JP2009144784A - ストローク調整装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチの係合応答性が向上し、係合時の衝撃が抑制されるストローク調整装置を提供する。
【解決手段】本体部と相対的に前後動するプッシャー13とを有するアクチュエータと、このプッシャー13に押圧される被押圧部18と、このプッシャー13が押し戻された時にその戻りを許容するように充填先から流出する磁性流体24と、電磁石12とを有するストローク調整装置において、前記プッシャー13が前記被押圧部18に当接して押すときに前記電磁石12bを通電して前記磁性流体24を磁化する固化手段と、前記プッシャー13が前記被押圧部18から離れている時に前記固化手段による通電方向とは逆方向に通電して前記磁性流体24を消磁する消磁手段を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本体部と相対的に前後動するプッシャー13とを有するアクチュエータと、このプッシャー13に押圧される被押圧部18と、このプッシャー13が押し戻された時にその戻りを許容するように充填先から流出する磁性流体24と、電磁石12とを有するストローク調整装置において、前記プッシャー13が前記被押圧部18に当接して押すときに前記電磁石12bを通電して前記磁性流体24を磁化する固化手段と、前記プッシャー13が前記被押圧部18から離れている時に前記固化手段による通電方向とは逆方向に通電して前記磁性流体24を消磁する消磁手段を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
この発明は、所定のアクチュエータで発生する推力を受けて移動する押圧部材のストローク機構に磁性流体を用いるストローク調整装置に関するものである。
従来、油圧あるいは電磁力を利用したアクチュエータやボールネジなどの回転力や板バネを推力に変換する機構を利用したアクチュエータなどの各種のアクチュエータが知られている。例えば特許文献1には、磁気粘性流体の活用したトルク制御式ビスマスカップリングにおいて、制御電流を印加するたびに増加するトルクや、電流を印加しない場合でも発生する引き摺りトルクを制御するトルク制御式ビスマスカップリングが記載されている。このトルク制御式ビスマスカップリングは、電磁石に対する電流をトルク伝達時と逆方向に印加することにより磁性流体を消磁するように構成されている。
上述した特許文献1に記載された装置は、制御電流の印加により生じる磁気モーメントと逆向きの磁気モーメントを生成することにより、磁性流体の残留磁気を消磁している。しかしながら、この装置では磁性流体の残留磁気を消磁するために電磁石に印加する電流のタイミングが具体化されていない。そのために、ビスマスカップリングの制御の精度が向上するものの、磁性流体の消磁のタイミングの制御による、装置全体の消費電力の低下や装置の応答速度について改良の余地がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、磁性流体の消磁のために電磁石に印加する電流のタイミングを制御することにより、ピストンと摩擦板との摩擦応答性の向上と、係合時の消費電力を低減することのできるストローク調整装置を提供することを目的とするものである。
上記の目標を達成するために、請求項1の発明は、本体部と相対的に前後動するプッシャーとを有するアクチュエータと、このプッシャーに押圧される被押圧部と、このプッシャーが押し戻された時にその戻りを許容するように充填先から流出する磁性流体と、電磁石とを有するストローク調整装置において、前記プッシャーが前記被押圧部に当接して押すときに前記電磁石を通電して前記磁性流体を磁化する固化手段と、前記プッシャーが前記被押圧部から離れている時に前記固化手段による通電方向とは逆方向に通電して前記磁性流体を消磁する消磁手段を有することを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ストッパーが前記プッシャーの押圧方向と反対方向に当接可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、プッシャーが被押圧部から離れている時に消磁制御を実行することができるため、プッシャーと被押圧部との当接後における磁性流体の油圧の上昇についての応答性が向上する。そのために、被押圧部とプッシャーとの摩耗調整の時間が短縮される。また、消磁電流の印加によりプッシャーと被押圧部との当接時の急激な油圧の上昇、すなわちサージ圧を防止することができる。さらに、プッシャーと被押圧部との当接に際して、当接時の衝撃を抑制することができる。
