JP2009146889A - 触媒インク、その製造方法及び保管方法、並びに燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】触媒被毒を十分に抑制し、高度の発電性能を可能とするMEAを実現できる触媒インク、該触媒インクの製造方法及び保管方法、並びに該触媒インクを用いてなる膜−電極接合体、燃料電池を提供する。
【解決手段】<1>固体高分子形燃料電池の触媒層を製造するための触媒インクであって、当該触媒インクの総重量に対する、有機アルデヒド及び有機カルボン酸の合計重量の割合が0.20重量%以下である触媒インク。
<2>触媒物質と溶媒とを、酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で接触させる触媒インクの製造方法。
<3>酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で触媒インクを保管する保管方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池の触媒層の製造に用いられる触媒インク、その製造方法及び保管方法、並びに該触媒インクを用いてなる膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池(以下、「燃料電池」という)は、住宅用途や自動車用途における発電機としての実用化が期待されている。燃料電池は、水素と空気の酸化還元反応を促進する触媒物質(白金等)を含む触媒層と呼ばれる電極を、イオン伝導を担うイオン伝導膜(高分子電解質膜)の両面に形成し、さらに該触媒層の外側にガスを効率的に触媒層に供給するためのガス拡散層を貼り合わせてなる。ここで高分子電解質膜の両面に触媒層を形成したものは、通常、膜−電極接合体(以下、「MEA」という)と呼ばれている。
かかるMEAは、(1)高分子電解質膜上に直接触媒層を形成する方法、(2)カーボンペーパー等のガス拡散層となる基材上に触媒層を形成した後に、該触媒層を高分子電解質膜と接合する方法、(3)支持基材上に触媒層を形成して、該触媒層を高分子電解質膜に転写した後、該支持基材を剥離する方法等を用いて製造される。なかでも、(3)の方法は、これまで、特に汎用的に用いられてきた方法である(例えば、特許文献1参照)。
前記(1)〜(3)の何れのMEA製造方法においても、触媒層を形成する際には、少なくとも触媒物質と溶媒とを含有し、超音波処理等により該触媒物質を該溶媒に分散させてなる液状組成物(以下、当技術分野で広範に用いられている「触媒インク」と称する)を使用する。具体的には、(1)の方法では、触媒インクを高分子電解質膜に直接塗工する工程において、(2)の方法では、ガス拡散層となる基材上に触媒インクを塗工する工程において、(3)の方法では、触媒インクを支持基材上に塗工する工程において、それぞれ触媒インクが使用されている。
ところで、燃料電池の発電特性を高めるためには、MEAの触媒層における、触媒物質に係る電気化学反応(触媒反応)を円滑に進行させる必要がある。その観点から、触媒物質の被毒(触媒被毒)を抑制する試みが種々行われている。例えば、触媒被毒が生じ難い触媒物質の開発や、触媒層に供給される燃料ガスの改質技術により触媒被毒を低減させる等が検討されている(例えば、特許文献2、3参照)。
特開平10−64574号公報 特開2003−36859号公報 特開2003−168455号公報
これまでの触媒被毒の抑制手段は何れも、燃料電池の使用過程で、経時的に生じる触媒被毒を抑制しようとする技術が主に検討されており、MEAの製造段階で生じる触媒被毒を抑制する技術はほとんど検討されていない。また、MEA製造に用いる触媒インクの構成成分によって触媒被毒を抑制するという技術についても、触媒物質以外の構成成分はほとんど検討されていない。
そこで本発明は、経時的に生じる触媒被毒だけでなく、触媒層製造段階で生じる触媒被毒を十分に抑制し得る触媒インク、その製造方法及び保管方法を提供し、さらに当該触媒インクを用いてなる高度の発電特性を備えたMEA及び燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の<1>を提供する。
<1>固体高分子形燃料電池の触媒層を製造するための触媒インクであって、当該触媒インクの総重量に対する、有機アルデヒド及び有機カルボン酸の合計重量の割合が0.20重量%以下である触媒インク
また、本発明は前記<1>に係る好適な実施態様として、以下の<2>〜<6>を提供する。
<2>溶媒として水を含有する、<1>の触媒インク;
<3>溶媒として一級アルコールを含有する、<1>又は<2>の触媒インク;
<4>触媒インクを構成する溶媒の総重量に対する、一級アルコール及び/又は水の合計重量の割合が90.0重量%以上である、<2>又は<3>の触媒インク;
<5>前記一級アルコールが炭素数1〜5のアルコールである、<3>又は<4>の触媒インク;
<6>前記有機カルボン酸又は前記有機アルデヒドが、101.3kPa下、300℃以下で気化する化合物である、<1>〜<5>の何れかの触媒インク;
さらに、本発明は前記何れかの触媒インクに係る以下の<7>〜<11>を提供する。
<7><1>〜<6>の何れかの触媒インクの製造方法であって、触媒物質と溶媒とを、酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で接触させる工程を有する、製造方法;
<8><1>〜<6>の何れかの触媒インクの保管方法であって、酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で保管する、保管方法;
<9><1>〜<6>の何れかの触媒インクで用いてなる触媒層;
<10><9>の触媒層を備える膜−電極接合体;
<11><10>の膜−電極接合体を有する固体高分子形燃料電池;
本発明の触媒インクによれば、触媒物質の触媒能を十分に発現し得る触媒層を製造することができる。そのため、より発電特性に優れたMEA及び燃料電池を得ることができる。また、該触媒層に用いられる、比較的高価な触媒物質の使用量を少量にすることも期待できるため、工業的に極めて有用である。
<触媒インク>
本発明の触媒インクは、触媒物質及び溶媒を含有する。また、本発明の触媒インクは、必要に応じて高分子電解質を含有する。そして、当該触媒インクは、その総重量に対して有機カルボン酸及び有機アルデヒド(以下、この有機カルボン酸及び有機アルデヒドを合わせて、「有機カルボニル化合物」ということがある)の合計重量の割合(以下、「重量含有率」ということがある)が0.20重量%以下であることを特徴とする。当該触媒インク中の有機カルボニル化合物の重量含有率は0.15重量%以下がより好ましく、0.10重量%以下が特に好ましい。
ここで、有機カルボン酸とは、分子内にカルボキシル基(−COOH)を有する化合物であり、典型的には炭化水素残基にカルボキシル基が結合されたものを意味する。また、このカルボキシル基が金属イオンやアンモニウムイオンと塩を形成していてもよい。
また、有機アルデヒドとは、分子内にアルデヒド基(−CHO)を有する化合物であり、典型的には炭化水素残基にアルデヒド基が結合されたものである。後述するように、MEAの製造過程に係る加熱処理等によって、容易にアルデヒド基となり得るアセタール基又はヘミアセタール基を有する化合物、解重合によって有機アルデヒドを生成し得る化合物であってもよい。なお、このような有機アルデヒドを生成し得る前駆体(有機アルデヒド前駆体)が触媒インクに含有される場合は、この有機アルデヒド前駆体が有機アルデヒドに転化した後の重量から、重量含有率を求める。
