればよく、Ni、Pt、Cu、などを用いる。また第1突起4の表面には接合前に酸化しないように数十nmの薄いAuを形成しておいてもよい。第1突起4の厚さは数百nmである。レーザ媒質1としては、GdVO4、YVO4などが用いられる。
つぎに、金属突起部の詳細構造について図4を用いて説明する。図4はヒートシンク2とレーザ媒質1とを接合するときの金属突起部の状態を示すために導波路型固体レーザ媒質の一部分を拡大表示したもので、図4(a)は図3における接合前の第2突起3の構造を示す断面図、図4(b)は図3における接合前の第1突起4の構造を示す断面図、図4(c)は図3における接合時の金属突起部の構造を示す断面図である。
図4(a)に示すように、ヒートシンク2の表面には、レーザの光軸Cと平行に延びる線状で、光軸Cに垂直な断面においてレーザ媒質1と対向する上面部3tは、端部3c(側面部3sとの境界に当たる部分)がそれぞれ隣接する側面部3sに近づくにつれ下がっていくような曲線状で形成された第2突起3が形成されている。第2突起3は、少なくとも側面がはんだに濡れにくい金属層32とはんだに濡れやすい層31が積層された構成となっており、光軸Cに垂直な断面形状において側面3sの下側(ヒートシンク側)に少なくとも表面がはんだに濡れにくい金属層32が露出し、左右の端部3cを含む上面部3t全体が、つまり、はんだに濡れにくい金属層32の幅よりも広い上面部3t全体がはんだに濡れやすい層31で覆わるようになっている。そして、はんだに濡れやすい層31の表面には、はんだ5が形成されている。
また、第2突起3の光軸Cに垂直な断面形状は、ほぼ方形であるが、後述する形成方法により、厳密には下側が狭く上側(レーザ媒質1と対向する側)が広い逆台形となっている。したがって、曲線状の端部3cは厳密には幅(光軸Cに垂直でレーザ媒質1と対向する面方向での長さ)が最大となる部分から上側を指すことになる。しかし、本実施の形態1においては、はんだに濡れやすい層31は、はんだに濡れやすい層31の厚み以下の範囲で、幅が最大となる部分よりやや下側の部分も覆っている。なお、はんだに濡れやすい層31は、幅が最大となる部分より上側全体を覆うようにする、つまり、はんだに濡れやすい層31の幅を、はんだに濡れにくい金属層32の幅と同一になるように構成してもよい。
ヒートシンク2には、A:表面平坦性がよい、B:レーザ媒質1と熱膨張がほぼ同じ、C:熱伝導がよい、の3つの性能を満足する材料としてSiウエハを用いているが、AlNなどのセラミック基板を用いてもよい。また、側面がはんだに濡れにくい層32の材料としては、CuとNiの積層材とし、ヒートシンク2の表面に設けた金属膜21を電極として、電気めっきによって形成した。形成したCuとNiの積層材は、表面が酸化されることにより、少なくとも露出した側面部分ははんだに濡れにくいものとなる。なお、はんだに濡れにくい材料としては、例えば熱伝導のよいSiなどの無機物を用いてもよい。はんだに濡れやすい層31は、酸化物を形成せず熱伝導のよい材料としてAuを用いているが、Ptなどを用いてもよい。はんだ5には、AuSnまたはSnCu、SnAgCuなどのSn系のはんだを用いた。
レーザ媒質1としては、平板状のGdVO4、YVO4などが用いられ、その一面(図中下側でヒートシンク2に対向する面)は、図4(b)に示すようにクラッド層7で覆われている。そして、クラッド層7上には、第2突起3の配置に対応し、厚さ数百nmで、第2突起3と同じ幅(光軸Cおよび厚さ方向に対して垂直な方向)で、表面が平坦な第1突起4が形成されている。なお、図示しないが、第1突起4の表面には接合前に酸化しないように数十nmの薄いAuを形成しておいてもよい。なお、図では簡略化のため支持板6の記載を省略している。