また、請求項2の発明によれば、プッシャーが被押圧部から離れてストッパーと当接する方向に移動する際に消磁制御が実行される。そのため、電磁石の鉄心の磁化に起因する磁性流体の粘性が低下してプッシャーとストッパーとが当接される。したがって、プッシャーとストッパーとの当接の後に充填室に充填されている磁性流体が流出される。そのために、プッシャーとストッパーとが当接された後もアクチュエータが移動して、エアギャップが拡大する。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。この発明のストローク調整装置は、アクチュエータが発生する推力をプッシャーに伝達し、このプッシャーによって摩擦板などの被押圧部を押圧するように構成され、そのアクチュエータのストローク量もしくは範囲を一定に維持し、またプッシャーのストローク位置を対象物に応じて調整するように構成されている。その調整のために、アクチュエータとプッシャーとの間に、間隔調整のため、および推力の伝達のための介在物が配置されている。
そのアクチュエータは、推力を発生できる構成のものであればよく、電磁力を利用した電磁アクチュエータ、油圧などの流体圧を利用した液圧アクチュエータ、リンク機構やボールネジなどを使用して前後動作する推進機構などであってよい。電磁アクチュエータは、コイルに流す電流と発生する推力との関係が、コイルもしくはこれと一体のヨークとアーマチュアとの間のエアギャップによって変化するので、そのエアギャップを所定値もしくは所定範囲に維持するためには、この発明のストローク調整装置が有効である。
また、プッシャーは、対象物に直接当接して対象物に押圧力を加える部材であり、アーマチュアなどの可動部とは相対移動可能に配置されている。その可動部の推力をプッシャーに伝達するための介在物は、要は、加圧されても変形したり、流出したりしない物質であればよく、流体あるいは固体のいずれでもよい。しかし、推力を伝達する必要のない状態ではその体積を減じ、あるいは反対に増大させることにより、可動部とプッシャーとの間の間隔、言い換えれば、プッシャーのストローク位置を変化させ得るものであることが好ましく、磁性流体もしくは磁気粘性流体などが採用される。このときは、電磁石によってその流動性を低下させ、もしくは実質的に固化させてその流動を阻止することになる。
図2には、電磁クラッチ機構もしくは電磁ブレーキ機構にこの発明を適用した例を示してある。ここに示す例におけるアクチュエータ1は、電磁石2とこれに吸引されるアーマチュア3とによって推力を発生するように構成されている。その電磁石2は、全体として環状を成しかつ周辺部分の断面が、軸線方向に開いたコ字状を成すヨーク4と、通電することにより磁界を発生する電磁コイル(以下、仮にメインコイルと記す)5とを備えている。そのメインコイル5はヨーク4の内部に嵌め込まれた状態になっている。
アーマチュア3は、ヨーク4に対向するリング状の平板部6と、その平板部6の外周端に一体化させられているシリンダ部7とを備えている。このアーマチュア3がこの発明の可動部に相当している。そのシリンダ部7は、内筒部7aとそれより大径の外筒部7bとを備え、全体として環状を成し、かつ周辺部分が中空形状を成している。
このシリンダ部7は、ヨーク4の外周側の少なくとも一部を被うように配置されており、その先端部に薄板状のリテーナ8が取り付けられている。このリテーナ8に対向する他のリテーナ9が、電磁石2を保持している所定の固定部10に固定されている。そして、これらのリテーナ8,9の間にリターンスプリング11が配置されている。このリターンスプリング11は、アーマチュア3が電磁石2によって吸引されて前進された場合に圧縮され、電磁石2による吸引力(アーマチュア3の推力)がなくなった場合にアーマチュア3を元の初期位置に押し戻す弾性力を発生するように構成されている。
前記シリンダ部7の内部で軸線方向でのほぼ中央部に電磁石12が固定されている。この電磁石12は、前記内筒部7aの外周面に固定したベースリング12aと、その外周側に嵌合させた電磁コイル(以下、仮にサブコイルと記す)12bと、そのサブコイル12bを被うフレーム部材12cとを備えている。なお、ベースリング12aとサブコイル12bおよびフレーム部材12cとの間には僅かな隙間が開いていて、この隙間が後述する磁性流体もしくは磁気粘性流体のための流路を形成している。