本発明者らは、このような有機カルボニル化合物は、触媒物質を極めて被毒し易く、該有機カルボニル化合物が残留している触媒層を備えたMEAは、その製造直後から、本来触媒物質が有している触媒能が損なわれているということを見出した。そして、有機カルボニル化合物の重量含有率の合計が、前記の範囲である触媒インクは、該触媒インクを用いて製造される触媒層に含有される触媒物質の被毒(触媒被毒)を十分に抑制して、触媒物質が本来有している触媒能を効率的に発現できることを見出すに至った。また、このように有機カルボニル化合物の重量含有率を低減した触媒インクを用いて得られる触媒層を備えたMEAは、当該MEAの製造直後において、触媒物質の触媒能が十分維持されるだけでなく、当該MEAを用いてなる燃料電池の経時的な使用によっても、触媒物質の触媒能低下を抑制することも期待される。
また、さらに本発明者らが検討したところ、有機カルボニル化合物の中でも、101.3kPa(1気圧)下300℃以下で気化する有機カルボニル化合物は、特に触媒物質の触媒被毒を生じさせ易い傾向があることが判明した。したがって、このような有機カルボニル化合物を低減化した触媒インクが、本発明の目的を達成する上で、特に好ましい。なお、300℃以下で気化する有機カルボニル化合物とは、沸点が300℃以下である有機カルボニル化合物を意味するだけでなく、300℃以下で有機カルボニル化合物に転化し、転化した有機カルボニル化合物が気化し得るものを含む概念である。
このように、より低温で気化する有機カルボニル化合物であるほど、燃料電池の作動によって触媒層が加温された場合、有機カルボニル化合物が気化等によって、触媒層内に拡散し、当該触媒層における広範囲の触媒物質を被毒するといった不都合が生じる。かかる不都合を回避するためにも、前記触媒インクに関し、300℃以下で気化する有機カルボニル化合物の重量含有率を低減化することが好ましく、200℃以下で気化する有機カルボニル化合物の重量含有率を低減化することが、より好ましい。なお、300℃以下では気化しない有機カルボニル化合物は、比較的分子量が高くなり、触媒物質に対する吸着性が低くなるためか、触媒物質の触媒能を低下させる傾向が低いと推定される。
ここで、有機カルボニル化合物を具体的に説明する。
有機カルボン酸としては、触媒被毒がより生じやすい点において、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸等の炭素数が1〜5の有機カルボン酸が挙げられ、このような有機カルボン酸の重量含有率を低減化することが好ましい。また、既述のように、これら有機カルボン酸は金属イオン等により塩を形成するものも挙げられる。
一方、有機アルデヒドとしては、触媒被毒がより生じやすい点において、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、吉草酸アルデヒド、イソ吉草酸アルデヒド等の炭素数が1〜5の有機アルデヒドが挙げられ、このような有機アルデヒドの重量含有率を低減化することが好ましい。また、既述のようにこれら有機アルデヒドは、アルデヒド基が適当なアルコールと反応して、アセタール基やヘミアセタール基となっているものも挙げられる。
本発明の触媒インクは溶媒を含有する。該溶媒としては超音波処理等の公知の方法により、触媒物質を分散できるものであり、有機カルボニル化合物以外であれば、公知の溶媒が使用可能である。
本発明の触媒インクは、その溶媒として水を含有すると好ましい。水は触媒物質の触媒被毒をほとんど生じさせないという点と、発火等の危険性が低下するという点から好ましく使用される。
また、本発明の触媒インクに用いる溶媒としては、粒子状白金等の触媒物質の凝集が抑制されるという点、沸点が比較的低温なため、触媒層を形成し易いという点から一級アルコールを含むと好ましい。反面、この一級アルコールは、触媒物質の作用により有機カルボニル化合物に転化し易いという問題があるが、後述する本発明の触媒インクの製造方法によれば、該一級アルコールの有機カルボニル化合物への転化を良好に抑制することができる。また、後述する本発明の触媒インクの保管方法によれば、触媒インク中で、経時的に生じる有機カルボニル化合物の生成も良好に抑制して、触媒インクの経時的な劣化も防止することができる。なお、この一級アルコールとしては、炭素数1〜5のアルコールが好ましい。このような一級アルコールを含む触媒インクは、該触媒インクを用いて触媒層を製造する際に、該一級アルコールが揮発除去し易いものであるので、触媒層中にこのような一級アルコールが残存するという不都合を良好に回避することができる。また、触媒インクの溶媒として水を合わせて用いる場合、水との混和性という点から見れば、炭素数1〜4のアルコールがさらに好ましい。具体的に好適な一級アルコールを例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンが挙げられる。また、本発明の触媒インクに用いる溶媒として、水と一級アルコールとを合わせて用いる場合、該溶媒の総重量に対し、水の含有割合が、5重量%以上であると、触媒インク調合時の安全性が向上するという点で好ましい。より具体的にいえば、該溶媒の総重量に対し、水の含有割合は5〜95重量%であると好ましく、10〜90重量%であるとさらに好ましい。一方、該溶媒の総重量に対し、一級アルコールの含有割合は5重量%以上であると、既述のように触媒物質の凝集が十分抑制されるため好ましく、より具体的にいえば、該溶媒の総重量に対し、一級アルコールの含有割合は5〜95重量%であると好ましく、10〜90重量%であるとさらに好ましい。
また、本発明の触媒インクに用いる溶媒は、三級アルコールを含有していてもよい。該三級アルコールは、触媒被毒を生じさせる有機カルボニル化合物を生成させ難いという利点がある。この理由については必ずしも明らかではないが、本発明者らは次にように推定している。すなわち、三級アルコールのうち、揮発性であるものは、後述する触媒層の製造方法により揮発除去し易いことから触媒層中に残留しにくく、仮に、揮発除去しきれなかったり、揮発性の低い三級アルコールを用いたり、した場合においても、触媒層中に残留した三級アルコールは、触媒物質を著しく被毒することはない。これは三級アルコールが比較的、化学的な安定性に優れることから、触媒物質の作用により酸化して、有機カルボニル化合物に転化され難いためと推定される。
前記三級アルコールは、典型的には下記化1で表される化合物である。
Figure 2009146889
ここで、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基、又は該アルキル基の一部の水素原子がハロゲン原子で置換されてなるハロゲン化アルキル基を示す。なお、炭素数3のアルキル基又は炭素数3のハロゲン化アルキル基においては、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。R1、R2及びR3において、その炭素数を合計したとき、8以下であることが好ましい。かかる炭素数の合計は、当該三級アルコールの沸点を勘案して選択することができる。当該三級アルコールの101.3kPa(1気圧)における沸点は、50℃以上200℃以下であると好ましく、50℃以上150℃以下であるとより好ましい。当該沸点が、この範囲である三級アルコールは、比較的除去し易く、触媒層に残留し難くなるという利点がある。