上記のような構成のレーザ媒質1とヒートシンク2とを、レーザ媒質1の第1突起4とヒートシンク2の第2突起3との位置を合わせるようにセッティングして加熱圧着する。加熱圧着すると、図4(c)に示すように第2突起3上のはんだ5が溶融し、第1突起4とが接合される。
上述したように、第2突起3の光軸Cに垂直な断面において、側面部に近づくほど下がるような曲線状の端部3cを含む上面部3t全体がはんだに濡れやすい層31によって覆われており、この曲線は接合の際には側面部に近づくほど第1突起との間隔が広がるようになる。接合時の加熱によって、第2突起3上のはんだ5が溶融すると、加圧によって第2突起3と第1突起4間の空間面積が小さくなり、余剰となったはんだ5rは第1突起4の表面とはんだに濡れやすい層31との間を流動し、第2突起3の境界部3cと平坦な第1突起4とをつきあわせた時にできる隙間34(光軸Cに垂直な断面形状において第2突起3の幅が最大となる部分より上側となる曲線状の端部3cと第1突起4の第2突起3に対向する面との間の隙間)を埋めるように溜まる。また、余剰のはんだ5rは、第2突起3の幅が最大となる部分より下側の少なくとも側面がはんだに濡れにくい層32が露出する部分(側面3s)まで広がることはない。そのため、第2突起3の側面3sの全面にはんだ5が濡れ広がることがなく、しかも、余剰なはんだ5rは隙間34内、あるいは、第1突起4とはんだに濡れやすい層32の厚み方向の寸法を合わせた部分を直径とする半円内にほぼ収まることになるので、接合した金属突起部の平面方向の断面積が元の第2突起3や第1突起4の断面積と比べて大きくずれることがない。さらに、接合面に多少の凹凸があっても、はんだ5に濡れやすい材料間(第1突起4の表面とはんだに濡れやすい層31の表面)をはんだ5が埋めてくれるので、金属突起部内の排熱方向において材料が抜けるような欠損部分が生ずることを防止し、断面積を設計値とおりに制御することができ、熱設計とおりの排熱を実現することができる。
このように、本実施の形態にかかる第2突起3を用いてヒートシンク2と接合することにより、レーザの発振方向を示す光軸Cおよび厚さ方向に垂直な方向に周期的な熱レンズ効果を有する導波路型固体レーザ媒質を構成することができる。そして、図5に示すように基本波レーザ光を発振する半導体レーザ10の発振口10aをレーザ媒質1の端面1aに配置し、第2高調波を発生させる非線形材料11をその端面11aがレーザ媒質1の端面1bと近接するように配置する。これにより、半導体レーザ10からの基本波レーザ光が導波路型固体レーザ媒質のレーザ媒質の端面1aから入射する。入射した基本波レーザ光に対して導波路型固体レーザ媒質は利得を発生させてレーザ媒質の他方の端面1bから発振する。そして利得を得た基本波レーザ光が非線形材料7に入射すると、基本波レーザ光は、第2高調波レーザ光に変換され非線形材料7の他方の端面から出力する。このようにして、導波路型レーザ装置を構成することができる。なお、図5における切断面は、図2におけるV−V線による切断断面に相当する。
上記レーザ媒質1は、ヒートシンク2との間に施された周期的な排熱経路(金属突起部)が設計値どおりの断面積を有しているので、熱設計とおりにレーザ媒質1およびクラッド層7内に温度差が形成され、熱レンズ効果により、レーザ媒質1の端面1aと非線形材料11の端面の間で反射して発生するレーザ発振を安定させることができる。
つぎに、はんだに濡れやすい層32と少なくとも側面がはんだに濡れにくい層31からなる第2突起3の形成方法について説明する。
図6は、ヒートシンク2上に第2突起3を形成する際の各工程における状態を示した断面図である。ヒートシンク2の材料としては、熱伝導がよく、高平坦なシリコンウエハの基板を用いる。はじめに、図6(a)に示すようにヒートシンク2上の全面に電気めっきの電極となる金属膜21を形成し、その上に光軸Cに平行で等間隔をおいた所定幅の開口部81を複数形成するようにレジスト8を形成する。各開口部81はヒートシンク2側(図中下)よりも外側(図中上)の方が大きく開口するように形成する。その形成法として、例えば、光があたったところが溶解するレジスト材を用いている。