上記のシリンダ部7の内部で前記電磁石12を挟んだ一方(図2の右側)には、この発明におけるプッシャーに相当する第1ピストン13が液密状態を維持して前後動するように嵌め込まれている。それに伴って電磁石12と第1ピストン13との間に第1ピストン室14が形成されている。また、上記のシリンダ部7の内部で前記電磁石12を挟んだ他方(図2の左側)には、第2ピストン15が液密状態を維持して前後動するように嵌め込まれている。それに伴って電磁石12と第2ピストン15との間に第2ピストン室16が形成されている。
第1ピストン13は、シリンダ部7の内部に嵌合する部分から軸線方向に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ブレーキ機構17を構成している摩擦板18に接近して対向している。この摩擦板18が前述した被押圧部に該当する。この摩擦板18は、ケーシング19の内周面にスプライン嵌合されたブレーキプレートと、ブレーキドラム20の外周面にスプライン嵌合されかつブレーキプレートに対して交互に配置されたブレーキディスクとを含み、第1ピストン13によって厚さ方向(軸線方向)に押圧されることにより互いに摩擦接触してトルクを伝達するように構成されている。図2に示す例では、遊星歯車機構21のサンギヤ22にブレーキドラム20が一体化され、そのサンギヤ22を選択的に制動するように構成されている。
また、第2ピストン15は、シリンダ部7の内部に嵌合する部分から軸線方向(図2における左方向)に延び出ている部分を備え、そのいわゆる延出部分が、ケーシング19に取り付けられているストッパー23に当接するように構成されている。このストッパー23は、第2ピストン15をシリンダ部7の内部に押し戻すためのものであり、したがって第2ピストン15に前記延出部分を形成する替わりに、第2ピストン15に向けて突出した部分をストッパー23に設けてもよい。
そして、上記の各ピストン室14,16の内部に、この発明における充填材に相当する磁性流体もしくは磁気粘性流体(以下、仮にこれらを磁性流体と記す)24が封入されている。この磁性流体24は、従来知られているものであり、磁気を印加することによりその流動性が低下し、もしくは固化する流体である。
つぎに上述した装置の作用について説明する。図2に示す状態は、メインコイル5がオフ状態であって押圧作用を行っていない状態であり、アーマチュア3はリターンスプリング11によって、各ピストン13,15と共に後退側の初期位置に押し戻されている。この時はサブコイル12bもオフ状態となっており、磁性流体24は固化されずに流動性を保持している。また、第2ピストン15がストッパー23に当接しているため、第2ピストン15は第2ピストン室16内に相対的に押し込まれている。そのため、第2ピストン室16の容積が小さくなり、多くの磁性流体24が第1ピストン室14の内部に移動している。したがって、第1ピストン室14の容積が大きく、その内部の磁性流体24の量が多いために、第1ピストン13がアーマチュア3から相対的に大きく突出した状態となる。
図1には、このストローク調整装置に関する磁性流体24の油圧と、アーマチュア3のストロークと、サブコイル12bに印加される電流とについてのタイムチャートが記されている。このタイムチャートにおける時間軸は、メインコイル5に通電の指示が出される点、即ちクラッチ係合開始の信号が出される点を基点としている。そして、この指示に基づいてメインコイル5が通電されて、アーマチュア3がメインコイル5に近接する方向に移動する。
クラッチ係合開始の信号の出力時から摩擦板18と第1ピストン13との当接までの時間が期間Aとして表示される。また、摩擦板18と第1ピストン13との当接時が時刻Bとして表される。時刻B以降は、摩擦板18と第1ピストン13とが当接した状態で、アーマチュア3がメインコイル5に近接する方向に移動する。