具体的に、好適な3級アルコールを例示すると、t−ブチルアルコール、1,1−ジメチルプロピルアルコール、1,1−ジメチルブチルアルコール、1,1,2−トリメチルプロピルアルコール、1−メチル−1−エチルプロピルアルコール等が挙げられる。
また、上述のように、ハロゲン化アルキル基を有する三級アルコールを用いることもできるが、環境的な配慮からは、分子内にハロゲン原子を有さない三級アルコールが好ましい。
本発明の触媒インクは、上述のように、その溶媒として水及び/又は一級アルコールを含有すると好ましく、その他の溶媒として例えば、三級アルコール等を含有させることができる。なお、好適な溶媒である水又は一級アルコールの使用量は、触媒インクの溶媒の総重量に対する、水及び一級アルコールの合計重量の割合で表して、5重量%以上であると好ましく、10重量%以上であるとさらに好ましく、50重量%以上であると一層好ましく、90重量%以上であると特に好ましい。
前記触媒インクに含有される触媒物質としては、燃料電池用の触媒層に用いられる公知のものが挙げられる。例えば、白金又は白金を含む合金(白金―ルテニウム合金、白金―コバルト合金等)、錯体系電極触媒(例えば、高分子学会燃料電池材料研究会編、「燃料電池と高分子」、103頁〜112頁、共立出版、2005年11月10日発行に記載のもの)等が挙げられる。また、触媒物質としては、触媒層における電子の輸送を容易にするため、前記に例示した触媒物質を、担体の表面に担持させてなる触媒担持体の形態であってもよい。この担体としては導電性材料を主として含むものが好適であり、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等の導電性カーボン材料、酸化チタン等のセラミック材料が挙げられる。
本発明の触媒インクは、高分子電解質を含有することが好ましい。この高分子電解質は、イオン伝導を担うものであり、該触媒インクに高分子電解質を含有させることによって、得られる触媒層の触媒反応が一層効率的に進行するため、燃料電池の発電性能をより一層向上させることができる。
なかでも、より高効率の触媒反応を発現させる観点からは、強酸性基を有する高分子電解質が好ましい。ここで強酸性基とは、酸解離定数pKaが2以下の酸性基であり、具体的には、スルホン酸基(−SO3H)、スルホンイミド基(−SO2NHSO2−)が挙げられる。また、強酸性基をフッ素原子等の電子求引性効果により強酸性基の酸性度をさらに高めてなる超強酸性基を有するものでもよい。このような超強酸性基としては、例えば、−Rf1−SO3H(ただし、Rf1は水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えたアルキレン基、若しくは水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えたアリーレン基を表す。)、−SO2NHSO2−Rf2(ただし、Rf2は水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えたアルキル基、若しくは水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えたアリール基を表す。)が挙げられる。これらの強酸基や超強酸基の中でも、スルホン酸基が特に好ましい。
さらに、このような好適なイオン交換基を有する高分子電解質は、前記触媒物質を強固に結着させ得るバインダー機能を有するので、得られる触媒層の機械強度がより一層高くなる。
このような高分子電解質の具体例としては、例えば、下記の(A)〜(F)で表される高分子電解質が挙げられる。
(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子に、スルホン酸基を導入した高分子電解質、
(B)主鎖が脂肪族炭化水素からなり、該主鎖の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換された高分子に、スルホン酸基を導入した高分子電解質、
(C)主鎖に芳香環を有する高分子に、スルホン酸基を導入した高分子電解質、
(D)主鎖に、シロキサン基やフォスファゼン基等の無機の単位構造を含む高分子にスルホン酸基を導入した高分子電解質、
(E)(A)〜(D)で挙げた高分子の主鎖を構成する繰り返し単位の2種以上を組み合わせた共重合体に、スルホン酸基を導入した高分子電解質、
(F)主鎖や側鎖に窒素原子を含む炭化水素系高分子に、硫酸やリン酸等の酸性化合物をイオン結合により導入した高分子電解質
具体的に、前記(A)〜(F)で現れる高分子電解質を例示する。
前記(A)の高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸が挙げられる。
前記(B)の高分子電解質としては、Nafion(デュポン社製、登録商標)、Aciplex(旭化成社製、登録商標)、Flemion(旭硝子社製、登録商標)等が挙げられる。また、特開平9−102322号公報に記載された炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって形成された主鎖と、スルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成されるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)や、米国特許第4,012,303号公報又は米国特許第4,605,685号公報に記載された、炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合によって形成された共重合体に、α,β,β−トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホン酸基を導入して固体高分子電解質膜としたスルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE重合体も挙げられる。
前記(C)の高分子電解質は、主鎖に酸素原子等のヘテロ原子を含むものであってもよい。このような高分子電解質としては、例えば、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4−フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホン酸基が導入されたものが挙げられる。具体的には、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報参照)等が挙げられる。
前記(D)の高分子電解質としては、例えば、ポリフォスファゼンにスルホン酸基が導入されたもの等が挙げられる。これらは、Polymer Prep.,41,No.1,70(2000)に準じて容易に製造することができる。
前記(E)の高分子電解質は、ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたもの、交互共重合体にスルホン酸基が導入されたもの、ブロック共重合体にスルホン酸基が導入されたもののいずれであってもよい。例えば、ランダム共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、特開平11−116679号公報に記載されたようなスルホン化ポリエーテルスルホン重合体が挙げられる。また、ブロック共重合体にスルホン酸基が導入されたものとしては、特開2001−250567号公報に記載されたようなスルホン酸基を含むブロックを有するブロック共重合体が挙げられる。