次に、図6(b)に示すように、電気めっきにて少なくとも側面がはんだに濡れにくい層32を形成する。開口部81を上部に進むにしたがって広がるように形成しているので、少なくとも側面がはんだに濡れにくい層32が成長する際、両端の成長速度が他の部分より遅くなるため、角部が丸みを帯びて形成される。そして、両端部が丸みを帯びた少なくとも側面がはんだに濡れにくい層32上に、はんだに濡れやすい層31を形成する。これにより、光軸C方向に伸び、光軸Cに垂直な断面が略方形(下側が狭い逆台形)で、レーザ媒質1(厳密にはクラッド層7上に形成された各第2突起3)と対向する上面部3tの端部3cが側面部3cに近づくほど第1突起との隙間が広がるような曲線状で形成され、側面部3sに酸化されることによってはんだに濡れにくくなる表面を露出する層32と、側面がはんだに濡れにくい層32上に形成され、端部3cを含む上面部3t全体を覆うはんだに濡れやすい層31と、を有する第2突起3を形成することができる。さらに、その上にはんだ5を形成させる。最後に、レジスト8を溶剤にて剥離すると図6(c)に示すように第2突起3を形成できる。
以上のように本実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質は、一面側に形成されたクラッド層7が接合され、クラッド層7の面上にレーザの光軸Cと平行に延びる複数の第1突起4が光軸Cに垂直な方向に所定の周期で配置されたレーザ媒質1と、第1突起4のそれぞれとはんだによって接合される複数の第2突起3が、レーザ媒質1のクラッド層7の面と対向する面側に形成されたヒートシンク2と、を備え、複数の第2突起3のそれぞれは、光軸Cと平行に延び、光軸Cに垂直な断面形状において、側面部3sにはんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層32を有するとともに、第1突起4と対向する上面部3tにはんだに濡れやすい第2の層31を有し、はんだに濡れやすい第2の層31は、光軸Cに垂直な断面形状において、その端部3cが側面部3sに近づくほど第1突起4との間隔が広がるような曲線状に形成されるとともに、はんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層32の上端部まで延在するように構成したので、ヒートシンク2とレーザ媒質1とを接合する際に溶融したはんだ5が第2突起3と第1突起4との隙間34を満たすとともに、第2突起3の上面部3tの曲線状の端部3cと第1突起4間に形成される隙間34内に留まることになるので、レーザ媒質1とヒートシンク2との接合部分との断面積(光軸Cに垂直で厚み方向に垂直な方向の長さ)を一定にして排熱量を適切に制御でき、所望の熱レンズ効果により、安定したレーザ発振が可能なモード制御導波路型レーザ装置を得ることができる。
また、本実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質は、一面側にクラッド層7が形成され、クラッド層7の面上にレーザの光軸Cと平行に延びる複数の第1突起4が光軸Cに垂直な方向に所定の周期で配置されたレーザ媒質1と、第1突起4のそれぞれとはんだによって接合される複数の第2突起3が、レーザ媒質1のクラッド層7の面と対向する面側に形成されたヒートシンク2と、を備え、複数の第2突起3のそれぞれは、光軸Cと平行に延び、光軸Cに垂直な断面形状において、第1突起4と対向する上面部3tにおける端部3cが隣接する側面部