この図1の上段には磁性流体24の油圧についてのタイムチャートが記されており、消磁電流をサブコイル12bに印加した場合の油圧が実線で記載され、消磁電流をサブコイル12bに印加しない場合の油圧が点線で記載されている。また、図1の中段には、アーマチュア3のストローク位置の大きさについてのタイムチャートが記されており、消磁電流をサブコイル12bに印加した場合のストローク位置の大きさが実線で記載され、消磁電流をサブコイル12bに印加しない場合のストローク位置の大きさが点線で記載されている。アーマチュア3のストローク位置の大きさは、タイムチャートの起点を基準として測定されており、メインコイル5に近接するにつれて大きな値となる。そして、図1の下段には、サブコイル12bへ通電する電流についてのタイムチャートが記されている。この電流の値はゼロを基準として、電流の方向により正負が定められている。また、図4の(a)には、この図1に記されたタイムチャートに対するフローチャートが記されている。
図4の(a)に記されているフローチャートに基づいて、ストローク調整装置の駆動を説明する。前述したクラッチ係合の指示、すなわちメインコイル5に通電の指示が出されることによりメインコイル5が通電してアーマチュア3に吸引力が働く(ステップS11)。この吸引力がリターンスプリング11による弾性力より大きいときは、アーマチュア3がメインコイル5に近接する方向に移動し始める。そして、このアーマチュア3と共に各ピストン13,15が移動するため、第2ピストン15がストッパー23から離れてピストン軸方向に移動する。この第1ピストン13の移動している状態が、図2に示されている期間Aと図3に示されているAにあたる。
期間Aにおいては、第1ピストン13とサブコイル12bとの相対速度がゼロであるため、第1ピストン室14に流入されている磁性流体24は加圧されずに一定の圧力を有する。また、期間Aにおいては、アーマチュア3はメインコイル5に近接する方向に移動し、アーマチュア3の移動と連動して第1ピストン13が摩擦板18に近接する方向に移動する。この期間Aに第1ピストン13が前進して、またその際に電流がサブコイル12bに印加される。このサブコイル12bに印加される電流が消磁手段に該当する(ステップS12)。その際、消磁手段として印加される電流の通電開始と通電終了のタイミングは、磁性流体24の油圧や温度等をセンサを用いて測定して、この測定値に基づいて演算される。また、消磁手段として印加される電流は、後述する磁性流体24の固化の際にサブコイル12bに通電される電流と反対側の向きに通電される。このサブコイル12bへの通電の制御、すなわち磁界の制御は図示しない電子制御装置(ECU)により制御される。そして、サブコイル12bに印加された電流は、第1ピストン13と摩擦板18との係合前にオフとなり、この消磁手段、すなわち消磁制御が終了する。
第1ピストン13と摩擦板18とが当接すると、第1ピストン13の前進が阻止された状態でアーマチュア3が前進するので、第1ピストン13がシリンダ部7に対して相対的に押し戻される。この第1ピストン13と摩擦板18との当接点が図1,図3に示されるB点にあたる。そのため、第1ピストン室14が圧縮されて、第1ピストン室14の磁性流体24は流路を通って第2ピストン室16に移動し、それに伴って第2ピストン15がストッパー23側に押し出される。したがって、第1ピストン13のアーマチュア3からの突出量もしくは両者の相対位置が変更され、第1ピストン13のストローク位置が相対的に後退方向に調整される。
時刻Bでは第1ピストン室14に封入されている磁性流体24が第1ピストン13により押圧されている。そのため、期間Aにおいて消磁制御が実行されていないときは、この押圧の開始の直後に第1ピストン室14に流入されている磁性流体24の圧力が急激に上昇して、サージ圧を生じる。一方で、期間Aにおいて消磁制御が実行されているときは、この押圧の開始の直後では、磁性流体24の圧力は急激に上昇しない。そのため、各ピストン室14,16とその間にある流路からの磁性流体24の漏れを防止することができる。また、サージ圧を抑制することにより、第1ピストン13と摩擦板18との当接時のトルクの伝達を防止することができる。
期間Aで消磁制御が実行されているときは、磁性流体24への押圧が時刻B以降一定期間された後に磁性流体24の圧力が急激に上昇する。この磁性流体24の圧力の上昇は、各ピストン室14,16の間の流路が各ピストン室14,16と比較して狭いため、流路と各ピストン室14,16との境目で磁性流体24の流速が急激に変化することに起因している。そして、アーマチュア3がメインコイル5もしくはヨーク4と当接してアーマチュア3が固定されている場合において、消磁制御をしている磁性流体24の油圧は消磁制御をしていない磁性流体24の油圧よりも高くなる。