前記(F)の高分子電解質としては、例えば、特表平11−503262号公報に記載されたようなリン酸を含有させたポリベンズイミダゾールが挙げられる。
このように高分子電解質としては、フッ素系高分子電解質や炭化水素系高分子電解質のいずれも使用することができる。
前記(B)のフッ素系高分子電解質は、既述のように種々の市販品があり、容易に入手できるという点で好ましい。
一方、リサイクルが容易であり、しかも、触媒層における電気反応をより高効率にする観点からは、前記の中でも、(A)、(C)、(D)、(E)又は(F)で示されている炭化水素系高分子電解質を用いると好ましい。なお、当該炭化水素系高分子電解質とは、高分子電解質中に含まれるハロゲン原子の量が高分子電解質全体の重量を基準として15重量%以下である高分子電解質を意味する。さらに、後述するように、より優れた特性を有する膜−電極接合体を作製する上で、高分子電解質膜(イオン伝導膜)として、発電性能にも耐久性にも優れた芳香族系高分子電解質膜を用いる場合、触媒層に用いる高分子電解質は、前記(E)が好ましい。このようにすると、高分子電解質膜と触媒層との接着性が、より良好となる傾向があり、その結果として発電性能が高くなる。なかでも、より高度の発電性能と耐久性とを両立させるためには、前記(E)の中でもスルホン酸基等のイオン交換基を有しないセグメントと、スルホン酸基を有するセグメントからなるブロック共重合体が好ましい。
前記高分子電解質は、その分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、「GPC法」と呼ぶ)によるポリスチレン換算の重量平均分子量で表して、1000〜2000000が好ましく、5000〜1600000がより好ましく、10000以上1000000以下がさらに好ましい。該重量平均分子量が前記の範囲であると、触媒層の機械強度が良好となる傾向がある。
また、前記高分子電解質のイオン交換容量(IEC)としては、0.8〜6.0meq/gであると好ましく、1.0〜4.5meq/gの高分子電解質であるとより好ましく、1.2〜3.0meq/gの高分子電解質であるとさらに好ましい。IECが、この範囲であると優れた発電性能を有することに加え、耐水性に極めて優れた触媒層が得られるという利点がある。
前記の、好適なIECの高分子電解質を得る方法としては、(a)予め、イオン交換基を導入できる部位を有する高分子を製造し、かかる高分子にイオン交換基を導入して高分子電解質を製造する方法や、(b)イオン交換基を有する化合物をモノマーとして使用し、該モノマーを重合することで高分子電解質を製造する方法が挙げられる。このような製造方法を用いて、特定のIECの高分子電解質を得るためには、(a)では、イオン交換基を高分子に導入する反応剤の、高分子に対する使用量比を主としてコントロールすることで、容易に実施することができる。(b)では、イオン交換基を有するモノマーが誘導する高分子電解質の繰り返し単位のモル質量とイオン交換基数から容易にコントロールすることができる。あるいはイオン交換基を有さないコモノマーを併用して共重合する際には、イオン交換基を有さない繰り返し単位と、イオン交換基を有する繰り返し単位と、その共重合比率を勘案して、IECをコントロールすることができる。
<触媒インクの製造方法>
本発明の触媒インクは、例えば、前記の触媒物質と、一級アルコール及び/又は水を含む溶媒と、前記高分子電解質とを混合することで得られる。この触媒物質は、触媒インクにおいて、通常溶媒に分散している。一方、該高分子電解質は溶媒に溶解していても、溶媒に分散していてもよい。なお、高分子電解質として炭化水素系高分子電解質を使用する場合は、該高分子電解質が溶媒に分散していると好ましい。ここで、該触媒物質と、該高分子電解質とを、溶媒に分散させる際には、その分散安定性をより良好とするために、予め、該高分子電解質を該溶媒に分散させてなる高分子電解質エマルションを作製し、当該高分子電解質エマルションに、触媒物質を添加することで触媒インクを製造することが好ましい。また、より分散安定性を良好にしたり、粘度を調整したりするために、触媒物質を添加した後に、溶媒を追加することもできる。
さらに、触媒インクには、目的とする触媒層の特性に応じて、添加剤を加えてもよい。この添加剤としては、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、密着助剤、離型剤、保水剤、無機又は有機の粒子、増感剤、レベリング剤、着色剤等が挙げられる。かかる添加剤を使用する場合、本発明の目的とする触媒物質の電気反応を著しく損なわない範囲、すなわち適用した触媒物質の被毒が生じない範囲で選択する必要がある。該添加剤が、触媒物質を被毒するかどうかは、例えば、サイクリックボルタンメトリー法等の公知の方法によって確認することができる。
前記のような、高分子電解質エマルションの調製や触媒インクの製造は、分散安定性を良好にする観点から、超音波分散装置、ホモジナイザー、ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル等が用いられる。
次に本発明の触媒インクを製造する好適な製造方法に関し、説明する。
触媒インクを製造するに当たっては、不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましく、具体的には酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。特に、触媒インクを製造する溶媒として、一級アルコールを用いる場合は、不活性ガスの雰囲気下で行うことが、特に好ましい。触媒インクとして、一級アルコールを溶媒として使用する触媒インクは従来から公知であったが、その製造においては、予め溶媒が投入されている混合装置に、触媒物質等を添加する際に、該混合装置にある添加口を環境雰囲気に開放することがあった。そうすると、環境雰囲気中の酸素が混合装置に侵入することとなり、一級アルコール等は有機カルボニル化合物に転化され、その触媒インクの有機カルボニル化合物の含有割合は0.20重量%を超えることとなる。本発明の触媒インクの製造方法では、かかる不都合を避けるために、溶媒と触媒物質との接触を不活性ガスの雰囲気下で行うものである。その製造方法について一例を挙げると、予め触媒物質を粉体添加装置(ホッパー等)に、溶媒を混合装置に、それぞれ仕込み、粉体添加装置内及び混合装置内の雰囲気を不活性ガスで置換して、両装置内の雰囲気を、所定の酸素濃度にした後、粉体添加装置から触媒物質を混合装置内の溶媒に添加するという方法が挙げられる。さらに、触媒物質と溶媒とを接触させる工程においても、不活性ガスを通風させたり、不活性ガスを溶媒にバブリングさせたり、すると好ましい。また、触媒インクにおいて、溶媒及び触媒物質以外の添加剤等を用いる場合、予め、該添加剤等を混合装置内で溶媒と混合しておいても、触媒物質と同じ粉体添加装置に仕込み、触媒物質と一緒に混合装置内に投入しても、いずれでもよいが、操作がより簡便になる点で、前者が好ましい。