3sに近づくほど第1突起4との間隔が広がるような曲線状に形成されるとともに、側面部3sに少なくともはんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層32と、第1の層32上に形成され、第1の層32の幅と同一または第1の層32の幅よりも広い上面部3t全体を覆うはんだに濡れやすい第2の層31と、を有するように構成したので、ヒートシンク2とレーザ媒質1とを接合する際に溶融したはんだ5が第2突起3と第1突起4との隙間34を満たすとともに、第2突起3の上面部3tの曲線状の端部3cと第1突起4間に形成される隙間34内に留まることになるので、レーザ媒質1とヒートシンク2との接合部分との断面積(光軸Cに垂直で厚み方向に垂直な方向の長さ)を一定にして排熱量を適切に制御でき、所望の熱レンズ効果により、安定したレーザ発振が可能なモード制御導波路型レーザ装置を得ることができる。
とくに、はんだに濡れやすい第2の層31は、光軸Cに垂直な断面形状において、第1の層32よりも外側に突出するので、面方向にはみ出たはんだ5によるはんだボールの形成を効果的に抑制できる。
また、本実施の形態1にかかる導波路型レーザ装置は、基本波レーザ光を発振する半導体レーザ10と、半導体レーザ10からの基本波レーザ光が光軸C方向における一方の端面1aから入射し、入射した基本波レーザ光に対して利得を発生させて他方の端面1bから発振する上記導波路型固体レーザ媒質と、前記導波路型固体レーザ媒質から発振された基本波レーザ光が光軸C方向における一方の端面11aから入射し、第2高調波レーザ光に変換して他方の端面から出力する非線形材料11と、を備えたので、安定したレーザ発振が可能となる。
なお、本実施の形態1において、レーザ媒質1の一面側にクラッド層7を形成したものを用いたが、レーザ媒質1の表面に直接第1突起4を形成してもよい。
実施の形態2.
図7に本発明の実施の形態2にかかる導波路型固体レーザ媒質の光軸Cと厚み方向(図2におけるV-V線による切断面に相当)での断面構造を示す。図において、ヒートシンク2Stの第2突起3Stの光軸C方向における長さは、端面3eがレーザ媒質1の端面1a、1bからそれぞれ50μmづつ内側の位置に入るように、第1突起4より短くしている。その他の構成においては、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
レーザ媒質1とヒートシンク2Stを接合する際、接合時の加熱で溶融したはんだ5は、はんだに濡れやすい層31Stを伝って光軸C方向にも流れ、線状の第2突起3Stの光軸C方向の端面3eからもはみ出てくる。はみ出たはんだ5は第2突起3Stより長く、はんだに濡れやすい第1突起4の方向に流れ、図に示すように端面3eから端面1aにかけて滑らかな曲線を描くはんだフィレット5fを形成し、レーザ媒質1の端面1aから外側へ突き出ることはなくなる。
つまり、本実施の形態2によれば、第2突起3Stの光軸C方向における端面3eがレーザ媒質1の光軸C方向における端面1aおよび1b内側に入るように第2突起3Stの光軸C方向の長さが第1突起4よりも短くなるように構成したので、ヒートシンク2とレーザ媒質1とを接合する際に溶融したはんだ5がレーザ媒質1の端面1aおよび1bから飛び出すことがなく、レーザ媒質1へのレーザ10からの励起光の入射や非材料線形材料11への射出を阻害することがなく、安定したレーザ出力が可能となる。
なお、本実施の形態では、第2突起3Stの長さを片側で50μm程度短くしたが、長さははんだ5の量とレーザ媒質1の搭載精度に依存して任意に調整してよい。また、搭載精度や他の部材との取り合いによって、どちらか一方の端面3eをレーザ媒質1の端面1aまたは1bより内側に入るように設定してもよい。
実施の形態3.