時刻B以降では第1ピストン13と摩擦板18とが当接しているため、時刻B以降のアーマチュア3の移動速度は期間Aにおけるアーマチュア3の移動速度よりも遅くなる。ここで、期間Aにおいて消磁制御をしているときは、時刻B以降の油圧は期間Aにおいて消磁制御をしていないときの油圧と比較して相対的に低くなる。そのため、消磁制御をすることによりシリンダ部7の内壁に対する各ピストン13,15の抵抗、すなわち摺動抵抗が相対的に少なくなり、アーマチュア3の移動に対する抵抗が少なくなる。したがって、磁性流体24とピストン室14,16との間の摩擦力が減少して、アーマチュア3をメインコイル5に近接させる際の引力を少なくすることができる。その結果、摩耗調整の際にメインコイル5に印加する電流を低減することが可能となり、メインコイル5の消費電力を低減することが可能となる。
消磁制御が実行されているときは、図1,図3に示される時刻Cにおいて、アーマチュア3がメインコイル5もしくはこのメインコイル5の周辺に設けられているヨーク4と当接される。そのため、時刻C以降はアーマチュア3が固定された状態となる。この状態でサブコイル12bに電流が印加されて、磁性流体24の粘度が上昇し、あるいは固化されるため、第1ピストン室14と第2ピストン室16の間を連通する磁性流体24の流路が封止される。この制御が磁性流体24の固化手段に該当する。そして、この固化手段により、時刻Cにおいて第1ピストン13と摩擦板18との間のトルクの伝達が可能となる。
一方、消磁制御が実行されていないときは、図1,図3に示される時刻Dにおいて、アーマチュア3がメインコイル5もしくはこのメインコイル5の周辺に設けられているヨーク4と当接される。そのため、アーマチュア3は時刻D以降で固定された状態となる。そして、この状態でサブコイル12bに電流が印加されて、磁性流体24の粘度が上昇し、あるいは固化される。したがって、消磁制御が実行されていないときは、時刻Dにおいて第1ピストン13と摩擦板18との間のトルクの伝達が可能となる。以上より、消磁制御を実行することにより、クラッチを係合する指示からトルクの伝達までの時間を短縮することが可能となる。換言すれば、消磁制御を実行することにより、第1ピストン13と摩擦板18との間の摩耗調整時間を短縮することができる。
第1ピストン13と摩擦板18との間でトルクが伝達されている状態から、このトルクを解放する過程のタイムチャートを図5に示す。図5の上段には、エアギャップについてのタイムチャートが記されており、実線が消磁電流をサブコイル12bに印加しない場合に当たり、点線が消磁電流をサブコイル12bに印加する場合に当たる。また、アーマチュアストロークの大きさは、第1ピストン13と摩擦板18とのトルクを伝達する際のアーマチュア3とメインコイル5との距離を基準としており、アーマチュア3がメインコイル5から離れるほど大きな値となる。
図4の(b)には、この図5に記されたタイムチャートに対するフローチャートが記されている。サブコイル12bへの通電は、クラッチ解放の指示によりその通電を停止する(ステップS21)。このとき、ステップS21においてこの通電を停止した後においてもサブコイル12bの鉄心は磁化されているため、サブコイル12b周辺に磁界が生じて、この磁性流体24の粘性が上昇し、あるいは固化されている。また、メインコイル5の吸引力がリターンスプリング11の反発力よりも弱くなり、アーマチュア3がメインコイル5から離れる方向に移動する。この移動が、図5に記されているエアギャップの増加に該当する。
ステップS21に記されている通電の停止に関しては、クラッチ解放の指示によるものに限られず、図6の(a)〜(c)に示すマップの読み込みによりサブコイル12bを制御するものでもよい。図6の(a)〜(c)に示されているマップは、一旦粘度を増大させた磁性流体24の保圧特性を示すマップであり、磁性流体24に掛かる圧力(摩擦板18の締結圧あるいはクラッチ機構17の係合圧)、サブコイル12bの電流値(磁性流体24に作用する磁束密度)、磁性流体24の温度のそれぞれに応じた圧力の保持時間を示すマップである。具体的に説明すると、図6の(a)は、所定の油温において、クラッチ機構17の係合圧が90%に低下するまでの時間(保圧時間)Tlpを、係合圧毎およびサブコイル12bの電流値Is毎に測定した結果を示す図である。この図6の(a)に示すように、磁性流体24の圧力が低いほど、また磁性流体24に作用する磁束密度が高いほど、保圧時間Tlpが長くなる。なお、特定の電流値の下でのクラッチ係合圧Plpに対する保圧時間Tlpの関係を示せば、図6の(b)のとおりである。