実験的操作の場合は、触媒インク製造に用いる原料、装置を全て、グローブボックスやグローブバッグ等の不活性ガスで置換された雰囲気を保持可能な処理室に入れ、該処理室の雰囲気を不活性ガスで十分置換してから、該処理室中で、触媒インクを製造する方法を挙げることができる。このような処理室を用いると、該処理室中を十分に不活性ガスで置換できるので、操作はより簡便になるという利点がある。
このような不活性ガスとしては、具体的は窒素、若しくはアルゴン等の希ガスが挙げられる。また、不活性ガス雰囲気は、酸素が十分に除去されていると好ましく、酸素濃度が、0.8体積%以下がより好ましく、0.5体積%以下であるとさらに好ましい。なお、この酸素濃度は、ジルコニア酸素センサー型濃度計を用いて計測することができる。このジルコニアセンサー型酸素濃度計は比較的低濃度の酸素濃度を高感度で感知することができる。また、該不活性ガスは、水分も十分に除去された乾燥ガスであるとより好ましい。
溶媒と触媒物質とを接触・混合した後、該溶媒に該触媒物質をより分散させるために適当な方法により攪拌等することが好ましい。この場合の攪拌等には、たとえば超音波分散装置、ホモジナイザー、ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル等という手段を用いることができる。また、溶媒と触媒物質とを攪拌等する際の温度条件は、25℃以上溶媒の沸点未満の温度範囲から選択され、25℃から溶媒の沸点より5℃小さい温度までの範囲が好ましい。また、攪拌等する際の時間は、1分〜24時間の範囲、好ましくは10分〜10時間の範囲から選択される。
<触媒インクの保管方法>
また、前記のようにして製造された触媒インクは、製造後の取り出しや保管の一連の操作においても、不活性ガス雰囲気が保持されていると好ましい。特に、長期間に渡って触媒インクを保管する場合は、前記のような不活性ガスで置換された雰囲気を保持可能な処理室で保管する方法や、触媒インクを入れた容器に不活性ガスを加圧充填し、該容器を密閉するといった保管方法が好ましい。なお、容器に不活性ガスを充填するときは、該容器の耐圧性を勘案してから、充填量(充填圧)を決定することが必要である。
<触媒層の製造方法>
次に、本発明の触媒インクを用いたMEA(燃料電池)の製造方法に関し説明する。当該触媒インクを用いたMEAの製造方法は公知の方法を用いることができる。すなわち、
(1)高分子電解質膜上に直接触媒層を形成する方法、
(2)カーボンペーパー等のガス拡散層となる基材上に触媒層を形成した後に、該触媒層を高分子電解質膜と接合する方法、
(3)支持基材上に触媒層を形成して、該触媒層を高分子電解質膜に転写した後、該支持基材を剥離する方法
の何れも適用することができる。
本発明の触媒インクを用いれば、これら何れの方法によっても、極めて良好に触媒被毒を抑制し得る触媒層、及び該触媒層を備えたMEAを製造することができる。
本発明の触媒インクを用いて製造される触媒層は、触媒被毒を誘発する有機カルボニル化合物の含有量をより良好に低減させることができる。具体的には、該触媒層の総重量に対する有機カルボニル化合物の重量含有率で表して、1.5重量%以下の触媒層が製造可能である。該触媒層の有機カルボニル化合物の重量含有率は、1.3重量%以下、1.0重量%以下、0.8重量%以下、0.5重量%以下、又は0.3重量%以下であるとより一層好ましい。
好適な実施形態に係るMEA、燃料電池及びその製造方法について、図を参照して説明する。
図1は、好適な実施形態の燃料電池の断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、燃料電池10は、高分子電解質膜からなる高分子電解質膜12(イオン伝導膜)の両側に、これを挟むように触媒層14a,14b、ガス拡散層16a,16b及びセパレータ18a,18bが順に形成されている。高分子電解質膜12と、これを挟む一対の触媒層14a,14bとにより、MEA20が構成される。
まず、燃料電池10における高分子電解質膜12について詳細に説明する。
高分子電解質膜12は、高分子電解質が膜状に成形されたものであり、この高分子電解質としては、酸性基を有する高分子電解質、塩基性基を有する高分子電解質のいずれも適用することができるが、上述した触媒層に適用する好適な高分子電解質と同様に、酸性基を有する高分子電解質を用いると、発電性能が、より優れた燃料電池が得られるため好ましい。該酸性基は、前記に例示したものと同様であり、なかでもスルホン酸基が特に好ましい。
かかる高分子電解質の具体例としても、上述した(A)〜(F)の高分子電解質が挙げられる。なかでも、リサイクル性やコストの面から、炭化水素系高分子電解質が好ましい。なお、「炭化水素系高分子電解質」の定義は上述の定義と同じである。高い発電性能と耐久性を両立させる観点からは、前記の(C)又は(E)において、高分子電解質の主鎖が、主として芳香族基が連結してなる高分子、すなわち芳香族系高分子電解質が好ましい。芳香族系高分子電解質の酸性基は、その主鎖を構成している芳香環に直接置換していてもよく、主鎖を構成している芳香環に所定の連結基を介して結合していてもよく、それらを組み合わせて有していてもよい。
該芳香族系高分子電解質としては、溶媒に可溶であると好ましい。このように溶媒に可溶の芳香族系高分子電解質は、公知の溶液キャスト法により、容易に膜状に成形することが可能であり、所望の膜厚の高分子電解質膜を形成することができるという利点もある。
ここで、「芳香族基が連結してなる高分子」とは、例えば、ポリアリーレンのように2価の芳香族基同士が連結して主鎖を構成しているものや、2価の芳香族基が他の2価の基を介して連結して主鎖を構成しているものである。後者の場合、芳香族基を結合する2価の基としては、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミド基、エステル基、炭酸エステル基、炭素数1〜4程度のアルキレン基、炭素数1〜4程度のフッ素置換アルキレン基、炭素数2〜4程度のアルケニレン基、炭素数2〜4程度のアルキニレン基が挙げられる。
2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフタレン基、アトラセニレン基、フルオレンジイル基等の炭化水素芳香族基や、ピリジンジイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、イミダゾリル基、インドールジイル基、キノキサリンジイル基等の芳香族複素環基が挙げられる。また、2価の芳香族基は、前記の酸性基以外の置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
特に好適な芳香族系高分子電解質としては、高分子電解質膜として、酸性基を有するドメインと、イオン交換基を実質的に有しないドメインとを併せ持ち、相分離、好ましくはミクロ相分離したものが得られるものが好ましい。前者のドメインは、プロトン伝導性に寄与し、後者のドメインは、機械的強度に寄与する。ここでいうミクロ相分離構造とは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したときに、酸性基を有するブロックの密度がイオン交換基を実質的に有さないブロックの密度よりも高い微細な相(ミクロドメイン)と、イオン交換基を実質的に有さないブロックの密度が酸性基を有するブロックの密度よりも高い微細な相(ミクロドメイン)とが混在しており、各ミクロドメイン構造のドメイン幅(恒等周期)が数nm〜数100nmであるような構造を指す。前記芳香族系高分子電解質としては、5nm〜100nmのドメイン幅を有するミクロドメイン構造を有する膜を形成し得るものが好ましい。