図8に本発明の実施の形態3にかかる導波路型固体レーザ媒質の光軸C方向および厚み方向(図2におけるV-V線による切断面に相当)での断面構造を示す。図において、ヒートシンク2Lrには、比抵抗が0.01Ωcm以下の低抵抗シリコンウエハを用いた。そのため、第2突起3Stを電気めっきで形成する時に必要な金属膜21Tnを薄くすることができ、通常1μm必要な膜厚に対し、本実施の形態の場合、金属膜21Tnの厚みを数十nmにまで薄くすることができた。他の構成については上記実施の形態1または2と同様であるので説明を省略する。
本実施の形態のように、ヒートシンク2Lrに低抵抗シリコンウエハを用いると、ヒートシンク2Lrを切り出す時に金属膜21Tnからの金属のばり21bの発生を防止できる効果があり、以下、説明する。
シリコンウエハのヒートシンク基板上に線状の第2突起3Stを作製する方法は、図6における説明と同様に、基板2Stの全面に金属膜21Stを形成した後、写真製版によりレジスト8をパターニングし、金属膜21Stを電極として少なくとも側面がはんだに濡れにくい層32Stとはんだに濡れやすい層31Stを電気めっきで形成し、上面部3tのみにはんだ5を付着する。その後レジスト8を剥離してから、線状の第2突起3St間をダイシングして、個片に分離する。
このダイシングの際、本実施の形態3と異なり、比抵抗が0.01Ωcmを超えるウエハを用いた場合、厚い金属膜21を使用する必要があるので、切断時に金属のばり21bが発生する。図9は、従来の厚い金属膜21Tkを用いたヒートシンク2Pの光軸C方向および厚み方向(図2のV−V線による切断面に相当)での断面図である。図に示すように切断によって生じた金属ばり21bが光軸C方向における両端部に現れている。さらに図10には、図9に示すような金属ばり21bが発生したヒートシンク2Pをレーザ媒質1と接合した際の導波路型固体レーザ媒質の断面図を示す。金属ばり21bが発生すると、第2突起3Stの光軸C方向の端面3eからはみ出たはんだ5が金属ばり21bにそって濡れ広がる。その結果、光軸Cに垂直な方向に間隔をあけて配置された金属突起部が光軸C方向の端部ではみ出たはんだ5によりつながってしまい、周期的な熱レンズが形成できなくなる。
一方、本実施の形態によれば、低抵抗シリコンウエハを使用することにより、薄い金属膜21Tnを用いることができたので、ばりの発生を抑えてはんだ5による第2突起3間がつながることを防止することができる。
つまり、本実施の形態3によれば、ヒートシンク2Lrに比抵抗が0.01Ωcm以下のシリコンウエハを用いたので、金属膜21Tnの厚みを薄くすることができ、ばりの発生を抑えて、熱設計とおりの排熱を実現し、所望の熱レンズ効果を得ることができる。
とくに、ヒートシンク2Lr上には、厚みが100nm以下の金属膜21Tnを形成したので、ばりの発生を効果的に抑制することができる。
なお、上記各実施の形態2、3にかかる導波路型固体レーザ媒質も実施の形態1と同様に半導体レーザや非線形材料と組み合わせて導波路型レーザ装置を構成することができる。
本発明の実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質の斜視図である。 本発明の実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質の構造を示す断面図である。 本発明の実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質の接合方法を示す断面図である。 本発明の実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質の金属突起部の接合工程における状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態1にかかる導波路型レーザ装置の構成を示す断面図である。 本発明の実施の形態1にかかる導波路型固体レーザ媒質の製造方法を示す断面図である。 本発明の実施の形態2にかかる導波路型固体レーザ媒質の断面図である。 本発明の実施の形態3にかかる導波路型固体レーザ媒質の断面図である。 従来の厚い金属膜を用いた導波路型固体レーザ媒質のヒートシンク部分の断面図である。 従来の厚い金属膜を用いた導波路型固体レーザ媒質の断面図である。
符号の説明