図6の(a)に示す測定結果をマップとして書き直すと、図6の(c)のとおりとなる。なお、磁性流体24はオイルに磁性の粉粒体を混入させたものであるから、油温が高いほどその粘度が低くなるので、保圧時間Tlpは油温が高いほど短くなる特性を示す。したがって、上記のマップは、油温毎に作成されて用意される。そして、そのマップに基づいて、設定すべきクラッチ係合圧Plp、保圧時間Tlpからサブコイル12bの電流値が求められる。また、メインコイル5の電流値は設定するべきクラッチ係合圧Plpに基づいて求められる。より具体的には、サブコイル12bの電流値が小さくなるように設定される。そして、マップの読み込みに基づいてサブコイル12bの電流およびメインコイル5の電流が制御される。
ここで、アーマチュア3がメインコイル5から離れている際に消磁制御が実行されないときは、第1ピストン室14と第2ピストン室16との間で磁性流体24の流通がないため、第2ピストン15がストッパー23と当接することにより、アーマチュア3の移動が停止して、このフローチャートを終了する(ステップS22)。一方で、消磁制御が実行されているときは、磁性流体24の粘度が低下して流路を流通することが可能となるため、第1ピストン15とストッパー23との当接後に、第2ピストン室16に流入されている磁性流体24の一部が第2ピストン15に押圧されて、流路を流通して第1ピストン室14に流入される。そのため、第2ピストン15のシリンダ部7に対する相対位置が摩擦板18側に移動して、アーマチュア3とメインコイル5との距離が離れる方向に移動する。この移動が、図5に記されているエアギャップの点線部分に該当する。
このため、クラッチ解放における一連の動作について、消磁制御を実行しない場合はサブコイル12bへの通電が実行されていないため、サブコイル12bの消費電力を低減することができる。また、消磁制御を実行しない場合は、第2ピストン15とストッパー23との当接によりアーマチュア3が固定されて、メインコイル5から離れる運動が停止するため、消磁制御を実行している場合と比較して、エアギャップが減少している状態でアーマチュア3を待機させる制御が可能となる。
一方、第1ピストン13と摩擦板18との間でトルクが伝達されている状態から、このトルクを解放する過程で消磁制御を実行するときは、この消磁制御の実行により各ピストン室14,16の間の流路の磁界が減少する。そのため、磁性流体24がこの流路で固化されずに、この流路を流通することが可能となる。この場合におけるフローチャートが図4の(c)に記されている。
この制御では、クラッチ解放の指示に基づいてサブコイル12bへの通電が終了した後一定時間経過後に消磁制御が実行される(ステップS31,S32)。この一定時間はサブコイル12bの通電状態により定められ、あるいは磁性流体24の状態を圧力センサ等により測定して、この状態から定められる。あるいは、エンジンのイグニッション信号のように、外部からの信号に基づいて定められる。また、ステップS32に記されている消磁制御は、磁性流体24の固化に際して印加した電流の向きと反対方向にサブコイル12bへの通電が実行される制御である。このサブコイル12bへの通電の制御、すなわち磁界の制御は図示しない電子制御装置(ECU)により制御される。
図5に記されているタイムチャートの各時間に対するストローク調整装置の模式図が図7に記されている。図5に記されているタイムチャートの期間A’において、第1ピストン13と摩擦板18とが係合されているときのストローク調整装置の構造が図7のA’に該当する。この時は、各ピストン室14,16間の流路に流入されている磁性流体24がサブコイル12bから生じる磁界の影響を受けて固化され、あるいは粘性が上昇している。
また、図5に記されているタイムチャートの期間B’において、消磁制御をしていないときのストローク調整装置の模式図が図7のB’に記されている。この図は、ストッパー23と第2ピストン15とが当接したときのストローク調整装置を示しており、サブコイル12bの鉄心に残存する磁界の影響により、各ピストン室14,16の間の流路に流入されている磁性流体24が固化されている。そのため、第2ピストン15とストッパー23とが当接することにより、リターンスプリング11の反発力を受けて移動しているアーマチュア3の移動が停止する。