なお、上述したミクロ相分離構造の膜を形成し易い芳香族系高分子電解質としては、前記の(C)、(E)の高分子電解質のように、酸性基を有するブロックと、実質的にイオン交換基を有しないブロックを有し、その共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合の芳香族系高分子電解質が好適である。これらは、異種のポリマーブロック同士が化学結合で結合されていることによって、分子鎖サイズのオーダーでの微視的相分離が生じ易いことから、ミクロ相分離構造の膜を良好に形成することができる。なかでも、ブロック共重合体が好適である。
ここで、「酸性基を有するブロック」とは、かかるブロックを構成している繰り返し単位1個あたりに、酸性基が平均0.5個以上含まれているブロックであることを意味し、繰り返し単位1個あたりで平均1.0個以上含まれているブロックであるとより好ましい。一方、「イオン交換基を実質的に有しないブロック」とは、かかるブロックを構成している繰り返し単位1個あたり、イオン交換基が平均0.5個未満であるセグメントであり、繰り返し単位1個あたり平均0.1個以下であるとより好ましく、平均0.05個以下であるとさらに好ましい。
高分子電解質膜12に好適なブロック共重合体の例としては、前記に例示したブロック共重合体が挙げられるが、本出願人が特開2007−177197号公報で開示したブロック共重合体は、イオン伝導性と耐水性を高水準で達成する高分子電解質膜を形成できるため、とりわけ好ましい。
高分子電解質膜12を構成する高分子電解質の分子量は、その構造に応じて最適範囲を適宜設定することが好ましいが、例えば、GPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量で、1000〜1000000であると好ましい。該分子量は、5000〜500000であるとさらに好ましく、10000〜300000がより好ましい。
さらに、高分子電解質膜12は、前記の高分子電解質に加え、所望の特性に応じて、プロトン伝導性を著しく低下させない範囲であれば他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、通常の高分子に添加される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤が挙げられる。また、高分子電解質膜12としては、その機械的強度を向上させる目的で、高分子電解質と所定の支持体とを複合化した複合膜を用いることもできる。支持体としては、フィブリル形状や多孔膜形状等の基材が挙げられる。
以下、再び図1を参照して好適な実施形態の燃料電池について説明する。
前記の高分子電解質膜12に隣接する触媒層14a,14bは、実質的に燃料電池における電極層として機能する層であり、これらのいずれか一方がアノード触媒層となり、他方がカソード触媒層となる。本発明においては、該アノード触媒層、該カソード触媒層の少なくとも一方、特に好ましくは両方の触媒層において、有機カルボニル化合物の含有重量比を前記の範囲とする。
ガス拡散層16a,16bは、MEA20の両側を挟むように設けられており、触媒層14a,14bへの原料ガスの拡散を促進するものである。このガス拡散層16a,16bは、電子伝導性を有する多孔質材料により構成されるものが好ましい。例えば、多孔質性のカーボン不織布やカーボンペーパーが、原料ガスを触媒層14a,14bへ効率的に輸送することができるため、好ましい。これらの高分子電解質膜12、触媒層14a,14b及びガス拡散層16a,16bから膜−電極−ガス拡散層接合体(MEGA)が構成される。
セパレータ18a,18bは、電子伝導性を有する材料で形成されており、かかる材料としては、例えば、カーボン、樹脂モールドカーボン、チタン、ステンレス等が挙げられる。このセパレータ18a,18bは、図示しないが、ガス拡散層16a,16b側に、燃料ガス等の流路となる溝が形成されていると好ましい。
なお、燃料電池10は、上述した構造を有するものを、ガスシール体等で封止したものであってもよい(図示せず)。さらに、前記構造の燃料電池10は、直列に複数個接続して、燃料電池スタックとして実用に供することもできる。これらの構成を有する燃料電池は、燃料が水素である場合は固体高分子型燃料電池として、また燃料がメタノール水溶液である場合は直接メタノール型燃料電池として動作することができる。
有機カルボニル化合物の重量含有率を低減した本発明の触媒インクを用いることによって、有機カルボニル化合物の重量含有率を低減した触媒層及び該触媒層を備えたMEAを得ることができる。このような有機カルボニル化合物の重量含有率を低減した触媒層及び該触媒層を備えたMEAでは、触媒物質の被毒が十分に抑制され、触媒物質が本来有している触媒能を効率的に発揮することができる。そのため、この触媒層及びMEAを用いることによって、発電特性に優れた燃料電池を製造することができる。
次に、本発明の触媒インクで製造された触媒層及び該触媒層を備えたMEAにおいて、有機カルボニル化合物の含有重量率を測定する方法について説明する。まず、MEAから触媒層を機械的に分離する。実験的には、スパーテルなどを用いて触媒層をこそぎ落とせばよい。次いで、分離された触媒層(以下、「分離触媒層」という。)の重量を測定する。この分離触媒層に対し、適当な溶媒を抽出溶媒として用い、抽出溶媒と分離触媒層とを浸漬等により接触させる。分離触媒層に含有されている有機カルボニル化合物を抽出溶媒に抽出し、測定サンプルを作製する。抽出効率を上げるために、分離触媒層を粉砕等によって細粉化してもよい。また、抽出後に不溶分である触媒物質等を固液分離等で分離してもよい。当該固液分離としては、例えばPTFE製フィルター(目開き:0.45μm)を用いてろ別したり、遠心分離法による分離したり、することが有効である。そして、得られた測定サンプルを分離分析によって、有機カルボニル化合物を定量する。分離分析としては、検出感度が高いガスクロマトグラフィー法が好ましく使用できる。また、より検出感度を向上するために、測定サンプルを適宜濃縮してもよい。そして、分離した触媒層の重量と、前記分離分析で求められた有機カルボニル化合物の定量値から、触媒層中の有機カルボニル化合物の重量含有率を求め、有機カルボニル化合物が複数検出された場合は、その合計を求める。
また、MEAの両面にある触媒層のそれぞれにおいて、有機カルボニル化合物の重量含有率の合計を求める場合は、前記で説明した、有機カルボニル化合物の重量含有率の測定に係る、一連の操作を両面の触媒層について行えばよい。
また、MEAにおいて、有機カルボン酸及び有機アルデヒドの重量含有量を測定する方法についても説明しておく。この場合は、MEAから触媒層を分離するといった操作を行わなくてもよいので、より簡便である。
つまり、測定に供するMEAの総重量を測定し、次いで、適当な溶媒を抽出溶媒として用い、MEAを抽出溶媒と接触させて、有機カルボニル化合物を抽出溶媒に抽出し、前記と同じようにして、有機カルボニル化合物の重量含有率を定量する。この場合においても、抽出効率を上げるために、予めMEAを裁断したり、粉砕等の手段により細粉化したり、してもよい。
次に、MEAにおける有機カルボニル化合物の重量含有率を定量するための、別の方法について説明する。