1 レーザ媒質 、1a、1b レーザ媒質の端面、 2、2Lr、2St ヒートシンク、 3、3St 第2突起、3t 第2突起の上面部、3s 第2突起の側面部、3c 第2突起の上面部の端部、3e 第2突起の端面、 4 第1突起、 5 はんだ、5f はんだフィレット、5r 余剰のはんだ、 6 支持板、 7 クラッド層 、 8 レジスト 、 10 半導体レーザ、 10a 半導体レーザの発振口、 11 非線形材料、 11a 非線形材料の端面、 21、21St、21Tn 金属膜、 31 はんだに濡れやすい層、 32少なくとも側面がはんだに濡れにくい層、 34 隙間、 81 レジスト開口部、 C レーザの光軸

Claims (7)

  1. 一面側にレーザの光軸と平行に延びる複数の第1突起が前記光軸に垂直な方向に所定の周期で配置されたレーザ媒質と、
    前記第1突起のそれぞれとはんだによって接合される複数の第2突起が、前記レーザ媒質の面と対向する面側に形成されたヒートシンクと、を備え、
    前記複数の第2突起のそれぞれは、前記レーザの光軸と平行に延び、前記光軸に垂直な断面形状において、側面部にはんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層を有するとともに、前記第1突起と対向する上面部にはんだに濡れやすい第2の層を有し、
    前記はんだに濡れやすい第2の層は、前記光軸に垂直な断面形状において、その端部が前記側面部に近づくほど前記第1突起との間隔が広がるような曲線状に形成されるとともに、前記はんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層の上端部まで延在する導波路型固体レーザ媒質。
  2. 一面側にレーザの光軸と平行に延びる複数の第1突起が前記光軸に垂直な方向に所定の周期で配置されたレーザ媒質と、
    前記第1突起のそれぞれとはんだによって接合される複数の第2突起が、前記レーザ媒質の面と対向する面側に形成されたヒートシンクと、を備え、
    前記複数の第2突起のそれぞれは、前記レーザの光軸と平行に延び、前記光軸に垂直な断面形状において、前記第1突起と対向する上面部における端部が隣接する側面部に近づくほど前記第1突起との間隔が広がるような曲線状に形成されるとともに、
    前記側面部に少なくともはんだに濡れにくい第1の表面を露出する第1の層と、
    前記第1の層上に形成され、前記第1の層の幅と同一または前記幅よりも広い前記上面部全体を覆うはんだに濡れやすい第2の層と、
    を有してなる導波路型固体レーザ媒質。
  3. 前記はんだに濡れやすい第2の層は、前記光軸に垂直な断面形状において、前記第1の層よりも外側に突出することを特徴とする請求項1または2に記載の導波路型固体レーザ媒質。
  4. 前記第2突起の前記光軸方向における少なくとも一方の端面は、前記レーザ媒質の前記光軸方向における端面より内側に入ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の導波路型固体レーザ媒質。
  5. 前記ヒートシンクは、比抵抗が0.01Ωcm以下のシリコンウエハで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の導波路型固体レーザ媒質。
  6. 前記ヒートシンクは、前記シリコンウエハの表面に厚さ100nm以下の金属膜が形成されたものであることを特徴とする請求項5に記載の導波路型固体レーザ媒質。
  7. 基本波レーザ光を発振する半導体レーザと、
    前記半導体レーザからの基本波レーザ光が前記光軸方向における一方の端面から入射し、入射した基本波レーザ光に対して利得を発生させて他方の端面から発振する請求項1ないし6のいずれかに記載の導波路型固体レーザ媒質と、
    前記導波路型固体レーザ媒質から発振された基本波レーザ光が前記光軸方向における一方の端面から入射し、第2高調波レーザ光に変換して他方の端面から出力する非線形材料と、
    を備えた導波路型レーザ装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011139011A (ja) * 2009-12-01 2011-07-14 Mitsubishi Electric Corp 平面導波路型レーザ装置および平面導波路型レーザ装置の製造方法
JP2012028710A (ja) * 2010-07-28 2012-02-09 Shimadzu Corp 光モジュールおよび固体レーザ装置
JP2012146902A (ja) * 2011-01-14 2012-08-02 Mitsubishi Electric Corp 平面導波路型レーザ装置およびその製造方法

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