そして、図5に記されているタイムチャートの期間B’において、消磁制御をしているときのストローク調整装置の模式図が図7のB”に記されている。この図は、ストッパー23と第2ピストン15とが当接したときのストローク調整装置を示しており、サブコイル12bの鉄心に残存する磁界が消磁制御により減少し、あるいは消滅している。そのため、各ピストン室14,16の間の流路に流入されている磁性流体24の粘性が低下し、あるい固化されていた磁性流体24が流動化する。したがって、第2ピストン15とストッパー23とが当接した後も、第2ピストン室16に流入されていた磁性流体24が第1ピストン室14に流通可能であるため、第2ピストン15とストッパー23との当接後もアーマチュア3がリターンスプリング11の反発力を受けてメインコイル5から離れる方向に移動する。そして、シリンダ部7に取り付けられているサブコイル12bがストッパー23方向に移動する。
1…アクチュエータ、 2,12,…電磁石、 3…アーマチュア、 5…メインコイル、 11…リターンスプリング、 12b…サブコイル、 13…第1ピストン、 14…第1ピストン室、 15…第2ピストン、 16…第2ピストン室、 17…ブレーキ機構、 18…摩擦板、 24…磁性流体。
Claims (2)
- 本体部と相対的に前後動するプッシャーとを有するアクチュエータと、このプッシャーに押圧される被押圧部と、このプッシャーが押し戻された時にその戻りを許容するように充填先から流出する磁性流体と、電磁石とを有するストローク調整装置において、
前記プッシャーが前記被押圧部に当接して押すときに前記電磁石を通電して前記磁性流体を磁化する固化手段と、前記プッシャーが前記被押圧部から離れている時に前記固化手段による通電方向とは逆方向に通電して前記磁性流体を消磁する消磁手段を有することを特徴とするストローク調整装置。 - ストッパーが前記プッシャーの押圧方向と反対方向に当接可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のストローク調整装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007321257A JP2009144784A (ja) | 2007-12-12 | 2007-12-12 | ストローク調整装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007321257A JP2009144784A (ja) | 2007-12-12 | 2007-12-12 | ストローク調整装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009144784A true JP2009144784A (ja) | 2009-07-02 |
Family
ID=40915614
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007321257A Pending JP2009144784A (ja) | 2007-12-12 | 2007-12-12 | ストローク調整装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009144784A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010061927A1 (ja) | 2008-11-28 | 2010-06-03 | 三菱化学株式会社 | ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学フィルム及びポリカーボネート樹脂成形品 |
-
2007
- 2007-12-12 JP JP2007321257A patent/JP2009144784A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2010061927A1 (ja) | 2008-11-28 | 2010-06-03 | 三菱化学株式会社 | ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、光学フィルム及びポリカーボネート樹脂成形品 |
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