測定に供するMEAの総重量を測定し、次いで、ヘッドスペース型の試料台を備えたガスクロマトグラフィー装置にてMEAを加熱し、気相状態の有機カルボニル化合物を発生させ、前記と同じようにして定量する。
このような有機カルボニル化合物の重量含有率の測定方法において、触媒層又はMEAの製造に係り、使用した有機カルボニル化合物(触媒インクに含有されている有機カルボニル化合物、高分子電解質膜を製造する際に使用した有機カルボニル化合物等)について、その重量含有率を求める場合は、このような有機カルボニル化合物の検量線を予め決定しておけば、容易に測定サンプルの有機カルボニル化合物の重量含有率を求めることができる。触媒層に含有される、有機カルボニル化合物の種類が不明である場合は、MEA又は触媒層から有機カルボニル化合物を抽出する一連の操作において、異なった抽出溶媒を用いた複数の抽出操作を行い、それぞれ得られた測定サンプルをガスクロマトグラフィー法により測定して検出された有機カルボニル化合物を定量する。このようにすれば、仮に触媒層に含有される有機カルボニル化合物が抽出溶媒と分離分析で分離困難であったとしても、他の抽出溶媒を用いた測定サンプルにより、有機カルボニル化合物の検出と定量を実施することが可能となる。また、このように有機カルボニル化合物の種類が不明である場合、抽出溶媒に該揮発性有機化合物が難溶又は不溶であることもあるので、少なくとも2種類以上の抽出溶媒を用いることが好ましい。なお、抽出溶媒としては、水、水−三級アルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)から選ばれる溶媒が好ましく、DMF,NMPから選ばれる溶媒がより好ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(酸素濃度の測定法)
ジルコニアセンサー型酸素濃度計(東レエンジニアリング製 LC-750/PC-111)を使用して、測定した。
(重量平均分子量の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、ポリスチレン換算を行うことによって高分子電解質の数平均分子量、重量平均分子量を算出した。GPCの測定条件は下記のとおりである。
GPC条件
・カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR-M
・カラム温度 40℃
・移動相溶媒 ジメチルホルムアミド
(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
・溶媒流量 0.5mL/min
(イオン交換容量の測定方法)
測定に供する高分子電解質を酸性基が遊離酸の形態の膜(高分子電解質膜)に加工し、この高分子電解質膜の乾燥重量を加熱温度105℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて求めた。次いで、この高分子電解質膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、この高分子電解質膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、高分子電解質膜の乾燥重量と前記の中和に要した塩酸の量から、高分子電解質膜のイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
(燃料電池評価セルの組立て)
市販のJARI標準セルを用いて、以下の通り燃料電池セルを組み立てた。まず、前記の通り作製したMEAの両電極触媒層の炭化水素系高分子電解質膜と接触している面とは反対側の面上に、MEAを挟むようにして、ガス拡散層であるカーボンクロスと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータと、集電体と、エンドプレートとを内側からこの順に各一対ずつ積層し、これらをボルトで締め付けることによって、有効膜面積25cm2の燃料電池セルを組み立てた。
(有機カルボニル化合物の重量含有率の測定方法)
測定に供するMEAに、水酸化テトラブチルアンモニウムを濃度10重量%になるように添加したN,N−ジメチルホルムアミドを加えた。次いで、触媒物質等の不溶物を遠心分離−ろ過法にて除去した後、ガスクロマトグラフィー(GC)による測定を行った。そして検出された有機カルボニル化合物を同定した後、それぞれを絶対検量線法にて、これらを定量した。
GCの測定条件は、下記の通りである。
GC条件
・ カラム:DB−WAX
・ 検出法:水素炎イオン化法(FID)
・ キャリアー流量:He,5mL/分、
(高分子電解質1の合成)
国際公開2007/043274号パンフレットの実施例7、実施例21記載の方法を参考にして、スミカエクセルPES 5200P(住友化学株式会社製)を使用して合成した、下記
Figure 2009146889
で示される繰り返し単位からなる、スルホン酸基を有するブロックと、下記

Figure 2009146889

で示される、イオン交換基を有さないブロックとを有する高分子電解質1(イオン交換容量=2.5meq/g、Mw=340,000、Mn=160,000)を得た。
(高分子電解質膜の作製)
前記高分子電解質1を、DMSOに約10重量%の濃度となるように溶解させて、高分子電解質溶液を調製した。次いで、この高分子電解質溶液をガラス板上に滴下した。それから、ワイヤーコーターを用いて高分子電解質溶液をガラス板上に均一に塗り広げた。この際、0.5mmクリアランスのワイヤーコーターを用いて塗工厚みをコントロールした。塗布後、高分子電解質溶液を80℃で常圧乾燥した。それから、得られた膜を1mol/Lの塩酸に浸漬した後、十分なイオン交換水で洗浄し、さらに常温乾燥することによって厚さ30μmの高分子電解質膜を得た。
実施例1
(触媒インク1の調合)
まず、市販の5重量%Nafion溶液(Aldrich製)を準備した。このナフィオン溶液を分析したところ、2−プロパノール約43重量%、エタノール約31重量%及び水約22重量%であった。なお、これらの溶媒の重量含有率は、ナフィオン溶液総重量に対して求められたものである。
このナフィオン溶液2.21gに対し、50.0重量%白金が担持された白金担持カーボン(エヌ・イー・ケムキャット社製SA50BK)を0.70g投入し、さらに予め窒素バブリングを20分行ったエタノールを30.56g、予め窒素バブリングを20分行った水を4.52g加えた。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで6時間攪拌した。これら一連の操作は全てアルゴンガス雰囲気下で行った。さらに、アルゴンガス雰囲気下で17日放置して、触媒インク1を得た。
触媒インク1における、溶媒を分析したところ、有機カルボニル化合物として、アセトアルデヒド、酢酸及びプロピオン酸が検出された。これらの重量含有率を求めた結果を表1に示す。なお、測定時の試料調製もすべて窒素ガスで数回パージしたグローブボックスを用い、アルゴンガス雰囲気下で行った。
比較例1
(触媒インク2の調合)
実施例1で用いたものと同じ、市販の5重量%Nafion溶液(Aldrich製)2.21gに、50.0重量%白金が担持された白金担持カーボン(エヌ・イー・ケムキャット社製SA50BK)を0.70g投入し、さらにエタノールを30.56g、水を4.52g加えた。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで6時間攪拌し触媒インク2を得た。かかる触媒インク2の調製は、混合装置を空気環境下に開放して行った(酸素濃度:約20体積%)。
触媒インク2における溶媒を分析したところ、有機カルボニル化合物として、アセトアルデヒド、酢酸及びプロピオン酸が検出された。これらの重量含有率を求めた結果を表1に示す。なお、測定時の試料調製は窒素ガスで数回パージしたグローブボックスを用い、アルゴンガス雰囲気下で行った。
比較例2
(触媒インク3の作製)
実施例1で用いたものと同じ、市販の5重量%Nafion溶液(Aldrich製)2.21gに、50.0重量%白金が担持された白金担持カーボン(エヌ・イー・ケムキャット社製SA50BK)を0.70g投入し、さらにエタノールを30.56g、水を4.52g加えた。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで6時間攪拌した後、17日放置して、触媒インク3を得た。かかる触媒インク3の調製は、混合装置を空気環境下に開放して行った(酸素濃度:約20体積%)。
触媒インク3における溶媒を分析したところ、有機カルボニル化合物として、アセトアルデヒド、酢酸及びプロピオン酸が検出された。これらの重量含有率を求めた結果を表1に示す。尚、測定時の試料調製は窒素ガスで数回パージしたグローブボックスを用い、アルゴンガス雰囲気下で行った。
Figure 2009146889

実施例1、比較例1〜2で作製した触媒インクを、例えば特開2008−140779の実施例1の方法で、高分子電解質膜1上に塗布、乾燥することで膜−電極接合体を作成し、さらにセパレータなどで挟み込むことにより燃料電池セルを作製する。この燃料電池セルを80℃に保ちながら、アノードに加湿水素、カソードに加湿空気をそれぞれ供給する。ガスの背圧、加湿のためのバブラーの水温、水素、空気の流量はそれぞれ次の通りとする。
・背圧 : 0.1MPaG(アノード)、0.1MPaG(カソード)
・バブラー水温 : 45℃(アノード)、55℃(カソード)
・水素流量 : 529mL/min
・空気流量 : 1665mL/min
そして、電圧が0.4Vとなるときの電流密度を測定すると、実施例1は比較例1、2に比べ、特段に高い電流密度が得られる。非特許文献1に示されているように、アセトアルデヒドがアノードやカソードの触媒反応を阻害していることが原因である可能性が挙げられる。
実施例2
(触媒インク4の調合)
市販の10重量%Nafion水溶液(Aldrich製)2.21gに50.0重量%白金が担持された白金担持カーボン(エヌ・イー・ケムキャット社製SA50BK)を0.70g投入し、さらにt−ブチルアルコールを30.56g、水を4.52g加えた。この触媒インク1の調製は、アルゴンガスで4回パージしたグローブボックスを用い、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度:0.2体積%)で行った。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで6時間攪拌して触媒インク4を得た。この触媒インク4には、有機カルボニル化合物に転化する一級アルコールを用いていないため、有機カルボニル化合物の重量含有率はほぼ0重量%といえる。
続いて、MEAを作製した。まず、前記で作成した高分子電解質膜1の片面の中央部における5.2cm角の領域に、大型パルススプレイ触媒形成装置(ノードソン社製、スプレイガン型式:NCG−FC(CT))を用いて、前記の触媒インク4を塗布した。この際、スプレイガンの吐出口から膜までの距離は6cm、ステージ温度は75℃に設定した。同様にして8回の重ね塗りをした後、ステージ上に15分間放置し、溶媒を除去してアノード触媒層を形成させた。形成されたアノード触媒層の組成と塗工した重量から算出したところ、アノード触媒層の白金量は0.60mg/cm2であった。続いて、もう一方の面にもアノード触媒層と同様にして触媒インク4を塗布して、白金量0.60mg/のcm2のカソード触媒層を形成し、MEAを得た。
MEA中の一方の触媒層において、有機カルボニル化合物を分析した。触媒層総重量に対する有機カルボニル化合物の重量含有率を表2に示す。なお、他方の触媒層も同様にして作製しているので、有機カルボニル化合物の重量含有率は、ほぼ同等である。触媒インク4は既述のように、有機カルボニル化合物を含有していないため、MEAの触媒層に含まれていた酢酸は、高分子電解質膜1又はMEA製造時の環境雰囲気から混入したと推定される。このような場合でも、触媒インク中の有機カルボニル化合物の重量含有率を十分低減することにより、触媒物質の触媒能を十分維持できる触媒層が形成できる。
Figure 2009146889
以上詳述したように、本発明によれば、触媒物質が本来有している触媒能を十分に発現し得る膜−電極接合体を提供できるため、本発明の産業上の利用価値は大きい。
好適な実施形態に係る燃料電池の断面構成を模式的に示す図である。
符号の説明
10・・・燃料電池、12・・・イオン伝導膜、14a,14b・・・触媒層、16a,16b・・・ガス拡散層、18a,18b・・・セパレータ、20・・・MEA(膜−電極接合体)

Claims (11)

  1. 固体高分子形燃料電池の触媒層を製造するための触媒インクであって、当該触媒インクの総重量に対する、有機アルデヒド及び有機カルボン酸の合計重量の割合が0.20重量%以下であることを特徴とする触媒インク。
  2. 水を含有することを特徴とする請求項1に記載の触媒インク。
  3. 溶媒として一級アルコールを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒インク。
  4. 触媒インクを構成する溶媒の総重量に対する、一級アルコール及び/又は水の合計重量の割合が90.0重量%以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の触媒インク。
  5. 前記一級アルコールが炭素数1〜5のアルコールであることを特徴とする請求項3又は4に記載の触媒インク。
  6. 前記有機カルボン酸又は前記有機アルデヒドが、101.3kPa下、300℃以下で気化する化合物であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の触媒インク。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載の触媒インクの製造方法であって、触媒物質と溶媒とを、酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で接触させる工程を有することを特徴とする製造方法。
  8. 請求項1〜6の何れかに記載の触媒インクの保管方法であって、酸素濃度1体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で保管することを特徴とする保管方法。
  9. 請求項1〜6の何れかに記載の触媒インクで用いてなることを特徴とする触媒層。
  10. 請求項9記載の触媒層を備えることを特徴とする膜−電極接合体。
  11. 請求項10記載の膜−電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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